特許第6367256号(P6367256)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367256
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】コイルばね
(51)【国際特許分類】
   F16F 1/06 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   F16F1/06 J
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-80015(P2016-80015)
(22)【出願日】2016年4月13日
(65)【公開番号】特開2017-190823(P2017-190823A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2017年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000175722
【氏名又は名称】サンコール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】岸原 竜二
(72)【発明者】
【氏名】岡村 誠士
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第02260606(US,A)
【文献】 特開2000−205320(JP,A)
【文献】 特開平10−184751(JP,A)
【文献】 特開2005−016645(JP,A)
【文献】 特開2012−211702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/00− 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ばね線材が軸線方向一方側から他方側へ延びる螺旋形状に成形されてなるコイルばねであって、
軸線方向一方側に設けられ、軸線方向一方側を向く第1座面が形成された第1座巻き部と、軸線方向他方側に設けられ、軸線方向他方側を向く第2座面が形成された第2座巻き部と、前記第1及び第2座巻き部の間の中央巻き部とを備え、
軸線方向に隣接するばね線材間の線間隙間によって画される線間巻きが、軸線方向一方側において自然長状態での線間隙間がゼロとされた第1基準点から軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って周方向に進むに従って自然長状態での線間隙間が大きくなる第1端部領域と、前記第1端部領域よりも軸線方向他方側に位置し、自然長状態での線間隙間が基準値のL(L>0)とされた基準領域と、前記基準領域より軸線方向他方側に位置し、軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って周方向に進むに従って線間隙間が狭くなり、第2基準点において自然長状態での線間隙間がゼロとなる第2端部領域とを含み、前記第1端部領域は、線間巻き数が1を超え且つ終端位置における自然長状態での線間距離がLより大となるように構成され、
前記線間巻きは、前記第1端部領域の終端位置と前記基準領域との間に、前記第1端部領域の終端位置から軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って進むに従って線間距離が小さくなって基準値のLに到達する第1移行領域を有しており、
前記第1座巻き部は、軸線方向一方側の第1端部から前記第1基準点を形成する部分まで延びる第1座巻き部エッジ領域と、前記第1座巻き部エッジ領域から前記中央巻き部まで延びる第1座巻き部移行領域とを含み、
前記第1座巻き部エッジ領域は、前記第1座巻き部移行領域に比して、前記コイルばねの軸線方向一方側へ折り曲げられており、
前記第1座面は、前記第1座巻き部エッジ領域から前記第1座巻き部移行領域との境界を跨いで前記第1座巻き部移行領域へ至るように形成されていることを特徴とするコイルばね。
【請求項2】
ばね線材が軸線方向一方側から他方側へ延びる螺旋形状に成形されてなるコイルばねであって、
軸線方向一方側に設けられ、軸線方向一方側を向く第1座面が形成された第1座巻き部と、前記コイルばねの軸線方向他方側に設けられ、軸線方向他方側を向く第2座面が形成された第2座巻き部と、前記第1及び第2座巻き部の間の中央巻き部とを備え、
軸線方向に隣接するばね線材間の線間隙間によって画される線間巻きが、軸線方向一方側において自然長状態での線間隙間がゼロとされた第1基準点から軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って周方向に進むに従って自然長状態での線間隙間が大きくなる第1端部領域と、前記第1端部領域よりも軸線方向他方側に位置し、自然長状態での線間隙間が基準値のL(L>0)とされた基準領域と、前記基準領域より軸線方向他方側に位置し、軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って周方向に進むに従って線間隙間が狭くなり、第2基準点において自然長状態での線間隙間がゼロとなる第2端部領域とを含み、前記第1端部領域は、線間巻き数が1を超え且つ終端位置における自然長状態での線間距離がLより大となるように構成され、
前記線間巻きは、前記第1端部領域の終端位置と前記基準領域との間に、前記第1端部領域の終端位置から軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って進むに従って線間距離が小さくなって基準値のLに到達する第1移行領域を有しており、
前記第2座巻き部は、軸線方向他方側の第2端部から前記第2基準点を形成する部分まで延びる第2座巻き部エッジ領域と、前記第2座巻き部エッジ領域から前記中央巻き部まで延びる第2座巻き部移行領域とを含み、
前記第2座巻き部エッジ領域は、前記第2座巻き部移行領域に比して、前記コイルばねの軸線方向他方側へ折り曲げられており、
前記第2座面は、前記第2座巻き部エッジ領域から前記第2座巻き部移行領域との境界を跨いで前記第2座巻き部移行領域へ至るように形成されていることを特徴とするコイルばね。
【請求項3】
ばね線材が軸線方向一方側から他方側へ延びる螺旋形状に成形されてなるコイルばねであって、
線方向一方側に設けられ、軸線方向一方側を向く第1座面が形成された第1座巻き部と、軸線方向他方側に設けられ、軸線方向他方側を向く第2座面が形成された第2座巻き部と、前記第1及び第2座巻き部の間の中央巻き部とを備え、
軸線方向に隣接するばね線材間の線間隙間によって画される線間巻きが、軸線方向一方側において自然長状態での線間隙間がゼロとされた第1基準点から軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って周方向に進むに従って自然長状態での線間隙間が大きくなる第1端部領域と、前記第1端部領域よりも軸線方向他方側に位置し、自然長状態での線間隙間が基準値のL(L>0)とされた基準領域と、前記基準領域より軸線方向他方側に位置し、軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って周方向に進むに従って線間隙間が狭くなり、第2基準点において自然長状態での線間隙間がゼロとなる第2端部領域とを含み、前記第1端部領域は、線間巻き数が1を超え且つ終端位置における自然長状態での線間距離がLより大となるように構成され、
前記線間巻きは、前記第1端部領域の終端位置と前記基準領域との間に、前記第1端部領域の終端位置から軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って進むに従って線間距離が小さくなって基準値のLに到達する第1移行領域を有しており、
前記第1座巻き部は、軸線方向一方側の第1端部から前記第1基準点を形成する部分まで延びる第1座巻き部エッジ領域と、前記第1座巻き部エッジ領域から前記中央巻き部まで延びる第1座巻き部移行領域とを含み、
前記第1座巻き部エッジ領域は、前記第1座巻き部移行領域に比して、前記コイルばねの軸線方向一方側へ折り曲げられており、
前記第1座面は、前記第1座巻き部エッジ領域から前記第1座巻き部移行領域との境界を跨いで前記第1座巻き部移行領域へ至るように形成され
前記第2座巻き部は、軸線方向他方側の第2端部から前記第2基準点を形成する部分まで延びる第2座巻き部エッジ領域と、前記第2座巻き部エッジ領域から前記中央巻き部まで延びる第2座巻き部移行領域とを含み、
前記第2座巻き部エッジ領域は、前記第2座巻き部移行領域に比して、前記コイルばねの軸線方向他方側へ折り曲げられており、
前記第2座面は、前記第2座巻き部エッジ領域から前記第2座巻き部移行領域との境界を跨いで前記第2座巻き部移行領域へ至るように形成されていることを特徴とするコイルばね。
【請求項4】
前記第1端部領域は、前記第1基準点から前記終端位置まで一定の線間隙間ピッチ角を有し、
前記線間隙間ピッチ角は、軸線方向一方側への線間巻き1巻き当たりの線間隙間の変位量がLとなるように設定されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のコイルばね。
【請求項5】
前記第2端部領域は、線間巻き数が1を超え且つ開始位置における自然長状態での線間距離がLより大となるように構成され、
前記線間巻きは、前記基準領域の軸線方向他方側の終端位置と前記第2端部領域の開始位置との間に、前記基準領域の終端位置から軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って周方向に進むに従って線間距離が基準値のLから大きくなって前記第2端部領域の開始位置に到達する第2移行領域を有していることを特徴とする請求項1からの何れかに記載のコイルばね。
【請求項6】
前記第2端部領域は、開始位置から前記第2基準点まで一定の線間隙間ピッチ角を有し、
前記線間隙間ピッチ角は、軸線方向一方側への線間巻き1巻き当たりの線間隙間の変位量が−Lとなるように設定されていることを特徴とする請求項に記載のコイルばね。
【請求項7】
前記第1基準点から前記第2基準点までの線間巻き数が整数倍とされていることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載のコイルばね。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の弁ばねや高圧ポンプ用ばね等に利用可能なコイルばねに関する。
【背景技術】
【0002】
ばね線材を軸線方向一方側から他方側へ延びる螺旋形状に成形してなるコイルばねは、内燃機関の弁ばねや高圧ポンプ用ばね等として、広く利用されている、
【0003】
前記コイルばねは、軸線方向に圧縮された際に軸線方向に沿った弾性力を発揮することを意図した部材であるが、圧縮時に、軸線方向に沿った弾性力に加えて、軸線方向とは直交する方向にも力(横力)を発生することが知られている。
【0004】
横力の発生は可能な限り防止することが望まれる。
即ち、例えば、前記コイルばねを往復動するプランジャーの押圧部材として用いた場合に横力が生じると、前記プランジャーと当該プランジャーが往復動可能に収容される案内面との間に生じる摩擦力が大きくなる。
前記摩擦力の増加は、前記プランジャーの摺動抵抗に起因する摩耗や摩擦熱の上昇を招き、前記プランジャーが用いられる高圧ポンプ等の装置に作動不具合を生じさせる恐れがある。
【0005】
この点に関し、本願の筆頭出願人は、横力の低減を目的としたコイルばねを提案している(下記特許文献1参照)。
【0006】
前記特許文献1に記載のコイルばねは、セット高さから最大使用高さまでの間で有効巻数が整数となるように設計されたものであり、前記有効巻数が整数又は整数近傍とはされていないコイルばねに比して、横力を低減することができる。
【0007】
ところで、前記コイルばねは、軸線方向両端部に位置する座巻き部と、前記両端の座巻き部の間に位置する中央巻き部とを有しており、軸線方向に隣接するばね線材の間に隙間(線間隙間)が存在する領域が有効巻き部となる。
【0008】
前記特許文献1は、前記有効巻き部の巻数がセット高さから最大使用高さまでの間で整数となるように設計するという思想を開示するものではあるが、使用状態下において前記有効巻き部の巻数が変化しないようにするための具体的構成については記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−205320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、斯かる従来技術に鑑みなされたものであり、横力の発生を可及的に防止し得るコイルばねの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記目的を達成するために、ばね線材が軸線方向一方側から他方側へ延びる螺旋形状に成形されてなるコイルばねであって、軸線方向一方側に設けられ、軸線方向一方側を向く第1座面が形成された第1座巻き部と、軸線方向他方側に設けられ、軸線方向他方側を向く第2座面が形成された第2座巻き部と、前記第1及び第2座巻き部の間の中央巻き部とを備え、軸線方向に隣接するばね線材間の線間隙間によって画される線間巻きが、軸線方向一方側において自然長状態での線間隙間がゼロとされた第1基準点から軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って周方向に進むに従って自然長状態での線間隙間が大きくなる第1端部領域と、前記第1端部領域よりも軸線方向他方側に位置し、自然長状態での線間隙間が基準値のL(L>0)とされた基準領域と、前記基準領域より軸線方向他方側に位置し、軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って周方向に進むに従って線間隙間が狭くなり、第2基準点において自然長状態での線間隙間がゼロとなる第2端部領域とを含み、前記第1端部領域は、線間巻き数が1を超え且つ終端位置における自然長状態での線間距離がLより大となるように構成され、前記線間巻きは、前記第1端部領域の終端位置と前記基準領域との間に、前記第1端部領域の終端位置から軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って進むに従って線間距離が小さくなって基準値のLに到達する第1移行領域を有しており、前記第1座巻き部は、軸線方向一方側の第1端部から前記第1基準点を形成する部分まで延びる第1座巻き部エッジ領域と、前記第1座巻き部エッジ領域から前記中央巻き部まで延びる第1座巻き部移行領域とを含み、前記第1座巻き部エッジ領域は、前記第1座巻き部移行領域に比して、前記コイルばねの軸線方向一方側へ折り曲げられており、前記第1座面は、前記第1座巻き部エッジ領域から前記第1座巻き部移行領域との境界を跨いで前記第1座巻き部移行領域へ至るように形成されているコイルばねを提供する。
【0012】
また、本発明は、前記目的を達成するために、ばね線材が軸線方向一方側から他方側へ延びる螺旋形状に成形されてなるコイルばねであって、軸線方向一方側に設けられ、軸線方向一方側を向く第1座面が形成された第1座巻き部と、前記コイルばねの軸線方向他方側に設けられ、軸線方向他方側を向く第2座面が形成された第2座巻き部と、前記第1及び第2座巻き部の間の中央巻き部とを備え、軸線方向に隣接するばね線材間の線間隙間によって画される線間巻きが、軸線方向一方側において自然長状態での線間隙間がゼロとされた第1基準点から軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って周方向に進むに従って自然長状態での線間隙間が大きくなる第1端部領域と、前記第1端部領域よりも軸線方向他方側に位置し、自然長状態での線間隙間が基準値のL(L>0)とされた基準領域と、前記基準領域より軸線方向他方側に位置し、軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って周方向に進むに従って線間隙間が狭くなり、第2基準点において自然長状態での線間隙間がゼロとなる第2端部領域とを含み、前記第1端部領域は、線間巻き数が1を超え且つ終端位置における自然長状態での線間距離がLより大となるように構成され、前記線間巻きは、前記第1端部領域の終端位置と前記基準領域との間に、前記第1端部領域の終端位置から軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って進むに従って線間距離が小さくなって基準値のLに到達する第1移行領域を有しており、前記第2座巻き部は、軸線方向他方側の第2端部から前記第2基準点を形成する部分まで延びる第2座巻き部エッジ領域と、前記第2座巻き部エッジ領域から前記中央巻き部まで延びる第2座巻き部移行領域とを含み、前記第2座巻き部エッジ領域は、前記第2座巻き部移行領域に比して、前記コイルばねの軸線方向他方側へ折り曲げられており、前記第2座面は、前記第2座巻き部エッジ領域から前記第2座巻き部移行領域との境界を跨いで前記第2座巻き部移行領域へ至るように形成されているコイルばねを提供する。
【0013】
さらに、本発明は、前記目的を達成するために、ばね線材が軸線方向一方側から他方側へ延びる螺旋形状に成形されてなるコイルばねであって、軸線方向一方側に設けられ、軸線方向一方側を向く第1座面が形成された第1座巻き部と、軸線方向他方側に設けられ、軸線方向他方側を向く第2座面が形成された第2座巻き部と、前記第1及び第2座巻き部の間の中央巻き部とを備え、軸線方向に隣接するばね線材間の線間隙間によって画される線間巻きが、軸線方向一方側において自然長状態での線間隙間がゼロとされた第1基準点から軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って周方向に進むに従って自然長状態での線間隙間が大きくなる第1端部領域と、前記第1端部領域よりも軸線方向他方側に位置し、自然長状態での線間隙間が基準値のL(L>0)とされた基準領域と、前記基準領域より軸線方向他方側に位置し、軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って周方向に進むに従って線間隙間が狭くなり、第2基準点において自然長状態での線間隙間がゼロとなる第2端部領域とを含み、前記第1端部領域は、線間巻き数が1を超え且つ終端位置における自然長状態での線間距離がLより大となるように構成され、前記線間巻きは、前記第1端部領域の終端位置と前記基準領域との間に、前記第1端部領域の終端位置から軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って進むに従って線間距離が小さくなって基準値のLに到達する第1移行領域を有しており、前記第1座巻き部は、軸線方向一方側の第1端部から前記第1基準点を形成する部分まで延びる第1座巻き部エッジ領域と、前記第1座巻き部エッジ領域から前記中央巻き部まで延びる第1座巻き部移行領域とを含み、前記第1座巻き部エッジ領域は、前記第1座巻き部移行領域に比して、前記コイルばねの軸線方向一方側へ折り曲げられており、前記第1座面は、前記第1座巻き部エッジ領域から前記第1座巻き部移行領域との境界を跨いで前記第1座巻き部移行領域へ至るように形成され、前記第2座巻き部は、軸線方向他方側の第2端部から前記第2基準点を形成する部分まで延びる第2座巻き部エッジ領域と、前記第2座巻き部エッジ領域から前記中央巻き部まで延びる第2座巻き部移行領域とを含み、前記第2座巻き部エッジ領域は、前記第2座巻き部移行領域に比して、前記コイルばねの軸線方向他方側へ折り曲げられており、前記第2座面は、前記第2座巻き部エッジ領域から前記第2座巻き部移行領域との境界を跨いで前記第2座巻き部移行領域へ至るように形成されているコイルばねを提供する。
【0014】
好ましくは、前記第1端部領域は、前記第1基準点から前記終端位置まで一定の線間隙間ピッチ角を有するものとされ、前記線間隙間ピッチ角は、軸線方向一方側への線間巻き1巻き当たりの線間隙間の変位量がLとなるように設定される。
【0015】
前記種々の構成において、好ましくは、前記第2端部領域は、線間巻き数が1を超え且つ開始位置における自然長状態での線間距離がLより大となるように構成され、前記線間巻きは、前記基準領域の軸線方向他方側の終端位置と前記第2端部領域の開始位置との間に、前記基準領域の終端位置から軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って周方向に進むに従って線間距離が基準値のLから大きくなって前記第2端部領域の開始位置に到達する第2移行領域を有するように構成される。
【0016】
好ましくは、前記第2端部領域は、開始位置から前記第2基準点まで一定の線間隙間ピッチ角を有するものとされ、前記線間隙間ピッチ角は、軸線方向一方側への線間巻き1巻き当たりの線間隙間の変位量が−Lとなるように設定される。
【0017】
前記種々の構成において、好ましくは、前記第1基準点から前記第2基準点までの線間巻き数が整数倍とされる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るコイルばねにおいては、軸線方向一方側に設けられ、軸線方向一方側を向く第1座面が形成された第1座巻き部と、軸線方向他方側に設けられ、軸線方向他方側を向く第2座面が形成された第2座巻き部と、前記第1及び第2座巻き部の間の中央巻き部とが備えられ、軸線方向に隣接するばね線材間の線間隙間によって画される線間巻きが、軸線方向一方側において自然長状態での線間隙間がゼロとされた第1基準点から軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って周方向に進むに従って自然長状態での線間隙間が大きくなる第1端部領域と、前記第1端部領域よりも軸線方向他方側に位置し、自然長状態での線間隙間が基準値のL(L>0)とされた基準領域と、前記基準領域より軸線方向他方側に位置し、軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って周方向に進むに従って線間隙間が狭くなり、第2基準点において自然長状態での線間隙間がゼロとなる第2端部領域とを含み、前記第1端部領域は、線間巻き数が1を超え且つ終端位置における自然長状態での線間距離がLより大となるように構成されており、さらに、前記線間巻きには、前記第1端部領域の終端位置と前記基準領域との間に、前記第1端部領域の終端位置から軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って進むに従って線間距離が小さくなって基準値のLに到達する第1移行領域が設けられているので、圧縮動作時において前記第1端部領域に線間隙間ゼロが発生することを有効に抑えることができ、これにより、横力の発生を可及的に防止することができる。
【0019】
さらに、本発明に係るコイルばねにおいては、前記第1座巻き部のうち軸線方向一方側の第1端部から前記第1基準点を形成する部分まで延びる第1座巻き部エッジ領域が、前記第1座巻き部エッジ領域から前記中央巻き部まで延びる第1座巻き部移行領域に比して、前記コイルばねの軸線方向一方側へ折り曲げられ、前記第1座面が、前記第1座巻き部エッジ領域から前記第1座巻き部移行領域との境界を跨いで前記第1座巻き部移行領域へ至るように形成され、及び/又は、前記第2座巻き部のうち軸線方向他方側の第2端部から前記第2基準点を形成する部分まで延びる第2座巻き部エッジ領域が、前記第2座巻き部エッジ領域から前記中央巻き部まで延びる第2座巻き部移行領域に比して、前記コイルばねの軸線方向他方側へ折り曲げられ、前記第2座面が、前記第2座巻き部エッジ領域から前記第2座巻き部移行領域との境界を跨いで前記第2座巻き部移行領域へ至るように形成されているので、座面の平坦性を担保しつつ、前記第1座巻き部及び/又は前記第2座巻き部を厚くすることができ、圧縮動作時の横力発生をさらに減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の一実施の形態に係るコイルばねの自然長状態での斜視図である。
図2図2は、前記コイルばねの自然長状態での正面図である。
図3図3は、前記コイルばねにおける、線間巻き数と線間隙間との関係を示すグラフである。
図4図4は、前記コイルばねの圧縮状態での正面図である。
図5図5は、前記コイルばねの製造装置の模式図である。
図6図6は、前記実験結果を示すグラフである。
図7図7は、前記実施の形態の変形例に係るコイルばねの部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るコイルばねの一実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1及び図2に、それぞれ、本実施の形態に係るコイルばね1Aの自然長状態での斜視図及び正面図を示す。
【0022】
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係るコイルばね1Aは、ばね線材100が軸線方向一方側から他方側へ延びる螺旋形状に成形されてなるものであり、内燃機関の弁ばねや高圧ポンプ用ばね等に好適に利用される。
【0023】
前記コイルばね1Aは、前記ばね線材100の実巻きを基準とすると、前記ばね線材100の長手方向一方側の第1端部110を含み、且つ、前記コイルばね1Aの軸線方向一方側を向く第1座面11が形成された第1座巻き部10と、前記ばね線材100の長手方向他方側の第2端部120を含み、且つ、前記コイルばね1Aの軸線方向他方側を向く第2座面21が形成された第2座巻き部20と、前記第1及び第2座巻き部10、20の間の中央巻き部30とを有している。
【0024】
前記コイルばね1Aにおいては、前記コイルばね1Aの軸線方向に隣接するばね線材100同士の間に線間隙間が存在する領域が、弾性力を発揮する有効巻き部として作用する。
【0025】
ここで、軸線方向に隣接するばね線材100同士の間の前記線間隙間について詳述する。
前記線間隙間は、軸線方向一方側においては自然長状態での線間隙間がゼロとされた第1基準点51から軸線方向一方側へ螺旋状に進むに従って広がり、前記中央巻き部30においては前記コイルばね1Aに求められる弾性力に応じて設定される基準値L(L>0、下記図3参照)とされ、軸線方向他方側においては軸線方向一方側へ螺旋状に進むに従って狭まって第2基準点52においてゼロとされている。
【0026】
即ち、図2に示すように、前記線間隙間によって形成される螺旋形状(以下、線間巻きと言う)は、軸線方向一方側において自然長状態での線間隙間がゼロとされた前記第1基準点51から軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って周方向に進むに従って自然長状態での線間隙間が大きくなる第1端部領域61と、前記第1端部領域61よりも軸線方向他方側に位置し、自然長状態での線間隙間が基準値のLとされた基準領域65と、前記基準領域65より軸線方向他方側に位置し、軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って周方向に進むに従って線間隙間が狭くなり、前記第2基準点52において自然長状態での線間隙間がゼロとなる第2端部領域62とを有している。
【0027】
図3に、前記コイルばね1Aにおける、線間巻き数と線間隙間との関係を表すグラフを示す。
【0028】
図3に示すように、本実施の形態に係る前記コイルばね1Aにおいては、前記第1端部領域61は、線間巻き数が1を超え且つ終端位置61Eにおける自然長状態での線間距離が基準値Lよりも大となるように構成されている。
【0029】
本実施の形態においては、図3に示すように、前記第1端部領域61の終端位置61Eは、前記第1基準点51から軸線方向他方側へ線間巻き約1.2巻きの位置に位置されており、基準値Lは4.7mmに設定され、終端位置61Eにおける自然長状態の線間距離は5.5mm(基準値L×1.17)に設定されている。
【0030】
その上で、図3に示すように、前記コイルばね1Aは、前記線間巻きが前記第1端部領域61及び前記基準領域65の間に第1移行領域63(1)を有するように構成されている。
【0031】
前記第1移行領域63(1)は、前記第1端部領域61の終端位置61Eから軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って進むに従って線間距離が小さくなって基準値のLに到達するように構成されている。
【0032】
かかる構成を備えることにより、前記コイルばね1Aが自然長状態から圧縮動作される際に、前記第1端部領域61に線間隙間ゼロが生じることを有効に防止でき、圧縮動作時の横力の発生を有効に抑えることができる。
【0033】
即ち、前記コイルばね1Aにおいては、軸線方向一方側に設けられる前記第1端部領域61の終端位置61Eでの線間距離が基準値Lよりも大とされている。
従って、図4に示すような前記コイルばね1Aの圧縮動作に、軸線方向一方側において有効巻き数の変化が生じることを有効に防止することができ、これにより、圧縮動作時の横力発生を有効に抑えることができる。
【0034】
図3に示すように、本実施の形態に係る前記コイルばね1Aにおいては、前記第2端部領域62は、線間巻き数が1を超え且つ終端位置61Eにおける自然長状態での線間距離が基準値Lよりも大となるように構成されている。
【0035】
本実施の形態においては、前記第2端部領域62は、前記第1端部領域61と実質的に同一構成とされている。
即ち、図3に示すように、前記第2端部領域62の開始位置62Sは、前記第2基準点52から線間巻き数において軸線方向一方側へ約1.2巻きの位置に位置されており、開始位置62Sにおける自然長状態の線間距離は前記第1端部領域61における終端位置61Eの線間距離と同一の5.5mm(基準値L×1.17)に設定されている。
【0036】
その上で、図3に示すように、前記コイルばね1Aは、前記線間巻きが前記基準領域65及び前記第2端部領域62の間に第2移行領域63(2)を有するように構成されている。
【0037】
前記第2移行領域63(2)は、前記基準領域65の終端位置65Eから軸線方向他方側へ螺旋形状に沿って進むに従って線間距離が基準値のLから大きくなって前記第2端部領域62の開始位置62Sに到達するように構成されている。
【0038】
かかる構成を備えることにより、前記コイルばね1Aが自然長状態から圧縮動作される際に、前記第2端部領域62に線間隙間ゼロが生じることを有効に防止でき、圧縮動作時の横力の発生を有効に抑えることができる。
【0039】
前記コイルばね1Aは、例えば、図5に示す製造装置200によって製造される。
図5に示すように、前記製造装置200は、ばね線材100を供給する供給ローラ210と、前記供給ローラ210によって搬送されるばね線材100をガイドするガイド部材215と、前記ガイド部材215によってガイドされた状態で前記供給ローラ210によって搬送されるばね線材100の搬送方向下流側に設けられ、直線状のばね線材100を螺旋状のコイルばね1Aに成形する第1及び第2コイリングツール220(1)、220(2)と、前記第1及び第2コイリングツール220(1)、220(2)によって螺旋状に成形されたコイルばね1Aをガイドする芯金部材225と、前記コイルばね1Aのピッチを調整するピッチツール230と、前記芯金225と共働してばね線材100を切断する切断ツール235とを有している。
【0040】
前記第1及び第2コイリングツール220(1)、220(2)は、成形されるコイルばね1Aの中心を基準とした径方向に関し位置調整可能とされており、径方向位置の変更に応じてコイルばね1Aのコイル径を変更する。
【0041】
前記ピッチツール230は、コイルばね1Aの中心を基準とした径方向に関し位置調整可能とされており、径方向位置の変更に応じてコイルばね1Aのピッチを変更する。
【0042】
前記切断ツール235は、コイルばね1Aの中心を基準とした径方向に関し往復動可能とされており、前記芯金225の係合面226と共働して前記ばね線材100を切断する切断位置と前記芯金225から離間された退避位置との間で移動可能とされている。
【0043】
好ましくは、図3に示すように、前記第1端部領域61は、前記第1基準点51から前記終端位置61Eまで一定の線間隙間ピッチ角を有するものとされ、前記線間隙間ピッチ角は、軸線方向一方側への線間巻き1巻き当たりの線間隙間の変位量がLとなるように設定される。
かかる構成によれば、前記ピッチツール230の位置制御の容易化を図ることができる。
【0044】
同様に、好ましくは、図3に示すように、前記第2端部領域62は、開始位置62Sから前記第2基準点52まで一定の線間隙間ピッチ角を有するものとされ、前記線間隙間ピッチ角は、軸線方向一方側への線間巻き1巻き当たりの線間隙間の変位量が−Lとなるように設定される。
【0045】
ここで、本実施の形態に係るコイルばね1A及び従来のコイルばねに対して行った、横力に関する実験結果について説明する。
【0046】
本実施の形態に係るコイルばね1Aの一例(実施例)として、下記構成のコイルばね1aを用意した。
・実施例に係るコイルばね1aの構成
ばね線材の材質:シリコンクロム 鋼オイルテンパー線(SWOSC-V)相当の鋼線
ばね線材の線径:3.3mm
コイルばねのコイル径:17.4mm
自然長状態のコイルばねの長さ:41mm
総巻き数:6.0
有効巻き数:4.0
基準領域65での線間隙間の距離(基準値L):4.6mm
第1端部領域61の終端位置61E(第1基準点51からの線間巻き数):0.9
第1端部領域61の終端位置61Eでの線間隙間の距離:5.7mm
第1移行領域63(1)の線間巻き数:0.5
第2端部領域62の開始位置62S(第2基準点52からの線間巻き数):0.9
第2端部領域62の開始位置62Sでの線間隙間の距離:5.7mm
第2移行領域63(2)の線間巻き数:0.5
【0047】
前記実施例に係るコイルばね1aに生じる横力をサイドフォースばね試験機(日本計測システム株式会社製 SFTシリーズ)にて測定した。
図6に、その結果を示す。
【0048】
従来のコイルばねの一例(比較例)として、下記構成のコイルばねを用意し、同様の実験を行った。
・比較例に係るコイルばねの構成
ばね線材の材質:シリコンクロム 鋼オイルテンパー線(SWOSC-V)相当の鋼線
ばね線材の線径:3.3mm
コイルばねのコイル径:17.4mm
自然長状態のコイルばねの長さ:40mm
総巻き数:5.8
有効巻き数:3.8
基準領域65での線間隙間の距離(基準値L):6.1mm
第1端部領域61の終端位置61E(第1基準点51からの線間巻き数):1
第1端部領域61の終端位置61Eでの線間隙間の距離:6.1mm
第2端部領域62の開始位置62S(第2基準点52からの線間巻き数):1
第2端部領域62の開始位置62Sでの線間隙間の距離:6.1mm
【0049】
前記比較例に生じる横力も前記サイドフォースばね試験機(日本計測システム株式会社製 SFTシリーズ)にて測定した。
その結果を図6に併せて示す。
【0050】
図6に示されるように、前記第1及び第2端部領域61、62の線間巻き数が1を超え、前記第1端部領域61の終端位置61E及び前記第2端部領域62の開始位置62Sでの線間距離が基準領域65での線間距離Lよりも大とされている前記実施例1aにおいては、前記比較例に比して、横力の発生が格段に抑えられている。
この結果は、前記実施例に係るコイルばね1aにおいては、圧縮動作に際し、前記第1及び第2端部領域61、62において線間隙間ゼロの発生が有効に防止できていることを意味する。
【0051】
好ましくは、前記コイルばね1Aは、前記第1基準点51から前記第2基準点52までの線間巻き数が整数倍となるように構成される。
即ち、前記第1基準点51及び前記第2基準点52が周方向に関し同一位置に位置するように構成される。
かかる構成によれば、圧縮動作時の横力発生をより有効に防止することができる。
【0052】
また、好ましくは、前記第1座巻き部10のうち前記第1基準点51より端部側に位置する領域を軸線方向一方側へ折り曲げることができる。
【0053】
図7に、前記第1座巻き部10のうち前記第1基準点51より端部側に位置する領域を軸線方向一方側へ折り曲げた変形例1Bの部分正面図を示す。
【0054】
図7に示すように、前記変形例1Bにおいては、前記第1座巻き部10は、前記ばね線材100のうち長手方向一方側の第1端部110から前記第1基準点51を形成する部分まで延びる第1座巻き部エッジ領域111と、前記第1座巻き部エッジ領域111から前記中央巻き部30まで延びる第1座巻き部移行領域112とを含んでいる。
【0055】
そして、前記第1座巻き部エッジ領域111は、前記第1座巻き部移行領域112に比して、前記コイルばね1Bの軸線方向一方側へ折り曲げられており、前記第1座面11は、前記第1座巻き部エッジ領域111から前記第1座巻き部移行領域112との境界を跨いで前記第1座巻き部移行領域112へ至るように形成されている。
【0056】
斯かる構成の前記変形例1Bによれば、前記第1座面11の研磨量を十分に確保して前記第1座面11の平坦性を担保しつつ、前記第1座巻き部10を厚くすることができ、圧縮動作時の横力発生をさらに減少させることができる。
【0057】
当然ながら、前記第2座巻き部20にも同様の構成を適用することができる。
即ち、前記第2座巻き部20が、前記ばね線材100のうち長手方向他方側の第2端部120から前記第2基準点52を形成する部分まで延びる第2座巻き部エッジ領域(図示せず)と、前記第2座巻き部エッジ領域から前記中央巻き部30まで延びる第2座巻き部移行領域(図示せず)とを含むものとし、前記第2座巻き部エッジ領域を、前記第2座巻き部移行領域に比して、前記コイルばね1の軸線方向他方側へ折り曲げ、前記第2座面21を、前記第2座巻き部エッジ領域から前記第2座巻き部移行領域との境界を跨いで前記第2座巻き部移行領域へ至るように形成することができる。
【符号の説明】
【0058】
1A、1B コイルばね
10 第1座巻き部
11 第1座面
20 第2座巻き部
21 第2座面
30 中央巻き部
51 第1基準点
52 第2基準点
61 第1端部領域
61E 第1端部領域の終端位置
62 第2端部領域
62S 第2端部領域の開始位置
63(1) 第1移行領域
63(2) 第2移行領域
65 基準領域
65E 基準領域の終端位置
100 ばね線材
110 ばね線材の第1端部
111 第1座巻き部エッジ領域
112 第1座巻き部移行領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7