(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
逐次窓取得タンデム質量分析において、前駆体イオン伝送窓を重複させることによって生成される生成イオンスペクトルを逆多重化した後に、欠落生成イオンを識別するためのシステムであって、前記システムは、
タンデム質量分析計であって、前記タンデム質量分析計は、
サイクル毎に、ある質量範囲にわたって前駆体質量窓を段階化し、各段階化された前駆体質量窓の伝送された前駆体イオンを断片化し、前記断片化され、伝送された前駆体イオンから生成された生成イオンを分析することと、
少なくとも2つのサイクルの間で前記段階化された前駆体質量窓をシフトさせ、前記少なくとも2つのサイクルの間で重複する質量窓を生成することと
によって、重複する逐次窓取得をサンプルに対して実施し、
前記重複する逐次窓取得は、前記少なくとも2つのサイクルのサイクル毎に、段階化された前駆体質量窓毎の生成イオンスペクトルを生成する、タンデム質量分析計と、
前記タンデム質量分析計と通信するプロセッサであって、前記プロセッサは、
複数の重複する段階化された前駆体質量窓および前記少なくとも2つのサイクルに関するそれらの対応する生成イオンスペクトルを前記タンデム質量分析計から受信することと、
第1の前駆体質量窓および前記対応する第1の生成イオンスペクトルを前記複数の重複する段階化された前駆体質量窓およびそれらの対応する生成イオンスペクトルから選択することと、
前記第1の前駆体質量窓の重複部分毎に、
(a)前記第1の生成イオンスペクトルと、重複する前駆体質量窓の生成イオンスペクトルとを加算し、合計された生成イオンスペクトルを生成することと、
(b)1回または複数回、前記第1の前駆体質量窓の非重複部分および前記重複する前駆体質量窓と重複する、前記第1の前駆体質量窓および前記重複する前駆体質量窓に隣接する2つまたはそれより多い前駆体質量窓の生成イオンスペクトルを、前記合計された生成イオンスペクトルから減算することと
によって、前記第1の前駆体質量窓の重複部分毎に生成イオンスペクトルを逆多重化し、前記第1の前駆体質量窓に関する2つまたはそれより多い逆多重化された第1の生成イオンスペクトルを生成することと、
前記2つまたはそれより多い逆多重化された第1の生成イオンスペクトルをともに加算し、再構成され、合計され、逆多重化された第1の生成イオンスペクトルを生成することと、
前記合計され、逆多重化された第1の生成イオンスペクトルと、前記第1の生成イオンスペクトルとを比較することによって、前記合計され、逆多重化された第1の生成イオンスペクトル内の欠落生成イオンを識別することと
を行う、プロセッサと、
を備える、システム。
前記合計され、逆多重化された第1の生成イオンスペクトルと、前記第1の生成イオンスペクトルとを比較することは、前記合計され、逆多重化された第1の生成イオンスペクトルを前記第1の生成イオンスペクトルから減算することを含む、請求項1に記載のシステム。
前記プロセッサはさらに、前記識別された欠落生成イオンのうちの1つまたは複数の欠落生成イオンを前記2つまたはそれより多い逆多重化された第1の生成イオンスペクトルのうちの1つまたは複数の生成イオンスペクトルに加算し直し、前記1つまたは複数の生成イオンスペクトルのデータ品質を改善する、請求項1〜2のいずれか一項に記載のシステム。
前記プロセッサはさらに、各段階化された前駆体質量窓の形状に基づいて、形状重みづけを、前記複数の重複する段階化された前駆体質量窓のうちの各段階化された前駆体質量窓に対応する各生成イオンスペクトルに適用する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシステム。
前記プロセッサはさらに、請求項1の前記逆多重化するステップのうちのステップ(a)および(b)において、前記第1の生成イオンスペクトル、重複する前駆体質量窓の前記生成イオンスペクトル、ならびに前記第1の前駆体質量窓の非重複部分および前記重複する前駆体質量と重複する、前記第1の前駆体質量窓および前記重複する前駆体質量窓に隣接する2つまたはそれより多い前駆体質量窓の生成イオンスペクトルに割り当てられた形状重みづけを使用する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシステム。
前記プロセッサはさらに、前記複数の重複する段階化された前駆体質量窓のうちの段階化された前駆体質量窓毎に、前記タンデム質量分析計から前駆体スペクトルを受信し、任意の前駆体イオンが各段階化された前駆体質量窓に存在するかどうかに基づいて、前駆体イオン重みづけを、前記複数の重複する段階化された前駆体質量窓のうちの各段階化された前駆体質量窓に対応する各生成イオンスペクトルに適用する、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシステム。
前記プロセッサはさらに、請求項1の前記逆多重化するステップのうちのステップ(a)および(b)において、前記第1の生成イオンスペクトル、重複する前駆体質量窓の前記生成イオンスペクトル、ならびに前記第1の前駆体質量窓の非重複部分および前記重複する前駆体質量と重複する、前記第1の前駆体質量窓および前記重複する前駆体質量窓に隣接する2つまたはそれより多い前駆体質量窓の生成イオンスペクトルに割り当てられた前駆体イオン重みづけを使用する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のシステム。
逐次窓取得タンデム質量分析において、前駆体イオン伝送窓を重複させることによって生成される生成イオンスペクトルを逆多重化した後に、欠落生成イオンを識別するための方法であって、前記方法は、
サイクル毎に、ある質量範囲にわたって前駆体質量窓を段階化し、各段階化された前駆体質量窓の伝送された前駆体イオンを断片化し、前記断片化され、伝送された前駆体イオンから生成された生成イオンを分析することと、
少なくとも2つのサイクルの間で前記段階化された前駆体質量窓をシフトさせ、前記少なくとも2つのサイクルの間で重複する質量窓を生成することと
によって、タンデム質量分析計を使用して、重複する逐次窓取得をサンプルに実施することであって、前記重複する逐次窓取得は、前記少なくとも2つのサイクルのサイクル毎に、段階化された前駆体質量窓毎の生成イオンスペクトルを生成する、ことと、
プロセッサを使用して、複数の重複する段階化された前駆体質量窓および前記少なくとも2つのサイクルに関するそれらの対応する生成イオンスペクトルを前記タンデム質量分析計から受信することと、
前記プロセッサを使用して、第1の前駆体質量窓および前記対応する第1の生成イオンスペクトルを前記複数の重複する段階化された前駆体質量窓およびそれらの対応する生成イオンスペクトルから選択することと、
前記第1の前駆体質量窓の重複部分毎に、
(a)前記第1の生成イオンスペクトルと、重複する前駆体質量窓の生成イオンスペクトルとを加算し、合計された生成イオンスペクトルを生成することと、
(b)1回または複数回、前記第1の前駆体質量窓の非重複部分および前記重複する前駆体質量窓と重複する、前記第1の前駆体質量窓および前記重複する前駆体質量窓に隣接する2つまたはそれより多い前駆体質量窓の生成イオンスペクトルを、前記合計された生成イオンスペクトルから減算することと
によって、前記プロセッサを使用して、前記第1の前駆体質量窓の重複部分毎に生成イオンスペクトルを逆多重化し、前記第1の前駆体質量窓に関する2つまたはそれより多い逆多重化された第1の生成イオンスペクトルを生成することと、
前記プロセッサを使用して、前記2つまたはそれより多い逆多重化された第1の生成イオンスペクトルをともに加算し、再構成され、合計され、逆多重化された第1の生成イオンスペクトルを生成することと、
前記プロセッサを使用して、前記合計され、逆多重化された第1の生成イオンスペクトルと、前記第1の生成イオンスペクトルとを比較することによって、前記合計され、逆多重化された第1の生成イオンスペクトル中で欠落生成イオンを識別することと、
を含む、方法。
前記合計され、逆多重化された第1の生成イオンスペクトルと、前記第1の生成イオンスペクトルとを比較することは、前記合計され、逆多重化された第1の生成イオンスペクトルを前記第1の生成イオンスペクトルから減算することを含む、請求項8に記載の方法。
前記プロセッサはさらに、前記識別された欠落生成イオンのうちの1つまたは複数の欠落生成イオンを前記2つまたはそれより多い逆多重化された第1の生成イオンスペクトルのうちの1つまたは複数の生成イオンスペクトルに加算し直し、前記1つまたは複数の生成イオンスペクトルのデータ品質を改善する、請求項8〜9のいずれか一項に記載の方法。
前記プロセッサはさらに、各段階化された前駆体質量窓の形状に基づいて、形状重みづけを、前記複数の重複する段階化された前駆体質量窓のうちの各段階化された前駆体質量窓に対応する各生成イオンスペクトルに適用する、請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。
前記プロセッサはさらに、請求項8の前記逆多重化するステップのうちのステップ(a)および(b)において、前記第1の生成イオンスペクトル、重複する前駆体質量窓の前記生成イオンスペクトル、ならびに前記第1の前駆体質量窓の非重複部分および前記重複する前駆体質量と重複する、前記第1の前駆体質量窓および前記重複する前駆体質量窓に隣接する2つまたはそれより多い前駆体質量窓の生成イオンスペクトルに割り当てられた形状重みづけを使用する、請求項8〜11のいずれか一項に記載の方法。
前記プロセッサはさらに、任意の前駆体イオンが各段階化された前駆体質量窓に存在するかどうかに基づいて、前記複数の重複する段階化された前駆体質量窓のうちの段階化された前駆体質量窓毎に、前記タンデム質量分析計から前駆体スペクトルを受信し、前駆体イオン重みづけを、前記複数の重複する段階化された前駆体質量窓のうちの各段階化された前駆体質量窓に対応する各生成イオンスペクトルに適用する、請求項8〜12のいずれか一項に記載の方法。
前記プロセッサはさらに、請求項8の前記逆多重化するステップのうちのステップ(a)および(b)において、前記第1の生成イオンスペクトル、重複する前駆体質量窓の前記生成イオンスペクトル、ならびに前記第1の前駆体質量窓の非重複部分および前記重複する前駆体質量と重複する、前記第1の前駆体質量窓および前記重複する前駆体質量窓に隣接する2つまたはそれより多い前駆体質量窓の生成イオンスペクトルに割り当てられた前駆体イオン重みづけを使用する、請求項8〜13のいずれか一項に記載の方法。
有形コンピュータ可読記憶媒体を含む、コンピュータプログラム製品であって、前記有形コンピュータ可読記憶媒体のコンテンツは、逐次窓取得タンデム質量分析において、前駆体イオン伝送窓を重複させることによって生成される生成イオンスペクトルを逆多重化した後に、欠落生成イオンを識別するための方法を実施するように、プロセッサ上で実行される命令を伴うプログラムを含み、前記方法は、
システムを提供することであって、前記システムは、1つまたは複数の個別のソフトウェアモジュールを含み、前記個別のソフトウェアモジュールは、測定モジュールおよび分析モジュールを含む、ことと、
複数の重複する段階化された前駆体質量窓および少なくとも2つのサイクルに関するそれらの対応する生成イオンスペクトルをタンデム質量分析計から受信することであって、前記タンデム質量分析計は、
サイクル毎に、ある質量範囲にわたって前駆体質量窓を段階化し、各段階化された前駆体質量窓の伝送された前駆体イオンを断片化し、前記断片化され、伝送された前駆体イオンから生成された生成イオンを分析することと、
少なくとも2つのサイクルの間で前記段階化された前駆体質量窓をシフトさせ、前記少なくとも2つのサイクルの間で重複する質量窓を生成することと
によって、前記測定モジュールを使用して、重複する逐次窓取得をサンプルに対して実施し、前記重複する逐次窓取得は、前記少なくとも2つのサイクルのサイクル毎に、段階化された前駆体質量窓毎の生成イオンスペクトルを生成する、ことと、
前記分析モジュールを使用して、第1の前駆体質量窓および前記対応する第1の生成イオンスペクトルを前記複数の重複する段階化された前駆体質量窓およびそれらの対応する生成イオンスペクトルから選択することと、
前記第1の前駆体質量窓の重複部分毎に、
(a)前記第1の生成イオンスペクトルと、重複する前駆体質量窓の生成イオンスペクトルとを加算し、合計された生成イオンスペクトルを生成することと、
(b)1回または複数回、前記第1の前駆体質量窓の非重複部分および前記重複する前駆体質量窓と重複する、前記第1の前駆体質量窓および重複する前駆体質量窓に隣接する2つまたはそれより多い前駆体質量窓の生成イオンスペクトルを、前記合計された生成イオンスペクトルから減算することと
によって、前記分析モジュールを使用して、前記第1の前駆体質量窓の重複部分毎に生成イオンスペクトルを逆多重化し、前記第1の前駆体質量窓に関する2つまたはそれより多い逆多重化された第1の生成イオンスペクトルを生成することと、
前記分析モジュールを使用して、前記2つまたはそれより多い逆多重化された第1の生成イオンスペクトルをともに加算し、再構成され、合計され、逆多重化された第1の生成イオンスペクトルを生成することと、
前記分析モジュールを使用して、前記合計され、逆多重化された第1の生成イオンスペクトルと、前記第1の生成イオンスペクトルとを比較することによって、前記合計され、逆多重化された第1の生成イオンスペクトル中の欠落生成イオンを識別することと、
を含む、コンピュータプログラム製品。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の1つまたはそれを上回る実施形態を詳細に説明する前に、当業者は、本発明が、その適用において、以下の発明を実施するための形態に記載される、構造、構成要素の配列、およびステップの配列の詳細に制限されないことを理解するであろう。本発明は、他の実施形態も可能であって、種々の方法で実践または実行されることも可能である。また、本明細書で使用される表現および専門用語は、説明の目的のためであって、制限として見なされるべきではないことを理解されたい。
(コンピュータ実装システム)
【0023】
図1は、本教示の実施形態が実装され得る、コンピュータシステム100を図示するブロック図である。コンピュータシステム100はまた、情報を通信するためのバス102または他の通信機構と、情報を処理するためにバス102と結合されたプロセッサ104とを含む。コンピュータシステム100は、プロセッサ104によって実行される命令を記憶するために、バス102に結合されるランダムアクセスメモリ(RAM)または他の動的記憶デバイスであり得るメモリ106も含む。メモリ106は、プロセッサ104によって実行される命令の実行の間、一時的変数または他の中間情報を記憶するためにも使用され得る。コンピュータシステム100は、プロセッサ104のための静的情報および命令を記憶するために、バス102に結合された読取専用メモリ(ROM)108または他の静的記憶デバイスをさらに含む。磁気ディスクまたは光ディスク等の記憶デバイス110は、情報および命令を記憶するために提供され、バス102に結合される。
【0024】
コンピュータシステム100は、情報をコンピュータユーザに表示するために、バス102を介して、ブラウン管(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD)等のディスプレイ112に結合され得る。英数字および他のキーを含む入力デバイス114は、情報およびコマンド選択をプロセッサ104に通信するために、バス102に結合される。別のタイプのユーザ入力デバイスは、方向情報およびコマンド選択をプロセッサ104に通信し、ディスプレイ112上のカーソル移動を制御するためのマウス、トラックボール、またはカーソル方向キー等のカーソル制御116である。本入力デバイスは、典型的には、デバイスが平面において位置を指定することを可能にする2つの軸、すなわち、第1の軸(すなわち、x)および第2の軸(すなわち、y)において、2自由度を有する。
【0025】
コンピュータシステム100は、本教示を実施することができる。本教示のある実装によると、結果は、メモリ106内に含まれる1つまたはそれを上回る命令の1つまたはそれを上回るシーケンスをプロセッサ104が実行することに応答して、コンピュータシステム100によって提供される。そのような命令は、記憶デバイス110等の別のコンピュータ可読媒体から、メモリ106内に読み込まれ得る。メモリ106内に含まれる命令のシーケンスの実行は、プロセッサ104に、本明細書に説明されるプロセスを行わせる。代替として、有線回路が、本教示を実装するためのソフトウェア命令の代わりに、またはそれと組み合わせて、使用され得る。したがって、本教示の実装は、ハードウェア回路およびソフトウェアの任意の具体的組み合わせに制限されない。
【0026】
種々の実施形態では、コンピュータシステム100は、ネットワークシステムを形成するために、ネットワークを横断して、コンピュータシステム100のような1つまたはそれを上回る他のコンピュータシステムに接続されることができる。ネットワークは、インターネット等のプライベートネットワークまたはパブリックネットワークを含むことができる。ネットワークシステムでは、1つまたはそれを上回るコンピュータシステムは、データを記憶し、それを他のコンピュータシステムに提供することができる。データを記憶かつ提供する、1つまたはそれを上回るコンピュータシステムは、クラウド算出シナリオにおいて、サーバまたはクラウドと称されることができる。1つまたはそれを上回るコンピュータシステムは、例えば、1つまたはそれを上回るウェブサーバを含むことができる。サーバまたはクラウドにデータを送信し、かつそこからデータを受信する、他のコンピュータシステムは、例えば、クライアントまたはクラウドデバイスと称されることができる。
【0027】
用語「コンピュータ可読媒体」は、本明細書で使用される場合、実行のために、命令をプロセッサ104に提供する際に関与する任意の媒体を指す。そのような媒体は、不揮発性媒体、揮発性媒体、および伝送媒体を含むが、それらに制限されない、多くの形態をとり得る。不揮発性媒体は、例えば、記憶デバイス110等の光学または磁気ディスクを含む。揮発性媒体は、メモリ106等の動的メモリを含む。伝送媒体は、バス102を備えている配線を含む、同軸ケーブル、銅線、および光ファイバを含む。
【0028】
コンピュータ可読媒体またはコンピュータプログラム製品の一般的形態として、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、または任意の他の磁気媒体、CD?ROM、デジタルビデオディスク(DVD)、ブルーレイディスク、任意の他の光学媒体、サムドライブ、メモリカード、RAM、PROM、およびEPROM、フラッシュ?EPROM、任意の他のメモリチップまたはカートリッジ、あるいはコンピュータが読み取ることができる、任意の他の有形媒体が挙げられる。
【0029】
種々の形態のコンピュータ可読媒体が、実行のために、1つまたはそれを上回る命令の1つまたはそれを上回るシーケンスをプロセッサ104に搬送する際に関わり得る。例えば、命令は、最初に、遠隔コンピュータの磁気ディスク上で行われてもよい。遠隔コンピュータは、命令をその動的メモリにロードし、モデムを使用して電話回線を経由して命令を送信することができる。コンピュータシステム100にローカルなモデムは、データを電話回転上で受信し、赤外線送信機を使用して、データを赤外線信号に変換することができる。バス102に結合される赤外線検出器は、赤外線信号で運ばれるデータを受信し、データをバス102上に置くことができる。バス102は、メモリ106にデータを運ぶことができる、そこからプロセッサ104は、命令を読み出し、実行する。メモリ106から受信される命令は、随意に、プロセッサ104による実行前または後のいずれかで、記憶デバイス110上に記憶されることができる。
【0030】
種々の実施形態によると、方法を実施するためにプロセッサによって実行されるように構成される命令は、コンピュータ可読媒体上に記憶される。コンピュータ可読媒体は、デジタル情報を記憶するデバイスであることができる。例えば、コンピュータ可読媒体は、ソフトウェアを記憶するために、当技術分野において周知のように、コンパクトディスク読取専用メモリ(CD?ROM)を含む。コンピュータ可読媒体は、実行されるように構成される命令を実行するために好適なプロセッサによってアクセスされる。
【0031】
本教示の種々の実装の以下の説明は、例証および説明の目的のために提示されている。これは、包括的でもなく、本教示を開示される精密な形態に制限するものでもない。修正および変形例が、前述の教示に照らして可能である、または本教示の実践から取得され得る。加えて、説明される実装は、ソフトウェアを含むが、本教示は、ハードウェアおよびソフトウェアの組み合わせとして、またはハードウェア単独において、実装され得る。本教示は、オブジェクト指向および非オブジェクト指向両方のプログラミングシステムによって実装され得る。
(重複SWATH実験における欠落生成イオンを識別するためのシステムおよび方法)
【0032】
前述のように、逐次窓取得(SWATH
TMは、データを取得するために、重複取得窓を使用することができる。より狭い窓が、信号を逆多重化することによって、取得データから抽出されることができる。信号を逆多重化またはデコンボリューションすることは、重複関連走査をともに加算することと、隣接サイクルからの無関係の走査を減算し、ここで、元の取得よりもより狭いQ1窓からの断片を含有するSWATH
TM査を得ることとを含む。この技術のデータ品質に影響を及ぼす1つの潜在的な問題は、類似する化合物が隣接窓内にあるとき、結果として生じる断片が、両方(全て)の逆多重化された窓から減算されることである。
【0033】
図2は、種々の実施形態による、類似する化合物が隣接窓内にある、逐次窓取得実験における重複する前駆体イオン伝送窓200を示す例示図である。類似する化合物210および化合物220は、18Daだけ分離されている。化合物220は、例えば、水イオンの供給源内損失のみだけ、化合物210と異なる。
【0034】
図2は、重複SWATH
TM実験の2つのサイクルを示す。両サイクルでは、前駆体イオン伝送窓は、25Da幅である。サイクル2では、伝送窓は、12.5Daだけシフトされ、2つのサイクルのそれぞれにおける窓の間に12.5Daの重複をもたらす。この重複は、12.5Da幅である有効窓への信号の逆多重化を可能にする。
【0035】
例えば、サイクル1における窓215の12.5Da部211およびサイクル2における窓224の12.5Da部222の重複は、有効12.5Daの前駆体イオン伝送窓に逆多重化されることができる。本質的に、この12.5窓を逆多重化することは、窓224および窓215を加算することと、次いで、窓214および窓225を合計から減算することを含む。強いピークの測定変動から余剰信号を防止するために、窓214および窓225からの寄与を合計から2回以上減算することが一般的である。
【0036】
しかしながら、前述のように、この技術に関する問題は、類似する化合物が隣接窓内にあるとき、結果として生じる断片は、両方(全て)の逆多重化された窓から減算されることである。
図2は、例えば、隣接窓224および225に化合物210および類似する化合物220を含む。
【0037】
図3は、種々の実施形態による、
図2の前駆体イオン伝送窓214、215、224、および225に対応する生成イオンスペクトル300の逆多重化を示す例示図である。生成イオンスペクトル315は、
図2の前駆体イオン伝送窓215から生成され、生成イオンスペクトル324は、
図2の前駆体イオン伝送窓224から生成される。逆多重化は、重複関連走査をともに加算することによって開始する。
図3の生成イオンスペクトル315および生成イオンスペクトル324は、加算される。生成イオンスペクトル315と生成イオンスペクトル324との両方は、
図2の前駆体イオン220の断片化から生成された生成イオンを含む。
【0038】
図3の生成イオンスペクトル330は、生成イオンスペクトル315および生成イオンスペクトル324の合計である。生成イオンスペクトル330は、生成イオンスペクトル315および生成イオンスペクトル324の共通生成イオンの強度が、本質的に2倍であることを示す。しかしながら、生成イオンスペクトル315および生成イオンスペクトル324によって共有されない他の生成イオン(図示せず)は、2倍にされない。
【0039】
次の逆多重化ステップでは、隣接サイクルからの無関係の走査が、合計された生成イオンスペクトルから減算される。より具体的には、
図2に示される、サイクル1における窓215の12.5Da部212内の前駆体イオンから生成される生成イオン、およびサイクル2における窓224の12.5Da部221内の生成イオンからの寄与を除去するために、それぞれ、
図2の無関係かつ重複する前駆体窓225および214内の前駆体イオンから生成された生成イオンは、
図3の合計されたスペクトル330から減算される。前述のように、強いピークの測定変動から残った余剰信号を防止するために、窓214および窓225から生成された生成イオンを合計から2回以上減算することが一般的である。
【0040】
生成イオンスペクトル314は、
図2の前駆体イオン伝送窓214から生成され、生成イオンスペクトル325は、
図2の前駆体イオン伝送窓225から生成される。
図3では、生成イオンスペクトル314は、合計された生成イオンスペクトル330から2回減算され、生成イオンスペクトル340を生成する。生成イオン314が、合計された生成イオンスペクトル330と共通する任意のイオンを含有しないため、生成イオンスペクトル340は、依然として、化合物220の生成イオンを含む。
【0041】
生成イオンスペクトル325は、次いで、生成イオンスペクトル340から2回減算され、生成イオンスペクトル350を生成する。しかしながら、生成イオンスペクトル325は、
図2の化合物210の断片化から生成された生成イオンを含む。
図2の化合物220および化合物210が類似する化合物であるため、その断片化パターンは、ほぼ同一である。言い換えれば、
図3の生成イオンスペクトル325に示される生成イオンは、生成イオンスペクトル340に示される共通イオンとほぼ同一である。結果として、生成イオンスペクトル340から2回の生成イオンスペクトル325の減算は、
図2の化合物220の生成イオンを、結果として得られた逆多重化された生成イオンスペクトル350から効果的に除去する。
【0042】
同様に、
図2の化合物210の生成イオンは、
図2に示される、サイクル2における窓225の12.5Da部227内の前駆体イオンから、かつ
図2に示される、サイクル1における窓216の12.5Da部217内の前駆体イオンから生成された、逆多重化された12.5Da窓から除去される。したがって、重複窓の減算は、全ての逆多重化された窓からの隣接窓内の類似する化合物から生成された断片の損失をもたらす。
【0043】
図3の生成イオンスペクトル315、324、330、340、314、350、および325は、これらの生成イオンが逆多重化することによってどのように影響を受け得るかをより明確に示すために、
図2の化合物210および化合物220から生成された生成イオンのみを描写する。しかしながら、当業者は、
図3の生成イオンスペクトル315、324、330、340、314、350、および325が他の生成イオンを含み得ることを認識することができる。同様に、
図2の前駆体イオン伝送窓215、216、224、および225は、これらの前駆体イオンが逆多重化することによってどのように影響を受け得るかをより明確に示すために、化合物210および化合物220に関する前駆体イオンのみを描写する。しかしながら、当業者は、
図2の伝送窓215、216、224、および225が他の前駆体イオンを含み得ることを認識することができる。
【0044】
また、前述のように、データ品質に影響を及ぼす別の問題は、逆多重化が正方形Q1伝送窓を仮定することであり、そしてそれは、断片がこのQ1窓を横断して等しく広がる化合物の結果であると仮定する。ことである。
【0045】
より高速、かつより高感度の器具が、より狭いSWATH
TM窓を直接取得することができる。しかしながら、より高速、かつより高感度の器具と組み合わせられた逆多重化も、したがって、依然として、データ品質に影響を及ぼす同一の問題を有する、さらにより狭い窓を達成し得る。
【0046】
種々の実施形態では、方法およびシステムは、重複する取得窓の逆多重化の後に、データ品質の改善を提供する。
【0047】
種々の実施形態では、信号が逆多重化された後に、方法およびシステムは、隣接された逆多重化窓をともに合計することによって、元の取得窓を再構成する。例えば、12.5Da部211および12.5Da部212に関する逆多重化された生成イオンスペクトルが、前駆体イオン伝送窓215に関する元の生成イオンスペクトル(
図3の315)を試み、かつ再構成するために、ともに加算されることができる。しかしながら、共有された断片(
図2の220)は、この再構成されたスペクトルから欠落しているであろう。
【0048】
種々の実施形態では、方法およびシステムは、再構成されたスペクトルを元の取得されたスペクトルと比較すること(2つの減算)によって、欠落イオンを識別する。例えば、12.5Da部211および生成イオンスペクトル12.5Da部212に関する生成イオンスペクトルの合計は、前駆体イオン伝送窓215に関する元の生成イオンスペクトル(
図3の315)と比較される。任意の欠落信号は、したがって、その窓に関する断片化スペクトルのより正確な代表値を達成するために、逆多重化された窓に加算し直されることができる。
【0049】
種々の実施形態では、方法およびシステムはまた、伝送窓の形状または前駆体信号の不在に基づいて、スペクトルの重みづけを提供する。上記に留意されるように、逆多重化は、正方形伝送窓を仮定し、しかも、断片が、この窓を横断して等しく広がる化合物の結果であると仮定するが、これは、真実ではない。種々の実施形態では、伝送窓の実際の形状は、結果として生じるスペクトルを重みづけるために使用されてもよい。このスペクトルが逆多重化のために使用されるとき(加算または減算のいずれかために)、その値は、このスペクトル中の検出された断片が、逆多重化することによって、増強させられることを試みる領域にどれくらい関連する可能性が高いかに基づいて、重みづけられ得る。
【0050】
同様に、完全走査飛行時間型質量分析(TOFMSまたはMS1)実験は、任意の前駆体イオンが着目領域内に存在するかどうかを判定するために使用されてもよい(逆多重化するために、スペクトルの加算または減算のために使用される)。Q1領域のこのTOFMS証拠に基づいて、スペクトルは、逆多重化の使用のために異なって重みづけられてもよい。
【0051】
種々の実施形態では、欠落イオンは、処理されたバージョンを用いて、AB Sciex TripleTOF(登録商標)およびQTRAP(登録商標)器具(WIFF)ファイル等の専有ファイルを書き直すためのPeakView(登録商標)プラグインを使用して、逆多重化した後に、識別される。代替として、欠落イオンは、取得の間、逆多重化した後に、識別されることができる。
【0052】
種々の実施形態では、方法およびシステムは、逆多重化を使用して、潜在的な欠点を解決し、より狭い窓を達成し、高分解能器具に利点をもたらす。
【0053】
種々の実施形態では、方法およびシステムは、質量スペクトロメータ器具顧客が、より良好な特異性を伴う(例えば、より狭いQ1窓)、高品質MS/MSスペクトルを取得することを可能にする。
(逆多重化後に欠落生成イオンを識別するためのシステム)
【0054】
図4は、種々の実施形態による、逐次窓取得タンデム質量分析において、前駆体イオン伝送窓を重複させることによって生成される生成イオンスペクトルを逆多重化した後に、欠落生成イオンを識別するためのシステム400を示す、概略図である。システム400は、タンデム質量分析計410およびプロセッサ420を含む。種々の実施形態では、システム400はまた、分離デバイス430を含むことができる。
【0055】
タンデム質量分析計410は、1つまたはそれを上回る物理的な質量フィルタと、1つまたはそれを上回る物理的質量分析器とを含むことができる。タンデム質量分析計の質量分析器として、飛行時間(TOF)、四重極、イオントラップ、線形イオントラップ、オービトラップ、またはフーリエ変換質量分析器が挙げられ得るが、それらに限定されない。
【0056】
タンデム質量分析計410は、重複する逐次窓取得をサンプルに対して実施する。サイクル毎に、タンデム質量分析計410は、ある質量範囲にわたって前駆体質量窓を段階化し、各段階化された前駆体質量窓の伝送された前駆体イオンを断片化し、断片化され、伝送された前駆体イオンから生成された生成イオンを分析する。少なくとも2つのサイクルの間で、タンデム質量分析計410は、段階化された前駆体質量窓をシフトさせ、少なくとも2つのサイクルの間で重複する質量窓を生成する。重複する逐次窓取得は、少なくとも2つのサイクルのサイクル毎に、段階化された前駆体質量窓毎の生成イオンスペクトルを生成する。
【0057】
プロセッサ420は、限定ではないが、コンピュータ、マイクロプロセッサ、または質量スペクトロメータ410および処理データから制御信号およびデータを送信かつ受信することが可能である任意のデバイスであることができる。プロセッサ420は、タンデム質量分析計410と通信する。
【0058】
プロセッサ420は、複数の重複する段階化された前駆体質量窓および少なくとも2つのサイクルに関するそれの対応する生成イオンスペクトルをタンデム質量分析計410から受信する。プロセッサ420は、第1の前駆体質量窓および対応する第1の生成イオンスペクトルを複数の重複する段階化された前駆体質量窓およびそれらの対応する生成イオンスペクトルから選択する。プロセッサ420は、第1の前駆体質量窓の重複部分毎に生成イオンスペクトルを逆多重化し、第1の前駆体質量窓に関する2つまたはそれを上回る逆多重化された第1の生成イオンスペクトルを生成する。
【0059】
例えば、第1の前駆体質量窓の重複部分毎に、プロセッサ420は、(a)第1の生成イオンスペクトルと、重複する前駆体質量窓の生成イオンスペクトルとを加算し、合計された生成イオンスペクトルを生成し、(b)1回またはそれを上回る回数、第1の前駆体質量窓の非重複部分および重複する前駆体質量
窓と重複する、第1の前駆体質量窓および重複する前駆体質量窓に隣接する2つまたはそれを上回る前駆体質量窓の生成イオンスペクトルを、合計された生成イオンスペクトルから減算する。
【0060】
プロセッサ420は、2つまたはそれを上回る逆多重化された第1の生成イオンスペクトルをともに加算し、再構成され、合計された、逆多重化第1の生成イオンスペクトルを生成する。
【0061】
最後に、プロセッサ420は、合計され、逆多重化された第1の生成イオンスペクトルと、第1の生成イオンスペクトルとを比較することによって、合計され、逆多重化された第1の生成イオンスペクトル内で、欠落生成イオンを識別する。
【0062】
種々の実施形態では、プロセッサ420は、合計され、逆多重化された第1の生成イオンスペクトルを第1の生成イオンスペクトルから減算することによって、合計され、逆多重化された第1の生成イオンスペクトル、および第1の生成イオンスペクトルを比較する。
【0063】
種々の実施形態では、プロセッサ420はさらに、識別された欠落生成イオンのうちの1つまたはそれを上回る欠落の生成イオンを2つまたはそれを上回る逆多重化される第1の生成イオンスペクトルのうちの1つまたはそれを上回る生成イオンスペクトルに加算し直し、1つまたはそれを上回る生成イオンスペクトルのデータ品質を改善する。
【0064】
種々の実施形態では、プロセッサ420はさらに、各段階化された前駆体質量窓の形状に基づいて、形状重みづけを、複数の重複する段階化された前駆体質量窓のうちの各段階化された前駆体質量窓に対応する各生成イオンスペクトルに適用する。
【0065】
種々の実施形態では、プロセッサ420はさらに、前述のような、逆多重化ステップのうちのステップ(a)および(b)において、第1の生成イオンスペクトル、重複する前駆体質量窓の生成イオンスペクトル、および第1の前駆体質量窓の非重複部分および重複する前駆体質量と重複する、第1の前駆体質量窓および重複する前駆体質量窓に隣接する2つまたはそれを上回る前駆体質量窓の生成イオンスペクトルに割り当てられた形状重みづけを使用する。
【0066】
種々の実施形態では、プロセッサ420はさらに、複数の重複する段階化された前駆体質量窓のうちの段階化された前駆体質量窓毎に、タンデム質量分析計から前駆体スペクトルを受信し、任意の前駆体イオンが各段階化された前駆体質量窓に存在するかどうかに基づいて、前駆体イオン重みづけを複数の重複する段階化された前駆体質量窓のうちの各段階化された前駆体質量窓に対応する各生成イオンスペクトルに適用する。
【0067】
種々の実施形態では、プロセッサ420はさらに、前述のような、逆多重化ステップのうちのステップ(a)および(b)において、第1の生成イオンスペクトル、重複する前駆体質量窓の生成イオンスペクトル、および第1の前駆体質量窓の非重複部分および重複する前駆体質量と重複する、第1の前駆体質量窓および重複する前駆体質量窓に隣接する2つまたはそれを上回る前駆体質量窓の生成イオンスペクトルに割り当てられた前駆体イオン重みづけを使用する。
【0068】
タンデム質量分析計410はまた、分離デバイス430を含むことができる。分離デバイス430は、液体クロマトグラフィ、ガスクロマトグラフィ、キャピラリー電気泳動、またはイオン移動度を含むが、それらに限定されない、分離技法を実施することができる。タンデム質量分析計410は、それぞれ、空間または時間において、別個の質量分析段階またはステップを含むことができる。分離デバイス430は、例えば、サンプルを混合物から分離する。種々の実施形態では、分離デバイス430は、液体クロマトグラフィデバイスを備え、段階化された前駆体質量窓毎の生成イオンスペクトルは、液体クロマトグラフィ(LC)サイクル時間内に取得される。
(逆多重化後に欠落生成イオンを識別するための方法)
【0069】
図5は、種々の実施形態による、逐次窓取得タンデム質量分析において、前駆体イオン伝送窓を重複させることによって生成される生成イオンスペクトルを逆多重化した後に、欠落生成イオンを識別するための方法500を示す、例示的流れ図である。
【0070】
方法500のステップ510では、重複する逐次窓取得が、タンデム質量分析計を使用して、サンプルに対して実施される。サイクル毎に、タンデム質量分析計は、ある質量範囲にわたって前駆体質量窓を段階化し、各段階化された前駆体質量窓の伝送された前駆体イオンを断片化し、断片化され、伝送された前駆体イオンから生成された生成イオンを分析する。少なくとも2つのサイクルの間で、タンデム質量分析計は、段階化された前駆体質量窓をシフトさせ、少なくとも2つのサイクルの間で重複する質量窓を生成する。重複する逐次窓取得は、少なくとも2つのサイクルのサイクル毎に、段階化された前駆体質量窓毎の生成イオンスペクトルを生成する。
【0071】
ステップ520では、複数の重複する段階化された前駆体質量窓およびそれらの対応する生成イオンスペクトルが、プロセッサを使用して、タンデム質量分析計から少なくとも2つのサイクルに関して受信される。
【0072】
ステップ530では、第1の前駆体質量窓および対応する第1の生成イオンスペクトルが、プロセッサを使用して、複数の重複する段階化された前駆体質量窓およびそれらの対応する生成イオンスペクトルから選択される。
【0073】
ステップ540では、生成イオンスペクトルが、プロセッサを使用して、第1の前駆体質量窓の重複部分毎に逆多重化され、第1の前駆体質量窓に関する2つまたはそれを上回る逆多重化された第1の生成イオンスペクトルを生成する。例えば、第1の生成イオンスペクトルおよび重複する前駆体質量窓の生成イオンスペクトルは、加算され、合計された生成イオンスペクトルを生成する。次いで、第1の前駆体質量窓の非重複部分および重複する前駆体質量と重複する、第1の前駆体質量窓および重複する前駆体質量窓に隣接する2つまたはそれを上回る前駆体質量窓の生成イオンスペクトルは、1回またはそれを上回る回数、合計された生成イオンスペクトルから減算される。強いピークの測定変動からの残った余剰信号を防止するために、これらの生成イオンスペクトルを合計から2回以上減算することが一般的である。
【0074】
ステップ550では、2つまたはそれを上回る逆多重化される第1の生成イオンスペクトルは、プロセッサを使用して、ともに加算され、再構成され、合計され、逆多重化された第1の生成イオンスペクトルを生成する。
【0075】
ステップ560では、欠落生成イオンは、プロセッサを使用して、合計され、逆多重化された第1の生成イオンスペクトルと、第1の生成イオンスペクトルとを比較することによって、合計され、逆多重化された第1の生成イオンスペクトル内で識別される。
(逆多重化した後に、欠落生成イオンを識別するためのコンピュータプログラム製品)
【0076】
種々の実施形態では、コンピュータプログラム製品は、有形コンピュータ可読記憶媒体を含み、そのコンテンツは、逐次窓取得タンデム質量分析において、前駆体イオン伝送窓を重複させることによって生成される生成イオンスペクトルを逆多重化した後に、欠落生成イオンを識別するための方法を実施するよう、プロセッサ上で実行される命令を伴うプログラムを含む。本方法は、1つまたはそれを上回る個別のソフトウェアモジュールを含むシステムによって行われる。
【0077】
図6は、種々の実施形態による、逐次窓取得タンデム質量分析において、前駆体イオン伝送窓を重複させることによって生成される生成イオンスペクトルを逆多重化した後に、欠落生成イオンを識別するための方法を実施する、1つまたはそれを上回る個別のソフトウェアモジュールを含む、システム600の概略図である。システム600は、測定モジュール610および分析モジュール620を含む。
【0078】
測定モジュール610は、複数の重複する段階化された前駆体質量窓および少なくとも2つのサイクルに関するそれらの対応する生成イオンスペクトルをタンデム質量分析計から受信する。タンデム質量分析計は、重複する逐次窓取得をサンプルに対して実施する。サイクル毎に、タンデム質量分析計は、ある質量範囲にわたって前駆体質量窓を段階化し、各段階化された前駆体質量窓の伝送された前駆体イオンを断片化し、断片化され、伝送された前駆体イオンから生成された生成イオンを分析する。少なくとも2つのサイクルの間で、タンデム質量分析計は、段階化された前駆体質量窓をシフトさせ、少なくとも2つのサイクルの間で重複する質量窓を生成する。重複する逐次窓取得は、少なくとも2つのサイクルのサイクル毎に、段階化された前駆体質量窓毎の生成イオンスペクトルを生成する。
【0079】
分析モジュール620は、第1の前駆体質量窓および対応する第1の生成イオンスペクトルを複数の重複する段階化された前駆体質量窓およびその対応する生成イオンスペクトルから選択する。
【0080】
分析モジュール620は、第1の前駆体質量窓の重複部分毎に生成イオンスペクトルを逆多重化し、第1の前駆体質量窓に関する2つまたはそれを上回る逆多重化された第1の生成イオンスペクトルを生成する。例えば、第1の生成イオンスペクトルおよび重複する前駆体質量窓の生成イオンスペクトルは、加算され、合計された生成イオンスペクトルを生成する。次いで、第1の前駆体質量窓の非重複部分および重複する前駆体質量と重複する、第1の前駆体質量窓および重複する前駆体質量窓に隣接する2つまたはそれを上回る前駆体質量窓の生成イオンスペクトルは、1回またはそれを上回る回数、合計された生成イオンスペクトルから減算される。強いピークの測定変動から残される余剰信号を防止するために、これらの生成イオンスペクトルを合計から2回以上減算することが一般的である。
【0081】
分析モジュール620は、2つまたはそれを上回る逆多重化された第1の生成イオンスペクトルをともに加算し、再構成され、合計され、逆多重化された第1の生成イオンスペクトルを生成する。分析モジュール620は、合計され、逆多重化された第1の生成イオンスペクトルと、第1の生成イオンスペクトルとを比較することによって、合計され、逆多重化された第1の生成イオンスペクトル内に欠落生成イオンを識別する。
(データ実施例)
【0082】
データ取得の各サイクルの間、全ての可能性として考えられる質量分析/質量分析(MS/MS)断片を取得する能力は、ペプチド定量化能力を根本的に変化させる。事前情報が要求されないため、データ取得は、著しく簡略化される。データ処理の間、ペプチドおよびタンパク質が研究されるその特殊性は、任意のデータを再取得する必要性を伴わずに、随時、変化される可能性がある。逐次窓取得(SWATH
TM)の場合、取得技術は、高分解能飛行時間(TOF)型分析と組み合わせられた広Q1単離を利用し、単位分解能選択反応モニタリング(SRM)に匹敵する選択性を提供する。SWATH
TMは、単離幅とサイクル時間(すなわち、液体クロマトグラフィ(LC)ピークを横断する点)との間のトレードオフである。
【0083】
重複SWATH
TMの使用は、サイクル時間を改善し、SWATH
TMサイズを減少させることができる。SWATH
TM、例証目的のために本明細書に説明される。当業者は、他のタイプの質量分析技術も、等しく適用され得ることを認識するであろう。
【0084】
取得窓幅は、選択性およびサイクル時間に影響を及ぼす。より幅広い窓は、選択性がより少ないが、より高速なサイクル時間を提供する。狭い窓は、選択性がよりたかいが、より長いサイクル時間を費やす。取得窓を重複させることによって、どの断片がどの前駆体質量範囲に属したかを抽出することが可能である。
【0085】
実験では、最初の実験は、カゼインペプチド消化物の混合物を注入することによって、実施された。675−700質量/電荷(m/z)前駆体を網羅するSWATH
TM窓は、692m/zにおける優勢ペプチドならびに684m/zにおけるより小さい強度のペプチドを含んでいた。結果として生じるスペクトルは、主として、主要692ペプチドからの断片を有する。同一の混合物が、再度、取得されたが、今回は、各サイクル5Da(第1のサイクルにおける675−700Da、第2のサイクルにおける680−705Da等)だけシフトされたSWATH
TM窓を伴った。このデータは、例えば、等式システムを使用してデコンボリューションされ、着目領域を増強した。684m/zペプチド断片化パターンは、692m/zペプチドと容易に区別され、5Da窓に近い分解能を実証した。上記の実施例は、例証目的のために説明される。当業者は、異なるm/z前駆体および分解能の異なる窓も、等しく使用されることができることを認識するであろう。
【0086】
別の実験では、類似する取得および処理戦略が、ナノLCによって分離されたE.coli.消化物に適用された。この実験では、25Da窓は、約8Da窓にデコンボリューションされ、類似するm/zの同時溶出ペプチドについて別個のMS/MSが生じた。抽出されたイオンクロマトグラム(XIC)は、デコンボリューションされたより狭いSWATH
TM窓の改善された選択性、信号/ノイズ(S/N)比、および匹敵するサイクル時間を実証した。この実験では、大規模なペプチド検出方法論が、適用され、1000を超えるペプチド標的およびペプチドあたり複数の断片イオンを利用した。偽発見率分析は、有意により多くのペプチドが、より狭い窓を生成するために重複する窓のデコンボリューションを使用することによって検出されたことを実証した。
【0087】
さらに別の実験では、同一の技術が、小分子化合物の検出に適用された。この実験では、化合物3,4−メチレンジオキシ−N−メチルアンフェタミン(MDMA)および3,4−メチレンジオキシ−N−エチルアンフェタミン(MDEA)は、14Daだけ分離されている。従来のSWATH
TM取得は、両化合物が同一の窓内で検出される結果をもたらし、滞留時間を識別のための重要な基準にした。デコンボリューションデータは、2つの化合物を個々の窓に分離し、各XICの1つのみの有意なクロマトグラフのピークを生成した。
【0088】
種々の実施形態では、方法およびシステムは、重複窓を使用し、MS/MSデータを見掛け上より狭いQ1窓から生成し、ペプチドおよび小分子検出に関する定性かつ定量特性に及ぼすより狭い窓の影響を測定する。
【0089】
種々の実施形態では、データが、例えば、後続のSWATH
TM窓の間の重複の制御を可能にする、Analyst TF 1.6の研究バージョンを使用して収集されている。Analyst TF 1.6は、例証目的のために本明細書に記載される。当業者は、他のソフトウェアツールも、等しく使用されることができることを認識するであろう。
【0090】
種々の実施形態では、ペプチド消化物サンプルは、例えば、200nl.min−1の流速において、Eksigent NanoLC
TM2D Plusシステムに注入し、かつそれから溶出される。材料の溶出のために使用される勾配は、注入されたサンプルの複雑性に依存する。Eksigent NanoLC
TM2D Plusシステムは、例証目的のために本明細書に記載される。当業者は、他の分離デバイスも、等しく使用されることができることを認識するであろう。
【0091】
種々の実施形態では、小分子サンプルが、例えば、5分間にわたって、90%の移動相A(水分/アセトニトリル(95/5(v/v))+0.1%ギ酸)から80%のB(水分/アセトニトリル(5/95(v/v))+0.1%ギ酸)までの勾配を使用する、例えば、400uL/分で動作されるShimadzu Prominence UFLCシステムを使用して、分析される。カラムオーブンは、例えば、40℃で動作される。Phenomenex(Torrance, CA)製Luna Kinetex C18(2×50mm、2.6u)カラムは、例えば、10uLの注入量で使用される。Shimadzu Prominence UFLCシステムおよび動作条件は、例証目的のために本明細書に記載される。当業者は、他の分析システムおよび動作条件も、等しく使用されることができることを認識するであろう。
【0092】
種々の実施形態では、データは、例えば、狭窓の再構成を実施する研究プラグインを伴うPeakView
TM1.2ソフトウェアを使用して、処理される。PeakView
TM1.2ソフトウェアは、例証目的のために本明細書に記載される。当業者は、他のソフトウェアツールも、等しく使用されることができることを認識するであろう。
(実験結果)
【0093】
図7は、種々の実施形態による、重複SWATH
TM窓のデコンボリューションを示す、例示的プロット700を例証する。
【0094】
通常のSWATH
TM取得の間、全質量範囲は、中程度に広いQ1単離窓で網羅される。各サイクルでは、同一の窓が取得される。窓毎の蓄積時間のサイズは、LCピークにわたって適切な数の点を測定するために適切な時間で所望の質量範囲をカバーするために選ばれる。
【0095】
種々の実施形態では、重複SWATH
TM取得を用いた場合、同一のサイズ窓が、各サイクルでは取得される。しかしながら、各サイクルは、窓の位置にシフトを導入する。窓の半分のシフトの実施例が、
図7に示される。
【0096】
種々の実施形態では、重複領域からのスペクトルは、各デコンボリューションされた窓からのスペクトルデータが別個の実験において保存されるデータファイルを作成するために使用される。
【0097】
図8は、種々の実施形態による、カゼイン消化物混合物の注入からの実施例を示す、例示的プロット800を例証する。
【0098】
図8を参照すると、25Daの通常のSWATH
TMが、692m/zペプチドからの断片化によって支配される。684m/zペプチドからの断片が、存在するが、確認することが困難である。重複SWATH
TM取得のデコンボリューションの後に、5Da窓(680−685Da)は、692m/zペプチドから全ての干渉を除去した。残りの断片化パターンは、IDA実験から取得されたスペクトルと事実上同一であるように見える。
【0099】
図9は、種々の実施形態による、E,coli.タンパク質消化物のLC分離から実施例を示す、例示的プロット900を例証する。
【0100】
複合混合物のLC分離の間、25Da SWATH
TM内に溶出する、複数のペプチドを有することは、非常に一般的である。
図9に示されるように、8Daのサイズのデコンボリューション窓が、2つの同時溶出ペプチドに関するMS/MSを分離することが可能であった。
【0101】
図10は、種々の実施形態による、複数の断片のXICを示す、例示的プロット1000を例証する。
【0102】
25Da SWATH
TM窓を用いた場合、いくつかの顕著な断片イオンに関するXICが、2つの同時溶出ペプチドの混合物を示す。XICプロファイルを使用して、どの断片がどのペプチドに属するかを判定することが可能である。しかしながら、このステップは、データが重複SWATH
TM窓を使用して取得されたときは、必ずしも必要ではない。より狭い窓は、単一のペプチドからの断片イオンのみを含有していた。
【0103】
図11は、種々の実施形態による、より狭いデコンボリューション窓からのS/N比改善を示す、例示的プロット1100を例証する。
【0104】
図11に示されるように、いくつかのペプチドに関するXICが、S/N比に関して比較される。全ての場合において、S/N比は、データが、重複窓を用いて取得され、そしてより狭い窓にデコンボリューションされるとき、改善される。
【0105】
図12は、種々の実施形態による、同等のサイクル時間が、LCピークを横断して十分にすぎる点を可能にすることを示す、例示的プロット1200を例証する。
【0106】
LCピークを横断して適切な数の点が取得され得るように、短いサイクル時間を維持することが重要である。通常のSWATH
TM取得に関する窓サイズを減少させることは、サイクル時間を増加させ、そして定量化のためにに容認できないレベルに対するLCピークを横断する点の数を減少させる。
【0107】
種々の実施形態では、重複窓を使用することによって、サイクル時間は、通常のSWATH
TMと同一であるが、データは、より狭い窓にデコンボリューションされることができる。より狭い窓の利点が、良好なサイクル時間を維持しながら、取得されることができる。
【0108】
図13は、種々の実施形態による、定量化の改善を示す、例示的プロット1300を例証する。
【0109】
図14は、種々の実施形態による、小分子の検出を示す、例示的プロット1400を例証する。
【0110】
迅速なLC分離は、3秒未満の幅のピークを容易に生成することができる。
全ての化合物を監視するためにSWATH
TMを使用することが、多くの場合、関連の化合物をカバーする窓を要求し、これは、非常に類似する断片化パターンを有する。これらの化合物の信頼性のある識別は、滞留時間に対する慎重な注意を要求するであろう。
【0111】
種々の実施形態では、重複窓を用いた場合、データは、より狭い窓にデコンボリューションされ、化合物のより容易な識別を可能にすることができる。
(結論)
【0112】
要するに、方法およびシステムは、重複取得窓の逆多重化の後に、データ品質の改善を提供する。具体的には、重複窓は、デューティサイクルにおける損失を伴わずに、より狭い窓へのデコンボリューションを可能にし、そしてより狭い窓は、MS/MS品質および定量特性を改善する。
【0113】
本教示は、種々の実施形態と併せて説明されているが、本教示が、そのような実施形態に制限されることを意図するものではない。対照的に、本教示は、当業者によって理解されるように、種々の代替、修正、および均等物を包含する。
【0114】
さらに、種々の実施形態の説明において、本明細書は、ステップの特定のシーケンスとして、方法および/またはプロセスを提示し得る。しかしながら、方法またはプロセスが本明細書に記載されるステップの特定の順序に依拠しない程度において、方法またはプロセスは、説明されるステップの特定のシーケンスに制限されるべきではない。当業者が理解するであろうように、ステップの他のシーケンスも可能であり得る。したがって、本明細書に記載されるステップの特定の順序は、請求項に関する制限として解釈されるべきでない。加えて、方法および/またはプロセスを対象とする請求項は、そのステップの実施を書かれた順序に制限されるべきではなく、当業者は、シーケンスが、変動され得、依然として、種々の実施形態の精神および範囲内にあることを容易に理解することができる。