(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6367512
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】注射液バイアルへしっかりと入れ子式スナップ嵌めするための液剤移送デバイス
(51)【国際特許分類】
A61J 1/20 20060101AFI20180723BHJP
A61M 5/14 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
A61J1/20 314B
A61M5/14 510
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-502183(P2018-502183)
(86)(22)【出願日】2016年7月1日
(86)【国際出願番号】IL2016050709
(87)【国際公開番号】WO2017009822
(87)【国際公開日】20170119
【審査請求日】2018年3月14日
(31)【優先権主張番号】240005
(32)【優先日】2015年7月16日
(33)【優先権主張国】IL
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506361719
【氏名又は名称】ウエスト・ファーマ.サービシーズ・イスラエル,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100167243
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 充
(72)【発明者】
【氏名】ダビデ,ウリ
(72)【発明者】
【氏名】デネンバーグ,イゴール
【審査官】
村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−504230(JP,A)
【文献】
特表2005−516696(JP,A)
【文献】
特表2014−514114(JP,A)
【文献】
特表2011−512205(JP,A)
【文献】
米国特許第8070739(US,B2)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0127150(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/20
A61M 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射液バイアルへしっかりと入れ子式スナップ嵌めするための液剤移送デバイスであって、
前記注射液バイアルは、長手方向注射液バイアル中心線を有し、
前記注射液バイアルは、
端部が閉塞したバイアルチューブと、
バイアルストッパによって塞がれるクラウン開口を有するチューブ状のバイアルクラウンと、
前記バイアルチューブと前記バイアルクラウンとの中間のバイアルネックと、
前記バイアルチューブと前記バイアルネックとの中間のバイアルショルダと
を備え、
前記バイアルクラウンは、前記クラウン開口に向いた最上部バイアルクラウンリムと、前記バイアルネックに向いた最下部バイアルクラウンリムと、を有し、
前記バイアルチューブと前記バイアルショルダとは、最上部バイアルチューブリムのところで一緒になり、
前記バイアルチューブは、バイアルチューブ外径d1を有し、
前記バイアルクラウンは、バイアルクラウン外径d2を有し、
前記バイアルネックは、バイアルネック外径d3と、バイアルネック内径d4と、を有し、
d1>d2>d3>d4であり、
前記バイアルチューブ外径d1は、前記バイアルクラウン外径d2についての少なくとも1つのバイアルチューブ外径d1の所定の範囲から選択され、
前記液剤移送デバイスは、
(a)長手方向バイアルアダプタ中心線を有するバイアルアダプタを備え、
前記バイアルアダプタは、
前記長手方向バイアルアダプタ中心線に交差するバイアルアダプタ頂部壁と、
前記バイアルクラウンを内部に入れ子式に摺動的に受け入れるための、前記バイアルアダプタ頂部壁から垂下する実質的に円筒形のスカートと、
前記バイアルストッパを穿刺するための中空の穿刺カニューレであって、前記バイアルチューブにアクセスするために、少なくとも1つの流通孔を有する穿刺カニューレ先端を有する穿刺カニューレと
を備え、
前記スカートは、
i)前記バイアルアダプタ頂部壁に遠い側にバイアル保持可撓性部材先端を有する少なくとも2つの非隣接バイアル保持可撓性部材を備え、
前記非隣接バイアル保持可撓性部材の各々は、バイアル保持目的で前記バイアルクラウンの上にスナップ嵌めするために少なくとも部分的に周方向に延在し内向きに突出するバイアル保持リブを有し、
前記スカートは、さらに、
ii)前記少なくとも2つの非隣接バイアル保持可撓性部材と少なくとも同じ長さを有する少なくとも2つの非隣接バイアル案内可撓性部材を備え、
前記少なくとも2つの非隣接バイアル案内可撓性部材は、前記バイアルアダプタ頂部壁に遠い側にバイアル案内可撓性部材先端を有し、
前記少なくとも2つの非隣接バイアル案内可撓性部材の各々は、前記バイアルアダプタ頂部壁から離間して、前記バイアル案内可撓性部材に沿って位置するヒンジ接続部分を有しており、それによって、前記非隣接バイアル案内可撓性部材の各々が、前記バイアルアダプタ頂部壁に近い側の上部バイアル案内可撓性部材部分と、前記バイアルアダプタ頂部壁に遠い側の下部バイアル案内可撓性部材部分と、に分割され、
前記少なくとも2つの非隣接バイアル案内可撓性部材は、前記バイアルアダプタを前記注射液バイアルに入れ子式にスナップ嵌めする際に前記バイアル案内可撓性部材先端が前記バイアルショルダに接触したときに、そのそれぞれのヒンジ接続領域のところで前記長手方向バイアルアダプタ中心線に対して径方向外側に向けてヒンジ接続され、
前記液剤移送デバイスは、さらに、
b)前記穿刺カニューレと流れ連通する少なくとも1つの流体移送ポートを備える
液剤移送デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のデバイスであって、
ヒンジ接続領域をそれぞれ有する前記少なくとも2つの非隣接バイアル案内可撓性部材は、前記少なくとも2つのバイアル保持可撓性部材から構成され、
前記ヒンジ接続領域の各々は、さらに、該ヒンジ接続領域に沿って前記バイアルアダプタ頂部壁からその少なくとも部分的に周方向に延在し内向きに突出するバイアル保持リブよりも変位され、その結果、前記バイアルアダプタを前記注射液バイアルに入れ子式にスナップ嵌めする際に前記バイアル保持可撓性部材先端が前記バイアルショルダに接触したときに、前記バイアル保持可撓性部材の各々は、そのそれぞれのヒンジ接続領域のところで前記長手方向バイアルアダプタ中心線に対して径方向外側に向けてヒンジ接続される
デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載のデバイスであって、
前記少なくとも2つの非隣接バイアル案内可撓性部材の各々は、ヒンジ接続領域を有し、
前記ヒンジ接続領域は、該ヒンジ接続領域に沿って前記バイアルアダプタ頂部壁から前記少なくとも部分的に周方向に延在し内向きに突出するバイアル保持リブと同じ距離だけ変位され、その結果、前記バイアルアダプタを前記注射液バイアルに入れ子式にスナップ嵌めする際に、前記少なくとも2つの上部バイアル案内可撓性部材部分および前記少なくとも2つの非隣接バイアル保持可撓性部材は、前記少なくとも1つのバイアルチューブ外径d1の前記所定の範囲にある各バイアルチューブ外径d1について、前記バイアルクラウンをぴったりと均一に取り囲む
デバイス。
【請求項4】
請求項3に記載のデバイスであって、
前記非隣接バイアル案内可撓性部材の各々は、
前記長手方向バイアルアダプタ中心線を中心として少なくとも90°の部分角に対しており、
一対の離間した下部バイアル案内可撓性部材部分を備える
デバイス。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のデバイスであって、
前記ヒンジ接続領域は、外周溝から構成される
デバイス。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のデバイスであって、
前記ヒンジ接続領域は、2つ以上の離間したヒンジから構成される
デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射液バイアルへしっかりと入れ子式スナップ嵌めするための液剤移送デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ISO8362−1注射液容器および付属品−パート1:ガラス管から形成された注射液バイアルは、バイアルサイズ、バイアル寸法およびバイアル公差を規格化している。ISO8362−1は、次の用語、すなわち、バイアルチューブと、バイアルクラウンと、バイアルチューブとバイアルクラウンとの中間のバイアルネックと、を定義している。バイアルチューブは、閉塞端と外径(OD)d1とを有している。バイアルクラウンは、クラウン開口と外径(OD)d2とを有している。バイアルネックは、外径(OD)d3と内径(ID)d4とを有している。バイアルクラウンは、クラウン開口を取り囲む最上部バイアルクラウンリムと、バイアルネックに向けられた最下部バイアルクラウンリムと、を有している。クラウン開口は、バイアルネックと同一の内径を有している。注射液バイアルは、バイアルネックとバイアルチューブとの間にバイアルショルダを有している。バイアルチューブとバイアルショルダとは、最上部バイアルチューブリムのところで一緒になる。これらの直径は、d1>d2>d3>d4の関係を有している。ほとんどのバイアルクラウンの外径は、いくつかのバイアルチューブの外径で利用可能であり、例えば、バイアルクラウンの外径d2=20mmが、3つの標準的なバイアルチューブの外径d1=22または24または30mmで利用可能である。したがって、注射液バイアルは、それらのバイアルチューブの外径によってではなく、それらのバイアルクラウンの外径によって言及される。
【0003】
液剤移送デバイスは、交差方向バイアルアダプタ頂部壁を有するバイアルアダプタと、バイアルストッパを穿刺するための中空の穿刺カニューレと、下方に垂下するスカートと、を備えている。下方に垂下するスカートは、穿刺カニューレの先端を遮蔽して、ユーザが不注意でそれに接触するのを防止するのに十分な程度に下方へ向けて延在する。下方に垂下するスカートは、特定のバイアルクラウンの外径にぴったりと入れ子式にスナップ嵌めされる形状および寸法を有している。したがって、注射液バイアルと同様の態様のバイアルアダプタは、それらが入れ子式にスナップ嵌めされることが意図されるバイアルクラウンの外径に関して言及される。バイアルアダプタが、特定のバイアルクラウンの外径の全ての標準的なバイアルチューブの外径に入れ子式にスナップ嵌めされ得ることを確実にするために、その下方に垂下するスカートは、バイアルショルダよりも上方で終端する寸法を有している。しかしながら、そのような下方に垂下するスカートは、ユーザがバイアルアダプタを注射液バイアルと同軸に整合させることを補助しないので、日常的な位置不整合につながる。注射液バイアルに対するバイアルアダプタの位置不整合は、典型的には、とりわけ、シール構造を有する流体移送デバイスとの表題のLevらに付与された本願出願人が所有する米国特許第8,608,723号に記載されているように、バイアルストッパにおける引き裂けの形成につながる。
【0004】
医療用バイアルへの正確なスナップ嵌めをファイルセーフするための液剤移送デバイスとの表題のZingerらに付与された本願出願人が所有する米国特許第8,070,739号は、ユーザがバイアルアダプタを注射液バイアルに整合させるのを補助するように構成されたバイアルアダプタを有する液剤移送デバイスを開示している。この液剤移送デバイスは、下方に垂下するスカートを有するバイアルアダプタを備えている。このスカートは、バイアルを保持する目的でバイアルクラウンの上にスナップ嵌めするための少なくとも2つの非隣接バイアル保持可撓性部材と、それらの対応するバイアル保持可撓性部材よりも長く、バイアルアダプタをそれにスナップ嵌めする前に注射液バイアルに対してバイアルアダプタを案内するための少なくとも2つの非隣接バイアル案内可撓性部材と、を有している。
【0005】
注射液バイアルへのスナップ嵌め中において、バイアル案内可撓性部材は、典型的には、バイアルショルダに当接して、それらのバイアルアダプタ頂部壁とのそれらの接合部のところでそれらのバイアルアダプタ中心線に対して径方向外側に向けて撓んだ際に、径方向外側に向けて摺動する。バイアル案内可撓性部材の径方向外側へ向けた摺動は、径方向外側に向けた摺動を容易にする比較的険しい傾斜を有するバイアルショルダの傾斜に依存する。それらのバイアルアダプタ頂部壁との接合部のところでバイアル案内可撓性部材が径方向外側へ向けて撓むことは、バイアルアダプタを注射液バイアルへ入れ子式にスナップ嵌めするための手動取付力に対抗する取り外し反力につながる。注射液チューブの外径を大きくすると、取付反力が大きくなり、このことは、良くても、入れ子式のスナップ嵌めを弱めることになり、最悪の場合には、脱落につながり得る。
【0006】
しかも、バイアルアダプタを注射液バイアルに入れ子式にスナップ嵌めすることは、特定のバイアルクラウンの外径に関して全てのバイアルチューブの外径について一様ではない。なぜなら、バイアル案内可撓性部材は、様々なバイアルチューブの外径について異なるように径方向外側に向けて撓まされるからである。また、バイアルチューブの外径を大きくすると、注射液バイアルに入れ子式にスナップ嵌めされるバイアルアダプタは、(例えば、注射器を着脱するために)バイアルアダプタを保持するユーザにとって把持面を扱いにくくしてしまう。
【0007】
したがって、特定のバイアルクラウンの外径に関して全ての標準的なバイアルチューブの外径についてバイアルクラウンへしっかりと入れ子式スナップ嵌めするためのバイアルアダプタを有する剤移送デバイスを提供する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、注射液バイアルへしっかりと入れ子式スナップ嵌めするように構成されたバイアルアダプタを備える液剤移送デバイスを対象としている。この液剤移送デバイスは、上述した米国特許第8,070,739号の液剤移送デバイスと類似する構造を有している。ただし、それらのバイアル案内可撓性部材は、さらに、バイアルアダプタ頂部壁のところで撓むのとは対照的に、注射液バイアルへ入れ子式にスナップ嵌めする際にそこで意図的にヒンジ接続するための、バイアルアダプタ頂部壁から離間した目的デザインのヒンジ接続領域を備えている。ヒンジ接続領域は、上述した米国特許第8,070,739号の液剤移送デバイスの場合に生じる可能性のある手動取付力に対抗する大きな取り外し反力を発達させるバイアルアダプタを除外する。したがって、本発明の液剤移送デバイスは、特定のバイアルクラウンの外径について、全てのバイアルチューブの外径の注射液バイアルとともに容易に使用することができる。本発明の液剤移送デバイスは、そのバイアル保持可撓性部材よりも長い穿刺カニューレと、その穿刺カニューレよりも長く、穿刺カニューレを遮蔽するためのバイアル案内可撓性部材と、を備えていてもよいが、注射液バイアルへしっかりと入れ子式スナップ嵌めすることを損なうことはない。
【0009】
バイアル案内可撓性部材は、好ましくは、それらの対応するバイアル保持可撓性部材の少なくとも部分的に周方向に延在し内向きに突出するバイアル保持リブと対抗して配置されるそれらのヒンジ接続領域を有している。その結果、バイアル案内可撓性部材は、注射液バイアルへ入れ子式にスナップ嵌めする際に、そこにスナップ嵌めすることなく、バイアルクラウンをぴったりと取り囲む。バイアル保持可撓性部材は、それらのヒンジ接続領域が、バイアルアダプタ頂部壁に対して、それらの少なくとも部分的に周方向に延在し内向きに突出するバイアル保持リブよりも遠くに必ず配置される場合には、バイアル案内可撓性部材と同様にヒンジ接続領域を有して形成されることによっても、バイアル案内可撓性部材としての機能を兼ねることができる。したがって、本発明の液剤移送デバイスは、ヒンジ接続領域を有するバイアル案内可撓性部材の機能を兼ねる少なくとも2つのバイアル保持可撓性部材のみを有するバイアル保持可撓性部材を備えていてもよい。
【0010】
本発明を理解し、それが実際にどのように実施され得るのかを理解するために、次に、好ましい実施形態について、同様の部分に同様の番号を付した添付図面を参照して、単なる非限定的な例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】バイアルチューブの外径d1と、バイアルクラウンの外径d2と、バイアルネックの外径d3と、バイアルネックの内径d4と、を定義するISO8362−1セクション4寸法の図を示している。
【
図2】米国特許第8,070,739号にしたがった従来の20mmの雌バイアルアダプタの斜視図である。
【
図3】
図2のA−A線に沿った
図2の20mmの雌バイアルアダプタの縦断面図である。
【
図4】
図2のA−A線に沿った縦断面図であり、バイアルチューブの外径d1=22mmを有する20mmの注射液バイアルへの
図2の20mmの雌バイアルアダプタの入れ子式スナップ嵌めを示している。
【
図5】
図2のA−A線に沿った縦断面図であり、バイアルチューブの外径d1=30mmを有する20mmの注射液バイアルへの
図2の20mmの雌バイアルアダプタの入れ子式スナップ嵌めを示している。
【
図6】本発明の第1実施形態にしたがった20mmの雌バイアルアダプタの斜視図である。
【
図7】
図6のB−B線に沿った、
図6の20mmの雌バイアルアダプタの縦断面図である。
【
図8】バイアルチューブの外径d1=22mmを有する20mmの注射液バイアルへ入れ子式にスナップ嵌めする前の
図6の20mmの雌バイアルアダプタを示す縦断面図である。
【
図9】
図8の注射液バイアルへの
図6の20mmの雌バイアルアダプタの入れ子式スナップ嵌めを示す縦断面図である。
【
図10】バイアルチューブの外径d1=30mを有する20mmの注射液バイアルへ入れ子式にスナップ嵌めする前の
図6の20mmの雌バイアルアダプタを示す縦断面図である。
【
図11】
図10の注射液バイアルへの
図6の20mmの雌バイアルアダプタの入れ子式スナップ嵌めを示す縦断面図である。
【
図12】本発明の第2実施形態にしたがった20mmの雌バイアルアダプタの斜視図である。
【
図13】
図12のC−C線に沿った、
図12の20mmの雌バイアルアダプタの縦断面図である。
【
図14】本発明の第3実施形態にしたがった20mmの雌バイアルアダプタの斜視図である。
【
図15】
図14のD−D線に沿った、
図14の20mmの雌バイアルアダプタの縦断面図である。
【
図16】本発明の第4実施形態にしたがった20mmの雌バイアルアダプタの斜視図である。
【
図18】
図16のE−E線に沿った、
図16の20mmの雌バイアルアダプタの縦断面図である。
【
図19】本発明の第5実施形態にしたがった20mmの通気型雌バイアルアダプタの斜視図である。
【
図20】本発明の第6実施形態にしたがった液剤移送デバイスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、長手方向注射液バイアル中心線11を有する注射液バイアル10を示している。注射液バイアル10は、端部が閉塞したバイアルチューブ12と、クラウン開口14を有するチューブ状のバイアルクラウン13と、バイアルチューブ12とバイアルクラウン13との中間のバイアルネック16と、を備えている。バイアルクラウン13は、クラウン開口14を取り囲む最上部バイアルクラウンリム17と、バイアルネック16側を向いた最下部バイアルクラウンリム18と、を有している。注射液チューブ10は、バイアルチューブ12とバイアルネック16との中間にバイアルショルダ19を備えている。バイアルチューブ12とバイアルショルダ19とは、最上部バイアルチューブリム21のところで一緒になる。バイアルチューブ12は、外径d1を有している。バイアルクラウン13は、外径d2を有している。バイアルネック16は、外径d3と内径d4とを有している。クラウン開口14は、バイアルネック16と同一の内径を有している。これらの直径は、d1>d2>d3>d4の関係を有している。バイアルクラウンの外径d2=20mmの場合、注射液チューブの外径d1は、3つの標準的な直径のうちの1つ、すなわち、d1=22または24または30mmであってもよい。
図4および
図5は、注射液バイアル10が、クラウン開口14を塞ぐためのバイアルストッパ22と、バイアルストッパ22をシールするアルミニウムバンド23と、を備えていることを示している。
【0013】
図2および
図3は、上述した米国特許第8,070,739号にしたがった従来の液剤移送デバイス30を示している。この液剤移送デバイス30は、20mmの注射液バイアルに入れ子式にスナップ嵌めするための雌バイアルアダプタによって構成されている。雌バイアルアダプタ30は、長手方向バイアルアダプタ中心線31を有している。雌バイアルアダプタ30は、長手方向バイアルアダプタ中心線31に交差するバイアルアダプタ頂部壁32と、バイアルクラウンをその中に入れ子式に摺動的に受け入れるための、バイアルアダプタ頂部壁32から垂下する実質的に円筒状のスカート33と、を備えている。バイアルアダプタ頂部壁32は、バイアルストッパを穿刺するための垂下する中空の穿刺カニューレ34を備えている。バイアルアダプタ頂部壁32は、流体移送ポート36を備えている。流体移送ポート36は、穿刺カニューレ34と反対側の直立雌ルアーコネクタによって構成されるとともに、穿刺カニューレ34と流れ連通する。穿刺カニューレ34は、バイアルチューブにアクセスするために、少なくとも1つの流通孔38を有する穿刺カニューレ先端37を備えている。
【0014】
スカート33は、6つの可撓性部材39を備えている。可撓性部材39は、交互配置されたバイアル保持可撓性部材41およびバイアル案内可撓性部材42を備えている。バイアル保持可撓性部材41およびバイアル案内可撓性部材42は、長手方向バイアルアダプタ中心線31の周りに等間隔で配置されている。3つのバイアル保持可撓性部材41および3つのバイアル案内可撓性部材42は、雌バイアルアダプタ30の上面図において、長手方向バイアルアダプタ中心線31の周りで等しい周長を占めている。バイアル保持可撓性部材41は、バイアルアダプタ頂部壁32から長さL1のところにバイアル保持可撓性部材先端43を有している。バイアル案内可撓性部材42は、バイアルアダプタ頂部壁32から長さL2のところにバイアル案内可撓性部材先端44を有している。ここで、L2>L1である。バイアル保持可撓性部材41は、バイアル保持目的でバイアルクラウンの上にスナップ嵌めするために部分的に周方向に延在し内向きに突出したバイアル保持リブ46を有している。
【0015】
図4および
図5は、22mmのバイアルチューブ外径と30mmのバイアルチューブ外径とを有する20mmの注射液バイアルへの、20mmの雌バイアルアダプタ30の入れ子式スナップ嵌めをそれぞれ示している。
図4は、米国特許第8,070,739号の
図3Eに示されているのと同様に、バイアル案内可撓性部材42がバイアルアダプタ頂部壁32のところでバイアルアダプタ中心線31に対して径方向外側に僅かに撓んでいる様子を示している。
図5は、バイアル案内可撓性部材42がバイアルアダプタ頂部壁32のところでバイアルアダプタ中心線31に対して径方向外側に
図4よりも大きく撓んでいる様子を示している。雌バイアルアダプタ30は、Aで表される手動操作の取付力と反対の、Dで表される取り外し反力を示している。
図5の30mmのバイアルチューブ外径の場合には、
図4の20mmのバイアルチューブ外径の場合よりも大きな取り外し反力Dがユーザによって感じられる。
【0016】
図4および
図5は、バイアル保持可撓性部材41およびバイアル案内可撓性部材42がバイアルクラウン13を均一にぴったりと包囲していない様子を示している。
図4では、バイアルチューブ外径は、バイアルクラウン外径よりも僅かに大きいだけであるから、2種類の可撓性部材41,42の間の差は、注射器の着脱中に雌バイアルアダプタ30を保持しているユーザにとって、ことによると目立たない。
図5では、そのような径方向外側に向けた撓みが、注射器の着脱中に雌バイアルアダプタ30を保持しているユーザにとって非常に目立っており、したがって、雌バイアルアダプタ30を保持するユーザにとって把持面を扱いにくくしてしまう。
【0017】
図6および
図7は、液剤移送デバイス50Aを示している。液剤移送デバイス50Aは、20mmの注射液バイアル10に入れ子式にスナップ嵌め取り付けするための雌バイアルアダプタによって構成されている。雌バイアルアダプタ50Aは、雌バイアルアダプタ30と同様の構造および使用方法を有しており、したがって、同様の部分には同様の符号が付してある。雌バイアルアダプタ50Aは、雌バイアルアダプタ50Aがバイアル保持可撓性部材41よりも長い穿刺カニューレ34を有している点において、雌バイアルアダプタ30と異なっている。また、雌バイアルアダプタ50Aは、複数のバイアル案内可撓性部材51を備えている。バイアル案内可撓性部材51の各々は、ヒンジ接続領域52を有している。ヒンジ接続領域52は、各バイアル案内可撓性部材51を、バイアルアダプタ頂部壁32に近い側の上部バイアル案内可撓性部材部分53と、バイアルアダプタ頂部壁32に遠い側の下部バイアル案内可撓性部材部分54と、に分割する。バイアル案内可撓性部材51は、バイアルアダプタ頂部壁32から長さL3のところにあるバイアル案内可撓性部材先端56のところで終端している。ここで、L3>L2>L1である。
【0018】
バイアル保持可撓性部材41は、バイアルアダプタ頂部壁32から変位される、部分的に周方向に延在し内向きに突出したバイアル保持リブ46を有している。ヒンジ接続領域52は、部分的に周方向に延在し内向きに突出したバイアル保持リブ46と実質的に反対側に配置されている。したがって、20mmの注射液バイアル10に雌バイアルアダプタ50Aを入れ子式にスナップ嵌めする際に、ヒンジ接続領域52は、最下部バイアルクラウンリム18と最上部バイアルチューブリム21との間に配置される。ヒンジ接続領域52は、例えば、(例えば、外周溝57によって)材料の厚みを低減することによって実施されてもよい。代替的に、ヒンジ接続領域52は、
図12および
図13に示されるように、2つ以上の離間したヒンジ58によって上部バイアル案内可撓性部材53と下部バイアル案内可撓性部材54とを接続することによって実施されてもよい。
【0019】
図8および
図9は、20mmのバイアルクラウン外径と22mmのバイアルチューブ外径とを有する注射液バイアル10に入れ子式にスナップ嵌めする前後の雌バイアルアダプタ50Aを示している。
図8は、雌バイアルアダプタ50Aが注射液バイアル10に近づく際に、バイアル案内可撓性部材51が雌バイアルアダプタ50Aを注射液バイアル10に対して中央配置させることを補助する。雌バイアルアダプタ50Aを注射液バイアル10へ向けて押圧することを進める際に、バイアル案内可撓性部材51は、最初、バイアル案内可撓性部材51がバイアルショルダ19に接触するまでアルミニウムバンド23の下へ摺動する。バイアル保持可撓性部材41は、バイアルアダプタ頂部壁32とのそれらの接合部のところで撓んで、雌バイアルアダプタ30と同様の態様でバイアルクラウン13の上にスナップ嵌めされる。
図9は、バイアル案内可撓性部材先端56がバイアルショルダ19に接触して、バイアルアダプタ頂部壁32とのそれらの接合部のところで撓むのではなく、最上部バイアルチューブリム21に向けて径方向外側に摺動した結果として、バイアル案内可撓性部材51が、それらのそれぞれのヒンジ接続領域52のところで長手方向バイアルアダプタ中心線31に対して径方向外側に向けてヒンジ接続されていることを示している。ユーザは、取付力Aを加えたときに、僅かな取り外し反力Dを感じるかもしれない。
図9は、上部バイアル案内可撓性部材53が、バイアル案内可撓性部材42とは異なり、バイアル保持可撓性部材41と同様に鉛直方向に留まることを示している。その結果、上部バイアル案内可撓性部材53およびバイアル保持可撓性部材41の両方は、バイアルクラウン13をぴったりと包囲する。
【0020】
図10および
図11は、
図8および
図9に対応しており、同一の20mmのバイアルクラウン外径を有するが、30mmのバイアルチューブ外径を有する注射液バイアル10に入れ子式にスナップ嵌めする前後の雌バイアルアダプタ50Aを示している点において
図8および
図9と異なっている。
図11は、バイアル案内可撓性部材先端56がバイアルショルダ19に接触して、最上部バイアルチューブリム21に向けて径方向外側に摺動した結果として、バイアル案内可撓性部材51が、それらのそれぞれのヒンジ接続領域52のところで長手方向バイアルアダプタ中心線31に対して径方向外側に向けてヒンジ接続されていることを示している。ユーザは、取付力Aを加えたときに、
図5の取り外し反力Dよりも著しく小さい僅かな取り外し反力Dを感じるかもしれない。
図11は、上部バイアル案内可撓性部材部分53が、バイアル案内可撓性部材42とは異なり、バイアル保持可撓性部材41と同様に鉛直方向に留まることを示している。その結果、上部バイアル案内可撓性部材部分53およびバイアル保持可撓性部材41の両方は、バイアルクラウン13をぴったりと包囲する。したがって、その関連する標準的なバイアルチューブの外径22mm、24mmおよび30mmの全ての20mmの注射液バイアルに入れ子式にスナップ嵌めするために、雌バイアルアダプタ50Aを等しく使用することができる。
【0021】
図14および
図15は、液剤移送デバイス50Bを示している。液剤移送デバイス50Bも、構造および使用方法が雌バイアルアダプタ50Aと同様の雌バイアルアダプタによって構成されており、したがって、同様の部分には同様の符号が付してある。液剤移送デバイス50Bは、液剤移送デバイス50Bが、6つのバイアル保持可撓性部材61を備えており、バイアル案内可撓性部材を備えていない点において、液剤移送デバイス50Aと異なっている。6つのバイアル保持可撓性部材61は、それぞれ、ヒンジ接続領域52と同様のヒンジ接続領域62を備えており、したがって、各バイアル保持可撓性部材61を、バイアルアダプタ頂部壁32に近い側の上部バイアル保持可撓性部材部分63と、バイアルアダプタ頂部壁32に遠い側の下部バイアル保持可撓性部材部分64と、に分割される。ヒンジ接続領域62は、バイアルアダプタ頂部壁32に対して、内向きに突出するバイアル保持リブ46よりも遠くに必ず配置される。バイアル保持可撓性部材61は、バイアルアダプタ頂部壁32から長さL4のところにあるバイアル保持可撓性部材先端66のところで終端する。ここで、L4=L3である。ヒンジ接続領域62は、外周溝67によって構成されている。
【0022】
図16〜18は、液剤移送デバイス50Cを示している。液剤移送デバイス50Cも、構造および使用方法が雌バイアルアダプタ50Bと同様の雌バイアルアダプタによって構成されており、したがって、同様の部分には同様の符号が付してある。雌バイアルアダプタ50Cは、2つの直径バイアル保持可撓性部材61と、2つの直径バイアル案内可撓性部材71と、を備えている点において、雌バイアルアダプタ50Bと異なっている。2つの直径バイアル案内可撓性部材71は、バイアル案内可撓性部材51の場合に依然として生じ得るバイアルアダプタ頂部壁32のところでの撓みを防止するように構成される。そのような防止は、バイアル案内可撓性部材71が、
図17の上面図において長手方向バイアルアダプタ中心線31を中心として少なくとも90°の部分角に対していることによって達成される。典型的には、2つのバイアル保持可撓性部材61は、それぞれ、部分角α=60°に対しており、2つのバイアル案内可撓性部材71は、それぞれ、部分角β=120°に対している。
【0023】
バイアル案内可撓性部材71は、それぞれ、ヒンジ接続領域72を備えている。ヒンジ接続領域72は、各バイアル案内可撓性部材71を、バイアルアダプタ頂部壁32に近い側の上部バイアル案内可撓性部材部分73と、バイアルアダプタ頂部壁32に遠い側の一対の離間した下部バイアル案内可撓性部材部分74と、に分割する。バイアル案内可撓性部材71は、バイアル案内可撓性部材先端76のところで終端している。雌バイアルアダプタ50Cを注射液バイアル10に入れ子式にスナップ嵌めする際に、バイアル案内可撓性部材先端76がバイアルショルダ19と接触し、最上部バイアルチューブリム21に向けて径方向外側に摺動することの結果として、下部バイアル案内可撓性部材部分74は、それらのそれぞれのヒンジ接続領域72のところで長手方向バイアルアダプタ中心線31に対して径方向外側に向けてヒンジ接続する。
【0024】
図19は、液剤移送デバイス50Dを示している。液剤移送デバイス50Dは、本発明の教示にしたがった通気型雌バイアルアダプタによって構成されている。
【0025】
図20は、液剤移送デバイス50Eを示している。液剤移送デバイス50Eは、Zingerらに付与された本願出願人の米国特許第6,238,372号に開示されている流体制御デバイスによって構成されており、本発明の教示にしたがったバイアルアダプタを備えている。
【0026】
本発明の特定の実施形態が例示され説明されたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、様々な他の変更および修正を行うことができることが当業者には明らかであろう。
【符号の説明】
【0027】
10…注射液バイアル
11…長手方向注射液バイアル中心線
12…バイアルチューブ
13…バイアルクラウン
14…クラウン開口
16…バイアルネック
17…最上部バイアルクラウンリム
18…最下部バイアルクラウンリム
19…バイアルショルダ
21…最上部バイアルチューブリム
22…バイアルストッパ
23…アルミニウムバンド
30…液剤移送デバイス(雌バイアルアダプタ)
31…長手方向バイアルアダプタ中心線
32…バイアルアダプタ頂部壁
33…スカート
34…穿刺カニューレ
36…流体移送ポート
37…穿刺カニューレ先端
38…流通孔
39…可撓性部材
41…バイアル保持可撓性部材
42…バイアル案内可撓性部材
43…バイアル保持可撓性部材先端
44…バイアル案内可撓性部材先端
46…バイアル保持リブ
50A〜50E…液剤移送デバイス(雌バイアルアダプタ)
51…バイアル案内可撓性部材
52…ヒンジ接続領域
53…上部バイアル案内可撓性部材部分
54…下部バイアル案内可撓性部材部分
56…バイアル案内可撓性部材先端
57…外周溝
58…ヒンジ
61…バイアル保持可撓性部材
62…ヒンジ接続領域
63…上部バイアル保持可撓性部材部分
64…下部バイアル保持可撓性部材部分
66…バイアル保持可撓性部材先端
67…外周溝
71…バイアル案内可撓性部材
72…ヒンジ接続領域
73…上部バイアル案内可撓性部材部分
74…下部バイアル案内可撓性部材部分
76…バイアル案内可撓性部材先端
【要約】
液剤移送デバイスは、少なくとも2つの非隣接バイアル保持可撓性部材と、少なくとも2つの非隣接バイアル案内可撓性部材と、を有するバイアルアダプタを備える。バイアル案内可撓性部材は、ぞれぞれ、注射液バイアルへ入れ子式にスナップ嵌めする際にそこで意図的にヒンジ接続するための、バイアルアダプタ頂部壁から離間した目的デザインのヒンジ接続領域を備えている。バイアル保持可撓性部材は、それらのヒンジ接続領域がバイアルアダプタ頂部壁に対してそれらの内向きに突出するバイアル保持リブよりも遠くにある場合には、バイアル案内可撓性部材の機能を兼ねてもよい。
【選択図】
図7