(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の定義は、本発明のいくつかの実施形態について記載された、いくつかの態様に適用される。これらの定義は、同様に、本明細書に拡張されてもよい。各用語はさらに、説明、図、及び実施例により、説明及び例示される。本明細書の用語の任意の解釈は、本明細書に記載された完全な説明、図、及び実施例を考慮すべきである。
【0013】
文脈上明らかに別段の指示がない限り、単数形を表す語は、複数形を含む。したがって、文脈上明らかに別段の指示がない限り、例えば、単数の対象への言及は、複数の対象を含んでもよい。
【0014】
「実質的に」及び「実質的な」という用語は、相当の程度または範囲を意味する。事象又は状況に関連して使用される場合、前記用語は、事象又は状況が正確に起こる例だけでなく、事象又は状況が、本明細書で説明される実施形態の典型的な許容範囲又は可変性による近似に対して起こる例も意味することができる。
【0015】
「約」という用語は、本明細書で説明される実施形態の典型的な許容範囲、測定精度、又は他の可変性を考慮するために、所定の値にほぼ近い値の範囲を意味する。
【0016】
「比容量」という用語は、ある材料が単位質量あたりに保持(又は放電)できる電子又はリチウム塩の量(例えば合計量や最大量)を意味し、mAh/gの単位で表すことができる。特定の態様及び実施形態において、所定の対向電極に対する所定の電圧範囲、所定のレートでの放電(又は充電)を構成とする定電流放電(又は充電)分析によって、比容量は測定されてよい。例えば、比容量は、Li/Li+対向電極に対する約0.05C(例えば約8.75mA/g)で4.45Vから3.0Vでの放電により測定されてよい。約0.1C(例えば約17.5mA/g)や約0.5C(例えば約87.5mA/g)や約1.0C(例えば約175mA/g)のレートなどの、他の放電レート及び他の電圧範囲を用いてもよい。
【0017】
「C」レートは、(実質的に完全に充電された状態の)電池が1時間で実質的に完全に放電する電流値「1C」に対する、割合又は倍数としての放電電流、あるいは、(実質的に完全に放電された状態の)電池が1時間で実質的に完全に充電される電流値「1C」に対する、割合又は倍数としての充電電流の、いずれかを意味する。
【0018】
「定格充電電圧」という用語は、電池の充電中、放電中、及び/又はサイクル中の最大電圧といった、電池動作中の電圧範囲の上限を意味する。いくつかの態様及びいくつかの実施形態においては、定格充電電圧は、第1サイクル、第2サイクル、又は第3サイクルといった、初期サイクルにおける(最大)比容量での、実質的に完全に放電された状態から充電する際の、最大電圧を意味する。いくつかの態様及びいくつかの実施形態においては、定格充電電圧は、クーロン効率、比容量の維持率、エネルギー密度の維持率、及びレート特性といった、1つ以上の性能特性を実質的に維持するための、電池動作中の最大電圧を意味する。
【0019】
「定格カットオフ電圧」という用語は、電池の充電中、放電中、及び/又はサイクル中の最小電圧といった、電池動作中の電圧範囲の下限を意味する。いくつかの態様及びいくつかの実施形態においては、定格カットオフ電圧は、第1サイクル、第2サイクル、又は第3サイクルといった、初期サイクルにおける(最大)比容量での、実質的に完全に充電された状態から放電させる際の最小電圧を意味する。そのような態様及び実施形態において、定格カットオフ電圧は、定格放電電圧ともいうこともできる。いくつかの態様及びいくつかの実施形態においては、定格カットオフ電圧は、クーロン効率、比容量の維持率、エネルギー密度の維持率、及びレート特性といった、1つ以上の性能特性を実質的に維持するための、電池動作中の最小電圧を意味する。
【0020】
「最大電圧」は、負極及び正極がともに完全に充電される電圧を意味する。電気化学セルにおいては、どちらの電極も所定の比容量を有することができる。そして、一方の電極が完全に充電されると、他方の電極は、特定の電極の組み合わせに適するように完全に充電される、というように、電極の1つが制限電極となる。電極の比容量をマッチングし、電気化学セルで所望の容量に達成する過程は、「容量マッチング」と呼ばれる。
【0021】
「LCO」という用語は、一般的にLiCo
xO
yを含む正極材料を意味し、特に限定されないが、LiCoO
2を含む正極材料が挙げられる。
【0022】
「NMC」という用語は、一般的にLiNi
xMn
yCo
zO
wを含む正極材料を意味し、特に限定されないが、LiNi
0.33Mn
0.33Co
0.33O
2を含む正極材料が挙げられる。
【0023】
いくつかの電池特性が温度によって変化する場合、文脈上明らかに別段の指示がない限り、そのような特性は室温(約30℃)で特定される。
【0024】
本明細書に記載された範囲は、その端点を含む。したがって、例えば範囲1〜3は、中間の値、並びに値1及び3を含む。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に従って実施されたLiイオン電池100を示す。電池100は、負極102、正極106、及びセパレータ108を含み、前記セパレータ108は負極102と正極106の間に配置される。図示された実施形態において、電池100は高電圧電解質104を含んでもよく、前記高電圧電解質104は負極102と正極106の間に配置され、高電圧電池サイクル中に安定のままである。
【0026】
電池100の動作は、ホスト材料である負極102及び正極106へのLiイオンの出入りである、可逆的なインターカレーション及びデインターカレーションに基づいている。電池100の他の実施は、変換化学に基づくものなどが考えられる。
図1を参照すると、電池100の電圧は、負極102及び正極106の酸化還元電位に基づいており、前者の低電位及び後者の高電位で、Liイオンは吸着又は放出される。より高いエネルギー密度、及びそのエネルギーを送達するためのより高電圧のプラットフォームの両方を可能にするために、正極106は、約4.3V以上の高電圧動作用の活性正極材料を含む。
【0027】
好適な高電圧正極材料の例としては、リン酸塩、フルオロリン酸塩、フルオロ硫酸塩、フルオロケイ酸塩、スピネル、Li過剰層状酸化物、及び、複合層状酸化物が挙げられる。好適な正極材料のさらなる例としては、スピネル型構造リチウム金属酸化物、層構造リチウム金属酸化物、リチウム過剰層構造リチウム金属酸化物、リチウム金属ケイ酸塩、リチウム金属リン酸塩、金属フッ化物、金属酸化物、硫黄、及び金属硫化物が挙げられる。好適な負極材料の例としては、リチウム、グラファイト(Li
xC
6)及び他の炭素、ケイ酸塩、又は酸化物系負極材料といった、Liイオン電池に用いられる従来の負極材料が挙げられる。
【0028】
図2は、本発明の実施形態に従って、Liイオン電池の動作、及び改善された電解質の作用の例示的、非限定的なメカニズムを示す。特許請求の範囲に記載のない特定の理論に拘束されないが、電解液が1つ以上の安定化添加剤化合物を含有することで、電池の動作時に(例えば調整時に)高電圧正極材料を不動態化し、それによって、バルク電解質化合物と正極材料との間の、電池性能を低下させ得る反応を低減又は防止することができる。
【0029】
図2を参照すると、電解質202はベース電解質を含み、初期の電池サイクル中において、ベース電解質内の成分は、負極204の上又は隣へのin‐situでの保護膜形成(solid electrolyte interphase(SEI)206の形成)を促進することができる。負極SEI206は、高電圧電解質202の還元分解を抑制することができる。好ましくは、そして、特許請求の範囲に記載のない特定の理論に拘束されないが、4.2V以上の電圧での動作のために、電解質202は、正極200の上又は隣へのin‐situでの保護膜形成(SEI208又はその他の誘導体の形成)を促進することができる添加剤を含んでもよい。正極SEI208は、普通なら高電圧動作中に発生するはずの、高電圧電解質202の酸化分解を抑制することができる。このように、負極SEI206による還元反応の抑制に対応する方法で、正極SEI208は酸化反応を抑制する。実施形態に示すように、正極SEI208は、サブミクロンの範囲の厚さを有することができ、また、1つ以上の添加剤に含まれるケイ素や他のヘテロ原子などの1つ以上の元素に対応又は由来する、1つ以上の元素を含んでもよい。有利には、1つ以上の添加剤は、負極204よりも、正極200を優先的に不動態化し、正極200上の膜形成に選択的に寄与することができる。そのような優先的又は選択的な正極200上の膜形成は、普通なら抵抗損失により電池性能が低下するはずの、(負極SEI206を超えて)負極204上への追加の膜形成をほとんど又は全く行うことなく、酸化分解に対する安定性を付与することができる。より一般的に、正極材料の酸化還元電位以下、及び、負極204上のSEI形成の酸化還元電位以上で、1つ以上の添加剤は分解できる。
【0030】
特許請求の範囲に記載のない特定の理論に拘束されないが、正極SEI208の形成は、1つ以上の以下のメカニズム:
(1)添加剤化合物は分解されて正極SEI208を形成することができ、正極SEI208が電解質成分のさらなる酸化分解を抑制する;
(2)添加剤化合物又はその分解生成物が、正極上又は負極上に保護膜を形成、又は保護膜の質を向上させる;
(3)添加剤化合物は、LiPF
6や正極材料との複合体といった中間生成物を形成することができ、その中間生成物はさらに分解され、電解質成分のさらなる酸化分解を抑制する正極SEI208を形成する;
(4)添加剤化合物は、LiPF
6との複合体といった中間生成物を形成することができ、その中間生成物は初期の充電中にさらに分解される。生じた分解生成物は初期の充電中にさらに分解され、電解質成分のさらなる酸化分解を抑制する正極SEI208を形成することができる;
(5)添加剤化合物は、金属イオンの溶出を防止することにより、正極材料を安定化させることができる;
によって起こりえる。
【0031】
電解質202の作用の他のメカニズムは、本発明の実施形態に従って考えられる。例えば正極SEI208を形成すること、又は質を向上させることを置き換えて、又は組み合わせると、1つ以上の添加剤又はその誘導体(例えばそれらの分解生成物)は、負極SEI206を形成、又は質を向上させることができ、例えばその負極SEI206は負極SEI206を介するLiイオンの拡散による抵抗を低減する。別の例として、1つ以上の添加剤又はその誘導体(例えばそれらの分解生成物)は、他の電解質成分と化学的に反応する又は複合体を形成することで、電解質202の安定性を向上させることができる。さらなる例として、1つ以上の添加剤又はその誘導体(例えばそれらの分解生成物)は、化学的反応又は複合体形成により、他の電解質成分の分解生成物、又は電解質202中の溶出した電極材料を除去することができる。正極SEI208、負極SEI206、及び他の分解生成物又は複合体のいずれか1つ以上は、誘導体とみなすことができ、その誘導体はヘテロ原子といった1つ以上の添加剤に含まれる元素に対応又は由来する、1つ以上の元素を含んでもよい。
【0032】
特定の実施形態は、非水電解質用のポリマー添加剤の系に関連している。そのような実施形態は、いくつかの電解質添加剤を含んでおり、それらの添加剤は電解質の酸化安定性、並びに、それらの添加剤を含む電気化学セルのサイクル寿命及びクーロン効率を改善する。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態における高電圧電解質は、式;
ベース電解質 + 添加剤化合物(複数可) → 高電圧電解質 (1)
を参照して形成されてよい。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態における高温電解質は、式;
ベース電解質 + 添加剤化合物(複数可) → 高温電解質 (2)
を参照して形成されてよい。
【0035】
式(1)及び(2)において、ベース電解質は、Liイオン電池の場合の一連のLi含有塩のように、一連の溶媒及び一連の塩を含んでもよい。Liイオン電池に用いる非水電解質溶媒を含む好適な溶媒の例としては、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、メチルプロピルカーボネート、及びジエチルカーボネート等のカーボネート、スルホン、シラン、ニトリル、エステル、エーテル、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0036】
式(1)及び(2)において、特定の化合物の量は、電解液の総質量に対する、前記化合物の質量パーセントで表すことができる(又はwt.%)。例えば、化合物の量は、約0.05wt.%〜約30wt.%、約0.01wt.%〜約20wt.%、約0.2wt.%〜約15wt.%、約0.2wt.%〜約10wt.%、約0.2wt.%〜約5wt.%、又は、約0.2wt.%〜約1wt.%といった、約0.01wt.%〜約30wt.%の範囲でよく、さらに複数の化合物の組み合わせの場合には、化合物の合計量が、約0.05wt.%〜約30wt.%、約0.01wt.%〜約20wt.%、約0.2wt.%〜約15wt.%、約0.2wt.%〜約10wt.%、約0.2wt.%〜約5wt.%、又は、約0.2wt.%〜約1wt.%といった、約0.01wt.%〜約30wt.%の範囲でよい。化合物の量は、一方又は両方の電極材料の単位面積当たりの、化合物のモル数の割合で表すこともできる。例えば、化合物の量は、約10
−7mol/m
2〜約10
−5mol/m
2、約10
−5mol/m
2〜約10
−3mol/m
2、約10
−6mol/m
2〜約10
−4mol/m
2、又は約10
−4mol/m
2〜約10
−2mol/m
2といった、約10
−7mol/m
2〜約10
−2mol/m
2の範囲でよい。以下にさらに説明するように、化合物は初期の電池サイクル中に、消費、反応、分解、又は他の改質が行われてもよい。このように、化合物の量は、式(1)又は(2)に従って電解液を形成する際に用いる化合物の初期量、もしくは、電池サイクル前(もしくは有意な量の電池サイクル前)の電解液に含まれる添加剤の初期量ということができる。
【0037】
得られる電池の性能特性は、式(1)又は(2)に従って形成された高電圧電解質に用いる特定の化合物の特性、用いる化合物の量、及び、複数の化合物の組み合わせの場合は組み合わせ中の各化合物の相対量によって決めることができる。したがって、得られる性能特性は、化合物の適切な選択、及び式(1)又は(2)における化合物量の調整によって、微調整又は最適化することができる。
【0038】
式(1)又は(2)に従った形成は、ベース電解質と添加剤の混合、ベース電解質中での添加剤の分散、ベース電解質中での添加剤の溶解、又は、これらの構成要素を互いに結合して行う方法などの、さまざまな技術を用いることで行うことができる。添加剤は、液体、粉体(又は他の固体)、又はそれらの組み合わせで提供されてよい。添加剤は、電池組み立ての前、間、又は後に、式(1)又は(2)の電解液に含有させてよい。
【0039】
本明細書に記載の電解液は、高電圧正極又は定電圧正極を含む様々な電池、及び、高温で動作する電池に用いることができる。例えば、電解液は、4.3V以上で動作するLiイオン電池に用いる従来の電解質の代わり、あるいは、それらと組み合わせて用いることができる。特に、これらの添加剤は、LCO又はNMC正極材料を含むLiイオン電池に対して有用である。
【0040】
電解液を含む電池は、商業的販売又は商業的使用の前に、サイクルすることで調整してよい。そのような調整は、例えば、電池を提供し、そのような電池に少なくとも1サイクル、2サイクル、3サイクル、4サイクル、又は5サイクルのサイクルを行うことを含んでよく、各サイクルは0.05C(例えば8.75mA/gの電流)のレートで、グラファイト負極などの参照対向電極に対して4.45Vと3.0V(又は別の電圧範囲)の間で充放電することを含んでよい。充放電は、0.1C(例えば17.5mA/gの電流)、0.5C(例えば87.5mA/gの電流)、又は1C(例えば175mA/gの電流)などの、より高レート又はより低レートで行ってもよい。典型的には、電池は、0.05Cのレートで4.45Vまで充電し、続いて電流が0.02Cになるまで定電圧を印加し、その後0.05Cのレートで3Vまで放電するという1サイクルで調整される。
【0041】
本明細書の実施形態におけるポリマー系添加剤は、当技術分野で従来知られているように、多数の繰り返されたモノマー単位から成る分子である。そのようなポリマー系添加剤は、ポリマー鎖に結合した種々の官能基を含んでもよい。特定の特性は、電池に用いるポリマー系添加剤に好適である。例えば、添加剤は好ましくは、
(1)電解質溶媒に可溶であり(すなわち、溶媒に対して十分に極性であり、十分に低分子量である。);
(2)セル条件での酸化及び/又は還元に対する化学的耐性を有するか、若しくは、酸化及び/又は還元に対する化学的耐性を有さない場合は、添加剤は負極、正極、又は両方の電極上に安定なSEI膜を形成する中間体又は生成物に分解されるか、のいずれかであり;並びに
(3)室温で電解液に可溶であるように、及び、添加剤がない場合よりも電解液の粘度が悪化しないように、十分に低分子量である。
【0042】
ポリ(9‐ビニルカルバゾール)、ポリ(メチルビニルエーテル‐alt‐マレイックアンハイドライド)、ポリ(オキシ‐1,4‐フェニレンスルホニル‐1,4‐フェニレン)、ポリ(1‐ヘキサデセン‐スルホン)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキサイド)、ポリ(ビス(4‐(エトキシカルボニル)フェノキシ)ホスファゼン)、及びそれらの組み合わせを含む特定のポリマー系添加剤は、上記の特性を示す。
【0043】
これらのポリマー系添加剤は、従来の電解質に可溶であり、安定なSEI形成に寄与する官能基を有する。これらのポリマー系添加剤は、分子又は短鎖オリゴマーと比較して、より機械的及び化学的に安定なSEI膜を形成することができる。これらのポリマー系添加剤は、フルセル構成において、サイクル寿命を大いに向上させる。重要なことには、これらのポリマー系添加剤はそれらのモノマー類似体と比較したときに優れた性能を示し、このことは、官能基をポリマー骨格に組み込むことが性能向上に関与していることを示唆している。すなわち、非ポリマー構造における官能基だけでは、それらのポリマー同等物を用いて達成される性能の水準を実現しない。
【0044】
いくつかの試験は、以下に記載の方法に従って構成されたフルセルに対して行った。電池セルは、30℃において、3Vから4.45V、又はいくつかの場合では約4.65Vまでの間でサイクルを行った。容量、クーロン効率、放電レート性能、及びサイクル寿命を評価した。これらの試験から、以下の性能改善が見られた。
【0046】
図3は、活性炭負極を用いたNMCフルセルにおける、比容量対サイクルの特性を示す。対照物は、市販のカーボネート電解質である(白丸)。3つの添加剤は全て、市販の電解質に比べて優れた性能を示す。市販電解質に添加された0.5wt%ポリ(1‐ヘキサデセン‐スルホン)(黒三角)、市販電解質に添加された0.5wt%ポリ(9‐ビニルカルバゾール)(十字)、及び/又は市販電解質に添加された2wt%ポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキサイド)(白三角)は全て、対照物よりも高サイクル数でより高容量を示した。
【0047】
図4は、活性炭負極を用いたNMCフルセルにおける、容量維持率対サイクルの特性を示す。対照物は、市販のカーボネート電解質である(白丸)。3つの添加剤は全て、市販の電解質に比べて優れた性能を示す。市販電解質に添加された0.5wt%ポリ(1‐ヘキサデセン‐スルホン)(黒三角)、市販電解質に添加された0.5wt%ポリ(9‐ビニルカルバゾール)(十字)、及び/又は市販電解質に添加された2wt%ポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキサイド)(白三角)は全て、対照物よりも高サイクル数でより高容量を示した。
【0048】
図5は、活性炭負極を用いたNMCフルセルにおける、比容量対サイクルの特性を示す。対照物は、市販のカーボネート電解質である(白丸)。市販電解質に添加されたポリ(メチルビニルエーテル‐alt‐マレイックアンハイドライド)は、0.5wt%添加された場合(黒四角)及び2wt%添加された場合(黒十字)の両方で、市販電解質に比べて優れた性能を示す。
【0049】
図6は、活性炭負極を用いたNMCフルセルにおける、容量維持率対サイクルの特性を示す。対照物は、市販のカーボネート電解質である(白丸)。市販電解質に添加されたポリ(メチルビニルエーテル‐alt‐マレイックアンハイドライド)は、0.5wt%添加された場合(黒四角)及び2wt%添加された場合(黒十字)の両方で、市販電解質に比べて優れた性能を示す。
【0050】
図7は、活性炭負極を用いたNMCフルセルにおける、比容量対サイクルの特性を示す。対照物は、市販のカーボネート電解質である(白丸)。市販電解質に添加されたポリ(オキシ‐1,4‐フェニレンスルホニル‐1,4‐フェニレン)は、0.5wt%添加された場合(白四角)及び2wt%添加された場合(黒星)の両方で、市販電解質に比べて優れた性能を示す。
【0051】
図8は、活性炭負極を用いたNMCフルセルにおける、容量維持率対サイクルの特性を示す。対照物は、市販のカーボネート電解質である(白丸)。市販電解質に添加されたポリ(オキシ‐1,4‐フェニレンスルホニル‐1,4‐フェニレン)は、0.5wt%添加された場合(白四角)及び2wt%添加された場合(黒星)の両方で、市販電解質に比べて優れた性能を示す。
【0052】
示された性能改善はポリマー骨格にかかわらず特定の官能基によるのか、又は、改善は添加剤のポリマー系構造によるのかを試験するために、ポリ(9‐ビニルカルバゾール)及びポリ(オキシ‐1,4‐フェニレンスルホニル‐1,4‐フェニレン)を、それらのモノマー類似体である9‐エチルカルバゾール、9‐ビニルカルバゾール及び4‐メトキシフェニルフェニルスルホンに対して試験した。
【0053】
図9は、活性炭負極を用いたNMCフルセルにおける、比容量対サイクルの特性を示す。市販電解質に添加されたポリマー添加剤0.5wt%ポリ(9‐ビニルカルバゾール)(黒丸)は、市販電解質に添加された0.5wt%9‐ビニルカルバゾール(十字)に対して優れたサイクル寿命を示した。9‐ビニルカルバゾールは、ポリ(9‐ビニルカルバゾール)のモノマー前駆体である。市販電解質に添加されたポリマー添加剤0.5wt%ポリ(9‐ビニルカルバゾール)(黒丸)は、市販電解質に添加された0.5wt%9‐エチルカルバゾール(白三角)に対しても優れたサイクル寿命を示した。しかしながら、2つの添加剤は同じ官能基9‐エチルカルバゾールを共有している。
【0054】
図10は、活性炭負極を用いたNMCフルセルにおける、容量維持率対サイクルの特性を示す。市販電解質に添加されたポリマー添加剤0.5wt%ポリ(9‐ビニルカルバゾール)(黒丸)は、市販電解質に添加された0.5wt%9‐ビニルカルバゾール(十字)に対して優れたサイクル寿命を示した。市販電解質に添加されたポリマー添加剤0.5wt%ポリ(9‐ビニルカルバゾール)(黒丸)は、市販電解質に添加された0.5wt%9‐エチルカルバゾール(白三角)に対しても優れたサイクル寿命を示した。
【0055】
これらの結果は、これら添加剤におけるポリマー骨格の存在が、サイクル性能改善にとって重要であることを示している。とりわけ、9‐ビニルカルバゾールが電気化学条件化で重合反応しポリカルバゾールを形成することが、理論立てられた。この結果は、ポリマー添加剤の既存のポリマー鎖が、場合により、より頑丈で均一なSEIを形成することで、サイクル寿命をさらに改善できることを示している。したがって、本発明者らは、ポリマー前駆体は、既存のポリマーのようには性能を改善しないことを実証した。
【0056】
図11は、活性炭負極を用いたNMCフルセルにおける、比容量対サイクルの特性を示す。市販電解質に添加されたポリマー添加剤0.5wt%ポリ(オキシ‐1,4‐フェニレンスルホニル‐1,4‐フェニレン)(黒丸)は、市販電解質に添加された0.5wt%4‐メトキシフェニルフェニルスルホン(白三角)に対して優れたサイクル寿命を示した。4‐メトキシフェニルフェニルスルホンは、ポリ(オキシ‐1,4‐フェニレンスルホニル‐1,4‐フェニレン)のモノマー前駆体である。
【0057】
図12は、活性炭負極を用いたNMCフルセルにおける、容量維持率対サイクルの特性を示す。市販電解質に添加されたポリマー添加剤0.5wt%ポリ(オキシ‐1,4‐フェニレンスルホニル‐1,4‐フェニレン)(黒丸)は、市販電解質に添加された0.5wt%4‐メトキシフェニルフェニルスルホン(白三角)に対して優れたサイクル寿命を示した。
【0058】
高エネルギー正極材料の課題に取り組む上で、本明細書に記載された実施形態における添加剤は、
(1)ポリマー添加剤が分解前に電極表面に強く吸着し、得られるSEIの品質と安定性を潜在的に向上させることができる大きな表面積;
(2)従来の溶媒と添加剤により形成される有機オリゴマー及び短鎖ポリマーと比較したときの、予備形成されたポリマー骨格による、機械的及び化学的安定性;
(3)官能基がポリマー骨格に沿って分配されることによる、SEI膜全体への官能基の均一な分散;
といった、多くの利点を有している。
【0059】
さらに、本明細書に記載された実施形態のおける添加剤は、それらに関連するモノマー又は関連する小分子と比較して、より少ないモル濃度でも優れた性能を示す。本明細書の比較実験では、ポリマー及びモノマーを同じ質量パーセントで比較しているが、モノマーは100%官能基であったのに対し、いくつかのポリマー添加剤はポリマー骨格を有しても官能基は持たないものもあった。したがって、ポリマー系添加剤において、官能基がより少ないことで、より優れた性能を発揮した。
【0060】
いくつかの実施形態では、添加剤は、カルバゾール、アンハイドライド、スルホン、フッ化エーテル、ホスファゼン、エステル、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる少なくとも1つの官能基を有するポリマーである。
【0061】
以下の実施例は、当業者に例示及び説明をするために、発明のいくつかの実施形態の特定の態様を記載している。実施例は、ただ単に発明のいくつかの実施形態を理解し実施するのに有用な具体的方法を提供するのであって、発明を限定するものと解釈されてはならない。
【実施例】
【0062】
電池セルは、高純度アルゴンを充填したグローブボックス(M‐Braun社、O
2及び水分の含有量<0.1ppm)内で形成した。電極は以下の方法により調整した。
(1)正極については、市販のLiNi
0.33Mn
0.33Co
0.33O
2正極材料を、ポリ(ビニリデンフルオリド)(Sigma Aldrich)と、カーボンブラック(Super P Li、TIMCAL)と、溶媒として1‐メチル‐2‐ピロリジノン(Sigma Aldrich)と、共に混合した。得られたスラリーをアルミニウム集電体上に塗布し、乾燥させて複合正極膜を形成した。
(2)負極については、グラファイトカーボン(G5)を、ポリ((ビニリデンフルオリド)(Sigma Aldrich)と、カーボンブラック(Super P Li、TIMCAL)と、溶媒として1‐メチル‐2‐ピロリジノン(Sigma Aldrich)と、共に混合した。得られたスラリーを銅集電体上に塗布し、乾燥させて複合負極膜を形成した。
各電池セルは、複合正極膜、ポリプロピレンセパレータ、及び複合負極膜を含む。従来の電解質を所定の電解質添加剤と混合し、電池セルに注入した。電池セルをシールし、30℃において、3.0Vから4.45Vもしくは4.65Vの間でサイクルした。
【0063】
本発明を、その特定の実施形態に関して記載したが、当業者にとって、添付の特許請求の範囲によって特定される本発明の真の精神と範囲を逸脱しなければ、様々な変更及び均等物での置換を行い得ると理解されたい。さらに、特定の状況、材料、組成物、方法、又はプロセスが、本発明の目的、精神、及び範囲に適応するように、多くの変更を行ってよい。そのような変更の全ては、本明細書に添付の特許請求の範囲の範囲内であるよう意図されている。特に、本明細書に開示された方法は、特定の順序で行われた特定の操作に関して記載されたが、本発明の教示を逸脱しなければ、均等な方法を形成するために、これらの操作を、組み合わせても、細分化しても、又は並べ替えてもよいと理解されたい。したがって、本明細書に特段に示されない限り、操作の順序及び分類は、本発明を制限するものではない。本発明の実施態様の一部を以下の項目[1]−[18]に記載する。
[1]
負極、正極、並びに、リチウム塩、非水溶媒、及びポリマー添加剤を含む電解質から成る電池であって、
前記ポリマー添加剤は、カルバゾール、スルホン、フッ素化エーテル、ホスファゼン、マレイックアンハイドライド、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる官能基を少なくとも一つ有する、前記電池。
[2]
前記添加剤の化合物は、電解質総質量に対して約10%以下の濃度で存在する、項目1に記載の電池。
[3]
前記添加剤の化合物は、電解質総質量に対して約0.5%以下の濃度で存在する、項目1に記載の電池。
[4]
定格充電電圧が約4.2Vよりも高い、項目1〜3のいずれか1項に記載の電池。
[5]
定格充電電圧が約4.5Vよりも高い、項目1〜3のいずれか1項に記載の電池。
[6]
定格充電電圧が約4.7Vよりも高い、項目1〜3のいずれか1項に記載の電池。
[7]
定格充電電圧が約4.9Vよりも高い、項目1〜3のいずれか1項に記載の電池。
[8]
前記正極は、ニッケル、マンガン、及びコバルトを含む、項目1〜3のいずれか1項に記載の電池。
[9]
前記負極は、活性炭を含む、項目1〜3のいずれか1項に記載の電池。
[10]
前記添加剤の化合物は、ポリ(9‐ビニルカルバゾール)、ポリ(メチルビニルエーテル‐alt‐マレイックアンハイドライド)、ポリ(オキシ‐1,4‐フェニレンスルホニル‐1,4‐フェニレン)、ポリ(1‐ヘキサデセン‐スルホン)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキサイド)、ポリ(ビス(4‐(エトキシカルボニル)フェノキシ)ホスファゼン)、及びこれらの組み合わせから成る群から選ばれる、項目1〜3のいずれか1項に記載の電池。
[11]
高電圧電池を製造する方法であって、
リチウム塩、非水溶媒、並びに、カルバゾール、スルホン、フッ素化エーテル、ホスファゼン、マレイックアンハイドライド、及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる官能基を少なくとも一つ有するポリマー添加剤、を含む電解液を供給する工程、
負極を供給する工程、
正極を供給する工程、
前記負極と前記正極、所望によりセパレータを電気化学セル内に組み立てる工程、
前記セルに前記電解液を加える工程、及び
前記セルをシールし、前記高電圧電池を形成する工程を有する、前記高電圧電池を製造する方法。
[12]
前記電池の定格充電電圧が約4.2Vよりも高い、項目11に記載の方法。
[13]
前記電池の定格充電電圧が約4.5Vよりも高い、項目11に記載の方法。
[14]
前記電池の定格充電電圧が約4.7Vよりも高い、項目11に記載の方法。
[15]
前記電池の定格充電電圧が約4.9Vよりも高い、項目11に記載の方法。
[16]
前記正極は、ニッケル、マンガン、及びコバルトを含む、項目11〜15のいずれか1項に記載の方法。
[17]
前記負極は、活性炭を含む、項目11〜15のいずれか1項に記載の方法。
[18]
前記添加剤の化合物は、ポリ(9‐ビニルカルバゾール)、 ポリ(メチルビニルエーテル‐alt‐マレイックアンハイドライド)、ポリ(オキシ‐1,4‐フェニレンスルホニル‐1,4‐フェニレン)、ポリ(1‐ヘキサデセン‐スルホン)、ポリ(ヘキサフルオロプロピレンオキサイド)、ポリ(ビス(4‐(エトキシカルボニル)フェノキシ)ホスファゼン)、及びこれらの組み合わせから成る群から選ばれる、項目11〜15のいずれか1項に記載の方法。