特許第6367535号(P6367535)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367535
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】トナー用結着樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/087 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   G03G9/087 331
【請求項の数】6
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-220980(P2013-220980)
(22)【出願日】2013年10月24日
(65)【公開番号】特開2015-82070(P2015-82070A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】福利 憲廣
(72)【発明者】
【氏名】上野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】伊知地 浩太
【審査官】 本田 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−122370(JP,A)
【文献】 特開2001−249492(JP,A)
【文献】 特開2005−049766(JP,A)
【文献】 特開2005−164647(JP,A)
【文献】 特開2003−057874(JP,A)
【文献】 特開2003−262978(JP,A)
【文献】 特開2007−286144(JP,A)
【文献】 特開2013−025258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00 − 9/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質ポリエステルLと結晶性ポリエステルCを含有するトナー用結着樹脂組成物であって、前記非晶質ポリエステルLが、芳香族ジオールを含有するアルコール成分とスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、及び1,12−ドデカンジカルボン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを重縮合させて得られる、軟化点が80〜110℃の非晶質ポリエステルであり、前記結晶性ポリエステルCが、炭素数6〜12のα,ω−直鎖アルカンジオールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させて得られる結晶性ポリエステルであり、さらに、軟化点が111〜170℃の非晶質ポリエステルHを含有し、該非晶質ポリエステルHの原料モノマーであるカルボン酸成分が、3価以上の多価カルボン酸化合物を含有する、トナー用結着樹脂組成物。
【請求項2】
非晶質ポリエステルLのカルボン酸成分が含有する、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、及び1,12−ドデカンジカルボン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸化合物の量が、アルコール成分100モルに対して、2〜40モルである、請求項1記載のトナー用結着樹脂組成物。
【請求項3】
非晶質ポリエステルLの原料モノマーであるアルコール成分が、芳香族ジオールを40〜100モル%含有する、請求項1又は2記載のトナー用結着樹脂組成物
【請求項4】
非晶質ポリエステルHと非晶質ポリエステルLの質量比(非晶質ポリエステルH/非晶質ポリエステルL)が90/10〜40/60である、請求項1〜3いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物
【請求項5】
請求項1〜いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物を含有した、静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
非晶質ポリエステルLと結晶性ポリエステルCを含有する静電荷像現像用トナーであって、前記非晶質ポリエステルLが、芳香族ジオールを含有するアルコール成分とスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、及び1,12−ドデカンジカルボン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを重縮合させて得られる、軟化点が80〜110℃の非晶質ポリエステルであり、前記結晶性ポリエステルCが、炭素数6〜12のα,ω−直鎖アルカンジオールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させて得られる結晶性ポリエステルであり、さらに、軟化点が111〜170℃の非晶質ポリエステルHを含有し、該非晶質ポリエステルHの原料モノマーであるカルボン酸成分が、3価以上の多価カルボン酸化合物を含有する、静電荷像現像用トナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法において形成される潜像の現像に用いられるトナー用結着樹脂組成物、及び該結着樹脂組成物を含有した静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真の分野においては、電子写真システムの発展に伴い、高画質化及び高速化に対応した電子写真用のトナーの開発が要求されている。
【0003】
高画質化及び高速化に対応して、特に熱特性を改善するために、トナー用結着樹脂として、組成の調整が容易であるポリエステル樹脂が汎用されており、さらに複数の樹脂を用いる試みがなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、低温定着性、耐熱保存性、粉砕性、粉砕分級収率の向上を目的として、結着樹脂と着色剤とを含む成分を溶融混練して溶融混練物を得る工程、及び得られた溶融混練物を粉砕し、分級する工程を含み、前記結着樹脂が炭素数2〜6の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分とロジン化合物及び炭素数6〜10の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを重縮合させて得られるポリエステルA、及びビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物を含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させて得られるポリエステルBを含有し、ポリエステルBの含有量が、結着樹脂中、4〜20質量%であり、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物の含有量が、ポリエステルBのアルコール成分中、45モル%以上である、結着樹脂と着色剤を含有する静電荷像現像用トナーの製造方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、低温定着性、印字物の保存性の向上と印刷物のカールの発生を抑制することを目的として、アルコール成分と、アルコール成分100モルに対して、5〜25モルのアジピン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを重縮合させて得られる、数平均分子量が1000〜2400である非晶質ポリエステルと、炭素数6〜12の脂肪族ジオールを70〜100モル%含有するアルコール成分と炭素数8〜12の脂肪族ジカルボン酸化合物を70〜100モル%含有するカルボン酸成分とを重縮合させて得られる結晶性ポリエステルとを含有してなる、トナー用結着樹脂が開示されている。
【0006】
特許文献3には、現像器中での柔らかい凝集体の発生を抑制することを目的として、結晶性ポリエステル樹脂と、非結晶性ポリエステル樹脂と、離型剤と、着色剤と、を含有し、当該静電荷像現像用トナーの示差走査熱量計(DSC)により測定されるガラス転移温度は、40℃以上60℃以下であり、当該静電荷像現像用トナーの50℃保管後におけるトナー粒子間付着力は、1.4mN以上2.2mN以下であることを特徴とする静電荷像現像用トナーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−125177号公報
【特許文献2】特開2012−118395号公報
【特許文献3】特開2012−118504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電子写真法においては、幅広い非オフセット域を有し、より一層優れた低温定着性を有するトナーの開発が求められており、特に、高速機では、定着機の温度に対してトナーに伝導するエネルギー量が少なくなるため、さらなる低温定着性の向上が求められる。低温定着性を向上させるためには、トナーにワックスや結晶性ポリエステル等を含有させることで、融解挙動を調節する方法が用いられる。しかし、ワックスや結晶性ポリエステル等は、帯電のリーク部位となりやすい。一方、印刷物が定着ローラーに付着し、分離しないという問題もある。従って、得られるトナーの低温定着性、高温高湿下での帯電安定性、及び定着ローラー剥離性に優れるトナーが求められている。
【0009】
本発明は、得られるトナーの低温定着性、高温高湿下での帯電安定性、及び定着ローラー剥離性に優れるトナー用結着樹脂組成物、及び該結着樹脂組成物を含有する静電荷像現像用トナーに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、得られるトナーの低温定着性、高温高湿下での帯電安定性、及び定着ローラー剥離性に影響する要因は、トナーに含有される結着樹脂組成物中の樹脂の状態によるものと考えて検討を行った。その結果、結着樹脂組成物に、特定の軟化点かつ炭素数8〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分と芳香族ジオールを含有するアルコール成分とを反応させて得られる非晶質ポリエステルと結晶性ポリエステルを含有させることで、得られるトナーに優れた低温定着性、高温高湿下での帯電安定性、及び定着ローラー剥離性を発現させることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、
〔1〕 非晶質ポリエステルLと結晶性ポリエステルCを含有するトナー用結着樹脂組成物であって、前記非晶質ポリエステルLが、芳香族ジオールを含有するアルコール成分と炭素数8〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを重縮合させて得られる、軟化点が80〜110℃の非晶質ポリエステルである、トナー用結着樹脂組成物、
〔2〕 前記〔1〕記載のトナー用結着樹脂組成物を含有した、静電荷像現像用トナー、並びに
〔3〕 非晶質ポリエステルLと結晶性ポリエステルCを含有する静電荷像現像用トナーであって、前記非晶質ポリエステルLが、芳香族ジオールを含有するアルコール成分と炭素数8〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを重縮合させて得られる、軟化点が80〜110℃の非晶質ポリエステルである、静電荷像現像用トナー
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のトナー用結着樹脂組成物は、得られるトナーの低温定着性、高温高湿下での帯電安定性、及び定着ローラー剥離性に優れるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のトナー用結着樹脂組成物は、非晶質ポリエステルLと結晶性ポリエステルCを含有するトナー用結着樹脂組成物であって、非晶質ポリエステルLが、炭素数8〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分と芳香族ジオールを含有するアルコール成分とを重縮合させて得られる、軟化点が80〜110℃の非晶質ポリエステルである。
【0014】
本発明の結着樹脂組成物を含有したトナーが、低温定着性、高温高湿下での帯電安定性、及び定着ローラー剥離性に優れる理由は定かではないが、次のように考えられる。
【0015】
本発明の結着樹脂組成物は非晶質ポリエステルと結晶性ポリエステルを含む。しかし、これらの相溶性が悪いと、低温定着性も低下し、結晶性ポリエステルが帯電のリーク部位となりやすい。一方、相溶性が良すぎると、結晶性ポリエステルが非晶質ポリエステルを可塑化し、低温定着性は向上するものの、印刷物の定着ローラーからの剥離性が悪化する。
【0016】
本発明においては、軟化点が比較的低い非晶質ポリエステル(非晶質ポリエステルL)が、主鎖の比較的長い脂肪族ジカルボン酸化合物と芳香族ジオールを原料モノマーとして含有する。主鎖の長い脂肪族ジカルボン酸化合物は、結晶性ポリエステルと親和性が高く、さらに非晶質ポリエステルにおいて、絡み合い部分となるため、溶融時の粘度を向上させ、結晶性ポリエステルを微細に分散できるものと考えられる。さらに剛直な構造を有する芳香族ジオール部分を含むことから、結晶性ポリエステルとの相溶性を低下させることができると考えられる。このように、本発明の結着樹脂組成物を含有するトナーにおいては、非晶質ポリエステルの可塑化を防ぎつつ、結晶性ポリエステルを微細に分散させることができるため、低温定着性、高温高湿下での帯電安定性、及び定着ローラー剥離性に優れるものと考えられる。
さらに、用いる非晶質ポリエステルは、軟化点が比較的低いため、印刷時の加熱によって、結晶性ポリエステルとともに融解し、低温定着性をより向上させていると考えられる。
【0017】
なお、樹脂の結晶性は、軟化点と示差走査熱量計による吸熱の最高ピーク温度との比、即ち[軟化点/吸熱の最高ピーク温度]の値で定義される結晶性指数によって表わされる。結晶性樹脂は、結晶性指数が0.6〜1.4、好ましくは0.7〜1.2、より好ましくは0.9〜1.2であり、非晶質樹脂は1.4を超えるか、0.6未満の樹脂である。樹脂の結晶性は、原料モノマーの種類とその比率、及び製造条件(例えば、反応温度、反応時間、冷却速度)等により調整することができる。なお、吸熱の最高ピーク温度とは、観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの温度を指す。最高ピーク温度は、軟化点との差が20℃以内であれば融点とし、軟化点との差が20℃を超える場合はガラス転移に起因するピークとする。
【0018】
非晶質ポリエステルLは、原料モノマーとして少なくともアルコール成分とカルボン酸成分を用い、これらを重縮合させて得られる。
【0019】
非晶質ポリエステルLのアルコール成分は、得られるトナーの低温定着性、高温高湿下での帯電安定性、及び定着ローラー剥離性の観点から、芳香族ジオールを含有する。
【0020】
芳香族ジオールとしては、式(I):
【0021】
【化1】
【0022】
(式中、R1Oはアルキレンオキサイドであり、R1は炭素数2又は3のアルキレン基、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示す正の数を示し、xとyの和は1〜16、好ましくは1.5〜5.0である)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましい。式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0023】
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は、得られるトナーの低温定着性、高温高湿下での帯電安定性、及び定着ローラー剥離性の観点から、R1OがプロピレンオキサイドであるビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物とR1OがエチレンオキサイドであるビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物から選ばれる1種以上からなることが好ましく、少なくともビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を含有することがより好ましく、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物とビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物からなることがさらに好ましい。
【0024】
アルコール成分に含有されるビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物とビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のモル比(エチレンオキサイド付加物/プロピレンオキサイド付加物)は、トナーの低温定着性及び高湿下での保存性の観点から、0/100〜70/30が好ましく、3/97〜65/35がより好ましく、5/95〜60/40がさらに好ましく、10/90〜50/50がさらに好ましく、20/80〜40/60がさらに好ましい。
【0025】
芳香族ジオールの含有量は、アルコール成分中、40〜100モル%が好ましく、70〜100モル%がより好ましく、90〜100モル%がさらに好ましい。
【0026】
芳香族ジオール以外のアルコールとしては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、水素添加ビスフェノールA等のジオール;ソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価以上の多価アルコール等が挙げられる。
【0027】
非晶質ポリエステルLのカルボン酸成分は、結晶性ポリエステルの分散性を良好にし、得られるトナーの低温定着性、高温高湿下での帯電安定性、及び定着ローラー剥離性を向上させる観点から、炭素数8〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有する。本発明において、炭素数とは、カルボキシ基の炭素を含む炭素数である。炭素数8〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物は、炭素数6〜12の主鎖を有するものであることが好ましい。
【0028】
炭素数8〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物としては、スベリン酸(主鎖炭素数:6)、アゼライン酸(主鎖炭素数:7)、セバシン酸(主鎖炭素数:8)、1,10−デカンジカルボン酸(主鎖炭素数:10)、1,12−ドデカンジカルボン酸(主鎖炭素数:12)、側鎖にアルキル基又はアルケニル基を有するコハク酸、これらの酸の無水物、それらの炭素数1〜3のアルキルエステル等が挙げられる。なお、本発明において、カルボン酸化合物には、遊離酸だけでなく、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び炭素数1〜3のアルキルエステルも含まれる。ただし、アルキルエステル部のアルキル基の炭素数は、脂肪族ジカルボン酸化合物の炭素数には含めない。
【0029】
脂肪族ジカルボン酸化合物における鎖状炭化水素基は直鎖であっても分岐鎖であってもよく、脂肪族ジカルボン酸化合物の炭素数は、帯電安定性の観点から、8以上が好ましく、10以上がより好ましく、12以上がさらに好ましい。また、低温定着性の観点から、14以下が好ましく、13以下が好ましい。
【0030】
カルボン酸成分には、炭素数8〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物以外のカルボン酸化合物が含まれていてもよいが、炭素数8〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、得られるトナーの低温定着性の観点から、10モル%以上が好ましく、15モル%以上がより好ましく、17モル%以上がさらに好ましい。また、トナーの保存性及び帯電安定性の観点から、35モル%以下が好ましく、30モル%以下がより好ましく、25モル%以下がさらに好ましい。
【0031】
また、炭素数8〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、アルコール成分100モルに対して、得られるトナーの低温定着性の観点から、2モル以上が好ましく、5モル以上がより好ましく、10モル以上がさらに好ましい。また、トナーの保存性及び帯電安定性の観点から、40モル以下が好ましく、30モル以下がより好ましく、20モル以下がさらに好ましい。
【0032】
他のカルボン酸化合物としては、トナーの帯電性の観点から、芳香族ジカルボン酸化合物が好ましい。芳香族ジカルボン酸化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、これらの酸の無水物、それらの炭素数1〜3のアルキルエステル等が挙げられる。
【0033】
芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、30モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましい。また、トナーの低温定着性及び帯電安定性の観点から、85モル%以下が好ましく、80モル%以下がより好ましく、70モル%以下がさらに好ましい。
【0034】
その他のカルボン酸成分としては、炭素数2〜7の脂肪族ジカルボン酸化合物、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸化合物、これらの酸の無水物、それらの炭素数1〜3のアルキルエステル等が挙げられる。
【0035】
アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、適宜含有されていてもよい。
【0036】
アルコール成分とカルボン酸成分の重縮合反応時の温度は、反応性の観点から、180℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましい。また、熱分解性の観点から、250℃以下が好ましい。また、重縮合反応時の温度は、180〜250℃が好ましく、200〜250℃がより好ましい。
【0037】
重縮合反応は、必要に応じて、エステル化触媒、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下で行ってもよい。
【0038】
エステル化触媒としては、スズ触媒、チタン触媒等が挙げられる。スズ触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等が挙げられるが、反応性、分子量調整及び樹脂の物性調整の観点から、Sn−C結合を有していない錫(II)化合物を触媒として用いた重縮合によって得られたものであることが好ましい。
【0039】
Sn−C結合を有していない錫(II)化合物としては、Sn−C結合を有しておらず、Sn-O結合を有する錫(II)化合物、Sn-X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物等が好ましく、Sn-O結合を有する錫(II)化合物がより好ましい。
【0040】
Sn-O結合を有する錫(II)化合物としては、シュウ酸錫(II)、酢酸錫(II)、オクタン酸錫(II)、2-エチルヘキサン酸錫(II)、ラウリル酸錫(II)、ステアリン酸錫(II)、オレイン酸錫(II)等の炭素数2〜28のカルボン酸基を有するカルボン酸錫(II);オクチロキシ錫(II)、ラウロキシ錫(II)、ステアロキシ錫(II)、オレイロキシ錫(II)等の炭素数2〜28のアルコキシ基を有するアルコキシ錫(II);酸化錫(II);硫酸錫(II)等が、Sn-X(Xはハロゲン原子を示す)結合を有する錫(II)化合物としては、塩化錫(II)、臭化錫(II)等のハロゲン化錫(II)等が挙げられ、これらの中では、帯電立ち上がり効果及び触媒能の点から、(R2COO)2Sn(ここでR2は炭素数5〜19のアルキル基又はアルケニル基を示す)で表される脂肪酸錫(II)、(R3O)2Sn(ここでR3は炭素数6〜20のアルキル基又はアルケニル基を示す)で表されるアルコキシ錫(II)及びSnOで表される酸化錫(II)が好ましく、(R2COO)2Snで表される脂肪酸錫(II)及び酸化錫(II)がより好ましく、オクタン酸錫(II)、2-エチルヘキサン酸錫(II)、ステアリン酸錫(II)及び酸化錫(II)がさらに好ましく、2-エチルヘキサン酸錫(II)及び酸化錫(II)がさらにより好ましい。
【0041】
チタン触媒としては、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等が挙げられる。
【0042】
エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.01〜1.5質量部が好ましく、0.1〜1.0質量部がより好ましい。
【0043】
エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。重合禁止剤としては、tert-ブチルカテコール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。
【0044】
なお、本発明において、ポリエステルとは、実質的にその特性を損なわない程度に変性されたポリエステルを含む。変性されたポリエステルとしては、例えば、ポリエステルがウレタン結合で変性されたウレタン変性ポリエステル、ポリエステルがエポキシ結合で変性されたエポキシ変性ポリエステル、及びポリエステル成分と付加重合系樹脂成分を含む2種以上の樹脂成分を有する複合樹脂等が挙げられるが、本発明における非晶質ポリエステルは、好ましくはポリエステル部分が98質量%以上であり、より好ましくは実質的にポリエステル部分のみからなり、さらに好ましくはポリエステル部分のみからなる。
【0045】
非晶質ポリエステルLの軟化点は、トナーの保存性の観点から、80℃以上であり、90℃以上が好ましく、92℃以上がより好ましく、94℃以上がさらに好ましい。また、トナーの低温定着性の観点から、110℃以下であり、100℃以下が好ましく、98℃以下がより好ましく、97℃以下がさらに好ましい。また、トナーの帯電安定性の観点から、90〜100℃が好ましく、92〜98℃がより好ましく、94〜97℃がさらに好ましい。
【0046】
非晶質ポリエステルLのガラス転移温度は、トナーの帯電安定性及び保存性の観点から、40℃以上が好ましく、45℃以上がより好ましく、49℃以上がさらに好ましく、50℃以上がさらに好ましい。また、トナーの低温定着性の観点から、60℃以下が好ましく、57℃以下がより好ましく、55℃以下がさらに好ましく、50℃以下がさらに好ましい。
【0047】
非晶質ポリエステルLの酸価は、トナーの帯電性の観点から、3mgKOH/g以上が好ましく、5mgKOH/g以上がより好ましい。また、トナーの高温高湿下での帯電安定性の観点から、30mgKOH/g以下が好ましく、20mgKOH/g以下がより好ましい。
【0048】
結晶性ポリエステルCのアルコール成分は、保存性の観点から、炭素数6〜12、好ましくは9〜12の脂肪族ジオールを含有することが好ましい。
【0049】
炭素数6〜12の脂肪族ジオールとしては、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール等が挙げられる。
【0050】
脂肪族ジオールの炭素数は、保存性の観点から、6以上が好ましく、9以上がより好ましく、10以上がさらに好ましい。また、低温定着性の観点から、12以下が好ましい。
【0051】
また、炭素数6〜12の脂肪族ジオールは、トナーの低温定着性を向上させる観点から、水酸基を炭素鎖の末端に有していることが好ましく、α,ω−直鎖アルカンジオールであることが好ましい。
【0052】
アルコール成分には、炭素数6〜12の脂肪族ジオール以外のアルコールが含まれていてもよいが、炭素数6〜12の脂肪族ジオールの含有量は、アルコール成分中、70〜100モル%が好ましく、80〜100モル%がより好ましく、90〜100モル%がさらに好ましく、実質的に100モル%がさらに好ましい。
【0053】
炭素数6〜12の脂肪族ジオール以外のアルコール成分としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール等の炭素数2〜5脂肪族ジオール、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール、グリセリン等の3価以上の多価アルコール等が挙げられる。
【0054】
結晶性ポリエステルCのカルボン酸成分は、炭素数8〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有していることが好ましい。
【0055】
炭素数8〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物としては、スベリン酸(主鎖炭素数:6)、アゼライン酸(主鎖炭素数:7)、セバシン酸(主鎖炭素数:8)、1,10−デカンジカルボン酸(主鎖炭素数:10)、1,12−ドデカンジカルボン酸(主鎖炭素数:12)、側鎖にアルキル基又はアルケニル基を有するコハク酸、これらの酸の無水物、それらの炭素数1〜3のアルキルエステル等が挙げられる。
【0056】
脂肪族ジカルボン酸化合物における鎖状炭化水素基は直鎖であっても分岐鎖であってもよく、脂肪族ジカルボン酸化合物の炭素数は、10以上が好ましい。また、低温定着性の観点から、13以下が好ましい。
【0057】
カルボン酸成分には、炭素数8〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物以外のカルボン酸化合物が含まれていてもよいが、炭素数8〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物の含有量は、カルボン酸成分中、70モル%以上が好ましく、80モル%以上がより好ましく、90モル%以上がさらに好ましい。また、トナーの高温高湿下での帯電安定性の観点から、100モル%以下が好ましく、97モル%以下がより好ましく、95モル%以下がさらに好ましい。
【0058】
カルボン酸成分は、トナーの粉砕性の観点から、炭素数8〜24の脂肪族モノカルボン酸化合物を含有していることが好ましい。
【0059】
炭素数8〜24の脂肪族モノカルボン酸化合物としては、ステアリン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸らが上げられ、これらのなかでは、ステアリン酸が好ましい。
【0060】
炭素数8〜24の脂肪族モノカルボン酸化合物の含有量は、トナーの低温定着性、高温高湿下での帯電安定性の観点から、カルボン酸成分中、5〜30モル%が好ましく、8〜20モル%がより好ましい。
【0061】
他のカルボン酸化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸化合物、炭素数2〜7の脂肪族ジカルボン酸化合物、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸化合物等が挙げられる。
【0062】
アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合反応は、不活性ガス雰囲気中にて、必要に応じて、エステル化触媒、エステル化助触媒、重合禁止剤等の存在下、200〜250℃程度の温度で重縮合させて製造することができる。エステル化触媒としては、酸化ジブチル錫、2-エチルヘキサン酸錫(II)等の錫化合物、チタンジイソプロピレートビストリエタノールアミネート等のチタン化合物等が挙げられる。エステル化触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.01〜1.5質量部が好ましく、0.1〜1.0質量部がより好ましい。エステル化助触媒としては、没食子酸等が挙げられる。エステル化助触媒の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。重合禁止剤としては、tert-ブチルカテコール等が挙げられる。重合禁止剤の使用量は、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、0.001〜0.5質量部が好ましく、0.01〜0.1質量部がより好ましい。
【0063】
結晶性ポリエステルCの軟化点は、保存性及び定着ローラー剥離性の観点から、65℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上がさらに好ましい。また、低温定着性及び高温高湿下での帯電安定性の観点から、100℃以下が好ましく、95℃以下がより好ましく、90℃以下がさらに好ましい。
【0064】
結晶性ポリエステルCの融点は、保存性及び定着ローラー剥離性の観点から、60℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。また、低温定着性及び高温高湿下での帯電安定性の観点から、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましい。
【0065】
本発明の結着樹脂組成物は、保存性及び耐ホットオフセット性の観点から、非晶質ポリエステルLよりも軟化点の高い非晶質ポリエステルHを含有していることが好ましい。
【0066】
非晶質ポリエステルHの軟化点は、保存性及び耐ホットオフセット性の観点から、111℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、125℃以上がさらに好ましい。また、低温定着性の観点から、170℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましく、140℃以下がさらに好ましく、135℃以下がさらに好ましい。
【0067】
非晶質ポリエステルHのアルコール成分は、トナーの帯電性の観点から、芳香族ジオールを含有することが好ましい。
【0068】
芳香族ジオールとしては、前記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましい。
【0069】
式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物は、保存性及び低温定着性の観点から、R1OがプロピレンオキサイドであるビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物とR1OがエチレンオキサイドであるビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物から選ばれる1種以上からなることが好ましく、少なくともビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を含有することがより好ましく、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物とビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物からなることがさらに好ましい。
【0070】
アルコール成分に含有されるビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物とビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物のモル比(エチレンオキサイド付加物/プロピレンオキサイド付加物)は、トナーの低温定着性及び高湿下での保存性の観点から、0/100〜70/30が好ましく、3/97〜65/35がより好ましく、5/95〜60/40がさらに好ましく、10/90〜50/50がさらに好ましく、20/80〜40/60がさらに好ましい。
【0071】
芳香族ジオールの含有量は、アルコール成分中、40〜100モル%が好ましく、70〜100モル%がより好ましく、90〜100モル%がさらに好ましい。
【0072】
芳香族ジオール以外のアルコールとしては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、水素添加ビスフェノールA等のジオール;ソルビトール、ペンタエリスリトール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の3価以上の多価アルコール等が挙げられる。
【0073】
非晶質ポリエステルHのカルボン酸成分は、トナーの帯電安定性の観点から、芳香族ジカルボン酸化合物を含有していることが好ましい。
【0074】
芳香族ジカルボン酸化合物としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
【0075】
芳香族ジカルボン酸化合物の含有量は、トナーの帯電安定性及び保存性の観点から、非晶質ポリエステルHのカルボン酸成分中、30モル%以上が好ましく、40モル%以上がより好ましい。また、トナーの低温定着性の観点から、80モル%以下が好ましく、60モル%以下がより好ましい。
【0076】
芳香族ジカルボン酸化合物以外のカルボン酸成分としては、芳香族ジカルボン酸化合物、脂肪族ジカルボン酸化合物、脂環式ジカルボン酸化合物、3価以上の多価カルボン酸化合物等が挙げられる。
【0077】
脂肪族ジカルボン酸化合物としては、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、ドデセニルコハク酸、オクチルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸等の脂肪族ジカルボン酸、それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
【0078】
非晶質ポリエステルHのカルボン酸成分は、3価以上の多価カルボン酸化合物を含有していることが好ましい。3価以上の多価カルボン酸化合物としては、例えば1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸、それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられ、これらの中では、耐ホットオフセット性及び耐久性の観点から、無水トリメリット酸が好ましい。
【0079】
非晶質ポリエステルHのカルボン酸成分における3価以上の多価カルボン酸化合物の含有量は、アルコール成分100モルに対して、耐ホットオフセット性及び耐久性の観点から、3モル以上が好ましく、5モル以上がより好ましく、20モル以上がさらに好ましい。また、高温高湿下での帯電安定性の観点から、40モル以下が好ましく、30モル以下がより好ましい。
【0080】
アルコール成分には1価のアルコールが、カルボン酸成分には1価のカルボン酸化合物が、適宜含有されていてもよい。
【0081】
アルコール成分とカルボン酸成分の重縮合反応の条件(反応温度、エステル化触媒、エステル化助触媒、重合禁止剤等の使用)は、非晶質ポリエステルLと同様である。
【0082】
非晶質ポリエステルHのガラス転移温度は、保存性の観点から、45℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。また、トナーの低温定着性、高温高湿下での帯電安定性、及び定着ローラー剥離性の観点から、70℃以下が好ましく、65℃以下がより好ましく、60℃以下がさらに好ましい。
【0083】
非晶質ポリエステルHの酸価は、トナーの帯電性、低温定着性、及び定着ローラー剥離性の観点から、5mgKOH/g以上が好ましく、15mgKOH/g以上がより好ましく、20mgKOH/g以上がさらに好ましい。また、高温高湿下での帯電安定性の観点から、40mgKOH/g以下が好ましく、30mgKOH/g以下がより好ましい。
【0084】
非晶質ポリエステルHと非晶質ポリエステルLの質量比(非晶質ポリエステルH/非晶質ポリエステルL)は、トナーの高温高湿下での帯電安定性及び定着ローラー剥離性の観点から、90/10〜40/60が好ましく、85/15〜45/55がより好ましく、85/15〜60/40がさらに好ましく、80/20〜70/30がさらに好ましい。
【0085】
非晶質ポリエステルと結晶性ポリエステルの質量比(非晶質ポリエステル/結晶性ポリエステル)は、トナーの低温定着性、高温高湿下での帯電安定性、及び定着ローラー剥離性の観点から、65/35〜97/3が好ましく、70/30〜97/3がより好ましく、80/20〜95/5がさらに好ましい。ここで、非晶質ポリエステルとは、非晶質ポリエステルとして非晶質ポリエステルLが含まれており、非晶質ポリエステルHは含まれていない場合には、非晶質ポリエステルLを、非晶質ポリエステルLと非晶質ポリエステルHが含まれている場合には、両者を合わせた非晶質ポリエステル全体を意味する。
【0086】
本発明の結着樹脂組成物を含有する静電荷像現像用トナーは、低温定着性、高温高湿下での帯電安定性、及び定着ローラー剥離性に優れる。なお、本発明の結着樹脂組成物は、非晶質ポリエステルH及び結晶性ポリエステルC、及び必要に応じて非晶質ポリエステルL等の他の結着樹脂を混合する工程により得られたものを用いてもよく、トナーを製造する際に、それぞれの樹脂を直接原料の混合に供してもよい。
【0087】
本発明のトナーには、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明の結着樹脂組成物以外の公知の樹脂が併用されていてもよいが、非晶質ポリエステルL及び結晶性ポリエステルCの総含有量、又はさらに非晶質ポリエステルHを含有する場合は、3種のポリエステルの総含有量は、結着樹脂中、90〜100質量%が好ましく、93〜100質量%がより好ましく、95〜100質量%がさらに好ましい。
【0088】
本発明のトナーには、着色剤、離型剤、荷電制御剤、荷電制御樹脂、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が含有されていてもよく、着色剤、離型剤及び荷電制御剤が含有されることが好ましい。
【0089】
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができ、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン−Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエロー等が用いることができ、本発明のトナーは、黒トナー、カラートナーのいずれであってもよい。着色剤の含有量は、トナーの画像濃度及び低温定着性を向上させる観点から、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。また、40質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0090】
離型剤としては、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレンポリエチレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の脂肪族炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物、カルナウバワックス、モンタンワックス、サゾールワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス、脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0091】
離型剤の融点は、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点から、60〜160℃が好ましく、60〜150℃がより好ましい。
【0092】
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、トナーの低温定着性と耐オフセット性の観点及び結着樹脂中への分散性の観点から、0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上がさらに好ましい。また、10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、7質量部以下がさらに好ましい。
【0093】
荷電制御剤は、特に限定されず、正帯電性荷電制御剤及び負帯電性荷電制御剤のいずれを含有していてもよい。
【0094】
正帯電性荷電制御剤としては、ニグロシン染料、例えば「ニグロシンベースEX」、「オイルブラックBS」、「オイルブラックSO」、「ボントロンN-01」、「ボントロンN-04」、「ボントロンN-07」、「ボントロンN-09」、「ボントロンN-11」(以上、オリエント化学工業社製)等;3級アミンを側鎖として含有するトリフェニルメタン系染料、4級アンモニウム塩化合物、例えば「ボントロンP-51」(オリエント化学工業社製)、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、「COPY CHARGE PX VP435」(クラリアント社製)等;ポリアミン樹脂、例えば「AFP-B」(オリエント化学工業社製)等;イミダゾール誘導体、例えば「PLZ-2001」、「PLZ-8001」(以上、四国化成社製)等;スチレン−アクリル系樹脂、例えば「FCA-701PT」(藤倉化成社製)等が挙げられる。
【0095】
また、負帯電性の荷電制御剤としては、含金属アゾ染料、例えば「バリファーストブラック3804」、「ボントロンS-31」、「ボントロンS-32」、「ボントロンS-34」、「ボントロンS-36」(以上、オリエント化学工業社製)、「アイゼンスピロンブラックTRH」、「T-77」(保土谷化学工業社製)等;ベンジル酸化合物の金属化合物、例えば、「LR-147」、「LR-297」(以上、日本カーリット社製)等;サリチル酸化合物の金属化合物、例えば、「ボントロンE-81」、「ボントロンE-84」、「ボントロンE-88」、「E-304」(以上、オリエント化学工業社製)、「TN-105」(保土谷化学工業社製)等;銅フタロシアニン染料;4級アンモニウム塩、例えば「COPY CHARGE NX VP434」(クラリアント社製)、ニトロイミダゾール誘導体等;有機金属化合物、例えば「TN105」(保土谷化学工業社製)等が挙げられる。
【0096】
荷電制御剤の含有量は、トナーの帯電安定性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましく、1質量部以上がさらに好ましく、10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、3質量部以下がさらに好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。
【0097】
本発明のトナーは、溶融混練法、乳化転相法、重合法等の従来より公知のいずれの方法により得られたトナーであってもよいが、生産性や着色剤の分散性の観点から、溶融混練法による粉砕トナーが好ましい。溶融混練法による粉砕トナーの場合、例えば、非晶質ポリエステルL、非晶質ポリエステルH及び結晶性ポリエステルCを含む結着樹脂、着色剤、荷電制御剤等の原料をヘンシェルミキサー等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー、1軸もしくは2軸の押出機、オープンロール型混練機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級して製造することができる。
【0098】
本発明のトナーには、転写性を向上させるために、外添剤を用いることが好ましく、外添剤としては、無機微粒子を用いることが好ましい。無機微粒子の例は、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛が挙げられ、シリカが好ましい。
【0099】
シリカは、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであるのが好ましい。
【0100】
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられ、これらの中ではヘキサメチルジシラザンが好ましい。
【0101】
外添剤の平均粒子径は、トナーの帯電性や流動性、転写性の観点から、10nm以上が好ましく、15nm以上がより好ましい。また、250nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましく、90nm以下がさらに好ましい。
【0102】
外添剤の含有量は、外添剤で処理する前のトナー100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上がさらに好ましい。また、5質量部以下が好ましく、3質量部以下がより好ましい。
【0103】
本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、3〜15μmが好ましく、4〜10μmがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。また、トナーを外添剤で処理している場合には、外添剤で処理する前のトナー粒子の体積中位粒径をトナーの体積中位粒径とする。
【0104】
本発明のトナーは、一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。
【0105】
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下のトナー用結着樹脂組成物、該結着樹脂を含有した静電荷像現像用トナー及びその製造方法を開示する。
【0106】
<1> 非晶質ポリエステルLと結晶性ポリエステルCを含有するトナー用結着樹脂組成物であって、前記非晶質ポリエステルLが、芳香族ジオールを含有するアルコール成分と炭素数8〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを重縮合させて得られる、軟化点が80〜110℃の非晶質ポリエステルである、トナー用結着樹脂組成物。
【0107】
<2> さらに、軟化点が111〜170℃の非晶質ポリエステルHを含有する、前記<1>記載のトナー用結着樹脂。
<3> 非晶質ポリエステルLのカルボン酸成分が含有する炭素数8〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物の量が、アルコール成分100モルに対して、2〜40モルである、前記<1>又は<2>記載のトナー用結着樹脂。
<4> 結晶性ポリエステルCが、炭素数6〜12の脂肪族ジオールを含有するアルコール成分とカルボン酸成分とを重縮合させて得られる結晶性ポリエステルである、前記<1>〜<3>いずれか記載のトナー用結着樹脂。
<5> 結晶性ポリエステルCが、アルコール成分と炭素数8〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを重縮合させて得られる結晶性ポリエステルである、前記<1>〜<4>いずれか記載のトナー用結着樹脂。
<6> 非晶質ポリエステルと結晶性ポリエステルの質量比(非晶質ポリエステル/結晶性ポリエステル)が65/35〜97/3である、前記<1>〜<6>いずれか記載のトナー用結着樹脂。
<7> 非晶質ポリエステルLの原料モノマーであるアルコール成分が、芳香族ジオールを40〜100モル%含有する、前記<1>〜<7>いずれか記載のトナー用結着樹脂。
<8> 非晶質ポリエステルLのアルコール成分に含有される芳香族ジオールが、式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物である、前記<1>〜<8>いずれか記載のトナー用結着樹脂。
<9> 非晶質ポリエステルHと非晶質ポリエステルLの質量比(非晶質ポリエステルH/非晶質ポリエステルL)が90/10〜40/60である、前記<2>〜<9>いずれか記載のトナー用結着樹脂。
<10> 非晶質ポリエステルLの原料モノマーであるカルボン酸成分が、芳香族ジカルボン酸化合物を30〜80モル%含有する、前記<1>〜<10>いずれか記載のトナー用結着樹脂。
<11> 結晶性ポリエステルCの融点が60〜100℃である、前記<1>〜<11>いずれか記載のトナー用結着樹脂。
<12> 非晶質ポリエステルLのアルコール成分に含有される式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物とビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物から選ばれる1種以上からなる、前記<9〜12>いずれか記載のトナー用結着樹脂。
<13> 非晶質ポリエステルHの原料モノマーであるカルボン酸成分が、3価以上の多価カルボン酸化合物を含有する、前記<2>〜<13>いずれか記載のトナー用結着樹脂。
<14> 非晶質ポリエステルHの原料モノマーであるカルボン酸成分に含有される3価以上の多価カルボン酸化合物の含有量が、アルコール成分100モルに対して3〜40モルである、前記<14>記載のトナー用結着樹脂。
<15> 非晶質ポリエステルHの原料モノマーであるカルボン酸成分に含有される3価以上の多価カルボン酸化合物が、無水トリメリット酸である、前記<14>又は<15>記載のトナー用結着樹脂。
<16> 結晶性ポリエステルCの軟化点が65〜100℃である、前記<1>〜<16>いずれか記載のトナー用結着樹脂。
<17> 前記<1>〜<16>いずれか記載のトナー用結着樹脂組成物を含有した、静電荷像現像用トナー。
<18> 非晶質ポリエステルLと結晶性ポリエステルCを含有する静電荷像現像用トナーであって、前記非晶質ポリエステルLが、芳香族ジオールを含有するアルコール成分と炭素数8〜14の脂肪族ジカルボン酸化合物を含有するカルボン酸成分とを重縮合させて得られる、軟化点が80〜110℃の非晶質ポリエステルである、静電荷像現像用トナー。
<19> さらに、軟化点が111〜170℃の非晶質ポリエステルHを含有する、前記<18>記載の静電荷像現像用トナー。
【実施例】
【0108】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター「CFT-500D」(島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出す。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0109】
〔樹脂の吸熱の最高ピーク温度〕
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、室温から降温速度10℃/分で0℃まで冷却しそのまま1分間静止させる。その後、昇温速度50℃/分で測定する。観測される吸熱ピークのうち、最も高温側にあるピークの頂点の温度を吸熱の最高ピーク温度とする。
【0110】
〔樹脂のガラス転移温度〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とする。
【0111】
〔樹脂の酸価〕
JIS K0070の方法に基づき測定する。但し、測定溶媒のみJIS K0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更する。
【0112】
〔離型剤の融点〕
示差走査熱量計「DSC210」(セイコー電子工業社製)を用いて、試料0.01〜0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/分で昇温し、融解熱の最大ピーク温度を融点とする。
【0113】
〔外添剤の平均粒子径〕
平均粒子径は、個数平均粒子径を指し、外添剤の走査型電子顕微鏡(SEM)写真から測定した、500個の粒子の粒径の平均値をいう。長径と短径がある場合は長径を指す。
【0114】
〔トナーの体積中位粒径(D50)〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:50μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)5%電解液
分散条件:分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:ビーカーに電解液100mlと分散液を加え、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度で、3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0115】
〔樹脂の製造〕
樹脂製造例1〔樹脂a−1〜樹脂a−5、樹脂a−8、樹脂a−11〕
表1、2に示すアジピン酸、セバシン酸、1,10-デカンジカルボン酸及び無水トリメリット酸以外の原料モノマーと、2-エチルヘキサン酸錫(II)40g及び没食子酸2gを、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で6時間重縮合反応させた。230℃8.0kPaで1時間反応させた後、さらにアジピン酸、セバシン酸、1,10-デカンジカルボン酸、及び無水トリメリット酸を添加して210℃で反応させ、10kPaにて表1、2に示す軟化点に達するまで反応を行って、非晶質ポリエステルを得た。
【0116】
樹脂製造例2〔樹脂a−6、樹脂a−7〕
表1、2に示すフマル酸及び無水トリメリット酸以外の原料モノマーと、2-エチルヘキサン酸錫(II)40g及び没食子酸2gを、窒素導入管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で6時間重縮合反応させた。180℃まで冷却した後、フマル酸及び重合禁止剤としてtert-ブチルカテコール5gを投入し、180℃から210℃まで10℃/時間で昇温し、210℃にて1時間反応を行い、210℃、10kPaにて表1、2に示す軟化点に達するまで反応を行って、非晶質ポリエステルを得た。
【0117】
樹脂製造例3〔樹脂a−9、樹脂a−10〕
表2に示すセバシン酸及び無水トリメリット酸以外の原料モノマーと、2-エチルヘキサン酸錫(II)40g及び没食子酸2gを、窒素導入管、100℃の熱水を通した分留管を装備した脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、180℃で1時間保温した後に180℃から230℃まで10℃/時間で昇温し、その後230℃で8時間重縮合反応させた。さらにセバシン酸及び無水トリメリット酸を添加して210℃で反応させ、10kPaにて表2に示す軟化点に達するまで反応を行って、非晶質ポリエステルを得た。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
樹脂製造例4〔樹脂C−1〜樹脂C−5の製造〕
表3に示す原料モノマーを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、140℃で6時間保持、さらに200℃まで6時間かけて昇温後、2-エチルヘキサン酸錫(II)20g及び没食子酸2gを入れ、200℃にて1時間反応させた後、8.3kPaにて1時間反応させ、結晶性ポリエステルを得た。
【0121】
樹脂製造例5〔樹脂C6〕
表3に示す原料モノマー及びtert-ブチルカテコール2gを窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、140℃で6時間保持、さらに200℃まで6時間かけて昇温後、2-エチルヘキサン酸錫(II)20g及び没食子酸2gを入れ、200℃にて1時間反応させた後、8.3kPaにて1時間反応させて、結晶性ポリエステルを得た。
【0122】
【表3】
【0123】
〔静電荷像現像用トナーの製造〕
実施例1〜11及び比較例1〜7
表4に示す樹脂を混合した結着樹脂100質量部、着色剤「ECB-301」(大日精化社製、C.I.ピグメントブルー15:3)5質量部、負帯電性荷電制御剤「LR-147」(日本カーリット社製)1質量部及び離型剤「NP-105」(三井化学社製、ポリプロピレンワックス、融点:140℃)2質量部を、ヘンシェルミキサーによく攪拌した後、混練部分の全長1560mm、スクリュー径42mm、バレル内径43mmの同方向回転二軸押出機を用いて溶融混練した。ロールの回転速度は200r/min、ロール内の加熱温度は120℃であり、混合物の供給速度は10kg/hr、平均滞留時間は約18秒であった。得られた混練物を冷却ローラーで圧延冷却した後、ジェットミルで体積中位粒径(D50)6.5μmの粉体を得た。
【0124】
得られた粉体100質量部に、外添剤「アエロジル R-972」(疎水性シリカ、日本アエロジル社製、平均粒子径:16nm)1.0質量部及び「SI-Y」(疎水性シリカ、日本アエロジル社製、平均粒子径:40nm)1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサーで3600r/min、5分間混合することにより、外添剤処理を行い、体積中位粒径(D50)6.5μmのトナーを得た。
【0125】
試験例1〔低温定着性〕
得られたトナーを複写機「AR-505」(シャープ(株)製)に実装し、トナー付着量が0.7mg/cm2の未定着画像(2cm×12cm)を得た。複写機「AR-505」(シャープ(株)製)の定着機をオフラインで定着可能なように改良した定着機(定着速度200mm/sec)を用い、定着温度を90℃から240℃へと5℃ずつ順次上昇させながら、各定着温度で定着試験を行った。定着紙には、「CopyBond SF-70NA」(シャープ社製、75g/m2)を使用した。
最低定着温度は500gの荷重をかけた底面が15mm×7.5mmの砂消しゴムで、定着機を通して定着された画像を5往復擦り、擦る前後の光学反射密度を反射濃度計「RD-915」(マクベス社製)を用いて測定し、両者の比率(擦り後/擦り前)が最初に70%を越える定着ローラーの温度を最低定着温度とする。最低定着温度が低いほど、低温定着性に優れる。結果を表4に示す。
【0126】
試験例2〔高温高湿下での帯電安定性〕
温度32℃、相対湿度85%の高温高湿条件下にて、トナー0.6gとシリコーンフェライトキャリア(関東電化工業株式会社製、平均粒子径90μm)19.4gとを50ml容のポリエチレン製の容器に入れ、ボールミルを用いて250r/minで混合し、以下の方法により、トナーの帯電量をQ/Mメーター(EPPING社製)を用いて測定した。
所定の混合時間後、Q/Mメーター付属のセルに規定量のトナーとキャリアの混合物を投入し、目開き32μmのふるい(ステンレス製、綾織、線径:0.0035mm)を通してトナーのみを90秒間吸引した。そのとき発生するキャリア上の電圧変化をモニターし、〔90秒後の総電気量(μC)/吸引されたトナー量(g)〕の値を帯電量(μC/g)とした。混合時間60秒後における帯電量と混合時間600秒後における帯電量の比率(混合時間60秒後における帯電量/混合時間600秒後の帯電量)を計算し、帯電安定性を評価した。数値が大きいほど、高温高湿下での帯電安定性に優れる。結果を表4に示す。
【0127】
試験例3〔定着ローラー剥離性〕
複写機「AR-505」(シャープ(株)製)にトナーを実装し、2cm×12cmのベタ画像部(トナー付着量:0.5mg/cm2)を有する未定着の画像を得た。複写機「AR-505」(シャープ(株)製)の定着機を装置外での定着が可能なように改良した定着機(定着速度:100mm/sec)を用い、定着温度を170℃とし、紙を定着ローラーに通過させ、定着ローラーから剥がれるか定着ローラーに付着するかを目視にて観察し、以下の評価基準に従って、定着ローラー剥離性を評価した。結果を表4に示す。
【0128】
〔評価基準〕
A:定着ローラーから紙が剥離し、通過後の紙の折れ曲がりもない。
B:定着ローラーから紙が剥離するが、通過後の紙が折れ曲がる。
C:定着ローラーに紙が付着する。
【0129】
【表4】
【0130】
以上の結果より、実施例のトナーは、比較例のトナーに比べて、いずれも低温定着性、高温高湿下での帯電安定性、及び定着ローラー剥離性に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明のトナー用結着樹脂組成物は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に用いられるトナーの結着樹脂組成物として好適に用いられるものである。