特許第6367530号(P6367530)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6367530断層画像撮影装置及び断層画像の画像生成制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367530
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】断層画像撮影装置及び断層画像の画像生成制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   A61B3/10 R
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-145406(P2013-145406)
(22)【出願日】2013年7月11日
(65)【公開番号】特開2015-16151(P2015-16151A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】501299406
【氏名又は名称】株式会社トーメーコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】杉山 聡
(72)【発明者】
【氏名】加藤 千比呂
【審査官】 山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−154939(JP,A)
【文献】 特開2008−154941(JP,A)
【文献】 特開2010−181172(JP,A)
【文献】 特開2011−036431(JP,A)
【文献】 特開2011−092290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出力された光を被検者の眼底部に照射する測定光と参照物に照射する参照光とに分割し、眼底部からの反射光と参照物からの反射光を合波して干渉光を生成する光干渉生成手段と、
前記生成された干渉光を検出する検出手段と、
該検出手段による検出結果に基づいて、所定のフレーム内に被検者の眼底部断層像を形成する形成手段と、
該形成手段により形成された前記眼底部断層像を解析して、被検眼の眼底形状によって異なる前記眼底部断層像の中の1つ以上の境界層の深さ方向の幅の値を求める解析手段と、
該解析手段により求めた前記眼底部断層像の1つ以上の境界層の深さ方向の幅の値を用いて、前記眼底部断層像を配置させる前記所定のフレーム内の最適位置を算出する最適位置算出手段と、
前記眼底部断層像の中の1つの境界層における前記所定のフレーム内の最浅位置又は最深位置である特定位置を算出する特定位置算出手段と、
最適位置算出手段から得られた前記所定のフレーム内の最適位置に該特定位置算出手段から得られた前記眼底部断層像の中の1つの境界層における特定位置が配置されるように、前記参照物の位置を光軸上で移動して前記参照光の光路長を変更する制御手段と、を備え、
該制御手段は、該解析手段により求めた前記眼底部断層像の1つ以上の境界層の深さ方向の幅の値がフレームの深さ方向有効幅(フレームの中の前記眼底部断層像を配置可能な幅)より小さい場合と、該解析手段により求めた前記眼底部断層像の1つ以上の境界層の深さ方向の幅の値がフレームの深さ方向有効幅より大きい場合とで、フレーム内の最適位置と特定位置を異ならせることを特徴とする光断層画像撮影装置。
【請求項2】
前記解析手段により求める前記眼底部断層像の中の1つ以上の境界層は、内境界膜層(ILM)と網膜色素上皮層(RPE)と強膜の境界層(CSI)の3つであり、前記特定位置算出手段により算出する前記眼底部断層像の中の1つの境界層は、網膜色素上皮層(RPE)であることを特徴とする請求項1に記載の光断層画像撮影装置。
【請求項3】
前記解析手段は3つの各境界層の幅の値TRTN、TCHR、TRPEを以下の式に基づいて算出し、
RTN=ZRPEAVG−ZILMAVG
CHR=ZCSIAVG−ZRPEAVG
RPE=ZRPEmax−ZRPEmin
(ここで、ZILMAVGは、ILMの平均深度、ZRPEAVGは、RPEの平均深度、ZCSIAVGは、CSIの平均深度であり、ZRPEminは、RPEの最浅位置、ZRPEmaxは、RPEの最深位置である。)
前記制御手段は、
3つの各境界層の深さ方向の幅の和TIMG(TRTN+TCHR+TRPE)<フレームの深さ方向有効幅(Zmax−2×Toffset)の場合には、最適位置は、Toffset+TRTN、特定位置は、ZRPEminとし、
3つの各境界層の深さ方向の幅の和TIMG(TRTN+TCHR+TRPE)>フレームの深さ方向有効幅(Zmax−2×Toffset)の場合には、最適位置は、Zmax−(Toffset+TCHR)、特定位置は、ZRPEmaxとする、
(ここで、Zmaxは、フレームの深さ方向の最深位置、Toffsetは、フレームの中の断層画像を配置しない上端及び下端の幅の値である。)
ことを特徴とする請求項2に記載の光断層画像撮影装置。
【請求項4】
前記解析手段は3つの各境界層の幅の値TRTN、TCHR、TRPEを以下の式に基づいて算出し、
RTN=ZRPEAVG−ZILMAVG
CHR=ZCSIAVG−ZRPEAVG
RPE=ZRPEmax−ZRPEmin
(ここで、ZILMAVGは、ILMの平均深度、ZRPEAVGは、RPEの平均深度、ZCSIAVGは、CSIの平均深度であり、ZRPEminは、RPEの最浅位置、ZRPEmaxは、RPEの最深位置である。)
前記制御手段は、
3つの各境界層の深さ方向の幅の和TIMG(TRTN+TCHR+TRPE)<フレームの深さ方向有効幅(Zmax−2×Toffset)の場合には、最適位置は、Toffset+TRTN、特定位置は、ZRPEminとし、
3つの各境界層の深さ方向の幅の和TIMG(TRTN+TCHR+TRPE)>フレームの深さ方向有効幅(Zmax−2×Toffset)の場合には、最適位置は、Toffset+(TRPE+TRTN)、特定位置は、ZRPEmaxとする、
(ここで、Zmaxは、フレームの深さ方向の最深位置、Toffsetは、フレームの中の断層画像を配置しない上端及び下端の幅の値である。)
ことを特徴とする請求項2に記載の光断層画像撮影装置。
【請求項5】
前記眼底部断層像を解析して、前記眼底部断層像の最深位置を求める第2の解析手段を備え、該第2の解析手段により求めた前記眼底部断層像の最深位置を前記所定フレームの横方向の中央位置に配置されるように、スキャン位置を変更する第2の制御手段を備えることを特徴とする請求項に記載の光断層画像撮影装置。
【請求項6】
前記眼底部断層像の最深位置は網膜色素上皮(RPE)又は脈絡膜と強膜の境界面(CSI)のいずれかの最深位置であることを特徴とする請求項5に記載の光断層画像撮影装置。
【請求項7】
前記眼底部断層像内の特定部位を指定する指定手段を備え、該指定した特定部位が前記所定フレームの横方向の中央位置に配置されるように、スキャン位置を変更する第3の制御手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の光断層画像撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光断層画像撮影装置に関し、特に眼科医療等に用いられるOCTにより眼底部の断層画像を撮る光断層画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、眼科検査のために用いられる検査装置として、光干渉断層法(Optical Coherence Tomography:OCT)により被検者の被検眼(眼球)の断層画像を撮影する光干渉断層撮影装置が供されてきている。
【0003】
光干渉断層撮影装置においては、タイムドメイン方式と呼ばれる、ミラーを動かして参照光の光路長を機械的に変化させながら断層画像取得を行うタイムドメインOCTと、フーリエドメイン方式と呼ばれる、分光器を用いてスペクトル情報を検出し断層画像取得を行うスペクトルドメインOCT、もしくは、波長走査光源を用いてスペクトル干渉信号を検出し断層画像取得を行う光周波数掃引OCTとがある。
【0004】
一般にOCTでは、被検眼の深さ方向の一次元の信号を取得し(A−スキャン)、そして、測定光を被検眼に対して一次元走査することで二次元断層画像を取得し(B−スキャン)、さらに、二次元断層画像を、被検眼に対して位置をずらしながら繰り返し取得することで三次元画像を得る(C−スキャン)。(図3参照)
【0005】
上記のような装置おいては、被検眼の正面画像を取得するためのスキャニングレーザーオフサルモスコープ(SLO)又は眼底カメラなどをOCT光学系に複合させた構成が知られており、検者はモニターに表示された被検眼の正面画像(例えば眼底画像)に対して撮影位置を指定してOCTによる断層画像を取得する。
【0006】
このとき、検者は、所望する眼底部位を好適な撮影感度で観察するために、モニターに表示されている断層画像を見ながら参照光学の光路長を変更する。
【0007】
しかしながら、検者が所望する眼底部位を所望の撮影条件で観察するために行う参照光の光路長の変更操作は、検者にとって多くの手間を要し、そのため、断層画像の取得に時間がかかったり、また、検者が不慣れな場合は、検者が所望する眼底部位が観察できない可能性もあった。
【0008】
特許文献1には、上記問題を解決した方法が開示されている。
【0009】
すなわち、モニターに表示された断層画像に対し、モニター上にカーソルを表示し、カーソルの位置をマウスなどのポインティングデバイスで検者が移動し、その操作信号に基づいて参照光の光路長と測定光の光路長の光路差を変更して、検者が最適とするモニターの表示位置に断層画像を表示させる方法が開示されている。
【0010】
また、特許文献2には、断層画像を解析して所定のフレーム内における断層画像の位置(深さ位置)を特定し、特定された位置とあらかじめ設定された位置、例えばフレーム内の目的の深度位置との差を算出し、その算出結果から参照光学系における参照ミラーの移動距離を算出して、取得する断層画像が、フレーム内の目的の深度位置に配置されるように参照光の光路長を変更するように制御する方法が開示されている。
【0011】
この方法によれば、検者の手動操作に依らず、取得する断層画像を自動的にフレーム内の目的の深度位置に配置することが可能であることから、特許文献1のように検者が手動で位置合わせをする必要がないため、操作も簡潔になり、検者の負担も減るとともに、検者間での取得した断層画像のばらつきも少なくなる。
【0012】
さらに、特許文献2の明細書に記載されているように、目的の深度位置を高感度で計測できるような、例えば、測定光の光路長が参照光の光路長に一致する深度位置(z方向の原点)や又はその近くの深度位置に設定することにより、検者の操作によることなく、計測感度が良好な断層画像が得られるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−160190号公報
【特許文献2】特開2008−154939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、特許文献1に係る方法では、検者は取得した断層画像に対して、手動でポインティングデバイスを用いてモニターに表示する断層画像の位置を移動するため、検者が最適とする位置に断層画像を表示することが可能ではあるが、取得した断層画像毎にその操作を行う必要があり、手間がかかる。また、最適位置が検者の主観によるため、検者間で取得される断層画像にばらつきが生じるという問題がある。
【0015】
特許文献2に係る方法では、フレーム内の所定位置を目的の深度位置に設定すれば、自動的に目的の深度位置の断層画像が取得され、モニターに表示することが可能ではあるが、例えば、眼底部の全体の層の幅(すなわち、網膜における内境界膜層(ILM)の上端と脈絡膜と強膜の境界面(CSI)の下端の幅)は被検眼によりかなりのばらつきがある。例えば、強度近視の場合や眼底に疾患があるような場合は、正常眼に比べ、眼底部の曲率が高く、結果として断層画像の幅が非常に大きくなる。このような場合、特許文献2に係る方法では、断層画像がフレーム内にバランスよく配置されず、断層画像全体が所定のフレーム内に表示されなかったり、仮に表示できてもフレーム内の上方又は下方に偏って配置されることがあり、結果的には検者にとって最適とは言えない断層画像が表示される恐れがある。
【0016】
特に、目的の深度位置を高感度で計測できる位置に設定する場合、特許文献2に記載があるように、そのような深度位置は測定光の光路長が参照光の光路長に一致する深度位置(z方向の原点)や又はその近くの深度位置であり、画像を取得する所定のフレーム内の上端か上端の近くであるため、特許文献2の図面(図12図14)に記載されているように、目的の深度位置をフレーム内の上部の位置に設定することになる。
【0017】
図9の(A)及び(B)は、正常眼及び強度近視の場合のフレームF内における眼底部の断層画像Aを模式的に示した図である。図中のF0は上述した高感度で計測できる目的の深度位置を示す。正常眼(A)の場合のように、全体の層の幅が比較的小さな場合は、眼底部の断層画像をフレームの上部F0に配置しても問題はないが、上述したように、強度近視(B)の場合は、眼底部の全体の層の幅が大きいため、高感度で計測できるように、断層画像の特定部位、例えば網膜色素上皮層(RPE)をフレームの上部の位置F0(特定位置)に配置すると、(B−1)や(B−2)に示すように、断層画像全体が上方に行き過ぎてしまい、(B−2)に示すように、z方向の原点付近で画像の折り返しが発生して、眼底部の断層画像の深い部分しか見れず、断層画像としては高感度で計測できても、眼底部全体を見ることができないという恐れがある。
【0018】
つまり、高感度な断層画像の取得できたとしても、結果的には検者にとって、最適に配置された断層画像が得られない恐れがある。
【0019】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、どのような眼底部の断層画像であっても、フレーム内に検者にとって最適な位置に配置された眼底部の断層画像をモニターに表示させ、観察を可能にした光断層画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、光源から出力された光を被検者の眼底部に照射する測定光と参照物に照射する参照光とに分割し、眼底部からの反射光と参照物からの反射光を合波して干渉光を生成する光干渉生成手段と、前記生成された干渉光を検出する検出手段と、該検出手段による検出結果に基づいて、所定のフレーム内に被検者の眼底部断層像を形成する形成手段と、該形成手段により形成された前記眼底部断層像を解析して、被検眼の眼底形状によって異なる前記眼底部断層像の中の1つ以上の境界層の深さ方向の幅の値を求める解析手段と、該解析手段により求めた前記眼底部断層像の1つ以上の境界層の深さ方向の幅の値を用いて、前記眼底部断層像を配置させる前記所定のフレーム内の最適位置を算出する最適位置算出手段と、前記眼底部断層像の中の1つの境界層における前記所定のフレーム内の最浅位置又は最深位置である特定位置を算出する特定位置算出手段と、最適位置算出手段から得られた前記所定のフレーム内の最適位置に該特定位置算出手段から得られた前記眼底部断層像の中の1つの境界層における特定位置が配置されるように、前記参照物の位置を光軸上で移動して前記参照光の光路長を変更する制御手段と、を備え、該制御手段は、該解析手段により求めた前記眼底部断層像の1つ以上の境界層の深さ方向の幅の値がフレームの深さ方向有効幅(フレームの中の前記眼底部断層像を配置可能な幅)より小さい場合と、該解析手段により求めた前記眼底部断層像の1つ以上の境界層の深さ方向の幅の値がフレームの深さ方向有効幅より大きい場合とで、フレーム内の最適位置と特定位置を異ならせることを特徴とする光断層画像撮影装置である。
【0023】
また、請求項に記載の発明は、請求項に記載の光断層画像撮影装置であって、前記眼底部断層像を解析して、前記眼底部断層像の最深位置を求める第2の解析手段を備え、該第2の解析手段により求めた前記眼底部断層像の最深位置を前記所定フレームの横方向の中央位置に配置されるように、スキャン位置を変更する第2の制御手段を備えることを特徴とする。
【0024】
また、請求項に記載の発明は、請求項に記載の光断層画像撮影装置であって、前記眼底部断層像の最深位置は網膜色素上皮(RPE)又は脈絡膜と強膜の境界面(CSI)のいずれかの最深位置であることを特徴とする。
【0025】
また、請求項に記載の発明は、請求項に記載の光断層画像撮影装置であって、前記眼底部断層像内の特定部位を指定する指定手段を備え、該指定した特定部位が前記所定フレームの横方向の中央位置に配置されるように、スキャン位置を変更する第3の制御手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、形成された眼底部の断層画像を解析して、1つの境界層の深さ方向の幅の値、例えば内境界膜層(ILM)のフレーム内における深度位置の平均値と網膜色素上皮層(RPE)のフレーム内における深度位置の平均値を求めて、各平均値の差(TRTN)を境界層の深さ方向の幅の値とし、予め設定したoffset値に対し、求めた境界層の深さ方向の幅の値(TRTN)だけ深い位置(offset値+TRTN)を基準位置とし、参照物(参照ミラー)を移動して、例えば網膜色素上皮層(RPE)の上端が上記基準位置を配置するように参照物(参照ミラーなど)を移動して参照光の光路長を変更するように制御することにより、眼底部の全体の層の幅(すなわち、網膜における内境界膜層(ILM)の上端と脈絡膜と強膜の境界面(CSI)の下端の幅)に関係なく、形成された眼底部の断層画像を自動的にフレーム内の最適位置に配置できる。
【0027】
また、この発明によれば、眼底部の断層画像をフレーム内の最適位置に配置するための前記最適位置を求める算出式を複数備える。例えば、強度近視の場合は、眼底部の全体の層の幅(すなわち、網膜における内境界膜層(ILM)の上端と脈絡膜と強膜の境界面(CSI)の下端の幅)が極端に大きくなることがあり、そのような場合は上述した算出式とは別の式を用いて前記最適位置を算出する。複数の算出式のいずれかを使用するかの選択は、例えば、前記解析手段で求めた各境界層の幅を基に求めた断層画像全体の幅の値とフレーム内における撮像可能な幅(フレーム全体の深度幅から上端と下端のoffset値を除いた幅)の値とを比較して行ってもよい。これにより、取得した断層画像毎に最適な算出式が選択されるため、強度近視や疾患のある被検眼など、眼底部の全体の層の幅がさまざまな場合でも、眼底部の断層画像が検者に最適とされるフレーム内の位置に自動的に配置され、表示できるのである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に関わる光断層画像生成装置の断層像取得部の概要を示した図である。
図2】本発明に関わる光断層画像生成装置の構成を示した図である。
図3】3次元断層像の取得までの過程を説明する図である。
図4】本発明に関わる概略フローを示した図である。
図5】本発明に関わる断層画像アライメントの処理フローを示した図である。
図6】フレーム内に断層画像全体が撮影されたかどうかの判定説明図である。
図7】眼底の断層画像アライメントの方法の主なステップを説明した図である。(その1)
図8】眼底の断層画像アライメントの方法の主なステップを説明した図である。(その2)
図9】正常眼及び強度近視の場合のフレームF内における眼底部の断層画像Aを模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0029】
以下、本発明の一実施例に係る光断層画像撮影装置について図面を参照して説明する。 [第1の実施形態] 図1には断層像取得部100の詳細構成を示す。
【0030】
図1に示すように、断層像取得部100では被検眼Eの眼底部(眼底網膜)Er上に測定光を照射することにより、眼底部Erの三次元断層像を撮影する。本実施形態では、時間的に波長を変化させて走査する波長走査光源101を用いたフーリエドメイン(光周波数掃引)方式が採用されている。
【0031】
即ち、波長走査光源101から出力された光は、光ファイバを通して偏波コントローラ102及びアイソレータ103に入力しその後光ファイバを通して第1のファイバーカプラ104に入力され、この第1のファイバーカプラ104において、例えば10:90の比率で、参照光と測定光とに分波されて出力される。そのうち参照光は、光ファイバを通ってコリメータレンズ112に入力し、ディレイラインユニット113に入射される。ディレイラインユニット113は眼底の網膜上に参照光路を合わせる光路長調整用のユニット部であり、OCT断層像を測定する前に、測定光路長と参照光路長を合わせる。
【0032】
そして、ディレイラインユニット113から放射された参照光はコリメータレンズ114から光ファイバを通り偏波コントローラ115に入力しその後光ファイバを通して第2のファイバーカプラ116の第1の入力部に入力される。
【0033】
一方、前記第1のファイバーカプラ104から出力された測定光は、光ファイバを通ってコリメータレンズ105に入力し、ガルバノミラーユニット106に入力される。ガルバノミラーユニット106は、測定光を走査させるためのもので、ガルバノドライバ107により、ガルバノミラーユニット106は測定光を被検眼の眼底面において水平方向に及び垂直方向に走査されるようになっている。
【0034】
前記ガルバノミラーユニット106から出力された測定光はレンズ108を通り、対物レンズ109を通して図示しない検査窓から出射され、被検眼Eに入射される。被検眼Eに入射された測定光は、眼底部Erの各組織部分(網膜、脈絡膜等)にて反射し、その反射光が、検査窓から入射され、上記と逆に、対物レンズ109、レンズ108、ガルバノミラーユニット106を通って、コリメータレンズ105に入力される。そして、その反射光は、光ファイバを通って前記第1のファイバーカプラ104を通った後、光ファイバを通して第2のファイバーカプラ116の第2の入力部に入力される。
【0035】
この第2のファイバーカプラ116において、眼底部Erからの反射光と、前記光ファイバを通って入力された参照光とが、例えば50:50の比率で合波され、その信号が光ファイバを介して差動増幅検出器117に入力される。検出器117においては、波長毎の干渉が計測され、計測された干渉信号が、前記制御装置200に設けられたADボード201に入力される。さらに、制御装置200に設けられた演算部202において、干渉信号に対するフーリエ変換などの処理が行われ、もって走査線に沿う眼底網膜Erの断層画像が取得されるのである。(図2
【0036】
このとき、前記ガルバノミラーユニット106による測定光のスキャンパターン、言い換えると走査線(B−スキャン)の方向は、制御装置200において設定されるようになっている。そして、制御装置200(演算部202)からの指令信号に基づいてガルバノドライバ107がガルバノミラーユニット106を制御するようになっている。尚、得られた眼底部Erの断層画像のデータは、記憶部203に記憶される。(図2
【0037】
次に図4及び図5を参照しながら、本発明の概要について説明する。図4は眼底部の断層画像(B−スキャン像)取得までの一連の処理フローを示したものであり、また、図5は、断層画像の最適位置を算出して、断層画像をフレーム内の最適位置に配置するまでの処理フローを示したものである。
【0038】
(S101)
前眼部アライメントは、本発明に関わる光断層画像撮影装置に限らず多くの眼科装置において行なわれているものであり、ここではその構成や手順についての具体的な記載は省略するが、モニター等に表示された被検眼前眼部像とアライメント用光束の反射像を観察しながら適切な位置関係となるように操作が行われる。
【0039】
(S102) 次に眼底部の正面画像を撮影し、モニター表示する。眼底部の正面画像の撮影には、図示しないが、一般的にスキャニングレーザーオフサルモスコープ(SLO)又は眼底カメラが採用される。
【0040】
(S103) 次にモニターに表示された眼底部の正面画像に対し、測定する位置を指定する。指定する操作は、モニター上にカーソルを表示させ、検者がマウスなどを用いて指定してもよい。
【0041】
(S104) 次に測定光の光路長と参照光の光路長が一致するように、ディレイラインユニット113内のプリズムを移動して参照光の光路長を変更する。この際の参照光の光路長は、プリズムを初期位置から最終位置まで移動させながら複数枚の断層画像を取得し、記憶部203に記憶され、演算部202によって取得した画像を解析することにより、算出される。算出には、フレーム内の断層画像の有無、断層画像の輝度値のピーク位置、輝度ピーク値や輝度ピークの半値幅など、公知の方法で行われる。
【0042】
(S105) そして、プリズムの移動が完了すると、断層画像の合焦調整を行う。合焦の調整は、対物レンズ109を移動して行う。対物レンズ109の位置もS104の参照光路長調整と同様、対物レンズ109を開始位置から最終位置まで移動させながら複数枚の断層画像を取得し、記憶部203に記憶され、演算部202によって取得した画像を解析することにより、算出される。算出には、輝度ピーク値などを利用する、公知の方法で行われる。
【0043】
(S106) 合焦調整が終了すると、断層画像アライメントを実施する。詳細は後述するが、取得した断層画像のデータから、フレーム内に最適位置を算出し、算出したフレーム内の最適位置に断層画像が配置されるように、ディレイラインユニット113内のプリズムを移動して参照光の光路長を変更する。
【0044】
(S107、S108) 参照光の光路長の変更が終了した後、断層画像を取得して、モニターに表示する。
【0045】
(断層画像アライメント)
図5を参照しながら、取得した断層画像のフレーム内の最適位置の算出方法について説明する。
【0046】
(S201)
まず、断層画像を取得する。
【0047】
(S202)
フレーム内に眼底部の断層画像全体が撮影されているかどうかを判定する。判定方法は、例えば、図6に示すように、取得した断層画像に対しX方向で例えば少なくとも3つX座標位置(例えば、X座標の最小値X(0)、中央値X(c)及び最大値X(e))におけるA−スキャン像の輝度データを用いて評価する方法を用いることができる。3つの位置におけるA−スキャン像の輝度値の合計輝度値SUM(X(0),P(z))、SUM(X(c),P(z))、SUM(X(e),P(z))を算出して、各A−スキャン像の合計輝度値を比較する。眼底部の断層画像は一般的に下方に湾曲しているため、例えば、図6(B)の一番上の図のように、X座標の最小値X(0)の合計輝度値や最大値X(e)の合計輝度値に比べて中央値X(c)の合計輝度値が大きい場合は、図6(A)の一番上の図のように、断層画像はフレームの上側にはみ出して配置されていると判断できるし、逆に、図6(B)の一番下の図のように、X座標の最小値X(0)の合計輝度値や最大値X(e)の合計輝度値に比べて中央値X(c)の合計輝度値が小さい場合は、図6(A)の一番下の図のように、断層画像はフレームの下側にはみ出して配置されていると判断することができる。もし、図6(B)の真ん中の図のように、3つの位置におけるA−スキャン像の輝度値の合計輝度値がほぼ同じ値であれば、図6(A)の真ん中の図のように、眼底部の断層画像における全ての境界層がフレーム内にあると判断することができる。
【0048】
(S212)
S202で、断層画像が所定のフレームの下側や上側にはみ出して、眼底部の断層画像の境界層全てがフレーム内にないと判断した場合はディレイラインユニット113内のプリズムを移動して参照光の光路長を変更し、再度断層像を取得する。
【0049】
S202で、眼底部の断層画像における全ての境界層がフレーム内にあると判断した場合は、取得した断層画像の最適位置を算出するための各パラメーターを算出する。
【0050】
(S203)
まず、各境界層の平均深度を算出する。図7図8はフレームF内に配置された眼層画像Aを示したもので、図7は正常眼のように眼底の眼層画像の幅が比較的小さい場合の、図8は強度近視や疾患眼で得られる眼底の眼層画像の幅が比較的大きな場合の説明図である。本実施例では、眼底部の内境界膜層(ILM)、網膜色素上皮層(RPE)及び脈絡膜と強膜の境界層(CSI)の3つの境界層の平均深度を算出する。算出方法は、本実施例では、断層画像を構成する複数のA−スキャン像における各境界層の深度位置を合計してその平均値を算出している。算出した各平均深度の値はそれぞれ、ZILMAVGILMの平均深度)、ZRPEAVG(RPEの平均深度)及びZCSIAVG(CSIの平均深度)として、記憶部203に記憶する。
【0051】
(S204)
次に、特定位置の深度を算出する。特定位置とは、断層画像の中の特定の位置で、本実施例では網膜色素上皮層(RPE)のフレーム内における最浅位置(上端位置)及び最深位置を採用している。取得した断層画像を解析して、RPEの層をトレースし、最浅位置(ZRPEmin)と最深位置(ZRPEmax)を求め、記憶部203に記憶する。
【0052】
(S205)
次に、境界層の幅の値を算出する。本実施例では、S203及びS204で求めて記憶部203に記憶した値を用いて、以下の算出式から、3つの境界層の幅の値(TRTN、TCHR、TRPE)を算出して、記憶部203に記憶する。
RTN=ZRPEAVG−ZILMAVG
CHR=ZCSIAVG−ZRPEAVG
RPE=ZRPEmax−ZRPEmin
【0053】
(S206)
そして、S205で算出した各境界層の幅の値を用いて、取得した断層画像の深さ方向の幅の値(TIMG)を以下の算出式により算出し、記憶部203に記憶する。
IMG=TRPE+TRTN+TCHR
【0054】
(S207)
S206で得られたTIMGの値とフレームの深さ方向有効幅(Zmax−2×Toffset)の値を比較する。ここで、Zmaxはフレームの深さ方向(Z方向)の最深位置であり、Toffsetはフレームの中で断層画像を配置しない上端及び下端の幅の値であり、これらはフレーム内の値としてあらかじめ設定された値である。
【0055】
(S208)
S207で、TIMG<(Zmax−2×Toffset)と判定した場合は、最適位置及び特定位置は以下のように設定する。
最適位置:Toffset+TRTN
特定位置:ZRPEmin
【0056】
(S209)
S207で、TIMG<(Zmax−2×Toffset)ではないと判定した場合は、最適位置及び特定位置は以下のように設定する。
最適位置:Zmax−(Toffset+TCHR
特定位置:ZRPEmax
【0057】
(S210)
最適位置及び特定位置の設定が終了すると、S208又はS209で設定した特定位置(断層画像の中の位置)がフレーム内の最適位置に配置されるようにディレイラインユニット113内のプリズムを移動する。プリズムを移動する移動距離は、取得した現在の断層画像におけるZRPEmin又はZRPEmaxの値とS208又はS209で設定した最適位置との差から算出する。
【0058】
上述までは、断層画像を深さ方向(z方向)に対して最適位置に自動的に配置する方法の一実施例の詳細内容を説明したが、眼底部の断層画像を見る際は、網膜上の中心窩を中心とした黄斑部を観察することが多いとされる。中心窩は眼底の中で一般的には一番深い位置に存在し、取得された断層画像でも最深部の位置、例えば、S204で求めた網膜色素上皮層(RPE)の最深位置ZRPEmaxをフレームのx方向の中央位置に配置されるようにガルバノドライバ107により、ガルバノミラーユニット106を制御することも可能である。
【0059】
フレームのx方向の中央位置に配置するのは上記の網膜色素上皮層(RPE)に限らない。網膜色素上皮層に病変があり、最深位置ZRPEmaxを採用できないこともある。その場合は脈絡膜と強膜の境界面(CSI)などの最深位置を採用してもよい。また、特定の境界層の最深位置ではなく、フレーム内の断層画像を解析して断層画像の最深位置を算出し、その最深位置をフレームのx方向の中央位置に配置するようにガルバノドライバ107により、ガルバノミラーユニット106を制御してもよい。
【0060】
また、フレームのx方向の中央位置に配置する特定部位をモニターに表示された断層画像に対し、検者が指定できる指定手段を別に備えてもよい。例えば、モニター上にカーソルを表示させ、検者がマウスなどを用いて、モニターに表示された眼底部の断層画像の中の特定部位にカーソルを合わせて指定すると、指定した特定部位がフレームのx方向の中央位置に配置するようにガルバノドライバ107により、ガルバノミラーユニット106を制御するようにしてもよい。
【0061】
尚、本実施例では、深さ方向(z方向)の最適位置を算出する際、眼底部の内境界膜層(ILM)、網膜色素上皮層(RPE)及び脈絡膜と強膜の境界層(CSI)を用いているが、勿論、これら境界層に限ったわけではなく、画像処理などでトレース可能な他の境界層を採用してもよい。
【0062】
また、最適位置を算出する算出式を上述の説明で記載したが、これも記載した算出式に限ったものではなく、例えば、S209における最適位置は以下の算出式を採用してもよい。
最適位置:Toffset+(TRPE+TRTN
【0063】
さらに言えば、これら算出式は網膜の病変毎に適切な演算式を作成して採用してもよい。
【0064】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることが、理解されるべきである。
【0065】
以上のように、本実施形態によれば、取得した眼底部の断層画像が、強度近視や疾患のある被検眼など、眼底部の全体の層の幅がさまざま状態であっても、眼底部の断層画像が検者に最適とされるフレーム内の位置に自動的に配置され、表示できるのである。
【符号の説明】
【0066】
100・・断層画像取得部101・・波長走査光源104・・第1のファイバーカプラ106・・ガルバノミラーユニット113・・ディレイラインユニット116・・第2のファイバーカプラ201・・ADボード202・・演算部203・・記憶部
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