(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367315
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】潜在的味覚調節物質を特定するためのモデルとしての細胞
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20180723BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20180723BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20180723BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20180723BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20180723BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20180723BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20180723BHJP
【FI】
C12Q1/02ZNA
C12Q1/68
C12N5/10
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
G01N33/50 Z
!C07K14/47
【請求項の数】18
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2016-513123(P2016-513123)
(86)(22)【出願日】2014年5月9日
(65)【公表番号】特表2016-519931(P2016-519931A)
(43)【公表日】2016年7月11日
(86)【国際出願番号】US2014037511
(87)【国際公開番号】WO2014183044
(87)【国際公開日】20141113
【審査請求日】2015年12月15日
(31)【優先権主張番号】61/821,943
(32)【優先日】2013年5月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】593203701
【氏名又は名称】ペプシコ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PepsiCo Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】クラッシュ,ユリヤ
(72)【発明者】
【氏名】グラヴィーナ,スティーヴン
【審査官】
市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】
特表2012−516687(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0117563(US,A1)
【文献】
特表2009−517003(JP,A)
【文献】
特表2009−534018(JP,A)
【文献】
特表2009−540804(JP,A)
【文献】
Mark Ozeck, et al.,Receptors for bitter, sweet and umami taste couple to inhibitory G protein signaling pathways,European Journal of Pharmacology,2004年,489(3),pp.139-149
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00−3/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
甘味調節物質を特定する方法において、
a)甘味受容体T1R2/T1R3を含むU2−OS細胞であって、Gα16gust25、Gα15gust25、Gα16gust44、Gα15gust44、及びGα15−i/3−5からなる群より選択されるGαタンパク質を発現又は過剰発現するU2−OS細胞を、甘味料及び試験化合物と接触させるステップ、及び
b)甘味受容体活性を測定するステップ
を含み、前記試験化合物の存在下での甘味受容体活性の変化は、該試験化合物が甘味調節物質であることを示唆する、方法。
【請求項2】
前記U2−OS細胞が、前記甘味受容体を過剰発現するように修飾されている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記U2−OS細胞における細胞内セカンドメッセンジャーのレベルを検出することによって、前記甘味受容体活性を測定する、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記セカンドメッセンジャーが、cAMP、cGMP、NO、CO、又はH2Sである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記セカンドメッセンジャーがジアシルグリセロール(DAG)又はIP3である、請求項3記載の方法。
【請求項6】
前記細胞における細胞内カルシウムのレベルを検出することによって、甘味受容体活性を測定する、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記甘味受容体活性が、前記甘味料に対する前記甘味受容体の結合活性である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記甘味料に対する前記甘味受容体の結合活性の変化を、競合結合アッセイにより検出する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記甘味料に対する前記甘味受容体の結合活性の変化を、表面プラズモン共鳴により検出する、請求項7記載の方法。
【請求項10】
ERK1/2のリン酸化を検出することによって、甘味受容体活性を測定する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記受容体のインターナリゼーションを検出することによって、甘味受容体活性を測定する、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記U2−OS細胞が、Tet−リプレッサータンパク質発現構築物をさらに含む、請求項1〜11いずれか1項記載の方法。
【請求項13】
甘味受容体T1R2/T1R3、及び
Gα16gust25、Gα15gust25、Gα16gust44、Gα15gust44、又はGα15−i/3−5をコードする外因性核酸配列
を含む、単離U2−OS細胞。
【請求項14】
甘味受容体T1R2/T1R3をコードする1つ又は複数の外因性核酸配列、及び
Gα16gust25、Gα15gust25、Gα16gust44、Gα15gust44、又はGα15−i/3−5をコードする外因性核酸配列
を含む、単離U2−OS細胞。
【請求項15】
検出可能な標識をコードする外因性核酸配列をさらに含む、請求項13又は14記載の単離U2−OS細胞。
【請求項16】
前記検出可能な標識がβ−アレスチンGFPである、請求項15記載の単離U2−OS細胞。
【請求項17】
Gα16gust25は配列番号3によりコードされ、Gα15gust25は配列番号5によりコードされ、Gα16gust44は配列番号6によりコードされ、Gα15gust44は配列番号7によりコードされ、及びGα15−i/3−5は配列番号8によりコードされる、請求項1〜12いずれか1項記載の方法。
【請求項18】
Gα16gust25は配列番号3によりコードされ、Gα15gust25は配列番号5によりコードされ、Gα16gust44は配列番号6によりコードされ、Gα15gust44は配列番号7によりコードされ、及びGα15−i/3−5は配列番号8によりコードされる、請求項13〜16いずれか1項記載の単離U2−OS細胞。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本開示に引用した各参照文献は、その全体を本明細書に組み込むものとする。
【0002】
本出願は、2014年5月5日に作成され、「056943.01231sequencelisting.txt」という名称の13.7kbのテキストファイル(本出願の配列表である)を参照により組み込むものとする。
【技術分野】
【0003】
本開示は、概して、甘味受容体調節物質を特定するために使用することができる細胞株及びアッセイに関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、甘味調節物質を特定する方法であって、
a)U2−OS細胞を試験化合物と接触させるステップ、および
b)甘味受容体活性を測定するステップ
を含み、前記試験化合物による甘味受容体活性の変化は、前記試験化合物による甘味受容体の調節を示し、それによって、前記試験化合物を甘味調節物質として特定する。
【0005】
1つの態様において、前記U2−OS細胞は、前記甘味受容体を過剰発現するように修飾される。
【0006】
1つの態様において、前記U2−OS細胞における細胞内セカンドメッセンジャーのレベルを検出することによって、前記甘味受容体活性を測定する。
【0007】
1つの態様において、前記セカンドメッセンジャーは、cAMP、cGMP、NO、CO、又はH2Sである。
【0008】
1つの態様において、前記セカンドメッセンジャーがDAG又はIP3である。
【0009】
1つの態様において、前記細胞における細胞内カルシウムのレベルを検出することによって、甘味受容体活性を測定する。
【0010】
1つの態様において、前記甘味受容体活性は結合活性である。
【0011】
1つの態様において、結合活性の変化を競合結合アッセイにより検出する。
【0012】
1つの態様において、結合活性の変化を表面プラズモン共鳴により検出する。
【0013】
1つの態様において、ERK1/2のリン酸化を検出することによって、甘味受容体活性を測定する。
【0014】
1つの態様において、前記受容体のインターナリゼーションを検出することによって、甘味受容体活性を測定する。
【0015】
1つの態様において、前記U2−OS細胞は、Gα15、Gα16、Gα16gust25、Gα15gust25、Gα16gust44、Gα15gust44、又はGα15−i/3−5をコードする外因性核酸をさらに含む。
【0016】
1つの態様において、前記U2−OS細胞は、Tet−リプレッサータンパク質発現構築物を含む。
【0017】
さらに、本発明は、Gα15、Gα16、Gα16gust25、Gα15gust25、Gα16gust44、Gα15gust44、又はGα15−i/3−5をコードする外因性核酸を含む、単離U2−OS細胞に関する。
【0018】
また、本発明は、甘味受容体をコードする1つ又は複数の外因性核酸を含む、単離U2−OS細胞に関する。
【0019】
さらには、本発明は、検出可能な標識をコードする外因性核酸を含む、単離U2−OS細胞に関する。1つの態様において、前記検出可能な標識はβ−アレスチンGFPである。1つの態様において、単離U2−OS細胞は、検出可能な標識をコードする外因性核酸をさらに含む。1つの態様において、単離U2−OS細胞は、Gα15、Gα16、Gα16gust25、Gα15gust25、Gα16gust44、Gα15gust44、又はGα15−i/3−5をコードする外因性核酸をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】甘味化合物に対するCa
(2+)応答(Ca(
2+) response)である。
図1Aは、T1R3/T1R2/Gα15活性化を含む(ひし形)、及び含まない(三角形)JUMP−IN(商標)T−REX(商標)U2−OSにおけるCa
(2+)放出の用量応答曲線である(n=3実験)。
【
図1B】
図1Bは、JUMP−IN(商標)T−REX(商標)U2−OS細胞におけるCa
(2+)応答に対するラクチソール及びU73122の作用である。
【
図2】100mMスクラロースに対するU2−OS応答に対するGα15タンパク質の応答を示すグラフである。Gタンパク質、ガストデューシン(Gα15)をコードするBacMam(3、6及び12μl/40,000細胞)で、24時間(左側)又は48時間(右側)にわたりU2−OS細胞を一時的にトランスフェクトした。
【
図3】Gα15をコードするBacMam(0又は6μl/40,000細胞)でトランスフェクトしたU2−OS細胞に対する、100mMの天然の糖(グルコース、フルクトース、及びスクロース)の作用を示すグラフである。
【
図4】甘味受容体が、100mMのグルコースでの処理時にU2−OS細胞におけるpERK1/2を活性化することを示すグラフである。ラクチソールによるU2−OS細胞の処理(20mM、左側のバー)は、pERK1/2のD−グルコース媒介活性化を阻止した。
【
図5】Gα15(6μl/40,000細胞)によるU2−OS細胞のトランスフェクションが、pERK1/2活性化を有意に増大すること、また、pERK1/2活性化が、PLCβ2阻害剤U73122(10μM)により阻止されたことを示すグラフである。
【
図6】Gα15(6μl/40,000細胞)でトランスフェクトしたU2−OS細胞におけるD−グルコース及びマルトースによる処理時のpERK1/2活性化を示すグラフである。
【
図7】Gα15(6μl/40,000細胞)でトランスフェクトしたU2−OS細胞における様々な糖による処理時のpERK1/2活性化を示すグラフである。
【
図8A】トランスフルオル(Transfluor)アッセイである。
図8Aは、Gα15をコードするBacMamでトランスフェクトしたトランスフルオルU2−OS細胞における緑色蛍光小胞の形成である。核は、Hoechst33342で青色に対比染色されている。
【
図8B】
図8Bは、トランスフルオルモデルにおけるT1R2/T1R3インターナリゼーションの定量である(平均±SD)。
【
図9A】U2−OS細胞は、内在性甘味受容体T1R2/T1R3を発現する。
図9Aでは、U2−OS細胞を固定し、甘味受容体T1R2及びT1R3に対する抗体により間接免疫蛍光法のために処理した。画像は全て、ImageXpress Micro自動化顕微鏡を用い、20×対物レンズで取得した。Hoechst33342染色は、擬似カラーの青色であり、抗体特異的染色は、擬似カラーの緑色である。
【
図9B】
図9Bは、U2−OS細胞及びNCI−H716細胞におけるT1R2のウエスタンブロットである。細胞をRIPAバッファー(50mMトリス−HCl pH7.5、150mM NaCl、1%NP−40、5mM EDTA、0.1%SDS、及び10μg/mlのプロテイナーゼ阻害剤)で溶解させた。凍結乾燥サイクル後、ローディングバッファーを最終濃度2×で添加し、サンプルを95℃で10分間加熱して、最高速度の微量遠心機により室温で10分間旋回させた。免疫ブロッティングによる分析のために、上清をゲルにロードした。T1R2及びGAPDHの一次抗体は、ThermoFisher製のものであった。
【発明を実施するための形態】
【0021】
T1R2及びT1R3の共発現により、天然及び人工甘味料などの甘味刺激に応答する味覚受容体が生じる。甘味リガンドは、T1R2/T1R3受容体に結合して、受容体インターナリゼーション及び細胞内カルシウム動態化を含むGタンパク質経路形質導入、並びにERK1/2のリン酸化などの下流標的の誘導を活性化する(Jang et al.,“Gut−expressed gustducin and taste receptors regulate secretion of glucagon−like peptide−1,”Proc Natl Acad Sci USA.2007 Sep 18;104(38):15069−74)。
【0022】
機能性味覚受容体を含む、又はそれを含むように操作することができるあらゆる細胞を、開示するアッセイに用いることができる。一部の実施形態では、細胞は、1つ又は複数の甘味受容体を発現する。一部の実施形態では、細胞は、甘味受容体を発現又は過剰発現するように、遺伝子改変されている。例えば、T1R2及びT1R3をコードする外因性核酸又はT1R2及びT1R3をそれぞれコードする2つの個別の外因性核酸を導入することにより、細胞を遺伝子改変することができる。これらのタンパク質のアミノ酸は周知であり、例えば、GenBankアクセッション番号NP_689418.2(T1R2)及びGenBankアクセッション番号NP_689414.1(T1R3)がある。
【0023】
当技術分野では公知の方法を用いて、T2R14、T1R2/T1R3、α−ガストデューシン、及び/又はGLUT4を発現するように、細胞を操作することができる。GLUT4は、中でも、米国特許第7,799,538号明細書及び本明細書に引用する参照文献に記載されている。α−ガストデューシンについての説明は、米国特許第8,338,115号明細書及び本明細書に引用する参照文献並びにAdler et al.,Cell 100,693−702,2000を参照されたい。
【0024】
一部の実施形態では、アッセイの感度を高めるα−ガストデューシン(例えば、Gα16、Gα15、Gα16gust25、Gα15gust25、Gα16gust44、Gα15gust44、Gα15−i/3−5)を過剰発現するように、細胞を遺伝子改変する。配列番号1は、Gα15のアミノ酸配列である。Gα16(配列番号2)、Gα16gust25(配列番号3)、Gα15(配列番号4)、Gα15gust25(配列番号5)、Gα16gust44(配列番号6)、Gα15gust44(配列番号7)、及びGα15−i/3−5(配列番号8)を発現するために用いることができるヌクレオチド配列を、配列表に記載する;しかし、これらを発現するために、α−ガストデューシンをコードする任意のヌクレオチド配列を用いることができる。
【0025】
一部の実施形態では、以下に記載するように、U2−OS細胞を用いる。ヒトU2−OS細胞(ATCCカタログ#HTB−96)は、機能性甘味受容体(
図9A〜B)を発現する。従って、U2−OS細胞を用いて、U2−OS細胞を試験化合物と接触させて、甘味受容体活性を測定することにより、潜在的な甘味物質に対する細胞の応答を検出することができる。各種の機能アッセイを用いることができ、そのようなものとして、細胞内カルシウム濃度(例えば、蛍光イメージングプレートリーダ(Fluorometric Imaging Plate Reader)に基づくCa
2+動態化アッセイ、FLIPR)、pERK1/2活性化(例えば、ハイコンテントイメージング、HCl)、及び受容体インターナリゼーション(例えば、トランスフルオル)の変化の測定がある。試験化合物の存在下での甘味料による甘味受容体
活性の変化は、試験化合物による甘味受容体の調節を示しており、これによって、甘味調節物質(例えば、それ自体が甘味をもたらす分子、苦味の一部又は全部を抑制する分子、別の分子の甘味を増強する分子)であることが認められる。甘味受容体活性の増加は、試験化合物が、甘味調節物質であることを示している。甘味調節物質は、食品、飲料、及び医薬品などの様々な消費物に含有させることができる。
【0026】
開示するアッセイに用いることができる他の細胞としては、限定はしないが、以下のものが挙げられる:1A2,ARH−77、RWPE−1、WI−38,EJM、NCI−H1155、L−1236、NCI−H526、JM1,SHP−77、SNU−878、NCI−H2196、C3A、CA46、SNU−466、KS−1、SNU−738、MOLP−2、HDLM−2、ファイファー(Pfeiffer)、HCC−15、アレキサンダー(Alexander)細胞、L−540、KMS−12−BM、JK−1、NCI−H1092、SW 1990、NCI−H1184、SU−DHL−1、Hep 3B2.1−7、P3HR−1、NCI−H2029、SU−DHL−5、SNU−1、MOLP−8、SUP−M2、MONO−MAC−1、SNU−1040、KYM−1、HEC−59、HCC1569、OCI−LY3、Hs819.T、DU4475、CI−1、S−117、OVCAR−8、SNU−626、HL−60、SUIT−2、T3M−4、RKO、MOR/CPR、DK−MG、GA−10、OCUM−1、HCT−15、HT、MONO−MAC−6、G−402、トレド(Toledo)、COV362、SU−DHL−8、Daoy、NCI−H1435、LS513、Hs839.T、Hs172.T、BT−483、KMS−21BM、AGS、NCI−H2172、LC−1/sq−SF、SNU−201、NUGC−4、SK−HEP−1、SUP−B15、SNU−5、HT−1197、SUP−T1、AMO−1、KU812、AN3CA、AML−193、VMRC−RCW、HLE、HuH28、Hs751.T、NCI−H2110、MEG−01、MV−4−11、HepG2、KYSE−30、KALS−1,BICR6、RMUG−S、JHH−6、Ki−JK、IST−MES1、HCC−95、HPB−ALL、HSC−3,697、LOU−NH91、KARPAS−299、GI−1、COLO792、SK−N−FI、D341Med、HGC−27、SR−786、COLO−818、MHH−CALL−2、SF126、NCI−H322、A−253、NCI−H1623、MCF7、HCC−44、FU97、OCI−LY−19、Hs766T、NCI−H522、RL、HCC1428、RPMI6666、U−937、NCI−H460、SW1088、NCI−H1792、NCI−H1693、UACC−257、JHUEM−2、HuT78、UACC−893、NCI−H929、A−704、OV56、LN−229、OE19、SK−MEL−24、RD−ES、NCI−H211、KCI−MOH1、NCI−H1963、Hs706.T、ChaGo−K−1、EPLC−272H、OPM−2、KHM−1B、A549、HuG1−N、NCI−H508、MHH−CALL−3、SNU−1076、A3/KAW、MEL−HO、TO175.T、Caki−1、Hs936.T、SK−LU−1、WM−983B、K−562、EFE−184、SNU−520、NCI−H2291、HCC−1195、ABC−1、KE−39、NH−6、HCC2218、CMK、RS4;11、KYSE−450、OV7、KYSE−510、SK−UT−1、SNU−C1、OE33、P12−ICHIKAWA、DLD−1、COV434、HuNS1、SNU−899、SW480、COLO−678、LU99、KOPN−8、NCI−H2227、SW1463、Hs675.T、JHH−4、NCI−H1703、HEC−1−A、BDCM、MIA PaCa−2、PC−3、TE−15、PK−45H、MKN−45、HCC−366、CAL−29、HEC−50B、CPC−N、KMRC−20、SW1116、EOL−1、COLO205、EHEB、YD−38、MC116、SK−N−BE(2)、BV−173、NCI−H2347、LU65、RT4、U−87MG、LK−2、KP−N−YN、HEC−251、NCI−H1651、GP2d、RERF−LC−MS、NB−4、NCI−H2286、SNU−61、T−47D、huH−1、KYSE−180、ST486、SW1353、M−07e、KASUMI−1、YH−13、NCI−H28、GAMG、JeKo−1、GOS−3、SNU−324、PA−TU−8902、MFE−280、SNU−245、NALM−1、RERF−LC−Sq1、BICR22、ZR−75−1、COR−L23、SW579、COR−L88、KM12、Hs611.T、OUMS−23、RERF−LC−Ad1、NCI−H1385、SK−LMS−1、COLO−320、BL−70、GRANTA−519、MCAS、Panc08.13、AM−38、KMS−11、SIG−M5、SNU−407、JHOS−2、OVCAR−4、Set−2、OV−90、MeWo、HEL、HT−29、MDA−MB−231、TOV−21G、NCI−H1355、KMS−27、NALM−6、KMS−26、Caov−4、KASUMI−2、UACC−62、U266B1、Hs695T、HT55、BICR31、TCC−PAN2、KMS−20、Hs578T、RI−1、Hs606.T、NCI−H1341、THP−1、BCP−1、Hs737.T、SW1417、MOLT−4、Raji、ESS−1、MEL−JUSO、SH−10−TC、Hs683、ME−1、EB2、PLC/PRF/5、NCI−H1339、A4/Fuk、SEM、HEC−265、IST−MES2、KE−97、NCI−H1437、COLO−704、NCI−H1915、TE−5、NCI−H2023、NCI−H82、T1−73、SNU−840、HuT102、NCI−H1944、KYSE−520、Kasumi−6、1321N1、Hs742.T、IM95、PL45、CL−40、WM1799、KMM−1、SNU−449、JHUEM−1、KARPAS−620、Loucy、SNU−1079、ダウジ(Daudi)、HCC−56、HSC−2、COR−L47、PA−TU−8988S、OAW28、COR−L311、L−363、Malme−3M、NOMO−1、Hs870.T、SU−DHL−10、Hs229.T、NCI−H810、KYSE−410、RPMI−8402、SNU−175、EBC−1、RVH−421、K029AX、PA−TU−8988T、LXF−289、OVSAHO、CAL−12T、Hs940.T、MM1−S、SUP−HD1、LNCaPクローンFGC、HSC−4、NU−DHL−1、NCI−H2228、BEN、CAL−78、Sq−1、NCI−H1793、SNU−C2A、MDA−MB−134−VI、COV318、KE−37、TYK−nu、MOTN−1、T98G、SW837、EB1、ベッカー(Becker)、PE/CA−PJ34(クローンC12)、Hs616.T、NCI−H446、WM−88、CHP−126、Calu−1、SNU−283、NCI−H1573、SW1271、SNU−16、JHOS−4、ACHN、Calu−3、KMRC−1、SW1783、TE−11、TE−9、HuH−6、P31/FUJ、HT−1376、NCI−H520、786−O、KNS−60、Caki−2、OVK18、PL−21、NCI−H2452、JURL−MK1、TEN、JHH−7、MDA−MB−157、Calu−6、RKN、NUGC−2、ONS−76、J82、OUMS−27、SNU−1196、Hs739.T、RPMI−7951、NCI−H854、JHH−5、JVM−2、Hey−A8、5637、KYSE−140、Capan−2、KYSE−150、HEC−1−B、BICR16、HEL92.1.7、MHH−NB−11、SNU−387、SK−OV−3、SK−MEL−28、IGROV1、ML−1、HLF−a、CHL−1、YKG1、A−204、OCI−M1、8505C、JVM−3、NCI−H647、DB、COLO−800、PK−59、FaDu、HLF、OVMANA、EFO−27、PF−382、NCI−H747、LS123、SU−DHL−6、SJRH30、PANC−1、NCI−H2342、KM−H2、DND−41、HH、HuCCT1、F−36P、DMS454、Hs274.T、AU565、NCI−H1666、EN、RH−41、NCI−H1373、NCI−H838、SK−MEL−30、MOLM−6、DEL、NCI−H226、NCI−H1648、NCI−H661、143B、ミノ(Mino)、C32、KMS−34、NCI−H1694、SK−ES−1、UACC−812、GDM−1、NCI−H23、Panc02.03、CCF−STTG1、LOX IMVI、SJSA−1、MDST8、PK−1、NCI−H716、SU−DHL−4、MPP89、MJ、COLO829、PE/CA−PJ15、HD−MY−Z、BxPC−3、WM−793、COLO668、T84、JHOM−1、PEER、LS411N、GMS−10、KMBC−2、RMG−I、KELLY、SNU−761、NALM−19、HEC−151、G−361、OVTOKO、A−498、SW 900、LCLC−103H、FTC−133、QGP−1、Reh、CMK−11−5、NU−DUL−1、BT−20、Hs600.T、Hs604.T、KATOIII、SNU−410、NCI−H2126、SK−MEL−5、MDA−MB−468、AsPC−1、HUP−T3、KP−N−SI9s、L−428、SNU−1105、HUP−T4、769−P、LMSU、NCI−H1869、NCO2、MOLM−16、CAL 27、HCC70、NCI−H1930、COV644、Hs863.T、HCC−2279、D283Med、Hs944.T、HCC1599、MDA−MB−415、HCC2157、NCI−H1618、SNU−308、HCC1954、DMS153、HPAF−II、T24、CJM、VM−CUB1、UM−UC−3、LAMA−84、NCI−H1734、JHH−2、VMRC−RCZ、MFE−319、MDA−MB−453、SNU−503、TOV−112D、B−CPAP、GSU、HCC−78、NCI−H2171、CAMA−1、HEC−108、HCC4006、CAL−85−1、NCI−H2122、COLO−699、NCI−H196、LUDLU−1、SW780、RPMI8226、LP−1、PC−14、HuTu80、T.T、SW948、22Rv1、HARA、NCI−H596、IPC−298、SCaBER、NCI−H1838、NB−1、Hs934.T、Hs895.T、DMS114、KYSE−70、KP−3、KP4、DAN−G、NCI−H2009、OC316、SCC−25、U−138MG、RCC10RGB、MFE−296、NCI−H1755、RERF−LC−KJ、8305C、WSU−DLCL2、ES−2、MSTO−211H、SCC−15、ZR−75−30、PSN1、SNU−423、NCI−H2106、TE−1、UT−7、KMS−28BM、NCI−H2081、SK−MM−2、COLO741、OC314、HCC1395、MOLT−13、LN−18、Panc10.05、PE/CA−PJ41(クローンD2)、Hs746T、CW−2、SKM−1、NUGC−3、TE−10、NCI−H358、NCI−H69、BFTC−909、HOS、BICR18、NCI−H1395、OVKATE、Hs698.T、EFM−19、COLO−783、MHH−CALL−4、ACC−MESO−1、NCI−H1436、KP−N−RT−BM−1、SK−MEL−31、NCI−H1105、CAL−51、YD−15、NCI−H2085、NCI−H2444、HCC1187、Hs939.T、CAL−120、SCC−9、TUHR14TKB、KMRC−2、KG−1−C、ECC10、CGTH−W−1、NCI−H841、C2BBe1、SUP−T11、RCH−ACV、
CADO−ES1、JURKAT、647−V、SK−MEL−2、MDA−MB−175−VII、MKN74、SNU−C4、LCLC−97TM1、SCC−4、BHY、IGR−37、KYO−1、Hs281.T、TT、TUHR4TKB、HT−1080、NCI−H660、TE441.T、LS1034、KNS−42、Panc04.03、HCC1419、AZ−521、SNG−M、NCI−N87、G−292、クローンA141B1、KPL−1、MDA−MB−361、CL−14、NCI−H2170、HuH−7、RD、NCI−H2066、IGR−1、TE−14、VCaP、BL−41、SNU−620、SK−MES−1、MEC−2、NCI−H1299、IGR−39、RT112/84、SF−295、DV−90、A2780、BICR56、NCI−H510、NCI−H2141、YD−8、NCI−H2405、TF−1、MEC−1、CCK−81、NCI−H1048、Hs822.T、NCI−H2052、KO52、CAL−54、Hs840.T、SW620、SK−CO−1、BT−474、CL−11、KNS−62、NCI−H1650、G−401、MOLT−16、SNU−398、COLO−680N、EM−2、Hs294T、CAL−62、KMRC−3、A101D、KG−1、BT−549、HT115、A−375、SW−1710、WM−115、KLE、JHUEM−3、MKN7、CHP−212、HCC202、BC−3C、NCI−H1568、KMS−18、PE/CA−PJ49、COLO−849、SIMA、OCI−AML3、GSS、EC−GI−10、EFO−21、RCM−1、DMS273、KU−19−19、RERF−GC−1B、SH−4、SK−MEL−3、RERF−LC−Ad2、M059K、JHOM−2B、MDA PCa 2b、Hs852.T、RL95−2、Panc03.27、SNU−216、Panc02.13、CFPAC−1、SK−N−SH、OCI−AML2、LoVo、SBC−5、NCI−H1876、NCI−H441、SK−N−AS、COR−L24、HCC38、NCI−H1781、DOHH−2、NCI−H1563、U−251MG、HPAC、JIMT−1、U−2OS、A−673、TC−71、NCI−H650、NIH:OVCAR−3、CAS−1、JL−1、SK−MEL−1、MDA−MB−435S、イシカワ(Ishikawa)(Heraklio)02ER−、TE617.T、SU.86.86、RERF−LC−AI、TT2609−C02、LS180、YAPC、HDQ−P1、KNS−81、FU−OV−1、KP−2、DMS53、SNU−1272、デトロイト(Detroit)562、42−MG−BA、L3.3、COLO−679、NCI−H2087、NCI−H2030、GCT、NCI−H889、Caov−3、MDA−MB−436、NCI−H524、MKN1、KCL−22、Capan−1、CML−T1、H4、NCI−H727、Hs343.T、MHH−ES−1、NMC−G1、HCC−1171、REC−1、Hs618.T、A172、YD−10B、SW48、MUTZ−5、TE−6、JHH−1、HCT116、TE−4、IA−LM、MG−63、NCI−H1975、TALL−1、HCC1806、HMCB、SCLC−21H、HCC1500、CL−34、Panc05.04、SW403、TM−31、HCC1937、JMSU−1、DMS79、SNB−19、NCI−H1836、Li−7、HCC827、639−V、MOLM−13、SK−BR−3、IMR−32、TUHR10TKB、OAW42、SK−N−MC、TGBC11TKB、NCI−H1581、EFM−192A、YMB−1、HCC2935、ECC12、HCC−33、DU145、NCI−H146、SNU−1214、SNU−1077、23132/87、HT−144、SNU−182、Hs888.T、SNU−475、GCIY、Hs729、JHOC−5、SW1573、HEC−6、OCI−AML5、Hs688(A).T、Hs821.T、PCM6、RT−112、SK−N−DZ、SNU−478、SNU−119、HCC1143、NCI−H209、8−MG−BA、COR−L105、COR−L95、SNU−46、COV504、CAL−148、SNU−C5、DBTRG−05MG、BHT−101、WM−266−4、BFTC−905、KYSE−270、TE−8、SNU−213、及びSH−SY5Y。
【0027】
試験化合物
試験化合物は、天然に存在するものでもよく、又は合成により製造することもできる。タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、多糖、小分子、及び無機塩は、本明細書に開示する方法を用いて、スクリーニングすることができる試験化合物の例である。
【0028】
これらのタンパク質をコードする任意の核酸分子を細胞に導入することができる。核酸は、安定して、又は一時的に細胞に導入することができる。外因性核酸は、核酸のコード部分に作動可能に連結したプロモータを含む構築物又はベクターに含まれていてもよい。
【0029】
細胞は、マルチウェルプレート、組織培養皿、フラスコなどの適切な基質上で増殖させることができる;以下の実施例1及び2を参照されたい。
【0030】
スクリーニング方法
一部の実施形態では、甘味調節物質を特定する方法は、細胞を試験化合物と接触させるステップと、甘味受容体活性を測定するステップとを含む。試験化合物による甘味受容体の変化は、試験化合物による甘味受容体の調節を示し、これによって、試験化合物を甘味調節物質として特定する。
【0031】
甘味受容体活性は、当技術分野における任意の標準的手段により、定量的又は定性的に測定することができ、こうした手段として、Gタンパク質共役型受容体活性、細胞中のセカンドメッセンジャーのレベルの変化、ホスファチジルイノシトールのホスホリパーゼC媒介加水分解によるイノシトール三リン酸(IP
3)の形成、細胞質カルシウムイオンレベルの変化、β−アレスチン動員などについてのアッセイが挙げられる。こうしたアッセイの例は、以下の具体的実施例に記載する。
【0032】
また、結合活性を用いて、例えば、競合結合アッセイ又は表面プラズモン共鳴により、味覚受容体活性を測定することもできる。受容体インターナリゼーション及び/又は受容体脱感作現象も、当技術分野で周知のように測定することができる。また、遺伝子転写の受容体依存性活性を測定して、味覚受容体活性を評価することもできる。転写の量は、当業者には公知の任意の方法を用いて測定することができる。例えば、目的とするタンパク質のmRNA発現は、PCR技術、マイクロアレイ又はノーザンブロットを用いて検出することができる。mRNAにより生成されるポリペプチドの量は、細胞中のタンパク質を定量するための当技術分野で標準的な方法、例えば、ウエスタンブロッティング、ELISA、ELISPOT、免疫沈降、免疫蛍光(例えば、FACS)、免疫組織化学、免疫細胞化学など、並びに細胞中のタンパク質、若しくは細胞により生成されるタンパク質を定量するために現時点で知られているか、又は後に開発される他の任意の方法によって決定することができる。
【0033】
また、細胞に対する物理的変化は、例えば、顕微鏡で大きさ、形状、密度、又は味覚受容体活性化により媒介される任意の他の物理的変化を評価することによって、測定することもできる。さらに、フローサイトメトリーを使用して、物理的変化を評価する、及び/又は細胞マーカの存在若しくは非存在を決定することもできる。
【0034】
一部の実施形態では、甘味受容体活性は、細胞における細胞内セカンドメッセンジャー(例えば、cAMP、cGMP、NO、CO、H2S cGMP、DAG、IP3)のレベルを検出することによって測定する。一部の実施形態では、細胞内カルシウムのレベルを検出することによって、甘味受容体活性を測定する。一部の実施形態では、甘味受容体活性は、結合活性である。
【0035】
これらの実施形態のいずれかでは、以下に記載するように、甘味受容体及び/又はGα15を過剰発現するように細胞を修飾することができる。
【0036】
当業者であれば、上に記載した実施形態の多数の変形形態及び変更形態が存在し、これらが、添付の特許請求の範囲に含まれることは理解されよう。
【実施例】
【0037】
実施例1
JUMP−IN(商標)T−REX(商標)U2−OS細胞株及び標的化可能なJUMP−IN(商標)U2−OS細胞株の作製
JUMP−IN(商標)T−REX(商標)U2−OS細胞株の作製。JUMP−IN(商標)U2−OS細胞を、LIPOFECTAMINE(商標)LTX試薬(Life Technologies♯15338−100)を用いて、pLenti TR puroベクターでトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞は、1μgのピューロマイシン(Life Technologies♯A1113803)を用いて選択し、非トランスフェクト親細胞を抗生物質選択陰性対照として用いた。
【0038】
選択したクローンを増殖させ、pJTI(商標)−R4 EXP CMV−TO GFP pAベクター(Life Technologies)で一時的にトランスフェクトした。次に、1μgのドキシサイクリンを用いて、又は用いずに、細胞をtet−抑制及びtet−誘導性について試験した後、Safire IIマイクロプレートリーダを用いて、GFP発現レベルを定量した。
【0039】
84のクローンが、FACS選別後に生存した。各クローンを96ウェルプレートに3回平板培養した。1つのウェルを維持のために使用し、他の2つのウェルは、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするpJTI(商標)R4 EXP CMV−TO pA発現ベクター(Life Technologies)を用いた24時間にわたる一過性トランスフェクションのために使用した。次に、1μgのドキシサイクリンを用いて、又は用いずに、細胞を24時間処理した後、GFP定量を実施した。応答率を次のように計算した。
【0040】
【数1】
【0041】
応答率が2を超える12のJUMP−IN(商標)T−REX(商標)U2−OSクローンをさらに増殖させた。これらのクローンのうちの5つを、R4インテグラーゼ構築物及びpJTI(商標)R4 EXP CMV−TO GFPベクター(誘導性GFP発現をもたらす)で共トランスフェクトした。CMV−GFP構築物(構成性GFP発現をもたらす)及びR4インテグラーゼ構築物で共トランスフェクトした細胞をトランスフェクション及び抗生物質選択の陽性対照として用いた。28日にわたる5μg/mLのブラスチシジンを用いた選択後、pJTI(商標)R4 EXP CMV−TO GFPベクターにより標的化された細胞を、1μg/mLのドキシサイクリンを用いて20時間にわたり誘導した後、FACSにより分析した。
【0042】
標的化可能なJUMP−IN(商標)U2−OS細胞株の作製。標的化可能なJUMP−IN(商標)細胞株を、JUMP−IN(商標)TI(商標)プラットフォームキット(Life Technologies)を用いて操作した。pJI(商標)PhiC31 Intベクターは、pJTI(商標)/ブラスチシジン標的化ベクターを用いて、U2−OS宿主細胞に共トランスフェクトされ、このベクターは、哺乳動物宿主ゲノムにおける擬似ATT部位と相補的なATT部位を含有する。R4ベクター及び宿主ゲノムのATT部位同士の相同性組み換えは、phiC31インテグラーゼにより促進される。pJI(商標)標的化ベクターは、ヒグロマイシン耐性遺伝子を含有するが、これは、安定したゲノム組み込みを含む細胞の選択を可能にする。続いて、これらの細胞をフローサイトメトリーによりクローニングしてから、サザンブロット分析により、宿主細胞ゲノムに存在するR4部位の数を決定するために試験した。
【0043】
確認された単一R4組み込み部位を有するクローンを、pJTI(商標)−R4 EXP CMV−TO−EmGFP−pA及びJTI(商標)R4インテグラーゼベクターでのトランスフェクション、続いて4週間の抗生物質選択により、再標的化について検証した。抗生物質を含まない増殖培地(マッコイ5A(McCoy’s 5A)並びに10%透析ウシ胎児血清、HEPES、非必須アミノ酸、及びピルビン酸ナトリウム)を用い、6ウェルディッシュに60〜80%の密集度でクローンを平板培養し、LIPOFECTAMINE(商標)LTX(6.25μl)及びPLUS(商標)試薬(2.5μl)と一緒に、1:1比のpJTI(商標)−R4 EXP CMV−TO−EmGFP−pA及びJTI(商標)R4インテグラーゼベクター(合計2.5μgのDNA)でトランスフェクトした。これらの細胞に、CMV−GFP陽性対照を同時に導入した。一晩インキュベートした後、増殖培地(マッコイ5A並びに10%透析ウシ胎児血清、HEPES、非必須アミノ酸、ピルビン酸ナトリウム、及びペニシリン/ストレプトマイシン)において,5μg/mLのブラスチシジンで28日にわたり細胞を選択した。28日間の抗生物質選択後、選択されたプールをFACSにより分析した。
【0044】
再標的化効率及び誘導可能性について試験するために、5つのクローンを選択した。全てのクローンは、好適に再標的化された。最良の再標的化効率を有する2つのクローンを、ドキシサイクリンによる誘導可能性についてさらに試験した。1つのクローンは、GFP再標的化対照細胞において、約88%GFP細胞を示し、誘導培養物において、>99%GFP陽性集団と、ドキシサイクリン誘導に非常に良好に応答したが、非誘導培養物では、GFP陽性細胞はわずか約4%であった。他のクローンも、誘導培養物では、>99%GFP陽性細胞で、ドキシサイクリン誘導に良好に応答したが、非誘導培養物では、GFP陽性細胞は約8%に過ぎず;GFP再標的化対照細胞では、64%の細胞がGFP陽性であった。
【0045】
細胞培地。以下の表に、JUMP−IN(商標)T−REX(商標)U2−OS細胞培養(Life Technologies)に用いられる培地の成分を記載する。
【0046】
【表1】
【0047】
実施例2
方法
細胞培養物及び化合物処理。U2−OS細胞を、10%ウシ胎児血清を補充したマッコイ培地に増殖させた。PDLコート384ウェルプレートに、5,000細胞/ウェルの密度で細胞を接種した。
【0048】
BacMamトランスフェクション。Gタンパク質、ガストデューシン(Gα15、Ga16gust44)をコードするBacMam(40,000細胞当たり0.5〜12μl)で、U2−OS細胞を24時間又は48時間にわたり一時的にトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を、PDLコート384ウェルプレートに5,000細胞/ウェルの密度で接種した。
【0049】
機能的発現。JUMP−IN(商標)T−REX(商標)U2−OS細胞をpJTI(商標)R4 EXP−CMV−TO−T1R3/T1R2/Gα15−pA及びJTI(商標)R4インテグラーゼベクター(Life Technologies)でトランスフェクトした。T1R3/T1R2/Gα15のドキシサイクリン誘導発現をRT−PCRにより検出した。
【0050】
pERK1/2アッセイ。pERK1/2試験のために、増殖培地を、血清を含まない培地に2時間取り替えた。U2−OS細胞を、U73122(10μM)を含む、又は含まない、及びラクチソール(20mM)を含む、又は含まない100mM甘味化合物で処理した。対照群の細胞は、培地中のDMSO(0.1%)も受けた。固定した細胞を、Cell Signaling Technologies製のウサギ抗ホスホ−p44/p42 MAPK(pERK1/2)抗体、次に、二次Alexa488結合抗体(Life Technologies)及びHoechst33342で染色した。ImageXpressMicro(MDC)で画像を取得し、MWCS Moduleで解析した。
【0051】
カルシウムアッセイ。Fluo−4AMをロードした細胞中のカルシウム痕跡を、λ
EX=470〜495nm及びλ
EM=515〜575nmのFLIPR
Tetra(MDC)で、時間と共に記録した。ベースラインに対する蛍光のピーク増加を決定し、相対的蛍光単位(RFU)として表した。
【0052】
トランスフルオルモデル。β−アレスチン−GFPを安定して発現するトランスフルオルU2−OS細胞を、味覚Gタンパク質、ガストデューシン(Gα15又はGa16gust44)(Life Technologies)で一時的にトランスフェクトするか、又は甘味受容体T1R2/T1R3及び味覚Gタンパク質で一時的にトランスフェクトした。甘味化合物を用いた細胞の処理により、蛍光小胞の形成が誘導された。MetaXpress Software(MDC)のTransfluor Application Moduleにより、甘味受容体インターナリゼーションを定量した。
【0053】
実施例3
ERK1/2のリン酸化
ERK1/2のリン酸化は、PLCβ2−IP3経路を介したGPCR活性化に続く一般的な下流イベントである。増殖培地を、血清を含まないダルベッコ(Dulbecco)リン酸緩衝食塩水(DPBS)に2時間取り替えた。U2−OS細胞を、20mMのラクチソールを含む、又は含まない100mM D−グルコースで5、15及び30分間処理してから、固定し、抗pERK1/2及びHoechst33342で染色した後、イメージングした。Molecular DevicesのMultiwaves Cell Scoring解析アルゴリズムを用いて、pERK1/2発現を定量した。各データ点について、平均細胞組み込み強度の平均及び標準偏差を4反復データ点から計算する。D−グルコースは、親U2−OS(
図4、左側)及びGα15を過剰発現するU2−OS細胞(
図5、左側)において、時間依存的にpERK1/2活性化を誘導した。重要なことには、pERK1/2活性は、甘味受容体アンタゴニストである、ラクチソール(
図4、右側)又はPLCβ2阻害剤U73122(
図5、右側)により阻止された。
【0054】
実施例4
Gα15の過剰発現
U2−OS細胞におけるGα15の過剰発現は、甘味調節物質に対する応答におけるシグナル伝達を有意に増大する。スクラロースは、Gα15でトランスフェクトしたU2−OS細胞株において、Ca
(2+)応答を濃度依存的に誘導した(
図2)。12μl/40,000細胞でトランスフェクトしたU2−OS細胞において、最高のCa
(2+)応答が認められた(
図2)。6μl/40,000細胞によるU2−OS細胞のトランスフェクションは、グルコース、フルクトース、及びスクロースなどの天然の糖による処理時に、Ca
(2+)応答を有意に高めた(
図3)。さらに、Gα15の過剰発現は、U2−OS細胞において、グルコース、又はマルトースでの処理時にpERK1/2活性を増大した(
図6)。重要なことには、pERK1/2活性化は、PLCβ2阻害剤U73122により阻止された(
図7)。
【0055】
実施例5
Ca
(2+)応答
本発明者らは、単糖及び二糖の両方が、甘味受容体T1R2/T1R3/Gα15のドキシサイクリン誘導性発現と共に、JUMP−IN(商標)T−REX(商標)U2−OS細胞株における濃度依存的Ca
(2+)応答を誘導した。T1R2/T1R3媒介Ca
(2+)放出は、ラクチソールによって阻害された(
図1B)。さらに、U73122は、D−グルコース及びD−フルクトースによる処理時のCa
(2+)放出を消失させ、スクロース及びスクラロースによる刺激後のCa
(2+)応答に何らの作用も及ぼさなかった(
図1B)。
【0056】
以上を考え合わせると、これらのデータは、糖の分子構造とT1R2/T1R3甘味受容体との関係性を示している。
【0057】
実施例6
人工甘味料
人工甘味料、Ace−K、アスパルテーム、及びサッカリンを用いて、いくつかの顕著な観測がなされた。Ace−K及びアスパルテームは、JUMP−IN(商標)T−REX(商標)U2−OS細胞株において、T1R2/T1R3媒介性Ca
(2+)応答を誘導しなかった(
図1A)。サッカリンによる処理時に、T1R2/T1R3非依存的Ca
(2+)が起こったが、これは、人工甘味料、Ace−K、アスパルテーム、及びサッカリンが、まだ特定されていない共通の受容体を標的化することを示している。
【0058】
実施例7
甘味受容体へのβ−アレスチン動員に対する甘味化合物の作用
様々な種類のエビデンスが、GPCRリガンドが、β−アレスチンシグナル伝達経路を選択的に活性化することを示唆した。甘味受容体へのβ−アレスチン動員に対する甘味化合物の作用を評価するために、β−アレスチン再分布に対して高度に感受性であるTransfluor Model(MDC)を使用した。甘味化合物による細胞の処理は、蛍光小胞の形成を誘導したが、これは、エンドソームへのT1R2/T1R3−β−アレスチン複合体のインターナリゼーションを示している(
図8A)。MetaXpress Software(MDC)のTransfluor Application Moduleにより、甘味受容体インターナリゼーションを定量した。D−グルコース、D−フルクトース、及びAce−Kは、甘味受容体インターナリゼーションを増大したのに対し、スクロース、スクラロース、及びアスパルテームは、T1R2/T1R3インターナリゼーションに対して強力な作用を有した(
図8B)。対照的に、サッカリンによる処理時には、最小限のインターナリゼーションすら起らなかった(
図8B)。
他の実施態様
1.甘味調節物質を特定する方法において、
a)U2−OS細胞を試験化合物と接触させるステップ、及び
b)甘味受容体活性を測定するステップ
を含み、前記試験化合物による甘味受容体活性の変化は、前記試験化合物による甘味受容体の調節を示し、それによって、前記試験化合物を甘味調節物質として特定する、方法。
2.前記U2−OS細胞が、前記甘味受容体を過剰発現するように修飾されている、実施態様1記載の方法。
3.前記U2−OS細胞における細胞内セカンドメッセンジャーのレベルを検出することによって、前記甘味受容体活性を測定する、実施態様1記載の方法。
4.前記セカンドメッセンジャーが、cAMP、cGMP、NO、CO、又はH2Sである、実施態様3記載の方法。
5.前記セカンドメッセンジャーがDAG又はIP3である、実施態様3記載の方法。
6.前記細胞における細胞内カルシウムのレベルを検出することによって、甘味受容体活性を測定する、実施態様1記載の方法。
7.前記甘味受容体活性が結合活性である、実施態様1記載の方法。
8.結合活性の変化を競合結合アッセイにより検出する、実施態様7記載の方法。
9.結合活性の変化を表面プラズモン共鳴により検出する、実施態様7記載の方法。
10.ERK1/2のリン酸化を検出することによって、甘味受容体活性を測定する、実施態様1記載の方法。
11.前記受容体のインターナリゼーションを検出することによって、甘味受容体活性を測定する、実施態様1記載の方法。
12.前記U2−OS細胞が、Gα15、Gα16、Gα16gust25、Gα15gust25、Gα16gust44、Gα15gust44、又はGα15−i/3−5をコードする外因性核酸をさらに含む、実施態様1〜11いずれか記載の方法。
13.前記U2−OS細胞が、Tet−リプレッサータンパク質発現構築物を含む、実施態様1〜12いずれか記載の方法。
14.Gα15、Gα16、Gα16gust25、Gα15gust25、Gα16gust44、Gα15gust44、又はGα15−i/3−5をコードする外因性核酸を含む、単離U2−OS細胞。
15.甘味受容体をコードする1つ又は複数の外因性核酸を含む、単離U2−OS細胞。
16.検出可能な標識をコードする外因性核酸を含む、単離U2−OS細胞。
17.前記検出可能な標識がβ−アレスチンGFPである、実施態様16記載の単離U2−OS細胞。
18.検出可能な標識をコードする外因性核酸をさらに含む、実施態様14又は15記載の単離U2−OS細胞。
19.Gα15、Gα16、Gα16gust25、Gα15gust25、Gα16gust44、Gα15gust44、又はGα15−i/3−5をコードする外因性核酸をさらに含む、実施態様14〜16いずれか記載の単離U2−OS細胞。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]