(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367346
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】シート材からトレイを深絞り成形する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B31B 50/59 20170101AFI20180723BHJP
B65D 1/26 20060101ALI20180723BHJP
B65D 1/34 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
B31B50/59
B65D1/26
B65D1/34
【請求項の数】15
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-551091(P2016-551091)
(86)(22)【出願日】2014年10月17日
(65)【公表番号】特表2016-538205(P2016-538205A)
(43)【公表日】2016年12月8日
(86)【国際出願番号】IB2014065410
(87)【国際公開番号】WO2015063643
(87)【国際公開日】20150507
【審査請求日】2017年5月1日
(31)【優先権主張番号】1351301-5
(32)【優先日】2013年11月4日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レセネン、ヤリ
(72)【発明者】
【氏名】リンデル、ヘンリー
(72)【発明者】
【氏名】ネヴァライネン、キンモ
(72)【発明者】
【氏名】タンニネン、パヌ
(72)【発明者】
【氏名】マテウス、サミ
(72)【発明者】
【氏名】ヒルトゥネン、マリ
(72)【発明者】
【氏名】クーリマイネン、オウティ
【審査官】
小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2013/0043151(US,A1)
【文献】
登録実用新案第3185366(JP,U)
【文献】
特表2011−530431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31B 50/59
B65D 1/26
B65D 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維系シート材(2)からトレイ(1)を深絞り成形する方法であって、
(i)前記シート材を、トレイの底部を外面側から形成するための空洞部(7)を備える雌成形工具(3)と、前記トレイの底部を内面側から形成するためのプランジャ板(11)を備える雄成形工具(4)との間に導入するステップと、
(ii)深絞り成形中に前記シート材(2)を保持するために、クランプ手段(5)によって前記シート材を前記雌成形工具(3)及び前記雄成形工具(4)の周囲でクランプするステップと、
(iii)前記プランジャ板(11)を前記空洞部(7)に対して移動させて前記トレイを形成するステップと
を含み、
(iv)前記空洞部の底部とクランプ接触面との間で、前記雄成形工具及び前記雌成形工具のうちの少なくとも一方が前記シート材から側方に離間されて、最終形状に深絞り成形された前記トレイのしわのない側壁が自由形成されるように、前記成形工具(3、4)を配置することを特徴とする、方法。
【請求項2】
形成している前記トレイの側壁の内側に自由空間を残すように、前記雄成形工具(4)を前記シート材(2)から離間させることを特徴とする、請求項1に記載された方法。
【請求項3】
形成している前記トレイの側壁の両側に自由空間を残すように、前記雄成形工具(4)及び前記雌成形工具(3)を共に前記シート材(2)から離間させることを特徴とする、請求項2に記載された方法。
【請求項4】
前記空洞部の底部と前記クランプ接触面との間の距離を、前記トレイ(1)の選択された深さに対応するように調節することを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載された方法。
【請求項5】
前記空洞部の底部の鉛直方向位置を、前記トレイのリムフランジの下側で前記空洞部の底部をクランプ(17)に連結する少なくとも1つのねじ(18)によって調節することを特徴とする、請求項4に記載された方法。
【請求項6】
前記雄成形工具(4)が、前記トレイの底部を内面側から形成するためのプランジャ板(11)を有し、前記プランジャ板の鉛直方向位置を調節するために、スペーサ板(13)を挿入することを特徴とする、請求項4又は請求項5に記載された方法。
【請求項7】
形成している前記トレイの側壁の内側に自由空間を残すように、前記スペーサ板(13)を前記シート材(2)から側方に離すことを特徴とする、請求項6に記載された方法。
【請求項8】
前記雌成形工具(3)が空洞部底部板(8)を有し、該空洞部底部板(8)の鉛直方向位置をスペーサ板(9)によって調節することを特徴とする、請求項6又は請求項7に記載された方法。
【請求項9】
スコアリングされていない及び/又はクリージングされていないシート材(2)を、しわのない側壁及びリムフランジを有するトレイ(1)に形成することを特徴とする、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載された方法。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載された方法の使用により繊維系シート材(2)をトレイ(1)に深絞り成形するための装置であって、
(i)前記トレイの底部を外面側から形成するための空洞部(7)を備える雌成形工具(3)と、
(ii)前記トレイの底部を内面側から形成するためのプランジャ板(11)を備える雄成形工具(4)であって、該プランジャ板(11)は、前記トレイを形成するために前記空洞部に対して移動可能になっている、雄成形工具(4)と、
(iii)前記シート材(2)を保持し、トレイのリムフランジを形成するための接触面を有するクランプ(6、15)と
を備え、
前記空洞部の底部と前記クランプ接触面との間の鉛直方向の間隔内で、前記雄成形工具(4)及び前記雌成形工具(3)が互いに側方に離間され、最終形状に深絞り成形された前記トレイ(1)の側壁が自由形成されるようになっていることを特徴とする、装置。
【請求項11】
前記雌成形工具(3)に、前記トレイのリムフランジの下側で前記空洞部の底部をクランプ(17)に連結するための少なくとも1つのねじ(18)が設けられていることを特徴とする、請求項10に記載された装置。
【請求項12】
前記雌成形工具(3)が空洞部底部板(8)を有し、該空洞部底部板の鉛直方向位置を調節するためにスペーサ板(9)が設けられることを特徴とする、請求項10に記載された装置。
【請求項13】
前記雄成形工具(4)が、前記トレイの底部を内面側から形成するためのプランジャ板(11)を有し、前記プランジャ板の鉛直方向位置を調節するためにスペーサ板(13)が設けられることを特徴とする、請求項10から請求項12までのいずれか一項に記載された装置。
【請求項14】
形成する前記トレイの側壁の内側に自由空間(14)を残すように、前記スペーサ板(13)が前記シート材(2)から側方に離間されていることを特徴とする、請求項13に記載された装置。
【請求項15】
スライスされた食品用の漏れのない封止される製品包装材の一部を形成するための、請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の方法により、又は請求項10から請求項14までのいずれか一項に記載された装置を使って製造されたトレイの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙、板紙材又はポリマー被覆板紙などの繊維系シート材からトレイを深絞り成形する方法及び装置に関するものである。この方法又は本装置によって製造されるトレイの使用も、本発明の対象である。本発明の目的は、特に、熱シールされる気密及び液密な食品包装材の一部にできる浅底の紙又は板紙からなるトレイを作ることである。
【背景技術】
【0002】
包装用トレイは、大半が、作りたての又は出来合いの食品の包装材として使用される。トレイは、熱シール可能なポリマー被覆板紙又は厚紙から製作でき、熱シールできるポリマーフィルム又はポリマー被覆板紙の蓋で閉じることができる。作りたての食品の保存可能期間はあくまで非常に短く、漏れ防止の気密な封止が多くの場合必要とされる。食料品によっては、かなり固い包装用トレイも必要とする。
【0003】
深絞り成形によって紙又は板紙のトレイを製造するために、紙又は板紙のブランク材が、雄成形工具と雌成形工具との間に配置され、次いでこれらの成形工具が互いに移動され、底部及び底部を取り囲む上方向に広がる側壁を有するトレイを形成する。
【0004】
ブランク材を容器及びトレイに成形する際の主要な問題は、絞りの際の基材の断裂、及びトレイ形成の際の板紙のしわ発生に起因するトレイの上側周縁のへり又はフランジの表面が平坦でないことである。そのようなしわは、特に一般に矩形形状であるトレイの隅部において発生するが、円形の及び卵形のトレイの側壁及び周縁フランジに沿っても生じる。しわは、製品包装材の液密及び気密な封止に不利な条件であり、トレイのフランジと封止される蓋のへりとの間で漏れを起こしやすくなる。
【0005】
先行技術のトレイ及び封止される覆蓋の例が、英国特許出願公開第2123786号に見ることができる。ポリエステル被覆板紙をプレス加工してトレイ形態の容器にすることにより、トレイの隅部の側壁からリムフランジまで延在する波形(しわ)が作られる。フランジ表面の凹凸に従うフィルムカバーがリムフランジに熱シールされて、漏れ防止の包装材を提供している。
【0006】
米国特許第4,026,458号は、容器の隅部の側壁及びリムフランジにしわが形成されてひだ状の折り目を有するようにされた、ポリマー被覆板紙ブランク材から深絞り成形された矩形の容器を示す。深絞り成形用の成形工具は、上側マンドレル及び下側の型を含み、これらは互いに移動可能であり、ブランク材を型に合わせて絞り容器の形態にする。米国特許第4,026,458号では、容器の封止は検討されていないが、ポリマーの蓋又はポリマー被覆蓋をリムフランジに熱シールして、封止された包装材を得ることは明らかである。
【0007】
欧州特許第1115572号は、隅部に折り曲げ線(しわ)のある紙容器、及び容器の環状縁部(フランジ)に熱シールされる蓋を備える封止包装材の、漏れの可能性の問題を対象にしている。この文献は、平坦でない隅部を平滑化し、このことによりしわを通じた漏れを回避できる最小厚さの被覆層の使用を提示している。しかしながらこの文献には、被覆材及び被覆層厚さのそれ以上の詳細な教示は何ら示されていない。
【0008】
しわ発生の問題を取り扱う公知の手法は、事前に板材に切り込み線を施すことであり、切り込み線は、板紙ブランク材がトレイにされる際に引き込まれて閉じるようになっている。そのような切り込み線は、切段又はレーザ手段によって施される。米国特許第4,246,223号は、そのようなスコアリング技法を使用する先行技術の例である。
【0009】
フィンランド出願公開第20125304号は、単一の又は複数の加工ステップにおいて形成される側壁段の数を増やし、こうしてトレイの底部を中心に同心状に段付けされた外形を有するようにトレイの側壁を成形することによって、しわの問題を解決することを教示する。この解決法は、ある意味では、普通であればしわを作る上向きの変形線を十分な短さの断片に分断して、しわを発生させることなく紙を曲げ力に適合させることである。そのような断片の長さ、又はトレイの側壁の段部の高さは、使用される紙材に応じて変動し得るが、通常の板紙又は厚紙に関しては、最大で約6mm程度であろう。
【0010】
先行技術の成形工具の他の問題は、トレイのサイズが変更されると、各サイズに応じた工具を必要とすることである。たとえばトレイの異なる深さに対して、適合性がないことである。同じことが、使用されるシート材の厚さにあてはまる。シート材厚さを変えることにより、加工工具の変更も強いられる。
【0011】
先行技術である国際公開第2010/018306号は、雌成形工具の型空洞部にインサートを着脱可能に取り付けることよって板材からの容器の深さを変えることができる成形工具のシステムについて記載しており、インサートは、空洞部の新しい底部を形成し、空洞部深さ及びこれに応じて形成される容器の深さを低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】英国特許出願公開第2123786号明細書
【特許文献2】米国特許第4,026,458号明細書
【特許文献3】欧州特許第1115572号明細書
【特許文献4】米国特許第4,246,223号明細書
【特許文献5】フィンランド特許出願公開第20125304号明細書
【特許文献6】国際公開第2010/018306号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、この問題を、深絞り成形によって繊維系トレイを形成するための新規な方法及び装置によって解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による方法は、以下のステップを含む。
(i)シート材を、トレイの底部を外面側から形成するための空洞部を備える雌成形工具と、トレイの底部を内面側から形成するためのプランジャ板を備える雄成形工具との間に導入するステップ。
(ii)深絞り成形中にシート材を保持するために、シート材を雌成形工具及び雄成形工具の周囲に沿ってクランプするステップ。
(iii)プランジャ板を空洞部に対して移動させてトレイを形成するステップ。このとき、空洞部の底部とクランプ接触面との間で、雄成形工具及び雌成形工具のうちの少なくとも一方がシート材から側方に離間され、トレイのしわのない側壁が自由形成されることを可能にする。
【0015】
繊維系シート材からトレイを深絞り成形するための本発明による装置は、以下を備える。
(i)トレイの底部を外面側から形成するための空洞部を備える雌成形工具。
(ii)トレイの底部を内面側から形成するためのプランジャ板を備える雄成形工具。プランジャ板は、トレイを形成するために空洞部に対して移動可能である。
(iii)シート材を保持しトレイのリムフランジを形成するための接触面を有するクランプ。
空洞部の底部とクランプ接触面との間の鉛直方向の間隔内で、雄成形工具及び雌成形工具は互いに側方に離間され、トレイの側壁が自由形成されることが可能になっている。
【0016】
本発明によれば、空洞部の底部とクランプ接触面との間で雄成形工具及び雌成形工具のうちの少なくとも一方をシート材から側方に離間させることにより、トレイの側壁が自由形成されることが可能になっており、それによってトレイの側壁及びリムフランジにおけるしわの出現が防止される。たとえば、雄成形工具は、プランジャ板の背後に配置された、シート材から側方に離間されたスペーサ板を有し、こうして、形成しているトレイの側壁の内側に、自由空間を残すことができる。
【0017】
雄成形工具及び雌成形工具は、どちらもシート材から側方に離間され、形成しているトレイの側壁の両側に自由空間を残すことが好ましい。
【0018】
上記の具体例の利点は、通常のように成形工具の表面が薄いシート材に密着する(それによりシート材を強制的に延ばして断裂を起こさせる)のではなく、自由空間により、断裂及びしわを発生させることなくシート材を金型に適合でき、結果として包装材への漏れのない封止に対する問題を解決することである。
【0019】
スペーサ板を使用してシート材から雄成形工具を離間させることにより、雌成形工具に対するプランジャ板の位置の調節も可能になる。雌成形工具の空洞部も調節可能とすることによって、形成されているトレイの深さを変更することができる。
【0020】
本発明の一具体例によれば、雌成形工具は、空洞部の底部板を有し、この空洞部の底部板は、底部板の下方に設置されたスペーサ板によって持ち上げることができる。こうして、雄成形工具にスペーサ板を追加して、そして雌成形工具から、すなわち底部板の下方からスペーサ板を取り外すことによって、トレイの深さを大きくすることができる。当然ながら、トレイの深さを小さくするときには、逆のことを行うことになる。
【0021】
本発明の別の具体例によれば、雌成形工具において、クランプ接触面までの距離を調節するための少なくとも1つのねじが設けられる。この場合、ねじは、底部板の下方の上述のスペーサ板に置き換わる。ねじは、トレイのリムフランジの下側で、空洞部の底部をクランプに連結できる。このようにして装置を、何らかの部品を構造体に追加するか又はそこから取り外す必要なく、シート材の厚さの小さい違いに容易に且つ精確に適合させることができる。
【0022】
本発明に関して使用される繊維系シート材は、紙、板紙、又は厚紙とすることができる。そのような繊維系材料は、被覆なしとするか、又は片面若しくは両面上にポリマー被覆を設けることができる。別の代替物は、金属箔張りの、場合によってはポリマー被覆された、紙又は板である。
【0023】
本発明は、肉、魚、チーズ、及び他のスライスされた食品のコールド・カット用の、封止される薄型の(深さの浅い)トレイ包装材の製造において、特に有用である。トレイの深絞り成形を単一のステップで実行して、フィンランド特許出願公開第20125304号において与えられる上限である6mmを優に超える深さの、しわのないトレイを製造することができる。
【0024】
本発明を、以下の図面に描かれた例によって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図2】
図1の装置においてトレイに絞られたブランクのシート材を示す図。
【
図3】本発明の別の具体例による、深絞り成形されたトレイ及び装置の部品を示す図。
【
図4】本発明の第3の具体例による、深絞り成形されたトレイ及び装置の部品を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図面に示された装置は、シート材料のブランク材2から深絞り成形工程によって包装用トレイ1を形成するものである。シート材は、ポリマー被覆された板紙又は紙が好ましいが、場合によっては追加のポリマー被覆を有する、金属箔張りの板紙若しくは紙、被覆なしの板紙若しくは紙、又はポリマーのシート若しくはフィルムでもよい。
【0027】
図1及び
図2に表された装置は、主要部品として、トレイを外側から形成するための雌成形工具3と、トレイを内側から形成するための雄成形工具4と、深絞り成形工程中にシート材料のブランク材を保持しトレイに対してリムフランジを形成するためのクランプ手段5とを備える。
【0028】
雌成形工具3は、空洞部7を有するフレーム6を備え、この空洞部7は、形成されるトレイ1の形状に概ね対応する。
図1及び
図2に示された具体例では、空洞部7内に設置された別個の底部板8が存在し、この底部板8を、形成されるトレイの深さを低減するために、スペーサ板9によって持ち上げることができる。スペーサ板9は、底部板8が空洞部7の底部と同じ高さとなるように取り外し可能であり、この場合、トレイ1の形状及び深さは、フレーム6のみによって決まる。
【0029】
雌成形工具3のフレーム6の下方には、加熱ユニット10が設けられている。
【0030】
雄成形工具4は、トレイ1の底部を内側から形成するためのプランジャ板11と、好ましくは深絞り成形工程中に静止して保持される雌成形工具3に対して移動可能な本体部12とを備える。プランジャ板11と本体部12の間隔をあけるために、いくつかのスペーサ板13が、プランジャ板11と本体部12との間に配置される。雄成形工具4の鉛直方向の移動により、プランジャ板11は、シート材料のブランク材2を雌成形工具3の空洞部7へ押圧して、シート材を、底部板8及び空洞部の側壁によって決定された形状に適合させる。
【0031】
雄成形工具4のスペーサ板13の特有の構成としては、これらがトレイ3の水平断面よりも狭くなっており、この結果、一群のスペーサ板13を取り囲んで自由空間14が、スペーサ板と形成されるトレイの側壁との間に存在することである。そのために、トレイの側壁の自由形成が可能となり、シート材の断裂及びトレイの隅部のしわ発生が回避される。
【0032】
クランプ手段5は、雄成形工具4の本体部12を取り囲み、雄成形工具4から独立して鉛直方向に移動可能なフレーム15を備える。
図1及び
図2の具体例では、フレーム15は上側クランプ工具を形成し、他方、雌成形工具3のフレーム6が、下側クランプ工具としての役割を果たす。クランプ工具15、6は相互の接触面を有し、クランプ工程中にブランク材2のへりを所定位置に保持し、こうして形成されるトレイ1に平坦なリムフランジを形成する。
【0033】
図1及び
図2の装置の操作は、最初に雌成形工具3の底部板8の場所を、対応する個数のスペーサ板9をその下方に設置することによって、トレイ1の所望の深さに対応するように調節することにより行なう。次いで、ポリマー被覆厚紙などのシート材料のブランク材2を、雌成形工具3と雄成形工具4との間に導入する。これらの成形工具3、4は、クランプ手段5とともに、互いから離間された状態にある。次いで、クランプフレーム15を、雌成形工具3のフレーム6に対して押し付け、ブランク材2のへりを深絞り成形工程のための所定位置にクランプする。最後に、雄成形工具4の本体部12が、プランジャ板11及びスペーサ板13とともに下方に移動され、プランジャ板が空洞部7内に入り、ブランク材2を雌成形工具3の底部板8に対して押圧する。トレイ3の底部は、プランジャ板11の形に一致することになり、トレイの側部は、自由形成の余地を有しており、僅かに波打った形状に適合する。こうしてしわ発生又は断裂が回避される。特に、ブランク材が前もってミシン目をいれていないか折り目をいれていない、すなわちスコアリングされていない及び/又はクリージングされていない状態であり、且つ、ブランク材のへりがクランプ工具15、6の間で締め付けて保持されるので、完成したトレイには完全に平坦なへりが確保される。それにより、その後にカバーフィルム又は蓋を用いてトレイが熱シールにより閉じられる際に、漏れの問題が回避される。
【0034】
図3の具体例は、
図2の具体例を簡略化したものであり、雌成形工具3において別個の底部板及びスペーサ板が存在せず、雌成形工具3の空洞部7のみで、形成すべきトレイ1の全体形状及び深さが決まる。雄成形工具4のプランジャ板11及びスペーサ板13は、
図1及び
図2のものと同じである。同じことが、クランプ手段15にもあてはまる。
【0035】
図4の具体例は、
図2及び
図3の具体例と同様の雄成形工具4及び上側クランプ手段を備える。しかしながら、雌成形工具3は異なる。形成すべきトレイ1の底部に対応する形状の空洞部7を有する底部フレーム部16が存在する。下側クランプフレーム17は、ねじ18を介して底部フレーム部16に連結される。このねじ18は、部品16、17の間の距離、及びしたがって完成したトレイ1の深さを正確に調節するために使用される。さらに重要な特徴は、トレイの側壁の両側に広い自由空間が存在し、このことにより、側壁の自由形成のための余地が高められることである。
【0036】
上記の本発明の詳細な説明を読めば、当業者には他の修正及び変形が明らかとなろう。このような他の修正及び変形が、本発明の原理及び範囲から逸脱することなく行われ得ることは当然明らかである。