特許第6367453号(P6367453)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6367453蓄電デバイス用セパレータ及びそれを用いた積層体、捲回体、リチウムイオン二次電池又は蓄電デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367453
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用セパレータ及びそれを用いた積層体、捲回体、リチウムイオン二次電池又は蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20180723BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20180723BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALN20180723BHJP
   H01M 10/0587 20100101ALN20180723BHJP
【FI】
   H01M2/16 L
   H01M2/16 P
   H01M2/16 M
   H01M10/04 W
   !H01M10/0566
   !H01M10/0587
【請求項の数】13
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2017-222073(P2017-222073)
(22)【出願日】2017年11月17日
(65)【公開番号】特開2018-101613(P2018-101613A)
(43)【公開日】2018年6月28日
【審査請求日】2017年12月21日
(31)【優先権主張番号】特願2016-246738(P2016-246738)
(32)【優先日】2016年12月20日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】奥田 敏章
【審査官】 小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−035955(JP,A)
【文献】 特表2008−503049(JP,A)
【文献】 特開2012−221741(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/137375(WO,A1)
【文献】 特開2009−238752(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/137376(WO,A1)
【文献】 特開2010−036355(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/194667(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/146403(WO,A1)
【文献】 特開2012−061791(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/190264(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/14−2/18
H01M 10/05−10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の微多孔質層、第2の微多孔質層、第1の微多孔質層の順に積層され、その積層方向に同一の厚さになるように3分割したときの外側の2枚の部分を最外部、その内側の部分を最内部としたとき、最外部のポリプロピレン濃度が最内部のポリプロピレン濃度よりも高く、かつ最外部のポリエチレン濃度が最内部のポリエチレン濃度よりも低い、ポリエチレンとポリプロピレンとを含むポリオレフィン多層微多孔質膜と、前記多孔質膜の少なくとも一の面に配置された活性層とを含み、
前記活性層が、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)及びポリフッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン(PVdF−CTFE)から選択される少なくとも一つのフッ素原子を有するビニル化合物と、無機粒子とを含有し、
前記第1の微多孔質層は、ポリエチレンとポリプロピレンを含有する第1のポリオレフィン樹脂からなり、前記第2の微多孔質層は、ポリエチレンを含有する、前記第1のポリオレフィン樹脂とは異なる第2のポリオレフィン樹脂からなり、前記活性層は前記第1の微多孔質層の少なくとも一つの層上に積層されている、
蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項2】
前記第1のポリオレフィン樹脂又は前記第2のポリオレフィン樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレンを含む、請求項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項3】
前記第1のポリオレフィン樹脂又は前記第2のポリオレフィン樹脂が、融解熱量が150J/g以下のポリプロピレンをさらに含有する、請求項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項4】
前記直鎖状低密度ポリエチレンが、ポリ(エチレン−co−1−ヘキセン)である、請求項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項5】
前記第1のポリオレフィン樹脂に含有されるポリエチレンとポリプロピレンの重量平均分子量の比(MwE(ポリエチレンの重量平均分子量)/MwP(ポリプロピレンの重量平均分子量))が0.6〜1.5である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項6】
前記第1の微多孔質層中の前記第1のポリオレフィン樹脂に含まれるポリプロピレンの含有量が1〜30質量%未満である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項7】
前記第1の微多孔質層が、前記第1のポリオレフィン樹脂に加えて、シリカ、アルミナ及びチタニアからなる群から選択される少なくとも一つ以上をさらに含有する、請求項〜6のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項8】
前記フッ素原子を有するビニル化合物と前記無機粒子との質量比が、5/95から80/20である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項9】
前記フッ素原子を有するビニル化合物の重量平均分子量が0.6×10〜2.5×10である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項10】
前記活性層が、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロースから選択される少なくとも一つをさらに含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータと、正極と、及び負極と、から成る積層体。
【請求項12】
請求項11に記載の積層体が捲回されている捲回体。
【請求項13】
請求項11に記載の積層体又は請求項12に記載の捲回体と電解液とを含む二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄電デバイス用セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池に代表される蓄電デバイスの開発が、活発に行われていた。通常、蓄電デバイスには、微多孔膜(セパレータ)が正負極間に設けられている。セパレータは、正負極間の直接的な接触を防ぎ、かつ微多孔中に保持した電解液を通しイオンを透過させる機能を有する。
【0003】
該セパレータは電池特性、電池生産性及び電池安全性に深くかかわっており、優れた、透過性、機械的特性、インピーダンス特性孔閉塞特性(シャットダウン特性)及び溶融破膜防止特性(メルトダウン防止特性)等が要求される。
このような要求を満たすため、これまでにセパレータを構成する微多孔性の基材にさまざまな改質多孔膜を積層することが検討されてきた。
例えば、特許文献1には、ポリプロピレンを含む第1の微多孔質層及び超高分子量ポリエチレンを含む第2の微多孔質層からなり、さらに該多孔層の一方の表面に、その他の層(ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの単体及び共重合体などの含フッ素樹脂)を設け、特定の空孔率/膜厚及び透気度を有するポリオレフィン多層微多孔質膜が開示され、その実施例には、貫通孔径の均一性が高い緻密な細孔構造を有し、透気度が小さく、薄膜化しても高い空孔率及び機械的強度をバランスよく保持し、さらにインピーダンス特性にも優れる微多孔質層について記載されている。
又、特許文献2には、ポリオレフィン多層微多孔膜のポリエチレン及びポリプロピレンを含む表層面の一方の面に対する他方の面の静摩擦係数及び孔緻密度が特定の範囲にある、ポリオレフィン多層微多孔膜が開示されており、その実施例には良好な膜同士の滑り性と緻密な細孔構造による高い耐久性(耐電圧、電気化学安定性)を有する多層微多孔膜が記載されている。
又、特許文献3には、特定個数のポリエチレンからなる突起が不規則に存在したポリエチレン微多孔質膜の上にPVDF層からなる改質多孔層を積層することによって、高速搬送時においても改質多孔層の剥離が生じない電池用セパレータが開示されている。
さらに、特許文献4には、機械的強度、耐圧縮性を有するポリプロピレン樹脂層を最表層に有する多孔質膜にPVDF層を含む耐熱性樹脂層を含む多孔質膜を積層した複合多孔質膜が、優れたシャットダウン機能を有し、さらにフッ素系樹脂層を積層した構成を有するため、優れたフッ素系樹脂層の密着性と小さい透気抵抗度上昇幅を両立できることが開示されており、特に電池用セパレータに好適とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2015/194667号
【特許文献2】国際公開第2013/146403号
【特許文献3】国際公開第2015/190264号
【特許文献4】特開2012−061791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近のエコブームにのっとり、ハイブリッド車の需要が急増しているだけでなく、さらに電気自動車までが市場で認知されつつあり、これらの車が世界各地で使用される頻度が増えてきている。このような状況のもと、当然セパレータにも仕向地に対応した性能が要求されており、とりわけ、寒冷地におけるセパレータの耐久性についての改善が求められていた。これに対して特許文献1〜4に開示するような従来のセパレータは、もともと上記のような事情を考慮したものではなく、かねてより寒冷地も含めた世界各地で使用できるようなセパレータが切望されていた。
本発明は、上記の事情に鑑み、従来のセパレータで求められてきた基本特性のうち、特に基材と改質層との剥離強度はじめセパレータを円筒形の電池に捲きつける際の電池捲回性に優れるのみならず、冷熱衝撃特性や低温サイクル特性にも優れ、かつ各性能のバランスがとれた蓄電デバイス用セパレータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、以下の技術的手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。
すなわち本発明は以下のとおりである。
[1]最外部のポリプロピレン濃度が最内部のポリプロピレン濃度よりも高く、かつ最外部のポリエチレン濃度が最内部のポリエチレン濃度よりも低い、ポリエチレンとポリプロピレンとを含むポリオレフィン多層微多孔質膜と、前記多孔質膜の少なくとも一の面に配置された活性層とを含み、
前記活性層が、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)及びポリフッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン(PVdF−CTFE)から選択される少なくとも一つのフッ素原子を有するビニル化合物と、無機粒子とを含有する、蓄電デバイスセパレータ。
[2]前記ポリオレフィン多層微多孔質膜が、第1の微多孔質層、第2の微多孔質層、第1の微多孔質層の順に積層され、前記第1の微多孔質層は、ポリエチレンとポリプロピレンを含有する第1のポリオレフィン樹脂からなり、前記第2の微多孔質層は、ポリエチレンを含有する、前記第1のポリオレフィン樹脂とは異なる第2のポリオレフィン樹脂からなり、前記活性層は前記第1の微多孔質層の少なくとも一つの層上に積層される、[1]に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[3]前記第1のポリオレフィン樹脂又は前記第2のポリオレフィン樹脂が、直鎖状低密度ポリエチレンを含む、[2]に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[4]前記第1のポリオレフィン樹脂又は前記第2のポリオレフィン樹脂が、融解熱量が150J/g以下のポリプロピレンをさらに含有する、[2]に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[5]前記直鎖状低密度ポリエチレンが、ポリ(エチレン−co−1−ヘキセン)である、請求項3に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
]前記第1のポリオレフィン樹脂に含有されるポリエチレンとポリプロピレンの重量平均分子量の比(MwE(ポリエチレンの重量平均分子量)/MwP(ポリプロピレンの重量平均分子量))が0.6〜1.5である、[2]〜[5]のいずれかに記載の蓄電デバイス用セパレータ。
]前記第1のポリオレフィン樹脂が、シリカ、アルミナ及びチタニアからなる群から選択される少なくとも一つ以上をさらに含有する、[2]〜[6]のいずれかに記載の蓄電デバイス用セパレータ。
]前記フッ素原子を有するビニル化合物と前記無機粒子との質量比が、5/95から80/20である、[1]〜[7]のいずれかに記載の蓄電デバイス用セパレータ。
]前記フッ素原子を有するビニル化合物の重量平均分子量が0.6×10〜2.5×10である、[1]〜[8]のいずれかに記載の蓄電デバイス用セパレータ。
10]前記活性層が、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロースから選択される少なくとも一つをさらに含有する、[1]〜[9]のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータ。
[11]前記[1]〜[10]のいずれかに記載の蓄電デバイス用セパレータと、正極と、及び負極と、から成る積層体。
[12]前記[11]に記載の積層体が捲回されている捲回体。
[13]前記[11]に記載の積層体又は[12]に記載の捲回体と電解液とを含む二次電池。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来のセパレータと比べて、活性層と基材との剥離強度及び電池捲回性のみならず冷熱衝撃特性や低温サイクル特性にも優れ、そして各性能のバランスがとれた蓄電デバイス用セパレータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1(A)は、活性層とポリオレフィン多層微多孔質膜との剥離強度を求めるために使用する手動捲回機の全体構成を示す説明図であり、図1(B)は、捲取部の構成を示す説明図である。
図2図2は、衝突試験を実施するために使用する装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<蓄電デバイス用セパレータ>
本発明の蓄電デバイス用セパレータは、最外部のポリプロピレン濃度が最内部のポリプロピレン濃度よりも高く、かつ最外部のポリエチレン濃度が最内部のポリエチレン濃度よりも低い、ポリエチレンとポリプロピレンとを含むポリオレフィン多層微多孔質膜と、前記微多孔質膜の少なくとも一の面に配置された活性層とを含む蓄電デバイスセパレータである。尚、ポリオレフィン多層微多孔質膜の最外部とは、該多層微多孔質膜を積層方向に同一膜厚になるように3分割したときの、外側の2枚の膜の断面部分をいい、最内部とは内側にあった膜の断面部分をさす。
本発明の蓄電デバイス用セパレータの好ましい態様としては、該セパレータが、ポリオレフィン多層微多孔質膜と活性層を含み、この多層微多孔質膜は、少なくとも第1の微多孔質層及び第2の微多孔質層を含み、第1の微多孔質層はポリエチレンとポリプロピレンを含有する第1のポリオレフィン樹脂からなり、第2の微多孔質層はポリエチレンを含有する、第1のポリオレフィン樹脂とは異なるポリオレフィン樹脂からなっていて、そして、この多層微多孔質膜は、第1の微多孔質層、第2の微多孔質層、第1の微多孔質層の順に積層されるものである。
この積層順序で得られる3層で両外層が第1の微多孔質層であるポリオレフィン多層微多孔質膜の少なくとも一つの層の上に活性層を塗工する工程を経て、該活性層を多孔質膜上に結着させたセパレータは、イオン透過性が低下し難く、出力特性の高い蓄電デバイスを与える傾向にある。更に、異常発熱時の温度上昇が速い場合においても、円滑なシャットダウン特性を示し、高い安全性が得られ易い傾向にある。
さらに、当該ポリオレフィン多層微多孔質膜の外層としてポリエチレンとポリプロピレンとを含有した膜を配置することによって、この外層の上に積層される活性層との剥離強度が大きくなる。このようにポリプロピレンとポリエチレンとが共存すると、ポリエチレン単独の場合に比べ、ポリプロピレンによる極性効果によって層表面の表面自由エネルギーが増大し、活性層との密着力が大きくなるためである。これに加えて、外層にポリエチレンとポリプロピレンとを含有した膜を配置することによって、本実施形態に係るセパレータの特徴の一つである低温特性、特に低温サイクル性が良好となるが、これはガラス転移温度が0℃付近のポリプロピレン単独に比べ、ブレンドにより転移温度が降下し、材料の脆性破壊が起こりづらくなるため考えられる。
【0010】
この蓄電デバイス用セパレータは、少なくともポリオレフィン多層微多孔質膜の上に活性層が積層されてなるものである。活性層により、活性層と電極側の接着層との接着力がより強固なものとなり、特に、後記の冷熱衝撃特性が良好となる。
このように該セパレータはポリオレフィン多層微多孔質膜及び活性層のみから成っていてもよいが、剥離強度をさらに向上されるために、これら以外に熱可塑性ポリマー層を更に有していてもよい(詳細は後述する)。ポリオレフィン多層微多孔質膜上に活性層と熱可塑性ポリマー層を配置する場合、これらの相互位置関係は任意であるが、蓄電デバイスのレート特性と安全性を両立する観点から、活性層の少なくとも一部を露出させるように熱可塑性ポリマー層を配置してもよいし、活性層層の上に配置することが好ましい。
【0011】
本実施形態の蓄電デバイス用セパレータを構成する各部材、及び蓄電デバイス用セパレータの製造方法の好ましい実施形態について、以下に詳細に説明する。
【0012】
[ポリオレフィン多層微多孔質膜]
本実施形態に用いるポリオレフィン多層微多孔質膜(以下、ポリオレフィン多孔質基材という)は、電子伝導性がなくイオン伝導性があり、有機溶媒の耐性が高い、孔径の微細な多孔質膜であると好ましい。
本実施形態に係るポリオレフィン多層微多孔質膜(ポリオレフィン多孔質基材)は、少なくとも第1のポリオレフィン微多孔質層及び第2のポリオレフィン微多孔質層を含み、第1の微多孔質層はポリエチレンとポリプロピレンを含有し、第2の微多孔質層はポリエチレンを含有する。
該ポリオレフィン多孔質基材は、セパレータ基材として、機械特性、シャットダウン特性、メルトダウン特性等に優れ、かつ各特性のバランスを確保するために、第1の微多孔質層、第2の微多孔質層、第1の微多孔質層の順に積層されるものであり、さらに第1層として、ポリエチレン及びポリプロピレンを、第2層としてポリエチレンを含有することによってセパレータとして所望する機械特性、シャットダウン特性、メルトダウン特性等の優れたバランスが発現される。
第1の微多孔質層に含有されるポリエチレン及びポリプロピレンとしては、特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMwPE)、アイソタクティックポリプロピレン、アタクティックポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダムコポリマー、エチレンプロピレンラバー等が挙げられる。これらのポリエチレン又はポリプロピレンの製造の際に用いられる重合触媒も特に制限はなく、例えば、チーグラー・ナッタ系触媒、フィリップス系触媒及びメタロセン系触媒が挙げられる。
第1のポリオレフィン樹脂は、蓄電デバイスの衝突耐性の観点から、上記のポリエチレンに加えて、直鎖状低密度ポリエチレンを更に含有することが好ましい。第1のポリオレフィン樹脂は、高密度ポリエチレン(HDPE)に加えて、直鎖状低密度ポリエチレンを更に含有することがより好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンは、例えば、ポリ(エチレン−co−ヘキセン)共重合体であることが更に好ましい。
【0013】
又、第1のポリオレフィン樹脂は、上記のポリプロピレンに加えて、ポリプロピレンの中でも、立体構造を有するもので、セパレータの耐熱性を向上させることができるアイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン及びアタクティックポリプロピレンのいずれかを用いることが、活性層と基材の剥離強度等の観点からより好ましい。
とりわけ、第1の微多孔質層中に、さらに融解熱量が150J/g以下のポリプロピレンを含むと、ポリプロピレン中のアモルファス部分が多くなり、蓄電デバイスの衝突耐性がさらに改善されるので特に好ましい。
第1の微多孔質層中のポリオレフィン樹脂全体100質量%に対するポリプロピレンの割合は、特に限定されないが、活性層と基材の剥離強度、冷熱衝撃特性、低温サイクル特性等の観点から、1〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜40質量%、更に好ましくは15〜35質量%である。特に好ましくは、15〜30質量%未満である。
又、第1の微多孔質層中のポリオレフィン樹脂組成物100質量%に対するポリオレフィン樹脂の割合は、特に限定されないが、透気度と耐熱性と良好なシャットダウン機能の両立の観点から、50〜100質量%であることが好ましく、より好ましくは60〜100質量%、更に好ましくは70〜100質量%である。また、重合触媒も特に制限はなく、例えば、チーグラー・ナッタ系触媒及びメタロセン系触媒が挙げられる。第1の微多孔質層にシリカ、アルミナ、チタニアから選択される少なくとも一つ以上をさらに含むと、セパレータの非水電解液との親和性、出力保持性能、後記する低温サイクル特性の観点からさらに好ましい。
【0014】
第1の微多孔質層中のシリカ、アルミナ、チタニアの割合は、第1の微多孔質層中の第1のポリオレフィン樹脂100質量%に対し、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましく80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。このような割合にすることは、良好な耐熱性を得る観点、及び、延伸性を向上させて高突刺強度の多孔膜を得る観点から好ましい。
【0015】
次に、本実施形態に係る第2の微多孔質層について説明する。
第2の微多孔層はポリエチレンを含有する、第1のポリオレフィン樹脂とは異なる第2のポリオレフィン樹脂からなるものである。ポリエチレンとしては、特に限定されないが、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMwPE)が挙げられる。第2の微多孔層のポリオレフィン樹脂に含まれるポリエチレンは、強度、耐熱性の観点から、好ましくは高密度ポリエチレン、及び超高分子量ポリエチレンである。また、高密度ポリエチレン、及び超高分子量ポリエチレンに加えて、直鎖状低密度ポリエチレンを更に含むことが、蓄電デバイスの衝突耐性の観点からより好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンは、例えば、ポリ(エチレン−co−ヘキセン)共重合体であることが更に好ましい。ポリエチレンは、1種を単独で用いてもよく、又は柔軟性を付与する等の目的から、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
第2の微多孔層のポリオレフィン樹脂中のポリエチレンの含有量は、成型加工安定性、薄膜における機械的強度、透気度等の観点から、第2のポリオレフィン樹脂の合計質量を100質量%として、好ましくは50質量%〜100質量%、より好ましくは60質量%〜100質量%、更に好ましくは70質量%〜95質量%である。
第2の微多孔層のポリオレフィン樹脂は、ポリプロピレンを更に含んでもよい。ポリプロピレンとしては、融解熱量が150J/g以下のポリプロピレンを含むと、ポリプロピレン中のアモルファス部分が多くなり、蓄電デバイスの衝突耐性がさらに良くなるので好ましい。
前記直鎖状低密度ポリエチレンまたは、融解熱量が150J/g以下のポリプロピレンが含まれるのは、第1のポリオレフィン樹脂中よりも第2のポリオレフィン樹脂中である方が、蓄電デバイスの衝突耐性の観点から好ましい。このメカニズムの詳細は不明であるが、直鎖状低密度ポリエチレンまたは、融解熱量が150J/g以下のポリプロピレンが含まれる層が他の層より厚い場合、直鎖状低密度ポリエチレンまたは、融解熱量が150J/g以下のポリプロピレンが含まれる層が電極からより離れている場合(他の層が介在している場合)は、蓄電デバイスの衝突耐性が良好であると推定される。
【0016】
本実施形態に係る第1及び第2の微多孔質層は、冷熱衝撃特性、及び低温サイクル特性、耐熱性、耐衝撃性及び基材と活性層との剥離強度とのバランスをより良好なものとするために、上記の樹脂以外のポリオレフィン樹脂を含むポリオレフィン樹脂組成物からなる多孔膜層としてもよい。第1及び第2層に使用されるオレフィン樹脂としては、特に限定されないが、通常の押出、射出、インフレーション、及びブロー成形等に使用するポリオレフィン樹脂でよく、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、及び1−オクテン等のホモポリマー及びコポリマー、多段ポリマー等を使用することができる。また、これらのホモポリマー及びコポリマー、多段ポリマーから成る群から選ばれるポリオレフィンを単独で、又は混合して使用することもできる。
【0017】
第1及び第2の微多孔質層を構成するポリエチレン又はポリプロピレンの重量平均分子量は、特に限定されないが、3万以上1,200万以下であることが好ましく、より好ましくは5万以上200万未満、更に好ましくは10万以上100万未満である。重量平均分子量が3万以上であると、溶融成形の際のメルトテンションが大きくなり成形性が良好になると共に、ポリマー同士の絡み合いにより高強度となる傾向にあるため好ましい。一方、重量平均分子量が1,200万以下であると、均一に溶融混練をすることが容易となり、シートの成形性、特に厚み安定性に優れる傾向にあるため好ましい。更に、重量平均分子量が100万未満であると、温度上昇時に孔を閉塞し易く、良好なシャットダウン機能が得られる傾向にあるため好ましい。
前述したように、本実施形態に係るポリオレフィン多層微多孔質膜(ポリオレフィン多孔質基材)は、第1の微多孔質層、第2の微多孔質層、そして第1の微多孔質層をこの順に積層してなるものであるが、さらにその上に活性層を塗工し、ポリオレフィン多孔質基材上に決着させたセパレータにおいて、活性層と密着する第1の微多孔質層に含まれるポリエチレンの重量平均分子量(MwE)とポリプロピレンの重量平均分子量(MwP)の比(MwE/MwP)が、0.6〜1.5であると、第1の微多孔質層と活性層との剥離強度ばらつきを低減できる点で好ましい。第一層のMwE/MwPの比がこのような範囲にあると剥離強度ばらつきが低減する理由については下記の通りと推定される。この比が所定の範囲内である(1に近くなる)と、ポリエチレンとポリプロピレンの分子量の差が小さくなり、相溶性が良好になり、マクロ相分離が起こりにくくなる。そうすると第一層の活性層との接着界面にポリエチレンリッチな部分又はポリプロピレンリッチな部分の偏在が抑えられ、これにより接着部位によって両者の比が小さくなる。さらにポリプロピレンとポリエチレンとでは接着力が同じでないため、その結果、活性層と基材との接着力(剥離強度)ばらつきが小さくなるものと考えられる。
尚、ポリオレフィン多孔質基材の具体的な製造法については後述する。
【0018】
以上、第1、第2、第1の3層の微多孔層からなるポリオレフィン多孔質基材について説明したが、この多孔質基材は、3層超の多層であってもよく、この場合、最外部のポリプロピレン濃度は最内部のポリプロピレン濃度よりも高く、かつ最外部のポリエチレン濃度は最内部のポリエチレン濃度よりも低い。ここで最外部とは、前述したように、該多層膜を積層方向にそれぞれが同一膜厚になるよう3分割したときの、外側2枚のことをいい、最内部とは内側にあった膜のこという。尚、各膜の構成成分は、赤外分光法や液体クロマトグラフィー法(例えばGPC)等により知ることができる。
【0019】
本実施形態におけるポリオレフィン多孔質基材には、任意の添加剤を含有することができる。このような添加剤は、特に限定されず、例えば、ポリオレフィン以外のポリマー;無機粒子;フェノール系、リン系、イオウ系等の酸化防止剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類;紫外線吸収剤;光安定剤;帯電防止剤;防曇剤;着色顔料等が挙げられる。
これらの添加剤の合計含有量は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、20質量部以下であることが好ましく、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。
【0020】
本実施形態におけるポリオレフィン多孔質基材の気孔率は、特に限定されないが、好ましくは20%以上、より好ましくは35%以上であり、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である。気孔率を20%以上とすることは、セパレータの透過性を確保する観点から好ましい。一方、気孔率を90%以下とすることは、突刺強度を確保する観点から好ましい。ここで、気孔率は、例えば、ポリオレフィン多孔質基材試料の体積(cm)、質量(g)、膜密度(g/cm)から、下記数式:
気孔率=(体積−質量/膜密度)/体積×100
により求めることができる。ここで、例えばポリエチレンから成るポリオレフィン多層微多孔質膜の場合には、膜密度を0.95(g/cm)と仮定して計算することができる。ポリエチレンとポリプロピレンとかなる多層微多孔質膜の場合には、それぞれの膜密度から同様に計算できる。気孔率は、ポリオレフィン多層微多孔質膜の延伸倍率の変更等により調節可能である。
【0021】
本実施形態におけるポリオレフィン多孔質基材の透気度は、特に限定されないが、好ましくは10秒/100cc以上、より好ましくは50秒/100cc以上であり、好ましくは1,000秒/100cc以下、より好ましくは500秒/100cc以下である。透気度を10秒/100cc以上とすることは、蓄電デバイスの自己放電を抑制する観点から好ましい。一方、透気度を1,000秒/100cc以下とすることは、良好な充放電特性を得る観点から好ましい。ここで、透気度は、JIS P−8117に準拠して測定される透気抵抗度である。透気度は、多孔性基材の延伸温度及び/又は延伸倍率の変更等により調節可能である。
【0022】
本実施形態におけるポリオレフィン多孔質基材の平均孔径は、好ましくは0.15μm以下、より好ましくは0.1μm以下であり、下限として好ましくは0.01μm以上である。平均孔径を0.15μm以下とすることは、蓄電デバイスの自己放電を抑制し、容量低下を抑制する観点から好適である。平均孔径は、ポリオレフィン多孔性基材を製造する際の延伸倍率の変更等により調節可能である。
【0023】
本実施形態におけるポリオレフィン多孔質基材の突刺強度は、特に限定されないが、好ましくは200g/20μm以上、より好ましくは300g/20μm以上であり、好ましくは2,000g/20μm以下、より好ましくは1,000g/20μm以下である。突刺強度が200g/20μm以上であることは、電池捲回時における脱落した活物質等による破膜を抑制する観点、及び充放電に伴う電極の膨張収縮によって短絡する懸念を抑制する観点からも好ましい。一方、突刺強度が2,000g/20μm以下であることは、加熱時の配向緩和による幅収縮を低減できる観点から好ましい。突刺強度は、後記の実施例の記載の方法により測定される。
上記突刺強度は、ポリオレフィン多孔質基材の延伸倍率及び/又は延伸温度等を調整することにより調節可能である。
【0024】
本実施形態におけるポリオレフィン多孔質基材の厚さは、特に限定されないが、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下、更に好ましくは50μm以下である。この厚さを2μm以上に調整することは、機械強度を向上させる観点から好ましい。一方、この膜厚を100μm以下に調整することは、電池におけるセパレータの占有体積が減るため、電池の高容量化の点において有利となる傾向があるので好ましい。
【0025】
<活性層>
(フッ素原子含有ビニル化合物)
本実施形態に係る活性層は、フッ素原子を有するビニル化合物と無機粒子を含有するものであり、上記の第1の微多孔質層の上に積層される。
このように基材であるポリオレフィン多層微多孔質膜の上に活性層を設けることにより、基材のみよりも電池捲回性、蓄電デバイスの冷熱衝撃特性に優れたものとなる。
活性層を第1の微多孔質層の上、すなわちポリオレフィン多孔質基材上に塗工する工程を経て、該活性層を多孔質基材上に結着させたセパレータは、イオン透過性が低下し難く、出力特性の高い蓄電デバイスを与える傾向にある。更に、異常発熱時の温度上昇が速い場合においても、円滑なシャットダウン特性を示し、高い安全性が得られ易い傾向にある。
フッ素原子を有するビニル化合物(以下、フッ素系樹脂又はバインダともいう)は、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(高分子PVdF−HFP)及びポリフッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン(高分子PVdF−CTFE)から選択される少なくとも一つである。このように、ヘキサフロロプロピレン、又はクロロトリフルオロエチレンをフッ化ビニリデンと共重合することで、フッ素系樹脂の結晶性を適度な範囲に制御できるため、電極との接着処理の際に活性層が流動してしまうのを抑制できる。
さらに、電極との接着処理の際、その接着力が向上するため、二次電池用セパレータとして用いた際に、界面ずれが生じないため、冷熱衝撃特性が向上する。尚、該フッ素系樹脂は、通常、乳化重合、又は懸濁重合により得られる。
フッ素系樹脂の重量平均分子量は0.6×10から2.5×10であることが望ましい。フッ素系樹脂の重量平均分子量がこの範囲にあると、冷熱衝撃特性が良好(冷熱時の膨張・収縮が小さいため、活性層と基材間で剥離が起こりにくいと考えられる。)となり好ましい。
前記のフッ素系樹脂、すなわち高分子PVdF−HFP及び高分子PVdF−CTFEは、HFP又はCTFE由来の構成単位の割合が2.0質量%〜20.0質量%であることが好ましい。HFP又はCTFE含有量が2.0質量%以上であると、該フッ素系樹脂の結晶化の高度化を抑え、HFP又はCTFE含有量が20.0質量%以下であると、フッ素系樹脂の結晶化が適度に発現される。また、HFP又はCTFE含有量が20.0質量%以下であると、冷熱衝撃特性を確保しやすいため好ましい。
上記の観点で、高分子PVdF−HFP及び高分子PVdF−CTFEにおけるHFP又はCTFE由来の構成単位の割合は、2.25質量%以上がより好ましく、2.5質量%以上が更に好ましく、18質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更に好ましい。
【0026】
又、該活性層含むセパレータを電解液に含浸させたとき、セパレータに含まれる樹脂の膨潤の度合いは、樹脂の種類や電解液の組成によって異なり、このような樹脂の膨潤に伴う不具合を抑制するためには、膨潤しにくい上記のフッ素系樹脂を選択することが好ましい。
活性層に、ヒドロキシル基(‐OH)、カルボキシル基(‐COOH)、無水マレイン酸基(‐COOOC‐)、スルホン酸基(‐SOH)、及びピロリドン基(‐NCO‐)からなる群より選択されたいずれか1つの極性基またはこれらのうち2種以上の極性基を有してなる高分子が含まれると、セパレータの低温サイクル特性が改善されるので、より好ましい。このような高分子としては、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロースから選択される少なくとも一つの高分子が挙げられる。
活性層に、上記のような極性基を有する高分子を含むことによって、セパレータの低温サイクル特性が改善するのは、これらの高分子の有する高い比誘電率のために、低温時においてもセパレータの抵抗が下がるためであると推定される。
極性基を有する高分子の比誘電率は1から100(測定周波数=1kHz)が使用可能であり、特に10以上であることが好ましい。
【0027】
活性層には、本実施形態に係るセパレータにより発現される諸特性を損なわない限り、上記の樹脂以外に以下の樹脂を含んでもよい。これにあたる樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン‐トリクロロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリイミド、ポリエチレンオキシドなどをそれぞれ単独でまたはこれらを2種以上混合して使うことができ、これに限定されることはない。
【0028】
(無機粒子)
活性層に使用する無機粒子としては、特に限定されないが、200℃以上の融点を持ち、電気絶縁性が高く、かつリチウムイオン二次電池の使用範囲で電気化学的に安定であるものが好ましい。
無機粒子としては、特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄等の酸化物系セラミックス;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス;シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス;ガラス繊維等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。
これらの中でも、電気化学的安定性及びセパレータの耐熱特性を向上させる観点から、アルミナ、水酸化酸化アルミニウム等の酸化アルミニウム化合物;及びカオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト等の、イオン交換能を持たないケイ酸アルミニウム化合物が好ましい。
【0029】
なお、アルミナには、α−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θ−アルミナ等の多くの結晶形態が存在するが、いずれも好適に使用することができる。これらの中でも、α−アルミナが熱的・化学的にも安定なので好ましい。
【0030】
酸化アルミニウム化合物としては、水酸化酸化アルミニウム(AlO(OH))が特に好ましい。水酸化酸化アルミニウムとしては、リチウムデンドライトの発生に起因する内部短絡を防止する観点から、ベーマイトがより好ましい。活性層を構成する無機粒子として、ベーマイトを主成分とする粒子を採用することで、高い透過性を維持しながら、非常に軽量な多孔層を実現できる上に、より薄い多孔層においても多孔膜の高温での熱収縮が抑制され、優れた耐熱性を発現する傾向にある。電気化学デバイスの特性に悪影響を与えるイオン性の不純物を低減できる合成ベーマイトがさらに好ましい。
【0031】
イオン交換能を持たないケイ酸アルミニウム化合物としては、安価で入手も容易なため、主としてカオリン鉱物から構成されているカオリンがより好ましい。カオリンには、湿式カオリン及びこれを焼成処理して成る焼成カオリンが知られている。本実施形態では、焼成カオリンが特に好ましい。焼成カオリンは、焼成処理の際に、結晶水が放出されており、更に不純物も除去されていることから、電気化学的安定性の点で特に好ましい。
【0032】
無機粒子の平均粒径は、0.01μmを超えて4.0μm以下であることが好ましく、0.2μmを超えて3.5μm以下であることがより好ましく、0.4μmを超えて3.0μm以下であることが更に好ましい。無機粒子の平均粒径を上記範囲に調整することは、活性層の厚さが薄い場合(例えば、7μm以下)であっても、高温における熱収縮を抑制する観点から好ましい。無機粒子の粒径及びその分布を調整する方法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル等の適宜の粉砕装置を用いて無機粒子を粉砕して粒径を小さくする方法等を挙げることができる。
【0033】
無機粒子の形状としては、例えば、板状、鱗片状、針状、柱状、球状、多面体状、塊状等が挙げられる。これらの形状を有する無機フィラーの複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
本実施形態に係る活性層中のフッ素系樹脂と無機粒子の割合は、フッ素系樹脂/無機粒子が5/95〜80/20であることが好ましく、より好ましくは7/93〜65/35、さらに好ましくは9/91〜50/50である。フッ素系樹脂/無機粒子がこのような範囲にあると、特に後記の電池捲回性が良好となり好ましい。例えば、フッ素系樹脂に、上記ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(PVdF−HFP)を使用すると、この樹脂に特有のトライボマテリアル効果により膜表面に樹脂が溶け出すため、電池捲回性試験におけるピンとの接触抵抗が下がり、ピンが抜けやすくなる。
【0035】
活性層の厚さは、耐熱性及び絶縁性を向上させる観点から、0.5μm以上であることが好ましく、電池の高容量化と透過性を向上させる観点から50μm以下であることが好ましい。
活性層の層密度は、0.5g/cm〜3.0g/cmであることが好ましく、0.7g/cm〜2.0g/cmであることがより好ましい。活性層の層密度が0.5g/cm以上であると、高温での熱収縮率が良好となる傾向にあり、3.0g/cm以下であると、透気度が良好になる傾向にある。
【0036】
活性層の形成方法としては、例えば、基材の少なくとも片面に、無機粒子及び樹脂バインダを含む塗工液を塗工する方法を挙げることができる。この場合、塗工液は、分散安定性及び塗工性の向上のために、溶剤、分散剤等を含んでいてもよい。
塗工液を基材に塗工する方法は、必要とする層厚及び塗工面積を実現できる限り特に限定されない。例えば、樹脂バインダを含んだ粒子原料と、ポリマー基材原料とを共押出法により積層して押出してもよいし、基材と活性膜とを個別に作製した後に貼り合せてもよい。
【0037】
[熱可塑性ポリマー層]
蓄電デバイス用セパレータは、所望により、ポリオレフィン多孔質基材及び活性層に加えて、熱可塑性ポリマー層を有していてもよい。熱可塑性ポリマー層は、多孔質基材の片面若しくは両面上に、又は活性層上に配置されてよく、活性層の少なくとも一部が露出するように配置されていても好ましい。
【0038】
本実施形態において、ポリオレフィン多孔質基材の面のうちの、熱可塑性ポリマー層が配置される面の全面積に対する熱可塑性ポリマー層の面積割合は、100%以下、80%以下、75%以下、又は70%であることが好ましく、また、この面積割合は、5%以上、10%以上、又は15%以上であることが好ましい。この熱可塑性ポリマー層の塗工面積を100%以下とすることは、熱可塑性ポリマーによる基材の孔の閉塞を更に抑制し、セパレータの透過性を一層向上する観点から好ましい。一方、塗工面積を5%以上とすることは、電極との接着性を一層向上する観点から好ましい。この面積割合は、得られるセパレータの熱可塑性ポリマー層形成面をSEMで観察することにより測定される。
また、熱可塑性ポリマー層が無機粒子と混在した層である場合には、熱可塑性ポリマーと無機粒子の全面積を100%として熱可塑性ポリマーの存在面積を算出する。
【0039】
熱可塑性ポリマー層をポリオレフィン多孔質基材及び無機粒子層の面の一部にのみ配置する場合、熱可塑性ポリマー層の配置パターンとしては、例えば、ドット状、ストライプ状、格子状、縞状、亀甲状、ランダム状等、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
ポリオレフィン多孔質基材上に配置される熱可塑性ポリマー層の厚さは、基材の片面当たり、0.01μm〜5μmであることが好ましく、0.1μm〜3μmであることがより好ましく、0.1〜1μmであることが更に好ましい。
【0040】
(熱可塑性ポリマー)
熱可塑性ポリマー層は、熱可塑性ポリマーを含む。熱可塑性ポリマー層は、その全量に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上の熱可塑性ポリマーを含んでよい。熱可塑性ポリマー層は、熱可塑性ポリマーに加えて、その他の成分を含んでもよい。
【0041】
熱可塑性ポリマーとしては、例えば、以下の:
ポリエチレン、ポリプロピレン、α−ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;
ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系ポリマー又はこれらを含むコポリマー;
ブタジエン、イソプレン等の共役ジエンを単量体ユニットとして含むジエン系ポリマー若しくはこれらを含むコポリマー、又はこれらの水素化物;
(メタ)アクリレート等を単量体ユニットとして含み、かつポリアルキレングリコールユニットを有していないアクリル系ポリマー、(メタ)アクリレート等を単量体ユニットとして含み、かつ1つ又は2つのポリアルキレングリコールユニットを有するアクリル系ポリマー、若しくはこれらを含むコポリマー、又はその水素化物;
エチレンプロピレンラバー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等のゴム類;
エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の、重合性官能基を有していないポリアルキレングリコール;
ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエステル等の樹脂;
フィラー多孔層を形成するための樹脂バインダとして上記で説明された、アルキレングリコールユニットの繰り返し数が3以上であるエチレン性不飽和単量体を共重合ユニットとして有するコポリマー;及び
これらの組み合わせ;
が挙げられる。
これらの中でも、電極活物質との接着性、及び柔軟性、ポリマーのイオン透過性の観点からは、ジエン系ポリマー、アクリル系ポリマー又はフッ素系ポリマーが好ましい。
【0042】
熱可塑性ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、電極との接着性及びイオン透過性の観点から、−50℃以上であることが好ましく、−50℃〜150℃の範囲内にあることがより好ましい。
【0043】
ポリオレフィン多層微多孔質膜への濡れ性、ポリオレフィン多層微多孔質膜と熱可塑性ポリマー層との結着性、及び電極との接着性の観点から、熱可塑性ポリマー層には、ガラス転移温度が20℃未満のポリマーがブレンドされていることが好ましく、耐ブロッキング性及びイオン透過性の観点から、ガラス転移温度が20℃以上のポリマーもブレンドされていることが好ましい。
【0044】
熱可塑性ポリマーがガラス転移温度を少なくとも2つ有することは、限定されるものではないが、2種類以上の熱可塑性ポリマーをブレンドする方法、コアシェル構造を備える熱可塑性ポリマーを用いる方法等によって達成できる。
コアシェル構造とは、中心部分に属するポリマーと、外殻部分に属するポリマーが異なる組成から成る、二重構造の形態をしたポリマーである。
特に、ポリマーブレンド及びコアシェル構造において、ガラス転移温度の高いポリマーと低いポリマーとを組み合せることにより、熱可塑性ポリマー全体のガラス転移温度を制御できる。また、熱可塑性ポリマー全体に複数の機能を付与できる。
【0045】
本実施形態では、セパレータのブロッキング抑制性及びイオン透過性の観点から、熱可塑性コポリマーは、ガラス転移温度が、例えば、20℃以上、25℃以上、又は30℃以上であるときに粒子状であることが好ましい。
熱可塑性ポリマー層に粒子状熱可塑性コポリマーを含有させることによって、基材上に配置された熱可塑性ポリマー層の多孔性及びセパレータの耐ブロッキング性を確保することができる。
【0046】
粒子状熱可塑性コポリマーの平均粒径は、好ましくは10nm〜2,000nm、より好ましくは50nm〜1,500nm、更に好ましくは100nm〜1,000nm、特に好ましくは130nm〜800nmであり、とりわけ好ましくは150〜800nmであり、最も好ましくは200〜750nmである。この平均粒径を10nm以上とすることは、少なくとも多孔膜を含む基材に粒子状熱可塑性ポリマーを塗工したときに、基材の孔に入り込まない程度の粒子状熱可塑性ポリマーの寸法が確保されることを意味する。従って、この場合、電極とセパレータとの間の接着性、及び蓄電デバイスのサイクル特性を向上させるという観点から好ましい。また、この平均粒径を2,000nm以下とすることは、電極とセパレータとの接着性、及び蓄電デバイスのサイクル特性を両立させるために必要な量の粒子状の熱可塑性ポリマーを基材上に塗工するという観点から好ましい。粒子状の熱可塑性ポリマーの平均粒径は、下記実施例に記載の方法に準じて測定することができる。
【0047】
上記で説明した粒子状熱可塑性ポリマーは、対応する単量体又はコモノマーを使用して既知の重合方法により製造することができる。重合方法としては、例えば、溶液重合、乳化重合、塊状重合等の適宜の方法を採用することができる。
【0048】
本実施形態では、熱可塑性ポリマー層を塗工によって容易に形成することができるので、乳化重合により粒子状熱可塑性ポリマーを形成し、それにより、得られた熱可塑性ポリマーエマルジョンを水系ラテックスとして使用することが好ましい。
【0049】
(任意成分)
本実施形態における熱可塑性ポリマー層は、熱可塑性ポリマーのみを含有していてもよいし、熱可塑性ポリマーに加えて、これ以外の任意成分を含んでいてもよい。任意成分としては、例えば、活性層を形成するために上記で説明された無機粒子等が挙げられる。
【0050】
<蓄電デバイス用セパレータの製造方法>
[ポリオレフィン多層微多孔質膜(ポリオレフィン多孔質質基材)の製造方法]
(第1及び第2の微多孔質層の製造方法)
前述したように、本実施形態に係るポリオレフィン多層微多孔質膜は、第1の微多孔質層、第2の微多孔質層、そして第1の微多孔質層をこの順に積層してなるものであるが、第1及び第2の微多孔質層を製造する方法は、特に限定されず、公知の製造方法を採用することができる。例えば、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤とを溶融混練してシート状に成形後、場合により延伸した後、可塑剤を抽出することにより多孔化させる方法、ポリオレフィン樹脂組成物を溶融混練して高ドロー比で押出した後、熱処理と延伸によってポリオレフィン結晶界面を剥離させることにより多孔化させる方法、ポリオレフィン樹脂組成物と無機充填材とを溶融混練してシート上に成形後、延伸によってポリオレフィンと無機充填材との界面を剥離させることにより多孔化させる方法、ポリオレフィン樹脂組成物を溶解後、ポリオレフィンに対する貧溶媒に浸漬させポリオレフィンを凝固させると同時に溶剤を除去することにより多孔化させる方法等が挙げられる。
【0051】
また、第1及び第2の微多孔質層の基材としての不織布又は紙を作製する方法は、公知のものであってもよい。その作製方法としては、例えば、ウェブをバインダに浸漬、乾燥して繊維間結合させるケミカルボンド法;ウェブに熱溶融性繊維を混ぜ込み、その繊維を部分的に溶融し繊維間結合させるサーマルボンド法;ウェブに刺のあるニードルを繰り返し突き刺し、繊維を機械的に絡めるニードルパンチ法;高圧の水流をノズルからネット(スクリーン)を介してウェブに噴射し、繊維間を絡める水流交絡法が挙げられる。
【0052】
以下、ポリオレフィン多層微多孔質膜(ポリオレフィン多孔質基材)を製造する方法の一例として、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤とを溶融混練してシート状の第1及び第2の微多孔質層を成形後、可塑剤を抽出する方法を経て、該第1及び第2の微多孔質層を積層する方法について説明する。
先ず、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤を溶融混練する。溶融混練方法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂及び必要によりその他の添加剤を、押出機、ニーダー、ラボプラストミル、混練ロール、バンバリーミキサー等の樹脂混練装置に投入し、樹脂成分を加熱溶融させながら任意の比率で可塑剤を導入して混練する方法が挙げられる。この際、ポリオレフィン樹脂、その他の添加剤及び可塑剤を樹脂混練装置に投入する前に、予めヘンシェルミキサー等を用い所定の割合で事前混練しておくことが好ましい。より好ましくは、事前混練において可塑剤の一部のみを投入し、残りの可塑剤を樹脂混練装置サイドフィードしながら混練することである。
【0053】
可塑剤としては、ポリオレフィンの融点以上において均一溶液を形成しうる不揮発性溶媒を用いることができる。このような不揮発性溶媒の具体例として、例えば、流動パラフィン、パラフィンワックス等の炭化水素類;フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル等のエステル類;オレイルアルコール、ステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。これらの中で、流動パラフィンが好ましい。
【0054】
ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤の比率は、これらを均一に溶融混練して、シート状に成形できる範囲であれば特に限定はない。例えば、ポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤とからなる組成物中に占める可塑剤の質量分率は、好ましくは30〜80質量%、より好ましくは40〜70質量%である。可塑剤の質量分率をこの範囲とすることにより、溶融成形時のメルトテンションと、均一かつ微細な孔構造の形成性と、が両立する観点で、好ましい。
【0055】
次に、溶融混練物をシート状に成形する。シート状成形体を製造する方法としては、例えば、溶融混練物を、Tダイ等を介してシート状に押出し、熱伝導体に接触させて樹脂成分の結晶化温度より充分に低い温度まで冷却して固化する方法が挙げられる。冷却固化に用いられる熱伝導体としては、金属、水、空気、可塑剤自身等が使用できるが、金属製のロールが熱伝導の効率が高いため好ましい。この際、金属製のロールに接触させる際に、ロール間で挟み込むと、熱伝導の効率が更に高まると共に、シートが配向して膜強度が増し、シートの表面平滑性も向上するためより好ましい。Tダイよりシート状に押出す際のダイリップ間隔は400μm以上3,000μm以下であることが好ましく、500μm以上2,500μm以下であることが更に好ましい。
【0056】
(ポリオレフィン多層微多孔質膜の製造方法)
本実施形態に係るポリオレフィン多層微多孔質膜(ポリオレフィン多孔質基材)は、第1の微多孔質層、第2の微多孔質層、そして第1の微多孔質層をこの順に積層してなるものであるが、これらを積層する方法として、たとえば以下の3層一括積層方法が挙げられる:上記したように、第1と第2の微多孔質層の構成成分であるポリオレフィン樹脂組成物と可塑剤とを別々に二軸押出機を用いて溶融混練しオレフィン溶液としてから、それぞれのポリオレフィン溶液を各二軸押出機から三層用Tダイに供給し、各溶液から成形される各層(第1のポリオレフィン溶液層/第2のポリオレフィン溶液層/第1のポリオレフィン溶液層)の層厚比を所望する範囲に調整しつつ、所定の巻き取り速度で、引き取りながら冷却し、ゲル状三層シートとして形成する。
上記では3層用Tダイを使用して、3層を同時に積層形成したが、各層ごと別々に形成したあとで、3層としてもかまわない。
【0057】
このようにして得たシート状成形体を、次いで延伸することが好ましい。延伸処理としては、一軸延伸又は二軸延伸のいずれも好適に用いることができる。得られるポリオレフィン多孔質基材の強度等の観点から二軸延伸が好ましい。シート状成形体を二軸方向に高倍率延伸すると、分子が面方向に配向し、最終的に得られる多孔質基材が裂け難くなり、高い突刺強度を有するものとなる。延伸方法としては、例えば、同時二軸延伸、逐次二軸延、多段延伸、多数回延伸等の方法を挙げることができる。突刺強度の向上、延伸の均一性、シャットダウン性の観点から同時二軸延伸が好ましい。
【0058】
延伸倍率は、面倍率で20倍以上100倍以下の範囲であることが好ましく、25倍以上50倍以下の範囲であることが更に好ましい。各軸方向の延伸倍率は、MD方向に4倍以上10倍以下、TD方向に4倍以上10倍以下の範囲であることが好ましく、MD方向に5倍以上8倍以下、TD方向に5倍以上8倍以下の範囲であることが更に好ましい。この範囲の総面積倍率とすることにより、十分な強度を付与することができるとともに、延伸工程における膜破断を防ぎ、高い生産性が得られる点で、好ましい。
【0059】
上記のようにして得られたシート状成形体を、更に圧延してもよい。圧延は、例えば、ダブルベルトプレス機等を使用したプレス法にて実施することができる。圧延は特に表層部分の配向を増すことができる。圧延面倍率は1倍より大きく3倍以下であることが好ましく、1倍より大きく2倍以下であることがより好ましい。この範囲の圧延倍率とすることにより、最終的に得られるポリオレフィン多孔質基材の膜強度が増加し、且つ、膜の厚さ方向に均一な多孔構造を形成することができる点で、好ましい。
【0060】
次いで、シート状成形体から可塑剤を除去して多孔性基材とする。可塑剤を除去する方法としては、例えば、抽出溶剤にシート状成形体を浸漬して可塑剤を抽出し、充分に乾燥させる方法が挙げられる。可塑剤を抽出する方法はバッチ式、連続式のいずれであってもよい。ポリオレフィン多孔質基材の収縮を抑えるために、浸漬、乾燥の一連の工程中にシート状成形体の端部を拘束することが好ましい。また、多孔質基材中の可塑剤残存量は1質量%未満にすることが好ましい。
【0061】
抽出溶剤としては、ポリオレフィン樹脂に対して貧溶媒で、かつ可塑剤に対して良溶媒であり、沸点がポリオレフィン樹脂の融点より低いものを用いることが好ましい。このような抽出溶剤としては、例えば、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類;ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン等の非塩素系ハロゲン化溶剤;エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類が挙げられる。なお、これらの抽出溶剤は、蒸留等の操作により回収して再利用してよい。
【0062】
ポリオレフィン多孔質性基材の収縮を抑制するために、延伸工程後、又は、多孔質基材形成後に熱固定や熱緩和等の熱処理を行ってもよい。多孔質基材に、界面活性剤等による親水化処理、電離性放射線等による架橋処理等の後処理を行ってもよい。
【0063】
ポリオレフィン多孔質基材表面に表面処理を施しておくと、その後に塗工液を塗工し易くなると共に、ポリオレフィンと活性層又は熱可塑性ポリマー層との接着性が向上するため好ましい。表面処理の方法としては、例えば、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、機械的粗面化法、溶剤処理法、酸処理法、紫外線酸化法等が挙げられる。
【0064】
[活性層の配置方法]
活性層は、例えば、無機粒子、フッ素系樹脂、及び所望により、溶剤(例えば水)、分散剤等の追加成分を含む塗工液を基材の少なくとも片面に塗工することにより、基材上に配置されることができる。フッ素系樹脂を乳化重合によって合成し、得られたエマルジョンをそのまま塗工液として使用してもよい。
活性層の形成方法としては、例えば、ポリオレフィン多孔質基材の少なくとも片面に、無機粒子及びフッ素系樹脂を含む塗工液を塗工する方法を挙げることができる。この場合、塗工液は、分散安定性及び塗工性の向上のために、溶剤、分散剤等を含んでいてもよい。
塗工液を基材に塗工する方法は、必要とする層厚及び塗工面積を実現できる限り特に限定されない。例えば、ポリオレフィン樹脂を含んだ活性層の構成原料と、ポリオレフィン多層微多孔質基材の構成原料とを共押出法により積層して押出してもよいし、多孔質基材と活性膜とを個別に作製した後に貼り合せてもよい。
【0065】
塗工液を基材に塗工する方法は、必要とする層厚及び塗工面積を実現できる限り特に限定されない。塗工方法としては、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗工法、インクジェット塗工法等が挙げられる。中でも、グラビアコーター法は、塗工形状の自由度が高いため好ましい。
さらに、フッ素系樹脂(バインダ)を含んだ無機粒子原料と、ポリマー基材原料とを共押出法により積層して押出してもよいし、基材と活性層とを個別に作製した後に貼り合せてもよい。
【0066】
塗工後に塗工膜から溶剤を除去する方法は、基材及び多孔層に悪影響を及ぼさないのであれば限定されない。例えば、基材を固定しながら、基材の融点以下の温度で乾燥する方法、低温で減圧乾燥する方法等が挙げられる。
【0067】
[熱可塑性ポリマー層の配置方法]
熱可塑性ポリマーは、例えば、熱可塑性ポリマーを含む塗工液を基材に塗工することにより基材上に配置されることができる。熱可塑性ポリマーを乳化重合によって合成し、得られたエマルジョンをそのまま塗工液として使用してもよい。塗工液は、水、水と水溶性有機媒体(例えば、メタノール又はエタノール)の混合溶媒等の貧溶媒を含むことが好ましい。
【0068】
ポリオレフィン多孔質基材上に、熱可塑性ポリマーを含有する塗工液を塗工する方法については、所望の塗工パターン、塗工膜厚、及び塗工面積を実現できる方法であれば特に限定はない。例えば、無機粒子含有塗工液を塗工するために上記で説明された塗工方法を用いてよい。熱可塑性ポリマーの塗工形状の自由度が高く、かつ好ましい面積割合を容易に得られるという観点からは、グラビアコーター法又はスプレー塗工法が好ましい。
【0069】
塗工後に塗工膜から溶媒を除去する方法については、ポリオレフィン多孔質基材及びポリマー層に悪影響を及ぼさない方法であれば特に限定はない。例えば、ポリオレフィン多孔質基材を固定しながらその融点以下の温度にて乾燥する方法、低温で減圧乾燥する方法、熱可塑性ポリマーに対する貧溶媒に浸漬して該熱可塑性ポリマーを粒子状に凝固させると同時に溶媒を抽出する方法等が挙げられる。
【0070】
<蓄電デバイス用セパレータの物性>
本実施形態では、蓄電デバイス用セパレータの透気度は、10秒/100cc以上650秒/100cc以下であることが好ましく、より好ましくは20秒/100cc以上500秒/100cc以下、さらに好ましくは30秒/100cc以上450秒/100cc以下、特に好ましくは50秒/100cc以上400秒/100cc以下である。この透気度は、ポリオレフィン多孔質基材の透気度と同じく、JIS P−8117に準拠して測定される透気抵抗度である。
透気度が10秒/100cc以上であると電池用セパレータとして使用した際の自己放電が少なくなる傾向にあり、650秒/100cc以下であると良好な充放電特性が得られる傾向にある。
本実施形態の蓄電デバイス用セパレータは、このように非常に大きな透気度を示すことにより、リチウムイオン二次電池に適用されたときに、大きなイオン透過性を示す。
【0071】
セパレータの最終的な厚さは、2μm以上200μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以上100μm以下、さらに好ましくは7μm以上30μm以下である。この厚さが2μm以上であると機械強度が十分となる傾向にあり、また、200μm以下であるとセパレータの占有体積が減るため、電池の高容量化の点において有利となる傾向にある。
【0072】
<蓄電デバイス>
本実施形態の蓄電デバイス用セパレータは、これを正極、負極、及び非水電解液を組み合わせることにより、蓄電デバイスのセパレータとして好適に適用することができる。この蓄電デバイスとしては、例えばリチウムイオン二次電池を挙げることができる。
本実施形態のセパレータをリチウムイオン二次電池を製造する場合、正極、負極、非水電解液に限定はなく、それぞれ公知のものを用いることができる。
正極としては、正極集電体上に正極活物質を含む正極活物質層が形成されて成る正極を好適に用いることができる。正極集電体としては、例えばアルミニウム箔等を、正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiNiO、スピネル型LiMnO、オリビン型LiFePO等のリチウム含有複合酸化物等をそれぞれ挙げることができる。正極活物質層には、正極活物質の他、バインダ、導電材等を含んでいてもよい。
【0073】
負極としては、負極集電体上に負極活物質を含む負極活物質層が形成されて成る正極を好適に用いることができる。負極集電体としては、例えば銅箔等を、負極活物質としては、例えば、黒鉛質、難黒鉛化炭素質、易黒鉛化炭素質、複合炭素体等の炭素材料;シリコン、スズ、金属リチウム、各種合金材料等をそれぞれ挙げることができる。
【0074】
非水電解液としては、特に限定されないが、電解質を有機溶媒に溶解した電解液を用いることができる。有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等が挙げられる。電解質としては、例えば、LiClO、LiBF、LiPF等のリチウム塩が挙げられる。
【0075】
本実施形態の蓄電デバイス用セパレータを用いて蓄電デバイスを製造する方法は、特に限定されない。例えば以下の方法を例示することができる。
本実施形態のセパレータを、幅10〜500mm(好ましくは80〜500mm)、長さ200〜4,000m(好ましくは1,000〜4,000m)の縦長形状のセパレータとして製造し、当該セパレータを、正極−セパレータ−負極−セパレータ、又は負極−セパレータ−正極−セパレータの順で積層し、円又は扁平な渦巻状に巻回して捲回体を得、当該捲回体を電池缶内に収納し、更に電解液を注入することにより、製造することができる。或いは、シート状のセパレータ及び電極からなる積層体、又は電極及びセパレータを折り畳んで捲回体としたものを、電池容器(例えばアルミニウム製のフィルム)に入れて、電解液を注液する方法によって製造してもよい。
【0076】
この時、前記積層体又は巻回体に対して、プレスを行うことも好ましい。具体的には、本実施形態の蓄電デバイス用セパレータと、集電体及び該集電体の少なくとも片面上に形成された活物質層を有する電極とを、前者の熱可塑性ポリマー層と活物質層とが対向するように重ね合わせてプレスを行うことができる。プレス温度は、25℃以上120℃以下、又は50℃〜100℃でよい。プレスは、ロールプレスや面プレス等の公知のプレス装置を適宜用いて行なわれることができる。
【0077】
上記のようにして製造されたリチウムイオン二次電池は、耐熱性と強度に優れた塗工層を持ち、イオン抵抗を低減させたセパレータを具備するから、優れた安全性と電池特性(特にレート特性)を示す。また、セパレータ最表面に熱可塑性ポリマーを備えた場合には、電極との優れた接着性を示すため、充放電に伴う電極とセパレータ間の剥れを抑制し、均一な充放電が成されるため、長期連続稼動耐性に優れる。
【0078】
以下の実験例における物性評価は、以下の方法に従って行なった。
<評価>
<測定方法及び評価方法>
(1)活性層/ポリオレフィン多孔質基材の剥離強度
実施例及び比較例(比較例1を除く)で得たセパレータの活性層に対して、幅12mm×長さ100mmのテープ(3M社製、製品名:スコッチ600)を、セパレータ長さ方向と平行の向きに貼りつけた。テープをサンプルから50mm/分の速度で剥がすときの力を、90°剥離強度測定器(IMADA社製、製品名IP−5N)を用いて測定した。5点測定し、得られた剥離強度の平均値を、活性層と基材の剥離強度として、下記評価基準により評価した。
A:剥離強度が60N/m以上
B:剥離強度が40N/m以上60N/m未満
C:剥離強度が40N/m未満
【0079】
(2)電池捲回性(ピン抜け特性)
皆藤製作所株式会社製手動捲回機を使用し、当該装置の全体構成を示す図1(A)のように、長さ3m、巾60mmの捲取サンプル(13)を2枚重ねで荷重400gにてピン(10)に活性層がピンに接触する様にして捲回した後、図1(B)に示す捲取部構成において、ピンI(11)を抜き、巻取りサンプル(13)を手で引っ張りピンII(12)からはずし、抜き終わったサンプルの捲回姿からピン抜け特性を下記基準で評価した。
A:ピンに引っ張られ、ピン接触部分がピンを抜く前に対して2mm以上ずれるものの割合 4個/100個以下
B:ピンに引っ張られ、ピン接触部分がピンを抜く前に対して2mm以上ずれるものの割合 5〜9個/100個
C:ピンに引っ張られ、ピン接触部分がピンを抜く前に対して2mm以上ずれるものの割合 10個/100個以上
【0080】
(3)冷熱衝撃特性
実施例及び比較例で得たセパレータを使用し、下記a〜dのように組み立てた各二次電池について、冷熱衝撃特性(耐冷熱サイクル特性)の評価を行った。
a.正極の作製
正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO)を96質量部と、正極導電剤としてカーボンブラック粉末を2質量部と、正極バインダ(結着剤)としてポリフッ化ビニリデンを2質量部と、を乾式混合し、これらをN−メチルピロリドン(NMP)中に分散させて正極合剤スラリーを調製した。この正極合剤スラリーを、正極集電体となる厚さ13μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥した後、圧延することにより、正極を作製した。この時の正極活物質層の充填密度及び厚みは、集電体の両面に正極活物質層が形成されている部分で3.95g/cc、及び140μmであった。
b.負極の作製
炭素系活物質(人造黒鉛)を97質量部と、ケイ素系活物質(SiOx)(x=1.05)を3質量部と、を混合した。
得られた混合物を98質量部と、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)を2質量部と、を混合し、これらを水に分散させて負極合剤スラリーを得た。
この負極合剤スラリーを負極集電体となる厚さ8μmの銅箔の両面に塗布し、乾燥した後、圧延した。以上の工程により、負極を作製した。この時の負極活物質層の充填密度及び厚みは、集電体の両面に負極活物質層が形成されている部分で1.75g/cc、及び137μmであった。
【0081】
c.非水電解液の調製
エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=3:7(質量比)の混合溶媒に、溶質としてLiPFを濃度1.2mol/Lとなるように溶解させることにより、非水電解液を調製した。
【0082】
d.電池組立
a.で調製された正極と、b.で調製された負極と、実施例又は比較例で調製されたセパレータとを、それぞれ切り出して、重ね合わせた後、室温にて長手方向に捲回してつぶすことにより、扁平状捲回電池素子を作製した。この電池素子を、内側から外側に向かってポリプロピレン/アルミ/ナイロン(nylon)の3層からなる厚み120μmのラミネートフィルムに挿入し、電極端子を熱融着により外装材に取り出した。電池素子を収容した外装部材内に、前記非水電解液を注入し、減圧下で外装材の残りの1辺を熱融着して減圧封止した。これを金属板間で80℃3分間加熱することで、厚み2mm×幅30mm×高さ30mmである電池を得た。
次いで、実施例及び比較例のセパレータを用いた各二次電池について、25℃で56mAの定電流で4.35Vまで充電し、続いて充電電流14mAまで定電圧充電を行った。
上記の定電圧充電後に充電状態の二次電池の抵抗(1kHz交流インピーダンス:Ω)を測定し、この抵抗を初期抵抗とした。
次いで、熱衝撃試験機(エスペック製 TSA−71H−W)を用いて、70℃に昇温し4時間維持した。その後、電池を20℃で2時間に亘って保持し、次に−40℃で4時間に亘って保持するというサイクルを50回繰り返した。上記dと同様の方法で、二次電池の抵抗(1kHz交流インピーダンス:Ω)を測定した。この結果と上記で測定した初期抵抗から、冷熱サイクル前後の抵抗変化量(冷熱サイクル後の抵抗−初期抵抗)を算出し、下記基準で評価した。
A:冷熱衝撃前後の抵抗変化量が0Ω以上10Ω未満
B:冷熱衝撃後の抵抗変化量が10Ω以上20Ω未満
C:冷熱衝撃前後の抵抗変化量が20Ω以上
【0083】
(4)低温サイクル特性
実施例及び比較例で得たセパレータを使用し、下記a.〜c.のように組み立てた各二次電池について、低温サイクル特性測定を行った。
a.正極板の作製
活物質としてコバルト酸リチウムを100質量部、導電剤としてアセチレンブラックを活物質100重量部に対して2質量部、結着剤としてポリフッ化ビニリデンを活物質100質量部に対して2質量部とを適量のN−メチル−2−ピロリドンと共に双腕式練合機にて攪拌し混練することで、正極合剤塗料を作製した後に厚み20μmのAl箔の両面に、正極合剤スラリーを塗布して乾燥することにより、正極活物質層を形成した。こうして得られた、正極集電体の両面に正極活物質層を備える積層体を、一対のローラで加圧して圧延することにより、総厚さが120μmの正極板を得た。なお、正極集電体の短手方向の一辺に、正極活物質層が形成されていない正極集電体の露出部を設けた。
b.負極板の作製
負極の活物質として人造黒鉛を100体積部、結着剤としてスチレン−ブタジエン共重合体ゴム粒子分散体を活物質100体積部に対して結着剤の固形分換算で2.3体積部、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを活物質100体積部に対して1.4体積部、および所定の量の水とともに双腕式練合機にて攪拌し、体積固形分率が55%の負極合剤塗料を作製した。ここで、体積固形分率とは、合剤塗料に含まれる固形分の体積濃度のことである。この負極合剤塗料を厚さ15μmの銅箔の両面に塗布し、乾燥した後、圧延し、総厚さが185μmの負極板を得た。なお、負極集電体の短手方向の一辺に、負極活物質層が形成されていない負極集電体の露出部を設けた。
c.電池の作製
これらの正極板、実施例及び比較例のセパレータ、負極板を巻回構成し、円筒型電池ケース内に挿入し、EC(エチレンカーボネート)・DMC(ジメチルカーボネート)・MEC(メチルエチルカーボネート)混合溶媒にLiPFを1MとVCを3質量部溶解させた電解液を、5.5g添加して封口し、設計容量が2000mAhの円筒型18650非水系二次電池を作製した。
d.低温サイクル特性の測定
以下の方法で低温100サイクル時点での容量維持率の測定を実施した。封口後の上記電池について慣らし充放電を2回行い、45℃環境で7日間保存した後、以下の充放電サイクルを−30℃で100回繰り返した。充電については、定電圧4.2V、1400mAで充電を行い、充電電流が100mAまで低下したとき充電を終了し、放電は2000mAの定電流で終止電圧3Vまで放電することを1サイクルとして、1サイクル目に対する100サイクル目の放電容量比を100サイクル容量維持率として測定を行なった。そして、低温サイクル特性を下記基準で評価した。
A:低温100サイクル時点での容量維持率が80%以上
B:低温100サイクル時点での容量維持率が70%以上80%未満
C:低温100サイクル時点での容量維持率が70%未満
【0084】
(5)活性層/ポリオレフィン多孔質基材の剥離強度のばらつき
上記(1)“活性層とポリオレフィン多孔質基材との剥離強度”と同様に、実施例、比較例の600mm幅セパレータに対し、幅12mm×長さ100mmのテープ(3M社製、製品名:スコッチ600)を、セパレータ長さ方向と平行の向きに100mmの間隔をあけて貼り付けた(TD方向に5点)。同様にしてセパレータ長さ方向500mmの間隔をあけて上記のテープを5点貼り付けた(MD方向に5点)。計25点貼り付けられたテープをサンプルから50mm/分の速度で剥がすときの力を、90°剥離強度測定器(IMADA社製、製品名IP−5N)を用いて測定した。そして、下記式に基づき、剥離強度の標準偏差と平均値から、剥離強度のばらつき[%]を計算し、下記の基準で評価した。
【数1】
ここで、xは剥離強度の平均値、nは測定数を示す。
(評価基準)
A:活性層/基材の剥離強度のばらつきが10%未満
B:活性層/基材の剥離強度のばらつきが10%以上20%未満
C:活性層/基材の剥離強度のばらつきが20%以上
【0085】
(6)衝突耐性(衝突試験)
図2は、UL規格1642及び/又は2054に従う衝突試験の概略図である。UL規格1642及び/又は2054では、試験台上に配置された試料(22)の上に、試料(22)と丸棒(21)(φ=15.8mm)が概ね直交するように、丸棒(21)を置いて、丸棒(21)から610±25mmの高さの位置から、丸棒(21)の上面へ9.1kg(約20ポンド)の錘(20)を落すことにより、試料に対する衝撃の影響を観察する。
図2とUL規格1642及び2054を参照して、実施例及び比較例における衝突試験
の手順を以下に説明する。
a.正極の作製
正極活物質としてニッケル、マンガン、コバルト複合酸化物(NMC)(Ni:Mn:Co=1:1:1(元素比)、密度4.70g/cm、容量密度175mAh/g)を90.4質量%、導電助材としてグラファイト粉末(KS6)(密度2.26g/cm、数平均粒子径6.5μm)を1.6質量%及びアセチレンブラック粉末(AB)(密度1.95g/cm、数平均粒子径48nm)を3.8質量%、並びにバインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)(密度1.75g/cm)を4.2質量%の比率で混合し、これらをN−メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを、正極集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の片面にダイコーターを用いて塗布し、130℃において3分間乾燥した後、ロールプレス機を用いて圧延した。圧延後のものを57.0mm幅にスリットして正極を得た。この時の正極活物質塗布量は109g/mであった。
【0086】
b.負極の作製
負極活物質としてグラファイト粉末A(密度2.23g/cm、数平均粒子径12.7μm)を87.6質量%及びグラファイト粉末B(密度2.27g/cm、数平均粒子径6.5μm)を9.7質量%、並びにバインダとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4質量%(固形分換算)(固形分濃度1.83質量%水溶液)及びジエンゴム系ラテックス1.7質量%(固形分換算)(固形分濃度40質量%水溶液)を精製水中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる厚さ12μmの銅箔の片面にダイコーターで塗布し、120℃において3分間乾燥した後、ロールプレス機を用いて圧延した。圧延後のものを58.5mm幅にスリットして負極を得た。この時の負極活物質塗布量は5.2g/mであった。
【0087】
c.非水電解液の調製
エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比1:2で混合した混合溶媒(キシダ化学(株)製Lithium Battery Grade)に、LiPFを1mol/Lとなるように溶解して、非水電解質である電解液を得た。
【0088】
d.電池組立
作製した正極と負極とを、実施例におけるセパレータの両側に重ねて筒状に巻いた捲回体を、ステンレス製の円筒型電池ケース(外装体)に挿入した。次いで、そこに、上記電解液を5mL注入し、捲回体を電解液に浸漬した後、電池ケースを密閉して非水電解質二次電池を作製した。
【0089】
e.加熱処理
d.で得た非水電解質二次電池を、60℃の環境下で48時間保存した。
【0090】
f.初期充放電
e.で得た非水電解質二次電池を、25℃の環境下、0.3Cの定電流で充電し、4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で充電して、0.3Cの定電流で3.0Vまで放電した。定電流での充電と定電圧での充電時間の合計を8時間とした。なお、1Cとは電池が1時間で放電される電流値である。
次に、電池を1Cの定電流で充電し、4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で充電して、1Cの定電流で3.0Vまで放電した。定電流での充電と定電圧での充電時間の合計を3時間とした。また、1Cの定電流で放電した時の容量を1C放電容量(mAh)とした。25℃の環境下で、e.で得た非水電解質二次電池(22)を1Cの定電流で充電し、4.2Vに到達した後、4.2Vの定電圧で合計3時間充電した。
次に、25℃の環境下で、電池を平坦な面に横向きに置き、電池を横切るように、直径15.8mmのステンレスの丸棒(21)を電池(22)の中央に配置した。電池(22)の中央に配置した丸棒(21)から電池の縦軸方向に対して、直角に衝撃が加わるように、9.1kgの錘(20)を61±2.5cmの高さから落下させた。その後、電池の外装温度を測定し、かつ電池からのガスの噴出の有無と電池の発火の有無を観察した。なお、電池の外装温度とは、電池の外装体の底側から1cmの位置を熱電対(K型シールタイプ)で測定した温度である。
以下の基準で、衝突試験を評価した。
A:電池外装温度60℃未満
B:電池外装温度60℃以上80℃未満
C:電池外装温度80℃以上、かつガス噴出、発火無し
D:ガス噴出有り、または発火有り
(7)重量平均分子量
本実施形態のポリオレフィンの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を測定し、以下の方法により求めた。装置はWaters社製のALC/GPC−150−C−plus型(商標)を用い、東ソー(株)製のGMH6−HT(商標)の30cmのカラム2本とGMH6−HTL(商標)の30cmのカラム2本を直列接続して使用し、オルトジクロロベンゼンを移動相溶媒として、試料濃度0.05wt%で140℃にて測定を行った。なお、標準物質として市販の分子量既知の単分散ポリスチレンを用いて検量線を作成し、求められた各試料のポリスチレン換算の分子量分布データに、0.43(ポリエチレンのQファクター/ポリスチレンのQファクター=17.7/41.3)を乗じることにより、ポリオレフィンの重量平均分子量を取得した。
そして、フッ素原子を有するビニル化合物の重量平均分子量は、GPCを測定し、以下の方法により求めた。装置はWaters社製のAlliance GPC2000型(商標)を用い、東ソー(株)製のGMH6−HT(商標)のカラム2本とGMH6−HTL(商標)のカラム2本を直列接続して使用し、オルトジクロロベンゼンを移動相溶媒として、カラム温度140℃にて測定を行った。なお、分子量校正用の標準物質として分子量既知の単分散ポリスチレン(東ソー社製)を用いた。以上よりフッ素原子を有するビニル化合物の重量平均分子量を算出した。
【実施例】
【0091】
(実施例1)
(1)第1のポリオレフィン溶液の調製
Mw(以下、重量平均分子量とする)が1.2×10のポリプロピレン(PP:融点162℃)20質量%及びMwが0.74×10の高密度ポリエチレン(HDPE:密度0.955g/cm、融点135℃)80質量%からなる第1のポリオレフィン樹脂100質量部に、酸化防止剤テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタン0.2質量部を配合し、混合物を調製した。
得られた混合物25質量部を、強混練タイプの二軸押出機(内径58mm、L/D=42)に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン[35cst(40℃)]75質量部を供給し、210℃及び250rpmの条件で溶融混練して、第1のポリオレフィン溶液を調製した。
(2)第2のポリオレフィン溶液の調製
Mwが2.0×10の超高分子量ポリエチレン(UHMwPE)40質量%及びMwが5.6×10の高密度ポリチレン(HDPE:密度0.955g/cm)60質量%からなる第2のポリオレフィン樹脂100質量部に、酸化防止剤テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタン0.2質量部を配合し、混合物を調製した。
得られた混合物25質量部を、上記と同タイプの別の二軸押出機に投入し、二軸押出機のサイドフィーダーから流動パラフィン[35cSt(40℃)]75質量部を供給し、上記と同条件で溶融混練して、第2のポリオレフィン溶液を調製した。
(3)押出
第一及び第2のポリオレフィン溶液を、各二軸押出機から三層用Tダイに供給し、第1のポリオレフィン溶液/第2のポリオレフィン溶液/第1のポリオレフィン溶液の層厚比が10/80/10となるように押し出した。押出し成形体を、30℃に温調した冷却ロールで引き取り速度2m/minで、引き取りながら冷却し、ゲル状三層シートを形成した。
(4)第1の延伸、成膜溶剤の除去、乾燥
ゲル状三層シートを、テンター延伸機により116℃でMD方向及びTD方向ともに5倍に同時二軸延伸(第1の延伸)した。延伸ゲル状三層シートを20cm×20cmのアルミニウム枠板に固定し、25℃に温調した塩化メチレン浴中に浸漬し、100rpmで3分間揺動しながら流動パラフィンを除去し、室温で風乾した。
(5)第2の延伸、熱固定
乾燥膜を、バッチ式延伸機を用いて、126℃でTD方向に1.4倍に延伸(第2の延伸)した。次に、この膜をテンター法により、126℃で熱固定処理を行った。
(6)活性層の形成
高分子PVdF‐HFP(ポリフッ化ビニリデン‐ヘキサフロロプロピレン共重合体、PVdF:HFP=80:20(質量比)、重量平均分子量1.5×10)をアセトンに添加し、50℃で約12時間以上溶解させて高分子溶液を製造した。無機物粒子としてAl粉末を高分子:無機物粒子=17:83の質量比になるように製造しておいた高分子溶液に添加し、12時間以上ボールミル法を用いて無機物粒子を破砕及び分散することでスラリーを製造した。このように製造したスラリーの無機物粒子の粒径は平均600nmであった。
このように製造したスラリーに(5)で製造された三層微多孔質膜を浸漬させてディップコーティングした後、ワイヤサイズがそれぞれ0.5mmのワイヤバーを使用して両面に塗布されたスラリーコーティング層の厚さをそれぞれ調節し、溶媒を乾燥させた。ポリオレフィン多孔質基材の両面にそれぞれ形成された活性層の厚さは5.0μmであった。
以上のようにして作製した活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜の各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表1および3に記載した。
【0092】
(実施例2)
実施例1の(2)第2のポリオレフィン溶液の調製において、実施例1の混合物の代わりに、Mwが2.0×10の超高分子量ポリエチレン(UHMwPE)17.5質量%及びMwが3.0×10の高密度ポリエチレン(HDPE:密度0.955g/cm)57.5質量%、MFRが135g/10minで、融点が124℃の直鎖状低密度ポリエチレンであるポリ(エチレン−co−ヘキセン)共重合体25質量%からなる第2のポリオレフィン樹脂100質量部に、酸化防止剤テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタン0.2質量部を配合し、混合物を調製した。
上記以外は実施例1と同様にして製造し、活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜の各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表1、2及び3に記載した。
【0093】
(実施例3)
実施例1の(2)第2のポリオレフィン溶液の調製において、実施例1の混合物の代わりに、Mwが2.0×10の超高分子量ポリエチレン(UHMwPE)16質量%及びMwが3.0×10の高密度ポリエチレン(HDPE:密度0.955g/cm)66質量%、融解熱が96J/gのポリプロピレン18質量%からなる第2のポリオレフィン樹脂100質量部に、酸化防止剤テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタン0.2質量部を配合し、混合物を調製した。
上記以外は実施例1と同様にして製造し、活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜の各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表1および3に記載した。
【0094】
(実施例4)
実施例2の活性層の形成において、高分子PVdF‐HFPの代わりに高分子PVdF-CTFE(ポリフッ化ビニリデン‐クロロトリフルオロエチレン共重合体、PVdF:CTFE=96:4(モル比)、重量平均分子量1.2×10)を用いた。
上記以外は実施例2と同様にして製造し、活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜の各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表1に記載した。
【0095】
(実施例5)
実施例2の活性層の形成において、高分子:無機物粒子の質量比が9:91になるよう調整した。
上記以外は実施例2と同様にして製造し、活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜の各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表1に記載した。
【0096】
(実施例6)
実施例2の活性層の形成において、高分子として、高分子PVdF‐HFP(ポリフッ化ビニリデン‐ヘキサフロロプロピレン共重合体、PVdF:HFP=80:20(質量比)、重量平均分子量1.5×10)及びシアノエチルプルランを10:2の質量比でアセトンに添加した。
上記以外は実施例2と同様にして製造し、活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜の各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表1に記載した。
【0097】
(実施例7)
実施例2の活性層の形成において、高分子として、PVdF‐HFP(ポリフッ化ビニリデン‐ヘキサフロロプロピレン共重合体、PVdF:HFP=80:20(質量比)、重量平均分子量1.5×10)及びシアノエチルポリビニルアルコールを10:2の質量比でアセトンに添加した。
上記以外は実施例2と同様にして製造し、活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜の各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表1に記載した。
【0098】
(実施例8)
実施例2の活性層の形成において、高分子PVdF‐HFP(ポリフッ化ビニリデン‐ヘキサフロロプロピレン共重合体、PVdF:HFP=80:20(質量比)、重量平均分子量1.5×10)の代わりに、高分子PVdF‐HFP(ポリフッ化ビニリデン‐ヘキサフロロプロピレン共重合体、PVdF:HFP=80:20(質量比)、重量平均分子量0.5×10)を用いた。
上記以外は実施例2と同様にして製造し、活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜の各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表1に記載した。
【0099】
(実施例9)
実施例2の活性層の形成において、無機物粒子としてAl粉末のかわりにAlO(OH)粉末(ベーマイト、平均粒径:1.0μm)を用いた。
上記以外は実施例2と同様にして製造し、活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜の各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表1に記載した。
【0100】
(実施例10)
実施例2の活性層の形成において、無機物粒子としてAl粉末の代わりにBaTiO粉末(チタン酸バリウム、平均粒径:0.6μm)を用いた。
上記以外は実施例2と同様にして製造し、活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜の各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表1に記載した。
【0101】
(実施例11)
実施例2の(1)第1のポリオレフィン溶液の調製において、混合物として、Mwが1.2×10のポリプロピレン(PP:融点162℃)16質量%及びMwが0.74×10の高密度ポリチレン(HDPE:密度0.955g/cm、融点135℃)64質量%、シリカ粉末(平均粒径:15nm)20質量%からなる第1のポリオレフィン樹脂100質量部に、酸化防止剤テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタン0.2質量部を配合して用いた。上記以外は実施例2と同様にして製造し、活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜の各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表1に記載した。
【0102】
(比較例1)
実施例1において、活性層の形成を行わないこと以外は、実施例1と同様にして製造し、ポリオレフィン三層微多孔質膜の各成分の配合割合、製造条件、 評価結果等を表1に記載した。
【0103】
(比較例2)
実施例1の(1)第1のポリオレフィン溶液の調製において、Mwが1.2×10のポリプロピレン(PP:融点162℃)20質量%及びMwが0.74×10の高密度ポリエチレン(HDPE:密度0.955g/cm、融点135℃)80質量%からなる第1のポリオレフィン樹脂100質量部の代わりに、Mwが0.74×10の高密度ポリチレン(HDPE:密度0.955g/cm、融点135℃)からなる第1のポリオレフィン樹脂100質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして製造し、ポリオレフィン三層微多孔質膜の各成分の配合割合、製造条件、 評価結果等を表1に記載した。
(比較例3)
実施例1の(1)第1のポリオレフィン溶液の調製において、Mwが1.2×10のポリプロピレン(PP:融点162℃)20質量%及びMwが0.74×10の高密度ポリエチレン(HDPE:密度0.955g/cm、融点135℃)80質量%からなる第1のポリオレフィン樹脂100質量部の代わりに、Mwが1.2×10のポリプロピレン(PP:融点162℃)からなる第1のポリオレフィン樹脂100質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして製造し、ポリオレフィン三層微多孔質膜の各成分の配合割合、製造条件、 評価結果等を表1に記載した。
(比較例4)
実施例1の(6)活性層の形成において、PVdF‐HFPの代わりにPVdF(ポリフッ化ビニリデン、重量平均分子量0.35×10)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして製造し、ポリオレフィン三層微多孔質膜の各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表1に記載した。
【0104】
(実施例12)
実施例2の第1のポリオレフィン溶液の調製において、Mwが2.0×10のポリプロピレン(PP:融点162℃)20質量%及びMwが0.56×10の高密度ポリエチレン(HDPE:密度0.955g/cm、融点135℃)80質量%からなる第1のポリオレフィン樹脂100質量部に、酸化防止剤テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタン0.2質量部を配合し、混合物を調製した。
上記以外は実施例2と同様にして製造し、活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜の各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表2に記載した。
【0105】
(実施例13)
実施例2の第1のポリオレフィン溶液の調製において、Mwが0.6×10のポリプロピレン(PP:融点162℃)20質量%及びMwが0.86×10の高密度ポリエチレン(HDPE:密度0.955g/cm、融点135℃)80質量%からなる第1のポリオレフィン樹脂100質量部に、酸化防止剤テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタン0.2質量部を配合し、混合物を調製した。
上記以外は実施例2と同様にして製造し、活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜の各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表2に記載した。
【0106】
(実施例14)
実施例1の(1)第1のポリオレフィン溶液の調製において、Mwが1.2×10のポリプロピレン(PP:融点162℃)20質量%及びMwが0.74×10の高密度ポリエチレン(HDPE:密度0.955g/cm、融点135℃)55質量%、MFRが135g/10minで、融点が124℃の直鎖状低密度ポリエチレンであるポリ(エチレン−co−ヘキセン)共重合体25重量%からなる第1のポリオレフィン樹脂100質量部に、酸化防止剤テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタン0.2質量部を配合し、混合物を調製した。
上記以外は実施例1と同様にして製造し、活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜の各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表3に記載した。
【0107】
(実施例15)
実施例1の(1)第1のポリオレフィン溶液の調製において、Mwが0.74×10の高密度ポリチレン(HDPE:密度0.955g/cm、融点135℃)82質量%、融解熱が96J/gのポリプロピレン18質量%からなる第1のポリオレフィン樹脂100質量部に、酸化防止剤テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタン0.2質量部を配合し、混合物を調製した。
上記以外は実施例1と同様にして製造し、活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜の各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表3に記載した。
【0108】
(実施例16)
実施例1の(1)第1のポリオレフィン溶液の調製において、Mwが1.2×10のポリプロピレン(PP:融点162℃)35質量%及びMwが0.74×10の高密度ポリエチレン(HDPE:密度0.955g/cm、融点135℃)65質量%からなる第1のポリオレフィン樹脂100質量部とした。上記以外は実施例1と同様にして製造し、活性層が形成されたポリオレフィン三層微多孔質膜の各成分の配合割合、製造条件、評価結果等を表1に記載した。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
【表3】
【符号の説明】
【0112】
10 ピン
11 ピンI
12 ピンII
13 捲取サンプル
20 錘
21 丸棒
22 試料
図1
図2