(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された低層住宅用シングル配筋基礎の築後穿孔部周囲の補強工法では、基礎の立上り部において貫通孔を設けることが許容されない箇所を作業現場で判別することが困難となることが考えられる。詳しく説明すると、基礎に限らずコンクリート構造物には、高応力発生箇所等といった貫通孔を設けることが許容されない箇所があるが、当該箇所は図面等の設計資料に基づいて判別されるものであり、作業者が作業現場にて当該箇所を判別することが困難となることがある。このため、作業者が誤って貫通孔を設けることが許容されない箇所に貫通孔を設けてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、貫通孔を設けることが許容されない箇所と貫通孔を設けることが許容される箇所とを容易に判別することができるコンクリート構造物の配筋構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明に係るコンクリート構造物の配筋構造は、
一定の間隔をあけて配置されると共に平行に延在する複数の主筋と、
一定の間隔をあけて配置されると共に前記複数の主筋と直交して延在する複数のあばら筋と、前記複数の主筋及び前記複数のあばら筋が埋設されたコンクリート部材と、前記コンクリート部材において側面視での外周が前記複数の主筋と前記複数のあばら筋とによって矩形状に形成されると共に、前記コンクリート部材の既設後に貫通孔の穿設が許容されない穿設禁止領域と、前記コンクリート部材において側面視での外周が前記複数の主筋と前記複数のあばら筋とによって矩形状に形成されると共に、前記コンクリート部材の既設後に前記貫通孔の穿設が許容される穿設許容領域と、前記穿設禁止領域又は前記穿設許容領域の何れか一方に検知手段によって当該穿設禁止領域か当該穿設許容領域かを判別可能となるように設けられた被検知部材と、を有
し、前記被検知部材は、側面視において、少なくとも一部が前記一方の中央部に位置している。
【0007】
請求項2に記載の発明に係るコンクリート構造物の配筋構造は、請求項1に記載の発明において、前記被検知部材は、鉄筋で構成されると共に前記穿設禁止領域にのみ配置されている。
【0008】
請求項3に記載の発明に係るコンクリート構造物の配筋構造は、請求項2に記載の発明において、前記被検知部材は、側面視で前記穿設禁止領域の対角線と重なるように配置されている。
【0009】
請求項4に記載の発明に係るコンクリート構造物の配筋構造は、請求項2又は請求項3記載の発明において、前記被検知部材は、前記複数の主筋又は前記複数のあばら筋の何れか一方の延在方向に沿って配置されている。
【0010】
請求項5に記載の発明に係るコンクリート構造物の配筋構造は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の発明において、前記穿設許容領域には、前記複数の主筋又は前記複数のあばら筋に沿った補強筋が配置されている。
【0011】
請求項6に記載の発明に係るコンクリート構造物の配筋構造は、請求項5記載の発明において、前記被検知部材は、前記補強筋の前記穿設禁止領域側に延長された部分によって構成されている。
請求項7に記載の発明に係る杭基礎は、地盤に埋設されたフーチング部と、前記フーチング部から立ち上げられると共に、請求項1〜請求項6の何れか1項に記載のコンクリート構造物の配筋構造が適用された立上り部と、前記フーチング部の建物下方側に配置されて当該フーチング部を支持する杭と、を有し、前記穿設禁止領域は、側面視において前記立上り部における前記杭の建物上方側の端部の前記フーチング部の長手方向両側から当該フーチング部の下面部に対して建物上方側にそれぞれ45°を成すように引かれた2本の境界線によって囲まれた領域内に設定されている。
【0012】
請求項1に記載の本発明によれば、所定の間隔をあけて配置されかつ平行に延在する複数の主筋と、所定の間隔をあけて配置されかつ前記複数の主筋と直交して延在する複数のあばら筋とがコンクリート部材に埋設されている。これにより、コンクリート部材の当該コンクリート部材が受ける引張力及び剪断力に対する強度が向上する。
【0013】
ここで、本発明では、コンクリート部材において、側面視での外周が複数の主筋と複数のあばら筋とによって矩形状に形成されると共に
コンクリート部材の既設後に貫通孔の穿設が許容されない穿設禁止領域と、側面視での外周が複数の主筋と複数のあばら筋とによって矩形状に形成されると共に
コンクリート部材の既設後に当該貫通孔の穿設が許容される穿設許容領域とが設定されている。そして、被検知部材が、穿設禁止領域又は穿設許容領域の何れか一方に検知手段によって当該穿設禁止領域か当該穿設許容領域かを判別可能となるように設けられている。このため、検知手段が被検知部材を検知することで、コンクリート部材における穿設禁止領域及び穿設許容領域を判別することができる。
【0014】
請求項2に記載の本発明によれば、被検知部材は、鉄筋で構成されると共に穿設禁止領域にのみ配置される。これにより、被検知部材に用いる部材を作業現場で調達することができると共に、当該被検知部材の配置にかかる作業工数を低減することができる。
【0015】
請求項3に記載の本発明によれば、被検知部材は、側面視で穿設禁止領域の対角線と重なるように配置されている。これにより、検知手段によって主筋又はあばら筋の何れか一方の延在方向に沿って検知すれば、穿設禁止領域を検知することができる。
【0016】
請求項4に記載の本発明によれば、被検知部材は、複数の主筋又は複数のあばら筋の何れか一方の延在方向に沿って配置されている。これにより、被検知部材の配置が容易となる。すなわち、被検知部材の延在方向が複数の主筋又は複数のあばら筋の何れか一方の延在方向となり、当該被検知部材を複数の主筋又は複数のあばら筋の何れか一方と併せて配置することができる。
【0017】
請求項5に記載の本発明によれば、穿設許容領域には、複数の主筋又は複数のあばら筋に沿った補強筋が配置されている。これにより、穿設許容領域を補強することができる。
【0018】
請求項6に記載の本発明によれば、前記被検知部材は、前記補強筋の前記穿設禁止領域側に延長された部分によって構成されている。これにより、補強筋と被検知部材とを同一部材で構成することができる。
【0019】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明に係るコンクリート構造物の配筋構造では、貫通孔を設けることが許容されない箇所と貫通孔を設けることが許容される箇所とを容易に判別することができるという優れた効果を有する。
【0020】
請求項2に記載の本発明に係るコンクリート構造物の配筋構造では、被検知部材の配置にかかるコストを低減することができるという優れた効果を有する。
【0021】
請求項3に記載の本発明に係るコンクリート構造物の配筋構造では、貫通孔を設けることが許容されない箇所の判別作業の効率を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0022】
請求項4に記載の本発明に係るコンクリート構造物の配筋構造では、被検知部材の配置作業の効率を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0023】
請求項5に記載の本発明に係るコンクリート構造物の配筋構造では、貫通孔を設ける場合に、当該貫通孔の周辺部の強度を担保することができるという優れた効果を有する。
【0024】
請求項6に記載の本発明に係るコンクリート構造物の配筋構造では、補強筋及び被検知部材の配置作業の効率を向上させることができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態>
以下、
図1〜
図4を用いて、本発明に係るコンクリート構造物の配筋構造が適用された第1実施形態の基礎の構造について説明する。
【0027】
まず、
図4を用いて本実施形態に係る建物10の構成について説明する。建物10は、一例として、複数個の下階側の建物ユニット12を据え付けた後に、当該下階側の建物ユニット12上に複数個の上階側の建物ユニット14を据え付けることにより構成されている。そして、建物ユニット12の建物下方側には、コンクリート構造物としての基礎16が設けられている。
【0028】
図2及び
図4に示されるように、基礎16は、一例として、平面視で格子状に形成された図示しない内側基礎と、当該内側基礎を囲むように枠状に形成された外周基礎20と、当該内側基礎及び当該外周基礎20を支持する複数の杭18と、を備えている。外周基礎20は、地盤50に埋設されたフーチング部22と、当該フーチング部22の幅方向中央部から垂直に立ち上げられたコンクリート部材としての立上り部24とによって縦断面視で凸字状に構成されている。この外周基礎20は、当該外周基礎20の長手方向に配筋された後述する複数の主筋26、30及び当該主筋26、30に直交する方向に配筋された後述する複数の基礎フーチング主筋28及びあばら筋32が埋設されるように型枠を組み、当該型枠にコンクリートが打設されることで形成されている。なお、内側基礎の構造と外周基礎20の構造とは、基本的に同様の構成とされており、当該内側基礎も外周基礎20と同様に形成されている。また、杭18は、横断面視で円形状となるように形成されており、当該杭18の建物上方側端部とフーチング部22の下面部22Aとが面接触状態とされている。なお、杭18は、フーチング部22の幅方向中心線と杭18の軸心とが一致するように、当該フーチング部22の長手方向に沿って配置されている。
【0029】
ここで、本実施形態では、複数の主筋26、30、複数の基礎フーチング主筋28、複数のあばら筋32、貫通孔穿設防止筋36及び補強筋40によって、外周基礎20の配筋構造が構成されている。以下、本発明の要部である外周基礎20の配筋構造の一例について詳細に説明する。
【0030】
図1及び
図2に示されるように、外周基礎20のフーチング部22には、3本の主筋26が、当該フーチング部22の幅方向に一定の間隔をあけてかつ当該フーチング部22の長手方向に平行に延在する状態で埋設されている。この主筋26は、フーチング部22の高さ方向中央でかつフーチング部22の幅方向中心線に対して対称となるように配筋されている。そして、複数の基礎フーチング主筋28が、主筋26と直交する方向に延在しかつフーチング部22の長手方向に一定の間隔をあけた状態で当該フーチング部22に埋設されている。なお、基礎フーチング主筋28は3本の主筋26の建物下方側に当接状態とされている。
【0031】
外周基礎20の立上り部24には、2本の主筋30が、フーチング部22の幅方向中央に配筋された主筋26を含めて当該立上り部24の高さ方向に一定の間隔となるようにかつ当該フーチング部22の長手方向に平行に延在する状態で埋設されている。そして、複数のあばら筋32が、主筋30に直交する方向に延在しかつ立上り部24の長手方向に一定の間隔をあけた状態で当該立上り部24に埋設されている。なお、あばら筋32は、主筋30の屋内側に当接状態とされると共に、当該あばら筋32の建物下方側はフーチング部22に埋設された状態とされている。
【0032】
上述した外周基礎20における立上り部24の配筋構造は、
図1に示されるように、側面視で杭18の建物上方側端部におけるフーチング部22の長手方向両側から当該フーチング部22の下面部22Aとそれぞれ45°を成すように引かれた2本の境界線Lを境として構造が異なっている。詳しく説明すると、この境界線Lによって囲まれた領域K(境界線Lにかかる部分を含む。)は外周基礎20において高応力の発生が予測される部位であり、当該部位には貫通孔を設けないことが好ましい。従って、立上り部24において側面視での外周が複数の主筋30と複数のあばら筋32とによって矩形状に形成された領域のうち、領域Kに含まれる当該領域は、貫通孔の穿設が許容されない穿設禁止領域Sとして設定されている。なお、
図3に示されるように、立上り部24の長手方向両端部も外周基礎20において高応力の発生が予測される部位であり、同様に穿設禁止領域Sが設定されている。この穿設禁止領域Sの外周を構成する複数の主筋30と複数のあばら筋32とによって構成された矩形枠34には、側面視で当該矩形枠34の対角線と重なるように被検知部材としての貫通孔穿設防止筋36が配置されている。この貫通孔穿設防止筋36は、鉄筋で構成されると共に、全体で杭18の軸心に対して対称となるようにかつ2本1組で山型となるように配置されている。なお、貫通孔穿設防止筋36は、その両端部が矩形枠34に溶接等によって接合又は当該両端部に設けられた図示しないフック等によって矩形枠34に係止されることにより固定されている。これにより、立上り部24における穿設禁止領域Sひいては領域Kが補強される。
【0033】
一方、立上り部24において側面視での外周が複数の主筋30と複数のあばら筋32とによって矩形状に形成された領域のうち、領域Kに含まれない当該領域は、貫通孔の穿設が許容される穿設許容領域Tとして設定されている。この穿設許容領域Tの外周を構成する複数の主筋30と複数のあばら筋32とによって構成された矩形枠38には、鉄筋で構成された補強筋40が配置されている。この補強筋40は、主筋30の延在方向に延在する横補強筋42と、あばら筋32の延在方向に延在する縦補強筋44とによって構成されている。横補強筋42は、主筋30の建物下方側に当該主筋30と当接状態で配置されており、縦補強筋44は、あばら筋32と横補強筋42に対して対称となるようにかつ当該横補強筋42及び主筋30と当接状態で配置されている。また、横補強筋42の径が主筋30の径と等しく設定されると共に、縦補強筋44の径及び長さがあばら筋32の径及び長さと等しく設定されている。なお、横補強筋42及び縦補強筋44は、主筋30やあばら筋32に溶接等によって接合されていてもよいし、フック等によって係止されていてもよい。
【0034】
次に、本実施形態の作用・効果について説明する。
【0035】
本実施形態では、
図1に示されるように、所定の間隔をあけて配置されかつ平行に延在する複数の主筋と、所定の間隔をあけて配置されかつ当該複数の主筋と直交して延在する複数のあばら筋とが外周基礎20の立上り部24に埋設されている。これにより、立上り部24の当該立上り部24が受ける引張力及び剪断力に対する強度が向上し、ひいては外周基礎20の強度が向上する。
【0036】
ところで、本実施形態では、建物10に空調設備等を導入するための配管工事をするときに、既設の外周基礎20の立上り部24に、当該立上り部24の屋外側と屋内側とを連通する貫通孔46を設け、当該貫通孔46にスリーブ48が配置することがある。貫通孔46を設けるにあたって、上述したように立上り部24における領域Kには、当該貫通孔46を設けないことが好ましいが、立上り部24の外観からは、どの範囲が領域Kかを判断することができない。このため、領域Kを図面等の設計資料に基づいて特定する必要があり、作業者が作業現場にて貫通孔46を設ける箇所を判別することが困難となることがある。その結果、作業者が誤って貫通孔46を立上り部24における領域Kに設けてしまうおそれがある。
【0037】
しかしながら、本実施形態では、立上り部24において、貫通孔46の穿設が許容されない穿設禁止領域Sに貫通孔穿設防止筋36が配置されており、当該貫通孔穿設防止筋36が検知手段としての鉄筋探査機によって検知可能とされている。このため、鉄筋探査機が貫通孔穿設防止筋36を検知することで、立上り部24における穿設禁止領域S及び穿設許容領域Tを判別することができる。
【0038】
具体的に説明すると、立上り部24において貫通孔46を設けることができる箇所かどうかを判別する場合、検知手段としての鉄筋探査機を用いて立上り部24内の配筋を確認する。例えば、鉄筋探査機を立上り部24の長手方向に沿って動かしていく場合、鉄筋探査機は、主筋30、あばら筋32、補強筋40及び貫通孔穿設防止筋36の何れかを検知する。このうち、鉄筋探査機が主筋30を検知した場合、当該鉄筋探査機の検知結果は、鉄筋が立上り部24の長手方向に沿って配筋されていることを示す。また、鉄筋探査機があばら筋32を検知した場合、当該鉄筋探査機の検知結果は、立上り部24の長手方向に沿って一定の間隔で鉄筋が配筋されていることを示す。なお、補強筋40は、主筋30又はあばら筋32に沿って配筋されているので、鉄筋探査機が補強筋40を検知しても、当該鉄筋探査機の検知結果は、上記の何れかとなる。つまり、鉄筋探査機による検知結果が上記の何れとも異なる場合、当該鉄筋探査機が検知した鉄筋は、貫通孔穿設防止筋36であるということが分かる。これは、鉄筋探査機を立上り部24の高さ方向に沿って動かしていく場合も、主筋30とあばら筋32の位置関係が逆となるものの同様である。このため、鉄筋探査機によって立上り部24内の配筋を確認することによって、穿設禁止領域Sを判別することができ、ひいては穿設許容領域Tを判別することができる。そして、穿設許容領域Tすなわち貫通孔46の穿設箇所を確認した後に、ダイヤモンドカッタ等の工具を用いて、当該箇所に貫通孔46を穿設し、当該貫通孔46にスリーブ48を配置することで、立上り部24に配管を通すことが可能となる。
【0039】
このように、本実施形態では、外周基礎20の立上り部24において、側面視での外周が複数の主筋30と複数のあばら筋32とによって矩形状に形成されると共に貫通孔46の穿設が許容されない穿設禁止領域Sが設定されている。また、側面視での外周が複数の主筋30と複数のあばら筋32とによって矩形状に形成されると共に当該貫通孔46の穿設が許容される穿設許容領域Tとが設定されている。そして、貫通孔穿設防止筋36が、穿設禁止領域Sに鉄筋探査機によって当該穿設禁止領域Sか穿設許容領域Tかを判別可能に配置されている。このため、鉄筋探査機が貫通孔穿設防止筋36を検知することで、立上り部24における穿設禁止領域S及び穿設許容領域Tを判別することができる。その結果、貫通孔46を設けることが許容されない箇所と貫通孔46を設けることが許容される箇所とを容易に判別することができると共に、貫通孔46の穿設にかかるコストを低減することができる。
【0040】
また、本実施形態では、貫通孔穿設防止筋36は、鉄筋で構成されると共に穿設禁止領域Sにのみ配置される。これにより、貫通孔穿設防止筋36に用いる部材を作業現場で調達することができると共に、当該貫通孔穿設防止筋36の配置にかかる作業工数を低減することができ、その結果、当該貫通孔穿設防止筋36の配置にかかるコストを低減することができる。
【0041】
さらに、本実施形態では、貫通孔穿設防止筋36は、側面視で穿設禁止領域Sの対角線と重なるように配置されている。これにより、鉄筋探査機によって主筋30又はあばら筋32の何れか一方の延在方向に沿って検知すれば、穿設禁止領域Sを検知することができ、その結果、貫通孔46を設けることが許容されない箇所の判別作業の効率を向上させることができる。
【0042】
加えて、本実施形態では、穿設許容領域Tを形成する複数の主筋30又は複数のあばら筋32の何れか一方に沿って補強筋40が配置されている。これにより、穿設許容領域Tを補強することができるので、本実施形態では、貫通孔46を穿設し、当該貫通孔46にスリーブ48を配置するだけで、建物10に空調設備等を導入するための配管工事を行うことが可能となる。その結果、貫通孔46を設ける場合に、当該貫通孔46の周辺部の強度を担保することができると共に、当該貫通孔46の周辺部の補強にかかる時間を削減することができる。
【0043】
<第1実施形態の第1変形例>
次に、本発明の第1実施形態の第1変形例について説明する。
【0044】
本実施形態において、側面視で矩形枠34の対角線と重なるように貫通孔穿設防止筋36が1本配置されていたが、
図5に示されるように、側面視で当該矩形枠34の2本の対角線と重なるように貫通孔穿設防止筋36が配置されていてもよい。換言すれば、矩形枠34に2本の貫通孔穿設防止筋36がX字状に配置されていてもよい。
【0045】
このように配置された貫通孔穿設防止筋36では、鉄筋探査機が主筋30、あばら筋32及び補強筋40を検知したときの検知結果と、当該貫通孔穿設防止筋36を検知したときの検知結果との違いがより顕著なものとなる。このため、穿設禁止領域Sを検知する確度を向上させることができる。また、矩形枠34に配置される鉄筋が増えるので、立上り部24における穿設禁止領域Sひいては領域Kの強度を向上させることができる。
【0046】
<第1実施形態の第2変形例>
次に、本発明の第1実施形態の第2変形例について説明する。
【0047】
本実施形態において、貫通孔穿設防止筋36と補強筋40とが分割して配置されていたが、貫通孔穿設防止筋36は、補強筋40の穿設禁止領域S側に延長された部分によって構成されていてもよい。一例として、
図5に示されるように、建物上方側に配置された横補強筋42を延長し、延長された部分をのこぎり刃状に屈曲させることにより貫通孔穿設防止筋36として用いてもよい。
【0048】
このように構成された補強筋40では、当該補強筋40と貫通孔穿設防止筋36とを同一部材で構成することができ、その結果、補強筋40及び貫通孔穿設防止筋36の配置作業の効率を向上させることができる。
【0049】
<第2実施形態>
次に、本発明に係るコンクリート構造物の配筋構造が適用された第2実施形態の基礎の構造について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一の番号を付してその説明を省略する。
【0050】
図7に示されるように、この第2実施形態では、貫通孔穿設防止筋60が、主筋30に沿って配置されている点に特徴がある。
【0051】
具体的に説明すると、本実施形態における貫通孔穿設防止筋60は、矩形枠34における立上り部24の高さ方向中央部に主筋30の延在方向に沿って配置されると共に、その長さが領域Kの全域に亘るのに十分な長さに設定されている。この貫通孔穿設防止筋60は、あばら筋32の屋外側に当接状態とされると共に、当該あばら筋32に結束又は溶接等によって接合又は当該貫通孔穿設防止筋60の両端部に設けられた図示しないフック等によって矩形枠34に係止されることにより固定されている。
【0052】
次に、本実施形態の作用・効果について説明する。
【0053】
本実施形態では、貫通孔穿設防止筋60が、矩形枠34における立上り部24の高さ方向中央部に、主筋30の延在方向に沿って配置されている。このため、穿設禁止領域Sにおいて鉄筋探査機を立上り部24の高さ方向に沿って動かしていくと、当該鉄筋探査機の検知結果は、主筋30のみが配置されている箇所と比べて、短い間隔で鉄筋が配筋されていることを示す。従って、本実施形態でも、貫通孔穿設防止筋36が側面視で穿設禁止領域Sの対角線と重なるように配置されていることによる作用・効果を除き、前述した第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0054】
また、本実施形態では、貫通孔穿設防止筋60の延在方向が複数の主筋30の延在方向となり、当該貫通孔穿設防止筋60を複数の主筋30と併せて配置することができる。これにより、貫通孔穿設防止筋60の配置作業の効率を向上させることができる。
【0055】
<第3実施形態>
次に、本発明に係るコンクリート構造物の配筋構造が適用された第3実施形態の基礎の構造について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一の番号を付してその説明を省略する。
【0056】
図8に示されるように、この第3実施形態では、貫通孔穿設防止筋70が、あばら筋32に沿って配置されている点に特徴がある。
【0057】
具体的に説明すると、本実施形態における貫通孔穿設防止筋70は、矩形枠34における立上り部24の長手方向中央部にあばら筋32の延在方向に沿って配置されると共に、その長さが矩形枠34の立上り部24の高さ方向の長さと等しく設定されている。この貫通孔穿設防止筋70は、その両端部が矩形枠34に溶接等によって接合又は当該両端部に設けられた図示しないフック等によって矩形枠34に係止されることにより固定されている。
【0058】
次に、本実施形態の作用・効果について説明する。
【0059】
本実施形態では、貫通孔穿設防止筋70が、矩形枠34における立上り部24の長手方向中央部に、あばら筋32の延在方向に沿って配置されている。このため、穿設禁止領域Sにおいて鉄筋探査機を立上り部24の長手方向に沿って動かしていくと、当該鉄筋探査機の検知結果は、あばら筋32のみが配置されている箇所と比べて、短い間隔で鉄筋が配筋されていることを示す。従って、本実施形態でも、貫通孔穿設防止筋36が側面視で穿設禁止領域Sの対角線と重なるように配置されていることによる作用・効果を除き、前述した第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0060】
また、本実施形態では、貫通孔穿設防止筋70の延在方向が複数のあばら筋32の延在方向となり、当該貫通孔穿設防止筋70を複数のあばら筋32と併せて配置することができる。これにより、貫通孔穿設防止筋70の配置作業の効率を向上させることができる。
【0061】
<上記実施形態の補足説明>
(1) 上述した実施形態では、穿設禁止領域Sに貫通孔穿設防止筋が配置される構成とされているが、これに限らず、穿設許容領域Tに鉄製の部材が配置される構成としてもよい。一例として、
図9の変形例に示されるように、穿設禁止領域Sに貫通孔穿設防止筋を配置しないで、穿設許容領域Tに切削が容易な金網80を配置する構成としてもよい。このような構成であっても、鉄筋探査機によって金網80を検知することによって、穿設禁止領域Sか穿設許容領域Tかを判別し、当該穿設許容領域Tに貫通孔46を設けることができる。
【0062】
(2) また、上述した実施形態では、基礎16に本発明に係るコンクリート構造物の配筋構造を適用したが、これに限らず、鉄筋コンクリート造(RC造)の建物における梁や壁に本発明に係るコンクリート構造物の配筋構造を適用してもよい。
【0063】
(3) 更に補足すると、現在の本発明の範囲には含まれないが、穿設禁止領域S及び穿設許容領域Tに被検知部材を設ける構成であっても、鉄筋探査機の検知精度が高ければ、穿設禁止領域Sか穿設許容領域Tかを判別することができる。例えば、穿設禁止領域Sに配置される被検知部材と穿設許容領域Tに配置される被検知部材との形状やパターン等が異なっていれば、穿設禁止領域Sか穿設許容領域Tかを判別することが可能である。