特許第6367537号(P6367537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭サナック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6367537-静電塗装装置 図000002
  • 特許6367537-静電塗装装置 図000003
  • 特許6367537-静電塗装装置 図000004
  • 特許6367537-静電塗装装置 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367537
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】静電塗装装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/053 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   B05B5/053
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-230254(P2013-230254)
(22)【出願日】2013年11月6日
(65)【公開番号】特開2015-89537(P2015-89537A)
(43)【公開日】2015年5月11日
【審査請求日】2016年8月9日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000117009
【氏名又は名称】旭サナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 宣文
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 善貴
(72)【発明者】
【氏名】柳田 建三
【審査官】 高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−021758(JP,A)
【文献】 特開2011−072968(JP,A)
【文献】 特開2012−161757(JP,A)
【文献】 特開平11−123348(JP,A)
【文献】 特表2005−516771(JP,A)
【文献】 特表2007−502703(JP,A)
【文献】 特開平09−131551(JP,A)
【文献】 特開2001−096201(JP,A)
【文献】 特開2004−041901(JP,A)
【文献】 舘和幸 他,回転霧化静電塗装に関する研究(第II報) 塗着効率に及ぼす塗粒径と比電荷の影響,色材協会誌,日本,一般社団法人 色材協会,1986年,59巻、5号,p.265〜271
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B1/00−9/08;12/00−13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流高電圧発生部を有し、供給された塗料を帯電させて噴霧するスプレーガンと、
前記スプレーガンから噴霧される塗料の吐出量を直接的または間接的に特定可能な設定値を入力する入力手段、前記スプレーガンの前記直流高電圧発生部へ電源を供給する電源部、当該直流高電圧発生部の駆動状態を検出する駆動状態検出部、および、前記駆動状態検出部で検出した駆動状態が、前記入力手段に入力された設定値から特定される吐出量と当該吐出量における塗料の塗着効率とに基づいて予め設定される目標駆動状態となるように前記電源部を制御する制御部を備える静電コントローラと、を備え、
前記駆動状態は、前記直流高電圧発生部の電流値によって示されるものであり、
前記駆動状態検出部は、前記駆動状態として前記直流高電圧発生部の電流値を検出する電流検出回路により構成されており、
前記制御部は、前記電流検出回路により検出された電流値が、当該電流値と比例関係になっていない塗着効率の最大値に対応する値であって前記目標駆動状態として予め設定されている目標電流値となるように制御することを特徴とする静電塗装装置。
【請求項2】
前記入力手段は、塗料の種類をさらに入力可能であり、
前記目標駆動状態は、塗料の種類に応じて区分けして設定されており、
前記制御部は、塗料の種類に応じて、前記駆動状態検出部で検出した駆動状態が前記目標駆動状態となるように制御することを特徴とする請求項1記載の静電塗装装置。
【請求項3】
前記スプレーガンから前記被塗装物までの距離を検出する距離検出手段をさらに備え、
前記目標駆動状態は、前記被塗装物までの距離に応じて区分けして設定されており、
前記制御部は、前記被塗装物までの距離の変化に追従させて、前記駆動状態検出部で検出した駆動状態が前記目標駆動状態となるように制御することを特徴とする請求項1また
は2記載の静電塗装装置。
【請求項4】
外部の機器との間で通信を行う通信部をさらに備え、
前記通信部を介して、前記目標駆動状態を前記外部の機器から取得することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の静電塗装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプレーガンと静電コントローラとを備えた静電塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スプレーガンから噴霧される塗料の微粒子を、当該スプレーガンに内蔵させた直流高電圧発生部により例えば負の高電圧に帯電させ、帯電させた塗料微粒子を接地された被塗装物(陽極)との間に作用する静電気力によって被塗装物の表面に塗装する静電塗装装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このような静電塗装装置では、被塗装物に形成する膜厚に応じて目標となる電圧値や電流値(目標駆動状態に相当する)を作業者が予め設定し、静電コントローラによってその目標駆動状態となるように制御が行われている。この目標駆動状態は、経験的な値やメーカの推奨値等が採用されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献2】特開平6−328013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、発明者らは、種々の実験を重ねた結果、同一の被塗装物および塗料であっても、直流高電圧発生部の駆動状態によって塗料の塗着効率が変化することを見いだした。また、発明者らは、その塗着効率が塗料の吐出量に応じて変化することをも見いだした。
しかしながら、駆動状態と塗着効率との関係を作業者に全て把握させたり、最適な塗着効率となるように作業者が塗装作業中に駆動状態を調整したりすることは、作業者の負担が増加してしまい、その実現には多くの困難が伴うのが実情である。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業者の負担を伴うことなく塗着効率が最適となる駆動状態に制御することができる静電塗装装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、直流高電圧発生部を有し、供給された塗料を帯電させて噴霧するスプレーガンと、前記スプレーガンから噴霧される塗料の吐出量を直接的または間接的に特定可能な設定値を入力する入力手段、前記スプレーガンの前記直流高電圧発生部へ電源を供給する電源部、当該直流高電圧発生部の駆動状態を検出する駆動状態検出部、および、前記駆動状態検出部で検出した駆動状態が、前記入力手段に入力された設定値から特定される吐出量と当該吐出量における塗料の塗着効率とに基づいて予め設定される目標駆動状態となるように前記電源部を制御する制御部を備える静電コントローラと、を備え、前記駆動状態は、前記直流高電圧発生部の電流値によって示されるものであり、前記駆動状態検出部は、前記駆動状態として前記直流高電圧発生部の電流値を検出する電流検出回路により構成されており、前記制御部は、前記電流検出回路により検出された電流値が、当該電流値と比例関係になっていない塗着効率の最大値に対応する値であって前記目標駆動状態として予め設定されている目標電流値となるように制御する
【0006】
このような構成によれば、作業者が駆動状態と塗着効率との関係を把握しておかなくても、また、最適な塗着効率となるように作業者が塗装作業中に駆動状態を調整しなくても、自動で塗着効率が最適となる駆動状態(目標駆動状態)が設定される。したがって、作業者の負担を伴うことなく、塗着効率が最適となる駆動状態にて塗装を行うことができる。なお、吐出量を直接的に入力してもよいが、例えば吐出量と、その吐出量で形成される膜厚との関係を予め調査しておき、膜厚を入力することで間接的に吐出量を入力する構成であってもよい。
【0007】
請求項2の発明は、入力手段は、塗料の種類をさらに入力可能であり、目標駆動状態は、塗料の種類に応じて区分けして設定されており、制御部は、塗料の種類に応じて、駆動状態検出部で検出した駆動状態が目標駆動状態となるように制御する。
このような構成によれば、塗料の種類が変更された場合であっても、その種類を入力するだけで塗着効率が最適となる駆動状態にて塗装を行うことができる。
請求項3の発明は、スプレーガンから被塗装物までの距離を検出する距離検出手段をさらに備え、目標駆動状態は、被塗装物までの距離に応じて区分けして設定されており、制御部は、被塗装物までの距離の変化に追従させて、駆動状態検出部で検出した駆動状態が目標駆動状態となるように制御する。
このような構成によれば、距離の変化に追従して塗着効率が最適となる駆動状態に制御されるので、作業者が手動で塗装をする際、多少のぶれがあったとしても、最適な駆動状態を維持することができる。また、塗装ロボットを使用する場合であれば、ロボットアームの位置に基づいて最適な駆動状態を検知することができる。
【0008】
請求項4の発明は、駆動状態は、直流高電圧発生部の電流値によって示されるものであり、駆動状態検出部は、駆動状態として直流高電圧発生部の電流値を検出する電流検出回路により構成されており、制御部は、電流検出回路により検出された電流値が目標駆動状態として予め設定されている目標電流値となるように制御する。
このような構成によれば、直流高電圧発生部の電流値を制御することは従来の静電塗装装置でも行われていることから、複雑な回路構成や部品の追加あるいは複雑な処理の追加等を行わなくても、最適な駆動状態に制御することができる。
請求項5の発明は、外部の機器との間で通信を行う通信手段をさらに備え、通信手段を介して、目標駆動状態を外部の機器から取得する。
このような構成によれば、新たな種類の塗料が追加されたり、形状等が異なる新たな被塗装物への塗装を行ったりする場合であっても、各静電塗装装置に個別に設定等を行わなくても、最適な駆動状態を取得することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業者の負担を伴うことなく塗着効率が最適となる駆動状態に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態による静電塗装装置の電気的構成を模式的に示す図
図2】塗着効率と出力電流との関係の一例を示す図
図3】静電コントローラによる塗装制御処理の流れを示す図
図4】その他の実施形態における静電塗装装置の構成を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図1から図4を参照しながら説明する。
本実施形態では、粉体塗装を例にして説明するが、本発明は、粉体塗装に限らず、液体塗装にも適用することができる。
図1に示すように、静電塗装装置1は、スプレーガン2と、このスプレーガン2にケーブル3を介して接続されている静電コントローラ4とを備えている。このケーブル3は、スプレーガン2に対して電源(交流電圧)を供給するための電源線3aおよび3bと、後述する電流検出回路23(駆動状態検出部に相当する)のための電流検出線3cと、作業者がトリガ6を操作した際の操作信号を伝達するための信号線3d、3cとから構成されている。なお、ケーブル3は、その外周側が保護管3fにより保護されている。
【0012】
スプレーガン2は、例えば電気的絶縁性を有する合成樹脂材料等により本体が形成されており、ノズル5、トリガ6、LEDで構成された通電状態ランプ7、通電状態ランプ7のオン/オフを制御するLED駆動回路8、および、直流高電圧発生部9等を備えている。このスプレーガン2は、作業者によってトリガ6が操作されると、その操作に連動してガン内蔵スイッチ6aが閉鎖する。このガン内蔵スイッチ6aの開閉状態は、ケーブル3を介して静電コントローラ4の操作判定回路6bに伝達される。そして操作判定回路6bにてガン内蔵スイッチ6aの開閉状態を検出し、ガン内蔵スイッチ6aが閉鎖したことが検出されると、操作判定回路6bから制御部17に対してトリガ操作検出信号が出力される。これにより、スプレーガン2に空気が供給されてノズル5から塗料11が噴霧される。
【0013】
このスプレーガン2は、供給配管部10を介して塗料11が蓄えられている塗料タンク12に接続されている。この塗料タンク12には、本実施形態では2つの空気配管部13a、13bを介してコンプレッサ14から圧縮空気(メインエアー、サブエア−)がインジェクタ15を介して供給される。これら空気配管部13a、13bの途中にはエアバルブ15a、15bそれぞれが設けられており、制御部17からの指示により空気配管部13a、13bにおける空気の流れ、つまり、スプレーガン2に供給する空気の流れを断続する。
【0014】
スプレーガン2に設けられている直流高電圧発生部9は、昇圧トランス18、倍電圧整流回路19、出力抵抗20等で構成されており、静電コントローラ4に設けられている電源部21から供給される交流電圧に比例した大きさの直流電圧を発生させる。すなわち、昇圧トランス18に入力された交流電圧は、昇圧された後に例えばコッククロフト−ウォルトン型の倍電圧整流回路19により昇圧及び整流され、60kV〜100kV程度の高電圧に変換される。この倍電圧整流回路19は、回路内のダイオードの向きを変えることにより、出力電圧の極性を接地電位に対して正(プラス)、又は負(マイナス)のいずれかにすることができる。本実施形態の場合、倍電圧整流回路19の出力電圧の極性は接地電位に対して負になるように構成されている。そのため、ノズル5の近傍に設けられているピン状の電極22には、出力抵抗20を介して負極性の直流電圧が供給される。
【0015】
このスプレーガン2では、直流高電圧発生部9の出力側が静電コントローラ4に設けられている電流検出回路23に接続されている。そのため、直流高電圧発生部9の出力側の電流値が検出される。そして、本実施形態では、詳細は後述するが、この出力側の電流値を直流高電圧発生部9の駆動状態を示す情報として採用している。
静電コントローラ4は、制御部17により制御されている。この制御部17は、図示しないCPU、ROM及びRAMなどを備えたマイクロコンピュータにより構成されており、例えばROM等に記憶されているプログラムを実行することで、静電コントローラ4の全体を制御する。具体的には、作業者がトリガ6を操作してガン内蔵スイッチ6aがオンされると、発振回路24に対して制御指令を出力し、電源部21の出力(スプレーガン2に供給される電源)を調整する。一方、制御部17は、トリガ6の操作が解除されると、ガン内蔵スイッチ6aがオフされることから待機状態となる。なお、図示は省略するが、静電コントローラ4には、過電流を検出したりする周知の安全回路も勿論設けられている。
【0016】
電源部21は、電源25、2個のスイッチング素子26a、26b、出力トランス27等を備えている。電源部21は、周知のように、発振回路24によってスイッチング素子26a、26bが交互にオン/オフされることにより、交流電圧を生成および出力する。生成された交流電圧は、スプレーガン2の直流高電圧発生部9に供給される。
【0017】
また、静電コントローラ4には、作業者が設定を行うための操作パネル28(入力手段に相当する)、および、例えば不揮発性の半導体メモリ等により構成された記憶回路29(記憶手段に相当する)を備えている。操作パネル28は、複数のスイッチ類30および表示器31を有しており、スイッチ類30から作業者の操作が入力される。例えば、後述する塗料11の吐出量が設定される。なお、本実施形態では、操作パネル28から風量を設定することにより、塗料11の吐出量が間接的に設定される。また、操作パネル28は、入力された設定値や駆動状態等を表示器31に表示する。記憶回路29は、詳細は後述するが、本実施形態に関連して、目標駆動状態(本実施形態では、目標電流値)を、塗料11の吐出、塗料11の種類、および被塗装物32までの距離等に区分けして記憶している。
【0018】
次に、上記した構成の作用について説明する。
図2は、発明者らが見いだした直流高電圧発生部9の駆動状態によって塗料の塗着効率が変化する実験結果の一例を示している。この図2の場合、同一の被塗装物32に対して同一の塗料11を同一の距離から塗布し、その際の塗着効率と直流高電圧発生部9の駆動状態(本実施形態では、直流高電圧発生部9の出力側の電流値)との関係が一例として示されている。ここで、塗着効率は、平面状の被塗装物32に対して正面からスプレーガンにて塗装を行った際における塗料11の使用量(噴霧量)と、実際に被塗装物32に塗装された塗料11の量(吸着量)との比で示されている。また、図2には、吐出量を100g/min(実線にて示すグラフG1)、200g/min(破線にて示すグラフG2)、および300g/min(二点鎖線にて示すグラフG3)に変化させた際の実験結果が示されている。なお、吐出量は目標となる膜厚に対して設定される値であり、本実施形態では、上記したように風量(メインエアーの風量、サブエアーの風量)を設定することで間接的に吐出量を設定している。勿論、ノズル5の径や形状等に基づいて、吐出量を直接的に設定してもよい。
【0019】
この実験結果から明らかなように、塗料の塗着効率は、直流高電圧発生部9の駆動状態によって変化している。そして、この実験結果から、塗着効率が最大となる駆動状態(本実施形態では、電流値)を求めることができる。この場合、例えば吐出量が100g/minの場合、塗着効率が最大となる電流値はI1(目標電流値。目標駆動状態に相当する。このときの電圧値はV1)であり、吐出量が200g/minの場合、塗着効率が最大となる電流値はI2(このときの電圧値はV2)であり、吐出量が300g/minの場合、塗着効率が最大となる電流値はI3(このときの電圧値はV3)として求められる。なお、塗着効率が最大となる電流値だけでなく、塗着効率が最大となる電流範囲を求めてもよい。その場合、電流範囲は、塗着効率の最大値を含む範囲であって、塗着効率が最大値から所定割合低下するまでの範囲として求めればよい。
【0020】
静電塗装装置1は、この実験結果を例えばテーブル化あるいは関数化したデータを、記憶回路29に記憶している。また、記憶回路29には、他の種類の塗料についても、同様のデータが記憶されている、さらに、記憶回路29には、同一の塗料を異なる距離から塗布した際の塗着効率と直流高電圧発生部9の駆動状態(本実施形態では、直流高電圧発生部9の出力側の電流値)との関係等も記憶されている。
そして、静電塗装装置1では、実際に塗装が行われる際、これらのデータに基づいて、塗着効率が最大となるように、直流高電圧発生部9の駆動状態が制御される。以下、塗装中における処理について、静電塗装装置1を主体として説明する。
【0021】
静電塗装装置1は、図3に示す塗装制御処理を実行しており、作業者により塗装条件(本実施形態では、風量(吐出量)を入力する操作)が設定されると(S1)、設定された塗装条件に応じて予め定められている目標駆動状態(本実施形態では、直流高電圧発生部9の出力側の電流値)を設定する(S2)。このとき、目標駆動状態は、記憶回路29に記憶されている例えば図2に示したようなデータから、入力された風量に応じて塗着効率が最大となる電流値(目標電流値。なお、塗着効率が最大となる電流値から所定範囲となる目標電流範囲であってもよい)が設定される。例えば、吐出量が100g/minであれば、目標駆動状態として電流値I1が設定される。
【0022】
続いて、静電塗装装置1は、塗装が開始されたかを判定する(S3)。このとき、静電塗装装置1は、ガン内蔵スイッチ6aからのトリガ操作検出信号に基づいて、塗装が開始されたかを判定している。静電塗装装置1は、塗装が開始されていないと判定した場合には(S3:NO)そのまま待機する。一方、静電塗装装置1は、塗装が開始されたと判定した場合には(S3:YES)、駆動状態(本実施形態では直流高電圧発生部9の出力側の電流値)を検出し(S4)、その駆動状態が目標駆動状態(本実施形態では、上記した目標電流値)となるように電源部21を制御する(S5)。
【0023】
その後、静電塗装装置1は、塗装が終了したかを判定しつつ(S6)、塗装が終了していない場合には(S6:NO)、駆動状態の検出(S4)および目標駆動状態となるようにする制御(S5)を繰り返し実行する。一方、静電塗装装置1は、塗装が終了した場合には(S6:YES)、ステップS3へ移行し、塗装が再開されたかを判定しつつ(S3)、待機する。なお、塗装が行われていない期間に新たに風量等の塗装条件が入力された場合には(S1)、入力された塗装条件に対応する目標駆動状態の設定(S2)が行われる。
このように、静電塗装装置1は、塗着効率が最大(または最大付近)となる目標駆動状態を予め記憶しておき、その目標駆動状態で塗装が行われるように制御を行っている。
【0024】
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を奏する。
静電塗装装置1では、作業者が駆動状態と塗着効率との関係を把握しておかなくても、また、最適な塗着効率となるように作業者が塗装作業中に駆動状態を調整しなくても、吐出量を設定するだけで塗着効率が最適となる駆動状態(目標駆動状態)が設定される。したがって、作業者の負担を伴うことなく、塗着効率が最適となる駆動状態にて塗装を行うことができる。また、塗着効率が向上することから、無駄な塗料の消費を抑制することができる。
【0025】
駆動状態は、直流高電圧発生部9の出力側の電流値によって示されるものであり、本実施形態の駆動状態検出部は、駆動状態として直流高電圧発生部9の電流値を検出する電流検出回路23により構成されており、制御部17は、電流検出回路23により検出された電流値が目標駆動状態として予め設定されている目標電流値となるように制御する。直流高電圧発生部9における電流値を検出して制御することは従来でも行われていることであるため、複雑な回路構成や部品の追加あるいは複雑な処理の追加等を行わなくても、最適な駆動状態に制御することができる。
【0026】
(その他の実施形態)
本発明は、上記した各実施形態にて例示したものに限定されることなく、その範囲を逸脱しない範囲で任意に変形あるいは拡張することができる。
一実施形態では吐出量を直接的に入力したが、例えば吐出量とその吐出量で形成される膜厚との関係を予め調査しておき、膜厚を入力することで間接的に吐出量を入力する構成であってもよい。
【0027】
図3に示す塗装制御処理においてステップS1にて入力手段(実施形態では操作パネル28)から塗料の種類をさらに入力し、塗料の種類に応じて区分けして設定(記憶)されている目標駆動状態から、該当する塗料における目標駆動状態を設定してもよい。これにより、塗料の種類が変更された場合であっても、その種類を入力するだけで塗着効率が最適となる駆動状態にて塗装を行うことができる。
【0028】
目標駆動状態を被塗装物32までの距離に応じて区分けして予め設定(記憶)しておき、スプレーガン2側に被塗装物32までの距離を検出する距離検出手段(例えば、レーザ距離計)を設け、図3に示す塗装制御処理のステップS4にて駆動状態を検出する際、被塗装物32までの距離も合わせて検出し、その距離が変化した場合には、距離の変化に追従させて目標駆動状態となるように制御する。これにより、作業者が手動で塗装をする際に多少のぶれがあったとしても、最適な駆動状態を維持することができる。また、塗装ロボットを使用する場合であれば、ロボットアームの位置に基づいて最適な駆動状態に制御することができる。換言すると、ロボットアームの移動に追従させた制御を行うことができるようになる。なお、スプレーガン2に距離検出手段を設ける場合には、ケーブル3の芯数を増やす等により検出結果を静電コントローラに出力すればよい。
【0029】
図4に示すように、管理装置40等の外部の機器との間で通信を行う通信手段(通信部41)を設け、その通信手段を介して目標駆動状態を管理装置40の記憶部42等から取得する構成としてもよい。これにより、新たな種類の塗料が追加されたり、形状等が異なる新たな被塗装物への塗装を行ったりする場合であっても、各静電塗装装置に個別に設定等を行わなくても、最適な駆動状態を取得することができる。なお、図4では1台の静電コントローラ4を示しているが、管理装置40にて複数台の静電コントローラ4を管理するようにしてもよい。
実施形態で示したスプレーガン2や静電コントローラ4の構成は一例であり、例示した構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0030】
図面中、1は静電塗装装置、2はスプレーガン、4は静電コントローラ、9は直流高電圧発生部、11は塗料、17は制御部、21は電源部、23は電流検出回路(駆動状態検出部)、28は操作パネル(入力手段)、32は被塗装物、40は管理装置(外部の機器)、41は通信部(通信手段)を示す。
図1
図2
図3
図4