特許第6367458号(P6367458)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367458
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】センサ
(51)【国際特許分類】
   G01L 9/14 20060101AFI20180723BHJP
   G01P 15/105 20060101ALI20180723BHJP
   G01C 19/5762 20120101ALI20180723BHJP
【FI】
   G01L9/14
   G01P15/105
   G01C19/5762
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-500819(P2017-500819)
(86)(22)【出願日】2015年7月6日
(65)【公表番号】特表2017-519995(P2017-519995A)
(43)【公表日】2017年7月20日
(86)【国際出願番号】EP2015065358
(87)【国際公開番号】WO2016005325
(87)【国際公開日】20160114
【審査請求日】2017年3月6日
(31)【優先権主張番号】102014109701.7
(32)【優先日】2014年7月10日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】エプコス アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】EPCOS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】オストリック、ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】シュライバー−プリルヴィッツ、ウォルフガング
【審査官】 公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−224486(JP,A)
【文献】 特開平07−301536(JP,A)
【文献】 特開平08−327483(JP,A)
【文献】 特開2007−093448(JP,A)
【文献】 特開2009−128164(JP,A)
【文献】 特開2012−185152(JP,A)
【文献】 特開2009−041951(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0209437(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/12
G01L 9/14
G01P 15/105
G01C 19/5762
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサは、
固定構造体、
前記固定構造体に対して相対的に移動可能な可動構造体、
それぞれが磁界を発生する複数の石、および、
第1磁気感応素子の位置で前記磁界を測定するように構成された当該第1磁気感応素子を含む複数の磁気感応素子を有し、
前記複数の磁石のうち1つの石は前記固定構造体に取り付けられ、前記第1磁気感応素子は前記可動構造体に取り付けられている、あるいは前記複数の磁石のうち1つの石は前記可動構造体に取り付けられ、前記第1磁気感応素子は前記固定構造体に取り付けられており
前記センサは、10の自由度を決定するよう構成されており、
全ての前記自由度は、前記複数の磁気感応素子のうち1つの磁気感応素子に対する前記複数の磁石のうち1つの磁石の相対位置によって測定され、
前記磁石又は前記磁気感応素子の一方は、前記固定構造体に設けられ、
前記磁石又は前記磁気感応素子の他方は、前記可動構造体に設けられる、
ことを特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記可動構造体の前記固定構造体に対する相対的位置を、前記磁気感応素子の位置で前記磁界を測定することで検出するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
第2磁気感応素子位置で前記磁界を測定するように構成され、前記複数の磁気感応素子に含まれる当該第2磁気感応素子を少なくとも有する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記第1および前記第2磁気感応素子が一つの平面内に配置されている、
ことを特徴とする請求項3に記載のセンサ。
【請求項5】
前記可動構造体が非変位状態にあるとき、前記磁石は前記平面の外に配置されている、
ことを特徴とする請求項4に記載のセンサ。
【請求項6】
前記磁石が前記平面の第1の面上または前記平面内に常にあるように、前記可動構造体の移動能力を制限するストッパを有する、
ことを特徴とする請求項4または5に記載のセンサ。
【請求項7】
別の磁気感応素子位置で前記磁界を測定するように構成され、前記複数の磁気感応素子に含まれる当該別の磁気感応素子を有し、
前記別の磁気感応素子は前記平面の外に配置されている、
ことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項8】
前記可動構造体は振動板またはサイスミックマスである、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項9】
前記可動構造体に振動を励起するように構成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項10】
前記磁石は構造化された薄膜永久磁石である、
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項11】
前記磁石は一定の長さと一定の幅を有し、長さの幅に対する比率は1ではない、
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項12】
前記磁石は通電コイルを有する、
ことを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項13】
前記固定構造体に対して相対的に移動可能な第2可動構造体、別の磁界を発生する別の磁石、および追加の磁気感応素子の位置で前記別の磁界を測定するように構成された当該追加の磁気感応素子を有し、
前記別の磁石は前記固定構造体に取り付けられ、前記追加の磁気感応素子は前記第2可動構造体に取り付けられている、あるいは前記別の磁石は前記第2可動構造体に取り付けられ、前記追加の磁気感応素子は前記固定構造体に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項14】
前記第2可動構造体に振動を励起するように構成されている電極構造体が前記固定構造体および前記第2可動構造体に形成されている、
ことを特徴とする請求項13に記載のセンサ。
【請求項15】
地磁気の方向の測定用の構造体、および/または圧力測定用の構造体を更に有する、
ことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセンサに関し、特に、固定構造体に対する可動構造体の変位に基づいて測定値が決まるセンサに関する。そのような測定原理は、例えばモーションセンサ、圧力センサ、または回転速度センサに組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
多くの用途において、例えば慣性センサでは3から6の自由度(degrees of freedom = DOF)を規定し、モーションセンサでは6から10の自由度を規定するというように、測定用センサは異なるセンササイズに互いに組み合わせられる。これらのセンサはそれぞれ異なる信号変換の原理を有するので、これらのセンサはシステム設計や信号処理において複雑さを増大させる。従って、異なるセンサのタイプにとって均一な信号変換が可能になることが望ましい。
【0003】
さらに、多くの技術分野における小型化が進むことで、センサもまた測定精度が低下することなく小型化することが常に求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、少なくとも1つの上述の利点を有する改良センサを示すことである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、請求項1に記載のセンサによって解決される。
【0006】
固定構造体と、固定構造体に対して相対移動が可能な可動構造体と、磁界を発生する磁石と、その位置(第1磁気感応素子の位置)で磁界を測定するように構成された第1磁気感応素子とを有し、磁石は固定構造体に取り付けられ、第1磁気感応素子は可動構造体に取り付けられる、あるいは磁石が可動構造体に取り付けられ、第1磁気感応素子が固定構造体に取り付けられているセンサが提案されている。
【0007】
センサは、マイクロデバイス、特にMEMSデバイス(Micro Electro Mechanical Systems)であってよい。センサは例えば圧力センサ、加速度センサ、あるいは回転速度センサであってよい。センサはまた音波を電気信号に変換するためのマイクロフォンに組み込まれ、ここで、音波は振動板として構成された可動構造体を変位させる。
【0008】
磁石または磁気感応素子のどちらかが可動構造体上に取り付けられ、さらに他の部品のそれぞれは固定構造体上に取り付けられることによって、磁石と磁気感応素子の相対的な位置から可動構造体の固定構造体に対する相対的な位置を推定してもよい。特に、可動構造体の固定構造体に対する相対移動が磁石の第1磁気感応素子への相応な相対移動をもたらすように、磁石と第1磁気感応素子は可動構造体や固定構造体と接続してもよい。従って、第1磁気感応素子の位置での磁界は、可動構造体の固定構造体に対する相対的な位置に応じて変化する。
【0009】
センサのこの構成は、磁気感応素子と磁石の配置に関して高い設計の自由度を提供する。
【0010】
静電容量センサの場合、感度および信号対雑音比が容量構造のサイズに大きく左右される。高い測定精度をもつ静電容量センサは、従ってある一定の最小サイズが必要である。磁気感応素子と磁石が、測定精度を低下させることなく非常に小さくできるので、前述のセンサはこの不都合克服する。前述のセンサはまた非常に高度な小型化が可能であるため、非常に小さな空間要件のみを有する。
【0011】
磁気感応素子は、磁界の強度および/またはその位置で磁界の方向を測定するように構成されてもよい。このため、磁気感応素子は、例えばホール効果、または磁気抵抗効果を利用することができる。
【0012】
外部磁界を印加することにより、材料の電気抵抗が変化するすべての作用を磁気抵抗効果という。これには、特に、異方性磁気抵抗効果(AMR効果)、巨大磁気抵抗効果(GMR効果)、コロサル磁気抵抗効果(CMR効果)、トンネル磁気抵抗効果(TMR効果)、またはプレーナーホール効果が含まれる。これら磁気抵抗効果を用いて、磁気感応素子は磁界強度および/またはその位置で磁界の方向を検出することができる。
【0013】
センサは、磁気感応素子の位置で磁界を測定することで可動構造体の固定構造体に対する相対的な位置を検出するように構成されてもよい。この測定原理は、可動構造体が固定構造体に対して相対移動するとき、どんな種類のセンサにも用いることができるという大きな利点を有する。この測定原理は例えば、圧力、動作、加速度、または回転速度を測定するセンサで使用されてもよい。
【0014】
上述の測定原理を用いるこれらのセンサのそれぞれはまた、同様の信号処理と組み合わされてもよい。異なるセンサにこの測定原理を適用可能なので、測定原理は異なるセンサに均一の信号変換の原理を使用することを可能にする。
【0015】
地磁気の測定に基づき絶対位置を測定するセンサもまた磁気感応素子を有しているので、この種類のセンサにも同じ信号処理回路を組み込むことができる。
【0016】
センサは、その位置(第2磁気感応素子の位置)で磁界を測定するように構成された第2磁気感応素子を少なくとも有してもよい。少なくとも第2磁気感応素子を適用することによって、可動構造体の固定構造体に対する相対的位置は明確に測定されてもよい。2つの磁気感応素子と磁石のしかるべき適当な配置によって、相対的位置はすべての3つの空間方向において検出されてもよい。別の実施例では、相対的位置は少なくとも2つの空間方向において明確に測定されてもよい。
【0017】
特に第1および第2磁気感応素子は両方とも可動構造体上に取り付られてもよく、また両方とも固定構造体上に取り付けられてもよい。磁石はその後それぞれ別の構造体に取り付けられてもよい。この場合、磁石と2つの磁気感応素子の相対的位置から可動構造体の固定構造体に対する相対的な位置を推定してもよい。特に、固定構造体に対する可動構造体の相対移動が2つの磁気感応素子に対する磁石の相対移動につながるように、磁石と2つの磁気感応素子は可動構造体と固定構造体に接続されてもよい。それに応じて、第1磁気感応素子の位置における磁界と第2磁気感応素子の位置における磁界は、可動構造体の固定構造体に対する相対位置によって変化する。
【0018】
いくつかの実施形態ではセンサは4つの磁気感応素子を有する。これらは、構造体によって測定されたデータの読み出しおよび評価が特に容易に行うことが可能となるホイートストーンブリッジの手段によって相互接続されてもよい。4つの磁気感応素子を可動構造体上、あるいは固定構造体上のいずれかに配置してもよい。
【0019】
第1および第2磁気感応素子は一平面内に配置されてもよい。このとき、2つの磁気感応素子は両方とも固定構造体上に配置されてもよいし、両方とも可動構造体上に配置されてもよい。平面は、特に可動構造体が非変位状態で延在する面に対して平行であってもよい。可動構造体は時として振動板であるので、振動板が非変位状態で平面内にあり、ここで第1および第2磁気感応素子は、振動板のように同一平面内に配置されてもよいし、振動板によって限定された平面に対して平行な平面内にあってもよい。
【0020】
平面内に、第1および第2磁気感応素子と並んで別の磁気感応素子を配置してもよい。平面内の第1および第2磁気感応素子の配置は、少なくとも平面内での可動構造体の位置を正確に測定することを可能にする。
【0021】
また、可動構造体が非変位状態にあるとき、磁石は平面の外に配置されてもよい。この場合、センサはすべての3つの空間方向において可動構造体の位置を明確に検出できる。
【0022】
センサはまた、磁石が平面の第1の面上または平面内に常にあるように、可動構造体の移動能力を制限するストッパを有してもよい。ストッパの代わりにセンサは、磁石が平面の第1の面上または平面内に常にあることで、可動構造体の移動能力を制限する、別に構成された構造を有してもよい。
【0023】
このようにして磁石が平面の第2の面上に移動することを防ぐことができる。従って、位置決めの際曖昧な状態にならないようにできる。第1の面は、平面の上面または下面であってよい。平面の上面は、磁石または可動構造体上の磁気感応素子がこの面上に配置されることによって定義される。また平面の下面は、磁気感応素子または磁石のない可動構造体の側に相当する。
【0024】
またセンサは、その位置(追加の磁気感応素子の位置)で磁界を測定するように構成された追加の磁気感応素子を有してもよく、追加の磁気感応素子は第1および第2磁気感応素子が配置された平面の外に配置される。このようにして、可動構造体の移動能力を制限する必要性なしに、可動構造体の固定構造体に対する相対的な位置はすべての3つの空間方向において明確に測定される。従って、より大きな測定範囲をカバーすることができる。
【0025】
可動構造は振動板あるいはサイスミックマスであってもよい。振動板は例えば、平面内で振動板を囲むフレームに対して相対移動してもよい。ここで、フレームは固定構造体を形成する。サイスミックマスはシリコンマイクロ構造体からなってもよい。
【0026】
センサは、可動構造体に振動を励起するように構成されてもよい。可動構造体に振動を励起させることで、センサを使って回転速度を測定することができる。
【0027】
可動構造体の振動励起には様々な方法が考えられる。可動構造体は梁につるされたサイスミックマスであってもよく、サイスミックマスは曲げ振動および/またはねじり振動をおこしてもよい。可動構造体は、電極として形成されても、あるいは電極構造体と接続されてもよく、電極構造体を介して静電的に振動を励起してもよい。可動構造体は、電極として形成されても、あるいは電極構造体を有してもよく、さらに圧電体膜を有し、電極構造体と圧電体膜を使って振動を励起してもよい。
【0028】
磁石は構造化された薄膜永久磁石であってもよい。磁石は一定の長さと一定の幅を有し、長さの幅に対する比率は1ではないこととしてもよい。この比率はまた、磁石のアスペクト比と呼ばれる。従って、磁石は棒状、あるいは楕円形状に形成されてもよい。そのような磁石は、アスペクト比が1の磁石の磁界よりも僅かな対象度の磁界を発生させるので、磁気感応素子の磁石に対する相対的な位置の測定はより簡単に行われる。
【0029】
磁石は通電コイルを有してもよい。従って、オン・オフできる電磁石であってもよい。
【0030】
さらにセンサは、固定構造体に対して相対移動可能な第2可動構造体を有してもよい。センサはさらに、別の磁界を発生する別の磁石、およびその位置(追加の磁気感応素子の位置)で別の磁界を測定するように構成された追加の磁気感応素子を有してもよい。別の磁石は固定構造体に、追加の磁気感応素子は第2可動構造体に取り付けられてもよいし、別の磁石は第2可動構造体に、追加の磁気感応素子は固定構造体に取り付けられてもよい。
【0031】
このようにして2つの可動構造体が互いに組み合わさることで、複数の測定値を同時に検出することができる。例えば第1可動構造体、第1磁気感応素子と第1磁石を使って加速度を測定し、第2可動構造体、追加の磁気感応素子と別の磁石を使って回転速度を測定することができる。
【0032】
その他に、さらに多くの磁気感応素子が第2可動構造体に取り付けられてもよい。特に、第2可動構造体と固定構造体に関して、ここで第1可動構造体と固定構造体との関連で開示されているすべての実施形態が可能である。
【0033】
高さまたは絶対位置も、磁石と磁気感応素子の相対的位置が測定されたセンサで測定してもよい。
【0034】
このようにして決定されたすべての自由度はそれぞれ、磁石の磁気感応素子に対する相対的位置によって測定されるので、同一の読み出し回路を使うことができる。そのため、その後の信号処理を簡略化することができる。特にすべての測定用に同一の信号経路を使うことができる。その結果、ASIC(application specific integrated circuit)の設計費用が低減される。さらにASICの機能テストも明らかに簡略化される。
【0035】
電極構造体は固定構造体や第2可動構造体に形成され、第2可動構造体に振動を励起するように構成されてもよい。さらに、固定構造体と第2可動構造体が導電性材料からなり、電極構造体自体を形成する、あるいは電極構造体が固定構造体上に第2可動構造体から取り付けられてもよい。
【0036】
従って、第2可動構造体は回転速度の測定に使用されてもよい。第1可動構造体は動作の測定に使用されてもよい。
【0037】
これにより、6つの自由度の測定に適したセンサがもたらされる。
【0038】
さらにセンサは、地磁気の方向を測定する構造、および/または圧力を測定する構造を有してもよい。地磁気の測定によって、絶対位置を測定することができる。代替的、あるいは付加的に、地磁気の測定によって、センサの方向付け、いわゆるヘッディングの測定のために使用することができる地磁気への方向付けがなされてもよい。これにより、センサはさらに3つの自由度を決定することができる。圧力の測定によって、高さを測定できるので、センサはさらに自由度を検出することができる。それゆえここで説明されたセンサは全部で10の自由度を測定することができる。これらの自由度すべては、磁石の磁気感応素子に対する相対的位置によって決定される。ここで、磁石あるいは磁気感応素子のいずれか一方が固定構造体上に、磁石と磁気感応素子から選択されたもう一方の要素が可動構造体上に配置される。これにより、各自由度の測定に同一の信号処理を使用することができる。
【0039】
さらに地磁気は、慣性センサや回転速度センサの測定の際、障害となりうる。
別々に測定されることで、この障害は修正され、また他の測定の精度が向上する。
【0040】
また上記複数のセンサはセンサ装置を形成するために組み合わせてもよい。例えば以下のセンサのうちの少なくとも2つが互いに組み合わされる。3つの自由度で加速度を測定する第1のセンサ、3つの自由度で回転速度を測定する第2のセンサ、3つの自由度で地磁気を測定する第3のセンサ、および圧力測定手段によって高さを測定する第4のセンサから選ばれる。これらのセンサそれぞれは磁気感応素子を有してもよい。特に第1、第2および第4のセンサは磁気感応素子と磁石を有してもよい。磁気感応素子と磁石のうち、一方は可動構造体上に、他方は固定構造体に配置される。第3のセンサは同様に磁気感応素子を有してもよい。
【0041】
さらにこのセンサ装置で最大7種類の可動構造体と3つの静的な構造体を地磁気測定用に互いに組み合わせてもよく、例えば単一のチップ上に集積されてもよい。特に、7つの可動構造体のうちの3つはそれぞれ加速度の座標を測定し、7つの可動構造体のうちの他の3つの構造体はそれぞれ回転速度の座標を測定し、7つ目の可動構造体は圧力とそれに伴う高さを測定し、3つの静的構造体は地磁気とそれに伴う絶対位置を測定するようにしてもよい。
【0042】
可動構造体の、それぞれに関連する固定構造体に対する相対的位置は磁気感応素子を用いて測定することができ、また地磁気も磁気感応素子を用いて測定することができるので、チップはすべてのセンサに同じ信号変換の原理を使用する均一な読み出し回路と組み合わせることができる。
【0043】
さらに、可動構造体の変位が複数の磁気感応素子によって異なる空間方向内で検出されることで、可動構造体の数を減らしてもよい。このようにしてさらなる小型化が可能である。
【0044】
一実施形態では、可動構造体は非変位状態で平面内に広がる。ここで磁気感応素子と磁石から選択された一方が平面内に配置され、磁気感応素子と磁石から選択されたもう一方は平面の外に配置される。何の力も可動構造体に作用していない状態を、非変位状態と呼ぶ。非変位状態は可動構造体のアイドル状態であってもよい。
【0045】
以下、本発明は図面を参照して詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】センサの第1実施例を示す。
図2】センサの第2実施例を示す。
図3】センサの第3実施例を示す。
図4】センサの第4実施例を示す。
図5】センサの第5実施例を示す。
図6】センサの第6実施例を示す。
図7】センサの第7実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1はセンサ1を示す。センサ1は固定構造体2と固定構造体2に対して相対移動が可能である可動構造体3を有する。
【0048】
センサ1は、可動構造体3の固定構造体2に対する相対移動を測定するように構成されている。このセンサのコンセプトは、例えばフレームに対する振動板の相対的な変位を計測する圧力センサで使用される。従って、可動構造体3を振動板とし、固定構造体2をフレームとすることができる。例えば加速度を測定するセンサ、または回転速度を測定するセンサのような他のセンサも可動構造体3の固定構造体2に対する相対的な変位の計測に基づく。可動構造体3を、サイスミックマス(振動質量体)としてもよい。
【0049】
図1に示される実施例で、可動構造体3は振動板である。また、固定構造体2はフレームである。
【0050】
図1に示されるセンサ1は加速度測定用慣性センサである。可動構造体3は、固定構造体2に対して相対的にどの空間方向にも動けるように固定構造体2に取り付けられている。この目的のため、可動構造体3はバネ要素(図示せず)で固定構造体2につるされている。
【0051】
さらに、図1に示されるセンサ1は第1磁気感応素子4と磁石5を有する。磁石5は磁界を発生するように構成されている。磁石5は、磁界を常に発生する永久磁石とすることができる。特に、磁石5は、構造化或いはパターン化された(strukturierter)薄膜永久磁石とすることができる。磁石5はアスペクト比が1ではない。アスペクト比は、磁石5の長さの幅に対する比率と定義される。従って、磁石5は例えば棒状、あるいは楕円形に形成されてもよい。
【0052】
あるいは、磁石5はオンになったときだけ磁界を発生する電磁石であってもよい。従って、磁石5は通電コイルを有してもよい。
【0053】
第1磁気感応素子4は、その位置で磁界を測定するように構成される。磁気感応素子4は、例えばホール効果に基づいて磁界強度を測定するホール素子であってもよい。代替的、あるいは付加的に、磁気感応素子4は磁気抵抗効果によって磁界を測定してもよい。
【0054】
これらの情報を元に、磁気感応素子4の磁石5に対する相対的位置を測定してもよい。
【0055】
図1に示される実施例では、磁石5は可動構造体3に直に取り付けられ、磁気感応素子4は固定構造体2に直に取り付けられる。特に磁石5は可動構造体3に対して相対移動しなくてもよく、磁気感応素子4は固定構造体2に対して相対移動しなくてもよい。
【0056】
図1の左側にはxz平面におけるセンサ1の断面図を示す。図1の右側にはxy平面におけるセンサ1の断面図が示されている。z方向は、可動構造体3の表面法線方向として定義される。x方向とy方向はそれぞれz方向と垂直でありまた、互いに垂直である。
【0057】
図1は、可動構造体3が非変位状態にあるセンサ1の様子を示す。この状態では可動構造体3に外力は作用していない。可動構造体3に、例えば音波によって圧力が加えられると、可動構造体3は固定構造体2に対して相対的に変位する。
【0058】
さらにセンサ1は第1磁気感応素子4の隣に、第2、第3および第4磁気感応素子104、204、304を有する。4つの磁気感応素子4,104,204,304は固定構造体2に取り付けられる。4つの磁気感応素子4,104,204,304は一平面内に配置されている。可動構造体3の非変位状態では、さらに磁石5も同平面内に配置されている。センサ1はxy平面とも呼ばれる平面内で可動構造体3の位置を明確に測定することができる。
【0059】
可動構造体3はxy平面に対し垂直方向に動くので、センサ1は可動構造体3のz位置を明確に測定しなくてもよい。特に可動構造体3が+z方向と−z方向のどちらに動いたのかを区別しなくてもよい。ここで、可動構造体3の裏面から可動構造体3の表面への方向を+z方向と呼び、磁石5は可動構造体3の表面に配置され、可動構造体3の裏面には磁石5はない。−z方向は+z方向の反対である。
【0060】
さらに、可動構造体3と固定構造体2との間には櫛歯構造体9が形成されている。この櫛歯構造体9の範囲内で可動構造体3と固定構造体2にそれぞれ電極が形成されていてもよい。特に可動構造体3と固定構造体2はそれぞれ導電性材料からなってもよく、可動構造体3と固定構造体2それぞれに電圧が印加される。この電極を介して可動構造体3は静電的に振動を励起するようにしてもよい。あるいは、可動構造体3が電極構造体および導電体膜を備え、導電体膜を介して振動を励起することも可能である。回転速度センサにおいては、可動構造体3は回転速度を測定するために振動する。
【0061】
また、櫛歯構造体9の範囲内で可動構造体3と固定構造体2はそれぞれ電極を形成し、センサ1を静電的閉ループ制御で動かすことが考えられる。このときまず、可動構造体3の動きを検出し、その後可動構造体3が静止する逆磁界が電極に印加される。この閉ループ測定はセンサ1の動的挙動を向上することができる。櫛歯構造体9とこの関連で挙げられた実施形態は、センサ1の動作には必ずしも必要ではないが、特定の用途において有用であり得るオプションの形態である。
【0062】
図1に示すセンサ1は、ホイートストーンブリッジを介して相互に接続されることで可動構造体3の位置測定に使用される4つの磁気感応素子4,104,204,304を有する。ホイートストーンブリッジを介した相互接続は、簡単な相互接続で明確な測定が可能であり、さらに高い測定精度が達成されるという利点をもたらす。ホイートストーンブリッジは、多数の評価回路と組み合わせ可能な標準的な選択手順である。
【0063】
可動構造体3のxy位置の明確な測定は、2つの磁気感応素子4,104によって達成されうる。従って、センサ1は代替の形態では第1と第2磁気感応素子4,104だけを有してもよい。
【0064】
図2はセンサ1の第2実施例を示す。左図にはxz平面におけるセンサ1の断面図が、右図にはxy平面におけるセンサ1の断面図が示されている。
【0065】
図2に示すセンサ1は、可動構造体3が非変位状態において磁石5が、4つの磁気感応素子4,104,204,304が配置された平面の外に配置されている点で図1に示すセンサ1とは区別される。それにより、図2に示すセンサ1は可動構造体3の位置のx、y、z座標の明確な測定ができる。特に可動構造体3は、その表面に磁石5が配置されたリッジ10を有する。磁気感応素子4,104,204,304によって表現される平面の下方にある磁石5が−z方向においてそこまで離れない限り、センサ1はz方向における可動構造体3の固定構造体2に対する相対的な位置の明確な測定が可能である。この場合、曖昧な測定結果が出ると思われる。
【0066】
図2に示されるセンサ1は、図1に示されるセンサ1と同じ数の磁気感応素子4,104,204,304と磁石5を有し、さらにそれに加えて、可動構造体3の位置のz座標を測定することが可能である。
【0067】
図3はセンサ1の第3実施例を示す。左図にはxz平面の断面図が、右図にはxy平面の断面図が示されている。
【0068】
図1に示された第1実施例と比較して、磁気感応素子4,104,204,304が磁石5,105,205,305に置き換えられている。さらに磁石5は2つの磁気感応素子4,104に置き換えられている。従って、ここでは磁石5,105,205,305は固定構造体2上に配置されている。特にセンサ1はそれぞれが固定構造体2上に配置され、固定構造体2に対して相対移動できない4つの磁石5,105,205,305を有する。さらに2つの磁気感応素子4,104が可動構造体3上に配置されている。2つの磁気感応素子4,104は可動構造体3に対して相対移動できない。
【0069】
センサ1はxy平面における可動構造体3の固定構造体2に対する相対位置を測定するように構成される。
【0070】
図4は第4実施例を示し、左図にはxz平面の断面図が、右図にはxy平面の断面図が示される。
【0071】
図4に示されたセンサ1は、可動構造体3が非変位状態において、4つの磁石5,105,205,305が配置された平面の外に磁気感応素子4,104が配置される点で図3と区別される。可動構造体3は2つの磁気感応素子4,104が配置されたリッジ10を有する。センサ1は可動構造体3の固定構造体2に対する相対的な位置のx、y、z座標の測定が可能である。2つの磁気感応素子4,104が4つの磁石5,105,205,305によって表現される平面の下方に配置されるとき、可動構造体3が−z方向においてそこまで遠くに動かない限り、z座標の明確な測定が可能である。
【0072】
図5はセンサの第5実施例を示す。第5実施例は別の磁気感応素子404が磁石5の上方に配置されている点で図1に示す第1実施例と区別される。別の磁気感応素子404は従って第1〜第4磁気感応素子4,104,204,304が配置された平面の外側に配置される。従って、センサ1は可動構造体3の位置のx、y、z座標を明確に測定することができる。特に、制約なくz座標の明確な測定ができる。固定構造体2は、可動構造体3を側面と上面で囲み、下面に開口部11を有するオープンフレームとして形成されている。
【0073】
図6はセンサ1の第6実施形態を示す。第6実施形態では、4つの磁気感応素子4,104,204,304が一平面内に配置され、さらに磁石5がその平面の外で可動構造体3に取り付けられている。ここで磁石5は可動構造体3が非変位状態の時平面の外にある。さらにセンサ1は、磁石5が常に平面の上側または平面内にあるように磁石5の移動能力を制限するように構成されたストッパ12を有する。
【0074】
固定構造体2は可動構造体を全方面から囲むフレームとして形成されている。
固定構造体2はまた、空洞を包含する閉じた三次元フレームであり、可動構造体3は空洞内に配置される。
【0075】
センサ1の別の実施形態も考えられる。例えば第5および第6実施例において、磁気感応素子4,104,204,304,404は可動構造体3上に、磁石5,105は固定構造体2上に配置されてもよい。
【0076】
図に示された実施例において、可動構造体は常に振動板である。可動構造体3はしかしながらサイスミックマスとして形成されてもよい。
【0077】
図7はセンサ1の第7実施形態を示す。センサ1は圧力測定用のセンサである。このセンサ1においても可動構造体3が振動板である。さらに固定構造体2はフレームである。可動構造体3の周辺部はz方向に移動できないように固定構造体2に取り付けられている。ここで、z方向は可動構造体3の表面法線方向として定義される。周辺部に接続する可動構造体3の内部領域はx方向において固定構造体2に対して相対移動できる。
【0078】
(付記)
(付記1)
固定構造体(2)、
前記固定構造体(2)に対して相対的に移動可能な可動構造体(3)、
磁界を発生する磁石(5)、および、
第1磁気感応素子(4)の位置で前記磁界を測定するように構成された当該第1磁気感応素子(4)を有し、
前記磁石(5)は前記固定構造体(2)に取り付けられ、前記第1磁気感応素子(4)は前記可動構造体(3)に取り付けられている、あるいは前記磁石(5)は前記可動構造体(3)に取り付けられ、前記第1磁気感応素子(4)は前記固定構造体(2)に取り付けられている、
ことを特徴とするセンサ(1)。
【0079】
(付記2)
前記可動構造体(3)の前記固定構造体(2)に対する相対的位置を、前記磁気感応素子(4)の位置で前記磁界を測定することで検出するように構成されている、
ことを特徴とする付記1に記載のセンサ(1)。
【0080】
(付記3)
第2磁気感応素子(104)位置で前記磁界を測定するように構成された当該第2磁気感応素子(104)を少なくとも有する、
ことを特徴とする付記1または2に記載のセンサ(1)。
【0081】
(付記4)
前記第1および前記第2磁気感応素子(4,104)が一つの平面内に配置されている、
ことを特徴とする付記3に記載のセンサ(1)。
【0082】
(付記5)
前記可動構造体(3)が非変位状態にあるとき、前記磁石(5)は前記平面の外に配置されている、
ことを特徴とする付記4に記載のセンサ(1)。
【0083】
(付記6)
前記磁石(5)が前記平面の第1の面上または前記平面内に常にあるように、前記可動構造体(3)の移動能力を制限するストッパ(12)を有する、
ことを特徴とする付記4または5に記載のセンサ(1)。
【0084】
(付記7)
別の磁気感応素子(404)位置で前記磁界を測定するように構成された当該別の磁気感応素子(404)を有し、
前記別の磁気感応素子(404)は前記平面の外に配置されている、
ことを特徴とする付記4乃至6のいずれか一つに記載のセンサ(1)。
【0085】
(付記8)
前記可動構造体(3)は振動板またはサイスミックマスである、
ことを特徴とする付記1乃至7のいずれか一つに記載のセンサ(1)。
【0086】
(付記9)
前記可動構造体(3)に振動を励起するように構成されている、
ことを特徴とする付記1乃至8のいずれか一つに記載のセンサ(1)。
【0087】
(付記10)
前記磁石(5)は構造化された薄膜永久磁石である、
ことを特徴とする付記1乃至9のいずれか一つに記載のセンサ(1)。
【0088】
(付記11)
前記磁石(5)は一定の長さと一定の幅を有し、長さの幅に対する比率は1ではない、
ことを特徴とする付記1乃至10のいずれか一つに記載のセンサ(1)。
【0089】
(付記12)
前記磁石(5)は通電コイルを有する、
ことを特徴とする付記1乃至11のいずれか一つに記載のセンサ(1)。
【0090】
(付記13)
前記固定構造体(2)に対して相対的に移動可能な第2可動構造体、別の磁界を発生する別の磁石、および追加の磁気感応素子の位置で前記別の磁界を測定するように構成された当該追加の磁気感応素子を有し、
前記別の磁石は前記固定構造体(2)に取り付けられ、前記追加の磁気感応素子は前記第2可動構造体に取り付けられている、あるいは前記別の磁石は前記第2可動構造体に取り付けられ、前記追加の磁気感応素子は前記固定構造体(2)に取り付けられている、
ことを特徴とする付記1乃至12のいずれか一つに記載のセンサ(1)。
【0091】
(付記14)
前記第2可動構造体に振動を励起するように構成されている電極構造体が前記固定構造体(2)および前記第2可動構造体に形成されている、
ことを特徴とする付記13に記載のセンサ(1)。
【0092】
(付記15)
地磁気の方向の測定用の構造体、および/または圧力測定用の構造体を更に有する、
ことを特徴とする付記1乃至14のいずれか一つに記載のセンサ(1)。
【符号の説明】
【0093】
1 センサ
2 固定構造体
3 可動構造体
4 第1磁気感応素子
5 磁石
9 櫛歯構造
10 リッジ
11 開口
12 ストッパ
104 第2磁気感応素子
105 磁石
204 第3磁気感応素子
205 磁石
304 第4磁気感応素子
305 磁石
404 別の磁気感応素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7