(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367588
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20180723BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
G06Q50/10ZJM
G08G1/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-69676(P2014-69676)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-191542(P2015-191542A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2017年1月23日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年1月17日 オープンデータユースケースコンテスト(主催:経済産業省・総務省)への応募のために、アプリケーションのテスト用サイト(http://test.fw.its−mo.com/bca_lod/)にて、情報処理装置の実行に用いるアプリケーションプログラムを利用可能にした。
(73)【特許権者】
【識別番号】500578216
【氏名又は名称】株式会社ゼンリンデータコム
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】金城 陽平
(72)【発明者】
【氏名】永崎 信次郎
(72)【発明者】
【氏名】高山 敏典
(72)【発明者】
【氏名】森永 久之
(72)【発明者】
【氏名】花島 知里
(72)【発明者】
【氏名】江口 千晶
【審査官】
牧 裕子
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/105516(WO,A1)
【文献】
特開2014−002672(JP,A)
【文献】
岡部 篤行 外2名,一般社団法人地理情報システム学会 講演論文集 Vol.22/2013 [CD−ROM] 一般社団法人 地理情報システム学会 第22回 GISA学術研究発表大会,2013年10月26日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 − 99/00
G16H 10/00 − 80/00
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末の測位情報を用いて、指定されたエリアに滞在する前記携帯端末のユーザを特定する滞在ユーザ特定手段と、
前記特定されたユーザのそれぞれについて、当該ユーザが高い頻度で滞在する場所である第1の行動拠点から前記指定されたエリアまでの第1の距離、及び当該ユーザが高い頻度で滞在する場所である第2の行動拠点から前記指定されたエリアまでの第2の距離を特定する距離特定手段と、
前記特定されたユーザ、前記特定された第1の距離、及び前記特定された第2の距離の情報を用いて、前記指定された領域の滞在者についての前記第1の行動拠点及び前記第2の行動拠点から前記指定されたエリアまでの距離に関する統計情報を出力する出力手段と
を備え、
前記出力手段による前記統計情報の出力は、前記指定された領域の滞在者について、前記第1の行動拠点、前記第2の行動拠点のいずれにも徒歩による移動が困難な者の数を出力することを含む、
情報処理装置。
【請求項2】
前記統計情報は、前記指定された領域の滞在者について、前記滞在者の前記第1の行動拠点又は前記第2の行動拠点から前記指定されたエリアまでの距離帯別の滞在者数の情報を含む、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記第1の行動拠点は前記特定されたユーザの自宅であり、前記第2の行動拠点は前記特定されたユーザの勤務地である、請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記出力手段による前記統計情報の出力は、徒歩による移動が困難になる者の割合について移動距離ごとに予め設定された情報を用いて、前記指定された領域の滞在者について、自宅、勤務地のいずれにも徒歩による移動が困難な者の数を出力することを含む、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
制御部を備えるコンピュータにおいて実施される方法であって、
前記制御部が、携帯端末の測位情報を用いて、指定されたエリアに滞在する前記携帯端末のユーザを特定する滞在ユーザ特定ステップと、
前記制御部が、前記特定されたユーザのそれぞれについて、当該ユーザが高い頻度で滞在する場所である第1の行動拠点から前記指定されたエリアまでの第1の距離、及び当該ユーザが高い頻度で滞在する場所である第2の行動拠点から前記指定されたエリアまでの第2の距離を特定する距離特定ステップと、
前記制御部が、前記特定されたユーザ、前記特定された第1の距離、及び前記特定された第2の距離の情報を用いて、前記指定された領域の滞在者についての前記第1の行動拠点及び前記第2の行動拠点から前記指定されたエリアまでの距離に関する統計情報を出力する出力ステップと
を備え、
前記出力ステップは、前記指定された領域の滞在者について、前記第1の行動拠点、前記第2の行動拠点のいずれにも徒歩による移動が困難な者の数を出力するステップを含む、
情報処理方法。
【請求項6】
コンピュータを、
携帯端末の測位情報を用いて、指定されたエリアに滞在する前記携帯端末のユーザを特定する滞在ユーザ特定手段、
前記特定されたユーザのそれぞれについて、当該ユーザが高い頻度で滞在する場所である第1の行動拠点から前記指定されたエリアまでの第1の距離、及び当該ユーザが高い頻度で滞在する場所である第2の行動拠点から前記指定されたエリアまでの第2の距離を特定する距離特定手段、
前記特定されたユーザ、前記特定された第1の距離、及び前記特定された第2の距離の情報を用いて、前記指定された領域の滞在者についての前記第1の行動拠点及び前記第2の行動拠点から前記指定されたエリアまでの距離に関する統計情報を出力する出力手段、
として機能させるためのプログラムであって、
前記出力手段による前記統計情報の出力は、前記指定された領域の滞在者について、徒歩により前記第1の行動拠点、前記第2の行動拠点のいずれにも移動が困難な者の数を出力することを含む、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末の位置情報を用いて、あるエリアに滞在する人に関する情報を特定する技術が知られている。特許文献1には、携帯端末の位置情報を蓄積し、蓄積された情報に基づいて人の行動を把握する技術が開示されている。また、近年、このように特定された情報を用いた様々なサービスが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−208871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなサービスの多様化に伴い、所定の位置に滞在している人についての統計情報など、携帯端末の位置情報を用いてより有益な情報を特定したいという要請がある。
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、その目的は、携帯端末の位置情報を用いてより有益な情報を特定する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る情報処理装置は、携帯端末の測位情報を用いて、指定されたエリアに滞在する前記携帯端末のユーザを特定する滞在ユーザ特定手段と、前記特定されたユーザのそれぞれについて、当該ユーザが高い頻度で滞在するエリアである行動拠点から、前記指定されたエリアまでの距離を特定する距離特定手段と、前記特定されたユーザ及び前記特定された距離の情報を用いて、前記指定された領域の滞在者についての前記行動拠点から前記指定されたエリアまでの距離に関する統計情報を出力する出力手段とを備える。
【0007】
本発明に係る情報処理方法は、制御部を備えるコンピュータにおいて実施される方法であって、前記制御部が、携帯端末の測位情報を用いて、指定されたエリアに滞在する前記携帯端末のユーザを特定する滞在ユーザ特定ステップと、前記制御部が、前記特定されたユーザのそれぞれについて、当該ユーザが高い頻度で滞在するエリアである行動拠点から、前記指定されたエリアまでの距離を特定する距離特定ステップと、前記制御部が、前記特定されたユーザ及び前記特定された距離の情報を用いて、前記指定された領域の滞在者についての前記行動拠点から前記指定されたエリアまでの距離に関する統計情報を出力する出力ステップとを備える。
【0008】
本発明に係るプログラムは、コンピュータを、携帯端末の測位情報を用いて、指定されたエリアに滞在する前記携帯端末のユーザを特定する滞在ユーザ特定手段、前記特定されたユーザのそれぞれについて、当該ユーザが高い頻度で滞在するエリアである行動拠点から、前記指定されたエリアまでの距離を特定する距離特定手段、前記特定されたユーザ及び前記特定された距離の情報を用いて、前記指定された領域の滞在者についての前記行動拠点から前記指定されたエリアまでの距離に関する統計情報を出力する出力手段、として機能させる。
【0009】
また、本発明のプログラムは、CD−ROM等の光学ディスク、磁気ディスク、半導体メモリなどの各種の記録媒体を通じて、又は通信ネットワークなどを介してダウンロードすることにより、コンピュータにインストール又はロードすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、携帯端末の位置情報を用いて有益な情報を特定する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態におけるシステムの構成を示す概念図である。
【
図2】一実施形態における情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】一実施形態における情報処理装置のソフトウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】一実施形態において、統計情報の表示方法の例を示す図である。
【
図5】一実施形態における情報処理装置で実施される処理を示すフローチャートである。
【
図6】一実施形態において、統計情報の表示方法の設定を行うためのユーザインタフェースの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、発明の範囲をこれらに限定するものではない。
【0013】
図1を参照して、一実施形態に係る混雑統計システムの構成について説明する。混雑統計システム1は、サーバ装置10及び複数の携帯端末20などの情報処理装置を主に備える。サーバ装置10と複数の携帯端末20は、ネットワークNを介して相互に通信することができる。なお、
図1では、3つの携帯端末20が記載されているが、サーバ装置10と通信可能な携帯端末20の数は、任意である。
【0014】
ネットワークNは、サーバ装置10と携帯端末20との間で情報を送受信するための通信回線である。例えば、インターネット、LAN、専用線、パケット通信網、電話回線、企業内ネットワーク、その他の通信回線、それらの組み合わせ等のいずれであってもよく、有線であるか無線であるかを問わない。
【0015】
サーバ装置10は、専用又は汎用のサーバ・コンピュータなどの情報処理装置を用いて実現することができる。なお、サーバ装置10は、単一の情報処理装置より構成されるものであっても、ネットワーク上に分散した複数の情報処理装置より構成されるものであってもよい。サーバ装置10が備える構成については、後述する。
【0016】
携帯端末20は、例えば、携帯電話機、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistants)、ナビゲーション装置、パーソナルコンピュータなどの現在位置を測位した測位情報を所定時間間隔でアップロードする機能を備えた情報端末(好ましくは、携帯端末)を適用することができる。携帯端末20は、図示しないが、主制御部、通信部、表示部、操作部、記憶部、測位処理部などの各種機能実現手段を主に備える。
【0017】
図2を参照して、サーバ装置10の一実施形態に係るハードウェア構成を説明する。サーバ装置10は、制御部11、通信部14、及び記憶部15を主に備える。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)12及びメモリ13を主に備えて構成される。サーバ装置10は、例えば、CPU12がメモリ13等に格納された所定のプログラムを実行することにより、各種の機能実現手段として機能する。なお、
図2は、サーバ装置10が備える主要な構成を示しているにすぎず、サーバ装置10は、一般的なサーバ装置が備える他の構成も備える。
【0018】
制御部11では、CPU12は、記憶部15等に記憶されたプログラムをメモリ13に展開して実行することにより、サーバ装置10が備える各種構成の動作を制御し、また、各種処理の実行を制御する。制御部11において実行される処理の詳細は後述する。
【0019】
通信部14は、ネットワークNを介して携帯端末20等の各種情報処理装置と通信するための通信インタフェースである。通信部14は、例えば、携帯端末20からの測位情報を受信する。
【0020】
記憶部15は、ハードディスク等の記憶装置によって構成される。記憶部15は、制御部11における処理の実行に必要な各種プログラムや各種の情報を記憶する。記憶部15に記憶されている情報の具体例については後述する。
【0021】
図3を参照して、サーバ装置10の一実施形態に係る機能構成を説明する。サーバ装置10は、機能構成として、行動拠点特定部111、滞在ユーザ特定部112、距離特定部113、統計情報出力部114、及びデータベース120を主に備える。これらの機能は、例えば、制御部11において、CPU12が、記憶部15等に記憶されたプログラムをメモリ13に展開して実行することにより実現される。以下に、各機能構成について詳細に説明する。
【0022】
まず、データベース120は、サーバ装置10において実行される処理に必要な情報、及び当該処理により生成された情報など、各種情報を記憶する。データベース120は、例えば、ユーザ情報、測位情報、地図情報、統計情報などを含む情報を記憶している。ユーザ情報は、携帯端末20のユーザについての情報である。測位情報は、携帯端末20を測位することにより得られた情報であり、測位した携帯端末20の識別情報、測位時刻、及び測位位置の情報を含む。統計情報は、ある位置に滞在している人についての統計情報であり、詳細は後述する。
【0023】
行動拠点特定部111は、データベース120を参照して、各携帯端末20についての測位情報に基づいて、携帯端末20のユーザの行動パターンを分析し、ユーザが高い頻度で滞在する場所である行動拠点、及び当該行動拠点が存在するエリアである行動拠点エリアを特定し、当該行動拠点及び行動拠点エリアの情報をユーザ情報と関連付けてデータベース120に記憶する。行動拠点には、例えば、自宅、勤務地、その他の良く行く場所(駅やお店)などが含まれる。
【0024】
ここで、本実施形態においてエリアとは、緯度経度に基づいて地図を分割することによって得られる。エリアの形状やサイズは、仕様や設計に応じて適宜設定することができる。例えば、エリアの形状は、四角形、六角形、ひし形等の多角形や、円等の曲線で囲まれた形状とすることができる。
【0025】
また、行動拠点を特定する具体的な処理の例として、行動拠点特定部111は、まず、データベース120に記憶された測位情報に基づいて、あるユーザの所定の期間における測位回数、滞在秒数及び滞在日数のうちの少なくとも2つ以上の組合せが、所定の閾値以上である場所を特定する。行動拠点特定部111は、例えば、特定された場所のうち、滞在日数が最大である場所を自宅として、滞在秒数が最大である場所を勤務地として、その他の場所をその他の良く行く場所としてそれぞれ特定する。なお、ユーザの行動パターンを分析する方法はこの例に限定されず、任意の方法を用いることができる。また、ここでは、ユーザの行動パターンを分析することによって行動拠点を設定しているが、この方法に限定されない。行動拠点特定部111は、例えば、ユーザからの申告(例えば、Webやメールを介しての登録申請、又はアンケートの提出)等によって得られた自宅や勤務地等の位置の情報に基づいて、行動拠点を設定してもよい。また、設定された行動拠点の情報をサーバ装置10のデータベース151に記憶しているが、これに限定されず、サーバ装置10以外の他の装置に記憶してもよい。
【0026】
滞在ユーザ特定部112は、データベース120に記憶された携帯端末20の測位情報を用いて、通信部14を介して指定されたエリアに滞在する携帯端末20のユーザを特定する。例えば、滞在ユーザ特定部112は、測位情報を参照して、指定されたエリアで測位された携帯端末20のユーザを特定する。もしくは、測位情報を参照して、指定されたエリアに所定時間以上滞在していたと判断された携帯端末20のユーザを特定する。携帯端末20の測位情報を用いて、指定されたエリアに滞在する携帯端末20のユーザを特定する方法は上記に限定されず、滞在するユーザを特定できる方法であれば、どのような方法であってもよい。また、滞在ユーザ特定部112は、通信部14を介して指定された時間帯、日、曜日、季節、及び/又は期間において、指定されたエリアに滞在していたユーザを特定することもできる。
【0027】
距離特定部113は、データベース120に記憶された行動拠点の情報を参照して、滞在ユーザ特定部112により特定されたユーザのそれぞれについて、当該ユーザが滞在しているエリア(すなわち、前述の指定されたエリア)から、当該ユーザの行動拠点までの距離を特定する。前述のとおり、行動拠点には、ユーザの自宅や勤務地の位置が含まれる。距離を特定する方法として、例えば、距離特定部113は、ユーザが滞在しているエリアから、当該ユーザの自宅までの徒歩ルートを探索し、当該ルートの距離を特定する。なお、距離は、徒歩ルートの距離に限定されず、直線距離など、ユーザが滞在しているエリアから当該ユーザの自宅までについての距離であればどのような距離であってもよい。
【0028】
統計情報出力部114は、滞在ユーザ特定部112により特定された指定エリアに滞在する携帯端末20のユーザの情報と、距離特定部113により特定された行動拠点までの距離の情報とを用いて、指定されたエリアにおける滞在者についての行動拠点から当該エリアまでの距離に関する統計情報を出力する。
【0029】
このように出力された、指定されたエリアにおける滞在者についての行動拠点から当該エリアまでの距離に関する統計情報は、様々な場面で利用することができる。例えば、震災などによって鉄道などの交通機関が止まっているときに、被災地を指定エリアとする統計情報を出力することによって、被災地から、滞在者の自宅までの距離に応じて、自宅に歩いて帰れない者がどの程度いるかの判断に当該情報を用いることができる。また、観光地や商店街を指定エリアとする統計情報を出力することによって、観光地や商店街から、滞在者の自宅までの距離に応じて、観光地や商店街で販売する商品のマーケティングを行うために当該情報を用いることができる。従って、本実施形態によれば、統計情報出力部114は、携帯端末20の位置情報を用いて、有益な情報を特定することができる。
【0030】
また、統計情報の出力として、例えば、統計情報出力部114は、指定エリアから、当該指定エリアにおける滞在者のある行動拠点(例えば、自宅又は勤務地)までの距離帯(距離レンジ)別の滞在者数の情報を出力することができる。具体的には、統計情報出力部114は、まず、指定エリアから、滞在ユーザ特定部112により特定された各ユーザのある行動拠点(例えば、自宅又は勤務地)までの距離帯別に、当該指定エリアに滞在する携帯端末20のユーザの数を特定する。その後、統計情報出力部114は、距離帯別に特定されたユーザ数と、人口に対する測位情報を収集可能な携帯端末20の数の割合(携帯端末20の所有率)とを用いて、距離帯別に指定エリアの滞在者数(の推定値)を算出する。例えば、ある距離帯に属するユーザ数が20人であり、携帯端末20の所有率が0.1である場合、指定エリアへの滞在者のうち、行動拠点までの距離がその距離帯である滞在者の数は、20÷0.1=200(人)となる。統計情報出力部114は、距離帯別に算出された指定エリアにおける滞在者数を統計情報として出力する。なお、携帯端末20の所有率は、全国の平均値を用いても良いし、滞在者数をより正確に算出するために、指定エリアやユーザの自宅エリアが属する地域(例えば、都道府県)の値を用いても良い。
【0031】
図4は、統計情報出力部114により出力された統計情報(指定エリアにおける滞在者について、指定エリアからある行動拠点までの距離帯別に特定された滞在者の数)の表示(例えば、当該統計情報を受信した端末装置の表示部での表示)の例を示している。この例では、指定エリアから各滞在者の行動拠点までの距離帯(0〜10km、10〜20km、20km〜50km、50km〜)別に、指定エリアにおける滞在者の数が示されている。また、この例では、(例えば、「+」の部分をクリックすることによって)さらに詳細な距離帯別の滞在者の数を表示することができ、
図4には、20〜50kmの距離帯についての詳細な距離帯別の滞在者数が示されている。
【0032】
また、統計情報出力部114は、指定エリアから行動拠点までの距離に関する統計情報として、当該指定エリアから徒歩による帰宅が困難な者(帰宅困難者)の数を出力することができる。具体的には、まず、滞在位置から自宅までの距離に応じた帰宅困難率(当該距離において、徒歩による帰宅が困難になる者の割合の推定値)を設定しておく。例えば、滞在位置から自宅までの距離が10km未満であるときは帰宅困難率を0%(すなわち、帰宅困難になる者はいない)、当該距離が10km〜11kmであるときは帰宅困難率を10%(すなわち、帰宅困難になる者は10%)に設定し、以降、距離帯が1km上がるごとに帰宅困難率が10%ずつ上がり、20km以上では帰宅困難率が100%になるように設定しておく。次に、統計情報出力部114は、上記で説明したように特定された指定エリアから行動拠点(自宅)までの距離帯別の滞在者の数のそれぞれに対して、指定エリアを滞在位置としたときに対応する距離帯の帰宅困難率を乗じることによって、当該距離帯ごとの帰宅困難者の数を算出する。例えば、指定エリアにおいて、当該指定エリア(滞在位置)から行動拠点(自宅)までの距離帯が10km〜11kmである滞在者の数が100人であり、当該距離帯の帰宅困難率が11%である場合、指定エリアに滞在しており当該距離帯に自宅がある者のうち、帰宅困難者の数は、100×0.11=11(人)となる。そして、統計情報出力部114は、算出された距離帯ごとの帰宅困難者の数を合算した値を帰宅困難者の数として出力する。すなわち、統計情報出力部114は、滞在ユーザ特定部112により特定されたユーザの情報と、距離特定部113により特定された距離の情報と、徒歩による帰宅が困難になる者の割合について自宅までの距離ごとに予め設定された情報とを用いて、指定された領域の滞在者について、徒歩による帰宅が困難な者の数を出力する。
【0033】
また、統計情報出力部114は、行動拠点として勤務地の情報を用いることによって、帰宅困難者の数の算出と同様の方法により、指定エリアから徒歩による勤務地への移動が困難な者(勤務地移動困難者)の数を算出して出力することができる。すなわち、統計情報出力部114は、滞在ユーザ特定部112により特定されたユーザの情報と、距離特定部113により特定された距離の情報と、徒歩による勤務地への移動が困難になる者の割合について勤務地までの距離ごとに予め設定された情報とを用いて、指定された領域の滞在者について、徒歩による勤務地への移動が困難な者の数を出力する。
【0034】
さらに、統計情報出力部114は、上記のように算出された帰宅困難者のうち、勤務地移動困難者の数を算出することによって、地震などの震災時に、指定エリアにおける滞在者のうち、自宅に帰れず、勤務地に避難することもできない者の数の推定値を算出することができる。
【0035】
次に、
図5を参照して、サーバ装置10において実行される処理のフローの例を説明する。なお、以下に説明する処理フローに含まれる各処理ステップは、処理内容に矛盾を生じない範囲で、任意に順番を変更して又は並列に実行することができるとともに、各処理ステップ間に他のステップを追加してもよい。また、便宜上1ステップとして記載されているステップは、複数ステップに分けて実行することができる一方、便宜上複数ステップに分けて記載されているものは、1ステップとして把握することができる。
【0036】
まず、ステップS11において、制御部11は、通信部14を介して受信した外部の端末装置(図示せず)からの指示に応じて、データベース120に記憶された携帯端末20の測位情報を参照して、指定されたエリアに滞在する携帯端末20のユーザを特定する。
【0037】
ステップS12において、制御部11は、データベース120に記憶された行動拠点の情報を参照して、ステップS11において特定されたユーザのそれぞれについて、当該ユーザが滞在しているエリア(すなわち、前述の指定されたエリア)から、当該ユーザの行動拠点までの距離を特定する。
【0038】
ステップS13において、制御部11は、ステップS11において特定された指定エリアに滞在する携帯端末20のユーザの情報と、ステップS12において特定された行動拠点までの距離の情報とを用いて、指定されたエリアにおける滞在者についての当該エリアから行動拠点までの距離に関する統計情報を出力する。
【0039】
図4は、前述のとおり、指定されたエリアにおける滞在者についての当該エリアから行動拠点までの距離に関して出力された統計情報の表示例を示している。また、統計情報の内容は、通信部14を介して受信した外部装置のユーザの指示による設定に応じて、変更することができる。
【0040】
図6は、出力される統計情報の表示設定をするためのユーザインタフェースの例を示している。まず、「データ種別」とは、ユーザの携帯端末20の測位情報のうち、どのような測位情報を参照して統計情報を出力するかの設定項目である。
【0041】
この例において、「データ種別」として、「全体」、「流動者」、「勤務者」又は「在宅者」のいずれかを選択して設定することができる。「全体」は、全てのユーザの携帯端末20の測位情報を用いる設定である。「流動者」は、指定されたエリアに流動者(指定されたエリアが自宅エリアでも勤務地エリアでもない者)として滞在しているユーザの携帯端末20の測位情報を用いる設定である。「勤務者」は、指定されたエリアに勤務地エリアが含まれるユーザの携帯端末20の測位情報を用いる設定である。「在宅者」は、指定されたエリアに自宅エリアが含まれるユーザの携帯端末20の測位情報を用いる設定である。
【0042】
また、「期間」は、統計情報を出力するために参照する測位情報の期間を設定するための項目である。
図6には、日付を指定する例が示されているが、これに限定されず、複数の日付、曜日、月、又は季節など、任意の期間を設定することができる。「時間」は、統計情報を出力するために参照する測位情報の時間帯を設定するための項目である。「距離種別」は、指定エリアからどの行動拠点(自宅、勤務地、又はその他の行動拠点)までの距離についての統計情報を出力するかを設定するための項目である。「距離レンジ」は、出力する統計情報の距離の範囲(例えば、指定エリアから行動拠点までの距離が何kmまでの統計情報を出力するかの範囲)を設定するための項目である。「表示メッシュ」は、指定されるエリアのサイズ(例えば、250m四方であるか、500m四方であるか)を設定するための項目である。
【0043】
以上のように、本実施形態によれば、指定されたエリアにおける滞在者についての当該エリアから行動拠点までの距離に関する様々な統計情報を出力することができるため、有益な情報を特定することができる。
【0044】
本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、他の様々な形で実施することができる。上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。
【符号の説明】
【0045】
1 混雑統計システム、10 サーバ装置、11 制御部、12 CPU、13 メモリ、14 通信部、15 記憶部、20 携帯端末