特許第6367356号(P6367356)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6367356高窒素含有量を有するコンデンサグレードのタンタル粉末の調製方法、その方法により調製したコンデンサグレードのタンタル粉末、並びにタンタル粉末から調製したアノード及びコンデンサ
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  • 特許6367356-高窒素含有量を有するコンデンサグレードのタンタル粉末の調製方法、その方法により調製したコンデンサグレードのタンタル粉末、並びにタンタル粉末から調製したアノード及びコンデンサ 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367356
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】高窒素含有量を有するコンデンサグレードのタンタル粉末の調製方法、その方法により調製したコンデンサグレードのタンタル粉末、並びにタンタル粉末から調製したアノード及びコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/20 20060101AFI20180723BHJP
   B22F 1/00 20060101ALI20180723BHJP
   C22C 27/02 20060101ALN20180723BHJP
【FI】
   B22F9/20 G
   B22F1/00 R
   B22F1/00 G
   !C22C27/02 103
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-558241(P2016-558241)
(86)(22)【出願日】2013年12月10日
(65)【公表番号】特表2017-505384(P2017-505384A)
(43)【公表日】2017年2月16日
(86)【国際出願番号】CN2013088935
(87)【国際公開番号】WO2015085476
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2016年12月1日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507313113
【氏名又は名称】ニンシア オリエント タンタル インダストリー カンパニー、 リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】515243626
【氏名又は名称】ナショナル エンジニアリング リサーチ センター フォー スペシャル メタル マテリアルズ オブ タンタル アンド ニオブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、グォキ
(72)【発明者】
【氏名】チョン、アイグオ
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ユエウェイ
(72)【発明者】
【氏名】マ、ユエチョン
【審査官】 米田 健志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−310301(JP,A)
【文献】 特開2002−030301(JP,A)
【文献】 特表2003−525350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/00〜9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、コンデンサグレードのタンタル粉末の調製方法:
(1)KCl及びKFを反応器に供給し、温度を上昇させる工程;
(2)KTaFを反応器に供給し、所望の窒素ドープ量に応じて窒化タンタル粉末をここに同時に供給する工程;
(3)反応器を880〜930℃に加熱し、その温度を維持する工程;
(4)反応器を800〜880℃に冷却し、ここにナトリウムを供給する工程;
(5)反応温度が急激に低下するまでその温度を880〜930℃に維持する工程;
(6)工程(5)から得られたタンタル粉末を後処理し、窒素ドープしたタンタル粉末生成物を得る工程。
【請求項2】
工程(2)で供給する窒化タンタル粉末を調製するためのタンタル粉末が、工程(6)から得られるタンタル粉末生成物と実質的に同じ平均粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
窒素ドープ量が1000〜3000ppmである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(4)で供給するナトリウムと、工程(2)で供給するKTaFとの間の重量比が、30〜32:100の範囲内にある、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(2)が900〜950℃で行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(3)〜(5)が撹拌下で行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
撹拌ブレードを使用し、工程(4)でその撹拌ブレードを上昇させる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程(3)において、前記温度を維持する時間が少なくとも1時間である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(6)における後処理が、粉砕、水洗浄、酸洗浄、ペレット化又はこれらの組み合わせを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は 高窒素含有量を有するコンデンサグレードのタンタル粉末の調製方法、その方法により調製したコンデンサグレードのタンタル粉末、並びにタンタル粉末から調製したアノード及びコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
金属タンタルはバルブ金属である。これは、一方向の導電性を有するように、その表面に緻密な酸化膜の層を形成することができる。タンタルでできているアノード膜は、化学的安定性(特に酸性電解液中で)、高抵抗(7.5×1010Ω・cm)、高誘電率(27.6)及び微小漏れ電流を有する。さらに、アノード膜は、広範囲の作動温度(−80〜200℃)、高い信頼性、耐振動、及び長寿命などの利点を有する。これは、小容量で高い信頼性を有するタンタルコンデンサを調製するための理想的な材料である。
【0003】
タンタルコンデンサは、金属アノードとしてタンタルを有する電子デバイスで、アノードの酸化によりタンタルの表面に直接形成される誘電体酸化膜を有している。タンタル粉末は、非常に高い比表面積を有する。その特徴的な細孔構造のため、プレスや焼結をした後であっても、比表面積は高いままであり、それによって得られたコンデンサは高い比容量を有する。
【0004】
タンタル粉末の調製方法の中でも、ナトリウムを用いたフッ化タンタル酸カリウムの還元方法が、世界中で最も広く使用され、最も開発が進んだ調製方法である。
【0005】
ナトリウムを用いたフッ化タンタル酸カリウムの還元方法は、KTaF及びNaを主原料として使用し、NaCl、KClなどのハロゲン化物塩か又はハロゲン化物塩の混合物を希釈剤として使用し、以下の主な反応メカニズムで、コンデンサグレードのタンタル粉末を調製する方法である。
【0006】
TaF+5Na=Ta+5NaF+2KF (1)
【0007】
上記反応は、窒素雰囲気中、一定温度において、KTaF及び液体ナトリウムとの間で発生する。還元から生じるタンタル粉末は、水洗浄し、酸洗浄し、その後熱処理する。次いで、粉末を還元し、マグネシウムで脱酸素して、高純度の最終的なタンタル粉末が得られる。
【0008】
現在、コンデンサグレードのタンタル粉末が、高い比容量及び高純度に向けて展開している。タンタル粉末の比容量がその比表面積に比例することは、よく知られている。つまり、タンタル粉末の平均粒径が小さいほど、比表面積が高くなり、比容量が高くなるのである。タンタル粉末の高い比容量を達成するためのキーとなる技術は、より小さい平均粒径を有するタンタル粉末の調製である。ナトリウムを用いたフッ化タンタル酸カリウムの還元方法に関して、開発の中核は、一定の比表面積及び粒径を有するタンタル粉末を調製することを目的として、フッ化タンタル酸カリウム及び希釈剤溶解塩の組成物、還元温度、ナトリウムの注入速度などを含む還元条件を制御することによって、ナトリウムを用いた還元中に、結晶核の形成、分布及び成長を制御することである。機械的方法は、水素化ミリング又はボールミリングの条件を制御することにより、より微細な粒子を有するタンタル粉末を得ることを目的とする。水素を用いたハロゲン化物の還元は、ナノスケール粉末の調製技術を使用し、得られるタンタル粉末の粒度はナノスケールで、非常に高い比表面積を有する。
【0009】
ドーピングは、タンタル粉末の高い比容量を達成するための重要な技術手段であるため、高い比容量を有するタンタル粉末の製造及び開発において一般に使用されている。タンタル粉末の調製方法におけるドーピングの主な目的は:1)タンタル粉末を精製すること;及び2)タンタル粉末の粒の成長を阻害して、タンタル粉末のより高い比表面積を維持し、タンタル粉末の比容量の損失を減らすこと、である。ドーピングは種々の方法の最中に行うことができる。一般に使用されるドープ元素は、N、Si、P、B、C、S、Al、Oなど、及びこれらの化合物を含む。ドープ元素は、一般に粒界の界面で偏析し、高温でタンタルと反応してタンタルの種々の化合物を形成する。ドーピングは、一つの工程において一つの元素を取り込むだけでなく、複数の工程において複数の元素をドーピングすることを含む。このようにして、タンタル粉末を精製することができ、同時にタンタル粉末の比容量の損失を減らすことができる。
【0010】
タンタル粉末産業において、特に、高い比容量を有するタンタル粉末の製造において、タンタル粉末中に窒素をドープする操作は広く普及している。
【0011】
米国特許第6,876,542号は、窒素含有金属粉末の製造方法、並びに金属粉末を用いた多孔質焼結体及び固体電解コンデンサを提供する。窒素含有金属粉末は、窒素含有量W[ppm]と、BET法により測定された比表面積S[m/g]との比W/Sが、500〜3000の範囲内である。この特許はさらに、タンタル粉末中の窒素含有量を増加させるために、還元中に窒素を導入する方法を提供する。
【0012】
米国特許第7,066,975号は、窒素含有金属粉末及びその製造方法、並びに金属粉末を用いた多孔質焼結体及び固体電解コンデンサを提供する。この特許は、50−20,000pmmの窒素を含有する固溶体である窒素含有金属粉末を提供し、その金属はとりわけタンタルであり、好ましくはP、B、O又はそれらの組み合わせを含有する。その窒素は固溶しており、窒素含有金属粉末の平均粒径は80〜360nmの範囲にあることを特徴とする。
【0013】
米国特許第7,473,294号は、窒素含有金属粉末及びその製造方法、並びに金属粉末を用いた多孔質焼結体及び固体電解コンデンサを提供する。この特許は、50−20,000pmmの窒素を含有する固溶体である窒素含有金属粉末(表面層及び内層を有する)を提供する。その窒素は固溶しており、その金属はタンタルであって、その金属の表面層から内層まで窒素が均一に浸透しており、その金属粉末の粒径は250nm以下である。
【0014】
米国特許第6,432,161号は、別の窒素含有金属粉末及びその製造方法、並びに金属粉末を用いた多孔質焼結体及び固体電解コンデンサを提供する。この特許は、窒素含有金属粉末の製造方法を提供し、その製造方法は、ニオブ化合物又はタンタル化合物を還元剤で還元すること、窒素を同時に反応系内に取り込ませること、窒素含有ニオブ粉末又は窒素含有タンタル粉末を固溶体の形態で生成させ、同時に、窒素をニオブ粉末又はタンタル粉末中に取り込ませること、を含む。この特許は、ナトリウムを用いたフッ化タンタル酸カリウムの還元方法の代替方法を示しており、ニオブ化合物又はタンタル化合物以外の化合物の窒素ドーピング還元に適している。
【0015】
中国特許出願CN1498144Aは、焼結粒子の調製方法に関する。その粒子は、耐熱性金属と耐熱性金属窒化物との混合物でできている。その粒子は、耐熱性金属又は耐熱性金属の窒化物のいずれか単独でできている粒子よりも、高い割合で凝結物内孔(intra−agglomerate pores)を有することが見出された。これにより、改良されたコンデンサグレードの粉末、アノード及びそれによって作られたコンデンサが提供される。50〜75w/w%の耐熱性金属窒化物を含む混合物では、粒子の多孔性及び全侵入容量(total intrusion volume)が最大化される。その粒子の全細孔表面積は、単一の耐熱性金属窒化物の全細孔表面積よりも50%高い。50/50又は25/75w/w%の耐熱性金属/耐熱性金属窒化物の粉末の混合物からなる基板は、コンデンサの回収率が高く、かつ、ESRが低い固体コンデンサを生成する。簡単に言えば、タンタル及び窒化タンタル又はニオブ及び窒化ニオブは直接混合され、プレスによって形作られて、コンデンサのアノードを形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
このように、従来技術で使用された、タンタル粉末中に窒素をドーピングする方法は、反応系内への窒素含有ガスの取り込みに焦点を当てている。その窒素はタンタル粉末中に固溶して存在している。しかし、窒素をドーピングするそのような方法はあまり効果的でなく、高窒素含有量を有するタンタル粉末を得ることができず、窒素ドープ量を正確に制御することができない。したがって、依然として、良好な有効性及び制御性を有する、タンタル粉末中に窒素をドーピングする方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の態様において、以下の工程を含む、コンデンサグレードのタンタル粉末の調製方法が提供される。
(1)KCl及びKFを反応器に供給し、温度を上昇させる工程;
(2)KTaFを反応器に供給し、所望の窒素ドープ量に応じて窒化タンタル粉末をここに同時に供給する工程;
(3)反応器を880〜930℃に加熱し、その温度を維持する工程;
(4)反応器を800〜880℃に冷却し、ここにナトリウムを供給する工程;
(5)反応温度が急激に低下するまでその温度を880〜930℃に維持する工程;
(6)工程(5)から得られたタンタル粉末を後処理し、窒素ドープしたタンタル粉末生成物を得る工程。
【0018】
本発明は、従来技術のものよりも高窒素含有量を有するタンタル粉末を実現する。そして、タンタル粉末中の窒素ドープ量を正確に制御することができるので、所望の窒素量をタンタル粉末中に取り込ませることが可能となり、対応する電気的性能を有するタンタル粉末生成物を提供することができる。したがって、得られた生成物の電気的性能は、窒素をドーピングする従来の方法で作られたタンタル粉末の電気的性能よりも勝っている。
【0019】
一実施形態において、工程(2)で供給する窒化タンタル粉末を調製するためのタンタル粉末は、工程(6)から得られるタンタル粉末生成物と実質的に同じ平均粒径を有するので、最終的なタンタル粉末は均一な粒度を有する。
【0020】
一実施形態において、窒素ドープ量は1000〜3000ppmであるため、生成物の漏れ電流をより低くすることが可能となり、より好ましい電気的性能を有するタンタル粉末が得られる。
【0021】
一実施形態において、工程(4)で供給するナトリウムと、工程(2)で供給するKTaFとの間の重量比は、30〜32:100の範囲にある。一実施形態において、工程(2)は900〜950℃で行われる。一実施形態において、工程(3)〜(5)は撹拌下で行われる。いくつかの実施形態において、撹拌ブレードを使用し、工程(4)でその撹拌ブレードを上昇させる。一実施形態において、工程(3)において、前記温度を維持する時間は、少なくとも1時間である。一実施形態において、工程(6)における後処理は、粉砕、水洗浄、酸洗浄、ペレット化又はこれらの組み合わせを含む。
【0022】
本発明の第2の態様において、本発明の第1の態様の調製方法により調製されたタンタル粉末が提供される。
【0023】
本発明の第3の態様において、本発明の第2の態様のタンタル粉末でできているタンタルアノードが提供される。
【0024】
本発明の第4の態様において、本発明の第3の態様のタンタルアノード含む、タンタルコンデンサが提供される。
【0025】
本発明の、タンタル粉末並びにそれからできているタンタルアノード及びタンタルコンデンサは、高窒素含有量を有し、かつ、正確に制御可能な窒素ドープ量を有しているため、従来技術におけるタンタル粉末、タンタルアノード及びタンタルコンデンサよりも好ましい電気的性能を有する。
【0026】
必要に応じて、上記の実施形態を組み合わせることができ、その得られた技術的な解決手段は依然として本発明の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、窒素含有量で変化する、本発明の実施例及び比較例の生成物の電気的性能を示すグラフである。
【0028】
図中、DCLは漏れ電流K×10−4(μA/μFV)を表し、LOTは試料のシリーズ番号を表す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、以下の工程を含む、タンタル粉末中に窒素をドーピングする方法を提供する。
【0030】
最初に、KCL及びKFを還元炉に装入し、所定のプログラムにしたがって温度を上昇させる。温度が900〜950℃に到達したら、供給口を通してKTaFを添加し、同じグレードのタンタル粉末からできている窒化タンタル粉末を同時に添加する。この時、温度を約800℃に冷却する。充填後に撹拌を開始し、還元炉を880〜930℃に加熱する。その温度を維持し、温度を維持するための時間を記録する。一定時間の後、撹拌ブレードを上昇させ、撹拌を継続し、溶融塩系の温度及び組成を均一にする。温度を800〜880℃に下げて、ナトリウムをスムーズに添加する。ナトリウムを添加する間、撹拌を維持して、発生した熱をタイムリーに拡散し、溶融塩系全体の温度が均一に維持されるようにすると同時に、形成したタンタル粉末の粒子を反応領域の外にタイムリーに移動させ、均一性を悪くする結果をもたらす粒子の急速な成長を回避する。温度を880〜930℃の範囲内で比較的安定したレベルに維持する。還元反応中に添加したナトリウムとKTaFとの間の重量比は、30〜32:100の範囲内にある。反応温度が急激に低下すると、還元反応が終了したと判断することができる。均一に窒素ドープされた原料タンタル粉末が得られる。
【0031】
上記反応中に、原料タンタル粉末は、添加された窒化タンタル粉末と衝突して接触するので、窒化タンタル中の窒素が粒子間に広がることが可能となり、高窒素含有量を有し、かつ比較的均一にドーピングされたタンタル粉末の一次粒子が得られる。
【0032】
比較的均一な窒素含有凝集体を有するタンタル粉末が、バルク材料で得られる。この材料は、粉砕、水洗浄、酸洗浄、ペレット化等の工程を経て、高窒素含有量を有するタンタル粉末生成物が得られる。
【0033】
その高窒素含有量を有するタンタル粉末は、従来の方法を用いて、タンタルアノード及びタンタルコンデンサを製造するのに使用することができる。
【0034】
この文脈において、用語「同じグレードのタンタル粉末」は、反応中に添加される窒化タンタル粉末を調製するためのタンタル粉末が、タンタル粉末生成物と実質的に同じ平均粒径を有することを指し、これにより、最終的なタンタル粉末が均一な粒度を有する。
【実施例】
【0035】
さらに、本発明を例示するために、本発明に係る実施形態を実施例を用いて説明する。しかしながら、その説明は、本願の特許請求の範囲を限定のためではなく、本発明の特徴及び利点のさらなる説明のためのものであることが理解される。
【0036】
実施例中、フィッシャー粒径は、フィッシャートランスミッターとしても知られる、フィッシャーサブシーブサイザー(Fisher Sub−sieve sizer)で測定した粒径を指す。粒子の比表面積は、その粉末床(bed of powder)を通過する雰囲気によって生成される圧力差によって生じる、差圧ゲージの2つのチューブの液体レベルの間の高さの差(h)にしたがって得られる。そしてその後、平均粒度は、以下の式にしたがって計算される:
平均粒度(単位:ミクロン)=6000/体積比表面積(単位:平方センチメートル/グラム)
【0037】
(例1)
120kgのKCl及び100kgのKFを還元炉に装入し、所定のプログラムにしたがって温度を上昇させた。温度が920℃に到達した時、供給口を通して60kgのKTaFを添加し、0.3から0.45μmの範囲のフィッシャー粒径の原料タンタル粉末からできている1500gの窒化タンタル粉末を、シード結晶として同時に添加した。装入後、温度を930℃まで昇温し、温度を維持する時間を記録した。930℃で1時間保持した後、撹拌ブレードを上昇させ、撹拌を継続した。送風機で温度を820℃に下げて、ナトリウムをスムーズに添加した。ナトリウムを添加する間、撹拌を維持した。温度を約900℃に維持した。還元反応中に添加したナトリウムの量は、18.5kgであった。反応温度が急激に低下した時に、還元反応が終了したと判断し、還元された材料が得られた。その後、この還元された材料に、粉砕、水洗浄、酸洗浄、ペレット化等の工程を施し、窒素ドープしたタンタル粉末生成物が得られる。
【0038】
(例2)
120kgのKCl及び100kgのKFを還元炉に装入し、所定のプログラムにしたがって温度を上昇させた。温度が930℃に到達した時、供給口を通して60kgのKTaFを添加し、0.3から0.45μmの範囲のフィッシャー粒径の原料タンタル粉末からできている1000gの窒化タンタル粉末を、シード結晶として同時に添加した。装入後、温度を930℃まで昇温し、温度を維持する時間を記録した。930℃で1時間保持した後、撹拌ブレードを上昇させ、撹拌を継続した。送風機で温度を820℃に下げて、ナトリウムをスムーズに添加した。ナトリウムを添加する間、撹拌を維持した。温度を約900℃に維持した。還元反応中に添加したナトリウムの量は、18.5kgであった。反応温度が急激に低下した時に、還元反応が終了したと判断し、還元された材料が得られた。その後、この還元された材料に、粉砕、水洗浄、酸洗浄、ペレット化等の工程を施し、窒素ドープしたタンタル粉末生成物が得られる。
【0039】
(例3)
120kgのKCl及び100kgのKFを還元炉に装入し、所定のプログラムにしたがって温度を上昇させた。温度が930℃に到達した時、供給口を通して60kgのKTaFを添加し、0.3から0.45μmの範囲のフィッシャー粒径の原料タンタル粉末からできている800gの窒化タンタル粉末を、シード結晶として同時に添加した。装入後、温度を930℃まで昇温し、温度を維持する時間を記録した。930℃で1時間保持した後、撹拌ブレードを上昇させ、撹拌を継続した。送風機で温度を820℃に下げて、ナトリウムをスムーズに添加した。ナトリウムを添加する間、撹拌を維持した。温度を約900℃に維持した。還元反応中に添加したナトリウムの量は、18.5kgであった。反応温度が急激に低下した時に、還元反応が終了したと判断し、還元された材料が得られた。その後、この還元された材料に、粉砕、水洗浄、酸洗浄、ペレット化等の工程を施し、窒素ドープしたタンタル粉末生成物が得られる。
【0040】
(例4)
120kgのKCl及び100kgのKFを還元炉に装入し、所定のプログラムにしたがって温度を上昇させた。温度が910℃に到達した時、供給口を通して60kgのKTaFを添加し、0.3から0.45μmの範囲のフィッシャー粒径の原料タンタル粉末からできている600gの窒化タンタル粉末を、シード結晶として同時に添加した。装入後、温度を930℃まで昇温し、温度を維持する時間を記録した。930℃で1時間保持した後、撹拌ブレードを上昇させ、撹拌を継続した。送風機で温度を820℃に下げて、ナトリウムをスムーズに添加した。ナトリウムを添加する間、撹拌を維持した。温度を約900℃に維持した。還元反応中に添加したナトリウムの量は、18.5kgであった。反応温度が急激に低下した時に、還元反応が終了したと判断し、還元された材料が得られた。その後、この還元された材料に、粉砕、水洗浄、酸洗浄、ペレット化等の工程を施し、窒素ドープしたタンタル粉末生成物が得られる。
【0041】
(例5)
120kgのKCl及び100kgのKFを還元炉に装入し、所定のプログラムにしたがって温度を上昇させた。温度が900℃に到達した時、供給口を通して60kgのKTaFを添加し、0.3から0.45μmの範囲のフィッシャー粒径の原料タンタル粉末からできている300gの窒化タンタル粉末を、シード結晶として同時に添加した。装入後、温度を930℃まで昇温し、温度を維持する時間を記録した。930℃で1時間保持した後、撹拌ブレードを上昇させ、撹拌を継続した。送風機で温度を820℃に下げて、ナトリウムをスムーズに添加した。ナトリウムを添加する間、撹拌を維持した。温度を約900℃に維持した。還元反応中に添加したナトリウムの量は、18.5kgであった。反応温度が急激に低下した時に、還元反応が終了したと判断し、還元された材料が得られた。その後、この還元された材料に、粉砕、水洗浄、酸洗浄、ペレット化等の工程を施し、窒素ドープしたタンタル粉末生成物が得られる。
【0042】
(例6:比較例)
120kgのKCl及び100kgのKFを還元炉に装入し、所定のプログラムにしたがって温度を上昇させた。温度が930℃に到達した時、供給口を通して60kgのKTaFを添加した。装入後、温度を930℃まで昇温し、温度を維持する時間を記録した。930℃で1時間保持した後、撹拌ブレードを上昇させ、撹拌を継続した。送風機で温度を820℃に下げて、ナトリウムをスムーズに添加した。ナトリウムを添加する間、撹拌を維持した。温度を約900℃に維持した。還元反応中に添加したナトリウムの量は、18.5kgであった。反応温度が急激に低下した時に、還元反応が終了したと判断し、還元された材料が得られた。その後、この還元された材料に、粉砕、水洗浄、酸洗浄、ペレット化等の工程を施し、必要な生成物が得られた。
【0043】
この比較例では、窒素を意図的にドープしなかった。試料中の窒素は、タンタル粉末が、空気中で酸化膜を形成したときにもたらされた。
【0044】
得られた6つの試料を分析した。特性の比較結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
タンタル粉末中の元素の試験方法のすべては、GB/T 15076.8−2008、GB/T 15076.9−2008、GB/T 15076.12−2008、GB/T 15076.14−2008、GB/T 15076.15−2008、GB/T 15076.16−2008、並びにタンタル及びニオブのための化学分析技術などの中国国家規格にしたがう。
【0047】
表1からわかるように、例1〜例5の窒素ドープ量は、例6(比較例)の窒素ドープ量よりも高い。これは、窒化タンタル粉末を介しての窒素ドーピング効果は、従来の窒素ドーピング法による効果よりも良好であることを意味する。本発明の方法により高窒素含有量を有するタンタル粉末を得ることができる。
【0048】
【表2】
【0049】
表2において:
FSSSは、タンタル粒子のフィッシャー粒径を表す。
SBDは見かけ密度を表し、所定条件下で粉末を標準容器に自由に充填した後に測定したタップ密度、すなわち、ゆるく詰められた単位体積当たりの粉末の質量のことを指し、単位はg/cmで表される。これは粉末の方法特性である。本明細書で使用する測定方法は、粉末が一定の高さで漏斗孔から容器を充填するために自由に落下する、漏斗法である。
+80(%)は、全粒子中の80メッシュより大きな粒子の割合を表し、−400(%)は、400メッシュより小さな粒子の割合を表す。メッシュは、画面上、インチ(25.4mm)当たりのメッシュ番号を指す。
【0050】
【表3】
【0051】
タンタル粉末の電気的性能の試験方法及び装置のすべては、中国国家規格GB/T 3137−2007、タンタル粉末の電気的性能のための実験技術、にしたがう。
【0052】
表3において:
焼結条件: 1250℃/20minは、アノードブロックを得るために、タンタル粉末を20分間1250℃で焼結することを意味する。
Vf:20Vは、20Vの電圧することを意味する。
圧縮密度:5.0g/ccは、アノードブロックの圧縮密度が5.0g/ccであることを意味する。
【0053】
K×10−4(μA/μFV)は、漏れ電流を表し、以下、K値と呼ぶ。キャパシタンスメディアは、絶対的に非導電性であることができないので、直流電圧をキャパシタンスに印加すると、コンデンサは漏れ電流を生成する可能性がある。漏れ電流が高すぎると、コンデンサは加熱し、故障することがある。所定の直接作動電圧がコンデンサに印加されると、充電電流の変化は最初大きく、時間の経過とともに減少し、最終の値まで比較的安定した状態に達することが観察されるであろう。この最終の値が、漏れ電流と呼ばれる。
CV(μFV/g)は、比容量、すなわち、単位重量の電池又は活性基板によって放出される電気量を表す。
tgδ(%)はコンデンサ損を表す。コンデンサ損は、コンデンサによって実際に消費される無効電力である。したがって、コンデンサ損は、電界の下で消費される無効電力と総消費電力との間の比をも意味すると定義することができ、次のように表現される:コンデンサの損失正接=無効電力/総電力、又はコンデンサの損失正接=無効電力×100/総電力(結果の値はパーセントである)。
SHV(%)は、コンデンサのアノードブロックの体積収縮を表す。
【0054】
【表4】
【0055】
上記の表(特に、表3)中のデータは、コンデンサグレードのタンタル粉末に関して、窒素ドープ量が増加するにつれて、タンタル粉末の比容量(CV値)が増加し、漏れ電流(K値)が減少し、損失(tgδ%)が減少することを示す。しかし、窒素含有量が3000ppmより多いと(例1)、タンタル粉末の比容量(CV値)は減少し、漏れ電流(K値)及び損失(tgδ%)は増加し始めて、電気的性能が低下する。
【0056】
窒素ドープ量が比較的低い場合(例5)、タンタル粉末の比容量(CV値)が低すぎ、漏れ電流(K値)及び損失(tgδ%)が高すぎて、好ましくない、などの問題がある。
【0057】
図1は、例1〜例5及び例6(比較例)の生成物のK値が窒素含有量で変化する曲線グラフを示す。
【0058】
そのため、本発明による高い比容量を有するタンタル粉末に関して、窒素含有量を1000〜3000ppmの範囲内で制御すると、試料の漏れ電流は比較的小さく、タンタル粉末の電気的性能は好ましい。
【0059】
本発明は、還元中に、高窒素含有量を有するTaNをシード結晶として添加することにより、タンタル粉末中の窒素含有量の効果的な制御を可能にする。また、この方法によって調製したタンタルは、均一な窒素含有量と、比較的小さな粒径の一次粒子とを有する。この方法の最大の特徴は、窒化タンタル中の窒素が、実質的に損失なく、タンタル粉末の粒子間に拡散していることであり、これにより、窒素含有量を正確に制御することができる。
【0060】
本明細書で開示した本発明の説明及び実施例は、例示である。本発明が他の多くの実施形態を含むことは、当業者に明らかであり、本発明の実際の範囲及び精神は、特許請求の範囲によって定義される。
図1