特許第6367462号(P6367462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6367462亜鉛めっき鋼材用または亜鉛基合金めっき鋼材用の金属表面処理剤、被覆方法及び被覆鋼材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367462
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】亜鉛めっき鋼材用または亜鉛基合金めっき鋼材用の金属表面処理剤、被覆方法及び被覆鋼材
(51)【国際特許分類】
   C23C 22/42 20060101AFI20180723BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20180723BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20180723BHJP
   C09D 133/20 20060101ALI20180723BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20180723BHJP
   C09D 5/08 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   C23C22/42
   C23C28/00 A
   B32B15/082 Z
   C09D133/20
   C09D5/02
   C09D5/08
【請求項の数】6
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-502439(P2017-502439)
(86)(22)【出願日】2016年2月24日
(86)【国際出願番号】JP2016055514
(87)【国際公開番号】WO2016136834
(87)【国際公開日】20160901
【審査請求日】2017年4月19日
(31)【優先権主張番号】特願2015-37428(P2015-37428)
(32)【優先日】2015年2月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000229597
【氏名又は名称】日本パーカライジング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】東新 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】森下 敦司
(72)【発明者】
【氏名】木下 康弘
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 正彦
【審査官】 菅原 愛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−322409(JP,A)
【文献】 特開2009−114500(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/069783(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/004684(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C22/00−30/00
C09D 1/00−10/00
C09D101/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛めっき鋼材用または亜鉛基合金めっき鋼材用の金属表面処理剤であって、
アクリル樹脂(A)と、水ガラス化合物(B)と、ジルコニウム化合物(C)と、リン化合物(D)と、バナジウム化合物(E)とを含み、前記アクリル樹脂(A)が、原料モノマーの全質量を基準として、20〜70質量%の(メタ)アクリル酸エステル(a)と、2〜10質量%のカルボキシル基を含有するエチレン性不飽和モノマー(b)と、2〜10質量%の水酸基を含有するエチレン性不飽和モノマー(c)と、10〜30質量%のスチレン(d)と、10〜30質量%のアクリロニトリル(e)との乳化重合反応により得られる共重合体であり、前記金属表面処理剤の固形分合計質量(W)に対する前記アクリル樹脂(A)の固形分質量比である(A)/(W)が0.40〜0.60であり、前記金属表面処理剤の固形分合計質量(W)に対する前記水ガラス化合物(B)の固形分質量比である(B)/(W)が0.05〜0.25であり、前記金属表面処理剤の固形分合計質量(W)に対する前記ジルコニウム化合物(C)の固形分質量比である(C)/(W)が0.05〜0.2であり、前記金属表面処理剤の固形分合計質量(W)に対する前記リン化合物(D)の固形分質量比である(D)/(W)が0.01〜0.10であり、前記金属表面処理剤の固形分合計質量(W)に対する前記バナジウム化合物(E)の固形分質量比である(E)/(W)が0.001〜0.03である、ことを特徴とする金属表面処理剤。
【請求項2】
追加成分としてシラン化合物(F)を含み、前記シラン化合物(F)を含む前記金属表面処理剤の固形分合計質量(W)に対する前記シラン化合物(F)の固形分質量比である(F)/(W)が0.25以下である請求項1に記載の金属表面処理剤。
【請求項3】
追加成分としてポリオレフィンワックス(G)を含む請求項1または2に記載の金属表面処理剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の金属表面処理剤を、亜鉛めっき鋼材または亜鉛基合金めっき鋼材の表面に塗布して皮膜を形成することを特徴とする被覆方法。
【請求項5】
請求項4に記載の被覆方法によって得られる被覆鋼材。
【請求項6】
皮膜量が0.5〜2.0g/mである請求項5に記載の被覆鋼材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛めっき鋼材用または亜鉛基合金めっき鋼材用の金属表面処理剤、該金属表面処理剤を用いた亜鉛めっき鋼材または亜鉛基合金めっき鋼材の被覆方法、該被覆方法によって製造した被覆鋼材に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭電化製品や建材等には、亜鉛や亜鉛系めっき鋼板が広く用いられている。これらの鋼板は、そのままでは、耐食性や上塗り塗装性が不十分であるために、クロメート処理が施される。しかし、近年、家庭用電化製品用途では6価クロムの使用が規制され、これに変わりクロメートフリー処理が施されるようになってきた。
【0003】
このクロメートフリー処理を施した亜鉛めっき鋼板は、使用される用途によっては塗装を行わないでそのまま用いられる場合も少なくない。塗装を行わないで用いる場合には、耐食性のみならず、耐指紋性が求められる。また、プレス加工や折り曲げ加工等の成型加工が施される場合には鋼板と金型との摺動により傷が発生しないように耐傷付き性が求められる。さらに、加工時塗油される防錆油、加工油等を除去する目的で溶剤をしみこませたウエス等によりラビングされる場合には溶剤により皮膜が溶解し、外観が変色してしまわないように耐溶剤性が求められる。用いられる溶剤は複数あり、それぞれの溶剤に対する耐溶剤性が必要となる。塗装して用いる場合にも、片面塗装のみの場合の未塗装側は200〜250℃程度の高温で焼付けると黄変して、ひどい場合は褐変することがあるため、耐熱性が求められる。
【0004】
このため、各種性能を有する亜鉛めっき鋼板に関する技術がいくつか提案されている。
【0005】
特許文献1には、(A)特定のポリウレタン樹脂の水性分散体、及び(B)リン酸化合物、バナジウム化合物、ジルコニウム化合物、チタニウム化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物、シランカップリング剤及びシリカ粒子から選ばれる少なくとも1種を含有する無公害型の金属表面処理組成物に関する技術が記載されている。この技術によれば、クロム酸塩処理及びリン酸塩処理に匹敵する耐食性を持ちかつ貯蔵安定性、耐指紋性、耐溶剤性、上塗塗膜付着性に優れた皮膜を形成することができる。
【0006】
特許文献2には、エチレン−アクリル酸共重合樹脂、ジルコニウムまたはバナジウムを含む水溶性金属化合物、コロイダルシリカ、オキシカルボン酸類またはアミン類のキレート形成性有機化合物、及び無機塩またはその水溶性塩の化合物からなる不揮発成分を有し、クロムを含んでいない、pH7〜10である金属表面の水系処理薬剤に関する技術が記載されている。この技術によれば、美麗な黒色外観と良好な耐食性だけでなく、耐熱性、導電性、耐指紋性を併せ持つ非クロム型黒色化鋼板を製造することができる。しかし、この非クロム型黒色化鋼板は、耐溶剤性には優れるものの、水を使用した場合の耐洗浄性に劣り、洗浄後の耐食性が悪いことがわかっている。
【0007】
特許文献3には、特定のカチオン性ポリウレタン樹脂、特定のカチオン性フェノール樹脂、シランカップリング剤、マンガン化合物、ジルコニウム化合物、バナジウム化合物と、フィッシャートロプッシュワックスとを含有する水系表面処理液を用いた技術が記載されている。この技術によれば、平面部耐食性、アルカリ脱脂後耐食性、加工部耐食性、耐指紋性、導電性、塗装密着性、加工性、耐熱性、耐酸性、耐水性等の性能バランスに優れた表面処理鋼板を提供することができる。
【0008】
特許文献4には、特定のアクリル系樹脂、水およびコロイダルシリカを含有する水系表面処理剤に関する技術が記載されている。この技術によれば、平面部耐食性、耐溶剤性、上塗り塗装性および溶接性のみならず、加工部耐食性、耐傷つき性に優れた表面処理金属材を得ることができる。しかし、十分な耐食性を得ようとすると、クロメート下地を必要とすることがわかっている。
【0009】
特許文献5には、アニオン性アクリル樹脂、特定のケイ酸アルカリ金属塩、塩基性ジルコニウム化合物、バナジウム化合物及び特定の有機リン化合物を水に配合した金属材料用表面処理剤に関する技術が記載されている。この技術によれば、優れた耐食性、耐薬品性、耐熱変色性及び耐候性を有する皮膜が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−127061号
【特許文献2】特開2005−194627号
【特許文献3】特開2008−194839号
【特許文献4】特開2002−322409号
【特許文献5】WO2007/069783
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の技術では、クロメート下地を必要としないで、亜鉛めっき鋼材または亜鉛基合金めっき鋼材の表面に、平面部耐食性、加工部耐食性、耐指紋性、塗装密着性、耐洗浄性、耐傷付き性、耐溶剤性及び耐熱性を含めた全ての特性に優れた皮膜を形成することができない。
そこで、本発明は、亜鉛めっき鋼材または亜鉛基合金めっき鋼材の表面に、平面部耐食性、加工部耐食性、耐指紋性、塗装密着性、耐洗浄性、耐傷付き性、耐溶剤性及び耐熱性に優れた皮膜を形成することができる金属表面処理剤、該金属表面処理剤を用いた被覆方法、及び該被覆方法によって製造した被覆鋼材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するための手段について鋭意検討を重ねた結果、特定のアクリル樹脂(A)と、水ガラス化合物(B)と、ジルコニウム化合物(C)と、リン化合物(D)と、バナジウム化合物(E)とを、特定の配合比にて含む金属表面処理剤を用いることにより、亜鉛めっき鋼材または亜鉛基合金めっき鋼材の表面に、平面部耐食性、加工部耐食性、耐指紋性、塗装密着性、耐洗浄性、耐傷付き性、耐溶剤性及び耐熱性に優れた皮膜を形成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明の要旨とするところは、
(1)亜鉛めっき鋼材用または亜鉛基合金めっき鋼材用の金属表面処理剤であって、アクリル樹脂(A)と、水ガラス化合物(B)と、ジルコニウム化合物(C)と、リン化合物(D)と、バナジウム化合物(E)とを含み、前記アクリル樹脂(A)が、原料モノマーの合計質量を基準として、20〜70質量%の(メタ)アクリル酸エステル(a)と、2〜10質量%のカルボキシル基を含有するエチレン性不飽和モノマー(b)と、2〜10質量%の水酸基を含有するエチレン性不飽和モノマー(c)と、10〜30質量%のスチレン(d)と、10〜30質量%のアクリロニトリル(e)との乳化重合反応により得られる共重合体であり、前記金属表面処理剤の固形分合計質量(W)に対する前記アクリル樹脂(A)の固形分質量比である(A)/(W)が0.40〜0.60であり、前記金属表面処理剤の固形分合計質量(W)に対する前記水ガラス化合物(B)の固形分質量比である(B)/(W)が0.05〜0.25であり、前記金属表面処理剤の固形分合計質量(W)に対する前記ジルコニウム化合物(C)の固形分質量比である(C)/(W)が0.05〜0.2であり、前記金属表面処理剤の固形分合計質量(W)に対する前記リン化合物(D)の固形分質量比である(D)/(W)が0.01〜0.10であり、前記金属表面処理剤の固形分合計質量(W)に対する前記バナジウム化合物(E)の固形分質量比である(E)/(W)が0.001〜0.03である、ことを特徴とする金属表面処理剤。
【0014】
(2)追加成分としてシラン化合物(F)を含み、前記シラン化合物(F)を含む前記金属表面処理剤の固形分合計質量(W)に対する前記シラン化合物(F)の固形分質量比である(F)/(W)が0.25以下である上記(1)に記載の金属表面処理剤。
【0015】
(3)追加成分としてポリオレフィンワックス(G)を含む上記(1)または(2)に記載の金属表面処理剤。
【0016】
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の金属表面処理剤を、亜鉛めっき鋼材または亜鉛基合金めっき鋼材の表面に塗布して皮膜を形成することを特徴とする被覆方法。
【0017】
(5)上記(4)に記載の被覆方法によって得られる被覆鋼材。
【0018】
(6)皮膜量が0.5〜2.0g/mである上記(5)に記載の被覆鋼材。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、亜鉛めっき鋼材または亜鉛基合金めっき鋼材の表面に、平面部耐食性、加工部耐食性、耐指紋性、塗装密着性、耐洗浄性、耐傷付き性、耐溶剤性及び耐熱性に優れた皮膜を形成することができる金属表面処理剤、該金属表面処理剤を用いた被覆方法、及び該被覆方法によって製造した被覆鋼材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
[亜鉛めっき鋼材用または亜鉛基合金めっき鋼材用の金属表面処理剤]
本発明に係る金属表面処理剤は、アクリル樹脂(A)と、水ガラス化合物(B)と、ジルコニウム化合物(C)と、リン化合物(D)と、バナジウム化合物(E)とを含む。
【0021】
本発明に用いるアクリル樹脂(A)の配合量は、金属表面処理剤を構成する各成分における固形分の合計100質量%に対して、固形分質量換算で40〜60質量%であり、より好ましくは45〜60質量%である。アクリル樹脂(A)の配合量が40質量%未満の場合は、耐食性、密着性等が劣るため好ましくない。また、60質量%を超える場合は、耐溶剤性、耐熱性、耐洗浄性、耐傷付き性等が劣るため好ましくない。なお、アクリル樹脂としては、原料モノマーの合計質量を基準として、それぞれ固形分質量換算で、20〜70質量%の(メタ)アクリル酸エステル(a)と、2〜10質量%のカルボキシル基を含有するエチレン性不飽和モノマー(b)と、2〜10質量%の水酸基を含有するエチレン性不飽和モノマー(c)と、10〜30質量%のスチレン(d)と、10〜30質量%のアクリロニトリル(e)との乳化重合反応により得られる共重合体を用いる必要がある。なお、本願明細書において、「エチレン性不飽和モノマー」とは、エチレン性不飽和基、すなわち、炭素−炭素二重結合を有するモノマーを意味する。また、アクリル樹脂(A)を構成する各モノマー(a)〜(e)の乳化重合反応は、例えば、公知の、分子中に重合性の二重結合を有する反応性乳化剤等を用いて行うことができる。
【0022】
本発明に使用される(メタ)アクリル酸エステル(a)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレートまたはその異性体、n−ブチル(メタ)アクリレートまたはその異性体、n−ペンチル(メタ)アクリレートまたはその異性体、n−ヘキシル(メタ)アクリレートまたはその異性体、n−ヘプチル(メタ)アクリレートまたはその異性体、n−オクチル(メタ)アクリレートまたはその異性体等が挙げられる。尚、本明細書で(メタ)を用いる場合は、メチル基(−CH)を有する場合と有しない場合の両方を意味する。
【0023】
この様な(メタ)アクリル酸エステル(a)の配合量は、アクリル樹脂(A)を構成する各モノマー(a)〜(e)の合計100質量%に対して、20〜70質量%、好ましくは30〜60質量%である。(メタ)アクリル酸エステル(a)の配合量が20質量%未満の場合は得られる重合体皮膜の柔軟性が欠如するため、成膜時に皮膜にクラックが入り、十分な耐食性を得ることができない。また、耐洗浄性が劣ることがある。一方、配合量が70質量%を超える場合は耐溶剤性が劣るため好ましくない。
【0024】
本発明に使用されるカルボキシル基を含有するエチレン性不飽和モノマー(b)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸等が挙げられる。この様なカルボキシル基を含有するエチレン性不飽和モノマー(b)の配合量は、アクリル樹脂(A)を構成する各モノマー(a)〜(e)の合計100質量%に対して2〜10質量%であり、より好ましくは2.5〜8質量%である。2質量%未満の場合は鋼板に対する皮膜の耐食性、密着性等に劣り、10質量%を超える場合は耐食性、耐溶剤性、密着性、耐洗浄性が劣るため好ましくない。
【0025】
本発明に使用される水酸基を含有するエチレン性不飽和モノマー(c)としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アリルエーテル、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、アリルアルコールなどが挙げられる。この様な水酸基を含有するエチレン性不飽和モノマー(c)の配合量は、アクリル樹脂(A)を構成する各モノマー(a)〜(e)の合計100質量%に対して2〜10質量%であり、より好ましくは2.5〜8質量%である。2質量%未満の場合は耐食性、鋼板に対する密着性等に劣り、10質量%を超える場合は耐食性、耐溶剤性、密着性、耐洗浄性等が劣るため好ましくない。
【0026】
本発明で使用されるスチレン(d)の配合量はアクリル樹脂(A)を構成する各モノマー(a)〜(e)の合計100質量%に対して10〜30質量%であり、より好ましくは12〜25質量%である。10質量%未満の場合は耐傷つき性が劣り、30質量%を超える場合は耐食性、耐溶剤性、密着性等が劣るため好ましくない。
【0027】
本発明で使用されるアクリロニトリル(e)の配合量はアクリル樹脂(A)を構成する各モノマー(a)〜(e)の合計100質量%に対して10〜30質量%であり、より好ましくは15〜28質量%である。10質量%未満の場合は耐溶剤性、密着性等に劣り、30質量%を超える場合は200〜250℃の高温で黄変するため耐熱性に劣り好ましくない。
【0028】
上記アクリル樹脂(A)である共重合体は、該アクリル樹脂(A)を構成する各モノマー(a)〜(e)を所定質量割合で混合し、上記反応性乳化剤を用いた乳化重合反応により製造することができる。このアクリル樹脂(A)の重量平均分子量は、通常、20000〜2000000の範囲内であるが、50000〜500000であることが好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量の値は、共重合体をDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)に溶解し、GPC(Gel Permeation Chromatography)により測定し、St換算で重量平均分子量を求めた値を意味する。重量平均分子量が上記の数値範囲内であるアクリル樹脂(A)は、上記乳化重合反応の温度及び時間を適宜調整することにより製造することができる。
【0029】
本発明に用いる水ガラス化合物(B)の配合量は、金属表面処理剤を構成する各成分における固形分の合計100質量%に対して、固形分質量換算で5〜25質量%であり、より好ましくは8〜20質量%である。水ガラス化合物(B)の配合量が5質量%未満では耐食性に劣るため好ましくない。また、25質量%を超える場合は、耐食性、密着性、耐洗浄性等が劣るため好ましくない。なお、水ガラス化合物(B)としては、例えば、1号ケイ酸ナトリウム(富士化学(株)製)、2号ケイ酸ナトリウム(富士化学(株)製)、3号ケイ酸ナトリウム(富士化学(株)製)、4号ケイ酸ナトリウム(富士化学(株)製)、5号ケイ酸ナトリウム(富士化学(株)製)、1号珪酸カリ(富士化学(株)製)、2号珪酸カリ(富士化学(株)製)、リチウムシリケート35(日産化学工業(株)製)、リチウムシリケート45(日産化学工業(株)製)、リチウムシリケート75(日産化学工業(株)製)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
本発明に用いるジルコニウム化合物(C)の配合量は、金属表面処理剤を構成する各成分における固形分の合計100質量%に対して、固形分質量換算で5〜20質量%であり、より好ましくは8〜18質量%である。ジルコニウム化合物(C)の配合量が5質量%未満の場合は耐食性、耐洗浄性、耐傷付き性等が劣るため好ましくない。また、20質量%を超える場合は、耐食性、密着性等が劣るため好ましくない。なお、ジルコニウム化合物(C)としては、例えば、炭酸ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナト)ジルコニウム(IV)、ヘキサフルオロジルコニウム(IV)酸アンモニウム、炭酸ジルコニウムアンモニウムなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
本発明に用いるリン化合物(D)の配合量は、金属表面処理剤を構成する各成分における固形分の合計100質量%に対して、固形分質量換算で1〜10質量%であり、より好ましくは2〜8質量%である。リン化合物(D)の配合量が1質量%未満の場合は耐食性、耐洗浄性等が劣るため好ましくない。一方、10質量%を超える場合は、処理剤の安定性が低下するため好ましくない。また、耐食性が劣ることがある。なお、リン化合物(D)としては、例えば、第一リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミン−N,N,N’,N’−テトラ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミン−N,N,N’,N’−テトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミン−N,N,N’,N’’,N’’−ペンタ(メチレンホスホン酸)、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
本発明に用いるバナジウム化合物(E)の配合量は、金属表面処理剤を構成する各成分における固形分の合計100質量%に対して、固形分質量換算で0.1〜3質量%であり、より好ましくは0.2〜2質量%である。バナジウム化合物(E)の配合量が0.1質量%未満の場合は耐食性が劣るため好ましくない。また、3質量%を超える場合は、耐熱性が劣るため好ましくない。なお、バナジウム化合物(E)としては、例えば、しゅう酸酸化バナジウム(IV)(n水和物)、メタバナジン(V)酸ナトリウム、バナジウム(IV)ビス(アセチルアセトナト)オキシド、メタバナジン(V)酸アンモニウム、五酸化バナジウムなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
本発明において、亜鉛めっき鋼材または亜鉛基合金めっき鋼材の耐食性を向上させるために、シラン化合物(F)を上記金属表面処理剤にさらに添加してもよい。
【0034】
本発明に用いるシラン化合物(F)の配合量は、金属表面処理剤を構成する各成分における固形分の合計100質量%に対して、固形分質量換算で25質量%以下となるように含ませることが好ましく、8〜20質量%で含ませることがより好ましい。シラン化合物(F)の配合量が25質量%以下である場合に、より優れた耐食性を得ることができるからである。なお、シラン化合物(F)としては、例えば、ビニルトリス(2−メトキシエトキシシラン)、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリキシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリキシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
また、本発明において、亜鉛めっき鋼材または亜鉛基合金めっき鋼材の耐傷つき性を向上させるために、ポリオレフィンワックス(G)を上記金属表面処理剤(シラン化合物(F)を含んでいてもよい。)にさらに添加してもよい。
【0036】
ポリオレフィンワックス(G)としては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、マイクロクリスタリンワックス等のポリオレフィンワックス、あるいはこれらの変性ポリオレフィンワックスを用いることができる。変性ポリオレフィンワックスとしては、例えば、ポリオレフィンワックスに極性基を付与したものを挙げることができる。極性基は、触媒存在下で、ポリオレフィンワックスを酸素、オゾンあるいは硝酸等の酸化剤で酸化処理することによって導入することができる。また、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸モノマーとポリオレフィンワックスとをベンゾール等に溶解させ、重合開始剤(例えば、パーオキサイド、レドックス、重金属触媒等)と共に窒素気流中で加熱することによりグラフト化することができる。なお、ポリオレフィンワックス(G)は、水または水溶液に分散させてから用いてもよい。ポリオレフィンワックス(G)の分散は、乳化剤を用いて行ってもよいし、乳化剤を用いることなく行ってもよい。
【0037】
ポリオレフィンワックス(G)の質量平均粒径は0.1〜5.0μmが好ましく、0.1〜3.0μmのものがさらに好ましい。質量平均粒径が0.1μm〜5.0μmの範囲内であれば、分散安定性に優れているからである。
【0038】
ポリオレフィンワックス(G)の配合量は、特に限定されるものではないが、金属表面処理剤を構成する各成分における固形分の合計100質量%に対して、固形分換算で15質量%以下の範囲で配合させることが好ましい。15質量%以下であれば、より優れた塗料密着性、耐溶剤性等を得ることができるからである。
【0039】
また、その他の成分として、被塗面に均一な皮膜を得るための濡れ性向上剤と呼ばれる界面活性剤や増粘剤、溶接性向上のための導電性物質、意匠性向上のための着色顔料や艶消し材料、造膜性向上のための溶剤等を、本発明の効果を損なわない限り添加しても構わない。
【0040】
本発明の亜鉛めっき鋼材及び亜鉛基合金めっき鋼材用の金属表面処理剤は、前記(A)〜(E)、前記(A)〜(F)又は前記(A)〜(G)に加えて、更に、水を含有してもよい。
【0041】
(亜鉛めっき鋼材及び亜鉛基合金めっき鋼材用の金属表面処理剤の製造方法)
本発明の金属表面処理剤は、例えば、前記アクリル樹脂(A)の樹脂粒子が分散した水分散液に、前記水ガラス化合物(B)、前記ジルコニウム化合物(C)、前記リン化合物(D)、及び前記バナジウム化合物(E)を混合して前記金属表面処理剤を調製し、更に、必要に応じて、前記シラン化合物(F)、前記ポリオレフィンワックス(G)、水、その他の成分から選ばれる1種以上を混合することにより製造できる。
【0042】
[亜鉛めっき鋼材及び亜鉛基合金めっき鋼材の被覆方法]
本発明の被覆方法は、本発明の金属表面処理剤を、亜鉛めっき鋼材及び亜鉛基合金めっき鋼材の表面に塗布して皮膜を形成する工程を含む。この工程を行うことによって平面部耐食性、加工部耐食性、耐指紋性、塗装密着性、耐洗浄性、耐傷付き性、耐溶剤性及び耐熱性に優れた性能を亜鉛めっき鋼材及び亜鉛基合金めっき鋼材に付与することができる。
【0043】
前記皮膜が、優れた平面部耐食性、加工部耐食性、耐指紋性、塗装密着性、耐洗浄性、耐傷付き性、耐溶剤性及び耐熱性を示す理由は以下のように推定されるが、本発明はかかる推定によって何ら制限されるものではなく、また、かかる推定は本発明の特許性に何ら不利な影響を及ぼすものではない。
【0044】
アクリル樹脂(A)と、水ガラス化合物(B)と、ジルコニウム化合物(C)により皮膜の骨格が形成される。ジルコニウム化合物(C)によりバリア的皮膜が形成されると考えられるが、それだけではプレス成形時の応力で皮膜に細かなクラックが形成され、耐食性が得られにくい。そこで、皮膜に特定の樹脂(アクリル樹脂(A))を適量配合することにより、皮膜中でバインダーとして機能するとともに、皮膜が受ける応力を緩和できるようになる。さらに、クラックが発生した場合、腐食環境下においてクラック部に水ガラス化合物(B)が徐々に溶出され、耐食性の低下を防ぐことができる。
また、一般的なアクリル樹脂は直鎖構造であるため、溶剤により膨潤されやすく、耐溶剤性が低い。しかしながら、上述したアクリル樹脂(A)は、溶解性パラメータの異なる各種モノマーがバランス良く配合されているので、複数の溶剤に対する耐溶剤性に優れている。
また、上述したようにジルコニウム化合物(C)とアクリル樹脂(A)は皮膜の骨格を形成する成分であり、一旦乾燥すると再度水には溶解せずバリア的効果を有すると考えられる。これに対して、バナジウム化合物(E)とリン化合物(D)は、皮膜中に均一に分散し、水に溶けやすい形態で存在し、いわゆる亜鉛腐食時のインヒビター効果を有する。すなわち、バナジウム化合物(E)は不動態化作用により亜鉛の腐食自体を抑制する。また、リン化合物(D)は、亜鉛と接触した際に亜鉛をエッチングして、溶解してきた亜鉛と難溶性の金属塩を形成して、あるいは亜鉛の腐食が起きた時に、亜鉛イオンを皮膜中で捕捉して、それ以上の腐食を抑制するものと考えられる。このように腐食抑制機構の異なるインヒビターを併用することで、優れた耐食性を得ることができる。また、アクリル樹脂(A)を配合すると、バナジウム化合物(E)とリン化合物(D)が水に溶出するのを抑制する効果が発現するため、優れた耐食性を有するものと考えられる。
【0045】
前記金属表面処理剤による皮膜の形成は、例えば、前記金属表面処理剤を亜鉛めっき鋼材または亜鉛基合金めっき鋼材の表面に塗布することによって行うことができる。なお、前記金属表面処理剤を亜鉛めっき鋼材または亜鉛基合金めっき鋼材の表面に塗布する前に、必要に応じて脱脂処理を行ってもよい。塗布の方法は特に限定されず、一般に使用されるロールコート、エアスプレー、エアレススプレー、浸漬等の方法を適宜採用することができる。皮膜の硬化性を高めるために、あらかじめ被塗物を加熱しておくか、塗布後に塗布物を熱乾燥させることが好ましい。加熱あるいは乾燥の温度は、亜鉛めっき鋼材または亜鉛基合金めっき鋼材の最高到達温度(PMT)が20〜250℃であることが好ましく、50〜220℃であることがより好ましい。上記温度が20℃以上において、水分の蒸発速度が速く充分な成膜性が得られ、その結果、耐溶剤性や耐アルカリ性が向上する。一方、250℃以下であると樹脂の熱分解が生じにくくなり耐溶剤性や耐アルカリ性が向上し、また黄変による外観不良を抑制できる。また、本発明の金属表面処理剤は、室温(20℃)付近での低温条件下であっても水分が蒸発して乾固することができ、優れた性能を有する皮膜を形成することができる。なお、塗布後に熱乾燥させる場合の乾燥時間は1秒〜5分が好ましい。
【0046】
[被覆鋼材]
本発明の被覆鋼材は、本発明の被覆方法により得られる。このようにして得られた、本発明の被覆鋼材は、平面部耐食性、加工部耐食性、耐指紋性、塗装密着性、耐洗浄性、耐傷付き性、耐溶剤性及び耐熱性の全てにおいて優れた性能を有する。
【0047】
本発明では、亜鉛めっき鋼板または亜鉛基合金めっき鋼材の表面に皮膜が形成される。該皮膜の量としては、固形分質量換算で0.5〜2.0g/mであることが好ましい。これは、皮膜量が0.5g/m以上である場合に、より優れた耐傷つき性、加工部耐食性及び耐指紋性を得ることができるからである。また、皮膜量が2.0g/m以下である場合に、より優れた導電性を得ることができるからである。
【0048】
また、本発明の被覆鋼材は、上記皮膜の上に上塗り塗料を塗布してさらに塗膜を形成したものであってもよい。上塗り塗料としては、例えば、アクリル樹脂、アクリル変性アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、フタル酸樹脂、アミノ樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂等を含む塗料などが挙げられる。
【0049】
上塗り塗料の塗膜の膜厚は、被覆鋼材の用途、使用する上塗り塗料の種類等によって適宜決定され、特に制限されない。通常、5〜300μm、より好ましくは10〜200μmである。上塗り塗料の塗膜の形成は、上記金属表面処理剤により形成された皮膜の上に上塗り塗料を塗布し、加熱乾燥して硬化させることにより行うことができる。乾燥温度及び時間は、塗布される上塗り塗料の種類、塗膜の膜厚等に応じて適宜調整されることになるが、通常、乾燥温度としては、50〜250℃が好ましく、乾燥時間としては、5分〜1時間が好ましい。上塗り塗料の塗布方法としては、塗料形態に応じて、従来公知の方法により行うことができる。
【0050】
本発明に用いられる亜鉛めっき鋼材または亜鉛基合金めっき鋼材としては、例えば、亜鉛−ニッケルめっき鋼材、亜鉛−鉄めっき鋼材、亜鉛−クロムめっき鋼材、亜鉛−アルミニウムめっき鋼材、亜鉛−チタンめっき鋼材、亜鉛−マグネシウムめっき鋼材、亜鉛−マンガンめっき鋼材、亜鉛−アルミニウム−マグネシウムめっき鋼材、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム−シリコンめっき鋼材等の亜鉛系めっき鋼材、さらにはこれらのめっき層に、少量の異種金属元素又は不純物として、コバルト、モリブデン、タングステン、ニッケル、チタン、クロム、アルミニウム、マンガン、鉄、マグネシウム、鉛、ビスマス、アンチモン、錫、銅、カドミウム、ヒ素等が含有されたもの、シリカ、アルミナ、チタニア等の無機物が分散されたものが含まれる。
更には、上記めっき層と、他の種類のめっき層、例えば鉄めっき、鉄−りんめっき、ニッケルめっき、コバルトめっき等のめっき層と、を組み合わせた複層めっきにも適用可能である。めっき層の形成は特に限定されるものではなく、公知の電気めっき法、溶融めっき法、蒸着めっき法、分散めっき法、真空めっき法等のいずれの方法を用いて行うことができる。
【実施例】
【0051】
以下に本発明の実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
【0052】
<亜鉛めっき鋼材または亜鉛基合金めっき鋼材>
実施例および比較例で使用する亜鉛めっき鋼材または亜鉛基合金めっき鋼材を以下に示す。
新日鐵住金株式会社製の、電気亜鉛めっき鋼板「NSジンコート(登録商標)」(以降、「EG」と称する。)、溶融亜鉛めっき鋼板「NSシルバージンク(登録商標)」(以降、「GI」と称する。)、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム−シリコン合金めっき鋼板「スーパーダイマ(登録商標)」(以降、「SD」と称する。)、及び亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板「NSジンクライト(登録商標)」(以降、「ZL」と称する。)、並びに日鉄住金鋼板株式会社製の亜鉛−アルミニウム合金めっき鋼板「ガルバリウム鋼板(登録商標)」(以降、「GL」と称する。)を原板として使用した。
原板の板厚は、0.8mmのものを使用した。EGは、めっき付着量が片面20g/mのものを用いた。また、GI、SD、GLは、めっき付着量が片面60g/mのものを用いた。ZLは、めっき付着量が片面20g/mであり、めっき層中のニッケル量が12質量%のものを用いた。
【0053】
<原板の洗浄>
上記各種鋼板を中アルカリ脱脂剤(ファインクリーナーE6406、日本パーカライジング(株)製)で脱脂処理した。尚、脱脂は、濃度20g/Lの中アルカリ脱脂剤を、温度60℃で10秒間スプレーすることにより行った。脱脂処理後、水道水を10秒間スプレーし、風乾した。
【0054】
表1にアクリル樹脂の合成に使用した各モノマーを示す。表2−1及び表2−2に実施例および比較例に使用した、アクリル樹脂(A)の各モノマーの配合比率あるいはアクリル樹脂(A)の情報を、表3に使用した水ガラス化合物(B)を、表4に使用したジルコニウム化合物(C)を、表5に使用したリン化合物(D)を、表6に使用したバナジウム化合物(E)を、表7に使用したシラン化合物(F)を、表8に使用したポリオレフィンワックス(G)を、それぞれ示す。なお、表2−1及び表2−2に示すA1〜A33の各種アクリル樹脂(A)は、表2−1及び表2−2に示す各モノマーと、反応性乳化剤とを用いて、乳化重合反応を行うことにより製造した。これらの各種アクリル樹脂(A)は、重量平均分子量が約30万(250000以上350000未満)となるように、乳化重合反応の温度及び時間を調整することにより得られた。
【0055】
<金属表面処理剤の調製>
表9−1〜表9−4に調製した実施例および比較例の金属表面処理剤の組成を示す。なお、表9−1〜表9−4における各成分の量は、金属表面処理剤の固形分合計質量(W)に対する各成分の固形分質量の割合を意味する。金属表面処理剤は、攪拌しながら脱イオン水に各成分を順次添加し、固形分の最終の合計質量が15%となるように調整した。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2-1】
【0058】
【表2-2】
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】
【表6】
【0063】
【表7】
【0064】
【表8】
【0065】
【表9-1】
【0066】
【表9-2】
【0067】
【表9-3】
【0068】
【表9-4】
【0069】
<試験板作製方法>
試験板作製方法としては、表9−1〜表9−4の組成比率で調製された各金属表面処理剤を、洗浄した原板にバーコーターを用いて塗布し、280℃で14秒間乾燥した。この時の到達板温度は140℃であった。なお、目標付着量は1.0g/mとした。尚、試験水準により到達板温度および付着量は適宜変更した。到達板温度および付着量は、乾燥時間および金属表面処理剤の固形分合計質量を適宜変更する事で調整した。
【0070】
上記にて作製した各試験板を適宜切断加工して試験片を作製し、各種評価試験を行った。
(1)平面部耐食性
JIS Z 2371に記載されている塩水噴霧試験方法に準じて試験を行い、塩水噴霧72時間後の白錆発生率を測定した。その結果を下記評価基準に従い評価した。
<評価基準>
◎:白錆発生面積率が全面積の5%未満
○:白錆発生面積率が全面積の5%以上10%未満
△:白錆発生面積率が全面積の10%以上30%未満
×:白錆発生面積率が全面積の30%以上
【0071】
(2)加工部耐食性
試験片に6mmのエリクセン加工を施し、JIS Z 2371に記載されている塩水噴霧試験方法に準じて試験を行い、塩水噴霧48時間後の加工部における白錆発生率を測定した。その結果を下記評価基準に従い評価した。
<評価基準>
◎:白錆発生面積率が加工部面積の5%未満
○:白錆発生面積率が加工部面積の5%以上10%未満
△:白錆発生面積率が加工部面積の10%以上30%未満
×:白錆発生面積率が加工部面積の30%以上
【0072】
(3)耐溶剤性
試験片の表面に、各種溶剤(エタノール、メチルエチルケトン、キシレン、またはベンジン(JIS K 2201))を染み込ませたガーゼを荷重500gで押し付け、10回往復させて擦った。擦った後の外観を観察し、その結果を下記評価基準に従い評価した。
<評価基準>
◎:擦った部分を目視で判別することが出来ない
○:極僅かに擦った部分を目視で判別することが出来る
△:擦った部分を目視で容易に判別することが出来る
×:擦った部分に金属表面が露出していることが確認できる
【0073】
(4)耐熱性
試験片を乾燥オーブンで加熱し、加熱前後の色調(L、a、b)を測定し、下記計算式によりΔEを算出し、その結果を下記評価基準に従い評価した。尚、加熱は、250℃で1時間行った。
<計算式>
ΔE=((ΔL+(Δa+(Δb0.5
ΔL=L(脱脂後)−L(脱脂前)
Δa=a(脱脂後)−a(脱脂前)
Δb=b(脱脂後)−b(脱脂前)
<評価基準>
◎:ΔEが1未満
○:ΔEが1以上3未満
△:ΔEが3以上5未満
×:ΔEが5以上
【0074】
(5)塗装密着性
試験片に、メラミンアルキッド樹脂塗料(関西ペイント(株)製、アミラック#1000)を乾燥膜厚が25μmとなるように塗布し、炉温130℃で20分間焼き付けた。次に、1晩放置した後、沸騰水に30分浸漬したものに対し、7mmエリクセン加工を施し、粘着テープ(ニチバン(株):商品名セロテープ)を試験片のエリクセン加工部に張り付けた。粘着テープを速やかに斜め45゜の方向に引っ張り、エリクセン加工部の外観を目視で観察した。その結果を下記評価基準に従い評価した。
<評価基準>
◎:剥離なし
○:剥離面積率が5%未満
△:剥離面積率が5%以上、50%未満
×:剥離面積率が50%以上
【0075】
(6)耐洗浄性
試験片をアルカリ脱脂剤(登録商標:ファインクリーナーE6406、日本パーカライジング(株)製)で脱脂し、アルカリ脱脂前後の色調(L、a、b)を測定し、下記計算式によりΔEを算出し、その結果を下記評価基準に従い評価した。尚、脱脂は、濃度20g/Lのアルカリ脱脂剤を、温度60℃で2分間スプレーすることにより行った。
<計算式>
ΔE=((ΔL+(Δa+(Δb0.5
ΔL=L(脱脂後)−L(脱脂前)
Δa=a(脱脂後)−a(脱脂前)
Δb=b(脱脂後)−b(脱脂前)
<評価基準>
◎:ΔEが1未満
○:ΔEが1以上3未満
△:ΔEが3以上5未満
×:ΔEが5以上
【0076】
(7)耐傷付き性
試験片同士を1cm×1cmの面積に対して1kgの荷重で押し当てて10回往復させて擦る摩擦摺動試験を行い、その結果を下記評価基準に従い評価した。
<評価基準>
◎:摺動跡なし
○:摺動跡はあるが、目立たない
△:摺動跡が確認できる
×:摺動跡が目立つ
【0077】
(8)耐指紋性
試験片に指を0.5kgの荷重で押し当て付着した指紋を観察し、その結果を下記評価基準に従い評価した。
<評価基準>
◎:指紋が見えない
○:指紋はあるが、目立たない
△:指紋が確認できる
×:指紋が目立つ
【0078】
以上の評価結果を表10−1〜表10−6に示す。
【0079】
【表10-1】
【0080】
【表10-2】
【0081】
【表10-3】
【0082】
【表10-4】
【0083】
【表10-5】
【0084】
【表10-6】
【0085】
表10−1〜表10−6に示すように、No.1〜71の試験板は何れの評価項目においても◎もしくは○の評価(特に優れた評価もしくは優れた評価)であり、実用レベルの性能が得られている。一方、No.72〜97の試験板は評価項目の一部において△もしくは×の評価がなされており、実用レベルの性能が得られていなかった。