特許第6367373号(P6367373)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6367373ロジン変性フェノール樹脂及び印刷インキ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367373
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】ロジン変性フェノール樹脂及び印刷インキ
(51)【国際特許分類】
   C08G 8/28 20060101AFI20180723BHJP
   C09D 11/10 20140101ALI20180723BHJP
【FI】
   C08G8/28 Z
   C09D11/10
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-570061(P2016-570061)
(86)(22)【出願日】2016年6月7日
(86)【国際出願番号】JP2016066877
(87)【国際公開番号】WO2016208375
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2016年11月28日
【審判番号】不服2017-12404(P2017-12404/J1)
【審判請求日】2017年8月22日
(31)【優先権主張番号】特願2015-126573(P2015-126573)
(32)【優先日】2015年6月24日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(72)【発明者】
【氏名】土屋 友紀雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 龍太
(72)【発明者】
【氏名】江波戸 博
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 倫彦
(72)【発明者】
【氏名】内山 竜次
【合議体】
【審判長】 岡崎 美穂
【審判官】 小柳 健悟
【審判官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−135007(JP,A)
【文献】 特開2013−189628(JP,A)
【文献】 特開平5−279612(JP,A)
【文献】 特開2009−227785(JP,A)
【文献】 特開2001−261768(JP,A)
【文献】 特開2013−112757(JP,A)
【文献】 特開2013−112756(JP,A)
【文献】 特開2013−213113(JP,A)
【文献】 東京洋紙協同組合,印刷豆知識,2000年,http://www.tykk.com/tykk./q_and_a/mame/mand/kotaku.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 8/34
C09D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジン(A)、フェノール性化合物(B)、アルデヒド化合物(C)、油脂(D)ポリオール化合物(E)、及び多塩基酸化合物(G)を必須の原料と前記フェノール性化合物(B)の80質量%以上が炭素原子数6以下のアルキル基を有するアルキルフェノールであり、ロジン(A)とフェノール性化合物(B)とアルデヒド化合物(C)とを反応させる工程(α)、次いで油脂(D)を反応させる工程(β)、更にポリオール化合物(E)を反応させる工程(γ)を有することを特徴とするロジン変性フェノール樹脂の製造方法
【請求項2】
前記ポリオール化合物(E)として、グリセリンとペンタエリスリトールとを併用する請求項1記載のロジン変性フェノール樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記多塩基酸化合物(G)を前記工程(β)で反応させる請求項1記載のロジン変性フェノール樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記多塩基酸化合物(G)が、下記から選択される一種類以上である請求項1記載のロジン変性フェノール樹脂の製造方法。
シュウ酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸から選択される脂肪族二塩基酸又はその無水物
(無水)テトラヒドロフタル酸、(無水)ヘキサヒドロフタル酸から選択される脂環式二塩基酸又はその無水物
(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸から選択される芳香族二塩基酸又はその無水物
【請求項5】
請求項1〜の何れか一つに記載の方法にて製造されるロジン変性フェノール樹脂、ゲル化剤、及び有機溶剤を配合する印刷インキ用ワニスの製造方法
【請求項6】
請求項記載の方法にて製造される印刷インキ用ワニスに顔料を配合する印刷インキの製造方法
【請求項7】
請求項記載の方法にて製造される印刷インキを紙基材上に印刷してなる印刷物の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高光沢の印刷面が得られる印刷インキ、これに用いる印刷インキ用ワニス及びロジン変性フェノール樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット枚葉印刷、オフセット輪転印刷、オフセット新聞印刷等のオフセット印刷において、より美しい印刷面を実現するためには樹脂の性能が非常に重要である。にじみやインキの飛散による汚れがなく、光沢に優れ、高速印刷にも耐えうる乾燥性を有する印刷インキを実現するためには、例えば、樹脂の親水性や溶剤溶解性、粘弾性等を最適化する樹脂設計が必要となる。樹脂設計において原料成分の選択や反応比率はもちろんのこと、各成分の反応順等の製造方法によっても樹脂の性能は大きく変化する。
【0003】
オフセット印刷インキ用の樹脂としてはロジン変性フェノール樹脂が従前から広く用いられている。特に、フェノール原料としてオクチルフェノールやノニルフェノール等の中鎖アルキルフェノールを用いた場合に溶剤溶解性に優れる樹脂となり、これを用いた印刷インキは高光沢で美しい印刷面が得られることが知られている(特許文献1参照。)しかしながら、昨今これらの中鎖アルキルフェノールに環境ホルモンの疑いがあることが分かり、欧州では高懸念物質に指定されるなどの動きがある。そのため、これらの中鎖アルキルフェノールを使用せずとも高い性能を発揮できる印刷インキ用樹脂が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−128972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の課題は、中鎖アルキルフェノールを使用せずとも高い性能を発揮できる印刷インキ用樹脂及びこれを用いた印刷インキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ロジン変性フェノール樹脂の製造において、従来はロジン、フェノール性化合物、アルデヒド化合物、ポリオール化合物等の原料を反応させた後に、油脂を添加して反応させる方法が一般的であったところ、ポリオール原料より先に油脂を反応させる方法により得られる樹脂は、ヘプタントレランスが高く印刷面の光沢に優れる印刷インキが得られることを見出した。更に、該方法によればオクチルフェノールやノニルフェノール等の中鎖アルキルフェノールの代わりにブチルフェノール等の短鎖アルキルフェノールを用いた場合にも、溶剤溶解性が十分に高いロジン変性フェノール樹脂が得られることを見出した。そして、これらの成果として本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、ロジン(A)、フェノール性化合物(B)、アルデヒド化合物(C)、油脂(D)、及びポリオール化合物(E)を必須の原料とするロジン変性フェノール樹脂であって、ロジン(A)とフェノール性化合物(B)とアルデヒド化合物(C)とを反応させる工程(α)、次いで油脂(D)反応させる工程(β)、更にポリオール化合物(E)を反応させる工程(γ)を有する方法にて製造されることを特徴とするロジン変性フェノール樹脂に関する。
【0008】
本発明はさらに、前記ロジン変性フェノール樹脂、ゲル化剤、及び有機溶剤を含有する印刷インキ用ワニスに関する。
【0009】
本発明はさらに、前記印刷インキ用ワニスに顔料を配合してなることを特徴とする印刷インキに関する。
【0010】
本発明はさらに、前記印刷インキを紙基材上に印刷してなる印刷物に関する。
【0011】
本発明はさらに、ロジン(A)、フェノール性化合物(B)、アルデヒド化合物(C)、油脂(D)、及びポリオール化合物(E)を必須の原料とするロジン変性フェノール樹脂であって、ロジン(A)とフェノール性化合物(B)とアルデヒド化合物(C)とを反応させる工程(α)、次いで油脂(D)を反応させる工程(β)、更にポリオール化合物(E)を反応させる工程(γ)を有することを特徴とするロジン変性フェノール樹脂の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高光沢の印刷面が得られる印刷インキ、これに用いる印刷インキ用ワニス及びロジン変性フェノール樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のロジン変性フェノール樹脂は、ロジン(A)、フェノール性化合物(B)、アルデヒド化合物(C)、油脂(D)、及びポリオール化合物(E)を必須の原料とするロジン変性フェノール樹脂であって、ロジン(A)とフェノール性化合物(B)とアルデヒド化合物(C)とを反応させる工程(α)、次いで油脂(D)反応させる工程(β)、更にポリオール化合物(E)を反応させる工程(γ)を含む方法にて製造されることを特徴とする。
【0014】
ロジン変性フェノール樹脂の製造において、従来は、ロジン、フェノール性化合物、アルデヒド化合物、ポリオール化合物等の原料を反応させた後、ほぼ最終工程で油脂を添加して反応させる方法が一般的であった。これに対し本発明では、ポリオール原料より先に油脂を反応させることにより、溶剤溶解性が高く印刷面の光沢に優れるロジン変性フェノール樹脂を得ることができる。
【0015】
前記ロジン(A)は、例えば、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン等の天然ロジンの他、水添ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、強化ロジン、ロジンエステル等のロジン誘導体が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0016】
前記天然ロジンは中国産のものが一般的であるが、その他ベトナム、インドネシア、アメリカ、ブラジル、インド等、いずれの産地のものでも良い。
【0017】
前記ロジン誘導体について、前記水添ロジンは、ロジンを水添することにより、不飽和結合の一部又は全部を飽和させることにより得られるものである。前記重合ロジンは、ロジンを硫酸等の触媒の存在下に重合することにより得られるものであり、二量体のほか単量体、三量体以上の多量体も含む混合物である。前記不均化ロジンは、ロジンを加熱等することにより、分子間で水素を移動させ、一方の分子の不飽和結合を飽和させると同時にもう一方の飽和結合を不飽和化して得られるものである。前記強化ロジンは、ロジンを無水マレイン酸、フマル酸、アクリル酸等のα,β−不飽和カルボン酸にて変性した変性ロジンである。前記ロジンエステルは、ロジンをグリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコールにて変性したロジンである。
【0018】
これらの中でも、他の成分との反応性に優れ、かつ、工業的に安価であることから、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン等の天然ロジンが好ましく、更に、不飽和結合部位を有するアビエタン骨格が多く、反応性が高いことからガムロジンがより好ましい。また、ロジンの酸価は150〜200mgKOH/gの範囲であることが好ましい。
【0019】
前記フェノール性化合物(B)は、フェノール性水酸基を有するものであればいずれの化合物でも良い。具体的には、フェノールの他、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、ペンチルフェノール、ヘキシルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、キシレノール等、炭素原子数1〜10のアルキル基を有するアルキルフェノール;メトキシフェノール、エトキシフェノール、エトキシフェノール等、炭素原子数1〜10のアルコキシ基を有するアルコキシフェノール;カルダノール等天然物由来のフェノール性化合物等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0020】
これらの中でも、印刷作業性や印刷面の光沢等に優れる印刷インキとなる点では、オクチルフェノールやノニルフェノール等の中鎖のアルキルフェノールを用いることが一般的である。一方、本発明によれば、これらの中鎖アルキルフェノールに替えて、炭素原子数6以下のアルキル基を有する短鎖のアルキルフェノール用いた場合でも、中鎖のアルキルフェノールを用いた場合と同等の性能を有するロジン変性フェノールが得られる。フェノール性化合物(B)全量における前記短鎖のアルキルフェノールの割合は特に制限されないが、例えば、フェノール性化合物(B)の80質量%以上を炭素原子数6以下のアルキル基を有するアルキルフェノールとしても良い。
【0021】
前記アルデヒド化合物(C)は、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グリオキサール、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。中でも、反応性に優れることからホルムアルデヒド又はパラホルムアルデヒドが好ましい。
【0022】
前記油脂(D)は、例えば、亜麻仁油、桐油、米油、サフラワー油、大豆油、トール油、菜種油、パーム油、ひまし油、やし油脂等の油脂;これら油脂由来の脂肪酸;これらの再生油脂;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸等、炭素原子数12〜30の高級脂肪酸等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも環境に対する負荷が少なく、工業的に安価であることから大豆油が好ましい。
【0023】
前記ポリオール化合物(E)は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、ネオペンチルグリコール等の2価アルコール;グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール等の3価以上のアルコール等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの中でも、得られるロジン変性フェノール樹脂の分子量や粘弾性を好ましい値に調整することが容易となることから、前記3価以上のアルコールが好ましく、グリセリン又はペンタエリスリトールが好ましい。
【0024】
本発明のロジン変性フェノール樹脂は、前記ロジン(A)、フェノール性化合物(B)、アルデヒド化合物(C)、油脂(D)、及びポリオール化合物(E)と合わせて、その他の成分を原料成分に含んでも良い。その他の成分は、例えば、石油樹脂(F)、多塩基酸化合物(G)、テルペン樹脂(H)等が挙げられる。
【0025】
前記石油樹脂(F)は、具多的には、ナフサの分解により生じる不飽和化合物を重合した重量平均分子量500〜100,000程度の樹脂である。例えば、C5留分を原料とする脂肪族系、C9留分を原料とする芳香族系、C5留分とC9留分を原料とした共重合系、シクロペンタジエン及びジシクロペンタジエンを原料とする脂環族系、更にアリルアルコールや酢酸ビニルエステル等を共重合したもの、これら石油樹脂に無水マレイン酸やアクリル酸等を付加したもの等が挙げられる。前記C5留分は、例えば、イソプレン、ピペリレン、シクロペンタジエン、ペンテン等が挙げられる。前記C9留分は、例えば、ビニルトルエン、インデン、ジシクロペンタジエン等が挙げられる。石油樹脂(F)は1種類を単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。
【0026】
石油樹脂(F)の市販品は、例えば、日本ゼオン社製「クイントンA100」、「クイントンB170」、「クイントンK100」、「クイントンM100」、「クイントンR100」、「クイントンC200S」、丸善石油化学社製「マルカレッツT−100AS」、「マルカレッツR−100AS」等の脂肪族系;JX日鉱日石エネルギー社製「ネオポリマーL−90」、「ネオポリマー120」、「ネオポリマー130」、「ネオポリマー140」、「ネオポリマー150」、「ネオポリマー170S」、「ネオポリマー160」、「ネオポリマーE−100」、「ネオポリマーE−130」、「ネオポリマー130S」、「ネオポリマーS」、東ソー社製「ペトコールLX」、「ペトコールLX−HS」、「ペトコール100T」、「ペトコール120」、「ペトコール120HS」、「ペトコール130」、「ペトコール140」、「ペトコール140HM」、「ペトコール140HM5」、「ペトコール150」、「ペトコール150AS」等の芳香族系;日本ゼオン社製「クイントンD100」、「クイントンN180」、「クイントンP195N」、「クイントンS100」、「クイントンS195」、「クイントンU185」、「クイントンG100B」、「クイントンG115」、「クイントンD200」、「クイントンE200SN」、「クイントンN295」、東ソー社製「ペトロタック60」、「ペトロタック70」、「ペトロタック90」、「ペトロタック100」、「ペトロタック100V」、「ペトロタック90HM」等の共重合系;丸善石油化学社製「マルカレッツM−890A」、「マルカレッツM−845A」、日本ゼオン社製「クイントン1325」、「クイントン1345」、「クイントン1500」、「クイントン1525L」、「クイントン1700」等の脂環族系等が挙げられる。
【0027】
前記多塩基酸化合物(G)は、例えば、シュウ酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸等の脂肪族二塩基酸又はその無水物;(無水)テトラヒドロフタル酸、(無水)ヘキサヒドロフタル酸等の脂環式二塩基酸又はその無水物;(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族二塩基酸又はその無水物;オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、トリデセン酸、テトラデセン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、ヘプタデセン酸、オクタデセン酸、ノナデセン酸、エイコセン酸、ドコセン酸、セラコレイン酸、リノール酸等の不飽和一塩基酸を二量化又は三量化させて得られるダイマー酸やトリマー酸;(無水)トリメリット酸、(無水)ピロメリット酸等3官能以上の芳香族他塩基酸等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。中でも、樹脂の粘度がインキ用に適した値となることから脂肪族二塩基酸又はその無水物、脂環式二塩基酸又はその無水物、芳香族二塩基酸又はその無水物が好ましく、芳香族二塩基酸又はその無水物が特に好ましい。
【0028】
前記テルペン樹脂(H)は、例えば、ヤスハラケミカル(株)製「YSレジンPX1250」、「YSレジンPX1150」、「YSレジンPX1000」、「YSレジンPX800」が挙げられる。
【0029】
前記ロジン(A)、フェノール性化合物(B)、アルデヒド化合物(C)、油脂(D)、ポリオール化合物(E)、及び必要に応じて用いる石油樹脂(F)、多塩基酸化合物(G)、テルペン樹脂(H)等、各原料成分の反応割合は、最終物である印刷インキの用途や所望の性能等により適宜調整される。
【0030】
一般的な樹脂設計としては、例えば、前記ロジン(A)はロジン変性フェノール樹脂の全原料成分中20〜80質量%の範囲で用いることが好ましく、40〜70質量%の範囲で用いることがより好ましい。前記フェノール性化合物(B)はロジン変性フェノール樹脂の全原料成分中5〜50質量%の範囲で用いることが好ましく、10〜30質量%の範囲で用いることがより好ましい。前記アルデヒド化合物(C)は前記フェノール性化合物(B)の水酸基1モルに対してカルボニル基が1.5〜3モルの範囲で用いることが好ましい。前記油脂(D)は、ロジン変性フェノール樹脂の全原料成分中0.5〜30質量%に範囲で用いることが好ましく、1〜20質量%の範囲で用いることがより好ましい。前記ポリオール化合物(E)はロジン変性フェノール樹脂の全原料成分中0.5〜15質量%に範囲で用いることが好ましく、1〜10質量%の範囲で用いることがより好ましい。
【0031】
前記石油樹脂(F)を用いる場合には、ロジン変性フェノール樹脂の全原料成分中0.5〜15質量%に範囲で用いることが好ましく、1〜10質量%の範囲で用いることがより好ましい。前記多塩基酸化合物(G)を用いる場合には、ロジン変性フェノール樹脂の全原料成分中0.1〜10質量%に範囲で用いることが好ましく、0.3〜5質量%の範囲で用いることがより好ましい。前記テルペン樹脂(H)を用いる場合には、ロジン変性フェノール樹脂の全原料成分中0.1〜10質量%に範囲で用いることが好ましい。
【0032】
本発明のロジン変性フェノール樹脂の製造方法は、ロジン(A)とフェノール性化合物(B)とアルデヒド化合物(C)とを同時に反応させる工程(α)、次いで油脂(D)反応させる工程(β)、更にポリオール化合物(E)を反応させる工程(γ)を有することを特徴とする。なお、前述の通り、本発明において最も重要な点は、ロジン変性フェノール樹脂の製造工程において、ポリオール化合物(E)よりも先に油脂(D)を反応させる点にある。
【0033】
前記工程(α)は、具体的には、前記ロジン(A)、フェノール性化合物(B)及びアルデヒド化合物(C)を金属触媒の存在下、加圧又は常圧条件下で加熱して反応させる方法が挙げられる。反応温度は100〜150℃程度であることが好ましく、加圧して反応させる場合、加圧条件は0.4MPa以下程度であることが好ましい。
【0034】
前記金属触媒は、例えば、酸化亜鉛、酢酸亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム等が挙げられる。
【0035】
前記工程(β)は、前記工程(α)に次いで、前記工程(α)で得られた反応生成物と油脂(D)とを反応させる工程である。具体的には、前記工程(α)後の反応釜に油脂(D)を添加し、180〜220℃程度に加熱して反応させる。
【0036】
前記工程(γ)は、前記工程(β)に次いで、前記工程(β)で得られた反応生成物とポリオール化合物(E)とを反応させる工程である。具体的には、前記工程(β)で油脂(D)を仕込み、温度を180〜220℃程度に調整した後、更にポリオール化合物(E)を仕込み、260〜300℃程度まで加熱して反応させる。
【0037】
本発明のロジン変性フェノール樹脂の製造方法は、前記工程(α)、(β)、(γ)を含んでいれば、その他の成分の反応順等は特に制限されない。即ち、前記(A)〜(E)成分以外の原料、具体的には、石油樹脂(F)、多塩基酸化合物(G)、テルペン樹脂(H)等を反応させる場合、これらを反応させるタイミングは特に限定されず、それぞれ前記工程(α)、(β)、(γ)、或いは工程(γ)後のいずれのタイミングで仕込んでも良い。
【0038】
このようにして得られる本発明のロジン変性フェノール樹脂の重量平均分子量(Mw)の好適な範囲はインキの種類によっても異なるが、通常10,000〜150,000の範囲であることが好ましい。
【0039】
尚、本発明において、重量平均分子量(Mw)は下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8320 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HZ−H」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL SuperHZM−H」×4本
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8320 EcoSECアプリケーション」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.6ml/分
標準 : 前記「GPC−8320 EcoSECアプリケーション」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−380」
東ソー株式会社製「F−450」
東ソー株式会社製「F−850」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィ
ルターでろ過したもの(50μl)。
【0040】
本発明の印刷インキ用ワニスは、前記ロジン変性フェノール樹脂、ゲル化剤、及び有機溶剤を必須の成分として含有する。前記ゲル化剤は印刷インキ用ワニスの粘弾性を調整する目的で用いるものであり、例えば、有機アルミニウム化合物、有機チタネート化合物、有機亜鉛化合物、有機力ルシウム化合物等が挙げられる。ゲル化剤は一種類を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。なかでも有機アルミニウム化合物が好ましく、有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムアルコラート、アルミニウムキレート化合物が挙げられ、なかでもアルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプレピレート、エチルアセチルアセテートアルミニウムジ−n−ブチレート、エチルアセチルアセテートアルミニウム−n−ブチレート、アルミニウムトリスエチルアセチルアセテートが好ましい。
【0041】
前記ゲル化剤の添加量は目標の粘弾性により調整が可能であるが、通常は印刷インキ用ワニス100質量部に対し、0.1〜2.0質部の範囲で用いる。
【0042】
前記有機溶剤は、例えば、植物油や石油系溶剤が挙げられる。前記植物油は、例えば、亜麻仁油、桐油、米油、サフラワー油、大豆油、トール油、菜種油、パーム油、ひまし油、やし油脂等の植物油、および、これら植物油を食品加工用等に使用した後に再生処理した再生植物油の他、アマニ油脂肪酸メチル、大豆油脂肪酸メチル、アマニ油脂肪酸エチル、大豆油脂肪酸エチル、アマニ油脂肪酸プロピル、大豆油脂肪酸プロピル、アマニ油脂肪酸ブチル、大豆油脂肪酸ブチルなどといった前記植物油脂肪酸のモノエステルなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。中でも、乾燥性に優れる印刷インキ用ワニスとなることから亜麻仁油、桐油、大豆油等の分子中に不飽和結合を有する植物油が好ましく、環境に対する負荷が小さいことから大豆油及びその再生油がより好ましい。
【0043】
前記石油系溶剤とは、例えば、JX社製「1号スピンドル油」、「3号ソルベント」、「4号ソルベント」、「5号ソルベント」、「6号ソルベント」、「ナフテゾールH」、「アルケン56NT」、三菱化学(株)製「ダイヤドール13」、「ダイヤレン168」;日産化学(株)製「Fオキソコール」、「Fオキソコール180」;JX社製「AFソルベント4号」、「AFソルベント5号」「AFソルベント6号」「AFソルベント7号」、ISU社製DSOL溶剤、「ソルベントH」;ISU(株)製「N−パラフィンC14−C18」;出光興産(株)「スーパーゾルLA35」、「スーパーゾルLA38」;エクソン化学(株)の「エクソールD80」、「エクソールD110」、「エクソールD120」、「エクソールD130」、「エクソールD160」、「エクソールD100K」、「エクソールD120K」、「エクソールD130K」、「エクソールD280」、「エクソールD300」、「エクソールD320」;マギーブラザーズ社製の「マギーソル−40」、「マギーソル−44」、「マギーソル−47」、「マギーソル−52」、「マギーソル−60」等が挙げられる。
【0044】
これらの中でも、前記ロジン変性レゾール樹脂の溶解性に優れ、芳香族成分が少ないことからAFソルベントが好ましく、特に、芳香族成分が1.0%以下である所謂アロマフリー溶剤であることが好ましい。更に具体的には、例えば、熱乾燥型オフセット輪転インキ用ワニスの調製には、JX社製「AFソルベント4号」、JX社製「AFソルベント5号」、JX社製「AFソルベント7号」が好ましく、浸透乾燥型新聞インキ用ワニスの調整にはJX社製「AFソルベント6号」、ISU社製「DSOL300」が好ましく、酸化重合型枚葉インキ用ワニスの調整にはJX社製「AFソルベント6号」が好ましい。
【0045】
本発明の印刷インキ用ワニスは各種の印刷インキ用途に用いることができるが、オフセットインキ用途に用いる場合、印刷インキ用ワニスの不揮発分が30〜75質量%となるよう調整することが好ましい。また、VOCを低減して環境負荷の小さいインキとするには、前記有機溶剤として植物油のみを用いることが好ましい。一方、オフセット輪転印刷向けなど熱風により溶剤成分を蒸発させてセットを促すインキ用途に用いる場合には、植物油よりも石油系溶剤を多く使用するケースが多い。本発明においては、その目的に応じて植物油と石油系溶剤とを、適切な比率で使用してよい。
【0046】
本発明の印刷インキ用ワニスは、前記ゲル化剤及び有機溶剤の他、酸化防止剤等他の添加剤を含有しても良い。前記酸化防止剤は、インキ用ワニス組成物の皮張りを防止する目的で用いるものであり、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールなど公知のものを特に限定無く使用できる。前記酸化防止剤の使用量は、保存期間等を考慮して配合量を決定するが、通常は印刷インキ用ワニス100質量部中0.1〜1.0質量部の範囲で用いる。
【0047】
本発明の印刷インキ用ワニスは、上記各成分を混合、攪拌して製造することができるが、混合攪拌の際には、これらを、通常、100℃以上240℃以下の範囲内の温度に加熱することにより、各成分を溶解させて混合して得られる。
【0048】
本発明の印刷インキは、前記印刷インキ用ワニスに更に顔料等を配合してなる。顔料以外には、例えば、ワックス、乾燥促進剤(ドライヤー)、乾燥抑制剤等の各種添加剤が挙げられる。
【0049】
前記顔料は、例えば「有機顔料ハンドブック(著者:橋本勲、発行所:カラーオフィス、2006年初版)」に掲載される印刷インキ用有機顔料等が挙げられ、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、金属フタロシアニン顔料、無金属フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン顔料、金属錯体顔料、ジケトピロロピロール顔料、カーボンブラック顔料、その他多環式顔料等が使用可能である。本発明においては無機顔料を用いることもでき、例えば、酸化チタン、クラファイト、亜鉛華等の無機着色顔料の他、炭酸石灰粉、沈降性炭酸カルシウム、石膏、クレー(ChinaClay)、シリカ粉、珪藻土、タルク、カオリン、アルミナホワイト、硫酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、バライト粉、砥の粉等の無機体質顔料や、シリコーン、ガラスビーズなどがあげられる。これら顔料の配合量は、目的とする印刷インキの種類によっても異なるが、通常、印刷インキ100質量部中5〜55質量部の範囲であることが好ましい。
【0050】
前記ワックスは、インキ塗膜の耐摩擦性、ブロッキング防止性、スベリ性、スリキズ防止性等を向上させる目的で添加されるものであり、例えば、カルナバワックス、木ろう、ラノリン、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の天然ワックス;フィッシャートロプスワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリアミドワックス、シリコーン化合物等の合成ワックス等が挙げられる。ワックスの配合量は目的とする印刷インキの種類によっても異なるが、通常、印刷インキ100質量部中0.1〜7.0質量部の範囲であることが好ましい。
【0051】
前記乾燥促進剤(ドライヤー)は、インキ塗膜の乾燥性を向上させる目的で添加されるものであり、例えば、コバルト、マンガン、鉛、鉄、亜鉛等の金属とオクチル酸、ナフテン酸、ネオデカン酸等のカルボン酸との塩である金属石鹸類等が挙げられる。乾燥促進剤の配合量は目的とする印刷インキの種類によっても異なるが、通常、印刷インキ100質量部中0.01〜5質量部の範囲であることが好ましい。
【0052】
前記乾燥抑制剤は、保存安定性を向上させ、皮張りを抑制する目的で添加されるものであり、例えば、ハイドロキノン、メトキノン、tert−ブチルハイドロキノン等が挙げられる。乾燥抑制剤は、乾燥抑制剤の配合量は目的とする印刷インキの種類によっても異なるが、通常、印刷インキ100質量部中0.01〜5質量部の範囲であることが好ましい。
【0053】
これら印刷インキに添加される各種添加剤は、印刷インキ中に均一に混合できれば印刷インキ製造のいずれの段階で添加しても構わない。具体的には、印刷インキ製造の最終段階で添加しても良いし、印刷インキ用ワニスの製造段階で予め添加しても構わない。
【0054】
本発明の印刷インキは、例えば、ロジン変性レゾール樹脂、ゲル化剤、有機溶剤、顔料及びその他添加剤を、ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミルといった公知のインキ製造装置を用いて、練肉・調製することにより得ることができる。
【0055】
このようにして調整された本発明の印刷インキは、オフセットインキ、樹脂凸版インキ、その中でも特に熱乾燥型オフセット輪転インキ、浸透乾燥型新聞インキ、酸化重合型枚葉インキとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0056】
以下に、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。尚、実施例中、部、%は、それぞれ質量部、質量%である。
【0057】
尚、本発明の実施例において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用い、下記の条件により測定した値である。
【0058】
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8320 GPC」、
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HZ−H」
+東ソー株式会社製「TSK−GEL SuperHZM−H」×4本
検出器: RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPC−8320 EcoSECアプリケーション」
測定条件: カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.6ml/分
標準 : 前記「GPC−8320 EcoSECアプリケーション」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
東ソー株式会社製「F−380」
東ソー株式会社製「F−450」
東ソー株式会社製「F−850」
試料 : 樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0059】
実施例1 ロジン変性フェノール樹脂(1)の製造
撹拌器、温度計、縮合水分離器および窒素導入管を備えた加圧反応釜に、酸価165mgKOH/gのガムロジン1,000質量部、パラターシャルブチルフェノール442質量部を仕込み、120℃で加熱して溶解させた。次いで、92%パラホルムアルデヒド183質量部と酸化マグネシウム2質量部を加えて130℃まで加熱し、0.20Paまで加圧して、2時間反応させた。脱圧後、大豆油206質量部、石油樹脂102質量部、及び無水マレイン酸20質量部を加え、200℃まで昇温させた後、ペンタエリスリトール14質量部とグリセリン92質量部を加えた。さらに280℃まで昇温し、同温度で酸価が25mgKOH/g以下になるまで反応させて、ロジン変性フェノール樹脂(1)を得た。ロジン変性フェノール樹脂(1)の重量平均分子量(Mw)は35,000であった。
【0060】
比較例1 ロジン変性フェノール樹脂(2)の製造
撹拌器、温度計、縮合水分離器および窒素導入管を備えた加圧反応釜に、酸価165mgKOH/gのガムロジン1,000質量部、パラオクチルフェノール607質量部を仕込み、120℃で加熱溶解して溶解させた。次いで、92%パラホルムアルデヒド183部質量と酸化マグネシウム2質量部を加えて130℃まで加熱し、0.18Paまで加圧して、2時間反応させた。脱圧後、石油樹脂102質量部と無水マレイン酸20質量部を加え、200℃まで昇温させた後、ペンタエリスリトール14質量部とグリセリン92質量部を加えた。さらに280℃に昇温し、同温度で酸価が25mgKOH/g以下になるまで反応させて、ロジン変性フェノール樹脂(2)を得た。ロジン変性フェノール樹脂(2)の重量平均分子量(Mw)は42,000であった。
【0061】
溶剤溶解性の評価
実施例1及び比較例1で得たロジン変性フェノール樹脂、及び下記要領で調整した印刷インキ用ワニスのトルエン溶液について、ヘプタントレランスにより溶剤溶解性を評価した。結果を表2に示す。
【0062】
1.ロジン変性フェノール樹脂の溶剤溶解性評価
ロジン変性フェノール樹脂とトルエンとを質量比1/1で混合した溶液1gに、ヘプタンを0.1mlずつ添加して撹拌した。白濁が生じた時点で添加したヘプタンの総量(ml)×100の値をヘプタントレランスとした。
【0063】
2.印刷インキ用ワニスの溶剤溶解性評価
表1に示す割合で、ロジン変性フェノール樹脂と大豆油とを200℃で1時間加熱撹拌し、次いで、石油系溶剤(JX日鉱日石エネルギー株式会社製「AF−ソルベント7号」)を加えた。160℃まで温度を下げた後、ゲル化剤(エチルアセチルアセテートアルミニウムジ−n−ブチレート)を加え、同温度で1時間保持して印刷インキ用ワニスを調整した。なお、大豆油の添加量は、ロジン変性フェノール樹脂と大豆油との合計質量に対し、ロジン変性フェノール樹脂中の大豆油と後添加した大豆油との合計質量が約44質量%となるように調整し、石油系溶剤の添加量は、印刷インキ用ワニスの粘度が300Pa・Sとなるように調整した。
この印刷インキ用ワニスとトルエンとを質量比1/2で混合した溶液1gに、ヘプタンを0.1mlずつ添加して撹拌した。白濁が生じた時点で添加したヘプタンの総量(ml)の値をヘプタントレランスとした。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】