【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1に記載のセンサによって解決される。
【0006】
固定構造体と、固定構造体に対して相対移動が可能な可動構造体と、磁界を発生する磁石と、その位置(第1磁気感応素子の位置)で磁界を測定するように構成された第1磁気感応素子とを有し、磁石は固定構造体に取り付けられ、第1磁気感応素子は可動構造体に取り付けられる、あるいは磁石が可動構造体に取り付けられ、第1磁気感応素子が固定構造体に取り付けられているセンサが提案されている。
【0007】
センサは、マイクロデバイス、特にMEMSデバイス(Micro Electro Mechanical Systems)であってよい。センサは例えば圧力センサ、加速度センサ、あるいは回転速度センサであってよい。センサはまた音波を電気信号に変換するためのマイクロフォンに組み込まれ、ここで、音波は振動板として構成された可動構造体を変位させる。
【0008】
磁石または磁気感応素子のどちらかが可動構造体上に取り付けられ、さらに他の部品のそれぞれは固定構造体上に取り付けられることによって、磁石と磁気感応素子の相対的な位置から可動構造体の固定構造体に対する相対的な位置を推定してもよい。特に、可動構造体の固定構造体に対する相対移動が磁石の第1磁気感応素子への相応な相対移動をもたらすように、磁石と第1磁気感応素子は可動構造体や固定構造体と接続してもよい。従って、第1磁気感応素子の位置での磁界は、可動構造体の固定構造体に対する相対的な位置に応じて変化する。
【0009】
センサのこの構成は、磁気感応素子と磁石の配置に関して高い設計の自由度を提供する。
【0010】
静電容量センサの場合、感度および信号対雑音比が容量構造のサイズに大きく左右される。高い測定精度をもつ静電容量センサは、従ってある一定の最小サイズが必要である。磁気感応素子と磁石が、測定精度を低下させることなく非常に小さくできるので、前述のセンサはこの不都合克服する。前述のセンサはまた非常に高度な小型化が可能であるため、非常に小さな空間要件のみを有する。
【0011】
磁気感応素子は、磁界の強度および/またはその位置で磁界の方向を測定するように構成されてもよい。このため、磁気感応素子は、例えばホール効果、または磁気抵抗効果を利用することができる。
【0012】
外部磁界を印加することにより、材料の電気抵抗が変化するすべての作用を磁気抵抗効果という。これには、特に、異方性磁気抵抗効果(AMR効果)、巨大磁気抵抗効果(GMR効果)、コロサル磁気抵抗効果(CMR効果)、トンネル磁気抵抗効果(TMR効果)、またはプレーナーホール効果が含まれる。これら磁気抵抗効果を用いて、磁気感応素子は磁界強度および/またはその位置で磁界の方向を検出することができる。
【0013】
センサは、磁気感応素子の位置で磁界を測定することで可動構造体の固定構造体に対する相対的な位置を検出するように構成されてもよい。この測定原理は、可動構造体が固定構造体に対して相対移動するとき、どんな種類のセンサにも用いることができるという大きな利点を有する。この測定原理は例えば、圧力、動作、加速度、または回転速度を測定するセンサで使用されてもよい。
【0014】
上述の測定原理を用いるこれらのセンサのそれぞれはまた、同様の信号処理と組み合わされてもよい。異なるセンサにこの測定原理を適用可能なので、測定原理は異なるセンサに均一の信号変換の原理を使用することを可能にする。
【0015】
地磁気の測定に基づき絶対位置を測定するセンサもまた磁気感応素子を有しているので、この種類のセンサにも同じ信号処理回路を組み込むことができる。
【0016】
センサは、その位置(第2磁気感応素子の位置)で磁界を測定するように構成された第2磁気感応素子を少なくとも有してもよい。少なくとも第2磁気感応素子を適用することによって、可動構造体の固定構造体に対する相対的位置は明確に測定されてもよい。2つの磁気感応素子と磁石のしかるべき適当な配置によって、相対的位置はすべての3つの空間方向において検出されてもよい。別の実施例では、相対的位置は少なくとも2つの空間方向において明確に測定されてもよい。
【0017】
特に第1および第2磁気感応素子は両方とも可動構造体上に取り付られてもよく、また両方とも固定構造体上に取り付けられてもよい。磁石はその後それぞれ別の構造体に取り付けられてもよい。この場合、磁石と2つの磁気感応素子の相対的位置から可動構造体の固定構造体に対する相対的な位置を推定してもよい。特に、固定構造体に対する可動構造体の相対移動が2つの磁気感応素子に対する磁石の相対移動につながるように、磁石と2つの磁気感応素子は可動構造体と固定構造体に接続されてもよい。それに応じて、第1磁気感応素子の位置における磁界と第2磁気感応素子の位置における磁界は、可動構造体の固定構造体に対する相対位置によって変化する。
【0018】
いくつかの実施形態ではセンサは4つの磁気感応素子を有する。これらは、構造体によって測定されたデータの読み出しおよび評価が特に容易に行うことが可能となるホイートストーンブリッジの手段によって相互接続されてもよい。4つの磁気感応素子を可動構造体上、あるいは固定構造体上のいずれかに配置してもよい。
【0019】
第1および第2磁気感応素子は一平面内に配置されてもよい。このとき、2つの磁気感応素子は両方とも固定構造体上に配置されてもよいし、両方とも可動構造体上に配置されてもよい。平面は、特に可動構造体が非変位状態で延在する面に対して平行であってもよい。可動構造体は時として振動板であるので、振動板が非変位状態で平面内にあり、ここで第1および第2磁気感応素子は、振動板のように同一平面内に配置されてもよいし、振動板によって限定された平面に対して平行な平面内にあってもよい。
【0020】
平面内に、第1および第2磁気感応素子と並んで別の磁気感応素子を配置してもよい。平面内の第1および第2磁気感応素子の配置は、少なくとも平面内での可動構造体の位置を正確に測定することを可能にする。
【0021】
また、可動構造体が非変位状態にあるとき、磁石は平面の外に配置されてもよい。この場合、センサはすべての3つの空間方向において可動構造体の位置を明確に検出できる。
【0022】
センサはまた、磁石が平面の第1の面上または平面内に常にあるように、可動構造体の移動能力を制限するストッパを有してもよい。ストッパの代わりにセンサは、磁石が平面の第1の面上または平面内に常にあることで、可動構造体の移動能力を制限する、別に構成された構造を有してもよい。
【0023】
このようにして磁石が平面の第2の面上に移動することを防ぐことができる。従って、位置決めの際曖昧な状態にならないようにできる。第1の面は、平面の上面または下面であってよい。平面の上面は、磁石または可動構造体上の磁気感応素子がこの面上に配置されることによって定義される。また平面の下面は、磁気感応素子または磁石のない可動構造体の側に相当する。
【0024】
またセンサは、その位置(追加の磁気感応素子の位置)で磁界を測定するように構成された追加の磁気感応素子を有してもよく、追加の磁気感応素子は第1および第2磁気感応素子が配置された平面の外に配置される。このようにして、可動構造体の移動能力を制限する必要性なしに、可動構造体の固定構造体に対する相対的な位置はすべての3つの空間方向において明確に測定される。従って、より大きな測定範囲をカバーすることができる。
【0025】
可動構造は振動板あるいはサイスミックマスであってもよい。振動板は例えば、平面内で振動板を囲むフレームに対して相対移動してもよい。ここで、フレームは固定構造体を形成する。サイスミックマスはシリコンマイクロ構造体からなってもよい。
【0026】
センサは、可動構造体に振動を励起するように構成されてもよい。可動構造体に振動を励起させることで、センサを使って回転速度を測定することができる。
【0027】
可動構造体の振動励起には様々な方法が考えられる。可動構造体は梁につるされたサイスミックマスであってもよく、サイスミックマスは曲げ振動および/またはねじり振動をおこしてもよい。可動構造体は、電極として形成されても、あるいは電極構造体と接続されてもよく、電極構造体を介して静電的に振動を励起してもよい。可動構造体は、電極として形成されても、あるいは電極構造体を有してもよく、さらに圧電体膜を有し、電極構造体と圧電体膜を使って振動を励起してもよい。
【0028】
磁石は構造化された薄膜永久磁石であってもよい。磁石は一定の長さと一定の幅を有し、長さの幅に対する比率は1ではないこととしてもよい。この比率はまた、磁石のアスペクト比と呼ばれる。従って、磁石は棒状、あるいは楕円形状に形成されてもよい。そのような磁石は、アスペクト比が1の磁石の磁界よりも僅かな対象度の磁界を発生させるので、磁気感応素子の磁石に対する相対的な位置の測定はより簡単に行われる。
【0029】
磁石は通電コイルを有してもよい。従って、オン・オフできる電磁石であってもよい。
【0030】
さらにセンサは、固定構造体に対して相対移動可能な第2可動構造体を有してもよい。センサはさらに、別の磁界を発生する別の磁石、およびその位置(追加の磁気感応素子の位置)で別の磁界を測定するように構成された追加の磁気感応素子を有してもよい。別の磁石は固定構造体に、追加の磁気感応素子は第2可動構造体に取り付けられてもよいし、別の磁石は第2可動構造体に、追加の磁気感応素子は固定構造体に取り付けられてもよい。
【0031】
このようにして2つの可動構造体が互いに組み合わさることで、複数の測定値を同時に検出することができる。例えば第1可動構造体、第1磁気感応素子と第1磁石を使って加速度を測定し、第2可動構造体、追加の磁気感応素子と別の磁石を使って回転速度を測定することができる。
【0032】
その他に、さらに多くの磁気感応素子が第2可動構造体に取り付けられてもよい。特に、第2可動構造体と固定構造体に関して、ここで第1可動構造体と固定構造体との関連で開示されているすべての実施形態が可能である。
【0033】
高さまたは絶対位置も、磁石と磁気感応素子の相対的位置が測定されたセンサで測定してもよい。
【0034】
このようにして決定されたすべての自由度はそれぞれ、磁石の磁気感応素子に対する相対的位置によって測定されるので、同一の読み出し回路を使うことができる。そのため、その後の信号処理を簡略化することができる。特にすべての測定用に同一の信号経路を使うことができる。その結果、ASIC(application specific integrated circuit)の設計費用が低減される。さらにASICの機能テストも明らかに簡略化される。
【0035】
電極構造体は固定構造体や第2可動構造体に形成され、第2可動構造体に振動を励起するように構成されてもよい。さらに、固定構造体と第2可動構造体が導電性材料からなり、電極構造体自体を形成する、あるいは電極構造体が固定構造体上に第2可動構造体から取り付けられてもよい。
【0036】
従って、第2可動構造体は回転速度の測定に使用されてもよい。第1可動構造体は動作の測定に使用されてもよい。
【0037】
これにより、6つの自由度の測定に適したセンサがもたらされる。
【0038】
さらにセンサは、地磁気の方向を測定する構造、および/または圧力を測定する構造を有してもよい。地磁気の測定によって、絶対位置を測定することができる。代替的、あるいは付加的に、地磁気の測定によって、センサの方向付け、いわゆるヘッディングの測定のために使用することができる地磁気への方向付けがなされてもよい。これにより、センサはさらに3つの自由度を決定することができる。圧力の測定によって、高さを測定できるので、センサはさらに自由度を検出することができる。それゆえここで説明されたセンサは全部で10の自由度を測定することができる。これらの自由度すべては、磁石の磁気感応素子に対する相対的位置によって決定される。ここで、磁石あるいは磁気感応素子のいずれか一方が固定構造体上に、磁石と磁気感応素子から選択されたもう一方の要素が可動構造体上に配置される。これにより、各自由度の測定に同一の信号処理を使用することができる。
【0039】
さらに地磁気は、慣性センサや回転速度センサの測定の際、障害となりうる。
別々に測定されることで、この障害は修正され、また他の測定の精度が向上する。
【0040】
また上記複数のセンサはセンサ装置を形成するために組み合わせてもよい。例えば以下のセンサのうちの少なくとも2つが互いに組み合わされる。3つの自由度で加速度を測定する第1のセンサ、3つの自由度で回転速度を測定する第2のセンサ、3つの自由度で地磁気を測定する第3のセンサ、および圧力測定手段によって高さを測定する第4のセンサから選ばれる。これらのセンサそれぞれは磁気感応素子を有してもよい。特に第1、第2および第4のセンサは磁気感応素子と磁石を有してもよい。磁気感応素子と磁石のうち、一方は可動構造体上に、他方は固定構造体に配置される。第3のセンサは同様に磁気感応素子を有してもよい。
【0041】
さらにこのセンサ装置で最大7種類の可動構造体と3つの静的な構造体を地磁気測定用に互いに組み合わせてもよく、例えば単一のチップ上に集積されてもよい。特に、7つの可動構造体のうちの3つはそれぞれ加速度の座標を測定し、7つの可動構造体のうちの他の3つの構造体はそれぞれ回転速度の座標を測定し、7つ目の可動構造体は圧力とそれに伴う高さを測定し、3つの静的構造体は地磁気とそれに伴う絶対位置を測定するようにしてもよい。
【0042】
可動構造体の、それぞれに関連する固定構造体に対する相対的位置は磁気感応素子を用いて測定することができ、また地磁気も磁気感応素子を用いて測定することができるので、チップはすべてのセンサに同じ信号変換の原理を使用する均一な読み出し回路と組み合わせることができる。
【0043】
さらに、可動構造体の変位が複数の磁気感応素子によって異なる空間方向内で検出されることで、可動構造体の数を減らしてもよい。このようにしてさらなる小型化が可能である。
【0044】
一実施形態では、可動構造体は非変位状態で平面内に広がる。ここで磁気感応素子と磁石から選択された一方が平面内に配置され、磁気感応素子と磁石から選択されたもう一方は平面の外に配置される。何の力も可動構造体に作用していない状態を、非変位状態と呼ぶ。非変位状態は可動構造体のアイドル状態であってもよい。
【0045】
以下、本発明は図面を参照して詳細に説明される。