特許第6367403号(P6367403)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6367403
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 23/00 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   B66B23/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-38306(P2017-38306)
(22)【出願日】2017年3月1日
【審査請求日】2017年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 泰淳
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−183008(JP,A)
【文献】 特開2006−193285(JP,A)
【文献】 特開2008−189418(JP,A)
【文献】 特開2015−101472(JP,A)
【文献】 特開2016−088631(JP,A)
【文献】 特開平05−213572(JP,A)
【文献】 特開2000−255954(JP,A)
【文献】 米国特許第06637580(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物が有する第1の床と第2の床との間に架け渡され、横方向に互いに間隔を存して配置された一対の上弦材を有するトラスと、
前記トラスの長手方向に沿う端部から前記建築物に設けられたアングル支持台に向けて突出され、前記アングル支持台の上に予め決められた「かかり代」を有して載置された支持アングルと、
前記トラスの前記端部において前記上弦材と前記アングル支持台との間に架け渡され、耐震性を強化するリニューアル用の一対の追加部材と、を具備し、
前記追加部材は、
前記上弦材を下から受け止めるように前記上弦材の下面に重ね合わされるとともに、締結具を介して前記上弦材に固定された支持部と、
前記支持部から前記アングル支持台に向けて延出され、前記支持アングルの「かかり代」よりも大きな「かかり代」で前記アングル支持台の上に載置された延伸部と、を有する乗客コンベア。
【請求項2】
一対の前記追加部材の間に前記支持アングルが位置された請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記追加部材は、前記支持部と前記延伸部との間に位置する中間部をさらに備え、当該中間部は、前記延伸部が前記支持部よりも上方に位置するように前記支持部と前記延伸部との間で起立された請求項1又は請求項2に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記追加部材は、クランク状に折れ曲がった形状を有する請求項3に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記追加部材は、連続した一体構造物である請求項3に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エスカレータあるいは移動歩道のような乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
既設のエスカレータをリニューアルする際に、エスカレータの耐震性強化を目的として、トラスの支持アングルと建築構造物との間の「かかり代」を延長することが行なわれている。
【0003】
従来では、例えば既設のトラスの端部に建築構造物に向けて延びる追加フレームを設け、当該追加フレームを既存の「かかり代」よりも大きな「かかり代」で建築構造物の上に載置することで、十分な「かかり代」を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−183008号公報
【特許文献2】特開2016−88631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の追加フレームは、「かかり代」を延長できるものの、トラスの端部を支える構造に関しては、特に考慮されていないのが実情である。そのため、大規模地震が発生した場合に、トラスの端部を支える強度が不足することがあり得る。
【0006】
本発明の目的は、十分な「かかり代」を確保しつつ、トラスの端部をしっかりと支えることができ、耐震性が向上する乗客コンベアを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、乗客コンベアは、建築物が有する第1の床と第2の床との間に架け渡され、横方向に互いに間隔を存して配置された一対の上弦材を有するトラスと、前記トラスの長手方向に沿う端部から前記建築物に設けられたアングル支持台に向けて突出された支持アングルと、を備えている。前記支持アングルは、前記アングル支持台の上に予め決められた「かかり代」を有して載置されている。前記トラスの前記端部では、耐震性を強化するリニューアル用の一対の追加部材が前記上弦材と前記アングル支持台との間に架け渡されている。前記追加部材は、前記上弦材を下から受け止めるように前記上弦材の下面に重ね合わされるとともに、締結具を介して前記上弦材に固定された支持部と、前記支持部から前記アングル支持台に向けて延出された延伸部と、を有する。前記延伸部は、前記支持アングルの「かかり代」よりも大きな「かかり代」で前記アングル支持台の上に載置されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】エスカレータを建築物に据え付けた状態を概略的に示す側面図である。
図2】エスカレータのトラスの端部と建築物のアングル支持台との位置関係を示す平面図である。
図3図2のF3−F3線に沿う断面図である。
図4図2のF4−F4線に沿う断面図である。
図5図2のF5−F5線に沿う断面図である。
図6】追加部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、乗客コンベアの一例であるエスカレータ1を開示している。エスカレータ1は、例えば商業施設あるいは交通機関のターミナルのような建築物2に据え付けられている。
【0011】
エスカレータ1は、躯体としてのトラス3を備えている。トラス3は、建築物2の上階のフロアを構成する第1の床4と下階のフロアを構成する第2の床5との間に架け渡されている。トラス3は、上側主弦部6、下側主弦部7および複数の縦桟8をボルトや溶接で結合した骨組み構造体であって、上階側水平部10a、下階側水平部10bおよび傾斜部10cを備えている。
【0012】
上階側水平部10aは、第1の床4に連続するようにトラス3の長手方向に沿う一方の端部に位置されている。下階側水平部10bは、第2の床5に連続するようにトラス3の長手方向に沿う他方の端部に位置されている。傾斜部10cは、上階側水平部10aと下階側水平部10bとの間を結んでいる。
【0013】
図1に示すように、駆動装置11がトラス3の上階側水平部10aに支持されている。駆動装置11のモータ12が出力するトルクは、駆動チェーン13を介して駆動スプロケット14に伝達される。
【0014】
従動スプロケット15がトラス3の下階側水平部10bに支持されている。さらに、踏段チェーン16が駆動スプロケット14と従動スプロケット15との間に巻き掛けられている。踏段チェーン16は、駆動スプロケット14がモータ12からのトルクを受けて回転した時に、トラス3の内部を無端状に走行するようになっている。
【0015】
複数の踏段17が踏段チェーン16に等間隔で連結されている。踏段17は、不特定多数の乗客が乗り込む要素であって、踏段チェーン16と一緒に走行する。これにより、踏段17に乗り込んだ乗客が上階のフロアから下階のフロア又は下階のフロアから上階のフロアに向けて搬送される。
【0016】
図1に示すように、トラス3の右側部および左側部には、夫々欄干18(一方のみを図示)が設けられている。さらに、手摺りベルト19が欄干18の外周部に装着されている。手摺りベルト19は、踏段17と同期して無端状に走行するようになっている。
【0017】
図1および図2に示すように、第1の支持アングル21がトラス3の上階側水平部10aの先端部に固定されている。第1の支持アングル21は、上階側水平部10aの上側主弦部6からトラス3の長手方向に沿って水平に突出された水平部21aを有している。
【0018】
水平部21aは、第1の床4を支える支持材22の上に張り出している。支持材22は、建築物2の躯体であって、例えば鉄骨梁あるいはコンクリート壁で構成されている。支持材22の起立した端面と第1の支持アングル21との間には、トラス3の長手方向に沿う層間変位を吸収するための第1の隙間L1が設けられている。
【0019】
第2の支持アングル23がトラス3の下階側水平部10bの先端部に固定されている。第2の支持アングル23は、下階側水平部10bの上側主弦部6からトラス3の長手方向に沿って水平に突出された水平部23aを有している。
【0020】
水平部23aは、第2の床5を支える支持材24の上に張り出している。支持材24は、建築物2の躯体であって、例えば鉄骨梁あるいはコンクリート壁で構成されている。支持材24の起立した端面と第2の支持アングル23との間には、トラス3の長手方向に沿う層間変位を吸収するための第2の隙間L2が設けられている。
【0021】
図1に示すように、第1の支持アングル21は、支持材22の上に固定された第1のアングル支持台25によって支持されている。第2の支持アングル23は、支持材24の上に固定された第2のアングル支持台26によって支持されている。
【0022】
本実施形態では、第1の支持アングル21は、第1のアングル支持台25と協働して所謂非固定部を構成している。非固定部とは、地震の規模に拘らず、第1の支持アングル21を第1のアングル支持台25に対しトラス3の長手方向および幅方向に自由に移動可能な状態に保持する構造のことを指している。さらに、第2の支持アングル23にしても第2のアングル支持台26と協働して非固定部を構成している。
【0023】
第1のアングル支持台25に対する第1の支持アングル21の支持の仕方および第2のアングル支持台26に対する第2の支持アングル23の支持の仕方は、互いに共通である。そのため、本実施形態では、第1のアングル支持台25に対する第1の支持アングル21の支持の仕方を代表して説明する。
【0024】
図2および図3に示すように、第1の支持アングル21の水平部21aは、トラス3の長手方向に沿う「かかり代」M1を有して第1のアングル支持台25の上に載置されている。「かかり代」M1とは、第1の支持アングル21の水平部21aのうち第1のアングル支持台25の上に重なり合った部分の長さのことである。当該「かかり代」M1は、地震発生時の建築物2の層間変位量を吸収し得るように、従前の昇降機耐震設計・施行指針に則って決められている。
【0025】
第1のアングル支持台25は、ベース27および一対のガイド板28a,28bを有している。ベース27は、トラス3の幅方向に延びる細長い板状の要素であって、支持材22の上に例えば溶接等の手段で固定されている。
【0026】
一対のガイド板28a,28bは、夫々トラス3の幅方向に延びる四角い形状を有している。ガイド板28a,28bは、ベース27の上にトラス3の幅方向に互いに間隔を存して配置されている。
【0027】
具体的に述べると、一方のガイド板28aは、第1の床4の側から見てベース27と第1の支持アングル21の水平部21aの右端部との間に介在されている。一方のガイド板28aは、ベース27の上面に例えば溶接等の手段で強固に固定されている。
【0028】
他方のガイド板28bは、第1の床4の側から見てベース27と第1の支持アングル21の水平部21aの左端部との間に介在されている。他方のガイド板28bは、ベース27の上面に例えば溶接等の手段で強固に固定されている。
【0029】
第1の支持アングル21の水平部21aとガイド板28a,28bとの間に夫々高さ調整用のスペーサ32が介在されている。図3に示すように、スペーサ32は、摺動板33および複数のシムプレート34を有している。
【0030】
摺動板33は、ガイド板28a,28bの上に摺動可能に重ねられている。シムプレート34は、第1の支持アングル21の水平部21aと摺動板33との間に介在されている。さらに、複数の調整ボルト35が第1の支持アングル21の水平部21aおよびシムプレート34を貫通して摺動板33にねじ込まれている。水平部21aの上に突出された調整ボルト35の中間部には、ナット36がねじ込まれている。ナット36は、水平部21aの上面に突き当たっている。
【0031】
これにより、摺動板33およびシムプレート34が第1の支持アングル21の水平部21aとガイド板28a,28bとの間で挟持されるとともに、調整ボルト35の緩み止めがなされている。
【0032】
本実施形態では、シムプレート34の枚数を増減したり、あるいは厚さが異なるシムプレート34を選択することで、ベース27に対する第1の支持アングル21の高さ方向の位置を微調整することが可能となる。
【0033】
一方、本実施形態によると、エスカレータ1をリニューアルするに際して、改訂された昇降機耐震設計・施行指針に対応するエスカレータ1の耐震性を満たすために、トラス3の上階側水平部10aおよび下階側水平部10bに新規な構成が付加されている。新規な構成については、上階側水平部10aを代表して説明し、下階側水平部10bには同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
【0034】
図2および図4に示すように、トラス3の上階側水平部10aは、一対の上弦材40a,40bを備えている。上弦材40a,40bは、トラス3の幅方向に沿う横方向に互いに間隔を存して平行に配置されている。上弦材40a,40bは、例えばL形に近い断面形状を有する山形鋼で構成されている。山形鋼は、互いに直交し合う第1のフランジ片41および第2のフランジ片42を有している。第1のフランジ片41は、トラス3の幅方向に水平に延びている。第2のフランジ片42は、第1のフランジ片41の一側縁から下向きに延出されている。
【0035】
図4ないし図6に示すように、一対の追加部材43がトラス3の上階側水平部10aの先端部に取り付けられている。追加部材43は、トラス3の「かかり代」を延長するためにトラス3に付加された要素である。一方の追加部材43は、一方の上弦材40aの先端から第1のアングル支持台25に向けて突出されている。他方の追加部材43は、他方の上弦材40bの先端から第1のアングル支持台25に向けて突出されている。
【0036】
本実施形態によると、前記第1の支持アングル21は、上弦材40a,40bの間から第1のアングル支持台25に向けて突出されている。このため、トラス3の上階側水平部10aの先端部には、第1の支持アングル21および一対の追加部材43が一列に並んで配置されており、第1の支持アングル21が追加部材43の間に位置されている。
【0037】
追加部材43は、支持部44、延伸部45および中間部46を有する連続した一体構造物であり、例えば第1の支持アングル21と同等の肉厚を有する帯状の金属板で構成されている。
【0038】
具体的に述べると、支持部44は、上弦材40a,40bの長手方向に延びるとともに、上弦材40a,40bの第1のフランジ片41の下面に重ね合わされている。支持部44は、複数のボルト47およびナット48を介して支持部44に結合されている。ボルト47およびナット48は、締結具の一例である。ボルト47は、上弦材40a,40bの長手方向に間隔を存して一列に並んでいる。ボルト47の軸部47aは、第1のフランジ片41および支持部44を連続して貫通している。ボルト47の頭部47bは、第1のフランジ片41の上面に接している。
【0039】
ナット48は、ボルト47の軸部47aの貫通端にねじ込まれている。ナット48を締め付けることで、ボルト47の頭部47bとナット48との間で第1のフランジ片41および支持部44が挟持され、支持部44が第1のフランジ片41の下面に密着された状態に維持されている。
【0040】
図2および図4に示すように、追加部材43の延伸部45は、上弦材40a,40bの先端からトラス3の長手方向に沿って水平に突出されている。延伸部45は、第1の支持アングル21の水平部21aと隣り合う位置で第1のアングル支持台25の上に張り出している。
【0041】
さらに、延伸部45は、トラス3の長手方向に沿う「かかり代」M2を有して第1のアングル支持台25の上に載置されている。「かかり代」M2とは、延伸部45のうち第1のアングル支持台25の上に重なり合った部分の長さのことである。
【0042】
当該「かかり代」M2は、地震発生時の建築物2の層間変位量を吸収し得るように、改訂された昇降機耐震設計・施行指針に則って設定され、前記第1の支持アングル21の「かかり代」M1よりも大きくなっている。
【0043】
図4および図6に示すように、追加部材43の中間部46は、支持部44と延伸部45との間の境界に位置されている。中間部46は、延伸部45が支持部44よりも上方に位置するように支持部44と延伸部45との間で起立されている。
【0044】
したがって、追加部材43は、クランク状に折れ曲がった形状を有している。これにより、延伸部45が上弦材40a,40bの第1のフランジ片41および第1の支持アングル21の水平部21aと同一の平面上に位置するようになっている。
【0045】
本実施形態によると、第1のアングル支持台25のベース27の上面に延伸部45と向かい合うガイド板52が溶接等の手段で強固に固定されている。さらに、延伸部45とガイド板52との間に夫々高さ調整用のスペーサ53が介在されている。スペーサ53は、摺動板54および複数のシムプレート55を有している。
【0046】
摺動板54は、ガイド板52の上に摺動可能に重ねられている。シムプレート55は、延伸部45と摺動板54との間に介在されている。複数の調整ボルト56が延伸部45およびシムプレート55を貫通して摺動板54にねじ込まれている。延伸部45の上に突出された調整ボルト56の中間部には、ナット58がねじ込まれている。ナット58は、延伸部45の上面に突き当たっている。
【0047】
これにより、摺動板54およびシムプレート55が延伸部45とガイド板52との間で挟持されるとともに、調整ボルト56の緩み止めがなされている。
【0048】
本実施形態では、シムプレート55の枚数を増減したり、あるいは厚さが異なるシムプレート55を選択することで、ベース27に対する追加部材43の高さ方向の位置を微調整することが可能となる。
【0049】
これにより、図4に示すように、追加部材43がトラス3の上階側水平部10aと建築物2の第1のアングル支持台25との間に架け渡された状態では、上階側水平部10aを構成する上弦材40a,40bが追加部材43の支持部44によって下方から受け止められている。
【0050】
なお、トラス3の上階側水平部10a、第1の支持アングル21の水平部21aおよび追加部材43は、取り外し可能な乗降板60によって覆い隠されている。
【0051】
このような実施形態によれば、トラス3の上弦材40a,40bに固定された一対の追加部材43は、第1の支持アングル21の「かかり代」M1を上回る大きな「かかり代」M2で建築物2の第1のアングル支持台25の上に載置されている。
【0052】
このため、エスカレータ1をリニューアルする際に、追加部材43をトラス3に付加するだけの単純な作業でトラス3の「かかり代」を延長することができる。したがって、改訂された昇降機耐震設計・施行指針に対応するように、エスカレータ1の耐震性を強化することができる。
【0053】
しかも、トラス3と建築物2との間に追加部材43を掛け渡した状態では、追加部材43の支持部44が上弦材40a,40bの第1のフランジ片41の下面に重なり合い、当該上弦材40a,40bを下方から受け止めている。
【0054】
この構成によれば、例えば地震発生時にトラス3の上弦材40a,40bから追加部材43に過大な荷重が加わった場合、当該荷重の多くを追加部材43が荷担することになり、ボルト47に過大な荷重が加わるのを回避できる。
【0055】
したがって、追加部材43とトラス3との結合強度を十分に確保することができ、エスカレータ1の落下を未然に防止することができる。
【0056】
さらに、本実施形態の追加部材43は、支持部44と延伸部45との間の境界に中間部46を有している。中間部46の存在により、延伸部45の位置が支持部44よりも高くなるので、追加部材43の延伸部45が第1のアングル支持台25あるいは建築物2の支持材22と干渉し合うのを回避できる。
【0057】
したがって、エスカレータ1のリニューアル時に、コンクリート壁あるいは鉄骨梁で構成された支持材22に面倒な後加工を施す必要はなく、リニューアル作業を容易に行うことができる。
【0058】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0059】
例えば、追加部材と上弦材との結合手段は、ボルトおよびナットのような締結具に限らず、溶接を併用するようにしてもよい。
【0060】
加えて、上弦材にしても山形鋼に限らず、例えばH形鋼、溝形鋼あるいは四角い断面形状を有する角パイプで構成してもよい。
【0061】
さらに、実施形態に係る乗客コンベアは、エスカレータに特定されるものではなく、水平又は傾斜して配置された移動歩道であっても同様に実施可能である。
【符号の説明】
【0062】
1…エスカレータ、2…建築物、3…トラス、4…第1の床、5…第2の床、21,23…支持アングル(第1の支持アングル、第2の支持アングル)、25,26…アングル支持台(第1のアングル支持台、第2のアングル支持台)、40a,40b…上弦材、43…追加部材、44…支持部、45…延伸部。
【要約】
【課題】十分な「かかり代」を確保しつつ、トラスの端部をしっかりと支えることができ、耐振性が向上する乗客コンベアを得ることにある。
【解決手段】乗客コンベアは、建築物が有する第1の床と第2の床との間に架け渡され、横方向に互いに間隔を存して配置された一対の上弦材を有するトラスと、トラスの長手方向に沿う端部から建築物に設けられたアングル支持台に向けて突出された支持アングルと、を備えている。支持アングルは、アングル支持台の上に予め決められた「かかり代」を有して載置されている。トラスの端部では、一対の追加部材が上弦材とアングル支持台との間に架け渡されている。追加部材は、上弦材を下から受け止めるように上弦材に固定された支持部と、支持部からアングル支持台に向けて延出された延伸部と、を有する。延伸部は、支持アングルの「かかり代」よりも大きな「かかり代」でアングル支持台の上に載置されている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6