特許第6367415号(P6367415)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジャパンディスプレイの特許一覧

<>
  • 特許6367415-液晶表示装置 図000002
  • 特許6367415-液晶表示装置 図000003
  • 特許6367415-液晶表示装置 図000004
  • 特許6367415-液晶表示装置 図000005
  • 特許6367415-液晶表示装置 図000006
  • 特許6367415-液晶表示装置 図000007
  • 特許6367415-液晶表示装置 図000008
  • 特許6367415-液晶表示装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367415
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】液晶表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1339 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   G02F1/1339 505
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-81842(P2017-81842)
(22)【出願日】2017年4月18日
(62)【分割の表示】特願2012-220114(P2012-220114)の分割
【原出願日】2012年10月2日
(65)【公開番号】特開2017-122946(P2017-122946A)
(43)【公開日】2017年7月13日
【審査請求日】2017年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】池田 大輔
【審査官】 廣田 かおり
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−139953(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/110995(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0112387(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
G02F 1/1345
G02F 1/1368
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域と、前記表示領域の外側の周辺領域とを有し、有機膜が形成されたTFT基板と、
対向基板と、
前記TFT基板と前記対向基板との間に設けられたシールと、
前記周辺領域に前記シールと重なるように形成された周辺回路と、
を有する液晶表示装置であって、
前記有機膜は、前記TFT基板の前記表示領域と前記周辺領域とに形成され、前記シールが設けられた領域では、前記シールと前記TFT基板との間にも形成されており、
前記TFT基板と前記シールとの間において、前記有機膜には、前記表示領域を囲んで溝状の有機膜除去部が設けられており、
前記有機膜は、前記溝状の有機膜除去部を挟んで、表示領域側の有機膜と周辺領域側の有機膜とを有し、
前記TFT基板にはコーナー部を挟んで2つの辺部が形成され、
前記TFT基板のコーナー部における前記有機膜除去部の幅は、前記TFT基板の辺部における有機膜除去部の幅よりも大きく、
前記TFT基板のコーナー部近傍の前記辺部では、前記周辺回路の端部と前記シールとが重なっており、
前記周辺回路の端部から前記コーナー部に向けて前記有機膜除去部の幅が広がっており、
前記コーナー部の前記周辺領域側の有機膜は、一方の前記辺部から他方の前記辺部まで連続して形成されていることを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記有機膜除去部と前記周辺回路とは重なっていることを特徴とする、請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記シールが設けられた領域においては、前記TFT基板と前記対向基板の間隔は、前記対向基板に形成されたスペーサと、前記有機膜とによって規定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記コーナー部における前記有機膜除去部の幅は、前記辺部における前記有機膜除去部の幅の3倍以上であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記有機膜と液晶層との間には、無機絶縁膜が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記有機膜除去部は、前記シールに沿って複数列形成され、前記複数列のうち、前記表示領域に近い側の有機膜除去部は、前記コーナー部における除去部の幅が前記辺部における除去部の幅よりも大きいことを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は表示装置に係り、狭額縁でありながら、シールの信頼性を確保した液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では画素電極および薄膜トランジスタ(TFT)等を有する画素がマトリクス状に形成されたTFT基板と、TFT基板に対向して、TFT基板の画素電極と対応する場所にカラーフィルタ等が形成された対向基板が配置され、TFT基板と対向基板の間に液晶が挟持されている。そして液晶分子による光の透過率を画素毎に制御することによって画像を形成している。
【0003】
液晶表示装置はフラットで軽量であることから、色々な分野で用途が広がっている。携帯電話やDSC(Digital Still Camera)等には、小型の液晶表示装置が広く使用されている。小型の液晶表示装置では、所定の表示領域を確保しつつ、外形を小さくしたいという要求が強い。そうすと、表示領域の端部と外形端部との距離、いわゆる額縁が小さくなる。この場合、液晶を封止するための封止部の面積が小さくなり、シール部の信頼性の確保が問題となる。
【0004】
一方、液晶表示パネルを1個づつ製造したのでは、効率が悪いので、マザー基板に多数の液晶表示パネルを形成し、マザー基板から個々の液晶表示パネルをスクライビング等によって分離する製造方法が採られている。また、液晶の封入方法として、従来は、封入孔から液晶を注入する方法が採られていたが、この方法は、液晶の注入に時間がかかる。そこで、TFT基板あるいは対向基板にシール材を形成し、シール材の内側に液晶の量を正確に制御して、液晶表示パネルの内部に液晶を封入する、いわゆる滴下方式(ODF(One Drop Fill)が採用されている。
【0005】
滴下方式では、シール材は閉ループとして形成される。シール材はディスペンサ等によって塗布されるが、この場合、シール材の塗布の始点と終点において、シール材が重なる部分が生ずる。シール材が重なる部分は、シール材の厚さが大きくなり、TFT基板と対向基板のギャップ不良が生じたり、シール材が表示領域にはみ出したりする恐れが生ずる。
【0006】
このようなシール材の重なり部の問題を対策するために、「特許文献1」では、シール材の塗布の始点と終点に対応する部分において、対向基板に形成されたオーバーコート膜に切り欠きを設けることによって、この部分に余分なシール材を吸収させる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−145897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
「特許文献1」の方法は、1つの液晶表示パネル内で、塗布したシール材が閉ループを形成し、シール材の重なり部が液晶表示パネルの辺部に存在する場合の構成が記載されている。「特許文献1」の構成は、シール材の重なり部分に対応する部分にのみ、対向基板のオーバーコート膜に対して切り欠きが形成されている。
【0009】
「特許文献1」では、対向基板のコーナー部にシール材の重なり部分が形成された場合の効果については、不明である。特に、本願の図5に示すように、複数のTFT基板が形成されたマザーTFT基板において、シール材を複数のTFT基板に塗布する場合に、シール材の交差部が液晶表示パネルにおいて2箇所生ずるが、このような構成に対して「特許文献1」に記載の構成が適用可能か否か不明である。また、「特許文献1」の構成においては、オーバーコート膜の周辺を一部切り欠く必要がある。オーバーコート膜は一般には、コーティングし、硬化するだけで形成することが出来るが、「特許文献1」の構成では、オーバーコート膜に対してフォトリソグラフィを行って切り欠きを形成する必要があり、コスト上昇の要因となる。
【0010】
図5は、本発明が適用されるマザーTFT基板内におけるTFT基板100に対するシール材10の塗布形状の例である。図5において、点線は、液晶表示パネルが完成した時点における対向基板が配置する部分の境界部である。点線より下側は、TFT基板が1枚となる部分であり、端子部150となっている。シール材10は、TFT基板と対向基板が重なる部分の周辺部に形成される。
【0011】
図5のシール材の形状は、マザーTFT基板内の複数のTFT基板に対して、連続してディスペンサ等によってシール材10を塗布することが可能な形状となっている。例えば、右方向からTFT基板の切断線50に沿ってU字型にシール材を塗布し、次に、左方向から逆U字型にシール材10を塗布する。図5におけるC部において、2本のシール材10が重なって形成されている。このような塗布方法によって、多数のTFT基板が形成されたマザーTFT基板、あるいは、多数の対向基板が形成されたマザー対向基板に対して効率的にシール材を塗布することが出来る。
【0012】
この場合、対向基板とTFT基板の重なり部において、シール材10の幅が大きくなる。なお、図5において、長辺部では、切断線50の両側に2本のシール材10が形成されているが、シール材10を塗布後、TFT基板と対向基板を貼り合わせて所定の間隔になるように、シール材10をつぶすとシール材10は広がって、切断線50の上にもシール材10が形成されるようになる。
【0013】
シール材10が塗布された内側に表示領域30が形成されている。表示領域30の端部から、TFT基板の切断線50までの距離、いわゆる額縁の幅は、例えば、長辺において、D1=0.8mm、端子側の短辺において、D3=2.3mm、端子側と逆側の短辺において、D2=1.0mmである。従来は、コーナー部における、シール材10の重なり部において、シール材10が表示領域30にはみ出す不良が生じていた。
【0014】
図6は、マザーTFT基板における個々のTFT基板のコーナー部の切断線50付近の平面図である。表示領域30の外側にまで、有機パッシベーション膜109が形成されている。表示領域30の外側で、有機パッシベーション膜109の下に走査線駆動回路等の周辺回路部40が形成されている。図6において、ハッチングで示した部分は、有機パッシベーション膜の除去部20である。
【0015】
有機パッシベーション膜除去部20は、表示領域30の周辺に3個の溝として形成されている。また、個々のTFT基板の切断線50を挟んで所定の幅で有機パッシベーション膜除去部20が形成されている。図6において、点線で示す部分はシール材10が形成される部分である。図6に示すように、2本のシール材10は、TFT基板のコーナー部において、重なっている。
【0016】
図7は、図6のB−B断面図である。図7は簡略化された断面図であるが、詳細断面図は図1において詳細に説明する。図7において、TFT基板100の上に有機パッシベーション膜109が形成されている。有機パッシベーション膜109の下側の層は省略されている。有機パッシベーション109には、有機パッシベーション膜除去部20が形成され、この部分は溝部となっている。TFT基板の端部は、有機パッシベーション膜除去部20となっている。有機パッシベーション膜20を覆って、SiN等で形成される無機絶縁膜111が形成されている。
【0017】
TFT基板100と対向基板200はシール材10によって接着し、シール材10の内側には液晶300が封入されている。図7は、TFT基板100と対向基板200を重ねて所定のギャップを形成することによって、シール材10はつぶされた状態となっている。シール材10がつぶれたときに、シール材10の幅が規定以上に大きくなると、シール材10が表示領域にはみ出す不良が生ずる。
【0018】
TFT基板100および対向基板200において、液晶300と接する面には、図示しない配向膜が形成される。配向膜がシール材10と無機絶縁膜111との間に存在すると、シール材10の接着力が低下する。そこで、図7において、溝状に有機パッシベーション膜除去部20を形成し、この部分において、配向膜が外側に流れ出すことを防止するための堰が形成されている。図7におけるA部は、この堰が3個形成されていることを示している。
【0019】
図7において、B部には、配向膜も有機パッシベーション膜109も形成されていないので、シール材10とTFT基板100との接着力は大きく、この部分でシールの信頼性を確保することが出来る。図6および図7に示すように、溝状の有機パッシベーション膜除去部20の幅は辺部とコーナー部とで同じ幅である。図6、7における有機パッシベーション膜除去部20の主目的は配向膜に対する堰だからである。
【0020】
図8は、液晶表示パネルのコーナー部において、図5のCのように、シール材10が重なった部分において、シール材10の幅が広がり、シール材10が表示領域30にまで、はみ出している状態を示す平面図である。図8において、シール材10の一部が表示領域30にはみ出したシール材10はみだし部31が存在している。このような液晶表示パネルは不良となる。
【0021】
本発明の課題は、狭額縁の液晶表示パネルにおいて、シールの信頼性を確保しつつ、シール材が表示領域にはみ出すことを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は上記問題を克服するものであり、具体的な手段は次のとおりである。すなわち、表示領域を有し、有機パッシベーション膜が形成されたTFT基板と、シール部におけるシール材を介して対向基板が配置され、前記TFT基板と前記対向基板との間に液晶が挟持された液晶表示装置であって、前記TFT基板の前記表示領域の外側にまで、前記有機パッシベーション膜が形成され、前記有機パッシベーション膜は、前記シール部においては、前記表示領域を囲んで溝状の有機パッシベーション膜除去部を有し、コーナー部における前記溝状の有機パッシベーション膜除去部の幅は、辺部における溝状の有機パッシベーション膜除去部の幅よりも大きく、前記TFT基板の前記シール部には、周辺回路部が形成され、前記シール部においては、前記TFT基板と前記対向基板の間隔は、前記対向基板に形成された柱状スペーサと、前記TFT基板に形成された有機パッシベーション膜の台座によって規定されていることを特徴とする液晶表示装置である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、マザーTFT基板において、個々のTFT基板に対してシール材を形成する場合、配向膜の堰の機能を合わせ持つ、溝状の有機パッシベーション膜除去部の幅をコーナー部において、辺の部分よりも広げるので、この部分において、シール材が重なって形成されても、シール材が表示領域にはみ出すことは無い。
【0024】
また、有機パッシベーション膜除去部の下層に周辺駆動回路が形成されている場合、有機パッシベーション膜除去部以外の部分の有機パッシベーション膜を台座として対向基板側に形成された柱状スペーサを用いてシール部分におけるTFT基板と対向基板の間隔を制御するので、周辺駆動回路を損傷することが無い。
【0025】
さらに、本発明では、コーナー部におけるシール材のはみ出しを防止するために、新たなフォトリソグラフィ工程を必要としないので、本発明を適用してもコスト上昇の要因とはならない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明が適用されるコモン電極トップ構造の液晶表示装置の断面図である。
図2】画素電極とコモン電極の関係を示す平面図である。
図3】本発明におけるTFT基板のコーナー部の平面図である。
図4図3のA−A断面図である。
図5】本発明が適用される液晶表示装置におけるシール材の塗布形状である。
図6】従来例におけるTFT基板のコーナー部の平面図である。
図7図6のB−B断面図である。
図8】シール材が表示領域にはみ出した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0028】
図1は本発明が適用されるコモン電極トップ構造のIPSの画素領域の断面図である。図1におけるTFTは、いわゆるトップゲートタイプのTFTであり、使用される半導体としては、LTPS(Low Temperature Poli−Si)が使用されている。コモン電極トップ構造の他に画素電極トップ構造のIPSも存在するが、本発明は、同様に適用することが出来る。
【0029】
一方、a−Si半導体を使用した場合は、いわゆるボトムゲート方式のTFTが多く用いられる。以後の説明では、トップゲート方式のTFTを用いた場合を例にして説明するが、ボトムゲート方式のTFTを用いた場合についても、本発明を適用することが出来る。ボトムゲート方式のTFTを用いた場合においても、コモン電極トップ方式あるいは画素電極トップ方式のいずれについても本発明を適用することが出来る。
【0030】
図1において、ガラス基板100の上にSiNからなる第1下地膜101およびSiOからなる第2下地膜102がCVD(Chemical Vapor Deposition)によって形成される。第1下地膜101および第2下地膜102の役割はガラス基板100からの不純物が半導体層103を汚染することを防止することである。
【0031】
第2下地膜102の上には半導体層103が形成される。この半導体層103は第2下地膜102に上にCVDによってa−Si膜を形成し、これをレーザアニールすることによってpoly−Si膜に変換したものである。このpoly−Si膜をフォトリソグラフィによってパターニングする。
【0032】
半導体膜103の上にはゲート絶縁膜104が形成される。このゲート絶縁膜104はTEOS(テトラエトキシシラン)によるSiO膜である。この膜もCVDによって形成される。その上にゲート電極105が形成される。ゲート電極105は走査信号線と同層で、同時に形成される。ゲート電極105は例えば、MoW膜によって形成される。ゲート配線105の抵抗を小さくする必要があるときはAl合金が使用される。
【0033】
ゲート電極105はフォトリソグラフィによってパターニングされるが、このパターニングの際に、イオンインプランテーションによって、リンあるいはボロン等の不純物をpoly−Si層にドープしてpoly−Si層にソースSあるいはドレインDを形成する。また、ゲート電極105のパターニングの際のフォトレジストを利用して、poly−Si層のチャネル層と、ソースSあるいはドレインDとの間にLDD(Lightly Doped Drain)層を形成する。
【0034】
その後、ゲート電極105あるいはゲート配線を覆って第1層間絶縁膜106をSiOによって形成する。第1層間絶縁膜106はゲート配線105とソース電極107を絶縁するためである。第1層間絶縁膜106およびゲート絶縁膜104には、半導体層103のソース部Sをソース電極107と接続するためのスルーホール120が形成される。第1層間絶縁膜106とゲート絶縁膜104にスルーホール120を形成するためのフォトリソグラフィは同時に行われる。
【0035】
第1層間絶縁膜106の上にソース電極107が形成される。ソース電極107は、スルーホール130を介して画素電極112と接続する。図1においては、ソース電極107は広く形成され、TFTを覆う形となっている。一方、TFTのドレインDは、図示しない部分においてドレイン電極と接続している。
【0036】
ソース電極107、ドレイン電極および映像信号線は、同層で、同時に形成される。ソース電極107、ドレイン電極および映像信号線(以後ソース電極107で代表させる)は、抵抗を小さくするために、例えば、AlSi合金が使用される。AlSi合金はヒロックを発生したり、Alが他の層に拡散したりするので、例えば、図示しないMoWによるバリア層、およびキャップ層によってAlSiをサンドイッチする構造がとられている。
【0037】
ソース電極107を覆って無機パッシベーション膜(絶縁膜)108を被覆し、TFT全体を保護する。無機パッシベーション膜108は第1下地膜101と同様にCVDによって形成される。無機パッシベーション膜108を覆って有機パッシベーション膜109が形成される。有機パッシベーション膜109は感光性のアクリル樹脂で形成される。有機パッシベーション膜109は、アクリル樹脂の他、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等でも形成することが出来る。有機パッシベーション膜109は平坦化膜としての役割を持っているので、厚く形成される。有機パッシベーション膜109の膜厚は1〜4μmであるが、多くの場合は2μm程度である。
【0038】
画素電極110とソース電極107との導通を取るために、無機パッシベーション膜108および有機パッシベーション膜109にスルーホール130が形成される。有機パッシベーション膜109は感光性の樹脂を使用している。感光性の樹脂を塗付後、この樹脂を露光すると、光が当たった部分のみが特定の現像液に溶解する。すなわち、感光性樹脂を用いることによって、フォトレジストの形成を省略することが出来る。有機パッシベーション膜109にスルーホール130を形成したあと、230℃程度で有機パッシベーション膜を焼成することによって有機パッシベーション膜109が完成する。
【0039】
本発明では、有機パッシベーション膜は、液晶表示パネルのシール部にまで延在しており、シール部において、有機パッシベーション膜除去部を溝状に形成すすることによって、配向膜が外側に流動することを防止する堰の役割を持たせている。また、本発明では、有機パッシベーション膜除去部の溝の幅をコーナー部において、辺部よりも大きくすることによって、シール材を重ねて塗布するときに、シール材が表示領域にはみ出すことを防止している。
【0040】
有機パッシベーション膜109をレジストとしてエッチングすることにより無機パッシベーション膜108にスルーホールを形成する。こうして、ソース電極107と画素電極110を導通するためのスルーホール130が形成される。パターニングされた有機パッシベーション膜109をレジストとして無機パッシベーション膜108をエッチングするので、新たなマスクを使用する必要はなく、フォトリソグラフィ工程は1工程で済む。有機パッシベーション膜109は厚いので、スルーホール130の上側と下側では、孔の大きさが異なる。
【0041】
図1において、このようにして形成された有機パッシベーション膜109の上面は平坦となっている。有機パッシベーション膜109の上にアモルファスITO(Indium Tin Oxide)をスパッタリングによって被着し、フォトレジストによって、パターニングした後、蓚酸でエッチングし、画素電極112のパターニングを行う。画素電極112はスルーホール130をも覆って形成される。画素電極112は透明電極であるITOによって形成され、厚さは例えば、50〜70nmである。
【0042】
その後、画素電極112を覆って、第2層間絶縁膜111をCVDによって成膜する。このときのCVDの温度条件は、200℃程度であり、これは低温CVDと呼ばれる。低温CVDを用いるのは、すでに形成されている有機パッシベーション膜109の変質を防止するためである。
【0043】
フォトリソグラフィ工程によって、第2層間絶縁膜111のパターニングを行うが、このパターニングは端子部分のパターニングであり、スルーホール領域におけるパターニングは不要である。
【0044】
第2層間絶縁膜111の上にアモルファスITOをスパッタリングし、フォトリソグラフィ工程によって、櫛歯状のコモン電極110を形成する。コモン電極110の膜厚は例えば、30nm程度である。このように、コモン電極110を薄く形成するのは、コモン電極110の上に形成される配向膜113をラビングする場合に、ラビング影による配向不良を防止するためである。
【0045】
図2は、櫛歯状のコモン電極110と平面ベタで形成された画素電極112の関係を示す平面図である。図2において、コモン電極110は、図示していない第2層間絶縁膜を挟んで画素電極112の上に配置されている。櫛歯状のコモン電極110の間のスリット115を通して、図1に示すように、コモン電極110上面から画素電極112に電気力線が伸び、この電気力線によって液晶分子を回転させる。
【0046】
図1において、画素電極112もコモン電極110もスルーホール130領域に形成される。したがって、液晶分子301の配向を適正に行うことが出来れば、スルーホール130の上端部、あるいは、スルーホール130の内壁にも、光を透過する領域を形成することが出来る。したがって、画素電極トップの場合に比較して、画素領域を画像形成のために、より効率的に使用することが出来る。
【0047】
図1において、液晶層300を挟んで対向基板200が配置されている。対向基板200の内側には、カラーフィルタ201が形成されている。カラーフィルタ201は画素毎に、赤、緑、青のカラーフィルタが形成されており、カラー画像が形成される。カラーフィルタ201とカラーフィルタ201の間にはブラックマトリクス202が形成され、画像のコントラストを向上させている。なお、ブラックマトリクス202はTFTの遮光膜としての役割も有し、TFTに光電流が流れることを防止している。
【0048】
カラーフィルタ201およびブラックマトリクス202を覆ってオーバーコート膜203が形成されている。カラーフィルタ201およびブラックマトリクス202の表面は凹凸となっているために、オーバーコート膜203によって表面を平らにしている。オーバーコート膜の上には、液晶の初期配向を決めるための配向膜113が形成されている。なお、図2はIPSであるから、コモン電極はTFT基板100側に形成されており、対向基板200側には形成されていない。
【0049】
図1に示すように、IPSでは、対向基板200の内側には導電膜が形成されていない。そうすると、対向基板200の電位が不安定になる。また、外部からの電磁ノイズが液晶層300に侵入し、画像に対して影響を与える。このような問題を除去するために、対向基板200の外側に外部導電膜210が形成される。外部導電膜210は、透明導電膜であるITOをスパッタリングすることによって形成される。
【0050】
図3は、本発明におけるマザーTFT基板での個々のTFT基板のコーナー部の切断線50付近の平面図である。表示領域30の外側にまで、有機パッシベーション膜109が形成されている。表示領域30の外側で、有機パッシベーション膜109の下に走査線駆動回路等の周辺回路部40が形成されている。図3において、ハッチングで示した部分は、有機パッシベーション膜の除去部20である。
【0051】
有機パッシベーション膜除去部20は、表示領域30の周辺に2個の溝として形成されている。また、個々のTFT基板の切断線50を挟んで所定の幅で有機パッシベーション膜除去部20が形成されている。図3において、内側の有機パッシベーション膜除去部20の溝は、コーナー部において、辺部におけるよりも溝の幅が大きくなっている。図3においては、溝状の有機パッシベーション膜除去部20は、TFT基板の一部にしか表示されていないが、実際は、表示領域30全体を囲んで形成される。
【0052】
図3において、点線で示す部分はシール材10が形成される部分である。図3に示すように、2本のシール材10は、TFT基板のコーナー部において、重なっている。2本のシール材10が重なる部分は、シール材10の幅が大きくなるが、本発明においては、コーナー部の有機パッシベーション膜除去部20の溝の幅が大きくなっているので、シール材10の重なり部においても、シール材10が表示領域30にはみ出すことを防止することが出来る。なお本発明においても、溝状の有機パッシベーション膜除去部20は配向膜が外側に流動することを防止するための堰を兼用している。
【0053】
図4は、図3のA−Aに対応する断面図である。図4において、TFT基板100の上に有機パッシベーション膜109が形成されている。有機パッシベーション膜109の下側には、図1に示すような層が形成されているが、図4においてはこれらの層は省略されている。
【0054】
有機パッシベーション109には、有機パッシベーション膜除去部20が形成され、この部分は溝部となっている。溝状の有機パッシベーション膜除去部20は2個形成されているが、この部分は、配向膜が外側に流動することを防止する堰の役割を持っている。また、本実施例では、2個の溝のうち、内側の溝の幅をコーナー部において、大きくすることによって、この部分において、シール材10が重なって形成されても、シール材10のはみ出しが表示領域30に達しない構成としている。
【0055】
TFT基板100の端部は、有機パッシベーション膜除去部20となっている。有機パッシベーション膜109を覆って、SiN等で形成される無機絶縁膜111が形成されている。図4の点線で示すA領域は、溝状の有機パッシベーション膜除去部20が形成されている部分であり、本発明では、配向膜が外側に流動することを防止する堰の役割と、シール材10が重ねて塗布されている部分において、シール材10が表示領域30内にはみ出すことを防止する役割を兼ね備えている。
【0056】
図4の点線で示すB領域は、有機パッシベーション膜除去部20となっており、無機絶縁膜111のみが存在しているので、シール材10とTFT基板100との接着材力が強く、シール部の信頼性を向上させる役割を有している。
【0057】
図4において、対向基板200からは、シール部において、TFT基板100と対向基板200の間隔を規定するための柱状スペーサ60が形成されている。なお、対向基板200には柱状スペーサ60の下側に、ブラックマトリクス、カラーフィルタ、オーバーコート膜等が形成されているが、図4では省略されている。従来は、シール部におけるTFT基板100と対向基板200の間隔はグラスファイバあるいはビーズ等によって規定されていた。しかし、本実施例においては、シール部のTFT基板100側には周辺回路部40が形成されている。本発明のように、コーナー部において、溝状の有機パッシベーション膜除去部20を幅広く形成すると、この部分において、グラスファイバあるいはビーズ等によって、周辺回路部40が損傷を受ける可能性がある。
【0058】
本発明では、図4に示すように、シール部10におけるTFT基板100と対向基板200の間隔を、グラスファイバ、ビーズ等を使用せず、有機パッシベーション膜109を台座とした柱状スペーサ60によって規定しているので、有機パッシベーション膜109の下側に形成されている図示しない周辺回路部40は損傷を受けることが無い。
【0059】
また、本発明においては、TFT基板100において、配向膜が外側に流動することを防止するための有機パッシベーション膜除去部20の溝をシール材10の重なり部において、表示領域30にはみ出すことを防止するための凹部として兼用するので、本発明の構成を実施するために、追加の工程を加える必要は無い。従来に比して、溝状の有機パッシベーション膜除去部20を形成するためのマスクを変えるだけでよい。
【0060】
図3および図4では、溝状の有機パッシベーション膜除去部20は、2個としたが、1個あるいは3個以上であってもよい。重要な点は、塗布されたシール材10が重なる付近のコーナー部において、溝状の有機パッシベーション膜除去部20の幅を辺部に比較して広くすることである。コーナー部における有機パッシベーション膜除去部20の溝の幅は、辺部における有機パッシベーション膜除去部の溝の幅の3倍以上とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0061】
10…シール材、 20…有機パッシベーション膜除去部、 30…表示領域、 31…シール材はみ出し部、 40…周辺回路部、 50…切断線、 60…柱状スペーサ、 100…TFT基板、 101…第1下地膜、 102…第2下地膜、 103…半導体層、 104…ゲート絶縁膜、 105…ゲート電極、 106…第1層間絶縁膜、 107…ソース電極、 108…無機パッシベーション膜、 109…有機パッシベーション膜、 110…コモン電極、 111…第2層間絶縁膜、 112…画素電極、 113…配向膜、 115…スリット、 130…スルーホール、 150…端子部、 200…対向基板、 201…カラーフィルタ、 202…ブラックマトリクス、 203…オーバーコート膜、 210…外部導電膜、 300…液晶層、 301…液晶分子、 S…ソース部、 D…ドレイン部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8