(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
使用されるダイマー脂肪酸が、少なくとも90wt%程度のダイマー分子、5wt%未満のトリマー分子、ならびに5wt%未満のモノマー分子および他の副生成物からなる、請求項1に記載のベースコート材料。
すべてのダイマー脂肪酸を主体とした反応生成物の質量百分率割合の総計が、顔料入り水性ベースコート材料の合計質量に対して、0.1〜30wt%である、請求項1から7のいずれか一項に記載の顔料入り水性ベースコート材料。
【発明を実施するための形態】
【0012】
成分(a)
本発明の反応生成物は、少なくとも1つのダイマー脂肪酸(a)を用いて製造することができる。
【0013】
ダイマー脂肪酸(ダイマー化脂肪酸またはダイマー酸としてもかねて知られている)は一般に、本発明との関連においては特に、不飽和脂肪酸のオリゴマー化によって製造される混合物である。上記ダイマー脂肪酸は、例えば、不飽和植物脂肪酸の触媒式ダイマー化によって製造することができ、使用される出発物質は、より特定すると、不飽和C
12〜C
22脂肪酸である。架橋形成は、ディールス−アルダー方式に主に従って進行するため、ダイマー脂肪酸の製造用に使用される脂肪酸中にある二重結合の数および位置に応じて、主にダイマー生成物の混合物が結果として生じ、これらのダイマー生成物は、カルボキシル基同士の間に脂環式基、線形脂肪族基、分岐脂肪族基、および加えて、C
6芳香族炭化水素基を有する。機構および/または任意の後続する水素化に応じて、脂肪族ラジカルは、飽和していてもよく、または不飽和であってもよく、芳香族基の割合もまた、変動し得る。それゆえ、カルボン酸基同士の間にあるラジカルは、例えば24個から44個の炭素原子を含有する。上記のダイマー脂肪酸の製造用に使用される脂肪酸は、好ましくは、18個の炭素原子を有する脂肪酸であり、このことは、ダイマー生成物が36個の炭素原子を有することを意味する。ダイマー脂肪酸のカルボキシル基同士を結合させるラジカルは、好ましくは不飽和結合および芳香族炭化水素ラジカルを有さない。
【0014】
したがって、本発明の目的においては、C
18脂肪酸が、上記のダイマー脂肪酸の製造に使用されるのが好ましい。リノレン酸、リノール酸および/またはオレイン酸を使用することが特に好ましい。
【0015】
反応様式に応じて、上で指定したオリゴマー化は、主要部分としてダイマー分子を含むが、トリマー分子と、モノマー分子および他の副生成物とをさらに含む、混合物が生成する。精製は通常、蒸留によって実施される。商用ダイマー脂肪酸は一般に、少なくとも80wt%のダイマー分子、最大19wt%のトリマー分子、ならびに1wt%以下のモノマー分子および他の副生成物を含有する。
【0016】
少なくとも90wt%程度のダイマー脂肪酸分子、好ましくは少なくとも95wt%程度のダイマー脂肪酸分子、より好ましくは少なくとも98wt%程度のダイマー脂肪酸分子からなるダイマー脂肪酸を使用することが好ましい。
【0017】
本発明の意味においては、少なくとも90wt%程度のダイマー分子、5wt%未満のトリマー分子、ならびに5wt%未満のモノマー分子および他の副生成物からなるダイマー脂肪酸を使用することが好ましい。95〜98wt%程度のダイマー分子、5wt%未満のトリマー分子、ならびに1wt%未満のモノマー分子および他の副生成物からなるダイマー脂肪酸を使用することが特に好ましい。少なくとも98wt%程度のダイマー分子、1.5wt%未満のトリマー分子、ならびに0.5wt%未満のモノマー分子および他の副生成物からなるダイマー脂肪酸の使用も同様に、特に好ましい。ダイマー脂肪酸中にあるモノマー分子、ダイマー分子およびトリマー分子の割合、ならびに加えて、他の副生成物の割合の測定は、例えばガスクロマトグラフィー(GC)によって実施することができる。この場合はGC分析前に、ダイマー脂肪酸を、三フッ化ホウ素法(DIN EN ISO5509を参照されたい)によって対応するメチルエステルに変換した後、GCによって分析する。
【0018】
したがって、本発明の目的における「ダイマー脂肪酸」の基本的な特徴は、ダイマー脂肪酸の製造が不飽和脂肪酸のオリゴマー化を包含することである。上記オリゴマー化は、ダイマー生成物を主に生成し、すなわち、好ましくは少なくとも80wt%程度のダイマー生成物、より好ましくは少なくとも90wt%程度のダイマー生成物、非常に好ましくは少なくとも95wt%程度のダイマー生成物、より特定すると少なくとも98wt%程度のダイマー生成物を生成する。したがって、上記オリゴマー化により、正確に2個の脂肪酸分子を含有するダイマー生成物を主に生成することが、こうした「ダイマー脂肪酸」という記号表示の根拠となっており、このことは、いかなる場合においても通例となる事柄である。したがって、「ダイマー脂肪酸」という関連用語の代替表現は、「ダイマー化脂肪酸を含む混合物」である。
【0019】
使用のためのダイマー脂肪酸は、商用製品として入手可能である。例としては、Oleon製のRadiacid0970、Radiacid0971、Radiacid0972、Radiacid0975、Radiacid0976およびRadiacid0977、Croda製のPripol1006、Pripol1009、Pripol1012およびPripol1013、Cognis製のEmpol1008、Empol1061およびEmpol1062、ならびにArizona Chemical製のUnidyme10およびUnidyme TIも挙げられる。
【0020】
成分(b)
本発明の反応生成物は、一般構造式(I)
【化2】
(式中、Rは、C
3〜C
6アルキルラジカルである)の少なくとも1つの化合物(b)を用いて製造してもよい。添え字nは、いずれの場合においても、化合物(b)が120〜6000g/molの数平均分子量を有するように選択すべきである。化合物(b)は、好ましくは150〜3500g/molの数平均分子量、より好ましくは180〜2500g/molの数平均分子量、より特定すると200〜2200g/molの数平均分子量を有する。数平均分子量は、例えば、250g/mol、500g/molまたは1000g/molであってもよい。しかしながら、2000g/molまたは3000g/molの値もまた、可能である。そうではないと明記されていない限り、本発明との関連における数平均分子量は、蒸気圧浸透によって測定される。測定は、蒸気圧浸透圧計(Knauer製のモデル10.00)により、50℃のトルエンに溶かした一連の濃度の調査対象成分について実施し、実験における較正定数を使用機器に関して決定するための較正物質としてベンゾフェノンを用いた(ベンジルが較正物質として使用されたE.Schroeder、G.Mueller、K.−F.Arndt、「Leitfaden der Polymercharakterisierung」[Introduction to polymer characterization]、Akademie−Verlag、Berlin、47〜54頁、1982年に従った。)。
【0021】
公知のように、加えて、すでに上記で先述してもいるように、数平均分子量は常に、統計上の平均値である。それゆえ、同じ事柄が、式(I)に従ったパラメータnにも当てはまらなければならない。こうした事柄との関連で説明を要する化合物(b)の構造的特性は、次のように表してもよい。したがって、化合物(b)は、相異なるサイズを有する分子の混合物である。これらの分子の少なくとも一部またはすべては、一続きになった同一のまたは異なるモノマー単位(反応済み形態のモノマーの状態)によって区別される。したがって、化合物(b)または対応する分子混合物は原則として、複数の(すなわち、少なくとも2つの)同一のまたは異なるモノマー単位を含む分子を含む。上記混合物中には、モノマー自体、言い換えると、モノマーの未反応形態もまた、比例的に存在し得ると理解される。このことが、公知のように、製造反応(すなわち、特にモノマーの組合せ)は一般に、分子の一様性を伴って進行しないことの唯一の理由である。したがって、規定されたモノマーには個別の分子量を割り当てることができる一方で、化合物(b)は、分子量が相違する分子の混合物である。したがって、化合物(b)は、個別の分子量によって記述することができない代わりに、この結果として、例えば上記に記載された数平均分子量等の平均分子量が常に割り当てられる。上記原則は、当業者には、例えばポリマーからよく知られている。同様にポリマーも常に、相異なる分子の混合物である。
【0022】
したがって、本発明の目的においては、化合物(b)は、同一のまたは異なるモノマー単位の配列によって区別される分子を含む混合物である、分子の混合物と理解される。したがって、上記のような理解は、化合物(b)に関して上記で与えられた式(I)中のパラメータnが、いかなる場合においても1.0超であることを意味する。好ましくは、nは、少なくとも1.5であり、より特定すると少なくとも2.0であり、より好ましくは少なくとも3.0である。したがって、好ましくは、化合物(b)は、オリゴエーテルまたはポリエーテルである。実際、好ましい実施形態(例えば、nが少なくとも3である場合)において、平均で少なくとも3個のモノマーが結合しており、上記混合物中に存在する分子は、平均で少なくとも2つのエーテル結合を有する。したがって、上記の好ましい場合においてはすでに、ポリマーとしての特質について言及している可能性があり、または、少なくともオリゴマーとしての特質について言及している可能性がある。
【0023】
本発明によって使用され得る化合物(b)において、n個のすべてのラジカルRを同一にしておくことも可能である。しかしながら、相異なる種類のラジカルRが存在することも同様に可能である。好ましくは、すべてのラジカルRが同一である。
【0024】
Rは、好ましくは、C
4アルキレンラジカルである。より好ましくは、Rは、テトラメチレンラジカルである。
【0025】
非常に特に好ましくは、本発明による使用のためのポリエーテルは、概してジオール型である、線形ポリテトラヒドロフランである。
【0026】
反応生成物
本発明の反応生成物の製造に関して、特殊な点は存在しない。成分(a)と成分(b)とは、常識的なエステル化によって互いに結合する。したがって、成分(a)のカルボキシル基は、成分(b)のヒドロキシル基と反応する。反応は例えば、バルクまたは一般的な有機溶媒との溶液中において、例えば50℃〜300℃の温度で実施することができる。当然ながら、硫酸、スルホン酸および/もしくはテトラアルキルチタネート、亜鉛および/もしくはスズアルコキシレート、例えばジ−n−ブチルスズオキシド等のジアルキルスズオキシド、またはジアルキルスズオキシドの有機塩等、一般的な触媒を用いることも可能である。慣例的には、水分離器をさらに使用して、縮合反応の際に形成した水を収集する。
【0027】
ここで、成分(a)および成分(b)は、少なくとも1対1のモル比、好ましくは1対1から5対1のモル比、より好ましくは1.1対1から3対1のモル比、さらにより好ましくは1.1対1から1.9対1のモル比、非常に特に有利には1.1対1から1.8対1のモル比で使用され、非常に特に好ましい一実施形態において、1.2対1から1.5対1のモル比で使用される。したがって、使用されるダイマー脂肪酸(a)のモル量は少なくとも、使用される化合物(b)のモル量に等しい。
【0028】
成分(a)と成分(b)とのモル比の結果として、本発明の反応生成物は概して、いかなる場合においても、カルボキシ官能性である。反応生成物の酸価は、10〜120mg KOH/gであり、好ましくは12〜80mg KOH/gであり、特に好ましくは14〜60mg KOH/gであり、非常に好ましくは15〜50mg KOH/gである。酸価は、DIN53402に従って測定される。本発明との関連において公定規格に言及する場合、この公定規格は当然ながら、出願日において現行だった規格のバージョンを意味し、または、現行バージョンが当該出願日において存在しない場合は当該出願日において最新の現行バージョンを意味する。
【0029】
得られる反応生成物は、1000〜20000g/molの数平均分子量、好ましくは1500〜15000g/molの数平均分子量、非常に好ましくは2000〜12000g/molの数平均分子量、より特定すると2500〜10000g/molの数平均分子量を有する。
【0030】
例示の意味で好ましい本発明の反応生成物の実施形態の例として、下記の特に好ましい実施形態を挙げることができる。
【0031】
a) 本発明の反応生成物の特に好ましい一実施形態において、ダイマー脂肪酸は、リノレン酸、リノール酸および/またはオレイン酸から製造されており、少なくとも98wt%程度のダイマー分子、1.5wt%未満のトリマー分子、ならびに0.5wt%未満のモノマー分子および他の副生成物からなる。
【0032】
b) 本発明の反応生成物の特に好ましい別の実施形態において、本発明による使用のための化合物(b)はポリテトラヒドロフランであり、180〜2500g/molの数平均分子量も有する。
【0033】
c) 本発明の反応生成物の特に好ましい別の実施形態において、成分(a)および成分(b)は、1.2対1から2対1のモル比で使用される。
【0034】
d) 本発明の反応生成物の特に好ましい別の実施形態において、前記生成物は、15〜50mg KOH/gの酸価を有する。
【0035】
e) 本発明の反応生成物の特に好ましい別の実施形態において、前記生成物は、2500〜10000g/molの数平均分子量を有する。
【0036】
この意味で好ましい本発明の反応生成物の実施形態のさらなる一例として、a)からe)に明示した特徴のすべてを組み合わせて実現する実施形態を挙げることができる。
【0037】
顔料入り水性ベースコート材料
本発明は、少なくとも1つの本発明の反応生成物を含む、顔料入り水性ベースコート材料にさらに関する。当然ながら、反応生成物に関して上記に記載された好ましい実施形態のすべては、反応生成物を含むベースコート材料にも同様に当てはまる。
【0038】
ベースコート材料は、自動車仕上げ塗装に場合にも、一般的な工業用塗装の場合にも使用される、着色作用のある中塗りコーティング材料である。このベースコート材料は一般に、焼き付けた(完全に硬化させた)サーフェーサーもしくはプライマーサーフェーサーによって前処理しておいた金属素地またはプラスチック素地に塗布し、または、このようにして塗布できない場合は時折、プラスチック素地に直接塗布されることもある。使用される素地は、既存の塗料系をさらに含んでいてもよく、こうした既存の塗料系には、任意に、(例えば研磨による)前処理も要求することができる。1つより多いベースコート塗膜を塗布することは、現在、すっかり慣例的になっている。したがって、上述のように1つより多いベースコート塗膜を塗布する場合、第1のベースコート塗膜は、こうした第2の塗膜のための素地を構成する。上記のように第1のベースコート塗膜が素地を構成する場合との関連において、焼き付けたサーフェーサー皮膜への塗布の代わりとして特にあり得る事柄は、硬化済み電着塗膜を備え付けた金属素地に直接第1のベースコート材料を塗布すること、および、第1のベースコート塗膜を別途硬化させることなく、第1のベースコート塗膜に直接第2のベースコート材料を塗布することである。特に環境による影響からあるベースコート塗膜または一番上のベースコート塗膜を保護するために、少なくとも追加用クリアコート塗膜がベースコート塗膜または一番上のベースコート塗膜の上に塗布される。こうした塗布は一般に、ウェットオンウェットプロセスによって実施され、すなわち、ベースコート塗膜を硬化させることなく、クリアコート材料を塗布する。次いで最後に、硬化を一体的に実施する。硬化済み電着塗膜型塗膜上に1つのみのベースコート塗膜を生産し、次いでクリアコート材料を塗布し、次いでこれらの2つの塗膜を一体的に硬化させることもまた、現在、広く一般に実践されている。
【0039】
すべての本発明の反応生成物の質量百分率割合の総計は、顔料入り水性ベースコート材料の合計質量に対して、好ましくは0.1wt%〜30wt%であり、より好ましくは1wt%〜20wt%であり、非常に好ましくは1.5wt%〜15wt%であり、または2wt%〜12wt%でさえある。
【0040】
本発明の反応生成物の量が0.1wt%未満である場合、ピンホールに対する安定性のさらなる改良が達成されない可能性もあり得る。上記の量が30wt%超である場合、特定の状況下においては、例えばベースコート材料中の前記反応生成物の非相溶性等といった欠点が存在し得る。このような非相溶性は、例えば、不均一なレベリングがあったときにも、浮きまだらまたは沈殿があったときにも、明らかになり得る。
【0041】
好ましい反応生成物を特定の比率範囲で含むベースコート材料についての特段の定めがあり得る場合、次の事柄が当てはまる。当然ながら、好ましい群に含まれない反応生成物も依然としてベースコート材料中に存在し得る。この場合、特定の比率範囲は、好ましい群の反応生成物にのみ当てはまる。それでもやはり、好ましい群の反応生成物および好ましい群の一部ではない反応生成物からなる反応生成物の合計比率も同様に、特定の比率範囲に属することが好ましい。
【0042】
したがって、1.5〜15wt%の比率範囲および好ましい群の反応生成物に制限した場合、この1.5〜15wt%という比率範囲は最初に、好ましい群の反応生成物にのみ明確に当てはまる。しかしながら、上記のように制限した場合、好ましい群からの反応生成物および好ましい群の一部を形成しない反応生成物からなる元々包含されていたすべての反応生成物もまた、合計で1.5〜15wt%まで存在することが好ましいであろう。したがって、好ましい群の5wt%の反応生成物が使用される場合、好ましくない群の10wt%以下の反応生成物が使用され得る。
【0043】
本発明の目的においては、記載された原則は、記載されたすべてのベースコート材料の成分およびこれらの成分の比率範囲に対しても有効であり、例えば、顔料、結合剤としてのポリウレタン樹脂またはメラミン樹脂等の架橋剤に対しても有効である。
【0044】
本発明によって使用されるベースコート材料は、有色顔料および/またはエフェクト顔料を含む。このような有色顔料およびエフェクト顔料は当業者に公知であり、例えば、Roempp−Lexikon Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、New York、1998年、176頁および451頁で記述されている。顔料の割合は、例えば、顔料入り水性ベースコート材料の合計質量に対して1〜40wt%の範囲、好ましくは2〜30wt%の範囲、より好ましくは3〜25wt%の範囲に収まり得る。
【0045】
本発明との関連において好ましいベースコート材料は、物理硬化、熱硬化または熱と光化学的作用のある放射線の両方による硬化が可能なポリマーを結合剤として含む、ベースコート材料である。本発明との関連における「結合剤」は、関係するDIN EN ISO4618によれば、顔料および充填剤を含めない、コーティング組成物の不揮発性成分である。したがって、特定の結合剤は、下記においてこうした結合剤という表現が、例えば特定のポリウレタン樹脂のように、物理硬化、熱硬化または熱と光化学的作用のある放射線の両方による硬化が可能な特定のポリマーについて主に使用されているとしても、例えば一般的なコーティング加工用添加剤、本発明の反応生成物、または、下記で後述する一般的な架橋剤を含める。
【0046】
本発明の反応生成物の他にも、本発明の顔料入り水性ベースコート材料は、より好ましくは、少なくとも1つのポリウレタン樹脂を結合剤として含む。ポリウレタン樹脂を含むこうした種類のコーティング材料もまた、慣例的には、物理硬化してもよく、熱硬化してもよく、または熱と光化学的作用のある放射線の両方によって硬化してもよい。
【0047】
本発明との関連においては、「物理硬化」という用語は、ポリマー溶液またはポリマー分散物からの溶媒の消失による塗膜の形成を意味する。一般的に、架橋剤は、こうした物理硬化のためには必要でない。
【0048】
本発明との関連においては、「熱硬化」という用語は、母体となるコーティング材料(parent coating material)中に別個の架橋剤または自己架橋形成用結合剤を用いた状態で、熱により開始される、コーティング塗膜の架橋形成を意味する。架橋剤は、結合剤中に存在する反応性官能基と相補的な反応性官能基を含有する。上記のようなコーティング塗膜の架橋形成は一般的に、当業者によって、外部架橋形成と呼ばれている。相補的な反応性官能基、または自己反応性官能基、すなわち同じ種類の基と反応する基が結合剤分子中にすでに存在する場合、存在する結合剤により、自己架橋が形成されている。適切とされる相補的な反応性官能基および自己反応性官能基の例は、独国特許出願DE19930665A1、7頁、28行目から9頁、24行目によって公知である。
【0049】
本発明の目的においては、光化学的作用のある放射線は、近赤外線(NIR)と、紫外線等の電磁放射線、より特定すると紫外線と、電子放射線等の粒子放射線とを意味する。紫外線による硬化は、一般的に、ラジカルまたはカチオン性光開始剤によって開始される。熱硬化および光化学的作用のある光による硬化が同時に用いられる場合、「二重硬化」という用語も使用される。
【0050】
本発明の目的においては、物理硬化するベースコート材料も好ましく、熱硬化するベースコート材料、または熱と光化学的作用のある放射線の両方によって硬化する、すなわち「二重硬化」によって硬化する、ベースコート材料も好ましい。
【0051】
熱硬化する好ましいベースコート材料は、結合剤としてのポリウレタン樹脂、好ましくはヒドロキシル含有ポリウレタン樹脂、および架橋剤としてのアミノプラスト樹脂またはブロック型もしくは非ブロック型ポリイソシアネート、好ましくはアミノプラスト樹脂を含む、ベースコート材料である。アミノプラスト樹脂の中でも特に、メラミン樹脂が好ましい。
【0052】
すべての架橋剤、好ましくはアミノプラスト樹脂ならびに/またはブロック型および/もしくは非ブロック型ポリイソシアネート、より特に好ましくはメラミン樹脂の質量百分率割合の総計は、顔料入り水性ベースコート材料の合計質量に対して、好ましくは1〜20wt%であり、より好ましくは1.5〜17.5wt%であり、非常に好ましくは2〜15wt%であり、または2.5〜10wt%でさえある。
【0053】
存在するのが好ましいポリウレタン樹脂は、イオン型親水性および/またはノニオン型親水性により安定化することができる。本発明の好ましい実施形態において、ポリウレタン樹脂は、イオン型親水性により安定化されている。好ましいポリウレタン樹脂は、線形であり、または分岐の場合を含む。より好ましくは、ポリウレタン樹脂は、そのポリウレタン樹脂の存在下でオレフィン性不飽和モノマーが重合されたポリウレタン樹脂である。このポリウレタン樹脂は、オレフィン性不飽和モノマーの重合に由来したポリマーと一緒に存在することが、このポリマーとポリウレタン樹脂とが互いに共有結合していなくても、可能である。しかしながら、ポリウレタン樹脂もやはり、オレフィン性不飽和モノマーの重合に由来したポリマーに同じように共有結合することができる。オレフィン性不飽和モノマーは、好ましくは、アクリレート基および/またはメタクリレート基を含有するモノマーである。使用すべきアクリレート基および/またはメタクリレート基を含有するモノマーは、アクリレート基またはメタクリレート基を含有しない他のオレフィン性不飽和化合物と組み合わせて使用することも同様に好ましい。ポリウレタン樹脂に結合するオレフィン性不飽和モノマーは、より好ましくは、アクリレート基またはメタクリレート基を含有するモノマーであり、これにより、ポリウレタン(メタ)アクリレートを生成する。非常に好ましくは、ポリウレタン樹脂は、ポリウレタン(メタ)アクリレートである。存在するのが好ましいポリウレタン樹脂は、物理硬化、熱硬化、または熱と光化学的作用のある放射線の両方による硬化が可能である。より特定すると、上記ポリウレタン樹脂は、熱硬化または熱と光化学的作用のある放射線の両方による硬化が可能である。特に好ましくは、ポリウレタン樹脂は、外部架橋形成を可能にする反応性官能基を含む。
【0054】
適切な飽和または不飽和ポリウレタン樹脂は、例えば、
− 独国特許出願DE19914896A1、第1段、29行目から49行目、および第4段、23行目から第11段、5行目
− 独国特許出願DE19948004A1、4頁、19行目から13頁、48行目、
− 欧州特許出願EP0228003A1、3頁、24行目から5頁、40行目、
− 欧州特許出願EP0634431A1、3頁、38行目から8頁、9行目、または
− 国際特許出願WO92/15405、2頁、35行目から10頁、32行目
で記述されている。
【0055】
ポリウレタン樹脂は、好ましくは、当業者に公知の脂肪族化合物型ポリイソシアネート、脂環式化合物型ポリイソシアネート、脂肪族化合物−脂環式化合物型ポリイソシアネート、芳香族化合物型ポリイソシアネート、脂肪族化合物−芳香族化合物型ポリイソシアネートおよび/または脂環式化合物−芳香族化合物型ポリイソシアネートを用いて製造される。
【0056】
ポリウレタン樹脂を製造するためのアルコール成分として、比較的高い分子質量の飽和および不飽和ポリオールならびに低い分子質量の飽和および不飽和ポリオールを使用し、さらには任意に、当業者に公知な少量のモノアルコールも使用することが好ましい。使用される低い分子質量のポリオールは、より特定すると、分岐の場合を導入するためのジオールおよび少量のトリオールである。比較的高い分子質量の適切なポリオールの例は、飽和またはオレフィン性不飽和ポリエステルポリオールおよび/またはポリエーテルポリオールである。比較的高い分子質量のポリオールは、より特定するとポリエステルポリオールであり、特に、400〜5000g/molの数平均分子量を有するポリエステルポリオールである。
【0057】
親水性による安定化および/または水性媒体への分散性の増大を目的とした場合、存在するのが好ましいポリウレタン樹脂は、特定のイオン性基、および/またはイオン性基に変換され得る(潜在的にイオン性の基であり得る)基を含有してもよい。こうした種類のポリウレタン樹脂は、本発明との関連においては、イオン型親水性により安定化されたポリウレタン樹脂と呼ぶ。ノニオン型親水性による修飾基も同様に存在し得る。しかしながら、イオン型親水性により安定化されたポリウレタンが好ましい。より正確に言えば、修飾基は、代替的には、
− 中和剤および/もしくは第四級化用作用物質によってカチオンに変換され得る官能基、ならびに/またはカチオン性基(カチオン型修飾)、
または
− 中和剤によってアニオンに変換され得る官能基、および/もしくはアニオン性基(アニオン型修飾)、
ならびに/または
− ノニオン型親水性基(ノニオン型修飾)
である。
【0058】
当業者が認識しているように、カチオン型修飾のための官能基は例えば、第一級、第二級および/または第三級アミノ基、第二級スルフィド基(secondary sulfide group)および/または第三級ホスフィン基、より特定すると第三級アミノ基および第二級スルフィド基(中和剤および/または第四級化用作用物質によってカチオン性基に変換され得る官能基)である。第一級、第二級、第三級および/または第四級アンモニウム基、第三級スルホニウム基ならびに/または第四級ホスホニウム基、より特定すると第四級アンモニウム基および第三級スルホニウム基等のカチオン性基(当業者に公知の中和剤および/または第四級化用作用物質を用いて上記官能基から製造された基)もまた、言及すべきである。
【0059】
周知のように、アニオン型修飾のための官能基は、例えばカルボン酸基、スルホン酸基および/またはホスホン酸基、より特定するとカルボン酸基(中和剤によってアニオン性基に変換され得る官能基)、ならびに加えて、カルボキシレート基、スルホネート基および/またはホスホネート基等のアニオン性基(当業者に公知の中和剤を用いて上記官能基から製造された基)である。
【0060】
ノニオン型親水性修飾のための官能基は、好ましくはポリ(オキシアルキレン)基、より特定するとポリ(オキシエチレン)基である。
【0061】
イオン型親水性修飾は、(潜在的に)イオン性の基を含有するモノマーによって、ポリウレタン樹脂に導入することができる。ノニオン型修飾は例えば、ポリウレタン分子の側基または末端基としてポリ(エチレン)オキシドポリマーを組み入れることによって、導入される。親水性修飾は例えば、イソシアネート基に対して反応性の少なくとも1つの基、好ましくは少なくとも1つのヒドロキシル基を含有する化合物によって、導入される。イオン型修飾は、修飾基と少なくとも1つのヒドロキシル基とを含有するモノマーを用いて導入することができる。ノニオン型修飾を導入するためには、当業者に公知のポリエーテルジオールおよび/またはアルコキシポリ(オキシアルキレン)アルコールを使用することが好ましい。
【0062】
ポリウレタン樹脂は、好ましくは、グラフトポリマーであり得る。より特定すると、ポリウレタン樹脂は、オレフィン性不飽和化合物、好ましくはオレフィン性不飽和モノマーによってグラフトされたポリウレタン樹脂である。この場合、後でポリウレタンは、例えばオレフィン性不飽和モノマーを主体とした側基および/または側鎖によってグラフトされる。より特定すると、上記側鎖は、ポリ(メタ)アクリレートを主体とした側鎖である。本発明の目的におけるポリ(メタ)アクリレートは、アクリレート基および/またはメタクリレート基を含有するモノマーを含み、好ましくは、アクリレート基および/またはメタクリレート基を含有するモノマーからなる、ポリマーまたはポリマーラジカルである。ポリ(メタ)アクリレートを主体とした側鎖は、(メタ)アクリレート基含有モノマーを用いてグラフト重合中に構築された側鎖であると理解される。ここで、グラフト重合においては、グラフト重合で使用されるモノマーの合計量に対して50mol%超の(メタ)アクリレート基含有モノマー、より特定すると75mol%超の(メタ)アクリレート基含有モノマー、特に100mol%の(メタ)アクリレート基含有モノマーを使用することが好ましい。
【0063】
記述された側鎖は、好ましくはポリウレタン樹脂一次分散物の製造後に、ポリマーに導入される。この場合、上記一次分散物中に存在するポリウレタン樹脂は、オレフィン性不飽和化合物とのグラフト重合を後で進行させるのに用いられる、オレフィン性不飽和側基および/またはオレフィン性不飽和末端基を含有してもよい。したがって、グラフトのためのポリウレタン樹脂は、不飽和ポリウレタン樹脂(A)であってもよい。この場合、グラフト重合は、オレフィン性不飽和反応物質のラジカル重合である。例えば、グラフト重合のために使用されるオレフィン性不飽和化合物は、少なくとも1つのヒドロキシル基を含有することも同様に可能である。この場合は最初に、ポリウレタン樹脂の遊離イソシアネート基との反応により、これらのヒドロキシル基を介してオレフィン性不飽和化合物をポリウレタン樹脂に結合させることも同様に可能である。こうした結合は、オレフィン性不飽和化合物と、ポリウレタン樹脂中に任意に存在するオレフィン性不飽和側基および/またはオレフィン性不飽和末端基とのラジカル反応の代わりに実施され、または、このラジカル反応に加えて実施される。上記の結合の後にはやはり、上記で先述したように、ラジカル重合を用いたグラフト重合が続く。オレフィン性不飽和化合物、好ましくはオレフィン性不飽和モノマーによってグラフトされたポリウレタン樹脂が、いかなる場合においても、結果として生じる。
【0064】
ポリウレタン樹脂(A)をグラフトするのに用いるのが好ましいオレフィン性不飽和化合物としては、このグラフトを目的とした場合に当業者が利用できる事実上すべてのラジカル重合可能なオレフィン性不飽和有機モノマーを使用することができる。いくつかの好ましいモノマーの種類が、例示として明示することができ、すなわち、
− (メタ)アクリル酸またはその他のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル、
− アルキルラジカル中に最大20個の炭素原子を有する(メタ)アクリル酸アルキルおよび/またはシクロアルキルエステル、
− 少なくとも1個の酸基、より特定すると例えば(メタ)アクリル酸等の正確に1個のカルボキシル基を含むエチレン性不飽和モノマー、
− 5個から18個の炭素原子を有するα位で分岐したモノカルボン酸のビニルエステル、
− (メタ)アクリル酸と、5個から18個の炭素原子を有するα位で分岐したモノカルボン酸のグリシジルエステルとの反応生成物、
− オレフィン(例えば、エチレン)、(メタ)アクリルアミド、ビニル芳香族炭化水素(例えば、スチレン)、塩化ビニル等のビニル化合物および/またはエチルビニルエーテル等のビニルエーテル等、さらなるエチレン性不飽和モノマー
を例示として明示することができる。
【0065】
(メタ)アクリレート基を含有するモノマーを使用することが好ましく、この結果、グラフトによって結合させる側鎖は、ポリ(メタ)アクリレートを主体とした側鎖になる。
【0066】
オレフィン性不飽和化合物とのグラフト重合を進行できるようにする、ポリウレタン樹脂中のオレフィン性不飽和側基および/またはオレフィン性不飽和末端基が、好ましくは特定のモノマーによって、ポリウレタン樹脂に導入される。これらの特定のモノマーは、オレフィン性不飽和基の他にも、例えば、イソシアネート基に対して反応性である少なくとも1つの基をさらに含む。ヒドロキシル基も好ましく、第一級アミノ基および第二級アミノ基も好ましい。ヒドロキシル基が特に好ましい。
【0067】
ポリウレタン樹脂中へのオレフィン性不飽和側基および/またはオレフィン性不飽和末端基の導入を可能にするものとして記述されたモノマーは当然ながら、後でオレフィン性不飽和化合物によってポリウレタン樹脂をさらにグラフトすることなく、用いることもできる。しかしながら、ポリウレタン樹脂は、オレフィン性不飽和化合物によってグラフトされるのが好ましい。
【0068】
存在するのが好ましいポリウレタン樹脂は、自己架橋形成および/または外部架橋形成用結合剤であってもよい。ポリウレタン樹脂は、好ましくは、外部架橋形成を可能にする反応性官能基を含む。この場合、顔料入り水性ベースコート材料中に少なくとも1つの架橋剤が存在することが好ましい。外部架橋形成を可能にする反応性官能基は、より特定すると、ヒドロキシル基である。特に有利なことに、本発明の方法においては、ポリヒドロキシ官能性ポリウレタン樹脂を使用することが可能である。このようにポリヒドロキシ官能性ポリウレタン樹脂の使用が可能であることは、ポリウレタン樹脂が、分子1個当たりの平均で1個より多いヒドロキシル基を含有することを意味する。
【0069】
ポリウレタン樹脂は、ポリマー化学において慣例的な方法によって製造される。この方法は例えば、ポリイソシアネートとポリオールとを重合させてポリウレタンにすること、および、好ましくはこの後に続いて、オレフィン性不飽和化合物とグラフト重合させることを意味する。これらの方法は当業者に公知であり、個別に適合させることもできる。例示的な製造プロセスおよび反応条件は、欧州特許EP0521928B1、2頁、57行目から8頁、16行目に見出すことができる。
【0070】
存在するのが好ましいポリウレタン樹脂は、好ましくは200〜30000g/molの数平均分子量、より好ましくは2000〜20000g/molの数平均分子量を有する。上記ポリウレタン樹脂は、例えば0〜250mg KOH/gのヒドロキシル価をさらに有するが、より特定すると20〜150mg KOH/gのヒドロキシル価をさらに有する。ポリウレタン樹脂の酸価は、好ましくは5〜200mg KOH/gであり、より特定すると10〜40mg KOH/gである。ヒドロキシル価は、本発明との関連においては、DIN53240に従って測定され、酸価は、DIN53402に従って測定される。
【0071】
ポリウレタン樹脂含量は、いずれの場合においても、ベースコート材料の塗膜形成固形分に対して、好ましくは5wt%から80wt%の間であり、より好ましくは8wt%から70wt%の間であり、非常に好ましくは10wt%から60wt%の間である。
【0072】
塗膜形成固形分とは、最終的に結合剤割合に相当するものであり、顔料および必要に応じた充填剤も存在しないベースコート材料の不揮発分質量割合を意味する。塗膜形成固形分は、次のように測定することができる。顔料入り水性ベースコート材料の試料(約1g)を50〜100倍の量のテトラヒドロフランと混合し、次いで約10分撹拌する。次いで、不溶性顔料およびすべての充填剤をろ過によって除去し、残留物を少しばかりのTHFによってすすぎ洗いし、得られたろ液からTHFをロータリーエバポレータによって除去する。ろ液の残留物を120℃で2時間乾燥させ、得られた塗膜形成固形分を量り取る。
【0073】
すべてのポリウレタン樹脂の質量百分率割合の総計は、顔料入り水性ベースコート材料の合計質量に対して、好ましくは2〜40wt%であり、より好ましくは2.5〜30wt%であり、非常に好ましくは3〜20wt%である。
【0074】
使用すべき顔料入り水性ベースコート材料は、本発明の反応生成物と異なる少なくとも1つのポリエステル、より特定すると400〜5000g/molの数平均分子量を有するポリエステルを結合剤としてさらに含んでいてもよい。このようなポリエステルは、例えば、DE4009858の第6段、53行目から第7段、61行目、および第10段、24行目から第13段、3行目で記述されている。
【0075】
増粘剤も存在することが好ましい。適切な増粘剤は、シート状シリケートでできた群の無機増粘剤である。しかしながら、無機増粘剤に加えて、1つまたは複数の有機増粘剤も同様に使用することができる。これらの増粘剤は好ましくは、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレートコポリマー増粘剤、例えば商用製品Rheovis ASS13(BASF)、およびポリウレタン増粘剤、例えばRheovis PU1250(BASF)からなる群より選択される。使用される増粘剤は、使用される結合剤と異なる。
【0076】
さらに、顔料入り水性ベースコート材料は、少なくとも1つの補助剤をさらに含んでいてもよい。このような補助剤の例は、残留物を伴うことなくまたは残留物を実質的に伴うことなく熱分解し得る塩、物理硬化、熱硬化および/または光化学的作用のある放射線による硬化が可能でポリウレタン樹脂と異なる結合剤としての樹脂、さらなる架橋剤、有機溶媒、反応性希釈剤、透明顔料、充填剤、分子の分散により溶かすことができる型の染料(molecularly dispersely soluble dye)、ナノ粒子、光安定剤、抗酸化剤、脱気剤、乳化剤、滑剤、重合阻害剤、ラジカル重合開始剤、付着促進剤、流動調整剤、塗膜形成助剤、たれ抑制剤(SCA:sag control agent)、難燃剤、防食剤、ワックス、乾燥剤、殺生物剤およびつや消し剤である。
【0077】
上記種類の適切な補助剤は、例えば、
− 独国特許出願DE19948004A1、14頁、4行目から17頁、5行目、
− 独国特許DE10043405C1、第5段、[0031]段落から[0033]段落
によって公知である。
【0078】
上記の適切な補助剤は、慣例的な公知の量で使用される。
【0079】
本発明のベースコート材料の固形分含量は、取り扱う事例の要件に応じて変動し得る。固形分含量は、塗布、より特定するとスプレー塗布に必要な粘度によって主に導き出され、この結果、当業者ならば、当人の常識的な技術知識に基づいて調整することができ、任意に、いくつかの予備的な試験を用いてもよい。
【0080】
ベースコート材料の固形分含量は、好ましくは5wt%〜70wt%であり、より好ましくは8wt%〜60wt%であり、非常に好ましくは12wt%〜55wt%である。
【0081】
固形分含量(不揮発性部分)は、指定条件下で蒸発させたときに残留物として残留する、質量割合を意味する。本出願において、固形分含量は、そうではないと明記されていない限り、DIN EN ISO3251に従って測定される。こうした測定は、ベースコート材料を130℃で60分蒸発させることによって実施される。
【0082】
そうではないとの記載がない限り、上記試験方法は、例えば、ベースコート材料の合計質量の一部分として様々なベースコート材料の成分の割合を測定するためにも同様に用いられる。したがって、例えば、ベースコート材料に加えるべきポリウレタン樹脂の分散物にある固形分は、組成物全体の一部分としての上記ポリウレタン樹脂の割合を確認するために対応させて測定することもできる。
【0083】
本発明のベースコート材料は、水性である。このようなベースコート材料との関連において、「水性」という表現は、当業者に公知である。原則として、この「水性」という語句は、有機溶媒のみを主体としていないベースコート材料を意味しており、すなわち、原則として、この「水性」という語句は、有機溶媒のみを主体としていないベースコート材料を意味しており、すなわち、溶媒として有機系溶媒のみを含有するのではなく、溶媒としてかなりの量の水を含むという著しく異なる点がある、ベースコート材料を意味する。好ましくは、本発明における「水性」は、当該のコーティング組成物、より特定するとベースコート材料が、いずれの場合においても、存在する溶媒(すなわち、水および有機溶媒)の合計量に対して少なくとも40wt%、好ましくは少なくとも50wt%、非常に好ましくは少なくとも60wt%という水の割合を有することを意味するものだと理解すべきである。好ましくは、水の割合は、いずれの場合においても、存在する溶媒の合計量に対して40〜90wt%であり、より特定すると50〜80wt%であり、非常に好ましくは60〜75wt%である。
【0084】
本発明によって用いられるベースコート材料は、ベースコート材料の生産用に慣例的で公知な混合処理用の組立体および混合技法を用いて生産してもよい。
【0085】
本発明の方法および本発明の多層皮膜型塗料系
本発明のさらなる一態様は、
(1) 顔料入り水性ベースコート材料を素地に塗布し、
(2) 段階(1)で塗付されたコーティング材料からポリマー塗膜が形成され、
(3) 得られたベースコート塗膜にクリアコート材料を塗布し、続いて、
(4) ベースコート塗膜を、クリアコート塗膜と一緒に硬化させる
多層皮膜型塗料系を生産するための方法であって、本発明の少なくとも1つの反応生成物を含む顔料入り水性ベースコート材料を段階(1)で使用することを含む、方法である。本発明の反応生成物および顔料入り水性ベースコート材料に関する上記すべての所見は、本発明の方法に対しても有効である。より特定すると、こうした適用は、すべての好ましい特徴、非常に好ましい特徴および特に好ましい特徴にも当てはまる。
【0086】
前記方法は好ましくは、多層皮膜型有色塗料系、エフェクト塗料系および有色型エフェクト塗料系を生産するために用いられる。
【0087】
本発明によって使用される顔料入り水性ベースコート材料は、一般的に、サーフェーサーまたはプライマーサーフェーサーによって前処理しておいた金属素地またはプラスチック素地に塗布しる。前記ベースコート材料は、任意に、プラスチック素地に直接塗布することもできる。
【0088】
金属素地は、コーティング加工すべき場合、電着塗膜系によってさらにコーティング加工した後、サーフェーサーまたはプライマーサーフェーサーを塗布するのが好ましい。
【0089】
プラスチック素地は、コーティング加工する場合、サーフェーサーまたはプライマーサーフェーサーによってさらに前処理した後、塗布するのが好ましい。このような前処理のために最も頻繁に用いられる技法は、火炎処理、プラズマ処理およびコロナ放電の技法である。火炎処理を使用するのが好ましい。
【0090】
上記のように硬化済み電着塗膜系および/またはサーフェーサーによってすでにコーティング加工済みの金属素地には、本発明の顔料入り水性ベースコート材料を、例えば5〜100マイクロメートルの範囲、好ましくは5〜60マイクロメートルの範囲に収まる、自動車産業において慣例的な塗膜厚さにして、塗布してもよい。こうした塗布は、スプレー塗布方法、例えば圧縮空気スプレー塗り、エアレススプレー塗り、高速回転法、静電スプレー塗布(ESTA)を単独で用いて実施され、または、ホットスプレー塗布、例えば熱風式スプレー塗りと組み合わせて用いて実施される。
【0091】
顔料入り水性ベースコート材料は、塗布した後、公知の方法によって乾燥させることができる。例えば、好ましい(1成分型)ベースコート材料は、室温で1〜60分フラッシュした後、好ましくは30〜90℃という任意に若干高くした温度で乾燥させることができる。本発明との関連におけるフラッシュおよび乾燥は、その結果として塗料がより乾燥した状態になるが硬化には至らない、または完全に架橋されたコーティング塗膜が形成されるには至っていない、有機溶媒および/または水の蒸発を意味する。
【0092】
次いで、商用クリアコート材料を同様に一般的な方法によって塗布するが、塗膜厚さはやはり、慣例的な範囲内、例えば5〜100マイクロメートルである。
【0093】
クリアコート材料は、塗布後、例えば室温で1〜60分フラッシュすることができ、任意に乾燥させてもよい。次いで、クリアコート材料を、塗布した顔料入りベースコート材料と一緒に硬化させる。この手順の途中では、架橋反応が起きて、例えば、本発明の多層皮膜型有色塗料系および/または多層皮膜型エフェクト塗料系が素地上に生成される。硬化は好ましくは、60℃から200℃の温度で熱により実施される。好ましくは、熱硬化するベースコート材料は、さらなる結合剤としてのポリウレタン樹脂および架橋剤としてのアミノプラスト樹脂またはブロック型もしくは非ブロック型ポリイソシアネート、好ましくはアミノプラスト樹脂を含む、ベースコート材料である。アミノプラスト樹脂の中でも特に、メラミン樹脂が好ましい。
【0094】
特定の一実施形態において、多層皮膜型塗料系を生産するための方法は、
金属素地に電着塗膜材料を電気泳動塗布し、続いて電着塗膜材料を硬化させることにより、金属素地上に硬化済み電着塗膜型塗膜を生産する工程、
(i)水性ベースコート材料を電着塗膜型塗膜に直接塗布すること、または(ii)電着塗膜型塗膜に2つ以上のベースコート材料を連続的に直接塗布することにより、硬化済み電着塗膜型塗膜上に直接(i)ベースコート塗膜または(ii)相互に直接連なっている複数のベースコート塗膜を生産する工程、
(i)1つのベースコート塗膜または(ii)一番上のベースコート塗膜にクリアコート材料を直接塗布することにより、(i)ベースコート塗膜または(ii)一番上のベースコート塗膜上に直接クリアコート塗膜を生産する工程であって、
(i)1つのベースコート材料または(ii)少なくとも1つのベースコート材料は、本発明のベースコート材料である、工程、
ベースコート塗膜(i)またはベースコート塗膜(ii)、および加えて、クリアコート塗膜を一体的に硬化させる工程
を含む。
【0095】
それゆえ、後に挙げた方の実施形態において、上記の標準的な方法に比較すると、通例のサーフェーサーを塗布し、別途硬化させることがなくなっている。別途硬化させる代わりに、電着塗膜型塗膜に塗布された塗膜のすべてを一体的に硬化させ、これにより、操作全体がはるかにずっと経済的になる。それでもやはり、このようにすれば、特に本発明の反応生成物を含む本発明のベースコート材料を使用する方法により、ピンホールを事実上有さず、したがって、特に外見が極めて優れた多層皮膜型塗料系が生産される。このような多層皮膜型塗料系が生産されることは、上記方法を用いた場合は最終の硬化工程において、特に大量の有機溶媒および/または水が上記多層皮膜型塗料系から脱出しなければならず(実際、サーフェーサー塗膜を別途硬化させることがなくなっているため)、これにより、基本的なピンホールの形成しやすさが大きく増大するため、特に驚くべきことである。
【0096】
コーティング材料を素地に直接塗布すること、または、あらかじめ生産しておいたコーティング塗膜に直接塗布することは、次のように理解される。各コーティング材料は、当該コーティング材料から生産されたコーティング塗膜が素地(他のコーティング塗膜)上に配置され、素地(他のコーティング塗膜)と直接接触している状態になるような態様で、塗布される。したがって、より特定すると、コーティング塗膜と素地(他のコーティング塗膜)との間には、他の皮膜が存在しない。「直接」という詳述がない場合、塗布されたコーティング塗膜は、素地(他の塗膜)上に配置されていても、直接接触している状態で存在する必要は必ずしもない。より特定すると、さらなる皮膜が、コーティング塗膜と素地との間に配置されていてもよい。したがって、本発明との関連においては、次の事柄が事実としてある。「直接」に関する特段の定めが存在しないときは、「直接」に関する制限が明確に存在しない。
【0097】
プラスチック素地は、金属素地と基本的に同じ方法によってコーティング加工される。しかしながら、ここで、一般に、硬化は、30〜90℃という著しく低くした温度で実施される。したがって、二成分型クリアコート材料の使用が好ましい。さらに、上記との関連において、結合剤としてのポリウレタン樹脂を含み、ただし架橋剤を含まないベースコート材料の使用も、好ましい。
【0098】
本発明の方法は、金属素地および非金属素地、より特定するとプラスチック素地、好ましくは自動車ボディまたはこれらの素地の成分を塗装するために使用することができる。
【0099】
さらに、本発明の方法は、OEM仕上げ塗装における二重仕上げ塗装のためにも使用することができる。この二重仕上げ塗装とは、本発明の方法によってコーティング加工されていた素地に対して、本発明の方法による2回目の塗装がさらに実施されることを意味する。
【0100】
本発明は、上記方法によって生産できる多層皮膜型塗料系にさらに関する。こうした多層皮膜型塗料系は以下、本発明の多層皮膜型塗料系と呼ぶ。
【0101】
本発明の反応生成物および顔料入り水性ベースコート材料に関する上記すべての所見は、前記多層皮膜型塗料系および本発明の方法に対しても有効である。こうした適用は特に、すべての好ましい特徴、より好ましい特徴および最も好ましい特徴にも当てはまる。
【0102】
本発明の多層皮膜型塗料系は、好ましくは、多層皮膜型有色塗料系、エフェクト塗料系および有色型エフェクト塗料系である。
【0103】
本発明のさらなる一態様は、段階(1)の前記素地が、欠陥を有する多層皮膜型塗料系である、本発明の方法に関する。したがって、こうした欠陥を有する素地/多層皮膜型塗料系は、補修すべきまたは余すところなく再コーティング加工すべき初期仕上げ塗膜である。
【0104】
本発明の方法は、多層皮膜型塗料系にある欠陥を適宜補修するのに適している。塗膜欠陥とは一般に、コーティング上およびコーティング内にある不具合であり、通常、形状または外観に応じて名付けられる。当業者ならば、このような塗膜欠陥に数多の種類があり得ることは、認識している。こうした塗膜欠陥の種類については、例えば、Roempp−Lexikon Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、New York、1998年、235頁、「Film defects」で記述されている。
【0105】
本発明の方法によって生産された多層皮膜型塗料系も同様に、上述の欠陥を有し得る。したがって、本発明の方法の好ましい一実施形態において、段階(1)の素地は、欠陥を呈した本発明の多層皮膜型塗料系である。
【0106】
好ましくは、上記多層皮膜型塗料系は、自動車OEM仕上げ塗装との関連で上記した本発明の方法により、自動車ボディ上または自動車ボディの部品上に生産される。上述の欠陥は、OEM仕上げ塗装の実施直後に発生した場合、直ちに補修される。したがって、「OEM自動車補修塗装」という用語も使用されている。少しばかりの欠陥にのみ補修が必要な場合、「スポット」のみが補修され、ボディ全体は、余すところなく再コーティング加工(二重コーティング)されるわけではない。先に挙げた方のプロセスは、「スポット補修」と呼ばれる。したがって、OEM自動車補修塗装において、本発明の多層皮膜型塗料系(初期仕上げ塗膜)にある欠陥を修復するために本発明の方法を使用することは、特に好ましい。
【0107】
本発明との関連において自動車補修塗膜の分野に言及する場合、言い換えると、欠陥の補修が局所的であり、指定された素地が、欠陥を有する多層皮膜型塗料系である場合、このことは当然ながら、こうした欠陥を有する素地/多層皮膜型塗料系(初期仕上げ塗膜)が一般に、上記のようにプラスチック素地または金属素地上に配置されていることを意味する。
【0108】
補修された部位と、初期仕上げ塗膜の残り部分とに色の差異がないようにすべく、欠陥を補修するために本発明の方法の段階(1)で使用される水性ベースコート材料は、欠陥(初期仕上げ塗膜)を有する素地/多層皮膜型塗料系を生産するために使用された水性ベースコート材料と同じであることが好ましい。
【0109】
したがって、本発明のポリマーおよび水性顔料入りベースコート材料に関する上記所見は、多層皮膜型塗料系にある欠陥を補修するための本発明の方法に関して論述されている使用にも有効である。このような適用は特に、記載されたすべての好ましい特徴、非常に好ましい特徴および特に好ましい特徴にも当てはまる。補修すべき本発明の多層皮膜型塗料系は、多層皮膜型有色塗料系、エフェクト塗料系および有色型エフェクト塗料系であるのがさらに好ましい。
【0110】
本発明の多層皮膜型塗料系にある上記欠陥は、本発明の上記方法によって補修することができる。こうした補修を目的とした場合、補修すべき多層皮膜型塗料系の表面は、最初に研磨してもよい。好ましくは、研磨は、初期仕上げ塗膜を部分的にサンディングすることによって実施され、または、初期仕上げ塗膜からベースコートおよびクリアコートのみをサンディングで取り除き、一般にベースコートおよびクリアコートの真下に位置するプライマー層およびサーフェーサー層はサンディングで取り除かないようにすることによって、実施される。このようにすれば、補修塗膜中に特殊なプライマーおよびプライマーサーフェーサーを新しく塗布することは、特に必要でない。こうした研磨の形態は、OEM自動車補修塗装の分野において特に確立されており、ここで、この理由としては、作業場での補修塗装とは著しく異なり、一般的に言えば、欠陥は、ベースコート領域および/またはクリアコート領域内にのみ発生するが、これらの領域の下に位置するサーフェーサー皮膜およびプライマー皮膜の領域内には特に発生しないという点がある。後に挙げたプライマー皮膜中にある欠陥の方が、作業場における補修塗膜の部門においては、見受けることになる可能性がより高い。例としては、引っかき傷等の塗料損傷が挙げられ、この塗料損傷は、例えば機械的効果によって生成されるものであり、しばしば、素地表面(金属素地またはプラスチック素地)に至るまで延在する。
【0111】
この研磨手順の後には、顔料入り水性ベースコート材料を、圧搾空気式噴霧により、初期仕上げ塗膜中の欠陥部位に塗布する。顔料入り水性ベースコート材料は、塗布した後、公知の方法によって乾燥させることができる。例えば、ベースコート材料は、室温で1〜60分乾燥させた後、30〜80℃という任意に若干高くした温度で乾燥させてもよい。本発明の目的におけるフラッシュおよび乾燥とは、それによってもコーティング材料がまだ完全には硬化していない状態である、有機溶媒および/または水の蒸発を意味する。本発明の目的においては、ベースコート材料は、結合剤としてのポリウレタン樹脂および架橋剤としてのアミノプラスト樹脂、好ましくはメラミン樹脂を含むのが好ましい。
【0112】
続いて、同様に通例の技法によって商用クリアコート材料を塗布する。クリアコート材料は、塗布後、例えば室温で1〜60分フラッシュすることができ、任意に乾燥させてもよい。次いで、クリアコート材料を、塗布された顔料入りベースコート材料と一緒に硬化させる。
【0113】
いわゆる低温焼付けの場合、好ましくは、硬化は、20〜90℃の温度で実施される。ここで、二成分型クリアコート材料を使用することが好ましい。上記のように、ポリウレタン樹脂がさらなる結合剤として使用され、アミノプラスト樹脂が架橋剤として使用される場合、上記温度では、ベースコート塗膜中でアミノプラスト樹脂によって形成される架橋がわずかしか存在しない。ここで、アミノプラスト樹脂は、硬化剤としての機能に加えて、可塑化のためにも役立つものであり、顔料の湿潤を補助することができる。アミノプラスト樹脂の他にも、非ブロック型イソシアネートも同様に使用することができる。使用されるイソシアネートの性質によっては、イソシアネートは、20℃程度の低さの温度で架橋する。
【0114】
高温焼付けと呼ばれるものの場合、硬化は好ましくは、130〜150℃の温度で実施される。ここで、一成分型クリアコート材料と二成分型クリアコート材料の両方が使用される。上記のように、ポリウレタン樹脂がさらなる結合剤として使用され、アミノプラスト樹脂が架橋剤として使用される場合、上記温度では、ベースコート塗膜中でアミノプラスト樹脂によって架橋が形成される。
【0115】
多層皮膜型塗料系にある欠陥を補修することを目的とした場合、言い換えると、素地が、欠陥を有する初期仕上げ塗膜、好ましくは欠陥を呈した本発明の多層皮膜型塗料系である場合、低温焼付けを用いるのが好ましい。
【0116】
本発明のさらなる一態様は、光学的欠陥、より特定するとピンホールに対する安定性を改良するために顔料入り水性ベースコート材料中に本発明の反応生成物を使用する方法である。
【0117】
ピンホールに対する安定性の品質は原則として、ピンホール形成限界、および加えて、ピンホールの数を用いて測定してもよい。ピンホール形成限界およびピンホール形成限界の測定は、次のように記述してもよい。多層皮膜型塗料系の構築において、クリアコート塗膜の真下に配置されたベースコート塗膜の塗膜厚さは変動し、さらに、このベースコート塗膜は、別々に焼き付けられるのではなく、代わりに、クリアコート塗膜と一緒に焼き付けられる。このコーティング塗膜は例えば、電着塗膜型塗膜上に直接配置された塗膜、および/または、クリアコート塗膜の真下に直接配置された塗膜であってよい。前置きした事柄に続けて言うと、ピンホールの形成しやすさは、上記コーティング塗膜の厚さの増大に対応して塗膜から脱出する必要がある空気、有機溶媒および/または水の量も多くなっていくため、上記コーティング塗膜の厚さが増大するにつれて高まっていかなければならない。ピンホールが明白になるときの上記コーティング塗膜の塗膜厚さは、ピンホール形成限界と呼ばれる。ピンホール形成限界が高まるほど、ピンホールに対する安定性の品質が明確に向上していく。当然ながら、ピンホールの数もまた、ピンホールに対する安定性の品質の表出である。
【0118】
以下、本発明について例を用いて説明する。
【実施例】
【0119】
特定の成分に関する指定および測定方法
ポリエステル1(P1):
ブタノールではなくブチルグリコールを有機溶媒として用いて、DE4009858Aの第16段、37〜59行目にある例Dに従って製造しており、この結果、存在する溶媒は、ブチルグリコールおよび水である。対応するポリエステル分散物は、60wt%の固形分含量を有する。
【0120】
ダイマー脂肪酸(a):
使用されるダイマー脂肪酸は、1.5wt%未満のトリマー分子、98wt%のダイマー分子および0.3wt%未満の脂肪酸(モノマー)を含有している。使用されるダイマー脂肪酸は、リノレン酸、リノール酸およびオレイン酸(Pripol(商標)1012−LQ−(GD)(Croda製))を主体として製造される。
【0121】
数平均分子量の測定:
数平均分子量を蒸気圧浸透によって測定した。測定は、蒸気圧浸透圧計(Knauer製のモデル10.00)を用いて、50℃のトルエンに溶かした一連の濃度の調査対象成分について実施し、実験における較正定数を使用機器に関して決定するための較正物質としてベンゾフェノンを用いた(ベンジルが較正物質として使用されたがE.Schroeder、G.Mueller、K.−F.Arndt、「Leitfaden der Polymercharakterisierung」[Introduction to polymer characterization]、Akademie−Verlag、Berlin、47〜54頁、1982年に従った。)。
【0122】
本発明の反応生成物(IR)の生産:
IR1:
アンカー型撹拌器、温度計、凝縮器、頂部温度測定用の温度計および水分離器を備え付けた4l容ステンレス鋼製反応器内に、448.9mg KOH/gのOH価を有する604.6gの線形PolyTHF250(BASF SE製)(2.418mol)、1818.5gのダイマー脂肪酸(3.139mol)および75.0gのキシレンを、1.9gのジ−n−ブチルスズオキシド(Axion(登録商標)CS2455、Chemtura製)(DIN53240に従って測定されたOH価)の存在下で100℃に加熱した。縮合が開始するまでゆっくりと加熱し続けた。次いで、85℃の最大頂部温度において、加熱を186℃まで段階的に継続した。反応の進行は、酸価の測定によって監視した。38.1mg KOH/gの酸価に到達したら、残留するキシレンを減圧下で蒸留によって除去した。これにより、室温において液体の樹脂が生じた。
【0123】
ガスクロマトグラフィーにより、0.1%未満のキシレン含量が見出された。
【0124】
ポリマーの数平均分子量および酸価を測定した。
【0125】
冷却後、ポリエステルをブチルグリコール(BASF SE製)中に溶解させて、80%ポリマー溶液にした。
【0126】
凝集物(水)の量:81.2g
酸価(ポリマー):38.0mg KOH/g
数平均分子量(ポリマー):2800g/mol
固形分含量(溶解後)(130℃において60min):80.2%
粘度(濃度80%のブチルグリコール溶液):2110mPas、
(Brookfield製の回転粘度計、モデルCAP2000+、スピンドル3を用いて23℃で測定、せん断速度:1000s
−1)
【0127】
IR2:
アンカー型撹拌器、温度計、凝縮器および水分離器を備え付けた4l容ステンレス鋼製反応器内に、172.6mg KOH/gのOH価を有する1107.3gの線形PolyTHF650(BASF SE製)(1.704mol)、1315.8gのダイマー脂肪酸(2.271mol)および75.0gのキシレンを、1.9gのジ−n−ブチルスズオキシド(Axion(登録商標)CS2455、Chemtura製)(DIN53240に従って測定されたOH価)の存在下で100℃に加熱した。縮合が開始するまでゆっくりと加熱し続けた。次いで、85℃の最大頂部温度において、加熱を200℃まで段階的に継続した。反応の進行は、酸価の測定によって監視した。28.8mg KOH/gの酸価に到達したら、残留するキシレンを減圧下で蒸留によって除去した。これにより、室温において液体の樹脂が生じた。
【0128】
ガスクロマトグラフィーにより、0.1%未満のキシレン含量が見出された。
【0129】
ポリマーの数平均分子量および酸価を測定した。
【0130】
冷却後、ポリエステルをブチルグリコール(BASF SE製)中に溶解させて、80%ポリマー溶液にした。
【0131】
凝集物(水)の量:60.7g
酸価(ポリマー):28.5mg KOH/g
数平均分子量(ポリマー):4000g/mol
固形分含量(溶解後)(130℃において60min):80.4%
粘度(濃度80%のブチルグリコール溶液):2950mPas、
(Brookfield製の回転粘度計、モデルCAP2000+、スピンドル3を用いて23℃で測定、せん断速度:1000s
−1)
【0132】
IR3:
アンカー型撹拌器、温度計、凝縮器および水分離器を備え付けた4l容ステンレス鋼製反応器内に、111.0mg KOH/gのOH価を有する1373.6gの線形PolyTHF1000(BASF SE製)(1.359mol)、1049.4gのダイマー脂肪酸(1.811mol)および75.0gのキシレンを、1.9gのジ−n−ブチルスズオキシド(Axion(登録商標)CS2455、Chemtura製)(DIN53240に従って測定されたOH価)の存在下で100℃に加熱した。縮合が開始するまでゆっくりと加熱し続けた。次いで、85℃の最大頂部温度において、加熱を190℃まで段階的に継続した。反応の進行は、酸価の測定によって監視した。22.2mg KOH/gの酸価に到達したら、残留するキシレンを減圧下で蒸留によって除去した。これにより、室温において液体の樹脂が生じた。
【0133】
ガスクロマトグラフィーにより、0.1%未満のキシレン含量が見出された。
【0134】
ポリマーの数平均分子量および酸価を測定した。
【0135】
冷却後、ポリエステルをブチルグリコール(BASF SE製)中に溶解させて、80%ポリマー溶液にした。
【0136】
凝集物(水)の量:47.0g
酸価(ポリマー):22.2mg KOH/g
数平均分子量(ポリマー):5200g/mol
固形分含量(溶解後)(130℃において60min):80.3%
粘度(濃度80%のブチルグリコール溶液):4200mPas、
(Brookfield製の回転粘度計、モデルCAP2000+、スピンドル3を用いて23℃で測定、せん断速度:1000s
−1)
【0137】
水性ベースコート材料の生産
銀色型の比較用水系ベースコート1(C1)の生産
表Aの「水性相」以下に列記された諸成分を、記載されている順番で混ぜ合わせて、水性混合物を形成した。次の工程において、有機混合物を、「有機相」以下に列記された諸成分から製造した。有機混合物を水性混合物に加えた。次いで、合わせた混合物を10分撹拌したら、脱イオン水およびジメチルエタノールアミンを用いてpH8に調整し、回転粘度計(Mettler−Toledo製のRheomat RM180という機器)で測定して1000s
−1のせん断荷重下において23℃で58mPasのスプレー用粘度に調整した。
【0138】
【表A】
【0139】
本発明の水系ベースコート材料1(I1)の生産
本発明の水系ベースコート材料I1を生産するために、比較用水系ベースコート材料1(C1)の生産用と同様にして、ポリエステルP1ではなくIR1を水性相中と有機相中の両方に用いて、塗料を生産した。ここで、溶解させた形態(固形分含量に対して濃度80%)のIR1を使用した。固形分割合(不揮発性部分)に対して、I1中に使用されたIR1の量は、C1中に使用されたポリエステルP1の量と同じだった。IR1と分散物P1の固形分含量が相異なることに起因して、IR1と分散物P1のブチルグリコールの量も相異なることは、ブチルグリコールを相応に加えることにより、配合物I1中で補償した。
【0140】
本発明のベースコート材料2および3(I2およびI3)の製造
I1の製造用と同じ方法により、本発明のベースコート材料I2およびI3を、溶解済みの反応生成物IR2およびIR3を用いて製造した。ブチルグリコールを相応に加えることにより、相異なる固形分含量をポリエステル分散物P1に対して再度補償した。
【0141】
表1では、水系ベースコート材料(WBM)C1およびI1〜I3中に使用されたポリエステルおよび反応生成物ならびに(水系ベースコート材料の合計量に対する)これらの比率が、概略として、さらに示されている。
【0142】
【表1】
【0143】
水系ベースコート材料C1とI1〜I3との比較
ピンホール形成限界およびピンホール計測数を測定するために、多層皮膜型塗料系を、下記の一般的方法によって生産した。
【0144】
コーティング加工後の塗膜厚さの差異を測定できるようにするために、30×50cmの寸法のカソード電着鋼板には長手方向の縁部の1つに、粘着剤ストリップを備え付けた。特定の水系ベースコート材料を、くさび形を形作るように静電塗布した。得られた水系ベースコート塗膜を室温で4分フラッシュし、続いて、強制換気オーブン内で70℃において10分中間的に乾燥させた。慣例的な二成分型クリアコート材料を、35マイクロメートルの塗膜厚さになるように、乾燥済み水系ベースコート塗膜に静電塗布した。得られたクリアコート塗膜を室温で20分フラッシュした。次いで、水系ベースコート塗膜およびクリアコート塗膜を、140℃の強制換気オーブン内で20分硬化させた。得られたくさび形状の多層皮膜型塗料系中にあるピンホールの目視評価後、ピンホール形成限界の塗膜厚さおよびこのピンホール形成限界の塗膜厚さを超えているときのピンホールの数(言い換えると、塗装済みシート上にあるピンホールの合計数)を確認した。この結果は、表2に見出すことができる。
【0145】
【表2】
【0146】
上記結果は、本発明の反応生成物または本発明の水系ベースコート材料を使用する方法が、比較用水系ベースコート材料C1に比較してピンホール形成限界を著しく上昇させ、同時に、ピンホール計測数も減少させるということを強調している。
【0147】
銀色型の比較用水系ベースコート材料2(C2)の生産
表Bの「水性相」以下に列記された諸成分を、記載されている順番で混ぜ合わせて、水性混合物を形成した。次の工程において、有機混合物を、「有機相」以下に列記された諸成分から製造した。有機混合物を水性混合物に加えた。次いで、合わせた混合物を10分撹拌したら、脱イオン水およびジメチルエタノールアミンを用いてpH8に調整し、回転粘度計(Mettler−Toledo製のRheomat RM180という機器)で測定して1000s
−1のせん断荷重下において23℃で58mPasのスプレー用粘度に調整した。
【0148】
【表B】
【0149】
本発明の水系ベースコート材料4〜6(I4〜I6)の製造
I1〜I3の製造用と同じ用法により、本発明のベースコート材料I4〜I6を、ポリエステル分散物P1の代替物としての比較用ベースコート材料C2を主体とした反応生成物IR1およびIR3を用いて生産した(表B)。ブチルグリコールを相応に加えることにより、相異なる固形分含量をポリエステル分散物P1に対して再度補償した。
【0150】
【表3】
【0151】
水系ベースコート材料C2とI4〜I6との比較
水系ベースコート材料C1およびI1〜I3を用いて生産された多層皮膜型塗料系に関する上記と同様にして、多層皮膜型塗料系を、水性ベースコート材料C2およびI4〜I6を用いて生産した。ピンホール形成限界およびピンホール計測数に関する評価もまた、同じ方法によって実施した。この結果は、表4に見出すことができる。
【0152】
【表4】
【0153】
上記結果はやはり、本発明の反応生成物または本発明の水系ベースコート材料を使用する方法が、比較用水系ベースコート材料C2に比較してピンホール形成限界を著しく上昇させ、同時に、ピンホール計測数も減少させるということを強調している。