(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吸い口端側フィルタ材の前記中途部に形成されると共に前記吸い口端側フィルタ材の横断面における中心部を残して切り込まれたスリットによって、前記上流部および前記下流部が相対的に回動自在となっている、請求項3に記載のたばこ製品用フィルタ。
前記たばこ製品用フィルタの外周面に、前記吸い口端側フィルタ材の横断面に偏心配置される前記低通気抵抗部の位置を喫煙者に識別させるための識別手段が付されている、請求項1から6の何れか一項に記載のたばこ製品用フィルタ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るたばこ製品用フィルタの実施形態について、図面を参照して詳しく説明する。本実施形態に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に特定的な記載がない限りは、発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0016】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係るたばこ製品の一例としてのシガレット1の縦断面図である。
図2は、実施形態1に係るシガレット1の外観図である。シガレット1は、たばこロッド2、このたばこロッド2の一端にチップペーパ3を介して接続されたたばこ製品用フィルタの一例としてのフィルタ4を備えている。
【0017】
たばこロッド2は、たばこ刻21を巻紙22で巻き取って円柱状(棒形状)に成形したものであり、「単巻」とも呼ばれる。フィルタ4は、シガレット1の喫煙時に発生する主流煙を通過させた際に、主流煙に含まれる煙成分を濾過(ろか)するための部材であり、たばこロッド2と実質的に同径の円柱状に成形されている。
【0018】
フィルタ4は、喫煙中の任意のタイミングでシガレット1の香喫味を可逆的に変更可能な香喫味可変フィルタである。フィルタ4は、チップペーパ3によって巻装されており、このチップペーパ3を介してたばこロッド2の後端側に接続されている。チップペーパ3は、たばこロッド2の端部とフィルタ4を一体に巻き取ることで、これらを接続(連結)する。以下、フィルタ4の長手方向(軸方向)において、たばこロッド2と接続される方の端部を「前端」と呼び、前端と反対側の端部を「吸い口端(後端)」と呼ぶ。また、フィルタ4を長手方向(軸方向)に沿って切断した断面を「縦断面」と定義し、それとは直交する方向に切断した断面を「横断面」と定義する。また、
図1に示す符号CLは、シガレット1(たばこロッド2、フィルタ4)の中心軸を示す。
【0019】
フィルタ4の内部には、前端側から前段フィルタ材41、キャビティ部42、吸い口端側フィルタ材43がこれらの順に並んで配置されている。キャビティ部42は空洞状の中空空間であり、前段フィルタ材41および吸い口端側フィルタ材43の間に配設されている。
【0020】
前段フィルタ材41は、円柱状に成形したセルロースアセテートの繊維束を巻取紙によって巻き取ったフィルタ材である。但し、本実施形態における前段フィルタ材41は、セルロースアセテートの繊維束に限られず、種々の素材を採用することができる。例えば、前段フィルタ材41は主流煙の煙成分を吸着する吸着材(例えば、活性炭)やその他の添加剤を含んでいてもよい。また、前段フィルタ材41は、主流煙濾過に加え、たばこ刻21やその細粉の吸い口への流入を阻止するメッシュ的な役割を果たす構造としてもよい。また、前段フィルタ材41に香味素材や植物葉(例えば、香料エキス、ミント葉)を含んでいてもよい。
【0021】
吸い口端側フィルタ材43は、フィルタ4の吸い口端側に配置されており、円柱状に成形されると共に軸方向に沿って中空路431が形成されたセルロースアセテートの繊維束を巻取紙によって巻き取ったフィルタ材である。吸い口端側フィルタ材43は、前端面43aから後端面43bに亘って中空路431が形成されている。
【0022】
図3は、実施形態1に係る吸い口端側フィルタ材43の横断面を示す図である。
図3に示すように、吸い口端側フィルタ材43は、その横断面の一部に中空路431が形成されており、横断面の一部に繊維束からなる高通気抵抗部432が形成されている。図示のように、中空路431は半円形状の横断面を有している貫通孔である。中空路431は、成形された繊維束が占有する高通気抵抗部432に比べて相対的に通気抵抗が低く、本発明に係る低通気抵抗部に相当する。尚、本実施形態1では、低通気抵抗部を中空路431とした構成であるが、高通気抵抗部432に対して相対的に通気抵抗が低い、例えばセルロースアセテートの繊維束で構成することができる。
【0023】
図3に示すように、吸い口端側フィルタ材43は、その横断面を2分割する一方の第1半円領域A1内のみに配置されており(存在し)、他方の第2半円領域A2内には配置されていない(存在しない)ことを特徴とする。ここで、第1半円領域A1および第2半円領域A2は、吸い口端側フィルタ材43の横断面を、中心軸CLを中心にして2分割することでそれぞれ得られる平面領域である。
図3に示す例では、吸い口端側フィルタ材43における横断面は、第1半円領域A1の全体が中空路431によって占有され、第2半円領域A2の全体が高通気抵抗部432によって占有されている。そして、このように、吸い口端側フィルタ材43における中空路431が第1半円領域A1内のみに位置付けられることで、中空路431は、吸い口端側フィルタ材43の横断面方向において偏心配置されることになる。
【0024】
なお、本実施形態においては、吸い口端側フィルタ材43における高通気抵抗部432は単一の材料によって形成されており、これによって、高通気抵抗部432の通気抵抗が、横断面方向において一様となっている。つまり、高通気抵抗部432の横断面方向において通気抵抗が変化しないことを意味する。
【0025】
ここで、
図2に示すように、フィルタ4を巻装するチップペーパ3には、ベンチレーション用の周辺空気をフィルタ4内に導入して主流煙を希釈する通気孔31が形成されている。通気孔31は、
図1に示すようにフィルタ4における前段フィルタ材41に対応する位置に配置されている。喫煙時において、通気孔31を通じて外部の空気がフィルタ4内に流入し、たばこロッド2側からフィルタ4内に流入する主流煙に通気孔31から導入された空気が混ざることで主流煙が希釈される。
【0026】
また、
図2に示すように、フィルタ4の吸い口端側におけるチップペーパ3の外面には、識別用マーク32が印刷されている。識別用マーク32は、吸い口端側フィルタ材43の横断面に偏心配置される中空路431の位置を喫煙者に識別させるための識別手段である。本実施形態では、上記識別手段として識別用マーク32を採用しているが、低通気抵抗部(中空路431)の位置を喫煙者に識別可能な態様であれば種々の変更を採用できる。そのような態様として、例えば、チップペーパ3の外面に印刷された文字、あるいは、チップペーパ3の外面に施された凹凸加工等を挙げることができる。なお、本実施形態では、フィルタ4の軸方向(長手方向)のうち、吸い口端側フィルタ材43に対応する区間におけるチップペーパ3の外面に識別用マーク32を印刷しているが、フィルタ4の軸方向における識別用マーク32の配置位置は特に限定されず、例えば前段フィルタ材41やキャビティ部42に対応する区間におけるチップペーパ3の外面に識別用マーク32を印刷してもよい。その他の識別手段として、例えば、フィルタ4の吸い口端側フィルタ材43における横断面のうち、低通気抵抗部を高通気抵抗部432よりも通気抵抗の低いフィルタ材によって形成する場合には、低通気抵抗部および高通気抵抗部のそれぞれのフィルタ材を互いに異なる色で着色する態様や、或いは何れか一方のみを着色する態様、若しくは、低通気抵抗部を成形する巻取紙(すなわち、低通気抵抗部における高通気抵抗部との境界)に着色紙を使用する様態等が挙げられる。そして、吸い口端側フィルタ材43における低通気抵抗部を中空路431によって形成する場合には、中空路431の周縁に位置する高通気抵抗部432を着色したりする等、任意好適に識別手段を設けることができる。
【0027】
以上のように構成されるシガレット1は、喫煙時において、たばこロッド2の火種部で生成された主流煙がフィルタ4を通過してから喫煙者に喫煙される。たばこロッド2からフィルタ4に流入した主流煙は、前段フィルタ材41、キャビティ部42、吸い口端側フィルタ材43を順次通って吸い口端から喫煙者の口腔内に吸引される。その際、フィルタ4に流入した主流煙は、前段フィルタ材41を通過する際にタールやニコチンなどの煙中成分が濾過される。また、チップペーパ3に穿設された通気孔31を通じてフィルタ4の内部に導入された外部の空気は、前段フィルタ材41を通過する主流煙と混ざることで主流煙に含まれるタール、ニコチン、CO等が希釈される。
【0028】
そして、前段フィルタ材41およびキャビティ部42を通過した主流煙は、吸い口端側フィルタ材43の中空路431を流通してから喫煙者の口腔内に吸入される。本実施形態においては、吸い口端側フィルタ材43は中空路431が横断面方向に偏心配置されているため、ある程度の指向性をもって喫煙者の口腔内に主流煙を導くことができる。したがって、シガレット1の喫煙時に喫煙者がフィルタ4を咥える姿勢(方向、位置)を変更することで、口腔内に導入された主流煙が当たる部位を任意に変更することができる。具体的には、喫煙者が、フィルタ4をその長手軸(中心軸CL)を中心に回転させる(つまり、フィルタ4を周方向に回転させる)ことで、口腔内に吸引された主流煙の当たる部位を変化させることができる。特に、本実施形態においては、中空路431を、吸い口端側フィルタ材43の横断面を2分割する一方の第1半円領域A1内のみに配置し、他方の第2半円領域A2内には配置しないようにしたので、喫煙者が長手軸(中心軸CL)を中心にフィルタ4を回転させた際に、口腔内に吸引された主流煙の当たる部位をより顕著に変更することができる。
【0029】
例えば、
図4Aに示すように、吸い口端側フィルタ材43の中空路431を上あごから喉の方向に位置付けた姿勢(以下、「煙上向き姿勢」という)でフィルタ4を咥えて喫煙することで、主流煙を口腔内に上向きに流入させることができ、主として上あごに主流煙が導かれる。一方、
図4Bは、
図4Aに示す煙上向き姿勢からシガレット1(フィルタ4)の上下を反転させ、吸い口端側フィルタ材43の中空路431を舌の方向に位置付けた姿勢(以下、「煙下向き姿勢」という)でフィルタ4を咥えた状態を示す。
図4Bに示すように煙下向き姿勢でフィルタ4を咥えて喫煙すると、主流煙を口腔内に下向きに流入させることができ、主として舌に主流煙が導かれる。なお、喫煙時における煙上向き姿勢および煙下向き姿勢への切り替えは、シガレット1を咥える向きをシガレット1(フィルタ4)の長手軸を中心に180°反転させることで行うことができる。
【0030】
ここで、人の上あごには、香り(におい)を感じる嗅覚受容体が多く存在する。一方、人の舌には味を感じる味覚受容体が多く存在する。本実施形態に係るシガレット1によれば、喫煙者は、自身の嗜好や気分に応じて、長手軸(中心軸CL)を中心にフィルタ4を回転させることで、口腔内に導入された主流煙が当たる部位を自由に変更することができる。即ち、上記の例では、
図4Aに示す煙上向き姿勢でフィルタ4を咥えた状態で喫煙することで、喫煙者は、香り・上あごおよび喉への刺激(体性感覚)を強く感じることができる。一方、
図4Bに示す煙下向き姿勢でフィルタ4を咥えた状態で喫煙することで、喫煙者は、味・舌への刺激(体性感覚)を強く感じることができる。
【0031】
また、本実施形態に係るシガレット1によれば、喫煙時にフィルタ4を咥える姿勢を変更しても、チップペーパ3の通気孔31から導入される空気の主流煙への導入割合(ベンチレーション割合)は変化しないため、タール・ニコチン量(TN量)が変化することを抑制できる。また、
図1に示したフィルタ4には香料カプセルが配置されていない。よって、本実施形態に係るシガレット1は、喫煙時におけるTN量や香料のデリバリー量を変化させることによって香喫味を変化させるという従来手法とは全く異なり、口腔内において主流煙が当たる位置を変更するという独自の手法によって香喫味の変化を実現するものである。なお、勿論、本実施形態に係るフィルタ4においても、香料を封入した破砕可能な香料カプセルをフィルタ4内に配置してもよい。
【0032】
また、本実施形態に係るシガレット1によれば、喫煙者は、喫煙時における任意のタイミングで、フィルタ4をその長手軸(中心軸CL)を中心に回転させることで、フィルタ4を咥える位置を変更することができる。これにより、主流煙が口腔内に吸引された際に主流煙が当たる口腔内における部位を変更し、喫煙時の香喫味の変化を楽しむことができる。例えば、フィルタ4の姿勢を煙上向き姿勢から煙下向き姿勢に切り替え、香り(Aroma)の刺激よりも味(Taste)の刺激を向上させた状態(以下、この状態を「テイストリッチ状態」という)にシフトした後、再び、フィルタ4の姿勢を煙上向き姿勢に戻すことで味(Taste)の刺激よりも香り(Aroma)の刺激を向上させた状態(以下、この状態を「アロマリッチ状態」という)にシフトとする等、種々の喫煙方法が可能である。また、上記のテイストリッチ状態とアロマリッチ状態との切り替えは、喫煙時においてフィルタ4を咥える姿勢を煙上向き姿勢と煙下向き姿勢との間で切り替えることで容易に実現されるため、本実施形態に係るフィルタ4によれば可逆的な香喫味の変化が可能である。なお、可逆的な香喫味の変化が可能とは、喫煙時におけるシガレット1の香喫味を、テイストリッチ状態とアロマリッチ状態との間で自由に切り替えることができることを意味する。
【0033】
以上のように、本実施形態に係るフィルタ4によれば、喫煙時における香料のデリバリー量や、タール・ニコチン量を変化させなくても、香喫味を任意のタイミングで可逆的に変化させることができる。なお、本実施形態においては、チップペーパ3の外面に識別用マーク32が印刷されており、喫煙者は、識別用マーク32に基づいて吸い口端側フィルタ材43の横断面に偏心配置される中空路431の位置を容易に識別することができるため、喫煙中にシガレット1の香喫味を変化させる際の使い勝手を向上することができる。
【0034】
更に、本実施形態に係るフィルタ4によれば、吸い口端側フィルタ材43における高通気抵抗部432は単一の材料によって形成されており、その通気抵抗が横断面方向において一様となっている。このため、高通気抵抗部432を、複数の材料によって形成する場合に比べてフィルタ4の製造プロセスの工数を減らすことができ、製造コストを低くすることが可能である。
【0035】
更に、本実施形態に係るフィルタ4は、前段フィルタ材41および吸い口端側フィルタ材43の間に空洞状のキャビティ部42を配設するようにしている。これによれば、前段フィルタ材41の横断面全体(全領域)を流れてきた主流煙をそのまま流路を絞ることなくキャビティ部42に流出させることができる。そして、キャビティ部42を主流煙のバッファーとして機能させつつ、このキャビティ部42から吸い口端側フィルタ材43の中空路431に主流煙を流入させることができる。これにより、主流煙が前段フィルタ材41を通過する際に、前段フィルタ材41の横断面における一部を主流煙が流れにくくなることを抑制できる。つまり、前段フィルタ材41の全断面(横断面全体)を煙中成分の濾過材として有効に使用することができる。但し、
図5に示す変形例のように、前段フィルタ材41および吸い口端側フィルタ材43の間にキャビティ部42を設けず、前段フィルタ材41の後端に吸い口端側フィルタ材43の前端を連設しても構わない。
【0036】
ここで、吸い口端側フィルタ材43の構成は、種々のバリエーションを採用することができる。以下、本実施形態における吸い口端側フィルタ材43のバリエーションについて説明する。
図6A〜
図6Fは、本実施形態に係る吸い口端側フィルタ材43のバリエーションを示す図である。
【0037】
図6Aに示す吸い口端側フィルタ材43は、吸い口端側フィルタ材43の横断面を2分割する一方の第1半円領域A1に中空路431の代わりに半円形状の横断面を有する低通気抵抗部433が形成されている点で
図3に示す吸い口端側フィルタ材43と相違している。低通気抵抗部433は、第2半円領域A2に配置される高通気抵抗部432に比べて相対的に通気抵抗が低くなっている。このように、吸い口端側フィルタ材43の横断面に、通気抵抗の異なる低通気抵抗部433および高通気抵抗部432を設けることで、吸い口端側フィルタ材43に流入した主流煙は、高通気抵抗部432に比べて通気抵抗が低い低通気抵抗部433を通過して吸い口端から口腔内に吸引される。従って、喫煙中におけるフィルタ4の姿勢を任意のタイミングで任意の姿勢に変更することで、口腔内に吸引された主流煙の当たる部位が変更され、喫煙時の香喫味を変更することができる。
【0038】
図6B〜
図6Fに示す吸い口端側フィルタ材43は、
図3に示す中空路431とそれぞれ形状の異なる中空路431B〜431Fが第1半円領域A1に設けられている。
図6Bに示す吸い口端側フィルタ材43は、第1半円領域A1内のみに円形断面を有する単一の中空路431Bが形成されている。
図6Cに示す吸い口端側フィルタ材43は、第1半円領域A1内のみに月形断面を有する単一の中空路431cが形成されている。
図6Dに示す吸い口端側フィルタ材43は、第1半円領域A1内のみに扇形形状を有する単一の中空路431Dが形成されている。図示の例では、中空路431Dの断面形状は、四分の一円(中空部の内角が90°)となっている。
【0039】
図6Eに示す吸い口端側フィルタ材43は、第1半円領域A1内のみに半円形状を有する複数の中空路431Eが形成されている。図示の例では、3つの中空路431E全てが第1半円領域A1内に配置されている。また、
図6Fに示す吸い口端側フィルタ材43は、第1半円領域A1内のみに中空路431Fが形成されている。以上のように、吸い口端側フィルタ材43に形成される中空路431Fの形状、大きさ、数等は適宜変更することができる。また、
図6B〜
図6Fに係る吸い口端側フィルタ材43においても、それぞれの中空路431B〜431Fを、高通気抵抗部432に比べて通気抵抗の低いフィルタ材によって形成された低通気抵抗部に置き換えてもよい。即ち、低通気抵抗部を中空部によって形成してもよいし、高通気抵抗部を形成するフィルタ材に比べて通気抵抗が低いフィルタ材によって形成してもよい。前者のように中空部によって低通気抵抗部を形成する場合には、当該中空部での煙濾過がなくなるため、煙の流れをより顕著に偏心させ易くなる。また、中空部における煙濾過がないことで煙中成分のデリバリー量のコントロールが容易となる。その結果、例えば、製品表示値の保証がし易くなる。一方、後者のように通気抵抗の低いフィルタ材によって低通気抵抗部を形成する場合には、吸い口端側フィルタ材43においても主流煙を濾過することができるという利点がある。また、フィルタ4における吸い口端側フィルタ材43の形状は円柱形状に限られず、多角形としてもよい。
【0040】
なお、本実施形態に係る吸い口端側フィルタ材43の中空路431(低通気抵抗部)は、少なくとも後端面43b(吸い口端)の位置において、横断面を2分割する一方の第1半円領域A1内のみに配置されていればよい。少なくとも、吸い口端側フィルタ材43の後端面43b(吸い口端)の位置において、中空路431(低通気抵抗部)が第1半円領域A1内に偏心配置することで、喫煙者は長手軸(中心軸CL)周りにフィルタ4を適宜回転させ、口腔内において主流煙が当たる部位を変更することでシガレット1の香喫味を変化させることができる。
【0041】
また、
図1に示す例では、吸い口端側フィルタ材43における中空路431(低通気抵抗部)を、吸い口端側フィルタ材43における前端面43aから後端面43bに亘ってフィルタ4の長手軸(中心軸)に沿って平行に配置しているが、これには限られない。例えば、
図6Gに示す変形例のように、吸い口端側フィルタ材43における中空路431(低通気抵抗部)の長手軸を、フィルタ4の長手軸(中心軸CL)に対して斜めに配置してもよい。
図6Gに示す例では、吸い口端側フィルタ材43の後端面43b(吸い口端)の位置において、中空路431(低通気抵抗部)の後端位置が第1半円領域A1のみに配置されている。また、吸い口端側フィルタ材43の前端面43aの位置において、中空路431(低通気抵抗部)の前端位置が第2半円領域A2のみに配置されている。
図6Gに示すように、吸い口端側フィルタ材43における中空路431(低通気抵抗部)の長手軸を、フィルタ4の長手軸(中心軸CL)に対して斜めに配置することで、喫煙者が、長手軸(中心軸CL)周りにフィルタ4を回転させる前後において、吸い口端側フィルタ材43の後端面43b(吸い口端)から吸引された主流煙が口腔内に当たる部位をより顕著に変化させることができる。その結果、喫煙者の好みに応じて、シガレット1の香喫味をより顕著に変化させることができる。
【0042】
<実施例>
次に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0043】
《タール・ニコチン量、通気抵抗の測定》
ここで、実施例に係るシガレットのサンプルを作製し、タール量・ニコチン量、通気抵抗について測定した。
図7は、比較例に係る標準シガレット(コントロールシガレット)を示す図である。
図7に示すコントロールシガレットに係るフィルタは、一般的なセルロースアセテートフィルタ(以下、「AFフィルタ」ともいう)であり、フィルタ全長を27mm、外径を7.2mmとした。一方、
図8は、実施例に係る香喫味可変シガレットを示す図である。香喫味可変シガレットに係るフィルタ4は、コントロールフィルタ(AFフィルタ)の後端に、吸い口端側フィルタ材43を内面に接着した筒状の紙筒5を接続することで作製した。
図7の上段には「キャビティ部有り」のタイプを示し、下段には「キャビティ部無し」のタイプを示す。
【0044】
キャビティ部有りのタイプは、長さが7mmの紙筒5の内面に、長さが5mmの吸い口端側フィルタ材43をCMCのりで接着したものをAFフィルタの後段に取り付けたものであり、AFフィルタの後端面と吸い口端側フィルタ材43の前端面の間に長さ2mmのキャビティ部42を形成するようにした。キャビティ部無しのタイプは、長さが7mmの紙筒5の内面に、長さが7mmの吸い口端側フィルタ材43をCMCのりで接着したものをAFフィルタの後段に取り付けたものであり、AFフィルタの後端面と吸い口端側フィルタ材43の前端面とを突き合わせて隙間なく連設したものである。なお、紙筒5は、セロハンテープによってAFフィルタと接続した。吸い口端側フィルタ材43の高通気抵抗部432には2.2Y/44000のセルロースアセテート繊維、低通気抵抗部431には8.6Y/21000のセルロースアセテート繊維を使用し、高通気抵抗部側のトリアセチン含量を23%になるように設定して調製した。
【0045】
図9に、実施例および比較例に係るシガレットのタール・ニコチン量、通気抵抗の測定結果の一覧を示す。
図9中に示す実施例1〜6は、それぞれ吸い口端側フィルタ材43の仕様が異なる。実施例1に係る吸い口端側フィルタ材43は、
図6Aに示した吸い口端側フィルタ材43に対応しており、第1半円領域A1に半円形状の低通気抵抗部433が配置され、第2半円領域A2に高通気抵抗部432が配置されている。低通気抵抗部433の内径(直径)は5.2mmとした。また、実施例1はキャビティ部有りタイプのみの設定とした。
【0046】
実施例2に係る吸い口端側フィルタ材43は、
図6Bに示した吸い口端側フィルタ材43に対応しており、第1半円領域A1内のみに円形断面を有する単一の中空路431Bが形成されている。ここで、中空路431Bの内径(直径)を3mmとし、高通気抵抗部432の肉厚が最小となる部分の肉厚寸法(以下、「高通気抵抗部最小肉厚」という)を1mmとした。実施例2は、キャビティ部有りタイプ、キャビティ部無しタイプの双方について作製した。
【0047】
実施例3に係る吸い口端側フィルタ材43は、
図6Cに示した吸い口端側フィルタ材43に対応しており、第1半円領域A1内のみに月形断面の中空路431Cが形成されている。実施例3においては、吸い口端側フィルタ材43における高通気抵抗部最小肉厚を1.4mmとした。実施例3についても、キャビティ部有りタイプ、キャビティ部無しタイプの双方について作製した。
【0048】
実施例4に係る吸い口端側フィルタ材43は、
図3に示した吸い口端側フィルタ材43に対応しており、第1半円領域A1の全体を占有するように半円形状の中空路431が形成されている。中空路431の内径(直径)は5.2mmとした。実施例4はキャビティ部有りタイプのみの設定とした。
【0049】
実施例5に係る吸い口端側フィルタ材43は、
図6Dに示した吸い口端側フィルタ材43に対応しており、第1半円領域A1内のみに扇形形状を有する中空路431Dが形成されている。中空路431Dの内角を90°(四分の一円)とした。実施例5においては、吸い口端側フィルタ材43における高通気抵抗部最小肉厚を1mmとした。また、実施例5はキャビティ部有りタイプのみの設定とした。
【0050】
次に、実施例6に係る吸い口端側フィルタ材43は、
図6Eに示した吸い口端側フィルタ材43に対応しており、第1半円領域A1内のみに半円形状を有する3つの中空路431Eが形成されている。実施例6においては、吸い口端側フィルタ材43における高通気抵抗部最小肉厚を0mmとし、中空路431Eの内径(直径)を1.5mmとした。実施例6は、キャビティ部有りタイプのみの設定とした。
【0051】
上述した各実施例および比較例に係るシガレットについてサンプルを3本ずつ作製し、以下の条件・環境下においてタール・ニコチン量、通気抵抗の測定を行った。即ち、室温22℃、相対湿度60%、風速0.2m/秒の環境下で自動喫煙器(SERULEAN社製 SM410)にセットし、ISOの標準喫煙条件(燃焼型喫煙物品1本につき、空パフ1回で2秒間35mL吸煙する動作を58秒間隔で繰り返し)に準じて喫煙させた。主流煙中の粒子相成分の捕集用にケンブリッジフィルター(borgwaldt、400 Filter 44 mm )を用い、ガス相成分の捕集用にガスバッグ(SUPELCO、Tedlar Bag)を用いた。粒子相成分は、ケンブリッジフィルターの重量変化からTPM(微粒子成分: Total Particular Matter)量を算出した後、イソプロパノール10 mLで20分間振盪抽出を行い、GC-FID/TCD(6890N、Agilent)を用いて水およびニコチン量の測定を行い、タール量を算出した。通気抵抗の測定は、通気抵抗測定器PV21(JTトーシ株式会社製)を使用し、定法に従い測定した。
【0052】
図9に示すように、実施例1〜6に係るシガレットの比較例に係るシガレットとの間で、タール量、ニコチン量、通気抵抗のいずれも大きく変化しないことが確認できた。
【0053】
《官能評価試験》
次に、実施例に係るシガレットの喫煙時における香喫味変化に関する効果を、以下の官能評価試験に基づいて評価した。官能評価試験は、上述した実施例1〜5と、参照用のリファレンスシガレットについて実施した。リファレンスシガレットは、
図7で説明したコントロールシガレットのAFフィルタに対して、当該AFフィルタを軸方向に貫通するセンターホールを形成したものである。なお、リファレンスシガレットに係るフィルタのセンターホールは、フィルタの中心軸と同軸とした。また、本官能評価試験に用いる実施例1〜5に係るシガレットおよびリファレンスシガレットは、香料を封入したカプセルをフィルタ内に配置した。
【0054】
官能評価は、実施例1〜5に係るシガレットおよびリファレンスシガレットをそれぞれ5人の評価者(A〜E)に喫煙させ、フィルタの咥え方を上下反転させて喫煙した時に得られる香喫味の違いについて評価した。なお、実施例1〜5に係るシガレットを喫煙する際には、
図4Aに示す煙上向き姿勢と、
図4Bに示す煙下向き姿勢とを入れ替えて喫煙するようにした。官能評価は、評価項目を、「味」、「香り」、および「体性感覚(刺激)」の強度とし、「とても弱い」、「弱い」、「丁度よい」、「強い」、「とても強い」の5段階、フリースケールで評価した。特に、体性感覚(刺激)の強度に関しては、「上あご」、「舌」、「咽頭」、「気道」の部位ごとに評価した。本官能評価試験においては、煙上向き姿勢と煙下向き姿勢のそれぞれの姿勢でフィルタを咥えた状態で喫煙し、味、香り、および体性感覚(刺激)の強度について評価した。
図10〜
図15の各評価項目の値は5人の評価者の平均値としてプロットした。各項目の評価は、「とても弱い」、「弱い」、「丁度よい」、「強い」、「とても強い」の5段階の評価に基づき行った。尚、「とても弱い」は−50、「弱い」は−25、「丁度よい」は0、「強い」は25、「とても強い」は50とし、上下反転させた際に感じる感覚について評価を行った。
【0055】
図10は、比較例に係るリファレンスシガレットの官能評価結果を示すグラフである。
図11〜
図15は、実施例1〜5に係るシガレットの官能評価結果を示すグラフである。なお、
図10〜
図15のグラフにおいて、左側のグラフは、喫煙時に香料カプセルを破砕した場合の官能評価結果を示したものであり、右側のグラフは、喫煙時に香料カプセルを破砕しなかった場合の官能評価結果を示したものである。また、
図10〜
図15において、「煙上向き姿勢」に対応する評価結果を実線で示し、「煙下向き姿勢」に対応する評価結果を破線で示す。
【0056】
図10に示すように、リファレンスシガレットにおいては喫煙時にフィルタの咥え方を上下反転させても、味、香り、および、上あご、舌、咽頭、気道等の体性感覚に殆ど影響を及ぼしていないことがわかる。一方、
図11〜
図15に示すように、実施例1〜5に係るシガレットにおいては、前述の煙上向き姿勢の時と煙下向き姿勢の時とにおいて、味、香り、および上あご、舌、咽頭、気道等の体性感覚に及ぼす影響が異なることが官能評価よりわかった。本発明によれば、フィルタを任意に回動させることにより香喫味に可逆的な変化を与えることができることがわかった。また、このことは香料カプセルの破砕の有無での同様の傾向を示す。
【0057】
図16は、実施例1〜5に係るシガレットの官能評価の結果をまとめた図である。
図16に示されるように、実施例1〜5に係るシガレットにおいては、吸い口端側フィルタ材43における中空路の形状の相違によって、フィルタを煙上向き姿勢で咥えて喫煙したときと煙下向き姿勢で咥えて喫煙したときとにおいて各評価項目のパターンや強度は若干異なるものの、全体としては概ね対応する結果が得られた。
【0058】
即ち、フィルタを煙上向き姿勢で咥えて実施例に係るシガレットを喫煙した場合、体性感覚については上あご、咽頭、気道への刺激の強度を相対的に強く、舌への刺激の強度を相対的に弱めることができるという結果が得られた。また、煙上向き姿勢においては、味よりも香りの強度を相対的に強めることができるという結果が得られた。
【0059】
一方、フィルタを煙下向き姿勢で咥えて実施例に係るシガレットを喫煙した場合、体性感覚については上あご、咽頭、気道への刺激の強度を相対的に弱く、舌への刺激の強度を相対的に強めることができるという結果が得られた。また、煙下向き姿勢においては、香りよりも味の強度を相対的に強めることができるという結果が得られた。また、上記の傾向は、喫煙時に香料カプセルを破砕して香料のデリバリー量を増やす場合と、喫煙時に香料カプセルを破砕しない場合とにおいて、同様な傾向を示すことがわかった。
【0060】
以上より、本実施形態に係るフィルタおよびそれを備えたシガレットによれば、喫煙時における香料のデリバリー量や、タール・ニコチン量を変化させることなく、香喫味を任意のタイミングで可逆的に変化させることができる。
【0061】
図17は、実施例に係るシガレット1についてフィルタ4の横断面内における中空路の形状、位置、大きさ、範囲等をパラメータとして変化させたときの喫煙時における香喫味変化に関する効果を官能評価試験に基づいて評価した結果を示す図である。
【0062】
実施例7に係るフィルタ4の吸い口端側フィルタ材43は、
図6Bに示すように、第1半円域A1、第2半円領域A2からなる横断面のうち、第1半円領域A1内のみに円形断面を有する単一の中空路431Bが低通気抵抗部として形成されている。また、実施例8〜10に係るフィルタ4の吸い口端側フィルタ材43は、
図6Cに示すように、第1半円域A1、第2半円領域A2からなる横断面のうち、第1半円領域A1の領域内のみに月形断面を有する単一の中空路431Cが低通気抵抗部として形成されている。実施例7〜10は、フィルタ4の第1半円域A1に配置される低通気抵抗部(中空路431B、中空路431C)の断面積S、幅寸法W、境界線最大離間距離Dmax、境界線最小離間距離Dmin等のパラメータが相違している。
【0063】
図18は、実施例に係る低通気抵抗部の各パラメータを説明する図である。
図18においては、三角形の低通気抵抗部を例に、その幅寸法W、境界線最大離間距離Dmax、境界線最小離間距離Dminを説明する。なお、断面積Sは、第1半円域A1に形成される低通気抵抗部の面積である。ここで、吸い口端側フィルタ材43の第1半円領域A1および第2半円領域A2の境界線BLに沿う方向を、低通気抵抗部の幅方向と定義する。
図18に示すように、低通気抵抗部の幅寸法Wは、低通気抵抗部のうち、第1半円領域A1および第2半円領域A2の境界線BLに沿った方向の寸法である。
【0064】
次に、境界線最大離間距離Dmaxは、低通気抵抗部のうち、第1半円領域A1および第2半円領域A2の境界線BLから最も離れている部分の境界線BLからの離間距離をいう。一方、境界線最小離間距離Dminは、低通気抵抗部のうち、第1半円領域A1および第2半円領域A2の境界線BLに対して最も近接している部分の境界線BLからの離間距離をいう。
図19は、フィルタ(シガレット)の姿勢を
図18に示す姿勢から中心軸廻りに180°回転させ、上述した煙上向き姿勢から煙下向き姿勢、或いは、煙下向き姿勢から煙上向き姿勢へと切り替えた後の状態を示す図である。図中の破線は、姿勢を切り換える前の低通気抵抗部の相対位置を示している。
【0065】
ここで、実施例7は、低通気抵抗部(中空路431B)が直径2mmの円形断面を有しており、幅寸法Wが2.0mm、境界線最大離間距離Dmaxが2.8mm、境界線最小離間距離Dminが0.8mmである。
図17に示す比較例1は、低通気抵抗部を配置する位置だけが実施例7と相違しており、境界線最大離間距離Dmaxが1.6mm、境界線最小離間距離Dminが−0.5mmである。ここで、境界線最小離間距離Dminが負(マイナス)の値を示しているのは、低通気抵抗部の一部が、第1半円領域A1および第2半円領域A2の境界線BLを超えて第2半円領域A2側に配置されていることを意味する。
【0066】
次に、実施例8〜10の低通気抵抗部(中空路431C)を説明する。実施例8、9に係る低通気抵抗部(中空路431C)は、共に断面積Sが5.2mm
2、幅寸法Wが4.0mmの小月形状を有しており、境界線最小離間距離Dminおよび境界線最大離間距離Dmaxが互いに相違している。実施例8は、境界線最大離間距離Dmaxが2.1mm、境界線最小離間距離Dminが0.1mmであるのに対して、実施例9は、境界線最大離間距離Dmaxが2.9mm、境界線最小離間距離Dminが0.7mmである。次に、実施例10に係る低通気抵抗部(中空路431C)は、断面積Sが7.8mm
2、幅寸法Wが5.3mmの大月形状を有しており、境界線最大離間距離Dmaxが2.8mm、境界線最小離間距離Dminが0.1mmである。
図17に示す比較例2は、低通気抵抗部を配置する位置だけが実施例10と相違しており、境界線最大離間距離Dmaxが2.1mm、境界線最小離間距離Dminが−0.8mmである。比較例2においても、境界線最小離間距離Dminの値が負(マイナス)になっており、低通気抵抗部の一部が第1半円領域A1および第2半円領域A2の境界線BLを超えて第2半円領域A2側に配置されていることを意味する。
【0067】
ここで、実施例7〜10、比較例1および2に対して、官能評価試験を行った。官能評価は、5人の評価者(A〜E)に各試料を喫煙させ、フィルタ4の咥え方を上下反転させて喫煙した時に得られる香喫味の違いについて評価した。そして、各試料の評価は、煙上向き姿勢および煙下向き姿勢に切り替えて喫煙したときの香喫味変化の強さについて、◎(とても強い)、○(強い)、△(弱い)、×(とても弱い)の4段階で評価した。
【0068】
以下、
図17の評価結果に示すように、境界線最大離間距離Dmaxを大きくすることで、煙上向き姿勢および煙下向き姿勢間で切り替えて喫煙した前後における香喫味変化が強くなることがわかった。また、境界線最小離間距離Dminを大きくすることで、煙上向き姿勢および煙下向き姿勢間で切り替えて喫煙した前後における香喫味変化が強くなることがわかった。
【0069】
例えば、実施例7は、低通気抵抗部の境界線最大離間距離Dmaxおよび境界線最小離間距離Dminを比較例1よりも大きくすることで、煙上向き姿勢および煙下向き姿勢間で切り換えた際における香喫味変化が強くなるという結果が得られた。
【0070】
また、実施例8と比較例2を対比すると、実施例8は、低通気抵抗部の境界線最小離間距離Dminを比較例2よりも大きくすることで、煙上向き姿勢および煙下向き姿勢間で切り換えた際における香喫味変化が強くなるという結果が得られた。また、実施例8と実施例10を対比すると、実施例10は、低通気抵抗部の境界線最大離間距離Dmaxを実施例8よりも大きくすることで、煙上向き姿勢および煙下向き姿勢間で切り換えた際における香喫味変化が強くなるという結果が得られた。また、実施例9と実施例10を対比すると、実施例9は、低通気抵抗部の境界線最小離間距離Dminを実施例10よりも大きくすることで、煙上向き姿勢および煙下向き姿勢間で切り換えた際における香喫味変化が強くなるという結果が得られた。
【0071】
ここで、境界線最小離間距離Dminが大きいほど、また、境界線最大離間距離Dmaxが大きいほど、喫煙時における姿勢を煙上向き姿勢および煙下向き姿勢間で切り換えた際に、口腔内において主流煙が衝突する部分の変位量が大きくなり易く、その結果、煙上向き姿勢および煙下向き姿勢間で切り換えた前後における香喫味変化の度合いが強くなったものと推測される。そして、
図17に示す評価結果によれば、煙上向き姿勢および煙下向き姿勢間で切り換えた前後における香喫味変化を強くする観点から、低通気抵抗部の境界線最小離間距離Dminを0.1mm以上にすると好ましく、0.7mm以上にするとより好ましい。ここで、本評価試験で用いたフィルタ4の直径は7.2mmであり、境界線最小離間距離Dminをフィルタ4の直径で除した値を用いて無次元化すると、フィルタ直径に対する半径境界線最小離間距離Dminの割合は1.4%以上とすると好ましく、9.7%以上とするとより好ましい。また、低通気抵抗部における境界線最小離間距離Dminが大きいほど、煙上向き姿勢および煙下向き姿勢間で切り換えた前後における香喫味変化を強くすることができるため、フィルタ直径に対する半径境界線最小離間距離Dminの割合の上限値は、100%よりも小さければよい。以上より、フィルタ直径に対する半径境界線最小離間距離Dminの割合は、1%以上100%未満であると好ましく、9%以上100%未満であるとより好ましい。
【0072】
また、同様に、煙上向き姿勢および煙下向き姿勢間で切り換えた前後における香喫味変化を強くする観点から、低通気抵抗部の境界線最大離間距離Dmaxを2.1mm以上にすると好ましく、2.8mm以上にするとより好ましい。そして、境界線最大離間距離Dmaxをフィルタ4の直径で除した値を用いて無次元化すると、フィルタ直径に対する境界線最大離間距離Dmaxの割合は29.2%以上とすると好ましく、38.9%以上とするとより好ましい。以上より、フィルタ直径に対する境界線最大離間距離Dmaxの割合は、29%以上100%未満であると好ましく、38%以上100%未満であるとより好ましい。
【0073】
<実施形態2>
図20は、実施形態2に係るシガレット1Aの縦断面図である。
図21は、実施形態2に係るシガレット1Aの外観図である。以下では、実施形態2に係るシガレット1Aと実施形態1に係るシガレット1において共通の構成については同じ参照符号を付すことで詳しい説明を割愛し、双方の相違点を中心に説明する。
【0074】
本実施形態に係るシガレット1Aに係るフィルタ4Aは、吸い口端側フィルタ材43が、前端面から後端面の間に位置する中途部430aを境にして前端側に位置する上流部43bと後端側に位置する下流部430cとが相対的に回動自在に構成されている。具体的には、フィルタ4Aに係る中途部43aには、吸い口端側フィルタ材43の横断面における中心部を残して切り込まれたスリット434が設けられており、このスリット434を境に上流部43bおよび下流部43cを相対的に捻ることで、相対回動させることが許容されている。
【0075】
吸い口端側フィルタ材43における上流部430bおよび下流部430cには、同一の中空路431が形成されている。即ち、吸い口端側フィルタ材43における上流部430bおよび下流部430cは、その横断面を2分割する一方の第1半円領域A1と他方の第2半円領域A2とにおいて、高通気抵抗部432に比べて相対的に通気抵抗が低い中空路431が第1半円領域A1内のみに配置され、上記横断面におけるその他の領域は高通気抵抗部432が配置されている。以下、吸い口端側フィルタ材43における上流部430bに設けられる中空路を「上流側中空路431b」と呼び、下流部43cに設けられる中空路を「下流側中空路431c」と呼ぶ。また、吸い口端側フィルタ材43における下流部43cの外周には紙筒5が接着されている。紙筒5の前端側は、吸い口端側フィルタ材43の上流部430bを巻き取るチップペーパ3の外側にオーバラップされているが、紙筒5とチップペーパ3とは接着されていない。また、本実施形態においては、吸い口端側フィルタ材43における上流部430bおよび下流部430cが相対回動可能であるため、上流部430bおよび下流部430cの双方における外周面に識別用マーク32が設けられている。
【0076】
図22は、本実施形態に係る吸い口端側フィルタ材43における下流部430cの横断面図である。本実施形態では、吸い口端側フィルタ材43における上流部430bおよび下流部430cの第1半円領域A1内のみに円形断面を有する中空路431b,431cがそれぞれ形成されている。但し、実施形態1と同様、中空路は種々の形状を採用することができる。
【0077】
本実施形態に係るシガレット1Aによれば、吸い口端側フィルタ材43における上流部430bに対して下流部430cを捻るなどして相対回動させることによって、上流部430bにおける上流側中空路431bと下流部430cにおける下流側中空路431cとが中途部430aにおいて互いに重なり合う面積(以下、中空路対向面積S)を変更できる。そして、吸い口端側フィルタ材43における下流側中空路431cを流れる主流煙の線速度は、中空路対向面積Sによって律速される。このため、シガレット1Aの喫煙時において、吸い口端側フィルタ材43における上流部430bおよび下流部430cを相対回動させることによって、フィルタ4Aの吸い口端から喫煙者の口腔内に流入する主流煙の線速度を変更することができる。つまり、中空路対向面積Sを減少させることで喫煙時に口腔内に流入する主流煙の速度を上げることができ、逆に、中空路対向面積Sを増加させることで喫煙時に口腔内に流入する主流煙の速度を下げることができる。
【0078】
本実施形態に係るフィルタ4Aおよびシガレット1Aによれば、喫煙時に咥えるフィルタ4A姿勢を変更することで実施形態1と同様に口腔内で主流煙の当たる位置を変更させることで香喫味を変化させることができる。更に、上記の如く吸い口端側フィルタ材43における上流部430bおよび下流部430cとの相対角度を変更することで喫煙者の口腔内に流入する主流煙の線速度を変更することで喫煙時に感受する刺激の強さを任意に変更することができる。
【0079】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、実施形態に係るたばこ製品用フィルタは、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能である。また、上記実施形態においては、本発明に係るたばこ製品用フィルタをシガレットに適用する場合を例に説明したが、例えば、シガー(葉巻)、シガリロ、スヌース、嗅ぎたばこ、チューイングたばこ、電子たばこ等、シガレット以外のたばこ製品に本発明に係るたばこ製品用フィルタを適用してもよい。
【0080】
シガレット以外のたばこ製品に本発明に係るたばこ製品用フィルタを適用する一例として、
図23〜
図25に示す非加熱型吸引具や、
図26に示す加熱型吸引具の吸い口(マウスピース)における吸い口端側に本発明の吸口形状を適用した場合を挙げることができる。
【0081】
図23〜
図25に示す非加熱型吸引具1Bは、嗅ぎたばこ材料を内部に収容したカートリッジ10Bと、このカートリッジ10Bに装着されたマウスピース4Bとを有する。マウスピース4Bに対して、カートリッジ10は着脱自在である。カートリッジ10Bおよびマウスピース4Bは、例えば樹脂成形によって形成されている。非加熱型吸引具1Bは、所謂無煙たばこである。そして、嗅ぎたばこ材料は、例えばたばこの葉を粉砕したものと香料を混合し、たばこの香味成分を含ませたものである。なお、カートリッジ10Bの軸方向における両端は、通気性を有する蓋材がそれぞれ嵌め込まれており、非加熱型吸引具1Bの使用者はマウスピース4Bを咥えて空気を吸引することができる。そして、マウスピース4Bからの吸引が行われると、カートリッジ10Bの後端から内部に流入した空気が嗅ぎたばこ材料と接触し、嗅ぎたばこ材料の香味を含む空気を吸引することで、使用者は嗅ぎたばこ材料の香味を味わうことができる。
【0082】
図25に、マウスピース4Bの横断面を示す。マウスピース4Bには、その横断面の一部に中空路431Bが形成されており、嗅ぎたばこ材料の香味を含む空気がこの中空路431Bを通って使用者の口腔内に吸引されるようになっている。中空路431Bは、上述までの実施形態と同様、マウスピース4Bの横断面を2分割する一方の第1半円領域A1内のみに配置されており(存在し)、他方の第2半円領域A2内には配置されていない(存在しない)。なお、マウスピース4Bの横断面のうち、中空路431Bが形成されていない部分である非中空部432Bは、嗅ぎたばこ材料の香味を含む空気が流通できないようになっている。つまり、マウスピース4Bの横断面における中空路431Bは、非中空部432Bに比べて通気抵抗が顕著に低くなっており、当該空気は中空路431Bのみを流通することになる。
【0083】
このように構成される非加熱型吸引具1Bのマウスピース4Bによれば、吸引時におけるマウスピース4Bの姿勢を変更することで、吸引した嗅ぎたばこ材料の香味を含む空気が口腔内において当たる部位を変更することができ、嗅ぎたばこ材料の香味を変更することができる。
【0084】
また、
図26に示す加熱型吸引具1Cは、例えば、たばこ材料が詰まったポッドを加熱することでたばこ成分が含まれた霧状のベイパーを発生させ、このバイパーを吸引することでたばこ材料の香味を味わうことのできる吸引具である。加熱型吸引具1Cは、本体部10Cおよびマウスピース4Cを有する。マウスピース4Cは、本体部10Cの先端部に着脱自在であり、
図25において説明したマウスピース4Bと実質的に同一構造となっている。また、本体部10Cの先端側には、ポッド11を収容すると共に、収容したポッド11を加熱する加熱部12が設けられている。本体部10Cには、使用者によってオン、オフの切り換え操作が可能なスイッチ13が設けられている。使用者がスイッチ13をオンにすると、加熱部12に設けられているヒータ(図示せず)が作動し、ポッド11を加熱する。これによって、たばこ成分が含まれた霧状のベイパーが加熱部12において発生し、マウスピース4Cを通じて使用者はこのベイパーを吸引することができる。
【0085】
このような加熱型吸引具1Cにおいても、
図25に示すマウスピース4Bと同一のマウスピース4Cを備えているため、使用者は、吸引時におけるマウスピース4Cの姿勢を変更することで、吸引したベイパーが口腔内において当たる部位を変更することができ、ベイパーの香味を変更することができる。なお、上述したマウスピース4B(マウスピース4C)の吸口形状は円形状に限られず、多角形としてもよい。例えば、保持性を高める観点から、マウスピース4B(マウスピース4C)を六角形にすると好適である。また、マウスピース4B(マウスピース4C)をプラスチック等の樹脂によって作製することで、任意の形状に容易に成形できるという利点がある。