特許第6367574号(P6367574)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6367574ハイブリッド自動車および充電状態の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367574
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】ハイブリッド自動車および充電状態の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/26 20060101AFI20180723BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20180723BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20180723BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20180723BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20180723BHJP
   B60L 11/14 20060101ALI20180723BHJP
   B60L 11/18 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   B60W10/26 900
   B60K6/48ZHV
   B60K6/547
   B60W10/06 900
   B60W10/08 900
   B60L11/14
   B60L11/18 A
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-31030(P2014-31030)
(22)【出願日】2014年2月20日
(65)【公開番号】特開2015-155261(P2015-155261A)
(43)【公開日】2015年8月27日
【審査請求日】2017年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 航
(72)【発明者】
【氏名】石坂 宏幸
【審査官】 増子 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−354612(JP,A)
【文献】 特開2000−333305(JP,A)
【文献】 特開2001−169408(JP,A)
【文献】 特開平08−126116(JP,A)
【文献】 特開2002−199509(JP,A)
【文献】 特開2008−024306(JP,A)
【文献】 特開2011−116223(JP,A)
【文献】 特開2011−027472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 − 6/547
B60W 10/00 − 50/16
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 15/42
G01C 21/00 − 21/36
G01C 23/00 − 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、電動機と、前記電動機に電力を供給するバッテリとを有し、エンジンによる走行、電動機による走行、エンジンと電動機とが協働する走行のいずれかの走行モードが選択可能であり、エンジンによる走行中、減速中、または下り勾配路を走行中には、前記電動機を発電機として前記バッテリに充電が可能なハイブリッド自動車において、
出発地から目的地までの所定の走行区間の距離を横軸に標高を縦軸にとったグラフを縦軸方向に反転させ、標高の最小値が前記バッテリの充電状態を示す値の上限値に、標高の最大値がバッテリの充電状態を示す値の下限値になって、前記走行区間の標高とバッテリの充電状態を示す値とが対応するバッテリの充放電計画情報を作成する手段を有する、
ことを特徴とするハイブリッド自動車。
【請求項2】
エンジンと、電動機と、前記電動機に電力を供給するバッテリとを有し、エンジンによる走行、電動機による走行、エンジンと電動機とが協働する走行のいずれかの走行モードが選択可能であり、エンジンによる走行中、減速中、または下り勾配路を走行中には、前記電動機を発電機として前記バッテリに充電が可能なハイブリッド自動車の制御装置が実行する充電状態の制御方法において、
出発地から目的地までの所定の走行区間の距離を横軸に標高を縦軸にとったグラフを縦軸方向に反転させ、標高の最小値が前記バッテリの充電状態を示す値の上限値に、標高の最大値がバッテリの充電状態を示す値の下限値になって、前記走行区間の標高とバッテリの充電状態を示す値とが対応するバッテリの充放電計画情報を作成するステップを有する、
ことを特徴とする充電状態の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車および充電状態の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車は、エンジンによる走行モード(以下では、エンジン走行モードという)、電動機による走行モード(以下では、電動機走行モードという)、エンジンと電動機とが協働する走行モード(以下では、アシスト走行モードという)のいずれかの走行モードが選択可能である。また、ハイブリッド自動車は、エンジン走行モードで走行中には、電動機をエンジンの動力によって発電機として動作させてバッテリに充電が可能である。さらに、ハイブリッド自動車は、減速中または下り勾配路を走行中には、電動機を駆動輪の回転力によって発電機として動作させてバッテリに充電が可能であり、これを回生と称する。
【0003】
このようなハイブリッド自動車では、効率良く燃費を向上させるために、電動機走行モードまたはアシスト走行モードを多用することが好ましい。このためには、電動機に電力を供給するバッテリの充放電を計画的に行うことが有用になる(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
たとえば、特許文献1では、出発地から目的地までの経路上を、エンジンにより走行した場合に運転効率が低くなる区間と、エンジンにより走行しても運転効率が高い区間とに分け、前者の区間では、電動機走行モードまたはアシスト走行モードを選択し、後者の区間では、エンジンにより電動機を発電機として使用する発電または電動機による回生が行われるようにする。すなわち、前者の区間が放電区間となり、後者の区間が充電または回生区間となる。このようにして作成されたバッテリの充放電計画情報によれば、放電区間と充電または回生区間とが交互に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−333305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
たとえば、特許文献1のように、出発地から目的地までを複数の区間に分割し、交互に充電区間および放電区間を設定する場合、隣接する充電区間と放電区間とで、充放電量がほぼ均等であるとは限らない。たとえば、経路上で、短い距離の下り勾配の後に、長い距離の上り勾配が続く区間を含む場合、この区間の直前の区間において、十分な充電量が確保できないため、長い距離の上り勾配を電動機走行モードまたはアシスト走行モードで走り切ることができない。同様に、経路上で、短い上り勾配の後に、長い距離の下り勾配が続く区間を含む場合、この区間の直前の区間において、十分な放電が行えないため、長い距離の下り勾配の途中でバッテリは満充電に達し、電動機が回生を続けることができない。
【0007】
本発明は、このような背景の下に行われたものであって、出発地から目的地までの全体の経路上で燃費向上のために有利となる充放電計画情報を作成することができるハイブリッド自動車および充電状態の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エンジンと、電動機と、電動機に電力を供給するバッテリとを有し、エンジンによる走行、電動機による走行、エンジンと電動機とが協働する走行のいずれかの走行モードが選択可能であり、エンジンによる走行中、減速中、または下り勾配路を走行中には、電動機を発電機としてバッテリに充電が可能なハイブリッド自動車において、出発地から目的地までの所定の走行区間の距離を横軸に標高を縦軸にとったグラフを縦軸方向に反転させ、標高の最小値が前記バッテリの充電状態を示す値の上限値に、標高の最大値がバッテリの充電状態を示す値の下限値になって、走行区間の標高とバッテリの充電状態を示す値とが対応するバッテリの充放電計画情報を作成する手段を有する手段を有するものである。
【0010】
本発明の他の観点は、エンジンと、電動機と、電動機に電力を供給するバッテリとを有し、エンジンによる走行、電動機による走行、エンジンと電動機とが協働する走行のいずれかの走行モードが選択可能であり、エンジンによる走行中、減速中、または下り勾配路を走行中には、電動機を発電機としてバッテリに充電が可能なハイブリッド自動車の制御装置が実行する充電状態の制御方法において、出発地から目的地までの所定の走行区間の距離を横軸に標高を縦軸にとったグラフを縦軸方向に反転させ、標高の最小値が前記バッテリの充電状態を示す値の上限値に、標高の最大値がバッテリの充電状態を示す値の下限値になって、走行区間の標高とバッテリの充電状態を示す値とが対応するバッテリの充放電計画情報を作成するステップを有するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、出発地から目的地までの全体の経路上で燃費向上のために有利となる充放電計画情報を作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係るハイブリッド自動車の要部構成図である。
図2図1の制御装置が取得する標高情報の一例を示す図である。
図3図2の標高情報から作成される充放電計画の一例を示す図である。
図4】充電状態を示す値(以下ではSOC:State of Chargeという)が計画値よりも高い値である場合のSOCの遷移を示す図である。
図5】SOCが計画値よりも低い値である場合のSOCの遷移を示す図である。
図6図1の制御装置の動作を示すフローチャートである。
図7】従来の制御による標高とSOCとの対応関係を示す図であり、SOCが徐々に低くなる例を示す図である。
図8】本実施の形態に係る制御による標高とSOCとの対応関係を示す図であり、SOCが徐々に低くなる例を示す図である。
図9】従来の制御による標高とSOCとの対応関係を示す図であり、SOCが徐々に高くなる例を示す図である。
図10】本実施の形態に係る制御による標高とSOCとの対応関係を示す図であり、SOCが徐々に高くなる例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態に係るハイブリッド自動車1の要部構成を図1を参照しながら説明する。
【0015】
ハイブリッド自動車1は、図1に示すように、制御装置10、エンジン11、電動機12、バッテリ13、インバータ14、およびクラッチ15を要部構成として有する。電動機12の出力は、プロペラシャフト16、ディファレンシャルギア17を介して駆動輪18に伝達される。また、電動機12とプロペラシャフト16との間には、トランスミッション19が配置される。トランスミッション19は、図示は省略するが電動機12の出力軸とプロペラシャフト16とを接断するクラッチ機構および変速機構を有する。トランスミッション19は、たとえばAMT(Automated Manual Transmission)と呼ばれるものであり、ハイブリッド自動車1の走行中には、車速や要求トルクなどに応じて自動的にクラッチ機構および変速機構が動作するようになっている。
【0016】
このような構成を有するハイブリッド自動車1は、エンジン11による走行(エンジン走行モード)、電動機12による走行(電動機走行モード)、エンジン11と電動機12とが協働する走行(アシスト走行モード)のいずれかの走行モードが選択可能であり、減速中または下り勾配路を走行中には、駆動輪18の回転力により電動機12を発電機として動作させてバッテリ13に充電(回生)が可能である。また、ハイブリッド自動車1は、エンジン走行モードで走行中には、電動機12をエンジン11の動力によって発電機として動作させてバッテリ13に充電が可能である。
【0017】
制御装置10は、エンジン11、電動機12、バッテリ13、インバータ14、およびクラッチ15の動作を制御する。なお、実際には、エンジン11、電動機12、バッテリ13、インバータ14、およびクラッチ15に、それぞれ個別のECU(Electric Control Unit)が配置され、これらが互いにCAN(Control Area Network)通信を行いながら協働して制御を実施している場合があるが、ここでは1つの制御装置10として説明する。
【0018】
なお、制御装置10は、情報処理装置が予めインストールされている所定のプログラムを実行することによって実現することができる。このような情報処理装置は、たとえば、不図示のメモリ、CPU(Central Processing Unit)、入出力ポートなどを有する。情報処理装置のCPUは、メモリなどから所定のプログラムとして制御プログラムを読み込んで実行する。これにより、情報処理装置には、制御装置10の機能が実現される。なお、CPUの代わりにASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)、DSP(Digital Signal Processor)などを用いてもよい。また、後述する設定値保存部12mは、上述のメモリ(不図示)内の一部の記憶領域に実現される。
【0019】
また、上述の所定のプログラムは、制御装置10の出荷前に、情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであっても、制御装置10の出荷後に、情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであってもよい。また、プログラムの一部が、制御装置10の出荷後に、情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであってもよい。制御装置10の出荷後に、情報処理装置のメモリなどに記憶されるプログラムは、例えば、CD−ROMなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に記憶されているものをインストールしたものであっても、インターネットなどの伝送媒体を介してダウンロードしたものをインストールしたものであってもよい。
【0020】
また、上述の所定のプログラムは、情報処理装置によって直接実行可能なものだけでなく、ハードディスクなどにインストールすることによって実行可能となるものも含む。また、圧縮されたり、暗号化されたりしたものも含む。
【0021】
このように、情報処理装置とプログラムによって制御装置10を実現することにより、大量生産や仕様変更(または設計変更)に対して柔軟に対応可能となる。
【0022】
なお、情報処理装置が実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであってもよいし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであってもよい。
【0023】
エンジン11は、ガソリン、軽油、またはCNG(Compressed Natural Gas)などを燃料とする内燃機関である。なお、適用が可能であれば、エンジン11を内燃機関に限定するものではない。
【0024】
電動機12は、バッテリ13から供給される電力によって、ハイブリッド自動車1の走行用の動力を発生するものであると共に、他からの動力によって駆動されることで、バッテリ13に充電を行う発電機としても動作する。ここで電動機12を発電機として動作させる動力としては、たとえば、エンジン11の動力である。その他にもハイブリッド自動車1の減速時や下り勾配路の走行中などに、駆動輪18の回転がディファレンシャルギア17およびプロペラシャフト16を介して電動機12に伝達されることでも電動機12は発電機として動作する。
【0025】
バッテリ13は、電動機12に電力を供給すると共に、電動機12が発電機として動作する際には、電動機12が発電した電力によって充電される。ここでは、バッテリ13の状電状態を示す値をSOCと称し、0%〜100%で示す。なお、バッテリ13のSOCの下限値は、およそ20%〜30%の範囲内にあり、上限値は、およそ80%〜90%の範囲内にある。
【0026】
インバータ14は、バッテリ13の直流電力を3相交流電力に変換して電動機12に供給すると共に、電動機12が発電機として動作する際には、電動機12が発電する3相交流電力を直流電力に変換してバッテリ13に供給する。
【0027】
クラッチ15は、エンジン11の回転軸と電動機12の回転軸とを接断する。クラッチ15が接続されていると、ハイブリッド自動車1は、電動機12によってエンジン11を始動させることができる。また、クラッチ15が接続されていると、ハイブリッド自動車1は、エンジン11のみによるエンジン走行モードおよびエンジン11と電動機12とが協働するアシスト走行モードのいずれかが選択可能になる。また、クラッチ15が接続されていると、ハイブリッド自動車1は、エンジン11により電動機12を発電機として動作させることができる。
【0028】
一方、クラッチ15が切断されていると、ハイブリッド自動車1は、電動機12のみによる電動機走行モードに際し、エンジン11のフリクションを受けることなく効率良く走行可能である。また、クラッチ15が切断されていると、ハイブリッド自動車1は、電動機1が回生を実施しているときに、エンジン11のフリクションを受けることなく効率良く回生が可能である。
【0029】
以上のようなハイブリッド自動車1の制御装置10は、所定の走行区間の標高情報を横軸に地点までの距離をとり縦軸に標高をとったグラフで表すときに、その最小値がバッテリ13のSOCの最大値に対応しその最大値がバッテリ13のSOCの最小値に対応するバッテリ13の充放電計画情報を作成する。充放電計画情報とは、所定の区間における地点毎のSOCの目標値を収容した情報であり、制御装置10は、その目標値に近付くように、エンジン走行モード、電動機走行モード、またはアシスト走行モードを適宜選択する。なお、本実施の形態では、所定の区間は、出発地から目的地までの区間である。
【0030】
以下では、制御装置10が標高情報に基づいてバッテリ13の充放電計画を作成する過程について、図2および図3を参照しながら説明する。なお、制御装置10が標高情報を取得する経路および方法については、どのような経路および方法であってもよいが、以下では、説明を分かり易くするための一例として、カーナビゲーションシステム(以下ではカーナビと略記する。)から標高情報を取得する例で説明する。
【0031】
ハイブリッド自動車1の運転者がカーナビ(不図示)を操作して出発地と目的地を設定すると、制御装置10は、図2に示すように、カーナビに設定された出発地から目的地までの標高情報を取得する。図2は、横軸に、出発地から目的地までの距離をとり、縦軸に、標高をとる。
【0032】
続いて、制御装置10は、図3に示すように、図2に示す標高情報のグラフの曲線を縦軸方向に反転させた曲線を生成する。これにより図2に示す最高点は、図3に示す最低点になり、図2に示す最低点は、図3に示す最高点になる。さらに、制御装置10は、縦軸について、図2に示す標高の代わりに、図3に示すように、SOCを対応させる。図3の例では、SOCの最高点は、80%に設定され、SOCの最低点は、28%に設定されている。
【0033】
このようにして、制御装置10は、出発地から目的地までの標高情報から出発地から目的地までのバッテリ13の充放電計画情報を作成する。
【0034】
次に、制御装置10が作成したバッテリ13の充放電計画情報に基づいて、制御装置10がバッテリ13のSOCを制御する動作について、図4および図5を参照しながら説明する。なお、図4および図5において、実線で描く曲線が充放電の計画値であり、破線で描く曲線が制御装置10の制御に基づくSOCの変化である。なお、図4および図5では、破線は、距離25kmの手前で実線と重なるため見えなくなる。
【0035】
図4は、出発地におけるバッテリ13のSOCが計画値よりも高い状態を示している。このときには、制御装置10は、SOCを計画値に近付けるために、積極的に、電動機走行モードまたはアシスト走行モードを選択する。これにより、SOCは急速に低下して計画値に収束する。
【0036】
同様に、図5は、出発地におけるバッテリ13のSOCが計画値よりも低い状態を示している。このときには、制御装置10は、SOCを計画値に近付けるために、積極的に、エンジン走行モードを選択する。これにより、SOCは急速に高くなり計画値に収束する。
【0037】
次に、制御装置10の動作を図6のフローチャートを参照しながら説明する。図6のフローチャートにおけるSTARTの条件は、ハイブリッド自動車1のキースイッチ(不図示)がON状態であり、制御装置10が稼働中という条件である。なお、図6のフローチャートのSTARTからENDまでの処理は、1周期分の処理であり、1周期分の処理が終了(END)してもSTARTの条件が満たされていれば、処理は、再び開始(START)される。
【0038】
ハイブリッド自動車1のキースイッチがON状態に操作されて制御装置10が稼働し、STARTの条件が満たされると、処理は、ステップS1に進む。なお、ここでは、カーナビ(不図示)に設定された出発地から目的地までの経路の標高情報を制御装置10が取得する例を説明する。
【0039】
ステップS1において、制御装置10は、カーナビに出発地と目的地が設定されたか否かを判定する。ステップS1において、出発地と目的地が設定されたと判定されると、処理は、ステップS2に進む。一方、ステップS1において、未だ出発地と目的地が設定されていないと判定されると、処理は、ステップS1を繰り返す。
【0040】
ステップS2において、制御装置10は、カーナビに設定された出発地から目的地までの経路の標高情報をカーナビから取得する。たとえば、制御装置10は、カーナビから出発地から目的地までの経路を含む地図情報を取得し、その地図情報に含まれる標高の情報を経路に沿って抽出するなどの方法によって、出発地から目的地までの標高情報を取得する。
【0041】
ステップS3において、制御装置10は、ステップS2で取得した標高情報のグラフを縦軸方向に反転させる。ステップS3において、標高情報のグラフを縦軸方向に反転させると、処理は、ステップS4に進む。
【0042】
ステップS4において、制御装置10は、反転後の最高点をSOCの最高点とし、最低点をSOCの最低点として充放電計画情報のグラフを作成する。ステップS4において、充放電計画情報のグラフが作成されると、処理は、ステップS5に進む。
【0043】
ステップS5において、制御装置10は、ステップS4で作成した充放電計画情報のグラフを参照し、現在のSOCとSOCの計画値とを比較する。ステップS5において、現在のSOCとSOCの計画値とは等しいと判定されると、処理は、ステップS6に進む。または、ステップS5において、現在のSOCはSOCの計画値よりも低いと判定されると、処理は、ステップS7に進む。もしくは、ステップS5において、現在のSOCはSOCの計画値よりも高いと判定されると、処理は、ステップS8に進む。なお、上述の「現在のSOCとSOCの計画値とは等しい」とは、現在のSOCとSOCの計画値との差が所定値以内であることをいうものであり、必ずしも現在のSOCとSOCの計画値とが一致することではない。
【0044】
ステップS6において、制御装置10は、走行環境に応じた走行モードを適用して1周期分の処理を終了する(END)。
【0045】
ステップS7において、制御装置10は、エンジン走行モードを積極的に適用して1周期分の処理を終了する(END)。
【0046】
ステップ8において、制御装置10は、電動機走行モードまたはアシスト走行モードを積極的に適用して1周期分の処理を終了する(END)。
【0047】
このように、制御装置10は、図2に示すように、所定の走行区間の標高情報を横軸に地点までの距離をとり縦軸に標高をとったグラフで表すときに、その最小値がバッテリ13のSOCの最大値に対応しその最大値がバッテリ13のSOCの最小値に対応するバッテリ13の充放電計画情報を作成するので、出発地から目的地までの全体の経路上で燃費向上のために有利となる充放電計画情報を作成することができる(図6のステップS4)。
【0048】
さらに、制御装置10は、現在のSOCがSOCの計画値よりも低いときには(図6のステップS5で低)、エンジン走行モードを積極的に適用するので(図6のステップS7)、現在のSOCをSOCの計画値に対し、急速の収束させることができる。このときには、従来ならば電動機走行モードまたはアシスト走行モードを選択すべき走行環境であっても本制御では、エンジン走行モードを選択する。
【0049】
また、制御装置10は、現在のSOCがSOCの計画値よりも高いときには(図6のステップS5で高)、電動機走行モードまたはアシスト走行モードを積極的に適用するので(図6のステップS8)、現在のSOCをSOCの計画値に対し、急速の収束させることができる。このときには、従来ならばエンジン走行モードを選択すべき走行環境であっても本制御では、電動機走行モードまたはアシスト走行モードを選択する。
【0050】
これにより、現在のSOCをSOCの計画値に急速に収束させることができる。このようにして、現在のSOCをSOCの計画値に速やかに一致させることで、出発地から目的地までの経路において、最も効率の良い燃費向上のための走行モードの選択が可能になる。
【0051】
たとえば、標高の最高点に達する長い距離の上り勾配路が続く区間を経路上に含むときでもこの上り勾配路の終点において、バッテリ13のSOCが最低になるようにバッテリ13の充放電計画情報が作成されるので、この上り勾配路の途中でバッテリ13が電動機12に電力を供給できなくなることを回避できる。
【0052】
また、標高の最低点に達する長い距離の下り勾配路が続く区間を経路上に含むときでもこの下り勾配路の終点において、バッテリ13のSOCが最高になるようにバッテリ13の充放電計画情報が作成されるので、この下り勾配路の途中でバッテリ13が満充電状態となり電動機12による回生が中断されることを回避できる。
【0053】
このようにして、ハイブリッド自動車1の出発地から目的地までの経路の全体について、最適なバッテリ13の充放電計画情報を作成することができ、これにより、出発地から目的地までの経路において、最も効率の良い燃費向上のための走行モードの選択を可能にすることができる。また、出発地から目的地までの標高情報に基づいてバッテリ13の充放電計画情報を作成するので、容易に充放電計画情報を作成することができる。
【0054】
次に、従来の制御と本制御の充放電制御の比較例を図7図10を参照しながら説明する。図7図9は、従来の制御(たとえば特許文献1の制御)による標高とSOCとの対応関係を示す図である。図8図10は、本制御による標高とSOCとの対応関係を示す図である。図7図10の上段の図は、出発地から目的地までの距離に対応する標高情報であり、下段の図は、出発地から目的地までの距離に対応するSOC情報である。なお、説明を分かり易くするために、図7および図8では、出発地におけるSOCを最大とし、図9図10では、出発地におけるSOCを最低とする。また、図7図8で比較し易いように、同じ区間a〜hが区切ってあり、図9図10で比較し易いように、同じ区間A〜Hが区切ってある。
【0055】
図7に示す従来の制御では、区間a,c,f,hが放電区間であり、区間b,e,gが充電区間である。従来の制御では、放電区間では、その区間で最も効率の良い燃費の改善が図られるように、放電制御が実施され、充電区間では、その区間で最も効率の良い充電が図られるように、充電制御が実施される。一方、図8に示す本制御では、標高情報を縦方向に反転させて作成した充放電計画情報に基づいて充放電制御が実施される。
【0056】
ここで、従来の制御と本制御とを比較してみると、従来の制御では、各区間a〜h毎に充放電計画情報を作成しており、図7に示すように、区間hにおける長時間の放電を考慮していないため、区間hの途中で、SOCは下限値に達し、アシスト走行モードを中断している。これに対し、本制御では、図8に示すように、区間hの終点に相当する標高の最高点において、SOCが最も低くなるように充放電制御が実施されるので、区間の全域にわたりアシスト走行モードを継続することができる。
【0057】
また、図9に示す従来の制御では、区間A,C,F,Hが充電区間であり、区間B,E,Gが放電区間である。ここで、従来の制御と本制御とを比較してみると、従来の制御では、各区間A〜H毎に充放電計画情報を作成しており、図9に示すように、区間Hにおける長時間の充電を考慮していないため、区間Hの途中で、SOCは上限値に達し、回生を中断している。これに対し、本制御では、図10に示すように、区間Hの終点に相当する標高の最低点において、SOCが最も高くなるように充放電制御が実施されるので、区間Hの全域にわたり回生を継続させることができる。
【0058】
このように、本制御によれば、出発地から目的地までの全経路を勘案して最適な充放電制御を実施することができる。その結果、従来の制御と比較して出発地から目的地までの全経路を通して最も効率良く燃費の改善を行うことができる。
【0059】
(その他の実施の形態)
本発明の実施の形態は、その要旨を逸脱しない限り様々に変更が可能である。たとえば、上述の実施の形態では、出発地から目的地までを最初に設定すると説明したが、出発地から目的地までの経路上におけるハイブリッド自動車1の現在位置を自動的に出発地とみなし、目的地までの経路上で現在位置から所定の距離離れた位置を仮の目的地として自動的に設定するようにしてもよい。そして、現在地(すなわち出発地)が移動するのに伴って、仮の目的地も随時移動するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…ハイブリッド自動車、10…制御装置、11…エンジン、12…電動機、13…バッテリ、14…インバータ、15…クラッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10