特許第6367560号(P6367560)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367560
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】三次元造形装置および三次元造形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20180723BHJP
   B29C 64/135 20170101ALI20180723BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20180723BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20180723BHJP
【FI】
   B29C64/393
   B29C64/135
   B33Y50/02
   B33Y10/00
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-7711(P2014-7711)
(22)【出願日】2014年1月20日
(65)【公開番号】特開2015-136795(P2015-136795A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087000
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】小林 光一
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/103942(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/066852(WO,A1)
【文献】 特開2002−015305(JP,A)
【文献】 特開2012−111226(JP,A)
【文献】 特開2006−111013(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/087823(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00 − 64/40
G06F 17/50
B33Y 10/00
B33Y 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作製する三次元造形物の形状を表す三次元モデルのデータたる三次元データから、断面画像データを作成し、作成した断面画像データに基づいて、三次元造形物を作製する三次元造形装置において、
前記三次元データから所定の方向に連続する複数の層に分割した断面形状により三次元モデルを表すデータたる第1の断面画像データと、前記三次元データから前記所定の方向に連続する複数の層に分割した断面形状によりサポート部材が形成された三次元モデルを表すデータたる第2の断面画像データを作成する断面画像データ作成手段と、
各層の第1の断面画像データから第1の二次元座標データを取得するとともに、各層の第2の断面画像データから第2の二次元座標データを取得する取得手段と、
前記第1の二次元座標データを三角分割法を用いて三角形で構成される第3の二次元座標データに変換するとともに、前記第2の二次元座標データを三角分割法を用いて三角形で構成される第4の二次元座標データに変換する変換手段と、
前記第3の二次元座標データに高さ情報を付加して第1の三次元座標データを作成するとともに、前記第4の二次元座標データに高さ情報を付加して第2の三次元座標データを作成する第1の作成手段と、
前記第1の三次元座標データに厚みを表現する三次元モデルデータを生成して、各層の第1の層画像データを作成するとともに、前記第2の三次元座標データに厚みを表現する三次元モデルデータを生成して、各層の第2の層画像データを作成する第2の作成手段と、
各層の前記第1の層画像データから、実際に作製した際のサポート部材無しの三次元造形物を三次元で表す画像のデータたるサポート部材無し造形画像データを生成するとともに、各層の前記第2の層画像データから、実際に作製した際のサポート部材有りの三次元造形物を三次元で表す画像のデータたるサポート部材有り造形画像データを生成する生成手段と、
前記サポート部材無し造形画像データに基づいて実際に作製した際のサポート部材無しの三次元造形物を三次元で表す画像たる造形画像と、前記サポート部材有り造形画像データに基づいて実際に作製した際のサポート部材有りの三次元造形物を三次元で表す画像たる造形画像とを選択的に表示する表示手段と
を有することを特徴とする三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形装置において、
前記生成手段では、実際に作製した際の三次元造形物の全体を三次元で表す画像のデータたる第1の造形画像データと、実際に作製した際の三次元造形物の特定の1層を三次元で表す画像のデータたる第2の造形画像データと、実際に作製した際の三次元造形物の連続する複数の層を三次元で表す画像のデータたる第3の造形画像データとの少なくともいずれか1つを生成する
ことを特徴とする三次元造形装置。
【請求項3】
請求項1またはのいずれか1項に記載の三次元造形装置において、
前記表示手段は、前記生成手段により生成された造形画像データに基づく造形画像と、前記三次元データに基づく三次元モデルとを選択的に表示する
ことを特徴とする三次元造形装置。
【請求項4】
三次元造形装置により三次元造形物を作製する三次元造形方法において、
作製する三次元造形物の形状を表す三次元モデルのデータたる三次元データから、所定の方向に連続する複数の層に分割した断面形状により三次元モデルを表すデータ第1の断面画像データと、前記三次元データから、前記所定の方向に連続する複数の層に分割した断面形状によりサポート部材が形成された三次元モデルを表すデータたる第2の断面画像データとを作成する第1の工程と、
各層の第1の断面画像データから第1の二次元座標データを取得するとともに、各層の第2の断面画像データから第2の二次元座標データを取得する第2の工程と、
第1の二次元座標データを三角分割法を用いて三角形で構成される第3の二次元座標データに変換するとともに、前記第2の二次元座標データを三角分割法を用いて三角形で構成される第4の二次元座標データに変換する第3の工程と、
前記第3の二次元座標データに高さ情報を付加して第1の三次元座標データを作成するとともに、前記第4の二次元座標データに高さ情報を付加して第2の三次元座標データを作成する第4の工程と、
前記第1の三次元座標データに厚みを表現する三次元モデルデータを生成して、各層の第1の層画像データを作成するとともに、前記第2の三次元座標データに厚みを表現する三次元モデルデータを生成して、各層の第2の層画像データを作成する第5の工程と、
各層の第1の層画像データから、実際に作製した際のサポート部材無しの三次元造形物を三次元で表す画像のデータたるサポート部材無し造形画像データを生成するとともに、各層の前記第2の層画像データから、実際に作製した際のサポート部材有りの三次元造形物を三次元で表す画像のデータたるサポート部材有りの造形画像データを生成する第6の工程と、
前記サポート部材無し造形画像データに基づいて実際に作製した際のサポート部材無しの三次元造形物を三次元で表す画像たる造形画像と、前記サポート部材有り造形画像データに基づいて実際に作製した際のサポート部材有りの三次元造形物を三次元で表す画像たる造形画像とを選択的に表示する第7の工程と
を前記三次元造形装置が実行する
ことを特徴とする三次元造形方法。
【請求項5】
請求項に記載の三次元造形方法において、
前記第6の工程では、実際に作製した際の三次元造形物の全体を三次元で表す画像のデータたる第1の造形画像データと、実際に作製した際の三次元造形物の特定の1層を三次元で表す画像のデータたる第2の造形画像データと、実際に作製した際の三次元造形物の連続する複数の層を三次元で表す画像のデータたる第3の造形画像データとの少なくともいずれか1つを生成する
ことを特徴とする三次元造形方法。
【請求項6】
請求項またはのいずれか1項に記載の三次元造形方法において、
前記第7の工程では、生成された造形画像データに基づく造形画像と、前記三次元データに基づく三次元モデルとを選択的に表示する
ことを特徴とする三次元造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形装置および三次元造形方法に関し、さらに詳細には、光を照射すると硬化する光硬化性樹脂を用いて三次元造形物を作製する三次元造形装置および三次元造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、作製する三次元造形物の形状を表す三次元データに基づいて、ヘッドから光硬化性樹脂を吐出して硬化することにより三次元造形物を作製する技術としては、例えば、特許文献1に開示された技術が知られている。
【0003】
即ち、この特許文献1に開示された技術では、XYZ直交座標系におけるX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向の三軸方向に移動自在に配設された吐出ノズルから、断面画像データに基づいて液糊状の光硬化性樹脂を吐出するとともに、吐出した光硬化性樹脂に光を照射することにより当該光硬化性樹脂を硬化して硬化層を形成する。そして、こうした断面画像データに基づく硬化層を積み重ねて三次元造形物を作製するようにしている。
【0004】
ところで、こうした技術において用いられる断面画像データは、作製する三次元造形物の形状を表す三次元モデルのデータたる三次元データを、Z軸方向において所定の間隔ごとに、XY平面で分割したときの断面形状を表すデータとなっている。つまり、断面画像データは、三次元データを水平方向に分割して複数の層に分けた断面形状となっており、1つの三次元データから複数の断面画像データが作成されることとなる。
【0005】
具体的には、まず、作製する三次元造形物の形状を表す三次元モデルのデータたる三次元データに基づいて、演算処理により三次元モデルの形状を正確に作製するためのサポート部材が形成された三次元データを作成する(図6を参照する。)。
【0006】
そして、こうして作成されたサポート部材が形成された三次元データの断面画像を作成する。即ち、サポート部材が形成された三次元データを、Z軸方向の所定の間隔おきにXY平面により切断したときの断面図を表す複数の断面画像データを作成する。
【0007】
しかしながら、三次元造形物の形状が複雑になると、この三次元造形物を表す三次元モデルの形状が複雑になり、演算誤差や演算ミスなどにより、サポート形状が形成された三次元モデルの断面画像データにおいて、三次元モデルの断面の一部に欠落が生じる「抜け」などの不具合が生じてしまっていた。
【0008】
こうした断面画像データに不具合が生じた場合には、三次元造形物を作製する前に作業者が確認する方法はなく、実際に三次元造形物を作製する際に、失敗した三次元造形物を確認して、断面画像データに不具合が生じていることを認識するものであった。
【0009】
したがって、不具合が生じた断面画像データは、実際に三次元造形物を作製しながら修正することとなっていた。
【0010】
また、三次元造形装置では、実際に三次元造形物を作製するまで、作製される三次元造形物の表面状態(つまり、隣り合う硬化層により形成される段差の大きさに起因する滑らかさである。)がどの程度の滑らかさであるのかがわからず、実際に作製した三次元造形物の表面状態が、作業者がイメージしていた三次元造形物の表面状態よりも劣ってしまう場合があった。
【0011】
なお、三次元造形物の表面状態は、例えば、断面画像データを作成する際のZ軸方向の所定の間隔に相当する層ピッチを小さくすることで、より良好な表面状態、つまり、より滑らかな表面状態とすることができるが、この場合、三次元造形物の作製に時間を要することとなっていた。
【0012】
したがって、こうした手法では、層ピッチを適当な大きさに決定することが難しく、必要以上の表面状態の三次元造形物を、時間をかけて作製されることとなる場合があった。
【0013】
このため、断面画像データに基づいて、実際に作製される三次元造形物の形状を表す画像を、作業者が事前に確認することができれば、当該画像を確認しながら、表面状態を決める層ピッチの調整や、不具合の生じた断面画像データの修正などをすることができ、所望の三次元造形物を容易に取得となることが期待できる。
【0014】
こうしたことから、断面画像データに基づいて、実際に作製される三次元造形物の形状を表す画像を作成するとともに、作成した画像を表示して、作業者が、実際に三次元造形物を作製する前に、実際に作製された状態の三次元造形物を確認することができるようにした三次元造形装置および三次元造形方法の提案が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特公平6−98689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、従来の技術の有する上記したような要望に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、実際に作製される三次元造形物の形状を表す画像を作成し、作成した画像を表示するようにした三次元造形装置および三次元造形方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明による三次元造形装置は、作製する三次元造形物の形状を表す三次元モデルのデータたる三次元データから、断面画像データを作成し、作成した断面画像データに基づいて、三次元造形物を作製する三次元造形装置において、上記三次元データから所定の方向に連続する複数の層に分割した断面形状により三次元モデルを表すデータたる第1の断面画像データと、上記三次元データから上記所定の方向に連続する複数の層に分割した断面形状によりサポート部材が形成された三次元モデルを表すデータたる第2の断面画像データを作成する断面画像データ作成手段と、各層の第1の断面画像データから第1の二次元座標データを取得するとともに、各層の第2の断面画像データから第2の二次元座標データを取得する取得手段と、上記第1の二次元座標データを三角分割法を用いて三角形で構成される第3の二次元座標データに変換するとともに、上記第2の二次元座標データを三角分割法を用いて三角形で構成される第4の二次元座標データに変換する変換手段と、上記第3の二次元座標データに高さ情報を付加して第1の三次元座標データを作成するとともに、上記第4の二次元座標データに高さ情報を付加して第2の三次元座標データを作成する第1の作成手段と、上記第1の三次元座標データに厚みを表現する三次元モデルデータを生成して、各層の第1の層画像データを作成するとともに、上記第2の三次元座標データに厚みを表現する三次元モデルデータを生成して、各層の第2の層画像データを作成する第2の作成手段と、各層の上記第1の層画像データから、実際に作製した際のサポート部材無しの三次元造形物を三次元で表す画像のデータたるサポート部材無し造形画像データを生成するとともに、各層の上記第2の層画像データから、実際に作製した際のサポート部材有りの三次元造形物を三次元で表す画像のデータたるサポート部材有り造形画像データを生成する生成手段と、上記サポート部材無し造形画像データに基づいて実際に作製した際のサポート部材無しの三次元造形物を三次元で表す画像たる造形画像と、上記サポート部材有り造形画像データに基づいて実際に作製した際のサポート部材有りの三次元造形物を三次元で表す画像たる造形画像とを選択的に表示する表示手段とを有するようにしたものである。
【0019】
また、本発明による三次元造形装置は、上記した三次元造形装置において、上記生成手段では、実際に作製した際の三次元造形物の全体を三次元で表す画像のデータたる第1の造形画像データと、実際に作製した際の三次元造形物の特定の1層を三次元で表す画像のデータたる第2の造形画像データと、実際に作製した際の三次元造形物の連続する複数の層を三次元で表す画像のデータたる第3の造形画像データとの少なくともいずれか1つを生成するようにしたものである。
【0020】
また、本発明による三次元造形装置は、上記した三次元造形装置において、上記表示手段は、上記生成手段により生成された造形画像データに基づく造形画像と、上記三次元データに基づく三次元モデルとを選択的に表示するようにしたものである。
【0022】
また、本発明による三次元造形方法は、三次元造形装置により三次元造形物を作製する三次元造形方法において、作製する三次元造形物の形状を表す三次元モデルのデータたる三次元データから、所定の方向に連続する複数の層に分割した断面形状により三次元モデルを表すデータ第1の断面画像データと、上記三次元データから、上記所定の方向に連続する複数の層に分割した断面形状によりサポート部材が形成された三次元モデルを表すデータたる第2の断面画像データとを作成する第1の工程と、各層の第1の断面画像データから第1の二次元座標データを取得するとともに、各層の第2の断面画像データから第2の二次元座標データを取得する第2の工程と、第1の二次元座標データを三角分割法を用いて三角形で構成される第3の二次元座標データに変換するとともに、上記第2の二次元座標データを三角分割法を用いて三角形で構成される第4の二次元座標データに変換する第3の工程と、上記第3の二次元座標データに高さ情報を付加して第1の三次元座標データを作成するとともに、上記第4の二次元座標データに高さ情報を付加して第2の三次元座標データを作成する第4の工程と、上記第1の三次元座標データに厚みを表現する三次元モデルデータを生成して、各層の第1の層画像データを作成するとともに、上記第2の三次元座標データに厚みを表現する三次元モデルデータを生成して、各層の第2の層画像データを作成する第5の工程と、各層の第1の層画像データから、実際に作製した際のサポート部材無しの三次元造形物を三次元で表す画像のデータたるサポート部材無し造形画像データを生成するとともに、各層の上記第2の層画像データから、実際に作製した際のサポート部材有りの三次元造形物を三次元で表す画像のデータたるサポート部材有り造形画像データを生成する第6の工程と、上記サポート部材無し造形画像データに基づいて実際に作製した際のサポート部材無しの三次元造形物を三次元で表す画像たる造形画像と、上記サポート部材有り造形画像データに基づいて実際に作製した際のサポート部材有りの三次元造形物を三次元で表す画像たる造形画像とを選択的に表示する第7の工程とを上記三次元造形装置が実行するようにしたものである。
【0023】
また、本発明による三次元造形方法は、上記した三次元造形方法において、上記第6の工程では、実際に作製した際の三次元造形物の全体を三次元で表す画像のデータたる第1の造形画像データと、実際に作製した際の三次元造形物の特定の1層を三次元で表す画像のデータたる第2の造形画像データと、実際に作製した際の三次元造形物の連続する複数の層を三次元で表す画像のデータたる第3の造形画像データとの少なくともいずれか1つを生成するようにしたものである。
【0024】
また、本発明による三次元造形方法は、上記した三次元造形方法において、上記第7の工程では、生成された造形画像データに基づく造形画像と、上記三次元データに基づく三次元モデルとを選択的に表示するようにしたものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、以上説明したように構成されているので、実際に作製される三次元造形物の状態を表す画像を作成し、その画像を表示することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明による三次元造形装置の概略構成斜視説明図である。
図2図2は、マイクロコンピューターの機能的構成を示すブロック構成図である。
図3図3は、画像データ作成処理の処理ルーチンを示すフローチャートである。
図4図4(a)(b)は、表示部に表示された三次元モデルの一例を示す説明図である。
図5図5(a)(b)は、表示部に表示された三次元造形物の全体の形状を表す造形画像の一例を示す説明図である。
図6図6は、サポート部材が形成された三次元データの一部を示す説明図である。
図7図7(a)は、表示部に表示された三次元造形物における第n層(最終層)のみの形状を表す造形画像の一例を示す説明図であり、また、図7(b)は、表示部に表示された三次元造形物における第n−9層から第n層(最終層)までの形状を表す造形画像の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による三次元造形装置および三次元造形方法の実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
【0028】
図1には、本発明による三次元造形装置の実施の形態の一例の概略構成斜視説明図が示されている。
【0029】
この図1に示す三次元造形装置10は、筐体12内部に、光硬化性樹脂を吐出するとともに吐出した光硬化性樹脂を硬化する吐出ヘッド14と、上面16aにおいて吐出ヘッド14から吐出される光硬化性樹脂により三次元造形物が作製されるテーブル16とが配設されている。
【0030】
なお、この三次元造形装置10の全体の動作は、マイクロコンピューター50により制御されており、このマイクロコンピューター50は、作製する三次元造形物の形状を表す三次元モデルのデータたる三次元データが入力され、この三次元データに基づいて三次元造形の作製時に必要となる断面画像データを作成する。
【0031】
また、マイクロコンピューター50は、作成された断面画像データに基づいて、実際に作製したときの三次元造形物を三次元で表す画像(以下、「断面画像データに基づいて、実際に作製したときに三次元造形物を三次元で表す画像」を、「造形画像」と適宜に称する。)のデータ(以下、「造形画像のデータ」を、「造形画像データ」と称する。)を作成し、作成した造形画像データを表示部58(後述する。)に表示する。
【0032】
そして、作業者により三次元造形物の作製が指示されると、マイクロコンピューター50によって、この断面画像データに基づいて各構成部材の動作が制御され、この断面画像データに基づいて形成し硬化した硬化層を積層して、所望の三次元造形物を作製することとなる。
【0033】
より詳細には、筐体12は、上方側から前方側に渡って開口部18が形成されており、この開口部18は透明なカバー部材20により覆われている。
【0034】
カバー部材20は、開閉自在に配設されており、カバー部材20を開くことにより、筐体12内部の空間が筐体12外部の空間と連通して開状態となり、カバー部材20を閉めることにより、筐体12内部の空間が筐体12外部の空間と遮断されて閉状態となる。
【0035】
そして、カバー部材20を開状態として、テーブル16の上面16aにおいて作製された三次元造形物の取り出しなどが行われ、カバー部材20を閉状態として、吐出ヘッド14による三次元造形物の作製が行われる。
【0036】
吐出ヘッド14は、筐体12内部において、側方部材12−1、12−2を連結するように配設された一対のガイドレール22に移動自在に配設された移動部材24の前面24aにおいてXYZ直交座標系におけるZ軸方向に移動自在に配設されている。
【0037】
即ち、吐出ヘッド14は、移動部材24の前面24aにおいてZ軸方向に延設されたガイドレール(図示せず。)に移動自在に配設され、マイクロコンピューター50の制御により、吐出ヘッド14に設けられたモーター(図示せず。)が駆動して吐出ヘッド14を当該ガイドレールに沿ってZ軸方向において上方側および下方側に移動することとなる。
【0038】
移動部材24は、側方部材12−1、12−2を連結するようにX軸方向に延設された一対のガイドレール22に移動自在に配設されており、マイクロコンピューター50の制御により移動部材24に設けられたモーター(図示せず。)が駆動して、X軸方向において左方側および右方側に移動する。
【0039】
したがって、移動部材24に配設された吐出ヘッド14は、移動部材24を介してX軸方向にも移動可能となっている。
【0040】
また、吐出ヘッド14は、後方部材12−4内に設けられたタンク(図示せず。)からチューブ28を介して光硬化性樹脂が供給され、供給された光硬化性樹脂を下面14aに設けられたノズルヘッド14−1から吐出する。
【0041】
さらに、吐出ヘッド14は、下面14aにおいて、ノズルヘッド14−1から吐出された光硬化性樹脂に対して光を照射して硬化する光照射ヘッド14−2が設けられている。
【0042】
したがって、吐出ヘッド14のノズルヘッド14−1から吐出された光硬化性樹脂には、吐出後直ちに光照射ヘッド14−2から光が照射されて硬化されることとなる。
【0043】
つまり、この吐出ヘッド14は、マイクロコンピューター50の制御により、断面画像データに基づいて、X軸方向およびZ軸方向に移動しながら、ノズルヘッド14−1から光硬化性樹脂を吐出するとともに、光照射ヘッド14−2によりノズルヘッド14−1から吐出された光硬化性樹脂に対して光を照射して硬化するようになされている。
【0044】
テーブル16は、筐体12の底面部材12−3においてY軸方向に延長して設けられた一対のガイドレール26上に移動自在に設けられている。
【0045】
また、テーブル16には、モーター(図示せず。)が設けられており、このモーターがマイクロコンピューター50により制御されて駆動することによって、テーブル16を一対のガイドレール26に沿ってY軸方向において前方側および後方側に移動することとなる。
【0046】
また、マイクロコンピューター50は、三次元造形装置10の全体の動作を制御するとともに、三次元造形物の作製時に必要となる断面画像データと、実際に作製したときの三次元造形物を表す造形画像データとを作成する。
【0047】
ここで、図2を参照しながら、マイクロコンピューター50の機能的構成について説明する。
【0048】
即ち、マイクロコンピューター50は、三次元造形装置10の全体の動作を制御する制御部52と、三次元造形物の作製時に必要となる断面画像データを作成する断面画像データ作成部54と、断面画像データ作成部54で作成された断面画像データに基づいて、造形画像データを作成する造形画像データ作成部56と、断面画像データや造形画像データなどを表示する表示部58と、断面画像データ、造形画像データを含む各種データを記憶する記憶部60とを有して構成されている。
【0049】
より詳細には、制御部52は、例えば、モーター(図示せず。)を駆動して、移動部材24のX軸方向の移動、吐出ヘッド14のZ軸方向に移動、テーブル16のY軸方向の移動を含む、各構成部材の動作を制御する。
【0050】
断面画像データ作成部54は、作製する三次元造形物の形状を表す三次元モデルのデータたる三次元データに基づいて、演算処理によりサポート部材が形成された三次元データを作成する。なお、このサポート部材とは、三次元造形装置10において三次元モデルの形状を正確に作成するための部材である。
【0051】
そして、こうして作成されたサポート部材が形成された三次元データから断面画像データを作成する。
【0052】
即ち、サポート部材が形成された三次元データを、Z軸方向において所定の間隔ごとにXY平面で分割して、Z軸方向で連続する複数の断面形状により三次元モデルを表すデータたる断面画像データを作成する。
【0053】
つまり、この断面画像データ作成部54は、従来より公知の技術によって、サポート部材が形成された三次元データの断面画像データを作成するようになされている。
【0054】
なお、Z軸方向においてXY平面で分割する所定の間隔については、隣り合う断面形状の間隔を表す層ピッチ(例えば、0.1〜0.15mmである。)として作業者により設定される。
【0055】
また、この断面画像データには、例えば、断面形状を取得したZ軸座標の小さいものから順番に層番号が付される。
【0056】
即ち、Z軸の座標値が0、Z、Z、Z、・・・、Zn−1(nは正の整数である。)において断面形状を取得した場合には、座標値が「0」における断面画像を第1層とし、座標値が「Z」における断面画像を第2層とし、座標値が「Z」における断面画像を第3層とし、座標値が「Z」における断面画像を第4層とする。また、座標値が「Zn−1」における断面画像を第n層(最終層)とする。
【0057】
また、造形画像データ作成部56は、断面画像データから二次元座標データ取得する二次元座標データ取得部62と、二次元座標データを三角分割法を用いて三角形で構成される二次元座標データに変換する二次元座標データ変換部64と、変換された二次元座標データに高さ情報を付加し、三次元座標データを作成する三次元座標データ作成部66と、三次元座標データに厚みを表現する三次元モデルデータを生成して、実際に光硬化性樹脂により形成される所定の層の画像たる層画像データを作成する層画像データ作成部68と、作成された層画像データを積層して造形画像データを生成する造形画像データ生成部70とを有して構成されている。
【0058】
より詳細には、二次元座標データ取得部62は、所定の層の断面画像データから当該所定の層の二次元座標データを取得する。
【0059】
二次元座標データ変換部64は、二次元座標データ取得部62で取得した所定の層の二次元座標データを、三角分割法を用いて三角形で構成される二次元座標データに変換する。
【0060】
三次元座標データ作成部66は、二次元座標データ変換部64で変換した所定の層の二次元座標データに高さ情報を付加して三次元座標データを作成する。つまり、三次元座標データ作成部66で作成される三次元座標データは、高さ情報が示す高さにおける二次元データとなっている。
【0061】
層画像データ作成部68は、三次元座標データ作成部66で作成された三次元座標データに、厚みを表現する三次元モデルデータを生成する。つまり、この層画像データ作成部68では、高さ情報が示す高さにおける所定の層の二次元データに厚みを表現する三次元モデルデータを生成することによって、所定の層の層画像データを作成することとなる。
【0062】
なお、層画像データ作成部68で生成される三次元モデルデータの厚みは、第i層(iは正の整数である。)の断面画像データから造形画像データを作成する場合には、「i」に層ピッチを積算した値となる。
【0063】
また、層画像データ作成部68において作成される層画像データには、断面画像データの層番号と同じ層番号が付される。
【0064】
つまり、第i層における三次元座標データに三次元モデルデータを生成して層画像データを作成した場合には、この層画像データには第i層の層番号が付されることとなる。
【0065】
造形画像データ生成部70は、作業者からの指示に基づいて表示部58に造形画像を表示するための造形画像データを生成する。
【0066】
具体的には、例えば、作業者から、単に、表示部58に造形画像の表示の指示がなされると、造形画像データ生成部70においては、第1層から最終層まで順番に層画像データを積層して造形画像データを作成し、この造形画像データを表示部58に出力して、作製する三次元造形物の全体の形状を表す造形画像を表示する。
【0067】
また、例えば、作業者から、特定の1つの層の造形画像の表示の指示がなされると、造形画像データ生成部70においては、作業者が指定した層の層画像データを造形画像データとし、この造形画像データを表示部58に出力して、作製する三次元造形物における特定の1つの層の形状を表す造形画像を表示する。
【0068】
さらに、例えば、作業者から連続する複数の層で構成される造形画像の表示がなされると、造形画像データ生成部70においては、作業者が指定した連続する複数の層の層画像データを順番に積層して造形画像データを生成し、この造形画像データを表示部58に出力して、作製する三次元造形物における複数の層により形成される造形画像を表示する。
【0069】
また、表示部58は、三次元データに基づく三次元造形物の形状を表す画像、造形画像データに基づく三次元造形物の形状を表す画像などを表示するとともに、操作子(図示せず。)を介した作業者からの入力情報に基づいて表示内容を変更する。
【0070】
記憶部60は、作製する三次元造形物の形状を表す三次元モデルのデータたる三次元データ、断面画像データ作成部54で作成された断面画像データ、造形画像データ作成部56で作成された層画像データ、造形画像データを含む各種情報を記憶する。
【0071】
以上の構成において、三次元造形装置10により三次元造形物を作製する場合には、まず、作業者により、作製したい三次元造形物の形状を表す三次元モデルのデータたる三次元データをマイクロコンピューター50に入力し、操作子(図示せず。)などの操作により、断面画像データの作成が指示されると、マイクロコンピューター50において、画像データ作成処理が開始される。
【0072】
ここで、図3のフローチャートには、画像データ作成処理の詳細な処理内容が示されており、この画像データ作成処理においては、まず、入力された三次元造形物の形状を表す三次元モデルのデータたる三次元データから、サポート部材が形成された三次元モデルの断面画像データを作成する(ステップS302)。
【0073】
即ち、このステップS302の処理においては、まず、断面画像データ作成部54において、入力された三次元データに基づいて演算処理により、サポート部材が形成された三次元モデルのデータたる三次元データを作成する。
【0074】
その後、作成されたサポート部材が形成された三次元モデルのデータたる三次元データをZ軸方向において所定の間隔(つまり、層ピッチとして設定した値である)ごとにXY平面で分割して、Z軸方向で連続する複数の断面形状によりサポート部材が形成された三次元モデルを表すデータたる断面画像データを作成する。
【0075】
このとき、Z軸座標の小さいものから順に層番号が付される。
【0076】
即ち、Z軸の座標値が、0、Z、Z、・・・、Zi−1、・・・、Zn−1(i<nであり、i、nは正の整数である。)において断面形状を取得し、座標値が「0」における断面画像を第1層とし、座標値が「Z」における断面画像を第2層とし、座標値が「Z」における断面画像を第3層とする。また、座標値が「Zi−1」における断面画像を第i層とし、座標値が「Zn−1」における断面画像を第n層(最終層)とする。
【0077】
なお、こうして作成された断面画像データは、記憶部60に出力されて記憶される。
【0078】
断面画像データを作成すると、次に、断面画像データの層番号を表す「i」を「1」と設定し(ステップS304)、第i層の断面画像データから二次元座標データを取得する(ステップS306)。
【0079】
即ち、ステップS304の処理においては、二次元座標データ作成部62において、断面画像データの層番号を表す「i」を「1」と設定する。
【0080】
また、ステップS306の処理においては、二次元座標データ作成部62において、第i層の断面画像データから第i層の二次元座標データを取得する。
【0081】
第i層の二次元座標データを取得すると、取得した二次元座標データを三角分割法を用いて三角形で構成される二次元座標データに変換する(ステップS308)。
【0082】
即ち、ステップS308の処理においては、二次元座標データ変換部64において、第i層の二次元座標データを三角分割法により変換することとなる。
【0083】
次に、ステップS308の処理により変換した第i層の二次元座標データに、高さ情報を付加して三次元座標データを作成する(ステップS310)。
【0084】
即ち、ステップS310の処理においては、三次元座標データ作成部66において、ステップS308の処理により変換した第i層の二次元座標データに「i×層ピッチ」で表される高さ情報を付加して第i層の三次元座標データを作成する。
【0085】
その後、第i層の三次元座標データに厚みを表現する三次元モデルデータを生成して、第i層の層画像データを作成する(ステップS312)。
【0086】
即ち、ステップS312の処理においては、層画像データ作成部68において、第i層の三次元座標データに三次元モデルデータを生成して、第i層の層画像データを作成し、作成した第i層の層画像データを記憶部60出力し、記憶する。
【0087】
第i層の層画像データが作成されると、層画像データ作成部68において、第i層が最終層であるか否かを判断する(ステップS314)。
【0088】
このステップS314の判断処理において、第i層が最終層ではないと判断されると、「i」の値を「+1」し(ステップS316)、ステップS306の処理に進む、ステップS306の処理以降の処理を行う。
【0089】
即ち、ステップS316の処理では、ステップS306の処理で次の層の二次元座標データを取得するように設定される。
【0090】
また、ステップS314の判断処理において、第i層が最終層であると判断されると、この画像データ作成処理を終了する。
【0091】
こうして、画像データ作成処理によって、第1層から第n層(最終層)までの断面画像データおよび層画像データが作成されることとなる。
【0092】
その後、作業者により操作子(図示せず。)が操作されて、作製する三次元造形物の形状を表す三次元モデルの表示の指示がなされると、表示部58において三次元データに基づいて三次元モデルを表示し(図4(a)(b)を参照する。)、断面画像データに基づいて実際に作製したときの三次元造形物を三次元で表す画像たる造形画像の表示の指示がなされると、造形画像データ作成部70において造形画像データが作成され、表示部58において造形画像データに基づいて造形画像を表示する(図5(a)(b)、図7(a)(b)を参照する。)。
【0093】
そして、作業者は、この造形画像から、断面画像データに基づいて実際に作製される三次元造形物の表面状態や形状などを確認することとなる。
【0094】
なお、造形画像を表示部58に表示する際には、作業者の指示に基づいて造形画像データ作成部70において造形画像データが作成され、実際に作製される三次元造形物の全体の形状と、実際に作製される三次元造形物における特定の層の形状と、実際に作製される三次元造形物における連続する複数の層の形状とを造形画像として表示することができる。
【0095】
即ち、作業者が層番号を指定することなく造形画像の表示を指示した場合には、造形画像データ作成部70において、第1層から最終層までの層画像データを順番に積層して造形画像データを作成し、この造形画像データに基づいて、実際に作製される三次元造形物全体の形状の造形画像を表示部58に表示する(図5(a)(b)を参照する。)。
【0096】
また、作業者が特定の層番号を1つだけ指定して造形画像の表示を指示した場合には、造形画像データ作成部70において、指定された特定の層番号の層データのみを造形画像データとし、この造形画像データに基づいて、実際に作製される三次元造形物における特定の1つの層の形状の造形画像を表示部58に表示する(図7(a)を参照する。)。
【0097】
さらに、作業者が連続する複数の層を指定して造形画像の表示を指示した場合には、造形画像データ作成部70において、指定された連続する複数の層番号の層データを順番に積層して造形画像データとし、この造形画像データに基づいて、実際に作製される三次元造形物における連続する複数の層により形成される造形画像を表示部58に表示する(図7(b)を参照する。)。
【0098】
このようにして、三次元造形装置10においては、造形画像を表示部58に表示することが可能であるため、例えば、断面画像データに不具合が生じている場合には、表示部58に表示された造形画像に不具合が生じることとなり、作業者は、この造形画像を確認することにより、断面画像データに不具合が生じていることを、実際に三次元造形物を作製する前に確認することができることとなる。
【0099】
即ち、表示部58に表示された造形画像を確認して、表面状態が作業者のイメージより滑らかでないと判断した場合には、層ピッチの値を小さく設定して再度画像データ作成処理を行い、断面画像データおよび層画像データを作成する。また、表面状態がもっと粗くてもかまわないと判断した場合には、層ピッチの値を大きく設定して再度画像データ作成処理を行い、断面画像データおよび層画像データを作成する。
【0100】
さらに、造形画像において、三次元造形物の形状に不具合が生じている場合には、不具合が生じている部分のみを指定、つまり、不具合が生じている層番号を指定して、表示部58に表示させることにより、作業者は、不具合が生じている造形画像のどこに問題があるのかを確認し、確認した内容に基づいて、断面画像データを修正することができるようになる。
【0101】
こうして、造形画像データを確認し、修正するなどして断面画像データを作成した後に、作業者により操作子(図示せず。)が操作されて三次元造形物の作製の開始が指示されると、記憶部60に記憶された断面画像データに基づいて、テーブル16をY方向で移動するとともに、移動部材24をX軸方向で移動し、さらに吐出ヘッド14をZ軸方向で移動しながら、吐出ヘッド14から光硬化性樹脂を吐出して、テーブル16の上面16aに三次元造形物を作製する。
【0102】
以上において説明したように、本発明による三次元造形装置10は、作成した断面画像データに基づいて、実際に作製したときの三次元造形物の形状を三次元で表す画像たる造形画像データを作成し、作業者は、実際に三次元造形物を作製する前に、表示部58において造形画像データに基づく造形画像を確認することができるようにした。
【0103】
これにより、本発明による三次元造形装置10においては、実際に三次元造形物を作製する前に、断面画像データの不具合や三次元造形物の表面状態などを確認することができることとなる。
【0104】
このため、本発明による三次元造形装置10によれば、三次元造形物を作製する際の失敗が著しく減少し、効率よく三次元造形物を作製することができるようになるとともに、作業者のイメージに合った表面状態で三次元造形物を作製することができるようになる。
【0105】
なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(7)に示すように変形するようにしてもよい。
【0106】
(1)上記した実施の形態においては、移動部材24をX軸方向に移動するようにし、テーブル16をY軸方向に移動するようにし、吐出ヘッド14をZ軸方向に移動するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、テーブル16と吐出ヘッド14との相対的な位置関係が三次元で変化するような構成であればよく、移動部材24、テーブル16および吐出ヘッド14のいずれかが固定されるようにしてもよい。
【0107】
(2)上記した実施の形態においては、マイクロコンピューター50に作製する三次元造形物の形状を表す三次元モデルの三次元データを入力して、断面画像データ、層画像データおよび造形画像データを作成するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0108】
即ち、別途用意されたパーソナルコンピューターにおいて、断面画像データ、層画像データおよび造形画像データを作成し、当該パーソナルコンピューターをマイクロコンピューター50と接続して、当該パーソナルコンピューターで作成した断面画像データ、層画像データおよび造形画像データをマイクロコンピューター50に出力するようにしてもよい。
【0109】
(3)上記した実施の形態においては、吐出ヘッド14とテーブル16との相対的な位置関係が三次元で変化し、吐出ヘッド14から吐出された光硬化性樹脂によりテーブル16の上面16aに三次元造形物を作製する三次元造形装置10において、断面画像データ、層画像データおよび造形画像データを作成するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0110】
即ち、液体状の光硬化性樹脂が貯留された容器の底面からプロジェクタにより所定の画像を照射し、当該容器内に配置された保持板の下面に所定の液層厚さ分だけ光硬化性樹脂を硬化させて硬化層を作製し、この硬化層を積層させて三次元造形物を作製する、所謂、吊り上げ積層方式の三次元造形装置において、断面画像データ、層画像データおよび造形画像データを作成するようにしてもよく、要は、サポート部材が形成された三次元モデルの断面画像データに基づいて三次元造形物を作製する三次元造形装置であれば、どのような三次元造形装置であってもよい。
【0111】
(4)上記した実施の形態においては、造形画像データ生成部70は、実際に作製される三次元造形物の全体を三次元で表す造形画像データと、実際に作製される三次元造形物の特定の1層を三次元で表す造形画像データと、実際に作製される三次元造形物の連続する複数の層を三次元で表す造形画像データとを生成するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、上記した3種類の造形画像データの少なくとも1つの造形画像データを生成するようにしてもよい。
【0112】
(5)上記した実施の形態においては、全ての層の断面画像データを作成した後に、各層の造形画像データを作成するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、所定の層の断面画像データを作成した後に、当該所定の層の造形画像データを作成する、つまり、各層毎に、断面画像データおよび造形画像データを作成する用にしてもよい。
【0113】
(6)上記した実施の形態においては、サポート部材を形成した三次元データから断面画像データを作成し、この断面画像データに基づいて造形画像データを作成するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。
【0114】
即ち、サポート部材を形成していない三次元データから断面画像データを作成し、この断面画像データから造形画像データを作成するようにしてもよい。
【0115】
具体的には、断面画像データ作成部54において、サポート部材を形成した三次元データから第1の断面画像データを作成するとともに、サポート部材を形成していない三次元データ(つまり、入力された三次元データである。)から第2の断面画像データを作成するようにする。
【0116】
その後、造形画像データ作成部56において、第2の断面画像データから造形画像データを作成し、表示部58にサポート部材が形成されていない造形画像を表示するようにしてもよい。
【0117】
または、造形画像データ作成部56において、第1の断面画像データ(サポート部材が形成されている)から第1の造形画像データを作成し、第2の断面画像データ(サポート部材が形成されていない)から第2の造形画像データを作成して、表示部58にサポート部材が形成されている造形画像と、サポート部材が形成されていない造形画像とを選択的に表示できるようにしてもよい。
【0118】
より詳細には、造形画像データ作成部56では、第1の断面画像データにおいて、二次元座標データを取得し、取得した二次元座標データを三角法を用いて三角形で構成される二次元座標データに変換し、この変換した二次元座標データに高さ情報を付加して三次元座標データを作成し、三次元座標データに三次元モデルデータを生成して第1の層画像データを作成する。また、第2の断面画像データにおいて、二次元座標データを取得し、取得した二次元座標データを三角法を用いて三角形で構成される二次元座標データに変換し、この変換した二次元座標データに高さ情報を付加して三次元座標データを作成し、三次元座標データに三次元モデルデータを生成して第2の層画像データを作成する。
【0119】
そして、作業者の操作子(図示せず。)による操作により、サポート部材の形成された造形画像の表示が指示されると、第1の層画像データから造形画像データを作成し、この造形画像データが表示部58に出力されて、表示部58においてサポート部材が形成された造形画像が表示される。
【0120】
また、作業者の操作子(図示せず。)による操作により、サポート部材の形成されていない造形画像の表示が指示されると、第2の層画像データから造形画像データを作成し、この造形画像データが表示部58に出力されて、表示部58において、サポート部材が形成されていない造形画像が表示される。
【0121】
(7)上記した実施の形態ならびに上記した(1)乃至(6)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、三次元造形物を作製する三次元造形装置として用いて好適である。
【符号の説明】
【0123】
10 三次元造形装置、12 筐体、14 吐出ヘッド、16 テーブル、18 開口部、20 カバー部材、22、26 ガイドレール、24 移動部材、28 チューブ、50 マイクロコンピューター、52 制御部、54 断面画像データ作成部、56 第造形画像データ作成部、58 表示部、60 記憶部、62 二次元座標データ取得部、64 二次元座標データ変換部、66 三次元座標データ作成部、68 層画像データ作成部、70 造形画像データ生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7