(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367264
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】杜仲葉及び高麗人参抽出物を含む液体組成物、並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 2/38 20060101AFI20180723BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20180723BHJP
A23L 2/70 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
A23L2/38 C
A23L2/00 B
A23L2/00 K
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-131078(P2016-131078)
(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公開番号】特開2018-97(P2018-97A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2016年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 友規
(72)【発明者】
【氏名】前田 真理子
【審査官】
小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−312366(JP,A)
【文献】
特開2015−139393(JP,A)
【文献】
特開2014−011971(JP,A)
【文献】
岩淵 久克 ほか,生薬香気成分の研究(第1報) 人参(Ginseng Radix)の香気成分,薬学雑誌,1984年,Vol. 104, No. 9,pp. 951-958
【文献】
マリンプラセンタ(R),株式会社日本バリアフリー[online],2014年 9月,[retrieved on 5.25.2017],URL,https://www.n-bf.co.jp/products/mp/pdf/mp01.pdf
【文献】
長白山産の「朝鮮人参」[online],2015年 6月12日,[retrieved on 11/1/2017],URL,https://web.archive.org/web/20150612101411/http://www.toyi-net.com/natural/carrot.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00− 2/84
A23L 5/00− 5/49
A23L 29/00−29/30
A23F 3/00− 5/50
A61K 36/00−36/9068
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH4以下の、杜仲葉及び高麗人参の同時抽出物含有液を、珪藻土及び濾紙により濾過して得られる、液体組成物。
【請求項2】
さらにコラーゲン若しくはその加水分解物、及びクエン酸を含む、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
前記珪藻土が、透過率0.5〜2ダルシーの珪藻土である、請求項1又は2に記載の液体組成物。
【請求項4】
杜仲葉及び高麗人参の同時抽出物含有液を、表面に珪藻土がプレコートされた濾紙により濾過して得られる、請求項1〜3のいずれかに記載の液体組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の液体組成物を用いたカプセル、タブレット、錠剤、パウダー、又は飲料。
【請求項6】
pH4以下の、杜仲葉及び高麗人参の同時抽出物含有液を、珪藻土及び濾紙により濾過する工程を含む、液体組成物の製造方法。
【請求項7】
杜仲葉及び高麗人参の同時抽出物含有液がクエン酸を含み、液体組成物がクエン酸及びコラーゲン若しくはその加水分解物を含む、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記珪藻土が、透過率0.5〜2ダルシーの珪藻土である、請求項6又は7に記載の製造方法。
【請求項9】
杜仲葉及び高麗人参の同時抽出物含有液を、珪藻土及び濾紙により濾過する工程が、
杜仲葉及び高麗人参の同時抽出物含有液を、表面に珪藻土がプレコートされた濾紙により濾過する工程である、
請求項6〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
pH4以下の、杜仲葉及び高麗人参の同時抽出物含有液を、珪藻土及び濾紙により濾過する工程、及び
得られた液体組成物と他の原料を混合して飲料を調製する工程、
を含む、飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杜仲葉及び高麗人参抽出物を含む液体組成物、並びにその製造方法を包含する。
【背景技術】
【0002】
従来より、生薬成分は肌荒れ防止作用、血行促進作用、代謝促進作用などの種々の効果・効能を有し、健康に良い影響を与えるものとされてきた。
【0003】
多くの生薬成分はそのえぐみや苦味から、そのまま摂取するのには抵抗のある消費者も多い。そのため特許文献1及び2にあるように、生薬成分に酸味料や甘味料等を添加して味を調整することで、飲みやすい飲料として提供されることが多かった。
【0004】
ただし、酸味料や甘味料等を添加して味を調整したとしても、生薬成分が有する独特の香味、特に土臭さは残存する傾向にあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013−043854号公報
【特許文献1】特開2015−139393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、生薬成分(具体的には杜仲葉及び高麗人参)を含有する飲料において、生薬成分の有する独特の香味(特に土臭さ)をマスキングすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、杜仲葉及び高麗人参の抽出物を含有する液を、珪藻土及び濾紙により濾過することにより、独特の香味(特に土臭さ)をマスキングし得ることを見いだし、さらに改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
pH4以下の、杜仲葉及び高麗人参の同時抽出物含有液を、珪藻土及び濾紙により濾過して得られる、液体組成物。
項2.
さらにコラーゲン若しくはその加水分解物、及びクエン酸を含む、項1に記載の液体組成物。
項3.
前記珪藻土が、透過率0.5〜2ダルシーの珪藻土である、項1又は2に記載の液体組成物。
項4.
杜仲葉及び高麗人参の同時抽出物含有液を、表面に珪藻土がプレコートされた濾紙により濾過して得られる、項1〜3のいずれかに記載の液体組成物。
項5.
項1〜4のいずれかに記載の液体組成物を用いたカプセル、タブレット、錠剤、パウダー、又は飲料。(特に好ましくは、当該液体組成物を含む飲料。)
項6.
pH4以下の、杜仲葉及び高麗人参の同時抽出物含有液を、珪藻土及び濾紙により濾過する工程を含む、液体組成物の製造方法。
項7.
杜仲葉及び高麗人参の同時抽出物含有液がクエン酸を含み、液体組成物がクエン酸及びコラーゲン若しくはその加水分解物を含む、項6に記載の製造方法。
項8.
前記珪藻土が、透過率0.5〜2ダルシーの珪藻土である、項6又は7に記載の製造方法。
項9.
杜仲葉及び高麗人参の同時抽出物含有液を、珪藻土及び濾紙により濾過する工程が、
杜仲葉及び高麗人参の同時抽出物含有液を、表面に珪藻土がプレコートされた濾紙により濾過する工程である、
項6〜8のいずれかに記載の製造方法。
項10.
pH4以下の、杜仲葉及び高麗人参の同時抽出物含有液を、珪藻土及び濾紙により濾過する工程、及び
得られた液体組成物と他の原料を混合して飲料を調製する工程、
を含む、飲料の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、生薬成分(具体的には杜仲葉及び高麗人参)を含有する飲料において、生薬成分の有する独特の香味(特に土臭さ)をマスキングすることができる。さらに、当該飲料においては、澱の発生も抑制され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】サンプル液又は当該サンプル液を濾紙及び珪藻土により濾過して得た濾液サンプルを、5℃で一週間静置した際に生じた沈殿の量を示す。
【
図2】サンプル液又は当該サンプル液を濾紙及び珪藻土により濾過して得た濾液サンプルを、55℃で一週間静置した際に生じた沈殿の量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明では、杜仲葉及び高麗人参の抽出物を含有する液を、珪藻土及び濾紙により濾過して、杜仲葉及び高麗人参抽出物を含む液体組成物を得る。
【0012】
濾過に供する杜仲葉及び高麗人参の抽出物を含有する液としては、杜仲葉抽出物と高麗人参抽出物とを混合して得ることもできるが、杜仲社及び高麗人参を混合して抽出して得たもの(以下「杜仲葉及び高麗人参の同時抽出物」ということがある)を含有する液を用いることが好ましい。
【0013】
本発明に用いる杜仲は、トチュウ科トチュウ属のトチュウ(Eucommia ulmoides Oliv.)である。抽出には葉部だけでなく小枝部分も含まれていてもよい。つまり、本明細書における「杜仲葉」には、小枝部分も含まれていてもよい。生の杜仲葉を裁断若しくは細断や破砕したものをそのまま抽出に供してもよければ、生の杜仲葉や裁断等の加工した生の杜仲葉を乾燥処理や焙煎処理した後に抽出に供してもよいし、乾燥させた杜仲葉を細断或いは破砕したものを抽出に供してもよい。乾燥や焙煎の処理は、通常実施される方法や条件を採用することができるが、たとえば焙煎する際の条件としては、80℃〜120℃で0.5時間〜2時間焙煎することが挙げられる。抽出は水性溶媒を用いて行なう。水性溶媒としては、例えば水、エタノール若しくはそれらの混合液があげられるがこれらに限定されるわけではない。これらのうち水単独を使用することが好ましい。抽出条件としては適宜設定可能であり、特に限定されない。抽出時の抽出溶媒の液温は室温でもよいが加温するほうが好ましく、例えば、抽出溶媒の温度を70℃〜100℃付近の範囲で抽出する方法が好ましく挙げられる。得られた抽出液は、ろ過や遠心などの常法を用いて固形物を除去した後に、濃縮若しくは粉末化処理を行うことが好ましい。濃縮や粉末化の処理方法や条件についても、公知の方法や条件を使用することができる。
【0014】
また、本発明に用いる高麗人参は、朝鮮人参、オタネニンジン、又はヤクヨウニンジンとも呼ばれ、学名はPanax ginseng C. A. Meyerである。本発明で用いる部分は、根部であり、生の人参の根部を裁断若しくは細断や破砕したものをそのまま抽出に供しても良いし、生の人参根部を裁断等の加工を行い、さらに乾燥処理や焙煎処理した後に抽出に供してもよい。乾燥や焙煎の処理は、通常実施される方法や条件を使用できるが、たとえば焙煎としては、100℃〜150℃で0.5時間〜2時間焙煎する方法が挙げられる。抽出は水性溶媒を用いて行なう。水性溶媒としては、例えば水、エタノール若しくはそれらの混合液があげられるがこれらに限定されるわけではない。これらのうち水単独を使用することが好ましい。抽出条件としては公知の条件を広く採用することが可能であり、特に限定されない。抽出時の抽出溶媒の液温は室温でもよいが、加温したほうが好ましい。たとえば、抽出溶媒の温度を80℃〜100℃付近の範囲で抽出する方法が好ましく挙げられる。得られた抽出液は、ろ過や遠心などの常法を用いて固形物を除去した後に、濃縮若しくは粉末化処理を行うことが好ましい。濃縮や粉末化の処理方法や条件についても、公知の方法や条件を使用することができる。
【0015】
なお、杜仲葉及び高麗人参の同時抽出物を得る場合には、上述した杜仲葉抽出条件及び高麗人参抽出条件の重複する条件を採用し、杜仲葉及び高麗人参の混合物から抽出を行えばよい。
【0016】
杜仲葉及び高麗人参の抽出物を含有する液として、杜仲葉及び高麗人参の同時抽出物をそのまま用いてもよいし、当該同時抽出物を水などの溶媒に溶解させて用いてもよい。溶媒に溶解させる場合には、当該同時抽出物以外のその他の成分を溶解させてもよい。このような他の成分としては、例えばpH調整剤を挙げることができ、より具体的には例えば有機酸(好ましくはクエン酸、L−酒石酸、乳酸、酢酸等であり、より好ましくはクエン酸)を挙げることができる。当該抽出物含有液は、pHが4以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましく、3未満であることがさらに好ましく、2.8以下であることがよりさらに好ましい。pH調整剤を用いて当該抽出物含有液のpHを調整することができる。また、杜仲葉及び高麗人参の抽出物を含有する液(好ましくは杜仲葉及び高麗人参の同時抽出物含有液)に珪藻土を分散させてもよい。この場合、下述するように、当該珪藻土を除去することにより、珪藻土による濾過処理を行うことができる。
【0017】
なお、杜仲葉及び高麗人参の抽出物を含有する液(好ましくは杜仲葉及び高麗人参の同時抽出物含有液)の酸度は、特に制限されないが、1.75〜3程度が好ましく、2〜2.9程度がより好ましい。
【0018】
珪藻土及び濾紙による濾過は、(i)珪藻土による濾過及び(ii)濾紙による濾過を、(i)→(ii)の順に行っても(ii)→(i)の順に行ってもよく、また、これらを同時に行ってもよい。また、(i)及び(ii)の濾過を、それぞれ1回又は2回以上組み合わせて用いてもよい。
【0019】
例えば、(i)珪藻土を用いて濾過を行う場合は、手動式および全自動式の何れの濾過装置も使用することができる。珪藻土濾過装置としては、例えば、濾過槽(縦型、横型)タイプ、キャンドルタイプ、短板タイプ、多板タイプ、(縦型、横型)多段リーフタイプ、ばね式フィルター、立錘キャンドルタイプや、珪藻土を自動的に排出する機能を有するタイプなどの密閉式珪藻土濾過機が上げられる。使用する珪藻土は、粉末状/顆粒状のものを使用することもできるが、あらかじめフィルター部材にプレコートさせてから使用したり、珪藻土を予め包含させた不織布を使用したり、珪藻土のセラミック加工したフィルターを使用することもできる。フィルター素材としては、布(不織布を含む)、セルロース以外の繊維で主に構成される濾紙、ステンレス/ガラス/セラミック/合成樹脂などで構成されるフィルターなどを使用でき、前記素材を組み合わせて用いることもできる。これらのフィルターの形状は、平面形状に限らず、円筒形状やその他の任意の立体形状のものを使用できる。また、フィルターが濾過圧力に耐えられない場合には、濾過板(濾板)などにフィルターを支持して使用することもできる。具体的には、例えば、粉末や顆粒状の珪藻土と杜仲葉及び高麗人参の同時抽出物含有液とを混合し、得られた珪藻土の分散液から前記のフィルター部材を使用して珪藻土を除去する方法や、珪藻土をプレコートしたフィルター部材やセラミック加工した珪藻土フィルターを用いて杜仲葉及び高麗人参の同時抽出物含有液を濾過する方法などで行うことが出来る。濾紙への珪藻土によるプレコートは、例えば、濾過板上に濾紙を設置し、少量の水などの溶媒を通過させることで濾紙を濾過板上に密着させ、その後、コートする珪藻土を分散させた水を濾過することで行うことができる。この場合、加圧若しくは減圧条件下で濾過すると、処理効率が向上するだけでなく、均一なプレコート層が得られやすいため、好ましい。
【0020】
また、例えば(ii)濾紙による濾過を行う場合は、自然濾過でもよいが製造効率を考慮すると加圧若しくは減圧条件下で濾過することが好ましい。その場合、濾過時において濾紙に加わる圧力により濾紙が破損することを回避するため、濾紙は支持する板状などの冶具(例えば、濾過板)にセットしてから濾過を行うことが好ましい。圧力の加え方としては、被濾過液側に加圧する方法や濾過液側を減圧する方法、その両方を行う方法を採用することができる。例えば、濾過板(濾板)やブフナー漏斗様の冶具に濾紙をセットしたうえで、(i)の濾過処理を行って得られた杜仲葉及び高麗人参の同時抽出物含有液を、さらに濾過することができる。濾紙の通過径(ポアサイズ)は適宜設定できるが、1〜10μm程度が例示でき、2〜7μm程度が好ましい。また、使用する濾紙は1枚だけに限られない。例えば、複数枚(例えば2、3、又は4枚)の濾紙を同時に使用してもよい。複数枚の濾紙を動じ使用する多段リーフタイプの濾過機を使用することもできる。また、前記の場合、使用する濾紙の通過径(ポアサイズ)はすべて同じでなくてもよい。例えば、被濾過物が先に通過する濾紙の通過径より、その後で通過する濾紙の通過径を同等以下の通過径に設定することで、濾過効率を高めることができる。例えば、濾紙を2枚(以上)用いる場合に、被濾過物が先に通る濾紙のポアサイズを4以上6未満(μm)とし、後に通る濾紙のポアサイズを1以上3未満(μm)とすることができる。また、濾紙にパルプとは異なった濾過材を複合させたハイブリッド濾紙を使用することもでき、また、濾紙表面に例えば珪藻土などの濾過助剤をプレコートしたものを使用することもできる。なお、本発明では、単に「濾紙」と記載するときは、主にパルプから構成される濾紙を意味する。また、(i)及び(ii)を同時に行う方法としては、例えば、(i)で使用するフィルターとして濾紙を使用すればよい。この場合、珪藻土がプレコートされた濾紙を用いて濾過を行う方法など上記(ii)に記載した何れの方法も使用することができる。
【0021】
特に好ましい珪藻土及び濾紙による濾過方法として、杜仲葉及び高麗人参の同時抽出物含有液に珪藻土を分散させ、当該含有液を珪藻土がプレコートされた濾紙を用いて濾過処理する方法が挙げられる。
【0022】
本発明に用いる珪藻土としては、特に制限はされないが、例えば透過率が0.5〜2ダルシーのものが好ましい。また、杜仲葉及び高麗人参の同時抽出物含有液に珪藻土を分散させる場合、当該珪藻土としては、透過率が0.5以上1.5未満ダルシーのものが好ましく、0.8〜1.2ダルシーのものがより好ましい。また、濾紙へ珪藻土をプレコートする場合には、当該珪藻土としては、透過率が1.5〜2ダルシーのものが好ましい。なお、珪藻土の透過率とは、珪藻土粒子の充填層を液体が透過する時の透過率を表す値であり、単位はダルシーである。より詳細には、長さ1cm、断面積1cm
2の充填層の両端に1気圧の圧力差をかけたとき,粘度1センチポアズ(cP)の流体が毎秒1cm
3の流量で流れるとき,この充填層の透過率が1ダルシー(darcy)である。
【0023】
このようにして得られる、杜仲葉及び高麗人参抽出物を含む液体組成物は、そのまま若しくは水で希釈して飲料とすることも可能ではあるが、公知の飲料用原料を混合して飲料として利用することが好ましい。このような公知の飲料用原料としては、特に制限はされないが、例えば水、果実や野菜の搾汁またはピューレ、動植物の抽出物、甘味料、アミノ酸、タンパク質類(好ましくはコラーゲン又はその加水分解物、特にコラーゲンペプチド)、ビタミン、pH調整剤、増粘多糖類、防腐剤、着色料、着香料等が挙げられる。飲料製造の際の殺菌工程の殺菌効率や、あるいは保存性等を高めるため、飲料のpHは比較的低いことが好ましく、具体的にはpH4以下が好ましく、pH3以下がより好ましく、pH3未満がさらに好ましく、pH2.8以下がよりさらに好ましい。なお、タンパク質やタンパク質加水分解物を多く含有する飲料は、緩衝能力が強いため、含有するタンパク質等の等電点より低いpH値に調整した飲料を得たい場合には、比較的大量のpH調整剤(酸性化合物)を加える必要がある。このようなpH調整剤としては、例えば有機酸が好適であり、クエン酸、L−酒石酸、乳酸、酢酸等が好ましく、中でもクエン酸が好ましい。
【0024】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。
【0025】
本発明で得られる杜仲葉及び高麗人参抽出物を含む液体組成物は、他の成分として、食品衛生学上許容される基剤、担体、添加剤や、その他食品として利用され得る成分・材料を必要に必要に応じて配合することにより、経口組成物とすることができる。例えば、健康食品(栄養補助食品、栄養機能食品、特定保健用食品、機能性表示商品等)、サプリメント、等が例示できる。これらは常法により調製することができる。特に、健康食品(栄養補助食品、栄養機能食品、病者用食品、特定保健用食品、機能性表示商品等)、又はサプリメントとして、継続的な摂取が行いやすいように、例えば顆粒、カプセル(軟カプセルを含む)、錠剤(チュアブル剤等を含む)、飲料(飲料パウダー、ドリンク等)等の形態で調製することが好ましく、なかでもカプセル、タブレット、錠剤、飲料パウダー、ドリンク剤の形態が摂取の簡便さの点からは好ましいが、特に、杜仲葉及び高麗人参抽出物が従来有する土臭さや苦味などの嗜好性を低下させる香味を大幅に改善できるため、その効果が最も認知できる飲料の形態が好ましく、当該液体組成物を含む飲料がより好ましい。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。なお、用いた珪藻土の種類は次の通りであり、いずれも東京珪藻土工業(株)製である。
セライト#503RV(以下「503RV」):透過率1ダルシー
ハイフロ・スーパーセル(以下「ハイフロ」):透過率1.8ダルシー
【0027】
杜仲人参エキスの製造
杜仲の葉部の粉砕物と高麗人参の地下部の粉砕物を混合し、加温しつつ水溶媒にて抽出
し、その後定法を用いて濃縮してBrix 50とした濃縮エキス(液状)を得た。
【0028】
以下、当該エキスを杜仲人参エキスとして用いた。
【0029】
濾過が杜仲人参エキスに与える影響の検討1
約80℃の精製水を撹拌しながら杜仲人参エキスに当該水を加え、さらにクエン酸を加えてpHを調整した。約10分後に撹拌を止め、得られたサンプル液を2時間静置した。
【0030】
2時間静置後、さらに当該サンプル液に珪藻土(ハイフロ)を加えて撹拌し、予め濾紙及び珪藻土(503RV)でコートされた9cmブフナー漏斗を用いて吸引濾過した。このようにして、濾紙及び珪藻土により濾過した濾液サンプルを得た。
【0031】
なお、用いたブフナー漏斗の濾紙及び珪藻土によるコートは、具体的には次のようにして行った。まず、9cmブフナー漏斗に濾紙(アドバンテックNo.131:ポアサイズ3μm)を敷き、さらにその上に別の濾紙(アドバンテックNo.2:ポアサイズ5μm)を敷き、少量の水により漏斗に密着させながら脱気した。そして、一度脱気を止めてから、503RV 5gを水50mLに加えて撹拌して得た液を一度に流し込み、すぐさま脱気を再開した。これにより、濾紙上に珪藻土を満遍なく均一にプレコートした。
【0032】
なお、当該濾紙及び珪藻土による濾過は、pH2、2.6、3、4、又は5の各サンプル液について行った。また、珪藻土を用いない(すなわち、ハイフロ添加撹拌及び503RVによるプレコートを行わない)以外は、同様の操作を行うことにより、濾紙により濾過した濾過サンプル(pH2、2.6、又は3)を得た。さらにまた、濾紙の代わりにガラスフィルター(ポアサイズ4〜5.5μm)を用いた以外は、同様の操作を行うことにより、ガラスフィルター及び珪藻土により濾過した濾過サンプル(pH2.6)を得た。
【0033】
杜仲人参エキス0.25g相当を含む各濾液サンプル及び上記サンプル液(pH2、2.6、又は3)を、それぞれ1.5mlチューブに入れ、5℃又は55℃で一週間静置した。そして、各濾液サンプル及びサンプル液において生じた沈殿の量を検討した。結果を
図1(5℃静置による沈殿量(g))及び
図2(55℃静置による沈殿量(g))に示す。
【0034】
なお、pH2、2.6、3、4の、濾紙及び珪藻土により濾過した濾液サンプルが、それぞれ実施例1、2、3、4であり、pH5の、濾紙及び珪藻土により濾過した濾液サンプルが、比較例1であり、pH2、2.6、3の、上記サンプル液が、それぞれ比較例2、3、4であり、pH2、2.6、3の、濾紙により濾過した濾過サンプルが、それぞれ比較例5、6、7であり、pH2.6の、ガラスフィルター及び珪藻土により濾過した濾過サンプルが、参考例1である。
【0035】
図1及び
図2から、pHが同じであれば、濾過の具体的な実施方法(すなわち、濾紙及び珪藻土による濾過、ガラスフィルター及び珪藻土による濾過、又は濾紙による濾過)によっては、沈殿量はほとんど変わらないことがわかった。
【0036】
濾過が杜仲人参エキスに与える影響の検討2
上記のようにして得た各濾過サンプル又はサンプル液を用いて、飲料を調製した。具体的には、表1に記載する各成分(単位はグラム(g))を130mLの精製水に溶解させ、さらに200mLまで精製水でメスアップして、飲料を調製した。なお、各濾過サンプル又はサンプル液には、杜仲人参エキス2gが含まれるように調製した。
【0037】
【表1】
【0038】
なお、ニッピペプタイドFCPは市販コラーゲンペプチドであり、サネットはアセスルファムカリウムであり、サンスイートSU−200はスクラロースを主成分とする甘味剤である。
【0039】
当該飲料を加熱殺菌して瓶詰めし、5℃又は55℃で一週間静置した。その後、目視により澱の発生度合い、及び官能評価により香味(杜仲人参エキスの土臭さのマスキング度合い)について評価した。各評価は4人の評価者で行った。表2に結果を示す。表2における各実施例、比較例、参考例との記載は、各例の濾液サンプル又はサンプル液を用いて調製した飲料を示す。
【0040】
なお、各評価項目について以下の5段階で評価し、4人の平均値を算出した(ただし、評価者の中には0.5刻みで評価を行った者もいた)。また、55℃で一週間静置した際の香味は、いずれの飲料も極めて不良であり、マスキング度合いについては評価できなかった。
【0041】
<澱発生度合い>
5.澱が全く生じていない
4.澱がほとんど生じていない
3.どちらともいえない
2.澱が少量生じている
1.澱が明らかに生じている
<香味(マスキング)>
5.土臭さが全く無い
4.土臭さがほとんど無い
3.どちらともいえない
2.少し土臭い
1.明らかに土臭い
【0042】
【表2】
【0043】
上記の通り、各濾液サンプル又はサンプル液の沈殿量は、pHが同じであれば、濾過の具体的な実施方法によってはほとんど変わらない。沈殿が生じると商品価値が落ちる上、味にも悪影響が存する可能性が高いが、予想に反して、沈殿量と香味(マスキング)の検討結果には相関関係は見られなかった。沈殿量が同じ程度にもかかわらず、珪藻土及び濾紙を用いて濾過した濾液サンプルが、最も評価項目の評価が高かった。中でも、pHが4以下において、特に好ましい結果が得られた。
【0044】
酸度の測定
酸度とは、酸の成分が溶液100mL中、何グラム含まれているかを示す。すなわち、液に含まれる酸の質量パーセント濃度である。酸味を示す指標として用いられる。含まれる酸が強酸の場合はpHからおおよその酸度を予測することはできるが、有機酸など弱酸の場合には酸度を予測することは困難である。上記サンプル及び飲料では、pH調節のため有機酸であるクエン酸を用いていることから、酸度の予測は難しく、それぞれの酸度を中和滴定法(JAS規格による)により求めた。
【0045】
結果をpH値とともに表3に示す。
【0046】
【表3】