特許第6367466号(P6367466)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367466
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】水洗式便器
(51)【国際特許分類】
   E03D 11/08 20060101AFI20180723BHJP
   E03D 11/13 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   E03D11/08
   E03D11/13
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-504453(P2017-504453)
(86)(22)【出願日】2015年3月9日
(86)【国際出願番号】JP2015056813
(87)【国際公開番号】WO2016143029
(87)【国際公開日】20160915
【審査請求日】2017年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 康宏
(72)【発明者】
【氏名】松原 光
【審査官】 藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−229738(JP,A)
【文献】 特開2011−174363(JP,A)
【文献】 特開2014−5594(JP,A)
【文献】 特開2013−194410(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00 − 7/00,11/00 − 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の吐水口を有する便鉢部と、前記便鉢部の滞留水を排出するための排水管と、を含む便器本体と、
前記第1および第2の吐水口に洗浄水を供給する給水部と、を備え、
前記第2の吐水口は、前記第1および第2の吐水口の間の後部領域に向けて吐水して第2の水流を形成し、
前記第1の吐水口は、前記第2の水流の方向において前記第2の吐水口よりも前方に設けられ、前記便鉢部の上部に吐水して周方向に旋回する第1の水流を形成し、
前記第2の吐水口の開口は、前記第1の吐水口の開口よりも上方に位置することを特徴とする水洗式便器。
【請求項2】
前記便鉢部の内壁には、更に、前記第1の吐水口から第1の導水手段が周方向に形成され、前記第2の吐水口から第2の導水手段が周方向に形成され、かつ、前記第2の導水手段は前記第1の導水手段と連続的につながることを特徴とする請求項1に記載の水洗式便器。
【請求項3】
前記第1の導水手段は前記第2の吐水口に至る前に終端されることを特徴とする請求項2に記載の水洗式便器。
【請求項4】
前記便鉢部の内壁には、更に、前記第1の吐水口から第1の導水手段が周方向に形成され、前記第1の導水手段は前記第2の吐水口に至る前に終端されることを特徴とする請求項1に記載の水洗式便器。
【請求項5】
前記給水部から供給される洗浄水の50%を超える水量が前記第1の吐水口に配分されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の水洗式便器。
【請求項6】
前記第1の吐水口と前記第2の吐水口の距離は、前記便鉢部の内周の1/4以上2/5以内であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の水洗式便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水洗式便器、特に、複数の吐水口から洗浄水を吐出するタイプの水洗式便器に関する。
【背景技術】
【0002】
水洗式便器においては、1以上の吐水口から便鉢部に洗浄水を吐出し、その洗浄水の勢いによって汚物を排水管に押し出す洗浄方式が知られている。以下、便器内部から汚物を排水管に押し出す力のことを「排出力」とよぶことにする。また、便鉢部の内壁面に汚物のカスが残らないようにするため、便鉢部の内壁面を広範囲にわたって洗浄する水流も必要である。以下、便鉢内壁を洗う力のことを「洗浄力」とよぶことにする。特許文献1では、便鉢の左側上部に設けられる第1吐水口から便鉢内壁に沿って第1の水流を吐出することにより旋回水流を形成し、便鉢内壁を洗い流している(特許文献1の図4参照)。更に、便鉢の右側上部に設けられた第2吐水口から吐出される第2の水流を旋回後の第1の水流と合流させることで、排出力を強化している。
【特許文献1】国際公開2014/027499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように、水洗式便器には、排出力と洗浄力という2つの機能が求められる。特許文献1に記載の水洗式便器によれば、第1の水流によって便鉢内壁の両側面および前端面を広範囲に洗い流すことができる。
【0004】
本発明者らは、更に、便鉢内壁の後端面、特に、後端面の上部(以下、単に「後部領域」とよぶ)も汚物の飛沫で汚れやすいことを認識した。特許文献1の第1の水流は、便鉢内壁の側面、前端面、後端面下部を洗浄するが後部領域(後端面上部)までは充分に届かない可能性がある。また、第2の水流は、第1の水流の下方向に流れる力、すなわち、排出力を強化するためのものであり、やはり後部領域には充分に届かない可能性がある。
【0005】
本発明は、本発明者による上記課題認識に基づいて完成されたものであり、その主たる目的は、水洗式便器において、汚物の飛散によって汚れやすい便鉢の後部領域を効果的に洗浄するための技術、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における水洗式便器は、便器本体と給水部を備える。便器本体は、第1および第2の吐水口を有する便鉢部と、便鉢部の滞留水を排出するための排水管を含む。給水部は、第1および第2の吐水口に洗浄水を供給する。
第2の吐水口は、前記第1および第2の吐水口の間の後部領域に水平方向に吐水して第2の水流を形成する。第1の吐水口は、第2の水流の方向において第2の吐水口よりも前方に設けられ、便鉢部の上部に吐水して周方向に旋回する第1の水流を形成する。
第2の吐水口の開口は、第1の吐水口の開口よりも上方に位置する。
【0007】
上記構成を有する水洗便器は、汚物の飛沫で汚れやすい後端面、特に、その上部領域である後部領域を洗うための吐水口(第2の吐水口)を設けることにより、水洗式便器の洗浄効果をいっそう高めている。後部領域の上端付近をできる限り洗い残さないように、第2の吐水口は第1の吐水口よりも高い位置に設けられる。
【0008】
上記構成の水洗便器において、便鉢部の内壁には、更に、第1の吐水口から第1の導水手段が周方向に形成され、かつ、第2の吐水口から第2の導水手段が周方向に形成されることが好ましい。この場合、第2の導水手段は第1の導水手段と連続的につながることが好ましい。
【0009】
上記構成の水洗便器において、第1の導水手段は第2の吐水口に至る前に終端されることが好ましい。
【0010】
上記構成の水栓便器において、給水部から供給される洗浄水の50%を超える水量が第1の吐水口に配分されることが好ましい。
【0011】
上記構成の水洗便器において、第1の吐水口と第2の吐水口の距離は、便鉢部の内周の1/4以上2/5以内であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】水洗式便器の上面図である。
図2】水洗式便器の側断面図である。
図3】水洗式便器の第1の斜視図である。
図4】第1吐水口および第2吐水口の高低関係を説明するための模式図である。
図5】第1吐水口付近の拡大斜視図である。
図6】水洗式便器の第2の斜視図である。
図7】水洗式便器の第3の斜視図である。
図8】第1の変形例における水洗式便器の斜視図である。
図9】第2の変形例における水洗式便器の斜視図である。
図10】第3の変形例における水洗式便器の斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、水洗式便器の一例を示す上面図である。図2は、図1に例示する水洗式便器の側断面図である。
以下の実施形態においては、二つの吐水口から洗浄水を吐出させ旋回流を作り出すことにより便器内を洗浄する方式を例にとり説明する。ただし、本発明は二つの吐水口を有する構成に限定されず、二つ以上の吐水口を持つ水洗式便器100に適用可能である。
【0014】
水洗式便器100は、便器本体102と給水部104に大別される。便器本体102は、便鉢部106、溜水部118および排水管120を含む。溜水部118は、便鉢部106の下部に形成され、排水管120は溜水部118を介して便鉢部106とつながる。給水部104は、便鉢部106へ洗浄水を供給する。
【0015】
便鉢部106は、汚物を受け止めるためのボウル状の内壁を有する容器として構成される。本実施形態における便鉢部106は、第1吐水口112(メインの吐水口)と第2吐水口114(サブの吐水口)の2つの吐水口を備える。
【0016】
溜水部118には、常時、滞留水が溜められており、これにより排水管120の臭いを遮断する。溜水部118に落ちた汚物は、滞留水とともに洗浄水によって排水管120に押し出される。
【0017】
便鉢部106の上端部には洗浄水の「通水路(通水が想定される通路)」が便鉢部106上縁沿いに形成される。第1吐水口112は、便鉢部106の上縁沿いの通水路と連通して設置される。第1吐水口112から吐出される洗浄水(以下、第1吐水口112から吐出される洗浄水が形成する水流を「第1水流S1」とよぶ)は、第1吐水口112から、便鉢部内に吐水される。すなわち、第1水流S1は、第1吐水口から周方向に吐水される。ここで「周方向」とは、便鉢部の上端沿いの通水路に沿う方向を意味する。第1水流S1は、便鉢部102の内壁面(前端面および両側面)を周回又は旋回しながら螺旋状に便鉢内を降下し、溜水部118に落水した後、排水管120から排水される。第1水流S1は、便鉢部102の内壁を広く洗浄することで洗浄力を提供するとともに、その落水時の水圧により排出力も提供する。
【0018】
一方、第2吐水口114の第一の目的は、便鉢部102の後端面の上部(後部領域110)を洗浄することである。第2吐水口114も、便鉢部106の上縁沿いに設けられた通水路と連通して設置される。なお、本実施形態においては、第1吐水口及び第2吐水口は通水路内を通過してきた洗浄水が便器内へ流入する出口となっている。
後部領域110は、男子小便時に小便が当該領域に直接接触することによる付着汚れが付きやすい。また、溜水部の位置や形状等によっては、小便、大便、その他汚物の飛沫や跳ね返りによる付着汚れが他の箇所より付きやすい場合がある。後部領域110の付着汚れを取り除くため第1水流S1を大きく旋回させた後に後部領域110まで到達させる方法も考えられるが、そのような方法では充分な水勢・充分な水量の洗浄水を後部領域110の広域、特に、後部領域110の上端付近に届かせにくい。そこで、本実施形態においては、この汚れやすい後部領域110を洗浄するために第2吐水口114を設けている。また、第2吐水口114は、後部領域110を洗浄するだけでなく、旋回水流の一部となって便鉢部106の広域洗浄に寄与し、汚物を排水管120に押し出す流れの一部となって排出力の強化にも寄与する(詳細は後述する)。
【0019】
本実施形態における「後部領域110」とは、便鉢部102の内壁後部上方の領域であって、汚物の飛沫付着が特に想定される領域(汚染想定領域)を意味する。後部領域110とは、少なくとも第1吐水口112から第2吐水口114の間の領域である。より具体的には、便鉢部102の内周重心をPとしたとき、後部領域110が重心Pに対して形成する角度aが、30度から80度の範囲、少なくとも30度から60度の範囲を後部領域110の周長として定義する。また、少なくとも、後部領域110の高さZ2は、便鉢部106の上端から溜水部118の水面までの距離Z1(図2参照)に対して半分以下である。本実施形態においては、便鉢部106の上端から第2導水手段124(後述)までの範囲を後部領域110の高さとして定義する。ここでいう「導水手段」とは、棚のように便鉢部106から内側に向けてせり出すことにより、あるいは、便鉢部106に設けられるくぼみとして、通水路を規定するための構造を意味するものである。導水手段の上部は水平面である必要はなく、傾斜面を含む形状であってもよい。
【0020】
第2吐水口114から吐出される洗浄水(以下、第2吐水口114から吐出される洗浄水が形成する水流を「第2水流S2」とよぶ)は、後部領域110に向けて水平方向に吐水されたあと、第1水流と合流するが、その詳細は後述する。ここでいう「水平方向」とは、厳密な水平方向ではなく、少なくとも、第2水流S2の初速度について、垂直方向の速度ベクトルよりも水平方向の速度ベクトルが大きいことを意味する。第2吐水口114は、特に、後部領域110の上端付近まで漏れなくカバーできるように洗浄することが理想である。
【0021】
第1吐水口112は、第2水流S2の方向(図1では反時計回り)において、第2吐水口114よりも前方(下流側)に形成される。図1では、水洗式便器100をX方向(正面方向)から見たときの右後方に第2吐水口114が形成され、左側方に第1吐水口112が形成されている。第1吐水口112の先端から第2吐水口114の先端までの範囲に後部領域110が包含される。具体的には、第1吐水口112の先端と第2吐水口114の先端が重心Pに対して形成する角度b(>a)は、90度(便鉢内周の1/4)から144度(便鉢内周の2/5)の範囲、より好ましくは、100度から140度の範囲である。また、給水部104から供給される洗浄水の大半(50%を超える水量)、好ましくは、70〜85%は第1吐水口112に配分され、残りが第2吐水口114に配分される。
【0022】
第2吐水口114の先端である始点Q2から、第1吐水口112の終端である終点R2まで、第2水流S2のガイドレールとしての第2導水棚124が形成される。第2導水棚は第2導水手段の一実施形態である。第2吐水口114から吐出される第2水流S2は、第2導水棚124の上に形成される(図3,4に関連して詳述)。第1吐水口112の先端である始点Q1から便鉢部106の左側面、前端面および右側面にわたって、第1水流S1のガイドレールとしての第1導水 棚122が形成される。第1導水棚は第1導水手段の一実施形態である。第1導水棚122は、第2吐水口114の先端に至る手前の終点R1で終端される。このため、終点R1と第2導水棚124の始点Q2の開口部130が形成される。開口部130については図7に関連して詳述する。
【0023】
図3は、水洗式便器100の第1の斜視図である。
図3に示す水洗式便器100は、便鉢部106の上端部が内側に向けてせり出すことにより便器上面126への水の跳ね上がりを防ぐためのパーツ(オーバーハング)を有さないタイプである。水洗式便器100は、オーバーハングを持たないことにより、デザインをシンプルにできる。
【0024】
第2吐水口114は、便鉢部102の後部領域110に洗浄水を吐出する。第2吐水口114から第1吐水口112までは第2水流S2のガイドレールとして第2導水手段124が形成される。第2吐水口114から吐出された洗浄水は後部領域110を洗浄したあと第2導水手段124に沿って第2水流S2を形成し、第1吐水口112に至る。
【0025】
第1吐水口112は、便鉢部102の内壁上部において周方向に洗浄水を吐出する。第1吐水口112からは、便鉢部102の周方向に沿って第1導水手段122が形成される。第1吐水口112から吐出された洗浄水は、第1導水手段122に沿って第1水流S1を形成し、便鉢部102の前端面および側面の上方を旋回するが、詳細は後述する。
【0026】
第2導水棚124は、滑らかに、いいかえれば、連続的に第1導水棚122と結合する。このため、第2導水棚124に形成される第2水流S2は第1導水棚122に形成される第1水流S1とスムーズに合流する。いいかえれば、第2水流S2は、第1吐水口112の付近で第1水流S1の一部となり、一体となって便鉢部102の内壁上部を旋回しつつ螺旋状に下降する。以下、第1水流S1および第2水流S2が合流したあとの水流のことを「旋回水流S0」とよぶことにする。旋回水流S0の大部分は第1水流S1であるが、第2水流S2も含まれている。
【0027】
図4は、第1吐水口112および第2吐水口114の高低関係を説明するための模式図である。図5は、第1吐水口112付近の拡大斜視図である。
上述のように、第1水流S1の役割は、第1導水手段122に沿って通水路(便鉢部102の内壁上部)を旋回することで便鉢部102を広域洗浄し、かつ、溜水部118に溜まっている汚物を排水管120に押し出すことである。一方、第2水流S2の主たる役割は、後部領域110を局所洗浄することである。後部領域110は、その上端付近まで汚れる可能性があるため、第2吐水口114からの吐水は後部領域110のなるべく高いところまで届くことが好ましい。このため、第2水流S2が後部領域110よりも上に飛び出して水洗式便器100の上面126まで飛散しない程度に、第2吐水口114は可能な限り高く設置されることが望ましい。
【0028】
一方、第1水流S1の場合、便鉢部102の内壁上端まで届かせる必要性は第2水流S2よりも低い。以上の設計目的に鑑みて、本実施形態においては、第1吐水口112よりも第2吐水口114を高い位置に形成している。図4において、第1吐水口112の開口下端の高さをH4、第1吐水口112の開口幅をZ4、第1吐水口112の開口上端の高さをH6、第1吐水口112の開口中央の高さをH5とする。ここでいう「高さ」とは水洗式便器100の底面からの高さ、または、溜水部118の滞留水の水面からの高さ、水洗式便器100が設置される床面からの高さとして定義される。この場合、H5=H4+Z4/2、H6=H4+Z4である。
【0029】
同様に、図4において、第2吐水口114の開口下端の高さをH1、第2吐水口114の開口幅をZ3、第2吐水口114の開口上端の高さをH2、第2吐水口114の開口中央の高さをH3とする。この場合、H3=H1+Z3/2、H2=H1+Z3である。
【0030】
ここで「第1吐水口112よりも第2吐水口114が高い」とは、
(1)H1≧H4(下端比較)かつH3>H5(中央比較)であること
(2)H1<H4(下端比較)であるが、H3>H5(中央比較)かつH2>H6(上端比較)であること
(3)H3≦H5(中央比較)であるが、H1>H4(下端比較)であること
のいずれかを意味する。本実施形態(図4)は、(1)に対応する。
【0031】
(1)は、開口中心(S3,S5)を比較したときに第2吐水口114は第1吐水口112よりも高い位置にあり、かつ、開口下端を比較したときに第2吐水口114の開口下端が第1吐水口112の開口下端と同じ高さまたはそれ以上であることを意味する。この場合、第2導水手段124は、第2吐水口114から水平または下方向に傾斜する。
(2)は、開口下端(S1,S4)を比較したときに第2吐水口114は第1吐水口112よりも低くなるため、第2導水手段124は上方向に傾斜する。その代わり、開口中心も開口上端も第2吐水口114の方が第1吐水口112よりも高い。
(3)は、開口中心(S3,S5)を比較したときに第2吐水口114は第1吐水口112よりも低い位置にあるものの、開口下端(S1,S4)を比較したときに第2吐水口114は第1吐水口112よりも高い位置にあるため、第2導水手段124は、下方向に傾斜する。
上記いずれの場合も、第2吐水口114から吐出される洗浄水の全部または一部に第1吐水口112から吐出される洗浄水よりも高い位置エネルギーが付与される点がポイントである(理由は後述)。
【0032】
第1水流S1が便鉢部102の内壁面を広域洗浄できるように、第1吐水口112には第2吐水口114に比べて多くの洗浄水が配分される。このため、吐水量が大きい第1吐水口112を高い位置に設置すると吐水量が比較的小さな第2吐水口114よりも水が飛散する可能性が高い。一方、第2吐水口114は比較的吐水量が少ないため、第1吐水口112よりも上方に設置しやすい。このような観点からも、第1吐水口112に洗浄水の大部分(50%以上、好ましくは70〜85%)を配分する代わりに、第2吐水口114を第1吐水口112よりも高い位置に設けることは合理的である。
【0033】
第2水流S2は、後部領域110を洗ったあと、下方に傾斜する第2導水手段124に沿って第1吐水口112に向かう。第2導水手段124はガイドレールとして、第2水流S2の通水路を形成している。第2導水手段124は、第1導水手段122と滑らかに結合している(図5参照)。ここでいう「滑らか」とは連続的(linear and continuous)で実質的な段差を持たないことを意味する。
【0034】
第1水流S1および第2水流S2の方向は上方から見たときにどちらも反時計回りであるが、第2吐水口114よりも第1吐水口112の方がその水流方向においては前方に形成される。このため、第1吐水口112と第2吐水口114の高さが同じであるとすると、第2水流S2は第1水流S1と合流するまでに運動エネルギー(水勢)の一部を失うために、合流時において両水流の水勢に差がつきやすい。しかし、本実施形態においては、第2吐水口114を第1吐水口112よりも高い位置にあるため、位置エネルギーのアドバンテージ分だけ第2水流S2に勢いを追加できる。このように、第2吐水口114は第1吐水口112より後方から吐水するものの、第2吐水口114は第1吐水口112よりも高い位置から吐水するため、第1の水流の水勢と第2の水流の水勢を近づけることが可能となり、2つの水流のスムーズな合流が達成されている。
【0035】
洗浄水の70〜85%を第1吐水口112に配分する場合を想定すると、第1吐水口112の先端から第2吐水口114の先端までの円弧は、便鉢部102の全周の1/4〜2/5程度とすることが好ましい。このような設計によれば、洗浄対象となる後部領域110(汚染想定領域)として、充分な大きさの領域を確保しつつ、第2吐水口114からの比較的少ない洗浄水でこの後部領域110をその上端付近までしっかりと洗浄し、かつ、第1水流S1に第2水流S2を同程度の水勢で合流させやすくなる。
【0036】
第1吐水口112と第2吐水口114を近づけすぎると、洗浄対象となる汚染想定領域(後部領域110)の一部にいずれかの吐水口が入り込んでしまう。たとえば、第1吐水口112を側方ではなく後方に設置すると、第1吐水口112が汚物で汚れてしまうかもしれない。汚染想定領域(後部領域110)として充分な大きさの領域を確保するため、第1吐水口112と第2吐水口114はある程度離隔する必要がある。反面、2つの吐水口を離しすぎると、第2の水流が第1の水流に合流する前に水勢を失いすぎてしまう。このようなトレードオフを考慮して設計する必要がある。
【0037】
図6は、水洗式便器100の第2の斜視図である。
第1水流S1および第2水流S2は合流して、旋回水流S0を形成する。旋回水流S0は、第1導水手段122に沿って、便鉢部102の内壁上部に周方向に形成される。旋回水流S0の一部は、第1導水手段122から落下して便鉢部102の内壁を洗うが、大部分は第1導水手段122に沿って終点R1(図1参照)まで周回する。このように、第1導水手段122は、旋回水流S0のガイドレールとして、旋回水流S0の通水路を形成している。
【0038】
図7は、水洗式便器100の第3の斜視図である。
第1導水棚122は、便鉢部102の内壁を一周し、その終端部である棚終端部128が第2吐水口114の手前に形成される。棚終端部128は徐々に狭まり、第2吐水口114の手前の終点R1で終端されるため、終点R1と第2吐水口114の間には棚不連続部130が形成される(図1も参照)。便鉢部102の内部を周回した旋回水流S0は第1導水棚122の棚終端部128に至るまでに徐々に水勢を失い、最終的には、旋回水流S0の大部分が開口部130から溜水部118に向けて落下する。便鉢部102は、棚不連続部130において滑らかな内壁面を有するため、旋回水流S0は溜水部118にスムーズかつ一気に落下し、その落下した水勢が溜水部118に溜まっている汚物を強力に押し出す。すなわち、旋回水流S0の落下により、排出力が提供される。
【0039】
以上をまとめると、水洗式便器100は、排出力と(前端面および側面を対象とした)広域洗浄力に加えて、後部領域110を対象とした局所洗浄力も提供できる。第1吐水口112の吐水は、第1導水手段122に沿って広範囲に旋回しつつ便鉢部102の内壁面を洗い流し(前面および側面の洗浄力)、棚終端部128を過ぎたあとにまとまった水量にて一気に落下することで汚物を強力に押し流す(排出力)。
【0040】
一方、第2吐水口114の吐水は、後部領域110をいわば狙い撃ちで洗浄し、第2導水手段124に沿って第2水流S2を形成し、第1水流S1とスムーズに合流している。第2水流S2は後部領域110を洗ったあとも旋回水流S0の一部となるために、第2水流S2を無駄なく使うことができる。また、従来、汚れが残りやすかった後部領域110、特に、その上部を洗うために比較的高い位置に第2吐水口114を設けている。このような構造により、便鉢部102の全体としての洗浄効果を高めている。
【0041】
最後に、第1から第3の変形例について付言する。
図8は、第1の変形例における水洗式便器100Aの斜視図である。
第1の変形例においては、第2導水手段124と第1導水手段122を滑らかに接続するのではなく、両者の間に段差を設けている。段差を設ける場合、第2導水手段124は水平であってもよいが、図4に示したようにある程度の傾斜させてもよい。第1の変形例によれば、第2水流S2は第1水流S1に覆い被さるように合流する。いわば、第2水流S2を第1水流S1に乗せるような合流が可能となる。
【0042】
図9は、第2の変形例における水洗式便器100Bの斜視図である。
第2の変形例においては、便鉢部102の上周に沿ってオーバーハング132が形成される。オーバーハング132は水や汚物の飛散を防止する効果がある。このため、オーバーハング132を設ける構成においては、第2吐水口114をいっそう高く設置しやすい。
【0043】
図10は、第3の変形例における水洗式便器100Cの斜視図である。
第3の変形例は、第1および第2の変形例の組み合わせである。すなわち、第1導水手段122と第2導水手段124に段差を設け、かつ、オーバーハング132が形成されている。
【0044】
以上のように、第1吐水口112からの吐水のガイドレールとなる第1導水手段122と第2導水手段124を連続的につなげることで、第1水流S1と第2水流S2をスムーズに合流させやすくなる。第1導水手段122を周回した水流の多くを第2吐水口114の手前で落下する。第1水流S1を便鉢内で1回旋回させたあとにその勢いのまま急落下させることで、汚物を排水管に効果的に押し流しやすくなる。洗浄対象となる後部領域110(汚染想定領域)として、充分な大きさの領域を確保しつつ、第2吐水口114からの比較的少ない洗浄水でこの後部領域110を広域洗浄し、かつ、第1水流S1に第2水流S2を同程度の水勢で合流させやすくなる。
【0045】
これまで説明した実施形態に代表される本発明によれば、第2の吐水口の鉛直方向の高さを第1の吐水口の鉛直方向の高さよりも高い位置に設ける構成により、旋回を補助する補助水流としての機能を維持しながら、便鉢内上部後方の汚れが付着しやすいエリアに効率的に水流を送り出すことができる。その結果、使用する水量を増加させることなく、汚れの付着しやすい上部後方エリアを効率的かつ効果的に洗浄することができる。
【0046】
また、水が旋回する方向に関し、第1の導水手段の始点と、第2の導水手段の終点とを連続的に構成することにより、第1の水流と第2の水流とをスムーズに合流させることができ、便器洗浄性能に効率的に水流を利用することができる。
【0047】
また、水が旋回する方向に関し、第1の導水手段の終点と、第2の導水手段の始点とを不連続に構成することにより、第1の導水手段に案内されて便器内を周回した水流の多くを第2の吐水口の手前で落下させやすくなる。第1の水流を便鉢内で1回旋回させたあとにその勢いのまま急落下させることで、汚物を排水管に効果的に押し流しやすくなる。
【0048】
また、第1の吐水口と第2の吐水口との周方向の距離を、便鉢部の内周の1/4以上2/5以内とする構成により、使用水量を増加させることなく効率的に旋回流を形成し、且つ、第2の吐水口から吐出される水流を利用して効率的に便鉢内面上部後方の汚れの付着しやすい領域を洗浄することができる。この構成は、特に第1吐水口からの吐出する水量と、第2吐水口から吐出する水量が、(7〜8.5):(3〜1.5)の比率のときに最も有効となる。
【0049】
本発明は、上記実施形態に限定されず、添付の請求の範囲を逸脱しない範囲において変更、修正、又は改良が可能であり、そのような変更、修正、又は改良も本発明の請求の範囲に属する。また本開示における形状、機能、構成と均等であると解されるものも本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、水洗式便器、特に、複数の吐水口から洗浄水を吐出するタイプの水洗式便器に応用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10