(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367323
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】予想され得る後続衝突を回避するための、若しくは衝突の事故結果を低減させるための方法および装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20180723BHJP
B60T 7/22 20060101ALI20180723BHJP
B60T 8/00 20060101ALI20180723BHJP
B60R 21/00 20060101ALI20180723BHJP
B60W 30/09 20120101ALI20180723BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60T7/22
B60T8/00 Z
B60R21/00 991
B60W30/09
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-520325(P2016-520325)
(86)(22)【出願日】2014年5月15日
(65)【公表番号】特表2016-524246(P2016-524246A)
(43)【公表日】2016年8月12日
(86)【国際出願番号】EP2014059924
(87)【国際公開番号】WO2014202289
(87)【国際公開日】20141224
【審査請求日】2015年12月18日
(31)【優先権主張番号】102013211651.9
(32)【優先日】2013年6月20日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】アイゼレ ズィービレ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルヘルム ウルフ
【審査官】
高田 元樹
(56)【参考文献】
【文献】
特表2010−525975(JP,A)
【文献】
特開2006−142904(JP,A)
【文献】
特開2007−232516(JP,A)
【文献】
特開2003−127702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00−99/00
B60R 21/00
B60T 7/22
B60T 8/00
B60W 30/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(15)と別の道路使用者との最初の衝突発生後に、ブレーキモデルに従った車両セーフティーシステム(1)によって自動ブレーキ係合が解放されることによって、予想され得る後続衝突を回避するための、若しくは衝突の事故結果を低減させるための方法において、
固有の走行特性から車両データを算出し、算出された前記車両データを記憶装置(10)に一時記憶し、一時記憶された前記車両データから、その時点に走行中の道路カテゴリー(14)を推測し、決定された前記道路カテゴリー(14)に依存して仮想の後続車両との特徴的な間隔を示す初期間隔(d0)を決定し、ブレーキの解放条件を、前記初期間隔(d0)を用いて算出することを特徴とする、予想され得る後続衝突を回避するための、若しくは衝突の事故結果を低減させるための方法。
【請求項2】
記憶された前記車両データを、それぞれの前記道路カテゴリーのための記録されたパターンと比較することによって、その時点に走行中の前記道路カテゴリー(14)を記憶された前記車両データから決定することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記道路カテゴリー(14)として、市街地走行(S06)、郊外走行(S07)、および高速道路走行(S08)のカテゴリーのうちの少なくとも1つが設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記道路カテゴリー(14)が、その時点に走行中の道路が対面交通を有しているかまたは対面交通を有していないかを、追加的に決定することを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記道路カテゴリー(14)のための記録されたパターンを、発見的に算出された前記車両データから決定することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
その時点に走行中の前記道路カテゴリー(14)を決定するために、ナビゲーションシステムのカード情報(S09)を追加的に使用することを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記車両データが、
前記車両の固有速度(V1)、
前記車両の車両加速度若しくは車両減速度(a)、
加速頻度若しくは減速頻度、
ギヤシフト操作の頻度、
ステアリング作動の頻度、および
ステアリング切れ角の大きさ、
のうちの少なくとも1つ、
から成っていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記車両データに追加して、周囲センサシステム(7)のデータを算出し、かつ処理し、前記周囲センサシステム(7)が、別の道路使用者(16)の間隔(d)および/または相対速度(Vrel)を算出し、かつ提供することを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記車両データを環状記憶装置(10)に記憶することを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記記憶装置(10)の記録速度が、瞬間的に決定された前記道路カテゴリー(14)に依存して可変であることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
予想され得る後続衝突を回避するための、若しくは衝突の事故結果を低減させるための装置であって、該装置が、車両(15)と別の道路使用者との最初の衝突を検知することができ、最初の衝突発生後に、ブレーキモデルに従って自動的に、前記装置(1)によって減速装置(13)が解放される形式の装置において、
前記装置(1)に、車両センサ(3,4,5,6,7)から車両データが供給され、供給された前記車両データが前記装置(1)の記憶装置(10)に一時記憶され、一時記憶された前記車両データから処理装置(9)によって、その時点に走行中の道路カテゴリー(14)が推測され、決定された前記道路カテゴリー(14)に依存して、前記装置に記憶された仮想の後続車両との特徴的な間隔を示す初期間隔(d0)が読み取られ、前記装置が、前記初期間隔(d0)を用いて、前記減速装置(13)の解放条件を算出し、かつ前記減速装置(13)にアウトプットすることを特徴とする、予想され得る後続衝突を回避するための、若しくは衝突の事故結果を低減させるための装置。
【請求項12】
前記装置に周囲センサシステム(7)のデータが供給され、前記周囲センサシステム(7)が、別の道路使用者(16)の間隔(d)および/または相対速度(Vrel)を算出し、かつ提供することを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予想され得る後続衝突を回避するための、若しくは衝突の事故結果を低減させるための方法および装置に関するものであって、この方法および装置において、固有の走行特性から車両データが算出され、算出された車両データが記憶装置に一時記憶され、一時記憶された前記車両データから、その時点に走行中の道路カテゴリーが推測され、決定された道路カテゴリーに依存して初期間隔が決定され、ブレーキの解放条件が、前記初期間隔を用いて算出されることによって、車両と別の道路使用者との最初の衝突発生後に、ブレーキモデルに従った車両セーフティーシステムによって自動ブレーキ係合が解放される。
【背景技術】
【0002】
特許文献1によれば、車両セーフティーシステムによる自動ブレーキ係合の作動後に、追突事故を回避するための方法が公知である。この場合、仮想車両の接近のためのモデルが使用されることによって、予想され得る、後続車両による追突事故の危険性および程度が著しく低減され得る。このモデルの枠内で、ブレーキ解放のための条件が算出され、この条件が発生したときにブレーキが少なくとも部分的に解放される。この場合、ブレーキ解放のための時点が決定され、このために、特に最初の間隔および、仮想後続車両の理論的な仮想特性が仮定される。この場合、先行車両のブレーキのための解放条件は、自車に対する後続車両の仮定された初期間隔に特に依存しており、後続車両の初期間隔は、例えば「halber Tacho(半分の速度)」という経験則または自己速度の任意の数倍から得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第102007019991号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明の核心は、車両と別の道路使用者との最初の衝突発生後に、ブレーキモデルに従った車両セーフティーシステムによって自動ブレーキ係合が解放されることによって、予想され得る後続衝突を回避するための、若しくは衝突の事故結果を低減させるための方法および装置に関するものである。衝突状況の検知の際に車両減速が自動的に作動され、場合によっては実行される自動非常ブレーキシステムは、市場において常に広く普及している。この場合、非常ブレーキの作動後に自動的な減速が停止状態まで継続されるのではなく、決定された解放条件が存在すると、車両ブレーキが再び解放されることによって、衝突危険性若しくは予想され得る衝突程度は、自車のためにもまた後続交通のためにも、さらに低減され得る。本発明によれば、必ずしも周囲センサシステムを必要としない車両において、解放条件が、特徴的な運動を有する仮想の後続車両から得られるブレーキモデルに基づいて演算されることによって、衝突危険性若しくは衝突程度は、さらに低減され得る。このモデルをさらに改良するために、自車に対する仮想の後続車両の初期間隔は、自動車両ブレーキの作動時に可変に形成されていて、その時点に走行中の道路カテゴリーの形式に適合され得る。本発明によれば、このことは、独立請求項の特徴によって解決される。
【0005】
好適な実施例および実施態様は、従属請求項に記載されている。
【0006】
この場合、その時点の瞬間的な固有の走行特性から、記憶装置に一時記憶される車両データを算出することができる。これらの一時記憶された車両データから、これらの車両データにより決定された道路カテゴリーに依存して、自動ブレーキの作動時点における仮想の後続車両の特徴的な間隔を示す初期間隔が決定されることによって、その時点に走行中の道路のカテゴリーを推測することができる。この初期間隔をその時点に走行中の道路カテゴリーに適合させることによって、さらに、最初の衝突発生後のブレーキの解放条件が、前記適合された初期間隔を用いて決定され、これによって、後続車両との衝突危険性若しくは衝突程度は低減され得る。
【0007】
道路カテゴリーの概念は、本発明の枠内で、その時点に走行中の道路の型式および構造上の状態のことである。従って、道路カテゴリーが、例えばアウトバーンであるか、幹線道路であるか、または村落内の市街地走行であるかを推測することができ、それによってその時点に走行中の道路の種類に関する非常に正確な仮定が得られる。さらに、対面交通が存在するかどうか、例えば両進行方向がグリーンベルトおよび/またはガードレールによって分離されたアウトバーンにおいてそうであるように、対面交通が構造的に分離された車道上に存在しているかどうかについてまで、道路カテゴリーを追加的にまたは選択的に決定することも可能である。
【0008】
本発明の好適な変化実施例によれば、記憶された走行データがそれぞれの道路カテゴリーのための記録されたパターンと比較されることによって、記憶された走行データから、その時点に走行中の道路カテゴリーが決定される。また、好適には、車両の走行データは、車両固有のセンサによって決定される単数または複数の以下の値から成っているとよい。つまり車両の走行データとは、特に自車の固有速度であり、自車の車両加速度若しくは車両減速度であり、所定の経過時間内または所定の走行距離内の加速頻度若しくは減速頻度であり、また、ギヤシフト頻度が検出され、さらにステアリング作動の頻度が検出され、追加的にまたは選択的にステアリング切れ角の大きさが検出され得る。単数または複数の前記値を検出することによって、その時点に走行中の道路カテゴリー、例えばアウトバーン、郊外道路または市街地走行、若しくは対面交通を有する道路または対面交通なしの道路が推測され、それによって、車両周囲の別の道路使用者の走行特性も推測することができる。
【0009】
また好適な形式で、典型的な道路カテゴリーを走行し、それに関連した車両データが集められ、その結果から、道路カテゴリーを決定することができるパターンが導き出されることによって、その時点に走行中の道路カテゴリーを決定するための、記録されたパターンが発見的に算出される。さらに、その時点に走行中の道路カテゴリーを決定するために、ナビゲーションシステムのカード情報を追加的に使用することができる。ナビゲーションシステムは今日では車両に非常に広く普及しており、このような形式のシステムは瞬間的な位置の決定を可能にする受信器を有しており、また記憶されたカード情報を介して、自車の瞬間的な位置を決定することができる。瞬間的な位置を知ることによって、およびその時点に走行中の道路の種類に関するカードデータの情報によって、ナビゲーションシステムによる道路カテゴリーの決定が追加的に妥当化され得る。さらに、ナビゲーションシステムによるその時点に走行中の道路カテゴリーの決定に基づいて、道路カテゴリーのための、記憶装置に記録されたパターンを、時間の経過につれてさらに個別化および/または改良することも考えられる。
【0010】
車両固有のセンサによって集められた走行データは、所定の継続時間に亘って、若しくは所定の走行距離に亘って車両に記憶され、この記憶された走行データを、記録されたパターンと比較することができる。この車両データの記憶は、好適な形式で環状記憶装置によって行われ、この環状記憶装置内に、検出された車両データが連続的に書き込まれ、記憶装置が完全に一杯になると、最も古いデータが新しいデータによって上書きされる。これによって、好適には、記憶装置内にファイルされたデータを測定ウインドに割り当てることができる。この測定ウインドは、所定の継続時間または所定の走行距離を表していて、常に最新のデータを含んでいる。
【0011】
また、車両データ、例えば固有速度、車両加速度、加速頻度、ギヤシフト頻度、ステアリング作動の頻度および/またはステアリング切れ角の大きさが、書き込まれかつ記憶される記憶装置の記録速度が可変に構成されていれば、好適である。この場合、記録速度の変化、つまりデータが記憶される、時間単位当たりの頻度は、瞬間的に決定される道路カテゴリーに依存して変えることができる。これによって、車両データの迅速な変化が行われない走行状況においては、車両データはあまり頻繁に記録されなくてよく、若しくは、通り過ぎた道路カテゴリーに基づいて典型的な形式で得られる、迅速に変化する走行状況においては、より頻繁な記録速度が提供されてよい。さらに、挙げられた車両データのうちの幾つかだけが、瞬間的に決定された道路カテゴリーに依存して変えられ、車両データの枠内で算出される別の値が、瞬間的に決定された道路カテゴリーに依存しない記録速度で記録されることも考えられる。
【0012】
また、特に好適には、車両が追加的に周囲センサシステムを有しており、これによって、別の道路使用者の間隔および/または相対速度を算出し、本発明による方法に提供することができる。このような形式の周囲センサシステムは、最新の運転者支援システムのために設けられていて、レーダセンサ、ライダーセンサまたはビデオセンサより成っていて、例えば先行するまたは後続の道路使用者または交通対象物の間隔および/または相対速度を決定することができる。別の道路使用者または交通対象物の間隔および/または相対速度の知識によって、これらの知識が車両前方だけにおいて算出される場合でも、その時点に走行中の道路カテゴリーをより正確に決定することができ、ひいては仮想の後続の道路使用者の間隔を、直接的に検出または測定することなしに、より正確に決定することもできる。
【0013】
特に重要なことは、本発明による方法が、自動車の自動非常ブレーキ機能のコントロールユニットのために設けられた制御素子の形で実現されている、という点にある。この場合、制御素子にプログラムが記憶されており、このプログラムは、計算機、特にマイクロプロセッサまたは信号プロセッサで実行可能であり、本発明による方法を実施するために適している。つまりこの場合、本発明は、この制御素子に記憶されたプログラムによって実現されるので、このプログラムを備えた制御素子は、実行するためにこのプログラムが適している方法と同じ形式で本発明を成すものである。制御素子として、特に電気的な記憶媒体、例えばリードオンリメモリーを使用することができる。
【0014】
本発明のその他の特徴、使用可能性および利点は、図面に示した本発明の実施例の以下の説明に記載されている。この場合、全ての説明または図示の特徴は、特許請求の範囲の要約または請求項の引用関係とは無関係に、並びに明細書若しくは図面中の文言若しくは表示とは無関係に、単独でもまた任意の組み合わせでも本発明の対象を形成するものである。
【0015】
以下に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明による装置の概略的な実施例を示す図である。
【
図2】本発明の枠内において典型的な形式で発生し得る典型的な交通状況を示す図である。
【
図3】本発明による方法の1実施例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1には、初期間隔d
0を決定するための本発明による装置1が示されている。初期間隔d
0を決定するための装置1に、入力回路2によって、車両内部の様々なセンサの車両データが供給され、これらのデータが本発明による方法の枠内でさらに評価される。この場合、入力回路2に、速度センサ3のデータが供給される。速度センサはすべての車両に設けられている。何故ならば、これらの速度センサは、ABSコントロールまたはESPコントロールの枠内で、若しくはタコメータの速度表示の枠内で検知されるべきだからである。さらに、入力回路2に、加速度センサ4の信号が供給される。この場合、加速度センサ4は車両加速度だけを測定するのではなく、車両減速度も測定し、車両前後方向の加速度および減速度も、また車両横方向の加速度若しくは減速度も算出し、さらに先へ送信することができる。この場合、加速度の大きさだけではなく、加速操作の頻度および継続時間の長さも評価される。さらに、この装置1の入力回路2に、ステアリングアングルセンサ5の信号が供給される。この場合、ステアリングアングルセンサ5は、運転者によるハンドル回転運動を検出し、舵角も頻度も検出して、本発明による装置1に供給することができる。さらに、この装置1の入力回路2に、トランスミッションセンサ6の信号が供給されることが考えられる。この場合、トランスミッションセンサ6は、瞬間的に入れられたギヤ段を検出することができ、言い換えれば、ギヤ段切替えの頻度、つまりギヤシフト頻度を検出することができ、装置1の入力回路2に供給することができる。さらに、入力回路2に周囲センサシステム7の信号が供給されるようになっていてよい。この周囲センサシステム7は、単数または複数のレーダセンサ、ライダーセンサ、ビデオセンサまたは超音波センサより成っていてよく、例えば車両に装備されたパーキングアシストまたはアダプティブな車間および速度自動制御システムの枠内で設けられていてよい。このような周囲センサ7若しくは周囲センサシステム7は、センサ検出範囲内に存在する別の道路使用者および別の交通対象物の間隔および/または相対速度を含んでいる。この場合、周囲センサシステムは、車両前方方向に向けられていて、例えばアダプティブクルーズコントロールのために設けられたセンサであってよい。センサ3〜7によって供給された測定値および車両データは、入力回路2を介して初期間隔を決定するための装置1に供給される。これらのデータは、入力回路2から、特にバスシステムとして構成されていてよいデータ交換装置8によって記憶装置10に供給される。この記憶装置10は、好適な形式で環状記憶装置として構成されていてよい。この環状記憶装置内に、車両データがシーケンスに従って書き込まれ、記憶場所が完全に一杯になると直ちに、最も古いデータが新たなデータによって上書きされる。記憶装置10に記憶されたこの車両データは、再びデータ交換装置8を介して、例えばマイクロプロセッサまたは信号プロセッサとして構成されていてよい演算装置9で読み取られ得る。この演算装置9で、車両データから自車の運動の特徴的な値が算出され、この算出された値が、初期間隔を決定するための装置1にファイルされた特徴的なパターンと比較され得る。この特徴的なパターンは、装置1内の図示していない別の記憶装置にファイルされているか、または本発明による方法の開始時に演算装置9に読み込まれるか、または周期的に上書きされない、記憶装置10の部分領域内に永続的にファイルされていてよい。装置1に記録されている特徴的なパターンと、その時点に走行特性から決定された値との比較に基づいて、記録されている特徴的なパターンのうちのどのパターンが、その時点の瞬間的な走行データから決定された値に最適に合致するかが見つけ出されることによって、その時点に走行中の道路カテゴリーを推測することができる。これによって、自車15がその時点にアウトバーン上またはアウトバーンのような高速道路上を走行しているかどうか、自車15が市内交通内に位置する道路上を走行途中であるかまたは郊外道路上を走行中であるかどうか、若しくはその時点で走行している道路カテゴリーが、直接的に隣接する対面交通用の車道を有しているか、または対面交通が構造的に分離された車道上にあるかどうかも、演算装置9は高い確率で確認することができる。その時点に走行中の道路カテゴリーの決定に基づいて、例えばそれぞれの記録された道路カテゴリーのために記憶された、適合した初期間隔d
0を決定することができる。
【0018】
自車が関与している最初の衝突が検知されると、従来技術により公知のアルゴリズムを介して、自動非常ブレーキが作動される。このような形式の自動非常ブレーキは、通常は、自動車両減速装置が所定の時点で自動的に作動され、それによって後続車両のための衝突程度若しくは衝突危険性を低下させることができるブレーキモデルによって実施される。この自動非常ブレーキを作動させるために、若しくは非常ブレーキの自動的な作動のために、演算装置9がデータ交換装置8を介して制御信号をアウトプットすることができ、この制御信号が出力回路11を介して、後置されたブレーキ装置13若しくはブレーキ制御装置13にアウトプットされ、車両減速装置が調整信号に応じて操作される。
【0019】
図2には、本発明を詳しく説明するための交通状況の一例が示されている。
図2には、車道14が示されており、この車道14は、左右の車線マークによって区切られている。この車道14上を、固有の車速V
1で進む、本発明による装置1を装着した車両15が走行している。初期間隔を決定するための装置1は、コントロールユニットとして車両15に設けられていてよい。オプション的に、周囲センサシステム7が設けられていてもよい。この周囲センサシステム7は、
図2に図示されているように、車両15の車体後部に取り付けられていて、別の道路使用者の追加的な間隔データおよび相対速度データ並びに交通対象物を検出して、本発明による装置1に供給する。周囲センサシステム7を、車両15の車体前部の、例えばアダプティブクルーズコントロールの範囲内にだけ取り付けて、前方に向かって測定された間隔値および/または相対速度値から、後続交通の特徴的な間隔値を求めることもできる。本発明による装置1を装着した車両15に、別の後続の車両16が続いており、この後続の車両16は、先行する車両15に車速V
2で追従走行している。この場合、先行する車両15の後ろを追従走行する車両16が、先行する車両15に対して保っている間隔は、d
0として示されている。周囲センサシステム7が設けられていないか、または周囲センサシステム7が先行する車両15の車体前部に固定されている場合、間隔d
0を直接決定することはできないので、間隔d
0および後続の車両16の速度V
2は仮定される。
【0020】
図3には、本発明による装置1の演算装置9で実行され、減速装置13を、最初の衝突後に衝突危険性若しくは衝突程度がさらに低下されるように操作するのに適したフローチャートが示されている。本発明による方法は、ステップS01でスタートする。これは例えば車両15の点火装置を操作することによって行われ得るか、または相応のシステムのオン/オフスイッチを作動させることによって行われ得る。次のステップS02で、車両データが車両センサ3〜7によって算出され、入力回路2およびデータ交換装置8を介して環状記憶装置10に書き込まれる。記憶装置10が環状記憶装置として構成されていることによって、変動する測定ウインドの最新の車両データが常に提供されることが保証される。ステップS02で読み込まれた車両データから、次のステップS03で車両データによる瞬間的なパターンが発生される。この場合、車両の大きさおよび車速が評価され、車両加速若しくは車両減速の頻度並びに頻度の振幅が考慮されてよく、さらに、ステアリングアングルセンサ信号がステアリング作動の大きさおよび/またはステアリング作動の頻度に関連して評価されてよく、また、瞬間的に入れられたギヤ段を検知し、かつ/またはギヤ段切替えの頻度を検出するトランスミッション信号が評価されてよい。提供された瞬間的な車両データから瞬間的なパターンが決定されると、次のステップS04で、この瞬間的なパターンが装置1内に記録された市街地走行のためのパターンと一致するかどうかがテストされる。決定された瞬間的なパターンと市街地走行のための記録されたパターンとの間の非常に高い一致性が存在すれば、ステップS04が「ja(イエス)」に分岐し、ステップS06に移行される。ステップS04において一致性があまり高くないかまたは所定の閾値を下回っていれば、ステップS04は「nein(ノー)」に分岐し、この方法はステップS05に移行され、このステップS05で、最新の車両データからの瞬間的なパターンが、装置1に記録されたアウトバーン走行のためのパターンと一致するかどうかがさらにテストされる。ステップS05で、瞬間的なパターンと、アウトバーン走行のための記録されたパターンとの間に高い一致性が検知されると、ステップS05は「ja(イエス)」に分岐し、この方法はステップS07に移行される。これに対してステップS05で、瞬間的なパターンとアウトバーン走行のための記録されたパターンとの間の一致性が低いか、若しくは別の所定の閾値を下回っていることが検知されると、ステップS05は「nein(ノー)」に分岐し、この方法はステップS08に移行される。こうして、ステップS06、S07、S08で、検知された道路カテゴリーのために典型的であり、かつその他の方法のために使用される、それぞれの初期間隔d
0が決定される。ステップS04で、車両が、その時点に高い確率で市街地走行中であることが検知されると、ステップS06で、市街地走行のための初期間隔d
0がアルゴリズムに読み込まれる。ステップS05で、車両が非常に高い確率でアウトバーン上を走行しているか、またはアウトバーンのような高速道路上を走行していることが検知されると、ステップS07で、アウトバーン走行のための初期間隔d
0がアルゴリズムに読み込まれ、さらに使用される。ステップS04およびS05でそれぞれ、車両が高い確率で市街地走行でもなく、アウトバーン走行でもないことが検知されると、車両が幹線道路上を走行していることが推測され、ステップS08で、郊外走行のための初期間隔d
0がアルゴリズムに読み込まれる。この場合、それぞれの道路カテゴリーのための間隔d
0は、装置1内に記録され、検知された道路カテゴリーに応じて読み取られる特徴的な間隔値である。ステップS06,S07またはS08のいずれか1つにおいて、その時点に走行中の道路カテゴリーに依存して初期間隔d
0が決定された後で、本発明による方法はステップS10に移行される。
【0021】
オプション的に、ステップS10の前にステップS09が設けられていてよく、このステップS09で、先行する車両15にナビゲーションシステムが設けられている場合、瞬間的に検知された位置および、この位置とカード情報との一致性に基づいて、パターン比較により決定された道路カテゴリーが追加的に妥当化され得る。このためには、その時点に走行中のルートが、どの道路カテゴリーであるかの追加情報がカード情報に含まれている必要がある。走行中の道路カテゴリーを妥当化するための、このようなオプション的なステップS09は、必ずしも必要ではなく、ナビゲーションシステムのない車両においては省いてもよいが、その場合、道路カテゴリーの決定は、ステップS04およびS05の決定だけに基づいて行われる。
【0022】
次のステップS10で、自車15が別の道路使用者と最初に衝突したかどうかが算出される。通常の場合、最初の衝突は存在しないので、この試験はステップS10では否定的であり行われず、ステップS10はその結果「nein(ノー)」に分岐し、次いでこの方法はステップS02に戻り、前記方法ステップが繰り返し新たに実施される。ステップS10で別の道路使用者との最初の衝突が検知されると、ステップS10は「ja(イエス)」に分岐し、次のステップS11で、車両15の減速装置13が装置1によって相応に制御されることで、自動非常ブレーキが作動開始される。適合した初期間隔d
0を用いて、瞬間的に演算されたブレーキモデルが得られ、衝突程度をブレーキ解放によってさらに低減させることができる限りは、予想され得る後続車両との衝突危険性または衝突程度を低減させるために、ステップS11で作動開始された自動非常ブレーキは、ステップS12でブレーキ解放が行われることにより、減速装置をコントロールして解放することによって自動的に終了され得る。
【0023】
この場合、ブレーキモデルに関して、特許文献1の開示を参照されたい。この特許文献に、このモデルが記載されていて、その開示内容は、本発明によって全体的に考慮されるべきである。ステップS12で、衝突程度を低減させるためにブレーキ解放が適していると判断され、この際に、瞬間的な道路カテゴリーに適合された初期間隔d
0が用いられると、本発明による方法はステップS13で終了される。
【符号の説明】
【0024】
1 初期間隔d
0を決定するための装置
2 入力回路
3 速度センサ
4 加速度センサ
5 ステアリングアングルセンサ
6 トランスミッションセンサ
7 周囲センサシステム
8 データ交換装置
9 処理装置、演算装置
10 記憶装置、環状記憶装置
11 出力回路
13 減速装置、ブレーキ装置
14 道路カテゴリー
15 自車、車両
16 道路使用者
a 車両加速度若しくは車両減速度
d 間隔
d
0 間隔、初期間隔
V
1 車速
V
rel 相対速度
S01〜S13 ステップ