【実施例】
【0029】
以下、本発明の一実施例に係る光断層画像撮影装置について図面を参照して説明する。 [第1の実施形態]
図1には断層像取得部100の詳細構成を示す。
【0030】
図1に示すように、断層像取得部100では被検眼Eの眼底部(眼底網膜)Er上に測定光を照射することにより、眼底部Erの三次元断層像を撮影する。本実施形態では、時間的に波長を変化させて走査する波長走査光源101を用いたフーリエドメイン(光周波数掃引)方式が採用されている。
【0031】
即ち、波長走査光源101から出力された光は、光ファイバを通して偏波コントローラ102及びアイソレータ103に入力しその後光ファイバを通して第1のファイバーカプラ104に入力され、この第1のファイバーカプラ104において、例えば10:90の比率で、参照光と測定光とに分波されて出力される。そのうち参照光は、光ファイバを通ってコリメータレンズ112に入力し、ディレイラインユニット113に入射される。ディレイラインユニット113は眼底の網膜上に参照光路を合わせる光路長調整用のユニット部であり、OCT断層像を測定する前に、測定光路長と参照光路長を合わせる。
【0032】
そして、ディレイラインユニット113から放射された参照光はコリメータレンズ114から光ファイバを通り偏波コントローラ115に入力しその後光ファイバを通して第2のファイバーカプラ116の第1の入力部に入力される。
【0033】
一方、前記第1のファイバーカプラ104から出力された測定光は、光ファイバを通ってコリメータレンズ105に入力し、ガルバノミラーユニット106に入力される。ガルバノミラーユニット106は、測定光を走査させるためのもので、ガルバノドライバ107により、ガルバノミラーユニット106は測定光を被検眼の眼底面において水平方向に及び垂直方向に走査されるようになっている。
【0034】
前記ガルバノミラーユニット106から出力された測定光はレンズ108を通り、対物レンズ109を通して図示しない検査窓から出射され、被検眼Eに入射される。被検眼Eに入射された測定光は、眼底部Erの各組織部分(網膜、脈絡膜等)にて反射し、その反射光が、検査窓から入射され、上記と逆に、対物レンズ109、レンズ108、ガルバノミラーユニット106を通って、コリメータレンズ105に入力される。そして、その反射光は、光ファイバを通って前記第1のファイバーカプラ104を通った後、光ファイバを通して第2のファイバーカプラ116の第2の入力部に入力される。
【0035】
この第2のファイバーカプラ116において、眼底部Erからの反射光と、前記光ファイバを通って入力された参照光とが、例えば50:50の比率で合波され、その信号が光ファイバを介して差動増幅検出器117に入力される。検出器117においては、波長毎の干渉が計測され、計測された干渉信号が、前記制御装置200に設けられたADボード201に入力される。さらに、制御装置200に設けられた演算部202において、干渉信号に対するフーリエ変換などの処理が行われ、もって走査線に沿う眼底網膜Erの断層画像が取得されるのである。(
図2)
【0036】
このとき、前記ガルバノミラーユニット106による測定光のスキャンパターン、言い換えると走査線(B−スキャン)の方向は、制御装置200において設定されるようになっている。そして、制御装置200(演算部202)からの指令信号に基づいてガルバノドライバ107がガルバノミラーユニット106を制御するようになっている。尚、得られた眼底部Erの断層画像のデータは、記憶部203に記憶される。(
図2)
【0037】
次に
図4及び
図5を参照しながら、本発明の概要について説明する。
図4は眼底部の断層画像(B−スキャン像)取得までの一連の処理フローを示したものであり、また、
図5は、断層画像の最適位置を算出して、断層画像をフレーム内の最適位置に配置するまでの処理フローを示したものである。
【0038】
(S101)
前眼部アライメントは、本発明に関わる光断層画像撮影装置に限らず多くの眼科装置において行なわれているものであり、ここではその構成や手順についての具体的な記載は省略するが、モニター等に表示された被検眼前眼部像とアライメント用光束の反射像を観察しながら適切な位置関係となるように操作が行われる。
【0039】
(S102) 次に眼底部の正面画像を撮影し、モニター表示する。眼底部の正面画像の撮影には、図示しないが、一般的にスキャニングレーザーオフサルモスコープ(SLO)又は眼底カメラが採用される。
【0040】
(S103) 次にモニターに表示された眼底部の正面画像に対し、測定する位置を指定する。指定する操作は、モニター上にカーソルを表示させ、検者がマウスなどを用いて指定してもよい。
【0041】
(S104) 次に測定光の光路長と参照光の光路長が一致するように、ディレイラインユニット113内のプリズムを移動して参照光の光路長を変更する。この際の参照光の光路長は、プリズムを初期位置から最終位置まで移動させながら複数枚の断層画像を取得し、記憶部203に記憶され、演算部202によって取得した画像を解析することにより、算出される。算出には、フレーム内の断層画像の有無、断層画像の輝度値のピーク位置、輝度ピーク値や輝度ピークの半値幅など、公知の方法で行われる。
【0042】
(S105) そして、プリズムの移動が完了すると、断層画像の合焦調整を行う。合焦の調整は、対物レンズ109を移動して行う。対物レンズ109の位置もS104の参照光路長調整と同様、対物レンズ109を開始位置から最終位置まで移動させながら複数枚の断層画像を取得し、記憶部203に記憶され、演算部202によって取得した画像を解析することにより、算出される。算出には、輝度ピーク値などを利用する、公知の方法で行われる。
【0043】
(S106) 合焦調整が終了すると、断層画像アライメントを実施する。詳細は後述するが、取得した断層画像のデータから、フレーム内に最適位置を算出し、算出したフレーム内の最適位置に断層画像が配置されるように、ディレイラインユニット113内のプリズムを移動して参照光の光路長を変更する。
【0044】
(S107、S108) 参照光の光路長の変更が終了した後、断層画像を取得して、モニターに表示する。
【0045】
(断層画像アライメント)
図5を参照しながら、取得した断層画像のフレーム内の最適位置の算出方法について説明する。
【0046】
(S201)
まず、断層画像を取得する。
【0047】
(S202)
フレーム内に眼底部の断層画像全体が撮影されているかどうかを判定する。判定方法は、例えば、
図6に示すように、取得した断層画像に対しX方向で例えば少なくとも3つX座標位置(例えば、X座標の最小値X(0)、中央値X(c)及び最大値X(e))におけるA−スキャン像の輝度データを用いて評価する方法を用いることができる。3つの位置におけるA−スキャン像の輝度値の合計輝度値SUM(X(0),P(z))、SUM(X(c),P(z))、SUM(X(e),P(z))を算出して、各A−スキャン像の合計輝度値を比較する。眼底部の断層画像は一般的に下方に湾曲しているため、例えば、
図6(B)の一番上の図のように、X座標の最小値X(0)の合計輝度値や最大値X(e)の合計輝度値に比べて中央値X(c)の合計輝度値が大きい場合は、
図6(A)の一番上の図のように、断層画像はフレームの上側にはみ出して配置されていると判断できるし、逆に、
図6(B)の一番下の図のように、X座標の最小値X(0)の合計輝度値や最大値X(e)の合計輝度値に比べて中央値X(c)の合計輝度値が小さい場合は、
図6(A)の一番下の図のように、断層画像はフレームの下側にはみ出して配置されていると判断することができる。もし、
図6(B)の真ん中の図のように、3つの位置におけるA−スキャン像の輝度値の合計輝度値がほぼ同じ値であれば、
図6(A)の真ん中の図のように、眼底部の断層画像における全ての境界層がフレーム内にあると判断することができる。
【0048】
(S212)
S202で、断層画像が所定のフレームの下側や上側にはみ出して、眼底部の断層画像の境界層全てがフレーム内にないと判断した場合はディレイラインユニット113内のプリズムを移動して参照光の光路長を変更し、再度断層像を取得する。
【0049】
S202で、眼底部の断層画像における全ての境界層がフレーム内にあると判断した場合は、取得した断層画像の最適位置を算出するための各パラメーターを算出する。
【0050】
(S203)
まず、各境界層の平均深度を算出する。
図7、
図8はフレームF内に配置された眼層画像Aを示したもので、
図7は正常眼のように眼底の眼層画像の幅が比較的小さい場合の、
図8は強度近視や疾患眼で得られる眼底の眼層画像の幅が比較的大きな場合の説明図である。本実施例では、眼底部の内境界膜層(
ILM)、網膜色素上皮層(RPE)及び脈絡膜と強膜の境界層(CSI)の3つの境界層の平均深度を算出する。算出方法は、本実施例では、断層画像を構成する複数のA−スキャン像における各境界層の深度位置を合計してその平均値を算出している。算出した各平均深度の値はそれぞれ、Z
ILMAVG(
ILMの平均深度)、Z
RPEAVG(RPEの平均深度)及びZ
CSIAVG(CSIの平均深度)として、記憶部203に記憶する。
【0051】
(S204)
次に、特定位置の深度を算出する。特定位置とは、断層画像の中の特定の位置で、本実施例では網膜色素上皮層(RPE)のフレーム内における最浅位置(上端位置)及び最深位置を採用している。取得した断層画像を解析して、RPEの層をトレースし、最浅位置(Z
RPEmin)と最深位置(Z
RPEmax)を求め、記憶部203に記憶する。
【0052】
(S205)
次に、境界層の幅の値を算出する。本実施例では、S203及びS204で求めて記憶部203に記憶した値を用いて、以下の算出式から、3つの境界層の幅の値(T
RTN、T
CHR、T
RPE)を算出して、記憶部203に記憶する。
T
RTN=Z
RPEAVG−Z
ILMAVG
T
CHR=Z
CSIAVG−Z
RPEAVG
T
RPE=Z
RPEmax−Z
RPEmin
【0053】
(S206)
そして、S205で算出した各境界層の幅の値を用いて、取得した断層画像の深さ方向の幅の値(T
IMG)を以下の算出式により算出し、記憶部203に記憶する。
T
IMG=T
RPE+T
RTN+T
CHR
【0054】
(S207)
S206で得られたT
IMGの値とフレームの深さ方向有効幅(Z
max−2×T
offset)の値を比較する。ここで、Z
maxはフレームの深さ方向(Z方向)の最深位置であり、T
offsetはフレームの中で断層画像を配置しない上端及び下端の幅の値であり、これらはフレーム内の値としてあらかじめ設定された値である。
【0055】
(S208)
S207で、T
IMG<(Z
max−2×T
offset)と判定した場合は、最適位置及び特定位置は以下のように設定する。
最適位置:T
offset+T
RTN
特定位置:Z
RPEmin
【0056】
(S209)
S207で、T
IMG<(Z
max−2×T
offset)ではないと判定した場合は、最適位置及び特定位置は以下のように設定する。
最適位置:Z
max−(T
offset+T
CHR)
特定位置:Z
RPEmax
【0057】
(S210)
最適位置及び特定位置の設定が終了すると、S208又はS209で設定した特定位置(断層画像の中の位置)がフレーム内の最適位置に配置されるようにディレイラインユニット113内のプリズムを移動する。プリズムを移動する移動距離は、取得した現在の断層画像におけるZ
RPEmin又はZ
RPEmaxの値とS208又はS209で設定した最適位置との差から算出する。
【0058】
上述までは、断層画像を深さ方向(z方向)に対して最適位置に自動的に配置する方法の一実施例の詳細内容を説明したが、眼底部の断層画像を見る際は、網膜上の中心窩を中心とした黄斑部を観察することが多いとされる。中心窩は眼底の中で一般的には一番深い位置に存在し、取得された断層画像でも最深部の位置、例えば、S204で求めた網膜色素上皮層(RPE)の最深位置Z
RPEmaxをフレームのx方向の中央位置に配置されるようにガルバノドライバ107により、ガルバノミラーユニット106を制御することも可能である。
【0059】
フレームのx方向の中央位置に配置するのは上記の網膜色素上皮層(RPE)に限らない。網膜色素上皮層に病変があり、最深位置Z
RPEmaxを採用できないこともある。その場合は脈絡膜と強膜の境界面(CSI)などの最深位置を採用してもよい。また、特定の境界層の最深位置ではなく、フレーム内の断層画像を解析して断層画像の最深位置を算出し、その最深位置をフレームのx方向の中央位置に配置するようにガルバノドライバ107により、ガルバノミラーユニット106を制御してもよい。
【0060】
また、フレームのx方向の中央位置に配置する特定部位をモニターに表示された断層画像に対し、検者が指定できる指定手段を別に備えてもよい。例えば、モニター上にカーソルを表示させ、検者がマウスなどを用いて、モニターに表示された眼底部の断層画像の中の特定部位にカーソルを合わせて指定すると、指定した特定部位がフレームのx方向の中央位置に配置するようにガルバノドライバ107により、ガルバノミラーユニット106を制御するようにしてもよい。
【0061】
尚、本実施例では、深さ方向(z方向)の最適位置を算出する際、眼底部の内境界膜層(
ILM)、網膜色素上皮層(RPE)及び脈絡膜と強膜の境界層(CSI)を用いているが、勿論、これら境界層に限ったわけではなく、画像処理などでトレース可能な他の境界層を採用してもよい。
【0062】
また、最適位置を算出する算出式を上述の説明で記載したが、これも記載した算出式に限ったものではなく、例えば、S209における最適位置は以下の算出式を採用してもよい。
最適位置:T
offset+(T
RPE+T
RTN)
【0063】
さらに言えば、これら算出式は網膜の病変毎に適切な演算式を作成して採用してもよい。
【0064】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることが、理解されるべきである。
【0065】
以上のように、本実施形態によれば、取得した眼底部の断層画像が、強度近視や疾患のある被検眼など、眼底部の全体の層の幅がさまざま状態であっても、眼底部の断層画像が検者に最適とされるフレーム内の位置に自動的に配置され、表示できるのである。