特許第6367576号(P6367576)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367576
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】車両の車体前部構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 37/00 20060101AFI20180723BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20180723BHJP
   B62D 25/04 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   B60K37/00 C
   B62D25/08 B
   B62D25/04 A
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-37238(P2014-37238)
(22)【出願日】2014年2月27日
(65)【公開番号】特開2015-160533(P2015-160533A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2017年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106024
【弁理士】
【氏名又は名称】稗苗 秀三
(74)【代理人】
【識別番号】100167841
【弁理士】
【氏名又は名称】小羽根 孝康
(74)【代理人】
【識別番号】100168376
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 清隆
(72)【発明者】
【氏名】田中 晋司
(72)【発明者】
【氏名】白川 武志
(72)【発明者】
【氏名】小森 克也
(72)【発明者】
【氏名】井上 嘉亮
【審査官】 堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−324616(JP,A)
【文献】 特開平09−076940(JP,A)
【文献】 実開昭60−036333(JP,U)
【文献】 特開平07−329606(JP,A)
【文献】 実開平05−089163(JP,U)
【文献】 特開2001−001793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00−37/06
B62D 17/00−25/08、25/14−29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が車室とされる車体前部の左、右各側部を構成して上下方向に延び、その上下方向の中途部の車室側に対向する車室側対向面が車体の前後方向に延びるよう形成された左、右フロントピラーと、車体の幅方向に延び、上記左、右フロントピラーの間の配置空間に配置されるインスツルメントパネルと、このインスツルメントパネルの外側方に位置してこのインスツルメントパネルと互いに結合され、上記各車室側対向面に対面するよう形成される左、右支持板と、車体の左、右各側部で、上記車室側対向面の一部分に上記支持板の一部分を締結する締結具とを備えた車両の車体前部構造において、
車体の左、右各側部で、上記支持板における上記一部分よりも前方の他部分に車体の外側方に向かって突出するビードを形成し、上記車室側対向面における上記一部分と上記ビードの突出端面とを車体の幅方向で互いにほぼ同じところに位置させ、上記車室側対向面における上記一部分よりも前方の他部分に上記ビードを隙間をあけて収容する凹部を形成したことを特徴とする車両の車体前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体前部の左、右フロントピラーの間に配置され、これら左、右フロントピラーに支持されるインスツルメントパネルを備えた車両の車体前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記車両の車体前部構造には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、車両の車体前部構造は、内部が車室とされる車体前部の左、右各側部を構成して上下方向に延び、その上下方向の中途部の車室側に対向する車室側対向面が車体の前後方向に延びるよう形成された左、右フロントピラーと、車体の幅方向に延び、上記左、右フロントピラーの間の配置空間に配置されるインスツルメントパネルと、このインスツルメントパネルの外側方に位置してこのインスツルメントパネルと互いに結合され、上記各車室側対向面に対面するよう形成される左、右支持板と、車体の左、右各側部で、上記車室側対向面の一部分に上記支持板の一部分を締結する締結具とを備えている。通常、上記インスツルメントパネルには、各種メータ、オーディオ機器、および空調機器などが取り付けられる。
【0003】
上記左、右フロントピラーに対し上記インスツルメントパネルを組み付ける際には、通常、作業者のための助力装置が用いられ、その組み付け作業は、次のように行われる。
【0004】
即ち、まず、組み付け作業の前段として、上記左、右フロントピラーの間の配置空間の後方にインスツルメントパネルを位置させる。
【0005】
次に、この組み付け作業の中段として、インスツルメントパネルを上記各支持板と共に前方移動させ、この際、これら各支持板を上記各フロントピラーの車室側対向面に摺接させる。そして、この状態のまま、上記インスツルメントパネルを更に前方移動させ、このインスツルメントパネルを上記配置空間における車体の前後方向での所定位置に位置決めさせる。
【0006】
次に、この組み付け作業の後段として、上記各車室側対向面に上記各支持板を締結具により締結すれば、上記左、右フロントピラーに対するインスツルメントパネルの組み付け作業が終了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−1793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、車両の種類(例えばトラック)によっては、従来、上記インスツルメントパネルに取り付けられた空調機器のヒータ用パイプ継手が、上記インスツルメントパネルの下端部から下方に向かって突出させられると共に、上記配置空間におけるインスツルメントパネルの下方のフロアパネルに形成された貫通孔に、その上方から挿入させられるようにしたものがある。
【0009】
そして、上記した従来構成のインスツルメントパネルの組み付け作業に際しては、その前段として、前記したことと同様に、まず、インスツルメントパネルを上記配置空間の後方に位置させる。また、この際、その後の組み付け作業の中段において上記パイプ継手が上記配置空間の下方のフロアパネルに接触しないようにするため、インスツルメントパネルは上記配置空間の後方で、より上方に位置させられる。
【0010】
ここで、一般に、上記左、右フロントピラーは、車体の幅方向での車体中心を基準として左右対称形とされる。また、各フロントピラーのうち、上記各車室側対向面を含む下部ピラーは、それぞれ鉛直方向に延びるよう形成される一方、各上部ピラーは、それぞれ上方に向かうに従い車室側に向かって傾斜するよう形成される。このため、前記した組み付け作業の前段のように、インスツルメントパネルを上記配置空間の後方で、より上方に位置させたとき、仮に、上記車体中心に対するインスツルメントパネルのセンタリングの精度が低い場合には、インスツルメントパネルは左、右上部ピラーのうち、いずれか一方の上部ピラーに容易に当接しがちとなる。そして、このような当接が生じると、この上部ピラーやインスツルメントパネルが無用に損傷させられるおそれを生じる。
【0011】
そこで、上記組み付け作業の前段において、上記車体中心に対するインスツルメントパネルのセンタリングの精度を向上させることに十分に留意することが考えられる。しかし、このような精度の向上のために、作業自体について十分に留意しようとすると、この組み付け作業が煩雑になって、車体前部の生産性が低下するおそれを生じる。
【0012】
また、上記組み付け作業の前段において、上記上部ピラーと、これに当接するおそれのあるインスツルメントパネルの部分との少なくともいずれか一方に傷付き防止シートを一時的に仮設定することも考えられる。しかし、このようにすると、上記傷付き防止シートを仮設定する分、やはり、上記組み付け作業が煩雑になりがちとなる。
【0013】
一方、上記組み付け作業の後段で、上記各支持板の一部分が上記各車室側対向面の一部分に締結されてインスツルメントパネルの組み付け作業が終了するが、この際、上記車室側対向面と支持板との各他部分は互いに単に当接した状態のままに残される。このため、車両の走行時には、その振動により上記他部分同士が互いに摩擦し合うなどして、各フロントピラーとインスツルメントパネル側との間に異音が生じるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、左、右フロントピラーに対しインスツルメントパネルの組み付け作業をするとき、この組み付け作業が、上記フロントピラーやインスツルメントパネルを無用に損傷させることなく容易に達成できるようにし、かつ、上記左、右フロントピラーへのインスツルメントパネルの組み付け後の車両の走行時に、上記各フロントピラーとインスツルメントパネル側との間に異音が生じないようにすることである。
【0015】
請求項1の発明は、内部が車室3とされる車体2前部の左、右各側部を構成して上下方向に延び、その上下方向の中途部の車室3側に対向する車室側対向面16が車体2の前後方向に延びるよう形成された左、右フロントピラー11,11と、車体2の幅方向に延び、上記左、右フロントピラー11,11の間の配置空間32に配置されるインスツルメントパネル33と、このインスツルメントパネル33の外側方に位置してこのインスツルメントパネル33と互いに結合され、上記各車室側対向面16に対面するよう形成される左、右支持板28,28と、車体2の左、右各側部で、上記車室側対向面16の一部分16aに上記支持板28の一部分28aを締結する締結具29とを備えた車両の車体前部構造において、
車体2の左、右各側部で、上記支持板28における上記一部分28aよりも前方の他部分28cに車体2の外側方に向かって突出するビード46を形成し、上記車室側対向面16における上記一部分16aと上記ビード46の突出端面とを車体2の幅方向で互いにほぼ同じところに位置させ、上記車室側対向面16における上記一部分16aよりも前方の他部分16bに上記ビード46を隙間47をあけて収容する凹部48を形成したことを特徴とする車両の車体前部構造である。
【0016】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0017】
本発明による効果は、次の如くである。
【0018】
請求項1の発明は、内部が車室とされる車体前部の左、右各側部を構成して上下方向に延び、その上下方向の中途部の車室側に対向する車室側対向面が車体の前後方向に延びるよう形成された左、右フロントピラーと、車体の幅方向に延び、上記左、右フロントピラーの間の配置空間に配置されるインスツルメントパネルと、このインスツルメントパネルの外側方に位置してこのインスツルメントパネルと互いに結合され、上記各車室側対向面に対面するよう形成される左、右支持板と、車体の左、右各側部で、上記車室側対向面の一部分に上記支持板の一部分を締結する締結具とを備えた車両の車体前部構造において、
車体の左、右各側部で、上記支持板における上記一部分よりも前方の他部分に車体の外側方に向かって突出するビードを形成し、上記車室側対向面における上記一部分と上記ビードの突出端面とを車体の幅方向で互いにほぼ同じところに位置させ、上記車室側対向面における上記一部分よりも前方の他部分に上記ビードを隙間をあけて収容する凹部を形成しており、次の効果が生じる。
【0019】
即ち、上記左、右フロントピラーに対しインスツルメントパネルを各支持板と共に組み付ける組み付け作業をする場合には、まず、組み付け作業の前段として、上記配置空間の後方にインスツルメントパネルを位置させる。そして、この際、上記車室側対向面の一部分に対し上記支持板の他部分のビードを当接させる。すると、上記インスツルメントパネルは、上記各支持板と共に上記左、右車室側対向面の間にがたつきなく密に嵌入され、これにより、上記インスツルメントパネルは、上記配置空間における車体の幅方向での所定位置に精度良く位置決めされる。
【0020】
このため、車体の幅方向での上記配置空間に対するインスツルメントパネルの精度の良い位置決めが、上記各車室側対向面と各支持板とが互いに相対的に関連する形状により達成できることから、この位置決め作業は容易にできる。そして、この精度の良い位置決めにより、この組み付け作業の前段において、インスツルメントパネルが、左、右フロントピラーのうちのいずれか一方に当接しようとすることは防止されて、これらが無用に損傷させられることが防止される。
【0021】
次に、この組み付け作業の中段として、上記状態のまま、インスツルメントパネルを上記各支持板と共に前方移動させ、上記配置空間における車体の前後方向での所定位置に位置決めさせる。次に、この組み付け作業の後段として、上記車室側対向面の一部分に上記支持板の一部分を締結具により締結すれば、上記左、右フロントピラーに対するインスツルメントパネルの組み付け作業が終了する。
【0022】
よって、前記したように、組み付け作業の前段において、車体の幅方向での上記配置空間に対するインスツルメントパネルの精度の良い位置決めが容易にでき、つまり、この組み付け作業は、上記フロントピラーやインスツルメントパネルを無用に損傷させることなく容易に達成できる。
【0023】
しかも、上記組み付け作業の後段において、上記車室側対向面の一部分に上記支持板の一部分を締結具により締結したとき、前記したように支持板の他部分のビードは隙間をあけて上記車室側対向面の他部分の凹部に収容される。
【0024】
このため、上記したように、インスツルメントパネルの位置決めのためにビードを用いたが、このビードが、上記各フロントピラーへのインスツルメントパネルの組み付け後に上記車室側対向面に当接して互いに摩擦し合うということは防止される。よって、上記左、右フロントピラーへのインスツルメントパネルの組み付け後の車両の走行時に、上記各フロントピラーとインスツルメントパネル側との間に異音が生じることは、より確実に防止される。
【0025】
また、上記各効果は、上記フロントピラーの車室側対向面とインスツルメントパネル側の支持板とが相対的に関連する形状を工夫することにより達成されるのであって、別途の傷付き防止シートなどを設定しないで足りることから、その分、上記各効果は簡単な構成で達成でき、これは、車体前部の生産性の点で有益である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図4のI-I線矢視断面図である。
図2】車体前部の側面断面簡略図である。
図3図2で示したものの背面断面図である。
図4図2の部分拡大詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の車両の車体前部構造に関し、左、右フロントピラーに対しインスツルメントパネルの組み付け作業をするとき、この組み付け作業が、上記フロントピラーやインスツルメントパネルを無用に損傷させることなく容易に達成できるようにし、かつ、上記左、右フロントピラーへのインスツルメントパネルの組み付け後の車両の走行時に、上記各フロントピラーとインスツルメントパネル側との間に異音が生じないようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0028】
即ち、車両の車体前部構造は、内部が車室とされる車体前部の左、右各側部を構成して上下方向に延び、その上下方向の中途部の車室側に対向する車室側対向面が車体の前後方向に延びるよう形成された左、右フロントピラーと、車体の幅方向に延び、上記左、右フロントピラーの間の配置空間に配置されるインスツルメントパネルと、このインスツルメントパネルの外側方に位置してこのインスツルメントパネルと互いに結合され、上記各車室側対向面に対面するよう形成される左、右支持板と、車体の左、右各側部で、上記車室側対向面の一部分に上記支持板の一部分を締結する締結具とを備える。
【0029】
車体の左、右各側部で、上記支持板における上記一部分よりも前方の他部分に車体の外側方に向かって突出するビードが形成される。上記車室側対向面における上記一部分と上記ビードの突出端面とが車体の幅方向で互いにほぼ同じところに位置させられる。上記車室側対向面における上記一部分よりも前方の他部分に上記ビードを隙間をあけて収容する凹部が形成される。
【実施例】
【0030】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0031】
図において、符号1は、トラックで例示される車両であり、矢印Frは、この車両1の進行方向の前方を示している。また、下記する左右とは、上記前方に向かっての車両1の車体2の幅方向をいうものとする。
【0032】
上記車体2は、その前部を構成して内部が車室3とされる運転台4と、この運転台4の後方に連設される荷台5とを備え、上記車体2は,この車体2に懸架される前、後車輪6によって走行面7上に支持される。
【0033】
車体2前部は、上記運転台4前部の左右各側部を構成して上下方向に延びる板金製の左、右フロントピラー11,11を備えている。これら各フロントピラー11は、車体2の幅方向で互いに対面し、スポット溶接Sにより互いに結合されるアウタ、インナパネル12,13を有し、その長手方向の各部断面が中空閉断面構造とされて、車体2の骨格部材を構成している。
【0034】
上記左、右フロントピラー11,11は、車体2の幅方向での車体中心14を基準として左右対称形とされ、その各下部ピラー11aは、それぞれ鉛直方向に延びるよう形成される一方、各上部ピラー11bは、それぞれ上方に向かうに従い車室3側に向かって傾斜するよう形成される。上記各フロントピラー11の上下方向の中途部である各下部ピラー11aの上部において、車室3側に対向するよう上記インナパネル13により形成される車室側対向面16は、車体2の前後方向かつ鉛直方向に延びている。
【0035】
また、車体2前部は、上記左、右フロントピラー11,11の各上端部に架設されて、上記車室3の上面を形成するルーフパネル18と、上記左、右フロントピラー11,11の各下端部を結合するよう延びて、上記車室3の下面を形成するフロアパネル19と、車室3の前、後面を形成するフロント、リヤパネル20,21と、上記フロントパネル20の上部に形成されるフロントウィンド22とを備え、上記フロアパネル19の後部上にシート23が設けられる。
【0036】
また、車体2は、車体2の幅方向に延び、上記左、右フロントピラー11,11の各車室側対向面16に架設され、これら各フロントピラー11を補強するピラーツーピラーメンバ26を備えている。このピラーツーピラーメンバ26は、車体2の幅方向に延びる円形パイプ製のメンバ本体27と、このメンバ本体27の各端部にアーク溶接Wにより結合され、上記各フロントピラー11の各車室側対向面16に対面するよう形成される支持板28とを有している。上記ピラーツーピラーメンバ26は、上記左、右車室側対向面16,16の間に対し、その後方から、がたつきが少なく抑えられた状態で挿抜可能に挿入される。
【0037】
車体2の左右各側部で、上記車室側対向面16の後部の一部分16aに上記支持板28の後部の一部分28aが上下一対の締結具29,29により締結され、これにより、上記左、右フロントピラー11,11の各中途部に上記ピラーツーピラーメンバ26が強固に架設される。
【0038】
車体2の幅方向に延び、上記左、右フロントピラー11,11の間の所定位置である配置空間32に配置される樹脂製のインスツルメントパネル33が設けられる。上記配置空間32は車室3の前端部を構成し、上記インスツルメントパネル33は、上記ピラーツーピラーメンバ26のメンバ本体27に締結されることにより、上記各支持板28と互いに結合される。これら各支持板28は、それぞれ上記インスツルメントパネル33の外側端部からわずかに外側方に位置している。
【0039】
上記インスツルメントパネル33には空調機器が取り付けられる。この空調機器は左右一対のヒータ用パイプ継手34,34を有し、これら各パイプ継手34は上記インスツルメントパネル33の下端部から下方に向かって突出させられる。上記インスツルメントパネル33の下方のフロアパネル19に左右一対の貫通孔35,35が形成され、これら各貫通孔35に、その上方から上記各パイプ継手34が挿入される。そして、上記フロアパネル19の下面側で、上記各パイプ継手34に対し、不図示のヒータ用配管の端部が連結される。
【0040】
車体2の左右各側部で、上記支持板28の一般部分28bは、この支持板28の大部分を占め、この一般部分28bは上記フロントピラー11の車室側対向面16から少し離れてこの車室側対向面16にほぼ平行に対面している。上記支持板28の前記一部分28aは上記一般部分28bから上記車室側対向面16に向けて膨出し、この車室側対向面16に面接触状に当接して前記締結具29により締結される。
【0041】
上記フロントピラー11の車室側対向面16には、上記配置空間32に向かって上、下係合突起38,39が突設される。一方、上記支持板28の一般部分28bの前部における上、下部には、その各前端縁部から後上方に向かって延びる上、下案内切り欠き42,43が形成される。また、上記支持板28の一般部分28bの前部において上記上、下案内切り欠き42,43に挟まれた部分は、車体2の側面視(図2,4)で、前方に向かって突出する三角形の頂部形状の突出部28b´とされる。この突出部28b´の上端縁部の上面は、上記上案内切り欠き42において互いに対向する上、下対向面のうち、下対向面に滑らかに連なるよう形成される。
【0042】
上記上、下係合突起38,39と上記上、下案内切り欠き42,43の各後端部とは、それぞれ互いに係脱可能に係合している。この場合、上記上、下係合突起38,39に対し、上記突出部28b´の上端縁部の上面と、上記上、下案内切り欠き42,43においてそれぞれ互いに対向する両対向面との少なくともいずれかの面が、それぞれその面の長手方向に沿って摺接することにより、上記上、下係合突起38,39に案内されて、上記支持板28が前下方に向け移動可能とされる。
【0043】
上記支持板28における上記一部分28aよりも前方、かつ、上記メンバ本体27の前方の他部分28cに、この支持板28の一般部分28bの上記突出部28b´から車体2の外側方に向かって突出し、車体2の側面視(図2,4)で、前後方向に長く延びるビード46が形成される。上記車室側対向面16における一部分16aと上記ビード46の前後方向(長手方向)各部の突出端面とは車体2の幅方向で互いにほぼ同じところに位置させられる。上記ビード46は、上記支持板28に形成された上、下案内切り欠き42,43の間の突出部28b´に位置し、これら案内切り欠き42,43の形成による支持板28の剛性低下を補填するよう、この支持板28を補強している。
【0044】
上記車室側対向面16における上記一部分16aよりも、前方の他部分16bに、上記ビード46を隙間47をあけて収容する凹部48が形成される。具体的には、この凹部48は、上記フロントピラー11のインナパネル13における車室側対向面16の他部分16bに形成される。
【0045】
上記左、右フロントピラー11,11に対し上記インスツルメントパネル33を上記ピラーツーピラーメンバ26の各支持板28と共に、公知の助力装置を用いて組み付ける際の組み付け作業は、主に、次のように行われる。
【0046】
即ち、まず、組み付け作業の前段として、上記左、右フロントピラー11,11の間の配置空間32の後方にインスツルメントパネル33を位置させる。また、この際、その後の組み付け作業の中段において、上記インスツルメントパネル33の下端部から下方に突出した上記各パイプ継手34が上記配置空間32の下方のフロアパネル19に接触しないようにするため、インスツルメントパネル33は上記配置空間32の後方で、より上方に位置させられる。
【0047】
ここで、上記左、右フロントピラー11,11は、車体中心14を基準として左右対称形とされ、かつ、その左、右上部ピラー11b,11bは、それぞれ上方に向かうに従い車室3側に向かって傾斜している。このため、前記した組み付け作業の前段のように、インスツルメントパネル33を上記配置空間32の後方で、より上方に位置させたとき、仮に、上記車体中心14に対するインスツルメントパネル33のセンタリングの精度が低い場合には、インスツルメントパネル33は左、右上部ピラー11b,11bのうち、いずれか一方の上部ピラー11bに容易に当接しがちとなる。
【0048】
そこで、上記組み付け作業の前段において、図1,3,4中一点鎖線で示すように、インスツルメントパネル33を上記配置空間32の後方で、より上方に位置させるとき、上記車室側対向面16の一部分16aに対し上記支持板28の他部分28cのビード46を近接(当接含む)させる。すると、上記インスツルメントパネル33は、上記各支持板28と共に上記左、右車室側対向面16,16の間に対し、がたつきが少なく抑えられた状態で挿入され、これにより、上記インスツルメントパネル33は、上記配置空間32における車体2の幅方向での所定位置に精度良く位置決めされる。
【0049】
このため、上記車体中心14に対するインスツルメントパネル33の精度の良いセンタリングが容易にでき、つまり、車体2の幅方向での上記配置空間32に対するインスツルメントパネル33の精度の良い位置決めが、上記各車室側対向面16と各支持板28とが互いに相対的に関連する形状により達成できることから、この位置決め作業は容易にできる。そして、この精度の良い位置決めにより、この組み付け作業の前段において、インスツルメントパネル33が、左、右フロントピラー11,11のうちのいずれか一方に当接しようとすることは防止されて、これら11,33が無用に損傷させられることが防止される。
【0050】
次に、この組み付け作業の中段として、上記状態のまま、インスツルメントパネル33を上記ピラーツーピラーメンバ26の各支持板28と共に前方移動させる。この際、まず、上記車室側対向面16の上係合突起38に対し、上記支持板28の突出部28b´の上端縁部の上面を摺接させながら上記支持板28を前下方に移動させる。そして、次に、上記上、下係合突起38,39に対し、上記支持板28の上、下案内切り欠き42,43のそれぞれ互いの対向面が摺接するよう、これら上、下案内切り欠き42,43を係合させる。
【0051】
すると、上記した上、下係合突起38,39に対する上記支持板28の突出部28b´や上、下案内切り欠き42,43の摺接や係合により、インスツルメントパネル33は上記配置空間32における車体2の前後方向での所定位置に向かうよう前下方に向けて案内され、この所定位置に位置決めさせられる。また、この際、上記インスツルメントパネル33と共に前下方に向けて移動する上記パイプ継手34は、フロアパネル19の貫通孔35に円滑に挿入させられる。
【0052】
次に、この組み付け作業の後段として、上記車室側対向面16の一部分16aに上記支持板28の一部分28aを締結具29により締結すれば、上記左、右フロントピラー11,11に対するインスツルメントパネル33の組み付け作業が終了する。
【0053】
よって、前記したように、組み付け作業の前段において、車体2の幅方向での上記配置空間32に対するインスツルメントパネル33の精度の良い位置決めが容易にでき、つまり、この組み付け作業は、上記フロントピラー11やインスツルメントパネル33を無用に損傷させることなく容易に達成できる。
【0054】
しかも、上記組み付け作業の後段において、上記車室側対向面16の一部分16aに上記支持板28の一部分28aを締結具29により締結したとき、前記したように支持板28の他部分28cのビード46は隙間47をあけて上記車室側対向面16の他部分16bの凹部48に収容される。
【0055】
このため、上記したように、インスツルメントパネル33の位置決めのためにビード46を用いたが、このビード46が、上記各フロントピラー11へのインスツルメントパネル33の組み付け後に上記車室側対向面16に当接して互いに摩擦し合うということは防止される。よって、上記左、右フロントピラー11,11へのインスツルメントパネル33の組み付け後の車両1の走行時に、上記各フロントピラー11とインスツルメントパネル33側との間に異音が生じることは、より確実に防止される。
【0056】
また、上記実施例の構成による各効果は、上記フロントピラー11の車室側対向面16とインスツルメントパネル33側の支持板28とが相対的に関連する形状を工夫することにより達成されるのであって、別途の傷付き防止シートなどを設定しないで足りることから、その分、上記各効果は簡単な構成で達成でき、これは、車体2前部の生産性の点で有益である。
【0057】
なお、上記組み付け作業において、上記フロントピラー11の車室側対向面16に対し支持板28のビード46が摺接するとき、仮に、この摺接により、上記車室側対向面16やその周辺に損傷が生じたとしても、上記各車室側対向面16にピラーツーピラーメンバ26の各支持板28を締結して、左、右フロントピラー11,11に上記インスツルメントパネル33をピラーツーピラーメンバ26と共に組み付けたときには、上記損傷部は、上記支持板28やインスツルメントパネル33により車室3側から覆われる。よって、車室3の見栄えは良好に維持される。
【0058】
また、図3で示した車体2の背面視のものによれば、車体2の幅方向で、上記左右支持板28,28の間に上記インスツルメントパネル33が全体的に配置されるようになっているが、このインスツルメントパネル33の左右各側部が上記各支持板28をそれぞれその後方から覆うよう上記インスツルメントパネル33の車体2の幅方向の寸法を大きく設定してもよい。
【0059】
そして、上記構成にしたとすると、車室3がわから上記各支持板28が容易に見えることは上記インスツルメントパネル33により防止されて、車室3の見栄えが向上する。
【0060】
一方、上記構成にした場合において、左、右フロントピラー11,11に対し車室3がわからインスツルメントパネル33を各支持板28と共に組み付ける組み付け作業をする場合、これら各支持板28は上記インスツルメントパネル33の左右各側部によって見え難くなりがちである。しかし、前記した車室側対向面16の一部分16aと支持板28のビード46との関連構成によれば、上記したようにインスツルメントパネル33の寸法を大きくして、車室3の見栄えを向上させた場合においても上記組み付け作業が容易にできる、という顕著な効果を奏する。
【符号の説明】
【0061】
1 車両
2 車体
3 車室
4 運転台
11 フロントピラー
11a 下部ピラー
11b 上部ピラー
12 アウタパネル
13 インナパネル
14 車体中心
16 車室側対向面
16a 一部分
16b 他部分
19 フロアパネル
26 ピラーツーピラーメンバ
27 メンバ本体
28 支持板
28a 一部分
28b 一般部分
28b´ 突出部
28c 他部分
29 締結具
32 配置空間
33 インスツルメントパネル
34 パイプ継手
35 貫通孔
38 係合突起
39 係合突起
42 案内切り欠き
43 案内切り欠き
46 ビード
47 隙間
48 凹部
図1
図2
図3
図4