【実施例】
【0035】
さらに、本発明を例示するために、本発明に係る実施形態を実施例を用いて説明する。しかしながら、その説明は、本願の特許請求の範囲を限定のためではなく、本発明の特徴及び利点のさらなる説明のためのものであることが理解される。
【0036】
実施例中、フィッシャー粒径は、フィッシャートランスミッターとしても知られる、フィッシャーサブシーブサイザー(Fisher Sub−sieve sizer)で測定した粒径を指す。粒子の比表面積は、その粉末床(bed of powder)を通過する雰囲気によって生成される圧力差によって生じる、差圧ゲージの2つのチューブの液体レベルの間の高さの差(h)にしたがって得られる。そしてその後、平均粒度は、以下の式にしたがって計算される:
平均粒度(単位:ミクロン)=6000/体積比表面積(単位:平方センチメートル/グラム)
【0037】
(例1)
120kgのKCl及び100kgのKFを還元炉に装入し、所定のプログラムにしたがって温度を上昇させた。温度が920℃に到達した時、供給口を通して60kgのK
2TaF
7を添加し、0.3から0.45μmの範囲のフィッシャー粒径の原料タンタル粉末からできている1500gの窒化タンタル粉末を、シード結晶として同時に添加した。装入後、温度を930℃まで昇温し、温度を維持する時間を記録した。930℃で1時間保持した後、撹拌ブレードを上昇させ、撹拌を継続した。送風機で温度を820℃に下げて、ナトリウムをスムーズに添加した。ナトリウムを添加する間、撹拌を維持した。温度を約900℃に維持した。還元反応中に添加したナトリウムの量は、18.5kgであった。反応温度が急激に低下した時に、還元反応が終了したと判断し、還元された材料が得られた。その後、この還元された材料に、粉砕、水洗浄、酸洗浄、ペレット化等の工程を施し、窒素ドープしたタンタル粉末生成物が得られる。
【0038】
(例2)
120kgのKCl及び100kgのKFを還元炉に装入し、所定のプログラムにしたがって温度を上昇させた。温度が930℃に到達した時、供給口を通して60kgのK
2TaF
7を添加し、0.3から0.45μmの範囲のフィッシャー粒径の原料タンタル粉末からできている1000gの窒化タンタル粉末を、シード結晶として同時に添加した。装入後、温度を930℃まで昇温し、温度を維持する時間を記録した。930℃で1時間保持した後、撹拌ブレードを上昇させ、撹拌を継続した。送風機で温度を820℃に下げて、ナトリウムをスムーズに添加した。ナトリウムを添加する間、撹拌を維持した。温度を約900℃に維持した。還元反応中に添加したナトリウムの量は、18.5kgであった。反応温度が急激に低下した時に、還元反応が終了したと判断し、還元された材料が得られた。その後、この還元された材料に、粉砕、水洗浄、酸洗浄、ペレット化等の工程を施し、窒素ドープしたタンタル粉末生成物が得られる。
【0039】
(例3)
120kgのKCl及び100kgのKFを還元炉に装入し、所定のプログラムにしたがって温度を上昇させた。温度が930℃に到達した時、供給口を通して60kgのK
2TaF
7を添加し、0.3から0.45μmの範囲のフィッシャー粒径の原料タンタル粉末からできている800gの窒化タンタル粉末を、シード結晶として同時に添加した。装入後、温度を930℃まで昇温し、温度を維持する時間を記録した。930℃で1時間保持した後、撹拌ブレードを上昇させ、撹拌を継続した。送風機で温度を820℃に下げて、ナトリウムをスムーズに添加した。ナトリウムを添加する間、撹拌を維持した。温度を約900℃に維持した。還元反応中に添加したナトリウムの量は、18.5kgであった。反応温度が急激に低下した時に、還元反応が終了したと判断し、還元された材料が得られた。その後、この還元された材料に、粉砕、水洗浄、酸洗浄、ペレット化等の工程を施し、窒素ドープしたタンタル粉末生成物が得られる。
【0040】
(例4)
120kgのKCl及び100kgのKFを還元炉に装入し、所定のプログラムにしたがって温度を上昇させた。温度が910℃に到達した時、供給口を通して60kgのK
2TaF
7を添加し、0.3から0.45μmの範囲のフィッシャー粒径の原料タンタル粉末からできている600gの窒化タンタル粉末を、シード結晶として同時に添加した。装入後、温度を930℃まで昇温し、温度を維持する時間を記録した。930℃で1時間保持した後、撹拌ブレードを上昇させ、撹拌を継続した。送風機で温度を820℃に下げて、ナトリウムをスムーズに添加した。ナトリウムを添加する間、撹拌を維持した。温度を約900℃に維持した。還元反応中に添加したナトリウムの量は、18.5kgであった。反応温度が急激に低下した時に、還元反応が終了したと判断し、還元された材料が得られた。その後、この還元された材料に、粉砕、水洗浄、酸洗浄、ペレット化等の工程を施し、窒素ドープしたタンタル粉末生成物が得られる。
【0041】
(例5)
120kgのKCl及び100kgのKFを還元炉に装入し、所定のプログラムにしたがって温度を上昇させた。温度が900℃に到達した時、供給口を通して60kgのK
2TaF
7を添加し、0.3から0.45μmの範囲のフィッシャー粒径の原料タンタル粉末からできている300gの窒化タンタル粉末を、シード結晶として同時に添加した。装入後、温度を930℃まで昇温し、温度を維持する時間を記録した。930℃で1時間保持した後、撹拌ブレードを上昇させ、撹拌を継続した。送風機で温度を820℃に下げて、ナトリウムをスムーズに添加した。ナトリウムを添加する間、撹拌を維持した。温度を約900℃に維持した。還元反応中に添加したナトリウムの量は、18.5kgであった。反応温度が急激に低下した時に、還元反応が終了したと判断し、還元された材料が得られた。その後、この還元された材料に、粉砕、水洗浄、酸洗浄、ペレット化等の工程を施し、窒素ドープしたタンタル粉末生成物が得られる。
【0042】
(例6:比較例)
120kgのKCl及び100kgのKFを還元炉に装入し、所定のプログラムにしたがって温度を上昇させた。温度が930℃に到達した時、供給口を通して60kgのK
2TaF
7を添加した。装入後、温度を930℃まで昇温し、温度を維持する時間を記録した。930℃で1時間保持した後、撹拌ブレードを上昇させ、撹拌を継続した。送風機で温度を820℃に下げて、ナトリウムをスムーズに添加した。ナトリウムを添加する間、撹拌を維持した。温度を約900℃に維持した。還元反応中に添加したナトリウムの量は、18.5kgであった。反応温度が急激に低下した時に、還元反応が終了したと判断し、還元された材料が得られた。その後、この還元された材料に、粉砕、水洗浄、酸洗浄、ペレット化等の工程を施し、必要な生成物が得られた。
【0043】
この比較例では、窒素を意図的にドープしなかった。試料中の窒素は、タンタル粉末が、空気中で酸化膜を形成したときにもたらされた。
【0044】
得られた6つの試料を分析した。特性の比較結果を表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
タンタル粉末中の元素の試験方法のすべては、GB/T 15076.8−2008、GB/T 15076.9−2008、GB/T 15076.12−2008、GB/T 15076.14−2008、GB/T 15076.15−2008、GB/T 15076.16−2008、並びにタンタル及びニオブのための化学分析技術などの中国国家規格にしたがう。
【0047】
表1からわかるように、例1〜例5の窒素ドープ量は、例6(比較例)の窒素ドープ量よりも高い。これは、窒化タンタル粉末を介しての窒素ドーピング効果は、従来の窒素ドーピング法による効果よりも良好であることを意味する。本発明の方法により高窒素含有量を有するタンタル粉末を得ることができる。
【0048】
【表2】
【0049】
表2において:
FSSSは、タンタル粒子のフィッシャー粒径を表す。
SBDは見かけ密度を表し、所定条件下で粉末を標準容器に自由に充填した後に測定したタップ密度、すなわち、ゆるく詰められた単位体積当たりの粉末の質量のことを指し、単位はg/cm
3で表される。これは粉末の方法特性である。本明細書で使用する測定方法は、粉末が一定の高さで漏斗孔から容器を充填するために自由に落下する、漏斗法である。
+80(%)は、全粒子中の80メッシュより大きな粒子の割合を表し、−400(%)は、400メッシュより小さな粒子の割合を表す。メッシュは、画面上、インチ(25.4mm)当たりのメッシュ番号を指す。
【0050】
【表3】
【0051】
タンタル粉末の電気的性能の試験方法及び装置のすべては、中国国家規格GB/T 3137−2007、タンタル粉末の電気的性能のための実験技術、にしたがう。
【0052】
表3において:
焼結条件: 1250℃/20minは、アノードブロックを得るために、タンタル粉末を20分間1250℃で焼結することを意味する。
Vf:20Vは、20Vの電圧することを意味する。
圧縮密度:5.0g/ccは、アノードブロックの圧縮密度が5.0g/ccであることを意味する。
【0053】
K×10
−4(μA/μFV)は、漏れ電流を表し、以下、K値と呼ぶ。キャパシタンスメディアは、絶対的に非導電性であることができないので、直流電圧をキャパシタンスに印加すると、コンデンサは漏れ電流を生成する可能性がある。漏れ電流が高すぎると、コンデンサは加熱し、故障することがある。所定の直接作動電圧がコンデンサに印加されると、充電電流の変化は最初大きく、時間の経過とともに減少し、最終の値まで比較的安定した状態に達することが観察されるであろう。この最終の値が、漏れ電流と呼ばれる。
CV(μFV/g)は、比容量、すなわち、単位重量の電池又は活性基板によって放出される電気量を表す。
tgδ(%)はコンデンサ損を表す。コンデンサ損は、コンデンサによって実際に消費される無効電力である。したがって、コンデンサ損は、電界の下で消費される無効電力と総消費電力との間の比をも意味すると定義することができ、次のように表現される:コンデンサの損失正接=無効電力/総電力、又はコンデンサの損失正接=無効電力×100/総電力(結果の値はパーセントである)。
SHV(%)は、コンデンサのアノードブロックの体積収縮を表す。
【0054】
【表4】
【0055】
上記の表(特に、表3)中のデータは、コンデンサグレードのタンタル粉末に関して、窒素ドープ量が増加するにつれて、タンタル粉末の比容量(CV値)が増加し、漏れ電流(K値)が減少し、損失(tgδ%)が減少することを示す。しかし、窒素含有量が3000ppmより多いと(例1)、タンタル粉末の比容量(CV値)は減少し、漏れ電流(K値)及び損失(tgδ%)は増加し始めて、電気的性能が低下する。
【0056】
窒素ドープ量が比較的低い場合(例5)、タンタル粉末の比容量(CV値)が低すぎ、漏れ電流(K値)及び損失(tgδ%)が高すぎて、好ましくない、などの問題がある。
【0057】
図1は、例1〜例5及び例6(比較例)の生成物のK値が窒素含有量で変化する曲線グラフを示す。
【0058】
そのため、本発明による高い比容量を有するタンタル粉末に関して、窒素含有量を1000〜3000ppmの範囲内で制御すると、試料の漏れ電流は比較的小さく、タンタル粉末の電気的性能は好ましい。
【0059】
本発明は、還元中に、高窒素含有量を有するTaNをシード結晶として添加することにより、タンタル粉末中の窒素含有量の効果的な制御を可能にする。また、この方法によって調製したタンタルは、均一な窒素含有量と、比較的小さな粒径の一次粒子とを有する。この方法の最大の特徴は、窒化タンタル中の窒素が、実質的に損失なく、タンタル粉末の粒子間に拡散していることであり、これにより、窒素含有量を正確に制御することができる。
【0060】
本明細書で開示した本発明の説明及び実施例は、例示である。本発明が他の多くの実施形態を含むことは、当業者に明らかであり、本発明の実際の範囲及び精神は、特許請求の範囲によって定義される。