特許第6367432号(P6367432)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6367432
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】逆止め弁付シーケンス弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 17/30 20060101AFI20180723BHJP
   F16K 15/18 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   F16K17/30 A
   F16K15/18 F
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-119861(P2017-119861)
(22)【出願日】2017年6月19日
【審査請求日】2017年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】392003661
【氏名又は名称】株式会社南武
(74)【代理人】
【識別番号】100089956
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 利和
(72)【発明者】
【氏名】林 貞夫
(72)【発明者】
【氏名】小松 敏
【審査官】 正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭60−149577(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/00−15/20
F16K 17/00−17/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端有底の筒体と軸中心孔が形成されている円筒状ねじとからなり、前記筒体の有底側端壁部の外側面は内周側領域が外周側領域より突出して形成されていると共に軸中心孔が形成されており、前記筒体の開口側端部の全面又は一部の半径区間領域が円錐面状弁部として形成されていると共にその開口側端部の筒内には前記円筒状ねじが螺着されており、且つ前記筒体の外周の一部分又は複数部分が母線に沿って平面状に切除されているか、又は軸方向に沿った溝として形成されている第1ポペット、前記第1ポペットの筒内に内嵌して摺動する一端有底の筒体であって、その端壁部の外側面は円錐面状弁部をなすと共に、その円錐面状弁部が前記第1ポペットの前記有底側端壁部の軸中心孔を弁座として当接した状態で、その当接部より外周側の表面位置から筒体の内部へ通じる貫通孔が一又は複数形成されている第2ポペット、及び前記第1ポペットの前記円筒状ねじの内側面と前記第2ポペットとの間に介装され、前記第2ポペットの円錐面状弁部を前記第1ポペットの前記有底側端壁部の軸中心孔へ所定圧力で付勢する第1コイルばねとからなる複合弁体と、
作動流体の流路の途中に形成され、前記複合弁体が内嵌して摺動する円柱状中空部であり、一方の内壁には、前記第1ポペットの前記有底側端壁部の内周側領域と外周側領域との各対向領域にそれぞれ一方の流路に連通する孔が形成されており、他方の内壁には、前記第1ポペットの前記開口側端部の円錐面状弁部に対する弁座が形成されていると共に、その弁座の内周側が他方の流路に連通している弁体作動室と、
前記弁体作動室の前記一方の内壁と前記複合弁体の間に介装され、前記第1コイルばねによる前記第2ポペットに対する付勢力よりも十分に小さい力で前記複合弁体を前記他方の内壁側へ付勢する第2コイルばねと
を有することを特徴とする逆止め弁付シーケンス弁。
【請求項2】
前記第2ポペットの筒体内は前記第1コイルばねの一端側区間を内嵌させる受座になっており、前第1ポペットの前記円筒状ねじには前記第1コイルばねの他端側区間を内嵌させる受座が形成されている請求項1に記載の逆止め弁付シーケンス弁。
【請求項3】
前記弁体作動室の前記一方の内壁が、外周面にシール部材を装着した円柱状のブッシュを前記弁体作動室の端部に嵌設して構成され、前記ブッシュには、前記第2コイルばねの一部を内嵌させる受座を設けた軸中心孔が穿設されていると共に、前記第1ポペットの前記有底側端壁部の外周側領域との対向部分に周方向に均等な間隔で複数の外周孔が穿設されており、前記ブッシュの背面側に形成した凹部を介して前記軸中心孔と前記複数の外周孔とが前記一方の流路に連通せしめられている請求項1又は請求項2に記載の逆止め弁付シーケンス弁。
【請求項4】
前記第2ポペットの端壁部の軸中心位置に、前記貫通孔の内径よりも十分に小さい内径の通圧孔を設けた請求項1、請求項2又は請求項3に記載の逆止め弁付シーケンス弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の流体圧アクチュエータに対して順次動作を実行させる場合などに適用される逆止め弁付シーケンス弁に係り、その小型・省スペース化によって流体圧アクチュエータ本体への組み込みを可能にするなど、流体圧回路への適用を容易にするための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
逆止め弁付シーケンス弁は複数の油圧アクチュエータを順次作動させる場合などに用いられており、一般的には、図9(A)に示すような基本構造を有している。
同図において、100は本体筐体、101,102は給排ポート、103はドレイン、104はシリンダ、105はスプール、106はコイルばね、107はポペット、108はコイルばね、109は圧力調整ねじである。
【0003】
給排ポート101を一次側として、その作動油が所定圧力まで上昇せしめられると、図9(B)のように、スプール105のピストン部分の受圧によってコイルばね106が圧縮され、スプール105がシリンダ104に沿って移動することにより、スプール105のピストン部分で閉鎖されていた孔110が開放されるため、所定圧力の作動油が一次側から二次側へ流れ込んで給排ポート102から排出される。なお、前記所定圧力は圧力調整ねじ109によって設定されている。
【0004】
一方、給排ポート102を一次側、給排ポート101を二次側に切り換えると、図9(C)のように、スプール105はコイルばね106の復元力で元の位置に戻って孔110が閉鎖されるが、ポペット107の受圧によってコイルばね108が圧縮される結果、ポペット107が下側へ押し込まれて孔111が開放されるため、給排ポート102からの作動油は給排ポート101から排出される。ただし、コイルばね108のばね定数はコイルばね106のそれと比較して極めて小さく設定されているため、孔111は小さい圧力で開放される。
【0005】
したがって、給排ポート101側が一次側として所定圧力以下の状態にある作動油で第1の油圧シリンダのピストンロッドをストローク端まで動作させ、その動作の完了により給排ポート101側が前記所定圧力を超えた時点で、給排ポート102側の作動油で第2の油圧シリンダを動作させるようにすることができ、複数の油圧シリンダの順次動作が実現できる。
また、ポペット107とコイルばね108による逆止め弁が組み込まれているため、給排ポート101,102に対する一次側と二次側の接続を切り換えると、第1及び第2の油圧シリンダを元の状態へ戻すことができる。
【0006】
ところで、シーケンス弁はスプールを用いた制御を行うため、必然的にスプールの作動方向に対して垂直な方向に作動油の給排流路を配置させた構成を採用するが、これは前記のような単体の油圧制御装置としてのシーケンス弁に限らず、マニホールドブロック内の油圧回路にシーケンス弁を構成するような場合においても同様である。また、逆止め弁は一般的にスプールと平行な位置関係で設けられていることが多い。
【0007】
例えば、下記特許文献1のシーケンス弁は、流体システムへ組込んで構成する方式のものであるが、作動油の給排流路はスプールの作動方向に対して垂直な方向に設けられており、また逆止め弁はスプールと平行な位置関係でスプールを内嵌させて部材中に配置構成されている。
下記特許文献2のシーケンス弁は、スプールのハンチングやチャタリング等の振動を防止抑制するための工夫を施したものであり、逆止め弁はスプールと同軸上に配置した構成になっているが、作動油の給排ポートはやはりスプールの作動方向に対して垂直な方向に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3989242号公報
【特許文献2】特開2017−44327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、従来の逆止め弁付シーケンス弁では、スプールの作動によって作動油の給排制御を行っているために、スプールの作動方向に対して垂直な方向に作動油の給排流路や給排ポートを設けており、併せて逆止め弁をスプールと平行に配置させることとすると、どうしても大きいサイズのブロック状の装置とならざるを得ない。
【0010】
そして、それは、油圧シリンダのシリンダチューブやヘッドカバーなど、油圧アクチュエータ本体に構成した油圧回路の途中に逆止め弁付シーケンス弁を設ける場合においては、回路設計を困難にする要因となり、実装密度を高める上での妨げとなる。
また、単体装置としての逆止め弁付シーケンス弁とする場合においても、小型化が求められることは言うまでもなく、作動油流路への介装が容易であることが望ましい。
【0011】
そこで、本発明は、以上のような従来の逆止め弁付シーケンス弁の問題点に鑑み、シーケンス弁と逆止め弁の機能を複合的なポペット式弁で構成することにより、作動油流路に対して同軸状に実装・適用できるようにし、逆止め弁付シーケンス弁自体の小型化や流体圧アクチュエータの部材内に構成される流体圧回路に適用する場合の省スペース化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、一端有底の筒体と軸中心孔が形成されている円筒状ねじとからなり、前記筒体の有底側端壁部の外側面は内周側領域が外周側領域より突出して形成されていると共に軸中心孔が形成されており、前記筒体の開口側端部の全面又は一部の半径区間領域が円錐面状弁部として形成されていると共にその開口側端部の筒内には前記円筒状ねじが螺着されており、且つ前記筒体の外周の一部分又は複数部分が母線に沿って平面状に切除されているか、又は軸方向に沿った溝として形成されている第1ポペット、前記第1ポペットの筒内に内嵌して摺動する一端有底の筒体であって、その端壁部の外側面は円錐面状弁部をなすと共に、その円錐面状弁部が前記第1ポペットの前記有底側端壁部の軸中心孔を弁座として当接した状態で、その当接部より外周側の表面位置から筒体の内部へ通じる貫通孔が一又は複数形成されている第2ポペット、及び前記第1ポペットの前記円筒状ねじの内側面と前記第2ポペットとの間に介装され、前記第2ポペットの円錐面状弁部を前記第1ポペットの前記有底側端壁部の軸中心孔へ所定圧力で付勢する第1コイルばねとからなる複合弁体と、作動流体の流路の途中に形成され、前記複合弁体が内嵌して摺動する円柱状中空部であり、一方の内壁には、前記第1ポペットの前記有底側端壁部の内周側領域と外周側領域との各対向領域にそれぞれ一方の流路に連通する孔が形成されており、他方の内壁には、前記第1ポペットの前記開口側端部の円錐面状弁部に対する弁座が形成されていると共に、その弁座の内周側が他方の流路に連通している弁体作動室と、前記弁体作動室の前記一方の内壁と前記複合弁体の間に介装され、前記第1コイルばねによる前記第2ポペットに対する付勢力よりも十分に小さい力で前記複合弁体を前記他方の内壁側へ付勢する第2コイルばねとを有することを特徴とする逆止め弁付シーケンス弁に係る。
【0013】
本発明の逆止め弁付シーケンス弁は、前記弁体作動室に対する前記一方の流路と前記他方の流路に差圧がないニュートラル状態では、前記複合弁体が前記第2コイルばねにより前記弁体作動室の前記他方の内壁へ付勢されており、前記第1ポペットの前記開口側端部の円錐面状弁部が前記弁体作動室の前記他方の内壁に形成されている弁座に押圧されている。また、前記第1ポペットに内嵌している前記第2ポペットの円錐面状弁部は前記第1コイルばねにより前記第1ポペットの前記有底側端壁部の弁座(軸中心孔)に押圧されている。
【0014】
したがって、前記ニュートラル状態から、前記弁体作動室に対して前記一方の流路から前記一方の内壁を通じて作動流体が供給されると、前記複合弁体と前記弁体作動室の前記一方の内壁の間の圧力が高まるが、その圧力が前記第2ポペットを前記第1コイルばねの付勢力に抗して後退させるだけの大きさ(クラッキング圧)になるまで、作動流体が前記他方の流路へ流れることはない。
【0015】
しかし、作動流体の圧力がクラッキング圧を超えると、前記第1コイルばねが圧縮されて、前記第2ポペットの円錐面状弁部が前記第1ポペットの前記有底側端壁部の弁座(軸中心孔)から離れ、作動流体は前記第2ポペットの貫通孔から円筒内へ流入し、前記開口側端部の円筒状ねじの軸中心孔を通じて前記他方の流路へ流通する。
【0016】
一方、前記とは逆に、前記弁体作動室に対して前記他方の流路から作動流体が供給されると、前記複合弁体は前記第2コイルばねの側へ押圧されるが、前記第2コイルばねは小さい力で容易に圧縮されるため、前記第1ポペットの前記開口側端部の円錐面状弁部が前記弁体作動室の前記他方の内壁の弁座から離脱し、作動流体が前記第1ポペットの外周に形成されている切除部分又は溝と前記弁体作動室の内周壁面との間を通じて前記弁体作動室の前記一方の内壁側へ流入し、その内壁に形成されている孔を通じて前記一方の流路へ流通する。
前記弁体作動室の前記一方の内壁には内周側領域と外周側領域に孔が形成されているが、前記複合弁体の外筒である前記第1ポペットにおける前記有底側端壁部の外側面は内周側領域が外周側領域より突出して形成されているため、前記複合弁体が前記弁体作動室の前記一方の内壁に当接した状態でも、前記外周側領域の孔は常に前記一方の流路に連通している。
【0017】
本発明の逆止め弁付シーケンス弁においては、前記第2ポペットの筒体内は前記第1コイルばねの一端側区間を内嵌させる受座になっており、前第1ポペットの前記円筒状ねじには前記第1コイルばねの他端側区間を内嵌させる受座が形成されていることが望ましい。
この構成によれば、前記複合弁体内で流体抵抗を高めることなく前記第1コイルばねを確実に保持でき、且つ前記円筒状ねじの螺着位置を予め調整しておくことで前記クラッキング圧を所要圧力に設定できる。
【0018】
本発明の逆止め弁付シーケンス弁においては、前記弁体作動室の前記一方の内壁を外周面にシール部材を装着した円柱状のブッシュを前記弁体作動室の端部に嵌設して構成し、前記ブッシュには、前記第2コイルばねの一部を内嵌させる受座を設けた軸中心孔が穿設されていると共に、前記第1ポペットの前記有底側端壁部の外周側領域との対向部分に周方向に均等な間隔で複数の外周孔が穿設されており、前記ブッシュの背面側に形成した凹部を介して前記軸中心孔と前記複数の外周孔とが前記一方の流路に連通せしめられていることが望ましい。
この構成によれば、前記弁体作動室における前記一方の内壁の内周側領域と外周側領域に設けられる孔と前記一方側の流路との連通を簡単に実現でき、前記第2コイルばねの確実な保持が可能になる。
【0019】
本発明の逆止め弁付シーケンス弁においては、前記第2ポペットの端壁部の軸中心位置に、前記貫通孔の内径よりも十分に小さい内径の通圧孔を設けておくことが望ましい。
前記一方側の流路の圧力が前記クラッキング圧を超えて前記第2ポペットの後退により弁が開くと、作動流体が逆止め弁付シーケンス弁を通じて前記他方の流路に接続された流体圧アクチュエータへ連続的に供給されるが、その流体圧アクチュエータにかかる負荷によって作動流体の流れが停止すると、流路のいずれの箇所でも動圧が静圧に変化して全圧は静圧だけとなり、前記第2ポペットの端壁部(円錐面状弁部)の前後における静圧の差圧が減少し、それが前記クラッキング圧より小さくなる結果、前記第2ポペットが前進して弁が閉じる。
ところで、弁が閉じる際の前記静圧の差圧は前記第1コイルばねの付勢力に対応する圧力損失に相当する大きさを有しているため、前記他方の流路の圧力は前記一方側の流路の圧力より小さく、弁が閉じた後の前記流体圧アクチュエータにおいて負荷に対抗するための作動流体の圧力が十分でないことが少なくない。
この問題について、前記通圧孔を設けておくと、前記弁が閉じた後にも前記一方側の流路の圧力が前記通圧孔を介して前記他方の流路へ静圧としてかかり続けるため、前記流体圧アクチュエータに高い静圧をかけておくことができる。
なお、前記通圧孔は作動油の流通を無視できる程の十分に小さい内径の孔であるため、前記弁の開閉条件には殆ど影響せず、前記弁の閉状態で静圧を通じさせるだけである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の逆止め弁付シーケンス弁は、第1ポペットの筒内に第1コイルばねで付勢した第2ポペットを内嵌させた複合弁体を、さらに作動流体の流路の途中に形成された弁体作動室の中に内嵌させることで、シーケンス弁と逆止め弁と作動油の流路(又は給排ポート)とを同軸状にコンパクトに構成することを可能にし、流体圧アクチュエータのシリンダチューブやヘッドカバー等の部材内に構成される流体圧回路に適用する場合の設計を容易にすると共に、省スペース化を実現する。
また、本発明の逆止め弁付シーケンス弁は、弁単体の装置とする場合においても、両端に給排ポートを設けた筒棒状形態として、より簡便な利用を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る逆止め弁付シーケンス弁の軸断面図である。
図2】弁体作動室に内蔵せしめられる各部品(複合弁体については分解した各構成部品)の分解斜視図である。
図3図1における各矢視断面図[(A)はA−A矢視断面図、(B)はB−B矢視断面図、(C)はC−C矢視断面図、(D)はD−D矢視断面図、(E)はE−E矢視断面図]、及びF部分の拡大図である。
図4】逆止め弁付シーケンス弁の適用事例に係る油圧駆動システムの油圧回路図である。
図5】逆止め弁付シーケンス弁における順次動作状態を示す軸断面図である。
図6】逆止め弁付シーケンス弁における逆方向流れ状態を示す軸断面図である。
図7】他の実施形態に係る逆止め弁付シーケンス弁の軸断面図である。
図8図7におけるG−G矢視断面図である。
図9】(A)は従来技術に係る逆止め弁付シーケンス弁の基本構造図であり、(B)及び(C)はその動作状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の逆止め弁付シーケンス弁の実施形態について、図面を用いながら詳細に説明する。
図1は本実施形態の逆止め弁付シーケンス弁の軸断面図であり、例えば、油圧シリンダのヘッドカバーをマニホールドブロックとし、そのマニホールドブロック内に形成した作動油流路の途中に逆止め弁付シーケンス弁を構成した場合に係る。
同図において、1は第1ポペット10と第2ポペット20とコイルばね30とで構成されている複合弁体であり、マニホールドブロック2a,2b内の作動油流路C1,C2の途中に円柱状中空部として形成された弁体作動室3に内嵌して摺動するようになっている。
また、弁体作動室3の前側内壁(右側)は円柱状のブッシュ4を嵌設して構成されており、ブッシュ4には弁体作動室3と作動油流路C1の間を連通させる流路が形成されていると共に、複合弁体1を後側内壁(左側)へ付勢するコイルばね5の受座も兼ねている。
【0023】
そして、図2は複合弁体1の各構成部品10,20,30とブッシュ4とコイルばね5の分解斜視図であり、図3図1における各矢視断面図[(A)〜(E)]とF部分の拡大図であるが、以下ではこれらの図も参照しながら各部品とその機能について詳述する。
【0024】
先ず、複合弁体1の構成部品である第1ポペット10は、前端有底の筒体部11と円筒状ねじ12とからなる。
ここに、筒体部11の有底側(前端側)は内周側が外周側より前方へ突出した円錐台状の端部13になっており、その端部13には軸中心孔14が穿設されていると共に、先端面にはコイルばね5の受座となる浅い座グリも形成されている。
一方、筒体部11の開口側(後端側)には、その開口部より僅かに外周側から最外周までが傾斜面として形成された円錐面状弁部15になっており[図3の(F)を参照]、且つ開口部における筒内の一定区間には円筒状ねじ12を内側に螺着させるための雌ねじが形成されている。
【0025】
また、筒体部11の外周面は完全な円周面ではなく、軸中心からみた中心角で90ーごとに母線に沿って平面状に切除されており(切除部分16)、また軸方向の中間区間での外径は油溝として他の区間よりも僅かに小さくなっている。
【0026】
円筒状ねじ12については、前記のように筒体部11の後端側に螺着するものであるが、軸中心孔17が形成されていると共に、前端側にはコイルばね30の受座18が、後端側には筒体部11へ螺着させる際に用いるスリ割り19が形成されている。
【0027】
次に、複合弁体1の構成部品である第2ポペット20は、第1ポペット10の筒体部11に内嵌して摺動する前端有底の筒体であり、その前端側の外側面は円錐面状弁部21として形成されており、第1ポペット10における筒体部11の軸中心孔14を弁座としてポペット式弁が構成されるようになっている。
また、第2ポペット20の前端部については、その円錐面状弁部21が第1ポペット10の軸中心孔14を弁座として当接した状態で、その環状当接部より外周側の表面位置から筒体内へ通じる4本の貫通孔22が周方向に均等間隔で形成されている。
さらに、第2ポペット20の前端(円錐面状弁部21の先端部)と筒体内部とを軸中心で連通させた通圧孔23が形成されており、この通圧孔23の内径は前記貫通孔22のそれよりも十分に小さい。
【0028】
そして、複合弁体1は、第1ポペット10の筒体部11に第2ポペット20を内嵌させ、さらに第2ポペット20の筒体内にコイルばね30を内嵌させた状態で、そのコイルばね30の後端側を円筒状ねじ12の受座18に内嵌・保持させて、円筒状ねじ12を筒体部11の後端部に螺着することにより組み立てられる。
したがって、第2ポペット20の円錐面状弁部21と第1ポペット10の軸中心孔14による弁座とで構成されるポペット式弁のクラッキング圧については、コイルばね30の圧縮荷重特性と円筒状ねじ12の螺着位置に基づく第2ポペット20に対する付勢力で設定される。
【0029】
一方、上記のように、マニホールドブロック2a,2b内に形成されている弁体作動室3は複合弁体1を内嵌・摺動させる円柱状中空部であるが、後端側(作動油流路C2側)の内壁面においては、複合弁体1の第1ポペット10の後端部に形成されている円錐面状弁部15に対する弁座2cが環状段差部として形成されており、その段差部から縮径する態様で作動油流路C2に接続されている。
【0030】
また、弁体作動室3の前端側の内壁面については、上記のように円柱状のブッシュ4により構成されているが、ブッシュ4はマニホールドブロック2aと2bの接合部において嵌設・固定されている。
このブッシュ4には、コイルばね5の受座41を兼ねた軸中心孔42と、複合弁体1における第1ポペット10の端部13の円錐面と対向する外周側領域に軸中心孔42と平行な関係で周方向に均等間隔で配置された4本の外周孔43とが穿設されていると共に、後端面側において軸中心孔42と各外周孔43を含む円領域には凹部44が、外周面には2本の周方向溝がそれぞれ形成されており、前記各溝にOリング45を施してマニホールドブロック2a,2bに嵌設・固定された状態では、軸中心孔42と各外周孔43は凹部44を介して作動油流路C1に接続されている。
【0031】
次に、以上の構成を有する逆止め弁付シーケンス弁の動作について説明する。
ただし、ここでは、図4に示すような油圧駆動システムにより、逆止め弁付シーケンス弁の代表的な利用形態である2本の油圧シリンダを順次動作させる場合を例に採りながら説明することとする。
なお、図4において、実施形態に係る逆止め弁付シーケンス弁60、油圧シリンダ61,62の双方又は一方、及びそれらを接続する油圧回路はマニホールドブロック内に実装構成されており、4ポート2位置切換弁63でプライマリポートPとタンクポートTの接続が切り換えられる。
【0032】
先ず、逆止め弁付シーケンス弁60が図1に示す状態にあり、4ポート2位置切換弁63が図4に示す位置にあって、作動油がプライマリポートPから作動油流路C1側へ供給される場合、もともと複合弁体1はコイルばね5によって後方へ付勢されており、ブッシュ4の凹部44から軸中心孔42と各外周孔43を通じて弁体作動室3内の圧力が上昇すると、複合弁体1の後端側の円錐面状弁部15が弁体作動室3の後端側の弁座2cへより強く密着当接せしめられる。
また、複合弁体1においては、第1ポペット10が第2ポペット20を内嵌させており、上記のように、第2ポペット20の円錐面状弁部21と第1ポペット10の軸中心孔14(弁座)で構成されたポペット式弁には所定のクラッキング圧が設定されている。
【0033】
したがって、プライマリポートPからの作動油の供給状態において、逆止め弁付シーケンス弁60の作動油流路C1側に接続されている油圧シリンダ61のA1ポートの圧力がピストンロッドにかかる負荷によって前記クラッキング圧を超えるまでは、図1に示すように、第2ポペット20の円錐面状弁部21と第1ポペット10の軸中心孔14(弁座)が密着当接した状態のままでポペット式弁は閉じており、作動油が逆止め弁付シーケンス弁60を通じて作動油流路C2側へ流れることはない。
その結果、作動油は油圧シリンダ61のA1ポートへ供給され、他方のポートB1がタンクポートTに接続されていることから、油圧シリンダ61だけが先行してピストンロッドの突き出し工程を行うことになる。
【0034】
しかし、油圧シリンダ61の前記突き出し工程においてピストンロッドにかかる負荷が大きくなり、A1ポートの圧力、すなわち逆止め弁付シーケンス弁60の作動油流路C1の圧力が増大して[弁体作動室3−コイルばね5の内側−第1ポペット10の軸中心孔14]の圧力が前記クラッキング圧を超えると、図5に示すように、第1ポペット10の中でコイルばね30が圧縮されて第2ポペット20が後退し、第2ポペット20の円錐面状弁部21と第1ポペット10の軸中心孔14(弁座)の密着当接状態が解除されてポペット式弁が開放されることになる。
【0035】
すると、図5に示すように、作動油が[作動油流路C1→ブッシュ4の凹部44→ブッシュ4の軸中心孔42・コイルばね5の内側→第1ポペット10の軸中心孔14→第1ポペット10の内部→第2ポペット20の貫通孔22→第2ポペット20の内部→コイルばね30の内側→円筒状ねじ12の軸中心孔17→作動油流路C2]の経路を流れて、作動油流路C2に接続されている油圧シリンダ62のポートA2へ作動油が供給され、ポートB2がタンクポートTに接続されていることから、油圧シリンダ62がピストンロッドの突き出し工程を開始する。
【0036】
そして、プライマリポートPからの作動油の供給により、油圧シリンダ62ではピストンロッドが負荷に抗して突き出し工程を継続して実行することになるが、油圧シリンダ61のA1ポートにおける作動油の圧力は前記クラッキング圧より大きい圧力が維持されており、油圧シリンダ61のピストンロッドの位置は負荷に抗して保持されている。
【0037】
このように、逆止め弁付シーケンス弁60により油圧シリンダ61,62が順次動作せしめられるが、油圧シリンダ62のピストンロッドの突き出し工程は予め設定されている位置で4ポート2位置切換弁63を切り換えることにより終了する。
【0038】
4ポート2位置切換弁63が切り換えられると、各油圧シリンダ61,62のピストンロッドはポートB1,B2への作動油の供給によって引き込まれて初期位置に戻ることになる。
ただし、油圧シリンダ61のポートA1はタンクポートTに直接接続されることになるが、油圧シリンダ62のポートA2は逆止め弁付シーケンス弁60を介してタンクポートTに接続されるため、逆止め弁付シーケンス弁60の逆止め弁の機能が利用される。
【0039】
すなわち、油圧シリンダ62のポートA2から作動油流路C2へ作動油が戻るが、逆止め弁付シーケンス弁60では、作動油流路C2側の圧力が大きくなる一方、作動油流路C1がタンクポートTに接続されているため、図6に示すように、複合弁体1では第2ポペット20がコイルばね30の付勢力により第1ポペット10内で前方へ戻り、円錐面状弁部21が軸中心孔14(弁座)に密着当接してポペット式弁を閉鎖すると共に、複合弁体1自体が弁体作動室3内を前方へ移動して、第1ポペット10の端部13をブッシュ4の内壁へ当接させる。
この場合、ブッシュ4と複合弁体1の間に介装されているコイルばね5が圧縮されて複合弁体1の移動に対する抗力となるが、コイルばね5の付勢力は十分に小さいものであるため、作動上ほとんど支障とならない。
【0040】
その結果、複合弁体1の後端部の円錐面状弁部15が弁体作動室3の後端側内壁の弁座2cに対する密着当接から解除されて前方へ移動するため、図6に矢印で示すように、作動油は[作動油流路C2→弁体作動室3(後方)→筒体部11の切除部分16と弁体作動室3の内周壁面との各隙間→弁体作動室3(前方)→ブッシュ4の各外周孔43→ブッシュ4の凹部44→作動油流路C1]の経路を流れてタンクポートTへ回収される。
なお、前記経路における弁体作動室3(前方)は、第1ポペット10の前方の端部13が円錐台状に形成されていることで確保されており、ブッシュ4の各外周孔43はその確保された空間部分に連通する位置に形成されている。
【0041】
ところで、第2ポペット20にはその前端(円錐面状弁部21の先端部)と筒体内部とを連通する通圧孔23が形成されており、その内径は十分に小さいものとされているが、この通圧孔23は次のような機能を有している。
【0042】
先ず、前記のように、油圧シリンダ61のピストンロッドにかかる負荷により作動油流路C1の圧力が前記クラッキング圧を超えると、第1ポペット10の中で第2ポペット20が後退して、図5に示すように、作動油が作動油流路C1から逆止め弁付シーケンス弁60を通じて作動油流路C2へ流れて油圧シリンダ62が駆動される。
このとき、第2ポペット20の前面でせき止められた作動油の動圧が静圧に変化し、第2ポペット20の筒内では管内流れとなって静圧が動圧に変化するが、各静圧の差圧がコイルばね30の付勢力に勝っていることにより、第2ポペット20が後退した位置に保たれてポペット式弁の開放状態が維持される。
【0043】
しかしながら、油圧シリンダ62のピストンロッドが所定位置の近くまで移動し、負荷が大きくなって停止すると作動油の流れがなくなり、流路の全区間で動圧が静圧に変化するが、その結果、前記差圧がコイルばね30の付勢力より小さくなるために、第2ポペット20が前進してその円錐面状弁部21と第1ポペット10の軸中心孔14(弁座)が密着当接することによりポペット式弁が閉じる。
その場合、作動油流路C2側の圧力、すなわち油圧シリンダ62のポートA2の圧力は、作動油流路C1側の圧力からコイルばね30の付勢力に対応する圧力損失分を差し引いたものとなり、ポペット式弁が閉じるとその圧力(静圧)で油圧シリンダ62のピストンロッドを固定することになるが、前記圧力損失分が差し引かれた圧力であるために十分でないことがある。
【0044】
通圧孔23はこの不具合を解消するために形成されたものであり、ポペット式弁が閉じた段階においても、通圧孔23を通じてプライマリポートP側からの圧力を油圧シリンダ62のポートA2へ静圧としてかけ続けることができ、油圧シリンダ62のピストンロッドを負荷に抗して安定的に固定できる。
そして、第2ポペット20において、通圧孔23の内径は貫通孔22と比較して十分に小さいものとされており、作動油の流通は無視できる程度であることから、第2ポペット20と第1ポペット10で構成されているポペット式弁の開閉条件には殆ど影響しない。
【0045】
以上のとおり、本実施形態の逆止め弁付シーケンス弁60によれば、マニホールドブロック2a,2b内にシーケンス弁と逆止め弁を同軸状の機構として合理的且つコンパクトに組み込むことが可能であるが、単体装置の逆止め弁付シーケンス弁としても構成できる。
具体的には、図7に示すように、マニホールドブロックの代わりに外筒筐体7と頭付きブッシュ8を用いて弁体作動室3を構成して、その弁体作動室3内に複合弁体1を内嵌させ、また外筒筐体7の後端側と頭付きブッシュ8の前端側には管接続用雌ネジ71,81を形成したものである。
なお、図7において図1で用いた符号が付されている部品や部位は図1のものと同一であり、外筒筐体7に対する頭付きブッシュ8の固定部分については図7におけるG−G矢視断面図である図8に示され、4本の六角穴付きボルト82によって抜け止め固定がなされている。
【0046】
このように、筒状の単体装置の逆止め弁付シーケンス弁として構成したことにより、油圧回路の配管途中に同軸上に介装でき、またシーケンス弁としてのクラッキング圧はコイルばね30のばね定数と円筒状ネジ12の螺着位置により自由に設定できるため、多数の油圧アクチュエータを順次作動させるシステムの油圧回路などにおいて極めて簡便に利用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の逆止め弁付シーケンス弁は、流体圧回路中で流体アクチュエータを順次動作させる場合などにおける制御用弁として適用できる。
【符号の説明】
【0048】
1・複合弁体、2a,2b・マニホールドブロック、2c・弁座、3・弁体作動室、4・ブッシュ、5・コイルばね、7・外筒筐体、8・ブッシュ、10・第1ポペット、11・筒体部、12・円筒状ねじ、13・端部、14・軸中心孔、15・円錐面状弁部、16・切除部分、17・軸中心孔、18・受座、19・スリ割り、20・第2ポペット、・・・円錐面状弁部、・・・貫通孔、・・・通圧孔、30・コイルばね、41・受座、42・軸中心孔、43・外周孔、44・凹部、45・Oリング、60・逆止め弁付シーケンス弁、61,62・油圧シリンダ、63・4ポート2位置切換弁、71,81・管接続用雌ネジ、82・六角穴付きボルト、A1・・・・・・・・・・ポート、C1・・・・作動油流路、P・プライマリポート、T・タンクポート、100・本体筐体、101,102・給排ポート、103・ドレイン、104・シリンダ、105・スプール、106・コイルばね、107・ポペット、108・コイルばね、109・圧力調整ねじ、110,111・孔。
【要約】
【課題】逆止め弁付シーケンス弁をコンパクトに構成し、油圧回路への適用を容易にし、省スペース化を実現する。
【解決手段】マニホールド2a,2bの作動油流路C1とC2の間に複合弁体1が内嵌摺動する弁体作動室3を形成する。複合弁体1は第1ポペット10に内嵌摺動する第2ポペット20をコイルばね30で前方へ付勢したポペット式弁の構造を備え、流路C1側がクラッキング圧を超えるとポペット内に流路が構成される。複合弁体1は流路C1側のブッシュ4を受座とする弱いコイルばね5で後方へ付勢されており、後端の外周部の円錐状弁部15と弁体作動室3の流路C2側の弁座2cとでポペット式弁を構成している。第1ポペット10の外周面には母線に沿って切除部分16が形成されており、流路C2側からの作動油の供給で、複合弁体1が前方へ移動し、弁体作動室3と切除部分16の隙間を通じて作動油が戻る。
【選択図】図1
図1
図2
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