特許第6367361号(P6367361)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6367361封止された相変化材料ヒートシンク及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367361
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】封止された相変化材料ヒートシンク及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/42 20060101AFI20180723BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20180723BHJP
   F28D 20/02 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   H01L23/42
   H05K7/20 D
   H05K7/20 R
   F28D20/02 D
【請求項の数】20
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-560513(P2016-560513)
(86)(22)【出願日】2015年2月2日
(65)【公表番号】特表2017-513226(P2017-513226A)
(43)【公表日】2017年5月25日
(86)【国際出願番号】US2015014045
(87)【国際公開番号】WO2015152988
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2016年10月19日
(31)【優先権主張番号】14/244,640
(32)【優先日】2014年4月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ウッド,アダム,シー.
【審査官】 鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−293984(JP,A)
【文献】 特開2009−303316(JP,A)
【文献】 特開2004−111665(JP,A)
【文献】 特開2002−057262(JP,A)
【文献】 特開2001−174085(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0040726(US,A1)
【文献】 特開2012−033812(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0211732(US,A1)
【文献】 特開2013−84710(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/34−23/473
H05K 7/20
F28D 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
封止された相変化材料ヒートシンクであって、
下方シェルと、
上方シェルと、
非相変化材料内に密封された相変化材料を含み、前記非相変化材料が前記相変化材料の相変化に伴って膨張せず収縮もしない、封止された相変化材料と、
空間を有する内部マトリクスと、
を含み、
前記空間が前記封止された相変化材料を受容するように構成されており、前記封止された相変化材料と前記下方シェル及び上方シェルのうち少なくとも1つとの間で熱エネルギーが移送可能であ
前記内部マトリクスが前記下方シェル及び前記上方シェルの一方又は双方に一体的な複数のピンを含む
封止された相変化材料ヒートシンク。
【請求項2】
請求項1に記載された封止された相変化材料ヒートシンクであって、室温かつ室圧で前記上方シェルが前記下方シェルに結合している、封止された相変化材料ヒートシンク。
【請求項3】
請求項1に記載された封止された相変化材料ヒートシンクであって、前記下方シェルが、キャビティを形成するよう構成されている隆起エッジを含み、前記キャビティが前記内部マトリクス及び前記封止された相変化材料を受容するように構成されている、封止された相変化材料ヒートシンク。
【請求項4】
請求項1に記載された封止された相変化材料ヒートシンクであって、前記複数のピンが前記下方シェルに一体化された、封止された相変化材料ヒートシンク。
【請求項5】
請求項1に記載された封止された相変化材料ヒートシンクであって、前記複数のピンが前記上方シェルに一体化された、封止された相変化材料ヒートシンク。
【請求項6】
請求項1に記載された封止された相変化材料ヒートシンクであって、前記内部マトリクスが下方内部マトリクスと上方内部マトリクスとを含み、前記複数のピンが前記下方シェルに一体化された第1の複数のピン、前記上方シェルに一体化された第2の複数のピンを含む、封止された相変化材料ヒートシンク。
【請求項7】
請求項1に記載された封止された相変化材料ヒートシンクであって、前記内部マトリクスが熱伝導フォームを含む、封止された相変化材料ヒートシンク。
【請求項8】
封止された相変化材料ヒートシンクであって、
非相変化材料内に封止されたワックスパウダーであって、前記非相変化材料が前記ワックスパウダーの相変化に伴って膨張せず収縮もしない、ワックスパウダーと、
空間を有する内部マトリクスであり、該空間が前記封止されたワックスパウダーを受容するように構成されている、内部マトリクスと、
キャビティを形成するように構成されている隆起エッジを含む下方シェルであり、前記キャビティが前記内部マトリクス及び前記封止されたワックスパウダーを受容するように構成されている、下方シェルと、
前記下方シェルと前記隆起エッジに結合されている上方シェルと、
を含
前記内部マトリクスが前記下方シェル及び前記上方シェルの一方又は双方に一体的な複数のピンを含む、
封止された相変化材料ヒートシンク。
【請求項9】
請求項8に記載された封止された相変化材料ヒートシンクであって、室温かつ室圧で前記上方シェルが前記下方シェルの前記隆起エッジに結合している、封止された相変化材料ヒートシンク。
【請求項10】
請求項8に記載された封止された相変化材料ヒートシンクであって、前記複数のピンが前記下方シェルに一体化された、封止された相変化材料ヒートシンク。
【請求項11】
請求項8に記載された封止された相変化材料ヒートシンクであって、前記複数のピンが前記上方シェルに一体化された、封止された相変化材料ヒートシンク。
【請求項12】
請求項8に記載された封止された相変化材料ヒートシンクであって、前記内部マトリクスが下方内部マトリクスと上方内部マトリクスとを含み、前記複数のピンが前記下方シェルに一体化された第1の複数のピン、前記上方シェルに一体化された第2の複数のピンを含む、封止された相変化材料ヒートシンク。
【請求項13】
請求項8に記載された封止された相変化材料ヒートシンクであって、前記内部マトリクスが熱伝導フォームを含む、封止された相変化材料ヒートシンク。
【請求項14】
封止された相変化材料(PCM)ヒートシンクを形成する方法であって、
非相変化材料内に密封された相変化材料を含む封止された相変化材料を下方シェルに挿入する挿入工程であり、前記非相変化材料が前記相変化材料の相変化に伴って膨張せず収縮もしない、挿入工程と、
前記封止された相変化材料を上方シェルで覆う工程であり、前記封止された相変化材料が内部マトリクスの空間内に受容される、前記内部マトリクスが前記下方シェル及び前記上方シェルの一方又は双方に一体的な複数のピンを含む、覆う工程と、
室温かつ室圧で前記上方シェルを前記下方シェルに結合する結合工程と、
を含む封止された相変化材料ヒートシンクを形成する方法。
【請求項15】
請求項14に記載された方法であって、
前記下方シェル内に前記内部マトリクスを形成する工程を含み、
前記挿入工程が、前記内部マトリクスの前記空間内に前記封止された相変化材料を挿入することを含む、方法。
【請求項16】
請求項15に記載された方法であって、前記複数のピンが前記下方シェルに一体化された、方法。
【請求項17】
請求項14に記載された方法であって、さらに、
前記上方シェル内に前記内部マトリクスを形成する工程、
を含む方法。
【請求項18】
請求項17に記載された方法であって、前記複数のピンが前記上方シェルに一体化された、方法。
【請求項19】
請求項14に記載された方法であって、前記内部マトリクスが下方内部マトリクスと上方内部マトリクスとを含み、前記内部マトリクスの前記空間が前記下方内部マトリクスの空間と前記上方内部マトリクスの空間とを含み、
当該方法が、
前記下方シェル内に前記下方内部マトリクスを形成する工程であり、前記複数のピンが前記下方シェルに一体化された第1の複数のピンを含む、工程と、
前記上方シェル内に前記上方内部マトリクスを形成する工程であり、前記複数のピンが前記上方シェルに一体化された第2の複数のピンを含む、工程と、
を含み、
前記挿入工程が、前記下方内部マトリクスの前記空間に前記封止された相変化材料を挿入することを含む、
方法。
【請求項20】
請求項14に記載された方法であって、さらに、
前記下方シェル内に前記内部マトリクスをもたらす工程、
を含み、
前記内部マトリクスが熱伝導フォームを含み、
前記挿入工程が、前記熱伝導フォームの前記空間に前記封止された相変化材料を挿入することを含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、熱技術に関し、より詳細には、封止された相変化材料ヒートシンク及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
相変化材料ヒートシンク(phase change material heat sink)は、典型的な金属ヒートシンクに比較して、体積/質量当たりの熱容量を増大させることができる。しかしながら、相変化材料の漏れが起こりうるために、ヒートシンク内に相変化材料を含ませると、一般にシーリング(sealing)が必要となる。シーリングは、相変化材料を含む圧力容器を作ることにより最も効果的に達成できるが、一般に高価であり時間を消費してしまう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本開示は、封止された相変化材料(PCM)ヒートシンク及び方法を提供する。
【0004】
一実施形態においてもたらされる封止されたPCMヒートシンクが、下方シェル、上方シェル、封止された相変化材料及び内部マトリクス(matrix)を含む。内部マトリクスは、封止された相変化材料を受容するように構成された空間を含む。封止された相変化材料と、下方シェル及び上方シェルのうち少なくとも1つとの間で熱エネルギーが移送される。特定の実施形態において、上方シェルが下方シェルに室温かつ室圧(大気圧)で結合される。
【0005】
他の実施形態においてもたらされる相変化材料ヒートシンクが、封止されたワックスパウダー、内部マトリクス、下方シェル及び上方シェルを含む。内部マトリクスは、封止されたワックスパウダーを受容するように構成された空間を含む。下方シェルは、キャビティを形成するように構成された隆起したエッジを含む。キャビティは、内部マトリクス及び封止されたワックスパウダーを受容するように構成されている。上方シェルは、下方シェルの隆起したエッジに結合している。特定の実施形態において、上方シェルは、室温かつ室圧で下方シェルの隆起したエッジに結合される。
【0006】
さらに他の実施形態において、封止された相変化材料ヒートシンクを形成する方法がもたらされる。該方法は、封止された相変化材料を下方シェル内へと挿入する工程を含む。封止された相変化材料は、上方シェルで覆われ、内部マトリクスのスペース内部に受容される。上方シェルは、室温かつ室圧で下方シェルに結合される。
【0007】
他の技術的特徴は、以下の図面、発明の詳細な説明及び請求の範囲から、当業者には直ちに明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示をより完璧に理解することのために、添付図面とともに、以下の詳細な説明を参照されたい。
【0009】
図1】本開示に従った封止された相変化材料ヒートシンクを示す。
【0010】
図2A】本開示に従った図1の内部マトリクスの例を示す。
【0011】
図2B】本開示に従った図1の内部マトリクスの例を示す。
【0012】
図2C】本開示に従った図1の内部マトリクスの例を示す。
【0013】
図3A】本開示に従った図1の相変化材料ヒートシンクの形成方法の第1の実施例を示す。
【0014】
図3B】本開示に従った図1の相変化材料ヒートシンクの形成方法の第1の実施例を示す。
【0015】
図3C】本開示に従った図1の相変化材料ヒートシンクの形成方法の第1の実施例を示す。
【0016】
図3D】本開示に従った図1の相変化材料ヒートシンクの形成方法の第1の実施例を示す。
【0017】
図4A】本開示に従った図1の相変化材料ヒートシンクの形成方法の第2の実施例を示す。
【0018】
図4B】本開示に従った図1の相変化材料ヒートシンクの形成方法の第2の実施例を示す。
【0019】
図4C】本開示に従った図1の相変化材料ヒートシンクの形成方法の第2の実施例を示す。
【0020】
図4D】本開示に従った図1の相変化材料ヒートシンクの形成方法の第2の実施例を示す。
【0021】
図5A】本開示に従った図1の相変化材料ヒートシンクの形成方法の第3の実施例を示す。
【0022】
図5B】本開示に従った図1の相変化材料ヒートシンクの形成方法の第3の実施例を示す。
【0023】
図5C】本開示に従った図1の相変化材料ヒートシンクの形成方法の第3の実施例を示す。
【0024】
図5D】本開示に従った図1の相変化材料ヒートシンクの形成方法の第3の実施例を示す。
【0025】
図6A】本開示に従った図1の相変化材料ヒートシンクの形成方法の第4の実施例を示す。
【0026】
図6B】本開示に従った図1の相変化材料ヒートシンクの形成方法の第4の実施例を示す。
【0027】
図6C】本開示に従った図1の相変化材料ヒートシンクの形成方法の第4の実施例を示す。
【0028】
図6D】本開示に従った図1の相変化材料ヒートシンクの形成方法の第4の実施例を示す。
【0029】
図6E】本開示に従った図1の相変化材料ヒートシンクの形成方法の第4の実施例を示す。
【0030】
図7】本開示に従った図1の相変化材料ヒートシンクの形成方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に議論する図1乃至図7、及び本特許書面中の本開示の原理を記述するために用いられる多くの実施形態は、例示のためだけであり、本開示の範囲を制限するように解釈してはならない。本開示の原理が、現在知られているか否かに拘わらない如何なる数の技術によっても実施可能であることを当業者は理解するであろう。さらに、図面は必ずしも縮尺されていない。
【0032】
上述したように、ヒートシンク内に相変化材料(PCM)を含むことにより一般にシーリングが要求され、シーリングは、PCMを含む圧力容器を作ることによって効果的に達成される。例えば、パラフィンワックスがアルミニウム容器内にシーリングされて、1つのタイプのPCMヒートシンクを形成する。そのPCMヒートシンクは、典型的に真空ろう付け(vacuum brazing)及び高圧シールプラグを用いて、パラフィンワックスが液体として膨張する際にヒートシンクから逃げることを防止する。真空ろう付けは、限定された数の施設で実行され、典型的には数ヶ月のリードタイムがある。さらに、これらのヒートシンクをパラフィンワックスで充填して、シールプラグを挿入する工程は、通常、90℃以上の高温でなされ、組立の困難性を更に増大させる。
【0033】
図1は、本開示に従った封止された相変化材料ヒートシンク100の断面図を示す。図1に示す封止された相変化材料ヒートシンク100の実施形態は、例示のためだけである。本開示の範囲から逸脱することなく、封止された相変化材料ヒートシンク100の他の実施形態も用いることができる。
【0034】
ヒートシンク100は、下方シェル102及び上方シェル104を含む。下方シェル102は隆起したエッジ106を有し、隆起エッジ106は、内部マトリクス110及び封止された相変化材料112を収容するように構成されるキャビティ108を形成する。下方シェル102及び上方シェル104は、上方シェル104と下方シェルの隆起エッジ106との間の界面114において互いに結合することができ、内部マトリクス110及び封止された相変化材料112をヒートシンク100内部に収容する。
【0035】
下方シェル102は、アルミニウムその他の如何なる適切な熱伝導材料をも含む。長方形として図示しているが、ヒートシンク100は、プリント回路ボードその他に隣接するように構成される、円形、楕円形、三角形などの如何なる適切な形状をも含む。例えば、いくつかの実施形態において、ヒートシンク100は円形であって良い。これらの実施形態において、下方シェル102及び上方シェル104は、実質的に円形形状であろう。追加的に、キャビティ108の形状は隆起エッジ106により決定され、内部マトリクス110の形状はシェル102及び104の形状に依存しなくともよい。
【0036】
内部マトリクス110は、下方シェル102及び/又は上方シェル104に結合しても良い熱伝導材料を含む。特定の実施例において、内部マトリクス110はピンを有する。該ピンは、下方シェル102及び/又は上方シェル104に結合し或いはそれらとともに形成されることができ、或いは、下方シェル102と上方シェル104との間に結合された熱伝導部品(図1に示していない)に結合されることもできる。他の実施例において、内部マトリクス110は、アルミニウムフォーム(泡状体)などの熱伝導フォーム(泡状体)(thermally-conductive foam)を含んでも良い。こうして、内部マトリクス110は、直線状、傾斜状、らせん状、ジグザグ状のフォーム(泡状体)その他などの如何なる適切な形態をも含んでも良い。内部マトリクス110の熱伝導材料は、熱エネルギーを、内部マトリクス110のスペース内部の封止された相変化材料112中へと伝導するように構成される。
【0037】
図1において複数の点で表現されている封止された相変化材料112は、相変化材料を封止する非相変化材料の被覆又はコーティング(coating)を含む。例えば、封止された相変化材料112は、複数の相対的に小さなガラス球を含み得る。ガラス球の各々は、相対的に少量のワックスパウダーを封止する。ワックスパウダーは、固体から液体状態へと変化する際に熱エネルギーを吸収する。こうして、封止された相変化材料112は、相変化材料の相変化を介してヒート又は熱エネルギーを貯蔵したり放出したりするように構成される。しかしながら、相変化材料が非相変化材料内に封止されているので、封止された相変化材料112は、相変化に伴って膨張せず収縮もしない。したがって、封止された相変化材料112は、相変化材料が膨張する際に(例えば、ワックスパウダー実施形態においてワックスパウダーが封止された溶融物であるときに)、下方シェル102や上方シェル104に圧力を及ぼさない。
【0038】
結果として、高圧シーリング及び高温組立の必要性が排除され、Oリング、テープその他の如何なる適切なシーリング技術を用いても、下方シェル102及び上方シェル104を室温かつ室圧で(すなわち、ヒートシンク100が形成される環境の温度や圧力を人工的に増大させることなく)互いに結合することができる。ある実施形態において、ヒートシンク100が円形である実施例で、下方シェル102及び上方シェル104が相補的な螺刻を含んで良く、両シェル102及び104を互いにネジ止めすることが可能となる。高圧環境も高温環境も必要とされないので、ヒートシンク100を形成するプロセスが著しく廉価で高速となる。
【0039】
追加的に、ある実施形態において、内部マトリクス110及び封止された相変化材料112は併せても、下方シェル102及び上方シェル104よりも小質量である。こうして、内部マトリクス110及び封止された相変化材料112を用いることにより、ヒートシンク100の質量が、同一の寸法を有するが下方シェル102及び上方シェル104のために用いる材料でできている固体ヒートシンクに比較して小さくなる。結果として、質量減少が望まれる応用において、ヒートシンク100は、同じ或いはより良い熱性能をもたらしつつ質量減少を可能にする。
【0040】
図1は封止された相変化材料ヒートシンク100の一例を示しているけれども、図1に示す実施形態に対する様々な変形が可能である。例えば、封止された相変化材料ヒートシンク100の形成及び配置は例示のためだけである。特定の必要性に応じて、成分又は要素を追加したり、省略したり、結合したり、分割したりすることができ、或いは如何なる適切な構成に位置することもできる。ある実施形態において、ヒートシンク100は、取付部(図1に図示せず)状に形成することができ、それによりヒートシンク100を特定応用に容易に組み込むことができる。
【0041】
図2A−Cは、本開示に従った内部マトリクス110の数例を示している。図2A−Cに示す内部マトリクス110の数例は、例示のためだけである。本開示の範囲から逸脱することなく、他の実施形態の内部マトリクス110を用いることができる。これらの例において、内部マトリクス110は、濃い領域で表現されている熱伝導材料202及び白い領域で表現されている空間又は間隙204を含む。さらに、内部マトリクス110は、平面図で示されている。
【0042】
図2Aに示す実施形態において、熱伝導材料202が複数のピンとして構成されている。空間204は、ピンにより形成される連続的な開放領域を含む。方形として図示されているけれども、ピンは変形的には円形その他の如何なる適切な形状であってもよいことが理解される。図2Bに示す実施形態において、熱伝導材料202は複数のプレートとして構成されている。空間204は、複数のプレート間に形成された連続的な開放空間を含む。直線として図示されているけれども、プレートは変形的には傾斜状、ジグザグ状その他の如何なる適切な形状であってもよいことが理解される。図2Cに示される実施形態において、熱伝導材料202はグリッド(grid)として構成されている。空間204は、グリッドにより形成される不連続な開放領域を含む。方形グリッドとして図示されているけれども、グリッドは変形的には如何なる適切な形状であってもよいことが理解される。
【0043】
以下に説明する図3−6は、封止された相変化材料ヒートシンク100の特定例の形成方法を示している。しかしながら、本開示の範囲から逸脱することなく、ここで述べる要素の如何なる適切な構成をも実施可能であることが理解される。
【0044】
図3A−Dは、本開示の一実施形態に従った、封止された相変化材料ヒートシンク100の形成を示している。図3Aに示す特定例において、下方シェル102は、ピンを含む一体的な内部マトリクス110を有する。下方シェル102は、内部マトリクス110とともに形成することができる。或いは、下方シェル102形成後のキャビティ108において、内部マトリクス110を下方シェル102に結合することもできる。
【0045】
内部マトリクス110のピンは、下方シェル102と封止された相変化材料ヒートシンク112との間で、ヒート又は熱エネルギーを伝導するように構成されている。封止された相変化材料ヒートシンク112は、内部マトリクス110上に追加され、図3Bに示すように、複数のピン間の空間又は間隙内を実質的に充填する。複数のピンの寸法及び間隙は、封止された相変化材料ヒートシンク100が実装等される応用での熱的要求などの、如何なる適切な基準(criteria)に基づいても選択することができる。さらに、直線として図示されているけれども、ピンは、螺旋状、ジグザグ状その他の如何なる適切な構成をとることができる。
【0046】
図3C−Dに示されるように、上方シェル104が下方シェル102の上に追加され、内部マトリクス110及び封止された相変化材料112並びにシェル及び104が、図1に関して述べたように如何なる適切な方法によっても、界面114で互いにシーリングすることができ、それにより封止された相変化材料ヒートシンク100を形成する。上方シェル104を下方シェル102にシーリングした後は、内部マトリクス110の複数のピンは、上方シェル104と封止された相変化材料112との間でヒート又は熱エネルギーを伝導させるように構成されている。
【0047】
図4A−Dは、本開示の一実施形態に従った封止された相変化材料ヒートシンク100の形成を示す。図4Aに示されるように、この特定例において、隆起エッジ106により形成されたキャビティ108を有する下方シェル102が提供される。次に、封止された相変化材料112が、図4Bに示されるように、キャビティ108に追加される。
【0048】
図4Cに示されるように、上方シェル104は、ピンを含む一体的な内部マトリクス110を含む。上方シェル104は内部マトリクス110とともに形成されても良く、或いは上方シェル104が形成された後に内部マトリクス110を上方シェル104に結合させても良い。内部マトリクス110のピンは、上方シェル104と封止された相変化材料112との間でヒート又は熱エネルギーを伝導するように構成される。複数のピンの寸法及び間隙は、封止された相変化材料ヒートシンク100が実装等される応用での熱的要求などの、如何なる適切な基準(criteria)に基づいても選択することができる。さらに、直線として図示されているけれども、ピンは、螺旋状、ジグザグ状その他の如何なる適切な構成をとることができる。
【0049】
図4Dに示されるように、内部マトリクス110を伴う上方シェル104は、下方シェル102及び封止された相変化材料112の上に追加され、それにより封止された相変化材料112が内部マトリクス110の複数のピン間の間隙を実質的に充填する。シェル102及び104は、図1に関して述べたように如何なる適切な方法によっても、界面114で互いにシーリングすることができ、それにより封止された相変化材料ヒートシンク100を形成する。上方シェル104を下方シェル102にシーリングした後は、内部マトリクス110の複数のピンは、下方シェル102と封止された相変化材料112との間でヒート又は熱エネルギーを伝導させるように構成される。
【0050】
図5A−Dは、本開示の一実施形態に従った封止された相変化材料ヒートシンク100の形成を示す。この特定例において、内部マトリクス110は、下方内部マトリクス1101及び上方内部マトリクス1102を含む。図5Aに示されるように、下方シェル102は、ピンを含む、一体的な下方内部マトリクス1101を有する。下方シェル102は内部マトリクス1101とともに形成されても良く、或いは下方シェル102が形成された後に、キャビティ108内において内部マトリクス1101を下方シェル102に結合させても良い。
【0051】
下方内部マトリクス1101の複数のピンは、下方シェル102と封止された相変化材料112との間でヒート又は熱エネルギーを伝導するように構成される。封止された相変化材料112は、図5Bに示されるように、内部マトリクス1101の上に追加され、ピン間及びピン上方の空間を実質的に充填する。複数のピンの寸法及び間隙は、封止された相変化材料ヒートシンク100が実装等される応用での熱的要求などの、如何なる適切な基準(criteria)に基づいても選択することができる。さらに、直線として図示されているけれども、ピンは、螺旋状、ジグザグ状その他の如何なる適切な構成をとることができる。
【0052】
図5Cに示されるように、上方シェル104は、ピンを含む一体的な内部マトリクス1102を含む。上方シェル104は内部マトリクス1102とともに形成されても良く、或いは上方シェル104が形成された後に内部マトリクス1102を上方シェル104に結合させても良い。上方内部マトリクス1102のピンは、封止された相変化材料112と上方シェル104との間でヒート又は熱エネルギーを伝導するように構成される。複数のピンの寸法及び間隙は、封止された相変化材料ヒートシンク100が実装等される応用での熱的要求などの、如何なる適切な基準(criteria)に基づいても、また下方内部マトリクス1101のピン寸法及び間隙等に基づいて選択することができる。さらに、直線として図示されているけれども、ピンは、螺旋状、ジグザグ状その他の如何なる適切な構成をとることができる。上方内部マトリクス1102のピンの寸法及び間隙は、下方内部マトリクス1101のピンの寸法及び間隙と異なっても良いし、同一でも良い。さらに、直線として図示されているけれども、上方内部マトリクス1102のピンは、螺旋状、ジグザグ状その他の如何なる適切な構成をとることができる。
【0053】
図5C−Dに示されるように、上方シェル104及び上方内部マトリクス1102を、下方シェル102、下方内部マトリクス1101及び封止された相変化材料112の上に追加され、それにより下方内部マトリクス1101上の封止された相変化材料112が上方内部マトリクス1102の複数のピン間の間隙を実質的に充填する。下方内部マトリクス1101のピンと上方内部マトリクス1102とが整合して図示されているけれども、代わりにこれらのピンは互いにずれていても良く、図3A及び図4Cのピンと同一の長さ又は他の如何なる適切な長さにすることも可能になる。これらの実施形態のいくつかにおいて、封止された相変化材料112は、下方内部マトリクス1101のピンの頂部上方に追加されない。
【0054】
図5Dに示されるように、上方シェル104は、図1に関して述べたように如何なる適切な方法によっても、界面114でシェル102と104とを互いにシーリングすることにより、下方シェル102に結合することができ、それにより封止された相変化材料ヒートシンク100を形成する。
【0055】
図6A−Eは、本開示の一実施形態に従った、封止された相変化材料ヒートシンク100の形成を示している。図6Aに示す特定例において、隆起エッジ106により形成されるキャビティ108を有する下方シェル102がもたらされる。
【0056】
次に、図6B−Eにおいて複数の点で表現されている内部マトリクス110が、図6Bに示されるように、キャビティ108に追加される。本実施形態においては、ピンの代わりに、内部マトリクス110は、アルミニウムフォーム(泡状体)(foam)又は他の如何なる適切なタイプの熱伝導フォーム(泡状体)を含み得る。次に、封止された相変化材料112が、図6Cに示すように内部マトリクス110内の空間に追加される。
【0057】
図6D−Eに示されるように、上方シェル104が下方シェル102、内部マトリクス110及び封止された相変化材料112の上に追加され、シェル102及び104が、図1に関して述べたような如何なる適切な方法によっても界面114で互いにシーリングすることができ、封止された相変化材料ヒートシンク100を形成する。こうして、上方シェル104が下方シェル102にシーリングされた後に、内部マトリクス110が、封止された相変化材料112と、下方シェル102及び上方の何れか又は両方との間でヒート又は熱エネルギーを伝導させる。
【0058】
図7は、本開示に従って、封止された相変化材料ヒートシンク100を形成する方法700を示している。図7に示されている方法700は、図示のためだけである。封止された相変化材料ヒートシンク100は、本開示の範囲から逸脱することなく、如何なる適切な方法によっても形成することができる。
【0059】
最初に、封止された相変化材料112が下方シェル102内へと挿入される(ステップ702)。特定の実施形態において、或いはいくつかの実施形態において、封止されたワックスパウダーを、(図4Bに示されるように)下方シェル102内のキャビティ108へと挿入でき、(図3Bに示されるように)下方シェル102内の内部マトリクス110の空間へと挿入でき、(図3B又は図6Cに示されるように)下方シェル102内の内部マトリクス110の空間へと挿入でき、或いは、(図5Bに示されるように)下方シェル102内の下方マトリクスの空間及び上方に挿入することもできる。
【0060】
次に、封止された相変化材料112が上方シェル104で覆われる(ステップ704)。特定の実施形態において、或いは幾つかの実施形態において、封止されたワックスパウダー及び内部マトリクス110が、(図3C又は図6Dに示されるように)上方シェル104で覆われ、封止されたワックスパウダーが、(図4Cに示されるように)内部マトリクス110を含む上方シェル104で覆われ、或いは、封止されたワックスパウダー及び下方内部マトリクス1101が、(図5Cに示されるように)上方内部マトリクス1102を含む上方シェル104で覆われることができる。
【0061】
次に、上方シェル104が下方シェル102に結合されて、封止された相変化材料ヒートシンク100を完成させる(ステップ706)。例えば、高圧又は高温シーリング技術を使わずに、シェル102とシェル104との間の界面114で、上方シェル104を下方シェル102に結合させることができる。こうして、真空ろう付けも高圧シールプラグの何れも必要がない。代わりに、ファスナー、ネジ、Oリング、テープその他の適切な室温室圧技術を用いて、シェル102及び104を互いに結合することができる。結果として、従来の相変化材料ヒートシンクに比較して著しく廉価かつ高速であるプロセスを用いて封止された相変化材料ヒートシンク100を形成することができ、依然として、固体金属ヒートシンクに比較して質量減少の利益が得られる。
【0062】
図7は、封止された相変化材料ヒートシンク100を形成する方法700の一例を示しているけれども、図7に対して多くの変形が可能である。例えば、一連のステップが示されているが、図7に示される多くのステップが、オーバーラップしても良いし、並行に生じても良いし、異なる順序で生じてもよいし、或いは多重回数生じてもよい。
【0063】
本開示の範囲から逸脱することなく、本明細書で述べた物及び方法に対して、修正、追加、省略が可能である。例えば、物の発明の成分が一体化されても分離されても良い。方法は、より多くのステップ、より少ないステップ又は他のステップを含んでも良い。さらに、上述したように、ステップは如何なる適切な順序で遂行されても良い。
【0064】
本書面を通じて用いられる用語及びフレーズの定義をすることが利益となり得る。用語「結合」及びその派生語は、2個又はそれ以上の要素間の直接的又は間接的な通信を意味する。これらの要素は互いに物理的接触状態にあっても無くても良い。用語「含む」及び「有する」並びにこれらの派生語は、限定のない含有を意味する。用語「又は」は「及び/又は」を意味する。用語「各」は、セットの各メンバー、又はセットのうちのサブセットの各メンバーを意味する。「上の方(over)」及び「下の方(under)」の用語は、図中の相対的位置を意味し、製造中又は使用中に所要の方向を示す分けではない。「高い方」及び「低い方」などの用語は、相対的な値を意味しており、特定の値や値の範囲を示唆することを意図していない。「関連する」及び「関連して」などの用語は、それらの派生語とともに、「含まれる」、「相互接続する」、「包含する」、「包含される」、「接続する」、「結合する」、「通信する」、「協力する」、「インターリービングする」、「並置する」、「近接する」、「拘束される」、「有する」、「所有する」その他の意味を含む。
【0065】
本開示は、これまで述べてきた複数の実施形態を含み、これらの実施形態及び方法に一般に関連する方法、変形及び置換が当業者には明白であろう。したがって、実施形態の上述の説明は本開示を定義したり限定しない。添付の特許請求の範囲により定義されるような、本開示の真意及び範囲を逸脱することなく、他の変形、交換及び改変も可能である。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7