特許第6367410号(P6367410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッドの特許一覧

特許6367410フッ素化オレフィンを製造するための統合プロセス
<>
  • 特許6367410-フッ素化オレフィンを製造するための統合プロセス 図000002
  • 特許6367410-フッ素化オレフィンを製造するための統合プロセス 図000003
  • 特許6367410-フッ素化オレフィンを製造するための統合プロセス 図000004
  • 特許6367410-フッ素化オレフィンを製造するための統合プロセス 図000005
  • 特許6367410-フッ素化オレフィンを製造するための統合プロセス 図000006
  • 特許6367410-フッ素化オレフィンを製造するための統合プロセス 図000007
  • 特許6367410-フッ素化オレフィンを製造するための統合プロセス 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367410
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】フッ素化オレフィンを製造するための統合プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/25 20060101AFI20180723BHJP
   C07C 17/354 20060101ALI20180723BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20180723BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20180723BHJP
【FI】
   C07C17/25
   C07C17/354
   C07C21/18
   !C07B61/00 300
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-52898(P2017-52898)
(22)【出願日】2017年3月17日
(62)【分割の表示】特願2016-131547(P2016-131547)の分割
【原出願日】2011年10月7日
(65)【公開番号】特開2017-128592(P2017-128592A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2017年3月17日
(31)【優先権主張番号】13/229,016
(32)【優先日】2011年9月9日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/392,242
(32)【優先日】2010年10月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ベクテセヴィッチ,セルマ
(72)【発明者】
【氏名】トゥン,シュー・スン
(72)【発明者】
【氏名】コプカリ,ハルク
【審査官】 水野 浩之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/029240(WO,A1)
【文献】 特表2012−502085(JP,A)
【文献】 特開2011−026297(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0021849(US,A1)
【文献】 特表2012−533607(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/010023(WO,A1)
【文献】 特開2009−221202(JP,A)
【文献】 特表2010−513437(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/075017(WO,A1)
【文献】 特表2009−514957(JP,A)
【文献】 特開2010−037343(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0029997(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/084703(WO,A1)
【文献】 特表2011−507802(JP,A)
【文献】 特表2009−532365(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/081988(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ヘキサフルオロプロピレンを含む少なくとも1種類のアルケンを含む出発材料流を、還元剤と接触させることによって水素化して、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを含む少なくとも1種類のアルカンを含む中間体生成物流を生成させ;
(b)場合によっては、かかる中間体生成物流を、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンに富む第1の流れ、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパンに富む第2の流れ、及びアルカン再循環流からなる群から選択される2以上の流れを含む複数の中間体生成物流に分離し;
(c)KOHを含む脱ハロゲン化水素化剤の存在下において、工程(a)からの中間体生成物流又は工程(b)の複数の中間体生成物流の少なくとも一部を脱フッ化水素化して、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、及び2,3,3,3−テトラフルオロプロペンを含む少なくとも1種類の更なるアルケンを含むアルケン生成物流を生成させ:そして
(d)脱フッ化水素化生成物流から、水、KOH及びKFを含む脱ハロゲン化水素化剤由来の混合物を含む生成物反応流を引き抜き;そして
(e)前記脱ハロゲン化水素化剤由来の混合物を回収する;
ことを含む、少なくとも1種類のフッ素化オレフィンの製造方法であって、
工程(e)が、前記脱ハロゲン化水素化剤由来の混合物から有機化合物を除去し、有機化合物を除去した後の前記脱ハロゲン化水素化剤由来の混合物を工程(c)に再循環することを含む、方法。
【請求項2】
1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペンが、工程(a)の出発材料中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペンの源が、別の供給流、再循環流、又はこれらの混合物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(b)が存在しない、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
工程(b)が存在する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
還元剤がHを含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
(a)ヘキサフルオロプロピレンを含む出発材料流を、還元剤と接触させることによって水素化して、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン又は1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを含む中間体流を生成させ;
(b)1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン又は1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを、KOHを含む脱ハロゲン化水素化剤の存在下で脱フッ化水素化して、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン又は1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペンを含む生成物流を生成させ:
(c)生成物流から、水、KOH及びKFを含む脱ハロゲン化水素化剤由来の混合物を含む第2の生成物流を引き抜き;
(d)前記脱ハロゲン化水素化剤由来の混合物を回収し;そして
(e)場合によっては、精製した脱ハロゲン化水素化剤を濃縮して、脱ハロゲン化水素化反応に再循環して戻す;
ことを含む、2,3,3,3−テトラフルオロプロペンの製造方法であって、
工程(d)が、前記脱ハロゲン化水素化剤由来の混合物から有機化合物を除去し、有機化合物を除去した後の前記脱ハロゲン化水素化剤由来の混合物を工程(b)に再循環することを含む、方法。
【請求項8】
第2の生成物流が、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)及び/又は1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)からなる群から選択される溶解した有機化合物を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第2の生成物流が脱ハロゲン化水素化剤の副生成物塩を更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の生成物流に含まれる副生成物塩を脱ハロゲン化水素化剤に転化させることを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程(e)が存在しない、請求項7〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
工程(e)が存在する、請求項7〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
還元剤がHを含む、請求項7〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
(a)1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)又は1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)を、脱ハロゲン化水素化剤であるKOHの存在下で脱ハロゲン化水素化して、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)又は1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFP−1225ye)を生成させ;
(b)水、KOH及びKFを含む脱ハロゲン化水素化剤由来の混合物並びに溶解した有機化合物を含む反応流を排出し;
(c)前記脱ハロゲン化水素化剤由来の混合物を回収し;
(d)場合によっては前記脱ハロゲン化水素化剤由来の混合物に含まれ工程(c)で回収されたKFをKOHに転化させる;
ことを含む、フルオロオレフィンの製造方法であって、工程(c)が、前記脱ハロゲン化水素化剤由来の混合物から有機化合物を除去し、有機化合物を除去した後の前記脱ハロゲン化水素化剤由来の混合物を工程(a)に再循環することを含む、方法。
【請求項15】
工程(d)を行った後の前記脱ハロゲン化水素化剤由来の混合物中のKOHを濃縮して、濃縮後の前記脱ハロゲン化水素化剤由来の混合物を工程(a)の脱ハロゲン化水素化反応に再循環して戻すことを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
工程(d)が存在しない、請求項14〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
工程(d)が存在する、請求項14〜15のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2010年10月12日出願の米国仮出願61/392,242(その内容を参照として本明細書中に包含する)に関連し、その優先権の利益を主張する。
[0002]本出願はまた、2008年3月14日出願の米国仮特許出願61/036,526の優先権の利益を主張する2009年3月11日出願の米国特許出願12/402,372(現在は米国特許8,013,194)の継続出願である2011年8月1日出願の米国出願13/195,429(これらのそれぞれを参照として本明細書中に包含する)の一部継続出願でもある。
【0002】
[0003]本発明は、ハロアルケン、特に排他的ではないが2,3,3,3−テトラフルオロプロパン(HFO−1234yf)及び/又は1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0004]クロロフルオロカーボン(CFC)のような塩素含有化合物は、冷媒、フォーム発泡剤、清浄剤、溶媒、熱伝達媒体、滅菌剤、エアゾール噴射剤、誘電体、消火剤、及び動力サイクル作動流体として用いられている。かかる塩素含有化合物は、地球のオゾン層に有害であることが判明している。CFCの置換物として用いられるヒドロフルオロカーボン(HFC)の多くは、地球温暖化の一因となることが分かっている。これらの理由のために、同時に性能の観点から同等に有効か又はより有効でありながら、より環境に優しい新規な化合物を開発する世界的な努力が存在する。
【0004】
[0005]本出願人らは、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)及び1,1,1,2−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf)がそれぞれ、上記記載の用途の1以上において有用であることを認識するに至った。したがって、このフッ素化オレフィンのいずれか又は両方を含む組成物は、かかる用途のために開発された物質に含まれる。
【0005】
[0006]HFO−1234yf及びHFO−1225yeを製造する方法は公知である。一例においては、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)を水素化して1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)を製造することができることは公知である。HFC−236eaは、次にHFO−1225yeを製造するための脱水素化反応において反応物質として用いる。更に、HFO−1225yeを水素化して1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)を製造することができ、HFC−245ebを次に脱フッ化水素化してHFO−1234yfを製造することができることが公知である。
【0006】
[0007]米国特許出願公開2009/0234165(その内容を参照として本明細書中に包含する)は更に、HFO−1225ye及びHFO−1234yfを単一の設備内で製造することができることを与える。最も顕著には、HFPの水素化によってHFC−236ea及びHFC−245ebの両方を生成させることができ、これらの2つの生成物を同時に脱フッ化水素化して、それぞれHFO−1225ye及びHFO−1234yfを製造することができることが認められた。処理条件は、1つのヒドロフルオロオレフィンの選択的転化が他のものよりも優勢になるように調節することができると教示されている。かかる反応のために用いることができる触媒としては、担持されているか又はバルクの、金属触媒、更により好ましくは1種類以上の遷移金属ベースの触媒(幾つかの好ましい態様においては、遷移金属ハロゲン化物触媒を含む)、例えばFeCl、クロムオキ
シフルオリド、Ni(Niメッシュを含む)、NiCl、CrF、及びこれらの混合物が挙げられると教示されている。他の触媒としては、炭素担持触媒、アンチモンベースの触媒(例えばSbCl)、アルミニウムベースの触媒(例えば、AlF、Al、及びフッ素化Al)、パラジウムベースの触媒、白金ベースの触媒、ロジウムベースの触媒、及びルテニウムベースの触媒(これらの組合せを含む)が挙げられる。
【0007】
[0008]HFO−1225ye及びHFO−1234yfを製造するための方法の他の例は、少なくとも、本発明の譲受人に譲渡されている米国特許7,560,602(参照として本明細書中に包含する)に示されている。この特許においては、それぞれ1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(245eb)及び1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)の接触脱フッ化水素化によって2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)及び1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)を製造するための同じような脱ハロゲン化水素化プロセスが開示されている。好ましい脱ハロゲン化水素化触媒としては、フッ素化酸化クロム触媒、フッ化アルミニウム触媒、フッ化第2鉄触媒、フッ化マグネシウムとフッ化アルミニウムとの混合物の触媒、ニッケルベースの触媒、炭素ベースの触媒、及びこれらの組合せが挙げられる。
【0008】
[0009]かかる脱ハロゲン化水素化反応のための別の試薬も公知である。例えば、米国特許出願公開20100029997においては、HFC−245ebを、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、Ca(OH)、CaO、及びこれらの組合せと接触させることによってHFC−245ebを脱ハロゲン化水素化することによってヒドロオレフィン(例えばHFO−1234yf)を製造することが教示されている。幾つかの態様においては脱ハロゲン化水素化剤としてはKOHが挙げられるが、別の試薬としてLiOH、Mg(OH)、及びNaOHも挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願公開2009/0234165
【特許文献2】米国特許7,560,602
【特許文献3】米国特許出願公開20100029997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
[0010]本出願人らは、かかる脱ハロゲン化水素化剤(「試薬」とも呼ぶ)を用いる連続処理中においては、反応は有機反応物質又は脱ハロゲン化水素化剤のいずれかが消費されるまで進行することを認識するに至った。反応が完了したら、塩及び/又は塩溶液を取り出すために反応器を分解しなければならない。これは次に、より高い運転コストを生じさせ、生産性を減少させる。したがって、連続プロセス中に消費された試薬を取り出し、未使用か又は再生された試薬及び/又は未使用の有機化合物を再循環するより効率的なプロセスが望ましい。
【0011】
[0011]本出願人らは、本発明は上記の必要性に対応していると断言する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[0012]本発明は、少なくとも部分的に、消費された試薬を回収及び再循環することによって、脱ハロゲン化水素化によるフッ素化オレフィンの製造に関するコスト効率を向上させる方法に関する。一形態においては、本発明は、脱ハロゲン化水素化剤の存在下でフッ素アルカン(例えば、ペンタフルオロプロパン及び/又はヘキサフルオロプロパン)を脱ハロゲン化水素化してフッ素化オレフィン(例えば、テトラフルオロプロペン及び/又は
ヘキサフルオロプロペン)を製造することに関する。かかる脱ハロゲン化水素化剤としては、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、酸化カルシウム(CaO)、又はこれらの組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。消費された脱ハロゲン化水素化剤を反応器から取り出すことによって、有機化合物及び脱ハロゲン化水素化剤の容易な分離が可能になる。これによって、複雑で高度に専門化した分離装置の設計及び運転に関連するコストが低下する。消費された脱ハロゲン化水素化剤を再循環することによって効率がより高くなる。金属フッ化物塩も生成物流から単離して、転化させて脱ハロゲン化水素化剤の元々の形態に戻して反応に再循環させると、増加した生産性が同様に観察される。
【0013】
[0013]一形態においては、本発明は、(a)第1のハロオレフィンを水素化してハロアルカンを生成させ;(b)場合によっては、かかるハロアルカンを、少なくとも第1のアルカンに富む第1の流れ、第2のアルカンに富む第2の流れ、及びアルカン再循環流からなる群から選択される2以上の流れを含む複数の中間体生成物流に分離し;(c)(a)又は(b)中のハロアルカンを、脱ハロゲン化水素化剤の存在下で脱ハロゲン化水素化して第2のハロオレフィンを生成させ;(d)消費された脱ハロゲン化水素化剤、及び場合によっては金属フッ化物塩副生成物を含む反応流を排出し;そして(d)消費された脱ハロゲン化水素剤を回収、精製、及び/又は再生する;ことを含む、フルオロオレフィンを製造するための方法又はプロセスに関する。第1のハロオレフィンとしては、式(I):
(CX3−n)(CRCX=CH2−m (I)
(式中、それぞれのXは、独立して、Cl、F、I、又はBrであり、但し少なくとも2つのXはFであり;それぞれのYは、独立して、H、Cl、F、I、又はBrであり;それぞれのRは、独立して、H、Cl、F、I、Br、或いは非置換又はハロゲン置換のメチル若しくはエチル基であり;それぞれのRは、独立して、H、Cl、F、I、Br、或いは非置換又はハロゲン置換のメチル若しくはエチル基であり;nは、1、2、又は3であり;a及びbは、それぞれ、0、1、又は2であり、但しa+b=2であり;mは、0、1、又は2であり;zは、0、1、2、又は3である)
の化合物を挙げることができる。
【0014】
[0014]上記の更なる態様においては、第1のハロオレフィンは、式(IA):
CX3−nCX=CH2−m (IA)
(式中、それぞれのXは、独立して、Cl、F、I、又はBrであり、但し少なくとも2つのXはFであり;それぞれのYは、独立して、H、Cl、F、I、又はBrであり;nは、1、2、又は3であり;mは、0、1、又は2である)
の化合物を含む。
【0015】
[0015]上記の更なる態様においては、第1のハロアルカンはヘキサフルオロプロピレン(HFP)である。
[0016]反応プロセスの第1のハロアルカンは、幾つかの態様においては、式(II):
(CX3−n)(CRCHXCHm+12−m (II)
(式中、それぞれのXは、独立して、Cl、F、I、又はBrであり、但し少なくとも2つのXはFであり;それぞれのYは、独立して、H、Cl、F、I、又はBrであり;それぞれのRは、独立して、H、Cl、F、I、Br、或いは非置換又はハロゲン置換のメチル若しくはエチル基であり;それぞれのRは、独立して、H、Cl、F、I、Br、或いは非置換又はハロゲン置換のメチル若しくはエチル基であり;nは、1、2、又は3であり;a及びbは、それぞれ、0、1、又は2であり、但しa+b=2であり;mは、0、1、又は2であり;zは、0、1、2、又は3である)
の任意の化合物であってよい。
【0016】
[0017]上記の更なる態様においては、ハロアルカンは、式(IIA):
(CX3−n)CHXCHm+12−m (IIA)
(式中、それぞれのXは、独立して、Cl、F、I、又はBrであり、但し少なくとも2つのXはFであり;それぞれのYは、独立して、H、Cl、F、I、又はBrであり;nは、1、2、又は3であり;mは、0、1、又は2である)
の化合物である。
【0017】
[0018]上記の更なる態様においては、中間体ハロアルカンは、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)及び/又は1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)である。
【0018】
[0019]第2のハロオレフィンは、幾つかの態様においては、式(III):
(CX3−n)(CRCX=CHm+11−m (III)(式中、それぞれのXは、独立して、Cl、F、I、又はBrであり、但し少なくとも2つのXはFであり;それぞれのYは、独立して、H、Cl、F、I、又はBrであり;それぞれのRは、独立して、H、Cl、F、I、Br、或いは非置換又はハロゲン置換のメチル若しくはエチル基であり;それぞれのRは、独立して、H、Cl、F、I、Br、或いは非置換又はハロゲン置換のメチル若しくはエチル基であり;nは、1、2、又は3であり;a及びbは、それぞれ、0、1、又は2であり、但しa+b=2であり;mは、0、又は1であり;zは、0、1、2、又は3である)
の任意の化合物であってよい。
【0019】
[0020]上記の更なる態様においては、第2のハロオレフィンは式(IIIA)
(CX3−n)CX=CHm+11−m (IIIA)
(式中、それぞれのXは、独立して、Cl、F、I、又はBrであり、但し少なくとも2つのXはFであり;それぞれのYは、独立して、H、Cl、F、I、又はBrであり;nは、1、2、又は3であり;mは0又は1である)
の化合物を含む。
【0020】
[0021]上記の更なる態様においては、第2のハロオレフィンは、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(1234yf)及び/又は1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye)である。
【0021】
[0022]例えば、第2のハロオレフィンがHFO−1225ye及び/又はHFO−1234yfである態様においては、上記の反応は4つの単位操作を有する単一の設備内で生起させることができる。より具体的には、水素によるHFPの水素化は、HFC−236ea及びHFC−245ebの両方を生成させることが公知である。HFC−236eaと同様に、HFC−245ebは、次に脱フッ化水素化して所望の生成物を生成させることができる。特に、HFC−236eaを脱フッ化水素化してHFO−1225yeを生成させることができ、HFC−245ebを脱フッ化水素化してHFO−1234yfを生成させることができる。而して、単一の組の4つの単位操作:出発材料を水素化し;所望の中間体を分離し;中間体を脱フッ化水素化して所望の生成物を生成させ;次に他の分離を行って所望の生成物を単離させる;を用いて、HFO−1225ye及びHFO−1234yfの両方を製造することができる。例えば、1つのシステム内において、HFPとHを水素化反応器内で反応させて、HFC−236ea及び/又はHFC−245ebを含む中間体生成物流を形成する。HFC−236eaとHFC−245ebの相対濃度は、圧力、温度、及び反応器中の反応物質の相対濃度のような水素化反応器内における反応条件によって定まる。所望の最終生成物がHFO−1225yeである場合には、処理条件は好ましくはHFC−236eaの製造に有利に働くようにする。即ち、HFC−236eaに富む中間体生成物流が生成するように水素化反応器を運転し、これを次に中
間体プロセス流から分離して脱フッ化水素化反応器中に供給して、HFO−1225yeを含む最終生成物流を形成する。次に、このHFO−1225yeを最終生成物流から分離し、精製した生成物として回収する。所望の最終生成物がHFO−1234yfである場合には、処理条件はHFC−245ebの製造に有利に働くようにする。即ち、HFC−245ebに富む中間体生成物流が生成するように水素化反応器を運転する。これは、HFPをHFC−236eaに転化させるのに有利な条件下で水素化反応器を運転し、次にHFC−236eaをHFC−245ebに転化させることによって行うことができる。次に、HFC−245ebを中間体生成物流から分離し、脱フッ化水素化反応器中に供給して、HFO−1234yfを含む最終生成物流を形成する。次に、このHFO−1234yfを最終生成物流から分離し、精製した生成物として回収する。
【0022】
[0023]更に、HFO−1234yfが所望の生成物である場合には、HFO−1225yeを幾つかの箇所で水素化反応器中に導入し、次にHFC−245ebに転化させることができる。このHFO−1225yeの源は、別の供給流、及び/又は再循環流(即ち上述したようなHFC−236eaから誘導される再循環しているHFO−1225ye)のいずれであってもよい。再びHFC−245ebを中間体生成物流から分離し、脱フッ化水素化反応器中に供給して、HFO−1234yfを含む最終生成物流を形成する。次に、このHFO−1234yfを最終生成物流から分離して、精製した生成物として回収する。
【0023】
[0024]上記のいずれに関しても、脱フッ化水素化工程(例えば、245eb→1234yf、又は236ea→1225ye)は、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、酸化カルシウム(CaO)、又はこれらの組合せなど(しかしながらこれらに限定されない)の少なくとも1種類の脱ハロゲン化水素化剤の存在下で行う。用いる試薬の量、又は有機化合物に対する試薬のモル比は、上記か又は本明細書中の他の箇所で議論するそれぞれの態様において存在する特定のパラメーターによって変化する。幾つかの態様においては、有機化合物供給流(例えば、HFC−245eb及び/又はHFC−236ea)に対する脱ハロゲン化水素化剤のモル比は、1〜3より小さく、好ましくは1〜1.5である。
【0024】
[0025]脱ハロゲン化水素化は、任意の好適な反応容器又は反応器内で行うことができる。幾つかの非限定的な態様においては、反応器としては、1つ又は一連の連続撹拌タンク反応器(CSTR)(ここでは、有機化合物(例えば、HFC−236ea及び/又はHFC−245eb)並びに脱ハロゲン化水素化剤を反応器中に連続的に供給する)が挙げられる。反応生成物流から、連続的又は断続的に、消費された脱ハロゲン化水素剤の流れを排出及び精製することができる。
【0025】
[0026]幾つかの態様においては、消費された脱ハロゲン化水素化剤の流れは、HFC−236ea及び/又はHFC−245ebなど(しかしながらこれらに限定されない)の1種類以上の溶解した有機化合物を更に含む。1以上の公知の分離方法を用いて、かかる有機化合物から消費された脱ハロゲン化水素化剤を取り除くことができる。かかる方法としては、蒸留及び/又は相分離が挙げられるが、これらに限定されない。得られる脱ハロゲン化水素化剤は、次に場合によっては濃縮して、ここで与えられる1種類以上の有機化合物とは独立してか又は一緒に脱ハロゲン化水素化反応に再循環して戻すことができる。
【0026】
[0027]更なる態様においては、生成物流はまた、脱ハロゲン化水素化反応の塩副生成物も含む。公知の方法を用いて生成物流から塩副生成物を取り除き、公知の方法を用いて転化させて脱ハロゲン化水素化剤に戻すことができる。これは次に、ここで与えられる1種類以上の有機化合物と独立してか又は一緒に脱ハロゲン化水素化反応に再循環することが
できる。非限定的な例として、1つのかかる塩副生成物はフッ化カリウム(KF)であってよく、これは脱ハロゲン化水素化剤として水酸化カリウムを用いる場合に形成される。KFは、反応:
2KF+Ca(OH) → 2KOH+CaF
にしたがうCa(OH)(水酸化カルシウム)による処理によってKOHに転化させることができる。
【0027】
得られるKOHは、場合によっては濃縮して、本明細書に規定されているように1種類以上の有機化合物とは独立してか又は一緒に脱ハロゲン化水素化反応に再循環して戻すことができる。
【0028】
[0028]本発明の更なる態様及び有利性は、本明細書に与える開示に基づいて当業者に容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】[0029]図1は、本発明の一態様によるフルオロオレフィンの製造を示すプロセスフロー図である。
図2】[0030]図2は、本発明の一態様による水素化単位操作を示すプロセスフロー図である。
図3】[0031]図3は、本発明の他の態様による水素化単位操作を示すプロセスフロー図である。
図4】[0032]図4は、本発明の一態様による第1の分離単位操作を示すプロセスフロー図である。
図5】[0033]図5は、本発明の他の態様による第1の分離単位操作を示すプロセスフロー図である。
図6】[0034]図6は、本発明の一態様による脱フッ化水素化単位操作を示すプロセスフロー図である。
図7】[0035]図7は、本発明の他の態様による脱フッ化水素化単位操作を示すプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[0036]本発明は、少なくとも部分的に、消費された脱ハロゲン化水素化剤を回収及び再循環することによって、脱ハロゲン化水素化によるフッ素化オレフィンの製造に関するコスト効率性を向上させる方法に関する。一形態においては、本発明は、フッ素化アルカン(例えば、ペンタフルオロプロパン及び/又はヘキサフルオロプロパン)を、脱ハロゲン化水素化剤の存在下で脱ハロゲン化水素化してフッ素化オレフィン(例えば、テトラフルオロプロペン及び/又はペンタフルオロプロペン)を生成させることに関する。反応器から消費された脱ハロゲン化水素化剤を取り出すことによって設計及び運転コストが減少し、消費及び/又は再生された脱ハロゲン化水素化剤を再循環することによって向上した効率がもたらされる。幾つかの態様においては、脱ハロゲン化水素化剤としては、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化マグネシウム(MgOH)、酸化カルシウム(CaO)、又はこれらの組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。更なる態様においては、脱ハロゲン化水素化剤は水酸化カリウム(KOH)である。
【0031】
[0037]幾つかの態様においては、本発明のフッ素化オレフィンとしては、1種類以上のC〜Cフルオロアルケン、好ましくは下式:
CF3−z
(式中、Xは、C、C、C、又はCの不飽和で置換又は非置換のアルキル基であり、それぞれのRは、独立して、Cl、F、Br、I、又はHであり、zは1〜3であ
る)を有する化合物が挙げられる。かかる化合物の中で、3〜5個のフッ素置換基を有するプロペン類及びブテン類が非常に好ましく、これらの中でテトラフルオロプロペン(HFO−1234)及びペンタフルオロプロペン(HFO−1225)が特に好ましい。
【0032】
[0038]一態様においては、本発明のフッ素化オレフィンを製造する方法は、Nのハロゲン置換度を有する合成する1種類又は複数のフッ素化オレフィンと実質的に同じ数の炭素原子を有するN+1のハロゲン置換度を有するフッ素化オレフィン出発材料を反応させることを含む。フッ素化オレフィン出発材料は、排他的ではないが好ましくは、N+1のフッ素置換度を有し、最終オレフィンと同じ数の炭素原子を有する1種類以上のフッ素化アルカンを含む反応生成物を生成させるのに有効な反応条件に曝露する。このオレフィン転化工程は、便宜上のために、しかしながら必ずしも限定の目的ではないが、本明細書において時には還元又は水素化工程と呼ぶ反応を含む。次に、得られるフッ素化アルカンを、Nのフッ素置換度を有するフッ素化オレフィンに転化させる。このアルカン転化工程は、便宜上のために、しかしながら必ずしも限定の目的ではないが、本明細書において時には脱ハロゲン化水素化反応、又はより特には幾つかの態様においては脱フッ化水素化若しくは脱塩化水素化反応と呼ぶ反応を含む。
【0033】
[0039]上記に基づくと、本発明の一形態においては、フルオロオレフィンを製造する方法は、以下の工程:
(a)式(I):
(CX3−n)(CRCX=CH2−m (I)
の化合物を、式(II):
(CX3−n)(CRCHXCHm+12−m (II)
(上式において、
それぞれのXは、独立して、Cl、F、I、又はBrであり、但し少なくとも2つのXはFであり;
それぞれのYは、独立して、H、Cl、F、I、又はBrであり;
それぞれのRは、独立して、H、Cl、F、I、Br、或いは非置換又はハロゲン置換のメチル若しくはエチル基であり;
それぞれのRは、独立して、H、Cl、F、I、Br、或いは非置換又はハロゲン置換のメチル若しくはエチル基であり;
nは、1、2、又は3であり;
a及びbは、それぞれ、0、1、又は2であり、但しa+b=2であり;
mは、0、1、又は2であり;そして
zは、0、1、2、又は3である)
の少なくとも1種類のフッ素化アルカンを形成するのに有効な条件下で水素化し;そして
(b)式(II)の化合物を、式(I)の化合物よりも低いフッ素置換度を有するフルオロオレフィン、好ましくは式(III):
(CX3−n)(CRCX=CHm+11−m (III)(式中、それぞれのnは式(I)におけるものと同じ値であり、mは0又は1である)
の化合物を生成させるのに有効な条件下で脱ハロゲン化水素化する;
工程を含む。
【0034】
[0040]更なる非限定的な態様においては、式(I)の反応物質としては、zが0である式(IA)の3炭素オレフィン、即ち
CX3−nCX=CH2−m (IA)
を挙げることができ、この場合には次式:
(CX3−n)CHXCHm+12−m (IIA)
(式中、X、Y、n、及びmは、全て上記に示した通りである)の3炭素アルカンが生成し、この化合物を次に脱ハロゲン化水素化して、式(IIIA):
(CX3−n)CX=CHm+11−m (IIIA)
(式中、nは式(IA)におけるものと同じ値であり、mは0又は1である)
の化合物を形成する。
【0035】
[0041]更なる態様においては、本発明は、フッ素で全置換されている式(I)又は(IA)の飽和末端炭素の化合物(例えば、飽和末端炭素に関するnは3であり、その炭素上のそれぞれのXはFである)を与える。かかる態様においては、式(I)又は(IA)の化合物は、好ましくは、例えばヘキサフルオロプロペン(即ち、Zは0であり、nは3であり、mは0であり、全てのXはFである)、又はペンタフルオロプロペン(即ち、Zは0であり、nは3であり、mは1であり、全てのXはFである)などの、3〜6個のフッ素置換基、及び場合によっては他のハロゲン置換基を有するフルオロプロペンである。得られる式(II)又は(IIA)の化合物は、1種類以上の以下のフッ素化アルカン:ペンタフルオロプロパン(HFC−245)及びヘキサフルオロプロパン(HFC−236)(これらのそれぞれの全ての異性体を含む);しかしながら好ましくは、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)及びこれらの組合せからなる群から選択される。幾つかの好ましい態様においては、転化工程によって製造されるフッ素化アルカンは、N+1のフッ素置換度を有する。
【0036】
[0042]上記の反応のいずれにおいても、オレフィンをアルカンに転化させる工程は、少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約55%、更により好ましくは少なくとも約70%の式(I)の転化率を与えるのに有効な条件下で行う。幾つかの好ましい態様においては、転化率は少なくとも約90%、より好ましくは約99%である。更に幾つかの好ましい態様においては、式(II)の化合物を製造する式(I)又は(IA)の化合物の転化は、少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、更により好ましくは約100%の式(II)又は(IIA)の選択率を与えるのに有効な条件下で行う。
【0037】
[0043]上記の反応のいずれにおいても、アルカンをNのフッ素化度を有するフッ素化オレフィンに転化させる工程は、少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約55%、更により好ましくは少なくとも約70%の式(II)の転化率を与えるのに有効な条件下で行う。幾つかの好ましい態様においては、転化率は少なくとも約90%、より好ましくは約95%である。更に幾つかの好ましい態様においては、式(III)の化合物を製造する式(II)の化合物の転化は、少なくとも約60%、より好ましくは少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、更により好ましくは約98%の式(III)の選択率を与えるのに有効な条件下で行う。
【0038】
水素化工程:
[0044]水素化又は還元工程はバッチ運転で行うことができると意図されるが、水素化反応は実質的に連続運転で行うことが好ましい。水素化反応は単一の反応容器内で行うことができると意図されるが、この反応工程には、並列か又は直列或いは両方の2以上の反応器又は反応段階、或いは複数の反応器のデザインの任意の組合せを含ませることができる。更に、それぞれの用途の詳細に応じて、反応工程には1以上の供給流予備加熱工程又は段階を含ませることができると意図される。
【0039】
[0045]幾つかの態様においてはこの反応は液相反応を含むことができる可能性があるが、幾つかの態様においては、水素化反応は少なくとも1つの蒸気相反応段階を含むと意図される。
【0040】
[0046]本発明の一態様においては、図2に示されるように、水素化工程は、それに関連
して少なくとも第1の流路又は供給流1A、少なくとも第2の流路又は供給流1B、少なくとも第3の流路又は供給流2を有し、それぞれの流路は独立して運転できる反応工程Aを含む。かかる態様においては、第1の流路又は供給流1AはHFPを含み、好ましくはHFPの実質的に全部を反応工程Aに供給し、第2の流路又は供給流1BはHFO−1225yeを含み、好ましくはHFO−1225yeの実質的に全部を反応工程Aに供給することが好ましい(多くの態様においては供給流1Bは実質的にゼロの流量を有し、他の態様においてはこの供給流1Bは実際にはプロセスにおけるその後の操作からの再循環流であってよいと認識される)。供給流2は、反応工程Aのための水素化又は還元剤、好ましくはHを含む。流路又は流れ4は、再循環流を反応工程中へ導入するための流路である。幾つかの態様においては再循環流4の実際の流量は0であるが、好ましい態様においては、再循環流は、冷却及び/又は分離した後の反応生成物流3Aの一部を含む比較的低温の流れを含み、再循環流4の内容物は、存在する場合には、好ましくは、HFC−236ea、HFC−245eb、又はこれらの組合せに比較的富む。
【0041】
[0047]図3に示す本発明の他の好ましい態様においては、水素化工程は、少なくとも第1の反応工程A1、及び第2の反応工程A2を含む。一態様においては、第1の反応工程1Aは、それに関連して少なくとも第1の流路又は供給流1A、及び少なくとも第2の流路又は供給流2Aを有し、それぞれの流路は独立して運転することができる、並列又は直列或いは並列と直列の組み合わせの1以上の反応段階を含んでいてよい。かかる態様においては、第1の流路又は供給流1AはHFPを含み、好ましくはHFPの実質的に全部を反応工程Aに供給し、第2の流路又は供給流2Aは、反応工程Aのための水素化剤、好ましくはHを含むことが好ましい。流路又は供給流4Aは、再循環流を反応工程中へ導入するための流路である。幾つかの態様においては再循環流4Aの実際の流量は実質的に0であるが、好ましい態様においては、再循環流は、冷却及び/又は分離した後の反応生成物流3Aの一部を含む比較的低温の流れを含み、再循環流4の内容物は、存在する場合には、好ましくは、HFC−236ea、HFC−245eb、又はこれらの組合せに比較的富む。
【0042】
[0048]工程A1における水素化反応器内でHFPを転化させる反応段階に関しては、幾つかの態様においては、トリクルベッド反応器を用いることが好ましい。かかる場合には、反応は次のように進行すると考えられる。
【0043】
CFCF=CF+H → CFCHFCFH(HFC−236ea)
このプロセスの主たる側反応によって、HFC−245eb及びHFが生成する。245ebは、水素化脱フッ素化及び/又は脱フッ化水素化、次に還元によって236eaから形成されると考えられる。
【0044】
HFC−236ea+H → HFC−245eb+ HF
[0049]第2の反応工程A2は、それに関連して少なくとも第1の流路又は供給流1B、及び少なくとも第2の流路又は供給流2Bを有し、それぞれの流路は独立して運転することができる、並列又は直列或いは並列と直列の組み合わせの1以上の反応段階を含んでいてよい。かかる態様においては、第1の流路又は供給流1Bは、存在する場合にはHFO−1225yeを含み、好ましくはHFO−1225yeの実質的に全部を反応工程Aに供給することが好ましい。第2の流路又は供給流2Bは、反応工程A2のための水素化剤、好ましくはHを含む。流路又は供給流4Bは、再循環流を反応工程中へ導入するための流路である。幾つかの態様においては再循環流4Bの実際の流量は実質的に0であるが、好ましい態様においては、再循環流は、冷却及び分離した後の反応生成物流3A及び/又は3Bの一部を含む比較的低温の流れを含み、再循環流4Bの内容物は、存在する場合には、好ましくは、HFC−236ea、HFC−245eb、又はこれらの組合せに比較的富む。流路又は流れ10は、第2の再循環流を反応工程中に導入するための流路であ
り、これは好ましい態様においては、HFO−1225yeに比較的富む流れを含むように処理した後の反応生成物流6の少なくとも一部を含む。
【0045】
[0050]工程A2における水素化反応器内でHFO−1225yeを転化させる反応段階に関しては、幾つかの態様においてはトリクルベッド反応器を用いることが好ましい。かかる場合においては、反応は次のように進行すると考えられる。
【0046】
CFCF=CFH(液体)+H(気体) → CFCHFCFH(HFC−245eb−気体)
主たる側反応は
HFC−245eb+H → CFCHFCH(HFC−254)+HF
であると考えられる。
【0047】
[0051]好ましくは、水素化反応条件は、本発明による所望の転化率及び/又は選択率が達成されるように反応において制御する。本明細書において用いる「反応条件」という用語は、場合によっては反応容器又は段階を用いるか又は用いないなどの、本明細書に含まれる教示にしたがって供給材料の転化率及び/又は選択率を生起させるために反応の操作者によって変化させることができる任意の1以上の処理パラメーターの単一の手段制御を含むように意図される。例として、しかしながら限定の目的ではないが、供給材料の転化は、以下のもの:反応の温度;反応物質の流速;希釈剤の存在;反応容器内に存在する触媒の量;反応容器の形状及び寸法;反応の圧力;及びこれら、並びに本明細書に含まれる開示を考慮すると利用することができ且つ当業者に公知の他のプロセスパラメーターの任意の1つの組み合わせ;の任意の1以上を制御又は調節することによって制御又は調節することができる。反応容器自体の寸法及び形状並びに他の特徴は本発明の範囲内で広く変化させることができ、それぞれの段階に関係する容器は、上流及び下流の反応段階に関係する容器と異なっても同一であってもよいと意図される。更に、全ての反応段階は、転化を制御するのに必要な手段及びメカニズムが与えられているならば、単一の容器の内部で行うことができると意図される。例えば、幾つかの態様においては、それぞれの反応段階に関して単一の管状反応器を用い、管状反応器全体にわたる触媒の量及び/又は分布を慎重に選択することによって転化の制御を与えることが望ましい可能性がある。かかる場合においては、管状反応器の異なるセクションから取り出されるか又はこれに加えられる熱の量を制御することによって、同じ管状反応器の異なるセクション内での転化を更に制御することができる。
【0048】
[0052]当業者であれば、本明細書に含まれる教示を考慮して本発明の水素化工程のために用いる1種類又は複数の触媒のタイプを選択することが容易に可能であろう。例えば、幾つかの態様においては、少なくとも1つ、しかしながら好ましくは全部の反応段階において、パラジウム触媒、好ましくは炭素上の1%パラジウムを、単独か又は他の触媒と組み合わせて用いることが好ましい。これに関しては、米国特許5,679,875(参照として本明細書中に包含する)に開示されている1種類以上の水素化触媒を、本発明による1以上の反応段階のために用いることができる。幾つかの好ましい態様においては、触媒は、好ましくはカーボンメッシュのような炭素上に担持されているパラジウムを含む。
【0049】
[0053]而して、本方法の幾つかの態様は、式Iによるフッ素化オレフィン、及びHのような水素化剤を、少なくとも第1の反応段階において第1の量の触媒と接触させて、1種類又は複数のヒドロフルオロカーボン、未反応のフッ素化オレフィン、及び水素を含む反応流を生成させることを含む。幾つかの好ましい態様においては、水素化工程の後に下記に記載する好ましい分離工程を行う。用いる触媒及び最も望ましい反応生成物のような関連するファクターに応じて広範囲の水素化反応温度を用いることができると意図されるが、一般に、水素化工程のための反応温度は約50℃〜約150℃、好ましくは約75℃
〜約115℃、更により好ましくは約90℃〜約100℃であることが好ましい。
【0050】
[0054]一般に、これも用いる具体的な触媒及び最も望ましい反応生成物のような関連するファクターに応じて広範囲の反応圧力を用いることができるとも意図される。反応圧力は、例えば約100psig〜約300psig、好ましくは約150psig〜約250psig、更により好ましくは約200psigであってよい。
【0051】
[0055]いかなる特定の理論にも縛られないが、本出願人らは、水素化反応において冷却した再循環流4、4A、又は4Bを用いることによって、供給材料を水素化反応から熱を取り出すための手段として機能させることができることを見出した。本発明の還元又は水素化反応は概して発熱性であり、通常は相当に発熱性であるので、かかる再循環材料を用いることは、好ましい態様においては、全ての他のプロセス条件を同じく維持したと仮定して再循環を用いなかった場合に存在するであろうものよりも低い反応器温度が維持される効果を有する。
【0052】
[0056]用いる水素の量は広範囲に変化させることができると意図される。好ましい態様においては、水素は、約1:1〜約2:1のH:オレフィンの供給比、更により好ましくは約1:1〜約1.5:1、更により好ましくは約1.3:1の比のガスとして反応工程に供給する。
【0053】
水素化反応流出流の分離:
[0057]幾つかの好ましい態様においては、本発明はまた、反応器生成物流(3、3A、3B)の少なくとも一部を冷却して、反応熱の少なくとも一部を除去する工程も含む。多くの好ましい態様においては、この冷却工程は、図4、5、及び6に関連して下記に記載する分離工程Bの好ましい形態の一部として含まれる。好ましくは、冷却され再循環される反応生成物と新しい供給流との比は約12:1であり、再循環流の温度は、好ましくは約50℃〜約100℃、更により好ましくは約70℃である。更に、反応熱の除去を促進するために、幾つかの態様においては、新しい供給流及び/又は再循環供給流を液相で反応に導入し、反応熱によって液体供給流及び/又は反応生成物を蒸発させて、反応生成物を気相で排出することが好ましい。
【0054】
[0058]ここで図4を参照すると、反応生成物流3A及び3Bを、図4の態様においては冷却工程B1を含む分離工程Bに送って、1以上の冷却した反応生成物流3ABを生成させ、これを次に1以上の分離段階B2に供給する。当業者であれば、本明細書に含まれる教示を考慮して、過度の実験を行うことなくかかる冷却を達成するための多くの手段及びメカニズムを想到することができ、全てのかかる手段及びメカニズムは本発明の範囲内であると意図される。好ましい分離工程B2は、好ましくは少なくとも第1の分離工程を含み、これによって、未反応の水素、フッ素化アルカン、例えばHFC−236ea及び/又はHFC−245eb又はこれらの組合せに比較的富む第1の流れ4が生成し、これは更なる処理を行うか又は行わないで反応工程Aに再循環することができる。分離工程B2からは、フッ素化アルカン、例えばHFC−236ea及び/又はHFC−245ebに比較的富む第2の流れ5も生成する。
【0055】
[0059]図4Aに示す1つの好ましい態様においては、分離工程は、冷却工程B1及び分離工程B2(これは、少なくとも反応生成物の一部を含み、好ましくは反応工程Aに再循環される第1の冷却流4A、及び更なる分離工程B3に供給される粗生成物流100を生成する)に加えて、更なる分離工程B3を含み、ここで流れ100中の過剰の水素の相当部分を流れからパージして、流れ4B内で廃棄又は更なる処理のために送る。分離工程B3からの流れ101は、次に更なる分離工程B4に供給し、ここで望まれていない副生成物を流れ4C中に取り出し、1以上の生成物流5A及び5Bを生成させる。好ましい態様
においては、流れ5Aは第1のフッ素化アルカン、好ましくはHFC−236eaに比較的富み、第2の流れ5Bは第2のフッ素化アルカン、好ましくはHFC−245ebに富む。
【0056】
[0060]ここで図5を参照して説明する他の態様においては、反応生成物流3A及び3Bは、それぞれ、分離冷却工程B1及びB1’を含む別の分離工程に送って、それぞれによって1以上の冷却した反応生成物流3A’及び3B’を生成させて、これを次に別の分離段階B2及びB2’に供給して、供給流3AがHFPに富む場合にはHFC−236eaのような第1のフッ素化アルカン生成物に比較的富む第1の流れ5A、及び供給流3BがHFO−1225yeに富む場合にはHFC−245ebのような第2のフッ素化アルカン生成物に比較的富む第2の反応生成物流5Bを生成させる。図4に関して上記に記載した流れ4(図示せず)も、工程B2及びB2’のそれぞれから取り出すことができる。更に、図4Aに示し且つ記載する特定の態様を、図5に示す分離工程B及びB’の一方又は両方に関して用いるように適合させることもできる。
【0057】
脱ハロゲン化水素化:
[0061]脱フッ化水素化工程は、脱ハロゲン化水素化剤(例えば苛性溶液)の存在下において液相中で、或いは脱フッ化水素化触媒の存在下において気相中で行うことができる。反応は、バッチ式、連続的、又はこれらの組合せで行うことができると意図される。
【0058】
[0062]一態様においては、転化工程は、HFC−245eb及び/又はHFC−236eaを、KOH、NaOH、Ca(OH)、LiOH、Mg(OH)、CaO、及びこれらの組合せのような脱ハロゲン化水素化剤と接触させてフッ素化オレフィンを形成する反応を含む。例として、KOHを用いる場合には、かかる反応は、例として、しかしながら必ずしも限定の目的ではなく、以下の反応式(1)及び(2):
CF−CHF−CHF+KOH → CFCF=CHF+KF+HO (1)
CF−CHF−CHF+KOH → CFCF=CH+KF+HO (2)によって説明することができる。
【0059】
[0063]脱ハロゲン化水素化剤は、約2重量%〜約100重量%、より好ましくは約10重量%〜約50重量%、更により好ましくは約10重量%〜約30重量%の脱ハロゲン化水素化剤を含む苛性水溶液として与えることができる。更なる態様においては、苛性溶液、好ましくは脱ハロゲン化水素化剤溶液を、約20℃〜約100℃、より好ましくは約20℃〜約90℃、最も好ましくは約20℃〜約70℃の温度にする。かかる態様における反応圧力は、それぞれの用途の特定の処理パラメーターに応じて変化させることができる。幾つかの態様においては、反応圧力は、大気圧から大気圧以上又は真空下の範囲である。用いる場合には真空圧は、幾つかの態様においては約5torr〜約760torrの範囲である。
【0060】
[0064]用いる脱ハロゲン化水素化剤(又は試薬)の量、或いは有機化合物に対する試薬のモル比は、それぞれの態様において存在する特定のパラメーターに応じて変化すると意図される。幾つかの態様においては、有機供給流(例えばHFC−245eb及び/又はHFC−236ea)に対する脱ハロゲン化水素化剤のモル比は、1〜3未満、好ましくは1〜1.5である。更なる態様においては、全供給流量(mL/秒)に対する試薬の体積(mL)の比として表される接触時間は、約0.1秒〜約1000秒、好ましくは約2秒〜約120秒である。
【0061】
[0065]脱ハロゲン化水素化反応は、任意の好適な容器又は反応器を用いて行うことができる。かかる容器又は反応器は、ステンレススチール、ニッケル及びその合金、例えばハステロイ、インコネル、インコロイ、及びモネルのような腐食に対して抵抗性の材料から
構成しなければならない。幾つかの態様においては、この反応は、1つ又は一連の連続撹拌タンク反応器(CSTR)を用いて行う。このタイプの反応器においては、有機供給流(例えばHFC−236ea及び/又はHFC−245eb)並びに脱ハロゲン化水素化剤を反応器中に連続的に供給し、1225ye及び/又は1234yfを未反応の236ea及び/又は245eb並びに反応の他の副生成物から分離するために、形成される得られる生成物流を凝縮器又は蒸留カラム中に供給する。
【0062】
[0066]幾つかの態様においては、消費された脱ハロゲン化水素化剤を、周期的又は連続的のいずれかで生成物流から取り出し、再使用するために反応器に再循環して戻す。上記で述べたように、本出願人らは、連続処理中においては、反応は、有機反応物質(例えばHFC−236ea及び/又はHFC−245eb)又は脱ハロゲン化水素化剤のいずれかが消費されるまで進行することを見出した。反応器は、反応が完了したら塩及び/又は塩溶液を取り出すために分解しなければならないので、これによって製造コストが増加する。しかしながら、脱ハロゲン化水素化剤及び副生成物塩を再循環することによって、かかるコストを減少させ、システムをより効率的にすることができる。
【0063】
[0067]消費された脱ハロゲン化水素化剤及び副生成物塩(例えば金属フッ化物塩)は、1以上の公知の分離方法を用いて、連続的又は断続的のいずれかで生成物流によって反応器から排出することができる。このために、蒸留、相分離等など(しかしながらこれらに限定されない)の任意の公知の化合物分離方法を用いて、消費された脱ハロゲン化水素化剤の分離を行うことができる。幾つかの態様においては、消費された脱ハロゲン化水素化剤を排出することは、有機化合物及び脱ハロゲン化水素化剤の容易な分離が可能になるので、成分分離のために特に有益である。これによって、複雑で高度に専門化した分離装置の設計及び運転に関係するコストが低下する。
【0064】
[0068]消費された脱ハロゲン化水素化剤を含む生成物流は、通常はそれと共に若干の溶解している有機化合物(例えばHFC−236ea及び/又はHFC−245eb)を同伴している。撹拌器を停止し、撹拌が停止している時間中に消費された脱ハロゲン化水素化剤を取り出すことによって、脱ハロゲン化水素化剤及びかかる有機化合物の分離を容易にすることができる。消費された脱ハロゲン化水素化剤及び溶解している有機化合物を容器中に回収し、ここで1以上の上記の分離方法を用いて脱ハロゲン化水素化剤及び有機化合物の更なる分離を行うことができる。例えば、1つの非限定的な態様においては、蒸留、即ち有機化合物を236ea及び/又は245ebの沸点の直ぐ上の温度に加熱して、それによって有機化合物を消費されたKOHから分別することによって、KOHを分離する。或いは、相分離器を用いて2つの相の間で分離させることができる。有機化合物を含まないKOH単離物は、反応器に直ちに再循環することができ、或いは濃縮して、濃縮した溶液を反応器に戻すことができる。
【0065】
[0069]また、副生成物塩は、単離して、公知の方法を用いて転化させて脱ハロゲン化水素化剤に戻すこともできる。例えば、脱ハロゲン化水素化剤としてKOHを用いる場合には、副生成物塩としてKFが形成される。かかる塩は、転化させてKOHに戻して、脱ハロゲン化水素化反応に再循環して戻すことができる。例えば、下記:
2KF+Ca(OH) → 2KOH+CaF
の反応にしたがってKFを転化させるためにCa(OH)を用いることができる。
CaFは上述の反応から沈殿し、一方、KOHは単離して、反応器に再循環して戻す。消費された脱ハロゲン化水素化剤を再循環することによって、より良好な試薬の使用効率が導かれる。更に、副生成物塩の再循環を用いることによって、脱ハロゲン化水素化剤の使用が減少し、試薬のコスト、並びに塩の廃棄及び/又は新しい原材料の購入に関連するコストが減少する。
【0066】
[0070]図6を参照すると、本発明の一態様においては、脱ハロゲン化水素化工程は、それに関連して、少なくとも第1の流路又は供給流5A、少なくとも第2の流路又は供給流5B、及び少なくとも第3の流路又は供給流8を有し、それぞれの流路が独立して運転可能である反応工程Cを含む。かかる態様においては、第1の流路又は供給流5AはHFO−236eaを含み、好ましくはHFO−236eaの実質的に全部を反応工程Cに供給し、第2の流路又は供給流5BはHFC−245ebを含み、好ましくはHFO−245ebの実質的に全部を反応工程Cに供給することが好ましい(多くの態様において、供給流5Bは実質的に0の流量を有すると認められる)。流路又は流れ8は、再循環流を反応工程中に導入するための流路である。幾つかの態様においては、再循環流8の実際の流量は0であるが、好ましい態様においては、再循環流は、冷却及び/又は分離した後の反応生成物流6Aの一部を含む比較的低温の流れを含む。再循環流8の内容物は、存在する場合には、未反応の有機化合物(例えば、HFC−236ea、HFC−245eb)、並びに消費した脱ハロゲン化水素化剤を含んでいてよい。本明細書において規定するようにそれぞれを精製又は回収して再循環することができる。
【0067】
[0071]図7に示す本発明の他の好ましい態様においては、脱ハロゲン化水素化工程は、少なくとも第1の反応工程C1及び第2の反応工程C2を含む。第1の反応工程C1は、それに関連して少なくとも第1の流路又は供給流5A、及び少なくとも第2の流路又は供給流8Aを有し、それぞれの流路は独立して運転することができる、並列又は直列或いは並列と直列の組み合わせの1以上の反応段階を含んでいてよい。第2の反応工程C2は、それに関連して少なくとも第1の流路又は供給流5B、及び少なくとも第2の流路又は供給流8Bを有し、それぞれの流路は独立して運転することができる、並列又は直列或いは並列と直列の組み合わせの1以上の反応段階を含んでいてよい。かかる態様においては、第1の流路又は供給流5AはHFO−236eaを含み、好ましくはHFO−236eaの実質的に全部を反応工程Cに供給し、第2の流路又は供給流5Bは存在する場合にはHFO−245ebを含み、好ましくはHFO−245ebの実質的に全部を反応工程Cに供給する。流路又は流れ8A及び8Bは、本明細書において規定するように未反応の供給流の戻り又は再循環した脱ハロゲン化水素化剤の少なくとも一部を含む再循環流を導入するための流路である。幾つかの態様においては再循環流8A及び8Bの実際の流量は実質的に0であるが、好ましい態様においては、再循環流は、冷却及び分離した後の反応生成物流6A及び6Bの一部を含む比較的低温の流れを含む。
【0068】
[0072]好ましくは、反応条件は、本発明にしたがって所望の転化率及び/又は選択率を達成するように反応において制御する。本明細書において用いる「反応条件」という用語は、場合によっては反応容器又は段階を用いるか又は用いないなどの、本明細書に含まれる教示にしたがって供給材料の転化率及び/又は選択率を生起させるために反応の操作者によって変化させることができる任意の1以上の処理パラメーターの単一の手段制御を含むように意図される。例として、しかしながら限定の目的ではないが、供給材料の転化は、以下のもの:反応の温度;反応物質の流速;希釈剤の存在;反応容器内に存在する触媒の量;反応容器の形状及び寸法;反応の圧力;及びこれら、並びに本明細書に含まれる開示を考慮すると利用することができ且つ当業者に公知の任意の他のプロセスパラメーターの任意の1つの組み合わせ;の任意の1以上を制御又は調節することによって制御又は調節することができる。反応容器自体の寸法及び形状並びに他の特徴は本発明の範囲内で広く変化させることができ、それぞれの段階に関係する容器は、上流及び下流の反応段階に関係する容器と異なっても同一であってもよいと意図される。更に、全ての反応段階は、転化を制御するのに必要な手段及びメカニズムが与えられているならば、単一の容器の内部で行うことができると意図される。例えば、幾つかの態様においては、それぞれの反応段階に関して単一の管状反応器を用い、管状反応器全体にわたる触媒の量及び/又は分布を慎重に選択することによって転化の制御を与えることが望ましい可能性がある。かかる場合においては、管状反応器の異なるセクションから取り出されるか又はこれに加えられ
る熱の量を制御することによって、同じ管状反応器の異なるセクション内での転化を更に制御することができる。
【0069】
[0073]得られる生成物は、当該技術において公知の1以上の方法を用いて生成物流から単離して、それ相当に精製することができる。
【実施例】
【0070】
[0074]以下の実施例は本発明を例示する目的で与えるものであるが、その範囲を限定するものではない。
[0075]実施例1:
[0076]CSTR(連続撹拌タンク反応器)を用いて245ebを1234yfに転化させた。反応器は、浸漬管の末端がKOH相の中間部に位置するように設計し、運転した。始動運転の後、有機化合物及び新しいKOHを連続的に供給した。有機化合物の排出流(塔頂流部分)を常時回収した。通常のサイクルにおいて、有機化合物及びKOHを流入させ、塔頂流を30分間採取した。流速は、それぞれ5及び12mL/分であった。この時間中は混合物を撹拌した。次に、供給流を未だ投入しながらスターラーを10分間停止した。スターラーが停止している状態で10分後に、消費されたKOHを排出するのに適当なバルブを開放した。40分毎に500〜550gの間が回収された。
【0071】
[0077]実験は7時間行った。温度は48℃であった。圧力は45psigであった。有機供給流のGC面積%は約97%の245ebであり、残りはほぼ確実に254であった。流速は1又は1より僅かに大きいG−245ebに対するKOHのモル比に変換される。理論滞留時間は100分であった。
【0072】
[0078]スクラバー生成物回収シリンダー(SPCC)を用いて、消費されたKOH、及び消費されたKOHに同伴した有機化合物の部分を回収した。予めSPCCに加えた塩化メチレン中に有機化合物をトラップした。SPCCの内部の塩化メチレンの体積は、SPCC中の液体の全体積の15%であった。ドライアイス中に保持した生成物回収シリンダー(PCC)中に、生成物及び未反応の有機化合物を回収した。1時間に一回蒸気試料を採取し、一方、液体試料はこれよりも遙かに長いインターバルで採取した。
【0073】
[0079]全質量バランスは、有機化合物に関しては94%であった。平均転化率は48%であった。1234yfへの選択率は73%であった。
[0080]実施例2:
[0081]圧力及び温度が48psig及び47℃であった他は実験1と同じようにして第2の実験を行った。実験を6時間続け、全転化率は69%であった。1234yfへの選択率は75%であった。
【0074】
[0082]実施例3:
[0083]反応器に807mLの有機化合物を装填した。GCによって供給流を分析して、236eaに関する面積%が97.70%であることが示された。この供給流中には1234yfは存在せず、一方、1225yeのパーセントは0.03であった。反応器に有機化合物を装填した後、1641mLの25%KOHを加えた。したがって、236eaに対するKOHのモル比は1.23であった。
【0075】
[0084]236ea及びKOHの流速は、2及び4mL/分であった。圧力は35〜45psigであった。反応器温度は42〜45℃であった。
[0085]消費されたKOHを反応器から周期的に回収した(これは有機化合物と同じように連続的に供給し、塔頂生成物を連続的に回収した:即ち半連続運転であった)。この半連続モードにおいて、KOH及び有機化合物を撹拌反応器中に50分間流入させた。次に
、反応物質を未だ流入させながらスターラーを10分間停止した。その後、290〜300gの消費されたKOHを回収した。次に、スターラーを始動させ、時計を見ながら50分間運転した。
【0076】
[0086]消費されたKOHをスクラバー生成物回収シリンダー(SPCC)中に回収した。SPCCには、塩化メチレンを予め充填した(目標は、最終的な消費KOH−塩化メチレン溶液中で15〜20重量%の塩化メチレンを有するようにすることであった)。塩化メチレン層の分析によって、約70GC面積%が236eaであったことが示された。少量の1225ye(約2%)が存在しており、残りは未確認の重質物であった。全ての有機化合物が塩化メチレンによって抽出されたことを確認するために、1部のKOHを1部のMeClに加えた(即ち1:1)。GC分析によって、有機化合物の量は無視できるものであったことが示された。
【0077】
[0087]全質量バランスは88.67%であった。滞留時間は200分であった。転化率は約50%であった。1225yeへの選択率は63%であった。反応は合計で97時間行った。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
a.式(I):
(CX3−n)(CRCX=CH2−m (I)
にしたがう少なくとも1種類のアルケンを含む出発材料流を、還元剤と接触させることによって水素化して、式(II):
(CX3−n)(CRCHXCHm+12−m (II)
(上式において、
それぞれのXは、独立して、Cl、F、I、又はBrであり、但し少なくとも2つのXはFであり;
それぞれのYは、独立して、H、Cl、F、I、又はBrであり;
それぞれのRは、独立して、H、Cl、F、I、Br、或いは非置換又はハロゲン置換のメチル若しくはエチル基であり;
それぞれのRは、独立して、H、Cl、F、I、Br、或いは非置換又はハロゲン置換のメチル若しくはエチル基であり;
nは、1、2、又は3であり;
a及びbは、それぞれ、0、1、又は2であり、但しa+b=2であり;
mは、0、1、又は2であり;そして
zは、0、1、2、又は3である)
にしたがう少なくとも1種類のアルカンを含む中間体生成物流を生成させ;
b.場合によっては、かかる中間体生成物流を、少なくとも式IIにしたがう第1のアルカンに富む第1の流れ、少なくとも式IIにしたがう第2のアルカンに富む第2の流れ、及びアルカン再循環流からなる群から選択される2以上の流れを含む複数の中間体生成物流に分離し;
c.脱ハロゲン化水素化剤の存在下において、工程(a)からの中間体プロセス流又は工程(b)の複数の中間体プロセス流の少なくとも一部を脱フッ化水素化して、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペン、及び式(I)の化合物のフッ素化度と比べて低いフッ素置換度を有する少なくとも1種類の更なるアルケンを含むアルケン生成物流を生成させ:そして
d.脱フッ化水素化生成物流から、消費された脱ハロゲン化水素化剤を含む生成物反応流を引き抜き;そして
e.消費された脱ハロゲン化水素化剤を回収する;
ことを含む、少なくとも1種類のフッ素化オレフィンの製造方法。
[2]
更なるアルケンが、式(III):
(CX3−n)(CRCX=CHm+11−m (III)
(式中、X、Y、R、R、n、a、及びbのそれぞれは、式(I)におけるものと同じ値であり、mは0又は1である)
にしたがう化合物である、[1]に記載の方法。
[3]
出発材料流がヘキサフルオロプロピレンを含み、更なるアルケンが1,1,1,2−テトラフルオロプロペンである、[1]に記載の方法。
[4]
脱ハロゲン化水素化剤が、KOH、NaOH、Ca(OH)、LiOH、Mg(OH)、CaO、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、[1]に記載の方法。
[5]
a.ヘキサフルオロプロピレンを含む出発材料流を、水素化反応器内で還元剤と接触させることによって水素化して、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン又は1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを含む中間体流を生成させ;
b.脱フッ化水素化反応器内において、1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン又は1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパンを脱ハロゲン化水素化剤の存在下で脱フッ化水素化して、1,1,1,2−テトラフルオロプロペン又は1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロペンを含む生成物流を生成させ:
c.生成物流から、消費された脱ハロゲン化水素化剤を含む第2の生成物流を引き抜き;
d.消費された脱ハロゲン化水素化剤を回収し;そして
e.場合によっては、精製した脱ハロゲン化水素化剤を濃縮して、それを脱ハロゲン化水素化反応に再循環して戻す;
ことを含む、1,1,1,2−テトラフルオロプロペンの製造方法。
[6]
第2の生成物流が、1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)及び/又は1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)からなる群から選択される溶解した有機化合物を更に含む、[5]に記載の方法。
[7]
反応流が脱ハロゲン化水素化剤の副生成物塩を更に含む、[5]に記載の方法。
[8]
副生成物塩を脱ハロゲン化水素化剤に転化させることを更に含む、[7]に記載の方法。
[9]
脱ハロゲン化水素化剤がKOHであり、副生成物塩がKFである、[7]に記載の方法。
[10]
(a)1,1,1,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236ea)又は1,1,1,2,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245eb)を、KOHの存在下で脱ハロゲン化水素化して、2,3,3,3−テトラフルオロプロパン(HFO−1234yf)又は1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFP−1225ye)を生成させ;
(b)消費されたKOH、溶解した有機化合物、及び場合によってはKFを含む反応流を排出し;
(c)消費されたKOHを回収し;
(d)場合によってはKFをKOHに転化させる;
ことを含む、フルオロオレフィンの製造方法。
[11]
場合によっては、転化したKOHを濃縮して、それを脱ハロゲン化水素化反応に再循環して戻すことを更に含む、[10]に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7