【文献】
三嶋弘一,前眼部OCTの緑内障への応用:現在,あたらしい眼科,株式会社メディカル葵出版,2011年 6月30日,Vol.28 No.6,P.763〜768
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定手段により前記空間座標位置のずれが有ると判定した場合に、該空間座標位置のずれを調整する位置調整手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の前眼部3次元画像処理装置。
前記位置調整手段の一つは、前記2次元断層画像における前記被検眼の角膜前面形状に基づき、前記空間座標位置のずれを調整することを特徴とする請求項2に記載の前眼部3次元画像処理装置。
前記位置調整手段の一つは、前記2次元断層画像において前記光干渉断層撮影装置の装置本体に対する前記被検眼の角膜頂点のずれ量を示すアライメント情報を用いて、前記空間座標位置のずれを調整することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の前眼部3次元画像処理装置。
前記真円算出手段は、前記第1のSS位置特定手段により1つの前記代表画像を用いて特定された2点の前記SS位置の距離を直径として前記基準真円を算出することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の前眼部3次元画像処理装置。
コンピュータを、少なくとも請求項1に記載の前記判定手段、前記第1のSS位置特定手段、前記真円算出手段および前記第2のSS位置特定手段として機能させるためのプログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の前眼部3次元画像処理装置では、各2次元断層画像において、SS位置を検者にポイント入力させる構成であったため、前眼部OCTによって例えば100枚以上の2次元断層画像を得ることができたとしても、ITCを示すチャートの作成を開始するまでに多大な時間がかかり、臨床上で用いるのが困難であるという問題があった。
【0010】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、前眼部OCTを用いた隅角解析において、自動化できる工程を増やすことにより、臨床上で有効に活用可能とする前眼部3次元画像処理装置、プログラムおよび前眼部3次元画像処理方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の前眼部3次元画像処理装置は、光干渉断層撮影装置(前眼部OCT)を用いて被検眼の前眼部3次元画像の入力及び処理を可能とする装置であって、判定手段と、第1のSS位置特定手段と、真円算出手段と、第2のSS位置特定手段と、を備える。
【0012】
判定手段は、前眼部3次元画像を構成する2次元断層画像上における空間座標位置のずれの有無を判定する。
第1のSS位置特定手段は、上記2次元断層画像のうちの少なくとも2つの代表画像を用いて、被検眼の強膜岬の空間座標位置を示すSS位置について少なくとも3点の特定を受け付ける。
【0013】
真円算出手段は、前眼部3次元画像において第1のSS位置特定手段により特定された少なくとも3点のSS位置を通る基準真円の算出を行う。
第2のSS位置特定手段は、前眼部3次元画像を構成する2次元断層画像のうち、少なくとも代表画像以外の画像(以下「非代表画像」という)におけるSS位置を、真円算出手段により算出された基準真円に基づいて特定する。
【0014】
このように構成された前眼部3次元画像処理装置によれば、例えば、検者が、2つの2次元断層画像において、SS位置を計3点ポイント入力するだけで、前眼部3次元画像を構成する他の全ての2次元断層画像におけるSS位置が自動特定され得る。すなわち、従来、前眼部3次元画像を構成する2次元断層画像のそれぞれにおいて、SS位置の相互関係が不明であったのに対し、本願出願人は、隅角解析を推し進めていくなかで、SS位置が同一平面の真円上にプロットされることを仮説検証し、確認することができた。このため、前眼部3次元画像において、少なくとも3つのSS位置を特定し、空間平面上の基準真円を算出するだけで、残りのSS位置を特定することが可能となった。
【0015】
したがって、本発明によれば、少なくとも検者が全ての2次元断層画像においてSS位置を特定する必要がなくなるため、例えばITCを示すチャートの作成を開始するまでの時間を短縮することができる。よって、本発明は、前眼部OCTを用いた隅角解析において、自動化できる工程を増やすことにより、臨床上で有効に活用可能とすることができる。
【0016】
(2)また、本発明の前眼部3次元画像処理装置は、さらに、位置調整手段を備えてもよい。この位置調整手段は、判定手段により空間座標位置のずれが有ると判定した場合に、その空間座標位置のずれを調整する。具体的には、各2次元断層画像における相互の空間座標位置を調整しておくことにより、SS位置をより高精度に特定することができる。
【0017】
(3)具体的に位置調整手段の一つは、2次元断層画像における被検眼の角膜前面形状に基づき、空間座標位置のずれの調整を行う構成でもよい。このような構成によれば、例えば、ラジアルスキャンによって得られた複数の2次元断層画像について、角膜前面の位置(角膜前面曲線)が合うように画像上の空間座標位置を並進及び回転させることにより、各2次元断層画像における相互の空間座標位置を好適に調整することができる。
【0018】
(4)また例えば位置調整手段の一つは、2次元断層画像において光干渉断層撮影装置の装置本体に対する被検眼の角膜頂点のずれ量を示すアライメント情報を用いて、空間座標位置のずれの調整を行う構成でもよい。このような構成によれば、前眼部3次元画像の撮影中に、被検眼の大きな動きがあっても、例えば走査線が角膜頂点を通る直線上からずれた分を画像上で補正することが可能となり、各2次元断層画像における相互の空間座標位置を好適に調整することができる。
【0019】
(5)また、上記基準真円の算出方法として、例えば、真円算出手段は、第1のSS位置特定手段により1つの代表画像を用いて特定された2点のSS位置の距離を直径として基準真円を算出してもよい。このような構成によれば、上記直径を構成する2点のSS位置の他に、SS位置を少なくとも1点特定するだけで、空間平面上の基準真円が定まるため、基準真円を算出するために用いる2次元断層画像(代表画像)の数を少なく済ませることが可能となり、自動化できる工程をより増やすことができる。
【0020】
(6)また、第1のSS位置特定手段は、代表画像から、被検眼における強膜とぶどう膜との境界を示す強膜−ぶどう膜エッジ線と、被検眼の角膜後面を示す角膜後面エッジ線と、を検出し、検出された強膜−ぶどう膜エッジ線と角膜後面エッジ線との交点を、SS位置として特定する構成を採用することができる。
【0021】
このように構成された前眼部3次元画像処理装置によれば、検者がSS位置のポイント入力を全く行わなくてもよいため、例えばITCを示すチャートの作成を開始するまでの時間を大幅に短縮することができる。よって、このような構成によれば、前眼部OCTを用いた隅角解析において、全工程を自動化することにより、臨床上で有効に活用可能とすることができる。
【0022】
(7)さらに、第1のSS位置特定手段は、代表画像から、被検眼の虹彩前面を示す虹彩前面エッジ線を検出し、検出された強膜−ぶどう膜エッジ線と角膜後面エッジ線と虹彩前面エッジ線との交点を、SS位置として特定してもよい。このような構成によれば、例えば、虹彩線維柱帯接触部(ITC)が存在しない2次元断層画像において、3つのエッジ線を用いることにより、上記交点を抽出しやすくなるため、SS位置の自動特定における精度を向上させることができる。
【0023】
(8)また、本発明は、プログラムとして市場に流通させることができる。具体的には、コンピュータを、少なくとも、上記の判定手段、第1のSS位置特定手段、真円算出手段および第2のSS位置特定手段として機能させるためのプログラムである。
【0024】
このプログラムは、1ないし複数のコンピュータに組み込まれることにより、本発明の前眼部3次元画像処理装置によって奏する効果と同等の効果を得ることができる。なお、本発明のプログラムは、コンピュータに組み込まれるROMやフラッシュメモリ等に記憶され、これらROMやフラッシュメモリ等からコンピュータにロードされて用いられてもよいし、ネットワークを介してコンピュータにロードされて用いられてもよい。
【0025】
また、上記のプログラムは、コンピュータにて読み取り可能なあらゆる形態の記録媒体に記録されて用いられてもよい。この記録媒体としては、例えば、持ち運び可能な半導体メモリ(例えばUSBメモリ)等が含まれる。
【0026】
(9)また、本発明は、判定手段に相当する工程(判定工程)と、第1のSS位置特定手段に相当する工程(第1のSS位置特定工程)と、真円算出手段に相当する工程(真円算出工程)と、第2のSS位置特定手段に相当する工程(第2のSS位置特定工程)と、を備える前眼部3次元画像処理方法として表すことができる。この方法を適用することにより、本発明の前眼部3次元画像処理装置によって奏する効果と同等の効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
なお、本発明は、下記の実施形態によって何ら限定して解釈されない。また、下記の実施形態の一部を、課題を解決できる限りにおいて省略した態様も本発明の実施形態である。また、特許請求の範囲に記載した文言のみによって特定される発明の本質を逸脱しない限度において考え得るあらゆる態様も本発明の実施形態である。
【0029】
<第1実施形態>
第1実施形態の前眼部光干渉断層撮影装置は、隅角解析、角膜曲率、角膜厚分布、前房深度の測定等の、被検者の眼球(被検眼E)の前眼部Ec(
図1参照)の眼科検査のために用いられる装置であり、光干渉断層法(Optical Coherence Tomography:OCT)により被検眼Eの前眼部Ecの2次元断層画像を撮影することで、3次元画像を得るものである。以下、この前眼部光干渉断層撮影装置を「前眼部OCT1」と称する。
【0030】
ここで、図示は省略するが、前眼部OCT1の装置本体は、保持台に対して、X方向(左右方向)及びY方向(上下方向)並びにZ方向(前後方向)に移動可能に支持されている。装置本体の前面側(被検者側)には、顎受け部及び額当て部が、上記保持台に対して固定的に設けられている。被検者が、上記顎受け部に顎を載せると共に額当て部に額を当てることにより、被検者の眼(被検眼E)が、装置本体の前面に設けられた撮影用の(光の出入りが行われる)検査窓の正面に配置されるようになっている。
【0031】
このとき、
図2に示すように、この前眼部OCT1には、上記装置本体を保持台に対して、X方向、Y方向、Z方向に夫々自在に移動させるための本体駆動部2が設けられている。この本体駆動部2は、X方向移動モータ、Y方向移動モータ、Z方向移動モータなどを備えた周知構成を備えており、制御装置3により制御されるようになっている。
【0032】
上記装置本体には、
図2に示すように、CPUやメモリ等からなるマイクロコンピュータを含んで構成され全体の制御を行う制御装置3、複数の2次元断層画像によって構成される前眼部Ecの3次元画像(以下「前眼部3次元画像」という)を取得するOCTシステム5、被検眼Eの正面画像を撮影する前眼部撮像系6、アライメント光学系4などが設けられている。
【0033】
さらに、装置本体には、後面側(検者側)に位置して、被検眼Eの正面画像P(
図1参照)等を表示する表示装置としてのモニタ7や、検者(オペレータ)が各種操作を行うための操作部8が設けられている。操作部8には、測定開始スイッチ、測定領域指定スイッチ、モニタ7の画面上に配設されたタッチパネル9、キーボードやマウスなどが設けられている。なお、制御装置3には、撮影された前眼部3次元画像の画像データ等を記憶する記憶部10と、記憶されたデータの画像処理等を行う画像処理部100(前眼部3次元画像処理装置の主要部)が接続されている。記憶部10は、例えばハードディスクドライブを含んで構成されている。
【0034】
OCTシステム5は、光干渉断層法により前眼部3次元画像を得るものであり、本実施形態では時間的に波長を変化させて操作する波長走査光源11(
図1参照)を用いたフーリエドメイン(光周波数掃引)方式が採用されている。
【0035】
すなわち、
図1に示すように、波長走査光源11から出力された光は、光ファイバ12aを通して第1のファイバーカプラ13に入力され、この第1のファイバーカプラ13において、例えば1:99の比率で、参照光と測定光とに分岐され出力される。そのうち参照光は、光ファイバ12bを通って第1のサーキュレータ14の入力部に入力され、更にこの第1のサーキュレータ14の入出力部から光ファイバ12cを通ってその端部から出力され、複数個のコリメータレンズ15を通って参照ミラー16に入射される。
【0036】
そして、参照ミラー16にて反射された参照光が、再び、複数個のコリメータレンズ15を通って光ファイバ12cの端部から入力され、光ファイバ12cを通って第1のサーキュレータ14の入出力部から入力される。そして、第1のサーキュレータ14の出力部から出力された参照光は、光ファイバ12dを通って第2のファイバーカプラ17の第1の入力部に入力される。
【0037】
一方、第1のファイバーカプラ13から出力された測定光は、光ファイバ12eを通って第2のサーキュレータ18の入力部に入力され、さらにこの第2のサーキュレータ18の入出力部から光ファイバ12fを通ってその端部から出力される。光ファイバ12fの端部から出力された測定光は、コリメータレンズ19を通ってガルバノスキャナ20に入力される。ガルバノスキャナ20は、測定光を走査させるためのもので、ガルバノドライバ21により駆動されるようになっている。
【0038】
ガルバノスキャナ20から出力された測定光は、波長が長い側の光を反射させ短い側の光を透過させるホットミラー22により90度の角度で反射され、対物レンズ23を通して上記検査窓から出射され、被検眼Eに入射される。被検眼Eに入射された測定光は、前眼部Ecの各組織部分(角膜、前房、虹彩、水晶体、ぶどう膜、強膜等)にて反射し、その反射光が、検査窓から入射され、上記とは逆に、対物レンズ23、ホットミラー22、ガルバノスキャナ20、コリメータレンズ19を順に通って、光ファイバ12fの端部から入力される。そして、その反射光は、光ファイバ12fを通って第2のサーキュレータ18の入出力部から入力され、第2のサーキュレータ18の出力部から出力され、光ファイバ12gを通って第2のファイバーカプラ17の第2の入力部に入力される。
【0039】
この第2のファイバーカプラ17において、前眼部Ecからの反射光と、光ファイバ12dを通って入力された参照光とが、例えば50:50の比率で合波され、その信号が光ファイバ12h、12iを介して検出器24に入力される。検出器24においては、波長毎の干渉が計測され、計測された干渉信号が、制御装置3に設けられたADボード25に入力される。さらに、制御装置3に設けられた演算部26において、干渉信号に対するフーリエ変換などの処理が行われ、もって走査線に沿う前眼部Ecの断層画像(2次元断層画像)が得られるのである。
【0040】
このとき、ガルバノスキャナ20による測定光のスキャンパターン、換言すれば、走査線(B−スキャン)の方向は、制御装置3において設定されるようになっている。そして、制御装置3(演算部26)からの指令信号に基づいてガルバノドライバ21がガルバノスキャナ20を制御するようになっている。なお、このように得られた2次元断層画像の画像データは、記憶部10に記憶される。この2次元断層画像の画像データには、少なくとも各画素の輝度を示す情報が含まれている。また、
図1に模式的に示しているように、その断層画像Tをモニタ7に表示させることができる。
【0041】
次に、前眼部撮像系6は、照明光源27,27、対物レンズ23、ホットミラー22、コールドミラー28、結像レンズ29、CCDカメラ30、光学制御部31を備えて構成される。照明光源27,27は、被検眼Eの正面に可視光領域の照明光を照射するようになっており、被検眼Eからの反射光が、上記検査窓から対物レンズ23、ホットミラー22、コールドミラー28、結像レンズ29を通って、CCDカメラ30に入力される。これにて、被検眼Eの正面画像Pが撮影され、撮影された画像データは、光学制御部31によって画像処理が行われて、モニタ7に表示されるようになる。
【0042】
そして、アライメント光学系4は、被検者が固視灯を見つめることにより眼球(被検眼E)を動かさないようにさせるための固視灯光学系、被検眼Eの角膜頂点のXY方向の位置(装置本体に対する上下左右の位置ずれ)を検出するためのXY方向位置検出系、被検眼Eの角膜頂点の前後方向(Z方向)の位置を検出するためのZ方向位置検出系を含んで構成されている。
【0043】
そのうち固視灯光学系は、固視灯32、コールドミラー33、リレーレンズ34、ハーフミラー35、コールドミラー28、ホットミラー22、対物レンズ23などから構成されている。これにて、固視灯32から出力された光(例えば緑色の光)は、コールドミラー33、リレーレンズ34、ハーフミラー35、コールドミラー28、ホットミラー22、レンズ23を順に介して、検査窓から被検眼Eに向けて出力されるようになっている。
【0044】
上記XY方向位置検出系は、XY位置検出光源36、コールドミラー33、リレーレンズ34、ハーフミラー35、コールドミラー28、ホットミラー22、対物レンズ23、結像レンズ37、位置センサ38などを備えて構成されている。これにて、XY位置検出光源36からは、位置検出用のアライメント光が出力され、コールドミラー33、リレーレンズ34、ハーフミラー35、コールドミラー28、ホットミラー22、対物レンズ23を介して、検査窓から被検眼Eの前眼部Ec(角膜)に向けて出射される。
【0045】
このとき、被検眼Eの角膜表面が球面状をなすことにより、アライメント光は、被検眼Eの角膜頂点の内側で輝点像を形成するようにして角膜表面で反射され、その反射光が、検査窓から入射されるようになっている。角膜頂点からの反射光(輝点)は、対物レンズ23、ホットミラー22、コールドミラー28、ハーフミラー35、結像レンズ37を介して位置センサ38に入力される。位置センサ38によってその輝点の位置が検出されることにより、角膜頂点の位置(X方向及びY方向の位置)が検出されるようになっている(
図3(a)参照)。なお、上記輝点は、CCDカメラ30の撮影画像(モニタ7の表示画像)にも写り込むものとなる。
【0046】
位置センサ38の検出信号は、光学制御部31を介して制御装置3(演算部26)に入力される。この制御装置3の演算部26には、本実施形態では前眼部3次元画像処理装置としての一部機能を実現するためのプログラムがメモリまたは記憶部10に実装されており、演算部26において、CPUがこのプログラムに従ってアライメント処理を実施する。すなわち、このアライメント処理では、位置センサ38の検出結果に基づいて、角膜頂点の所定(正規)の画像取得位置に対する、検出された角膜頂点(輝点)のX方向及びY方向の位置ずれ量ΔX,ΔYを求める。
【0047】
Z方向位置検出系は、Z方向位置検出光源39、結像レンズ40、ラインセンサ41を備えて構成されている。Z方向位置検出光源39は、被検眼Eに対して斜め方向から検出用の光(スリット光又はスポット光)を照射し、角膜からの斜め方向の反射光が、結像レンズ40を介してラインセンサ41に入射されるようになっている。このとき、装置本体に対する被検眼Eの前後方向(Z方向)の位置によって、ラインセンサ41に入射される反射光の入射位置が異なるようになるので、被検眼Eの装置本体に対するZ方向の位置(距離)が検出されるのである(
図3(b)参照)。
【0048】
ラインセンサ41の検出信号は、光学制御部31を介して制御装置3(演算部26)に入力される。このとき、被検眼Eの角膜頂点の装置本体に対する適切なZ方向位置(距離)が予め設定されており、制御装置3の演算部26は、上記アライメント処理において、ラインセンサ41の検出結果に基づいて、被検眼Eの適切な位置としての角膜頂点の位置に対するZ方向のずれ量ΔZを求める。
【0049】
そして、アライメント処理では、制御装置3の演算部26は、XY方向位置検出系により検出された角膜頂点のX方向及びY方向の位置ずれ量ΔX,ΔY、並びに、Z方向位置検出系により検出された被検眼EのZ方向の位置ずれ量ΔZを、アライメント情報として、対応する2次元断層画像の画像データが識別可能となる保存形式により記憶部10に記憶する。
【0050】
つまり、制御装置3の演算部26は、ガルバノスキャナ20を制御して、測定光を被検眼Eに対して1次元走査することで1つのスライス面の2次元断層画像を取得し(B−スキャン)、さらに、被検眼Eに対して測定光の走査位置をずらしながら(換言すれば、スライス面を変えながら)2次元断層画像を繰り返し取得する(C−スキャン)ことで得られた前眼部3次元画像を記憶部10に記憶する。さらに、この前眼部3次元画像を構成する夫々の2次元断層画像に関する上記のアライメント情報を記憶部10に記憶するようになっている。
【0051】
なお、スキャンの方法として、既述のとおり、
図4に示すラスタースキャンと称される方法や、
図5に示すラジアルスキャンと称される方法があり、操作部8を介して検者により測定対象が選択された結果に応じて適切な方法が選択される。本実施形態では、測定対象として隅角解析が選択されると、制御装置3の演算部26は、スキャンパターンとしてラジアルスキャンを採用し、具体的には、被検眼Eの角膜頂点を中心とする放射方向をB−スキャン方向、被検眼Eの前眼部Ecの表面円周方向をC−スキャン方向として、各スライス面の2次元断層画像の取り込みを行うようになっている。以下、こうして取り込まれて記憶部10に記憶される各スライス面の2次元断層画像には、前眼部Ecの隅角が2箇所含まれているものとして説明する。
【0052】
<前眼部3次元画像処理(第1実施形態)>
画像処理部100は、CPUやメモリ等からなるマイクロコンピュータを含んで構成され、前眼部3次元画像処理装置としての主要機能を実現するためのプログラムがメモリまたは記憶部10に実装されており、CPUがこのプログラムに従って
図6に示す前眼部3次元画像処理におけるメイン処理を実施する。すなわち、このメイン処理では、S10において、画像処理部100が、記憶部10から前眼部3次元画像を構成する各スライス面の2次元断層画像を取得する。なお、各スライス面は、測定光の光軸を基準として隣接するスライス面とラジアルスキャンのC−スキャン方向に所定の角度をなすように予め設定されている。本実施形態の設定角度は、11.25度に設定されている。つまり、B−スキャン方向の数は32方向となり、16枚の2次元断層画像が取得されることになる。
【0053】
続いて、S20では、画像処理部100が、S10において取得した16枚の各スライス面の2次元断層画像について、2次元断層画像上における空間座標位置のずれの有無を判定する処理(位置ずれ判定処理)を実施する。この位置ずれ判定処理では、記憶部10に記憶されているアライメント情報を用いて判定する他、各2次元断層画像間で後述する角膜前面曲線のずれが存在するか否か(または、ずれが大きいか否か)に応じて判定する。すなわち、各スライス面の2次元断層画像について、記憶部10に記憶されているアライメント情報に基づき、位置ずれ量ΔX,ΔY,ΔZの少なくとも一つが所定の許容閾値を上回るか否かに応じて、許容閾値を上回る場合には、空間座標位置のずれが存在すると判定し、許容閾値以下である場合には、角膜前面曲線のずれに対する閾値判断を行う。そして、角膜前面曲線のずれが有ると判断した場合には、空間座標位置のずれが存在すると判定し、角膜前面曲線のずれが無いと判断した場合には、空間座標位置のずれが存在しないと判定する。なお、本実施形態では、このように、アライメント情報を用いて判定する手法と、角膜前面曲線のずれに応じた判定を行う手法と、の両方の手法を用いているが、いずれか一方の手法を用いるだけでもよい。
【0054】
次に、S30では、画像処理部100が、S20における判定結果に応じて処理を分岐する。すなわち、S20において、空間座標位置のずれが存在すると判定した場合、S40に移行し、空間座標位置のずれが存在しないと判定した場合、S50に移行する。
【0055】
S40では、S20において空間座標位置のずれが存在すると判定した2次元断層画像について、その空間座標位置のずれを調整する処理(位置ずれ調整処理)を実施する。本実施形態の位置ずれ調整処理では、上記のアライメント情報に基づく位置ずれ量ΔX,ΔY,ΔZに対し、2次元断層画像上における空間座標位置のオフセット量をΔX´,ΔZとすると、例えば以下の関係式(1)を満たすように、オフセット量ΔX´を求める。なお、オフセット量ΔX´は、
図7(a)に示すように、Z方向に対し、2次元断層画像上において垂直な方向をX´方向とした場合の、X´方向における空間座標位置の補正量である。また、θscanとは、
図7(b)に示すように、X方向に対し、ラジアルスキャンのB−スキャン方向がなす角度のことである。
【0057】
なお、上記関係式(1)は、オフセット量ΔX´が微小(例えば、300μm以下)である場合に近似式として用いられるものである。また、この位置ずれ調整処理では、上記のように記憶部10に記憶されているアライメント情報を用いて調整(補正)する他、各2次元断層画像間で後述する角膜前面曲線のずれを補正する(第2実施形態参照)。S40では、このように、記憶部10に記憶されている全ての2次元断層画像について、位置ずれ調整処理を行うことにより、各画像の空間座標位置を合わせ、前眼部3次元画像を再構築する。なお、本実施形態では、上記のように、アライメント情報を用いて補正する手法と、角膜前面曲線のずれを補正する手法と、の両方の手法を用いているが、いずれか一方の手法を用いるだけでもよい。但し、両方の手法を用いることにより、相互に性質の異なる誤差を補完することができる。例えば、アライメント情報を用いて補正する手法では、被検眼E(眼球)の回旋運動を考慮できないことによる誤差が生じる可能性があり、角膜前面曲線のずれを補正する手法では、眼球が大きく動いてしまった場合に誤差が生じる可能性があり、このように性質の異なる誤差を補完することができる。
【0058】
次に、S50では、画像処理部100が、S10において取得した16枚の各スライス面の2次元断層画像のうち、4枚の2次元断層画像を代表画像とし、各代表画像において前眼部Ecの強膜岬の空間座標位置を示すSS位置を2箇所ずつ特定する処理(以下「第1のSS位置特定処理」という)を行う。つまり、本実施形態では、4枚の代表画像から8箇所のSS位置を特定する。なお、本実施形態では、この4枚の代表画像として、互いにスライス面のなす角度がある所定角度(例えば30度)以上となる4枚の2次元断層画像を選択する。
【0059】
具体的に、このS50の処理内容を
図8に示す。
図8に示す第1のSS位置特定処理では、S110において、画像処理部100が、上記代表画像から前眼部Ecの隅角近傍を局所的に含む画像(以下「局所画像」という:
図9(a)参照)を抽出する。
【0060】
続いて、S120では、画像処理部100が、S110において抽出された局所画像の画像データの各画素について、例えばZ方向に隣接する画素との輝度の差分等を求めることにより輝度勾配を算出する。
【0061】
次に、画像処理部100は、上記の局所画像における輝度勾配に基づき、S130において、前眼部Ecにおける角膜後面を示すエッジ線(以下「角膜後面エッジ線」という)を検出し、S140において、前眼部Ecにおける虹彩前面を示すエッジ線(以下「虹彩前面エッジ線」という)を検出する。すなわち、上記局所画像の画像データにおいては、角膜後面エッジ線および虹彩前面エッジ線上の画素の輝度勾配が最も高い。このため、例えば、輝度勾配の閾値を適宜設定することにより、局所画像から角膜後面エッジ線や虹彩前面エッジ線を抽出(検出)することができる。
【0062】
続いて、画像処理部100は、S150において、局所画像の画像データにおいて上記閾値を可変設定することにより、角膜後面エッジ線や虹彩前面エッジ線の他、前眼部Ecにおける各部位を規定する可能性のあるエッジ線を含む画像データ(以下「エッジ画像」という:
図9(b)参照)を生成する。そして、S155において、このエッジ画像から、S130において検出された角膜後面エッジ線上にて、SS位置を含むと推定される所定領域を抽出する。例えば、このS155では、S140において虹彩前面エッジ線が検出できた場合、角膜後面エッジ線と虹彩前面エッジ線との2つのエッジ線を繋いで形成されるエッジ線の湾曲点(前眼部Ecの隅角底に相当)を基にして、上記エッジ画像から上記所定領域を限定する。
【0063】
そして、S160では、画像処理部100が、上記エッジ画像のうち、S150において抽出された所定領域外のエッジ線を不要エッジ線として除去する。例えば、所定領域外の角膜後面エッジ線から分岐している不要エッジ線や、所定領域外の虹彩前面エッジ線から分岐している不要エッジ線を除去する(
図9(c)参照)。
【0064】
S170では、画像処理部100が、S160における不要エッジ線の除去により、前眼部Ecにおける強膜とぶどう膜との境界を示すエッジ線(以下「強膜−ぶどう膜エッジ線」という)の候補となる候補エッジ線を抽出する。
【0065】
続いて、S180では、画像処理部100が、S170において抽出した各候補エッジ線について、交差方向の輝度勾配の大きさ(エッジの強さ)を算出し、各候補エッジ線のうち、この輝度勾配が最大となるエッジ線を、強膜−ぶどう膜エッジ線として特定する。
【0066】
そして、S190では、画像処理部100が、S140において虹彩前面エッジ線を検出できたか否かを判定し、その判定結果に応じて処理を分岐する。つまり、被検眼Eによっては、隅角が閉塞されている場合があり、このような場合に、虹彩前面エッジ線が角膜後面エッジ線と一体化されたように映し出され、虹彩前面エッジ線が検出されない可能性があるためである。ここで、画像処理部100が、虹彩前面エッジ線を検出できたと判定した場合、S200に移行し、虹彩前面エッジ線を検出できなかったと判定した場合、S210に移行する。
【0067】
S200では、画像処理部100が、S180において特定した強膜−ぶどう膜エッジ線と、S130において検出した角膜後面エッジ線と、S140において検出した虹彩前面エッジ線と、の交点を示す空間座標位置を、SS位置として特定し、S220に移行する。
【0068】
一方、S210では、画像処理部100が、S180において特定した強膜−ぶどう膜エッジ線と、S130において検出した角膜後面エッジ線と、の交点を示す空間座標位置を、SS位置として特定し、S2
20に移行する。具体的には、強膜−ぶどう膜エッジ線と角膜後面エッジ線との交点(つまりSS位置)の特定方法としては、幾つかの方法が採用され得る。例えば、強膜−ぶどう膜エッジ線と角膜後面エッジ線との両方のエッジ線を繋いで形成されるエッジ線(以下「対象エッジ線」という)の形状に基づいて、SS位置を特定することが可能である。すなわち、エッジ画像において、強膜−ぶどう膜エッジ線の傾きと、角膜後面エッジ線の傾きと、が異なることを利用し、例えば、上記対象エッジ線において湾曲するように傾きが大きく変化する点(湾曲点)をSS位置として特定することができる。また例えば、上記対象エッジ線上の輝度勾配の情報に基づいて、SS位置を特定することも可能である。すなわち、エッジ画像において、角膜後面エッジ線上の輝度勾配が、強膜−ぶどう膜エッジ線上の輝度勾配よりも高いことを利用し、例えば、上記対象エッジ線において輝度勾配が大きく変化する点をSS位置として特定することができる。
【0069】
S220では、画像処理部100が、全ての代表画像(本実施形態では4枚の代表画像)からそれぞれ所定数のSS位置(本実施形態では2箇所のSS位置)を特定できたか否かを判定し、全てのSS位置(本実施形態では計8箇所のSS位置)を特定できた場合には、メイン処理(S60)に戻り、代表画像において未特定のSS位置が存在する場合には、S110に戻って第1のSS位置特定処理を継続する。
【0070】
ここでメイン処理に戻ると、S60では、画像処理部100が、S50において特定された複数(本実施形態では8点)のSS位置のうち、少なくとも3点のSS位置を通る基準真円(
図10参照)を空間座標上に示す関数を算出する。具体的には、本実施形態では、8点のSS位置のうち、少なくとも3点のSS位置を通り、残りのSS位置との距離が最小となる(換言すれば、残りのSS位置が上記関数上に最も近似するように配置される)空間平面上の基準真円が求められる。このように8点のSS位置のうち、残りのSS位置が近似的に配置されるように、基準真円を求めることにより、画像間での誤差を適度に分散することが可能となり、SS位置の自動特定における精度を向上させることができる。なお、基準真円としては、一般に真円が採用されるが、完全な真円の他、真円に近いものが採用される可能性もある。
【0071】
S70では、画像処理部100が、前眼部3次元画像を構成する複数(本実施形態では16枚)の2次元断層画像のうち、複数(本実施形態では4枚)の代表画像以外の複数(本実施形態では12枚)の画像(以下「非代表画像」という)について、S60において算出した基準真円の関数に基づいて、残りのSS位置を特定する処理(以下「第2のSS位置特定処理」ともいう)を行う。具体的には、S60において求めた基準真円上に、各非代表画像においてB−スキャン方向に対応する各点を、それぞれの非代表画像におけるSS位置として特定する。これにより、画像処理部100は、メイン処理を終了する。
【0072】
なお、画像処理部100は、このように全てのスライス面において求められたSS位置を用いることにより、例えば、SS位置を超えて閉塞している隅角部分EP(角膜後面と虹彩前面とが接触している部分)を虹彩線維柱帯接触部(ITC)としてチャート式に示す解析画像(
図11参照)を生成したりすることができる。そして、これらの画像は、操作部8を介した検者による操作指示に応じてモニタ7に出力される。
【0073】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態は、第1実施形態に対して、画像処理部100が実施するメイン処理(前眼部3次元画像処理)の内容が異なるだけであるため、その他の内容については説明を省略する。具体的には、第1実施形態の前眼部3次元画像処理では、位置ずれ調整処理(S40)を行うことにより、各2次元断層画像の空間座標位置を合わせ、前眼部3次元画像を再構築し、再構築された前眼部3次元画像を構成する各2次元断層画像に対してSS位置を特定していた(S50〜S70)。これに対して、第2実施形態の前眼部3次元画像処理では、前眼部3次元画像の再構築を行うことなく、各2次元断層画像の空間座標位置のずれを調整するために算出したパラメータを用いてSS位置の決定を行う点で異なる。第2実施形態の前眼部3次元画像処理によれば、前眼部3次元画像を再構築しないで済む分、隅角解析を含む全体の処理速度を向上することができる。
【0074】
<前眼部3次元画像処理(第2実施形態)>
すなわち、
図12に示す第2実施形態のメイン処理では、S1000において、第1実施形態と同様、画像処理部100が、記憶部10から前眼部3次元画像を構成する各スライス面の2次元断層画像を取得する。なお、第2実施形態において各スライス面は、測定光の光軸を基準として隣接するスライス面とラジアルスキャンのC−スキャン方向に所定の角度をなすように予め設定されている。本実施形態の設定角度は、5.625度に設定されている。つまり、B−スキャン方向の数は64方向となり、32枚の2次元断層画像が取得されることになる。
【0075】
続いて、S2000では、画像処理部100が、S1000において取得した32枚の各スライス面の2次元断層画像について、1枚毎に、隣接する他の1枚のスライス面の2次元断層画像との間で、相互に空間座標位置を角膜前面の位置を基準にして合わせるための動き行列Vを算出する。具体的には、まず、1枚の2次元断層画像とこれに隣接する1枚の2次元断層画像との夫々から例えばパターンマッチング等の周知技術を用いて角膜前面形状を示す曲線(以下「角膜前面曲線」という)を抽出する。そして、例えば、
図13に示すように、抽出された夫々の角膜前面曲線について、一方を他方側へ互いに並進および回転させ、その並進距離Tおよび回転角Rが最小となる基準の角膜前面曲線(以下「基準曲線」という)を求め、この基準曲線を出力値とする各2次元断層画像の角膜前面曲線の入力式を夫々の動き行列Vとして算出する。例えば、この動き行列Vの算出を全ての2次元断層画像について行うとともに、全ての2次元断層画像に関する平均の基準曲線を求め、この平均の基準曲線を基にして各2次元断層画像に関する動き行列Vを補正する。こうして算出された動き行列Vは、夫々対応するスライス面の2次元断層画像に対応付けられてメモリに一時記憶される。なお、このS2000は、全ての2次元断層画像について、各2次元断層画像間で角膜前面曲線のずれが存在するか否か(または、ずれが大きいか否か)を判定し、角膜前面曲線のずれが存在する場合に行われるものとする。
【0076】
次に、S3000では、画像処理部100が、S1000において取得し、S2000において動き行列Vが算出された32枚の各スライス面の2次元断層画像のうち、3枚の2次元断層画像を代表画像とし、各代表画像において前眼部Ecの強膜岬の空間座標位置を示すSS位置を2箇所ずつ特定する処理(第1のSS位置特定処理)を行う。つまり、第2実施形態では、3枚の代表画像から6箇所のSS位置を特定する。なお、第2実施形態では、この3枚の代表画像として、互いにスライス面のなす角度がある所定角度(例えば45度)以上となる3枚の2次元断層画像を選択する。この第1のSS位置特定処理の内容については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0077】
S4000では、画像処理部100が、S3000(第1のSS位置特定処理)において特定された複数(本実施形態では6点)のSS位置について、S2000において算出した動き行列Vを用いてそれぞれ空間座標位置を調整(補正)する。
【0078】
S5000では、画像処理部100が、S4000において補正された複数(本実施形態では6点)のSS位置(以下「SS´位置」という)のうち、少なくとも3点のSS´位置を通る基準真円(
図10参照)を空間座標上に示す関数を算出する。具体的には、第2実施形態では、1枚の代表画像により特定された2点のSS´位置の距離を直径とし、少なくとも残り1点のSS´位置を通る空間平面上の基準真円が求められる。すなわち、上記直径を構成する2点のSS´位置の他に、SS´位置を少なくとも1点特定するだけで、空間平面上の基準真円が定まるため、基準真円を求めるために用いる2次元断層画像(代表画像)の数を少なく済ませることが可能となり、自動化できる工程をより増やすことができる。
【0079】
S6000では、画像処理部100が、前眼部3次元画像を構成する複数(本実施形態では32枚)の2次元断層画像のうち、複数(本実施形態では3枚)の代表画像以外の複数(本実施形態では29枚)の画像(以下「非代表画像」という)について、S5000において算出した基準真円の関数に基づいて、残りのSS´位置を特定する処理(第2のSS位置特定処理)を行う。具体的には、S5000において求めた基準真円上に、各非代表画像においてB−スキャン方向に対応する各点を、それぞれの非代表画像におけるSS´位置として特定する。
【0080】
そして、S7000では、画像処理部100が、こうして特定された全ての2次元断層画像におけるSS´位置について、S2000において算出した動き行列Vを用いて、補正前のSS位置に戻すことにより、全ての2次元断層画像におけるSS位置を算出(特定)する。これにより、画像処理部100は、メイン処理を終了する。
【0081】
<主要な効果>
以上説明したように、前眼部OCT1では、メイン処理において、空間座標位置のずれの有無の判定(例えばS10〜S20)を経た2次元断層画像のうち、2つ以上の代表画像を用いて、3点以上のSS位置の特定を自動的に受け付け(例えばS50)、少なくとも3点のSS位置を通る基準真円を空間座標上に示す関数を算出する(例えばS60)。そして、上記代表画像以外の2次元断層画像(非代表画像)におけるSS位置等(残りのSS位置)を、上記基準真円の関数に基づいて特定する(例えばS70)。
【0082】
このため、前眼部OCT1によれば、検者がSS位置のポイント入力を全く行わなくてもよいことから、例えばITCを示すチャートの作成を開始するまでの時間を大幅に短縮することができる。従って、前眼部OCT1によれば、前眼部OCTを用いた隅角解析において、全工程を自動化することにより、臨床上で有効に活用可能とすることができる。
【0083】
また、前眼部OCT1では、第1のSS位置特定処理において、代表画像における輝度勾配の情報に基づいて、前眼部Ecにおける強膜とぶどう膜との境界を示す強膜−ぶどう膜エッジ線と、前眼部Ecの角膜後面を示す角膜後面エッジ線と、を検出(特定)し、特定された強膜−ぶどう膜エッジ線と角膜後面エッジ線との交点を、SS位置として特定する。さらに、代表画像における輝度勾配の情報に基づいて、前眼部Ecの虹彩前面を示す虹彩前面エッジ線を検出(特定)できた場合、特定された強膜−ぶどう膜エッジ線と角膜後面エッジ線と虹彩前面エッジ線との交点を、SS位置として特定する。このため、例えば、虹彩線維柱帯接触部(ITC)が存在しない2次元断層画像において、3つのエッジ線を用いることにより、上記交点を抽出しやすくなるため、SS位置の自動特定における精度を向上させることができる。
【0084】
<他の実施形態>
以上、本発明の第1および第2実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0085】
例えば、上記第1実施形態では、前眼部3次元画像処理(メイン処理)において、第1のSS位置特定処理(S50)を行うことにより、SS位置を自動特定しているが、これに代えて、ここでは、操作部8を介した検者によるSS位置のポイント入力を受け付けるようにしてもよい。また、上記第1実施形態では、第1のSS位置特定処理(S50)において、8点のSS位置を自動特定しているが、少なくとも3点のSS位置を自動特定すれば、基準真円を算出することができる。
【0086】
つまり、前眼部OCT1によれば、検者が、2つの2次元断層画像において、SS位置を計3点ポイント入力するだけで、前眼部3次元画像を構成する他の全ての2次元断層画像におけるSS位置が自動特定される。したがって、前眼部OCT1によれば、少なくとも検者が全ての2次元断層画像においてSS位置を特定する必要がなくなるため、例えばITCを示すチャートの作成を開始するまでの時間を短縮することができる。よって、前眼部OCT1を用いた隅角解析において、自動化できる工程を増やすことにより、臨床上で有効に活用可能とすることができる。
【0087】
また、上記第2実施形態では、前眼部3次元画像処理(メイン処理)において、角膜前面曲線を用いたSS位置の補正(S2000,S4000)を行って全てのSS´位置を特定した後に、補正前のSS位置に戻す処理(S7000)を行っているが、必ずしもこのようにしなければならないわけではない。例えば、記憶部10に記憶されている全ての2次元断層画像について、このような補正を行うことにより、各画像の空間座標位置を合わせ、前眼部3次元画像を再構築することもできる。
【0088】
なお、上記実施形態では、制御装置3が前眼部3次元画像を構成する各スライス面の2次元断層画像を記憶部10に記憶させるように構成されているが、記憶部10として、例えばインターネット上のサーバに記憶させるようにしてもよい。また、上記実施形態では、前眼部OCT1において、制御装置3と画像処理部100とが別体に構成されているが、画像処理部100が行う処理を制御装置3が行うようにしてもよいし、制御装置3が行う処理を画像処理部100が行うようにしてもよい。さらには、前眼部OCT1とは別体に、画像処理部100を備える装置が構成され、この装置が前眼部OCT1や上記サーバとの間で通信可能に接続されることで、各種処理を行うようにしてもよい。また、この装置に各種処理を実行させるためのプログラムは、記憶部10や上記サーバに記憶されており、画像処理部100がこのプログラムをロードして各種処理を実行するようにしてもよい。