特許第6367597号(P6367597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6367597可食体の搬送装置ならびに当該搬送装置を備えた可食体処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367597
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】可食体の搬送装置ならびに当該搬送装置を備えた可食体処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/06 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
   A61J3/06 Q
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-85076(P2014-85076)
(22)【出願日】2014年4月17日
(65)【公開番号】特開2015-204851(P2015-204851A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2017年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141886
【氏名又は名称】株式会社京都製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100103241
【弁理士】
【氏名又は名称】高崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】東 裕晃
【審査官】 立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−013711(JP,A)
【文献】 特開平09−288061(JP,A)
【文献】 特開平04−041357(JP,A)
【文献】 特開昭49−006669(JP,A)
【文献】 特開平03−123379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 3/06
B65G 47/00−47/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可食体を搬送する搬送装置において、
受け渡される可食体を搬送面に配置した状態で搬送する搬送手段と、
前記搬送手段への可食体の受渡し部分に設けられ、前記搬送手段による搬送中に前記受渡し部分において可食体を前記搬送面の裏側から吸引することで前記搬送面の上に吸着保持させる吸引手段と、
前記吸引手段による吸引力を、前記受渡し部分において前記搬送手段による可食体の搬送中に搬送方向に沿って徐々に低下させる吸引力低下手段とを備え、
前記吸引手段は、前記受渡し部分において前記搬送面の裏側に設けられたチャンバ部と、前記チャンバ部内のエアを吸引する吸引部とから構成されており、
前記吸引力低下手段は、前記チャンバ部の流路抵抗が前記搬送手段の搬送方向に沿って徐々に増加するように、前記チャンバ部を構成している、
ことを特徴とする可食体の搬送装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記吸引力低下手段は、前記チャンバ部の断面積が前記搬送手段の搬送方向に沿って徐々に減少するように、前記チャンバ部を構成している、
ことを特徴とする可食体の搬送装置。
【請求項3】
請求項に記載の搬送装置を備え、可食体に対して処理を行う可食体処理装置において、
当該可食体処理装置が複数の処理ユニットから構成されており、
前記吸引手段および前記吸引力低下手段が、搬送方向上流側の前記処理ユニットから搬送方向下流側の前記処理ユニットへの可食体の受渡し部分に設けられている、
ことを特徴とする可食体処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤やカプセル等の経口投与剤および食品等の可食体(つまり人が食べることができるもの)の搬送方法および搬送装置に関し、詳細には、装置全体の構造を簡略化しつつ可食体を搬送面上で安定して搬送できるようにするための手法および構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2009/025371号には、錠剤を搬送ベルトで搬送しつつ搬送中の錠剤に印刷を施す錠剤印刷装置において、搬送中の錠剤が搬送ベルト上で位置ずれを起こすのを防止するために、搬送ベルトに搬送方向のスリットを形成し、スリット上に錠剤を配置するとともに、当該スリットから吸引することで錠剤を搬送ベルト上に吸着保持するようにしたものが記載されている(段落[0056]〜〔0064]ならびに図2および図3参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記公報に記載された装置では、搬送ベルトのスリット上の錠剤を搬送経路全長にわたって吸引することで搬送中の錠剤を搬送経路全長にわたって搬送ベルト上に吸着保持することができ、錠剤の搬送速度を高速にしても錠剤を安定して搬送できるようになる反面、吸引装置を搬送ベルトの搬送経路全長にわたって設けなければならず、吸引装置を含む装置全体の構造が複雑になるという欠点がある。
【0004】
その一方、装置全体の構造をできるだけ簡略化させつつ、錠剤やカプセル等の経口投与剤および食品等の可食体を搬送面上で安定して搬送させ、可食体に対する印刷精度を向上させたいとする業界の要請がある。
【0005】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、装置全体の構造を簡略化させつつ、可食体を搬送面上で安定して搬送できる可食体用搬送方法および搬送装置ならびに可食体処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、可食体を搬送する搬送装置において、受け渡される可食体を搬送面に配置した状態で搬送する搬送手段と、搬送手段への可食体の受渡し部分に設けられ、搬送手段による搬送中に受渡し部分において可食体を搬送面の裏側から吸引することで搬送面の上に吸着保持させる吸引手段と、吸引手段による吸引力を、受渡し部分において搬送手段による可食体の搬送中に搬送方向に沿って徐々に低下させる吸引力低下手段とを備え、吸引手段が、受渡し部分において搬送面の裏側に設けられたチャンバ部と、チャンバ部内のエアを吸引する吸引部とから構成されており、吸引力低下手段が、チャンバ部の流路抵抗を搬送手段の搬送方向に沿って徐々に増加させるようにチャンバ部を構成している。
【0007】
本発明に係る搬送装置によれば、吸引手段による可食体に対する吸引を搬送手段受渡し部分で行うようにしたので、搬送経路全長にわたって吸引手段を設ける必要がなくなり、これにより、装置全体の構造を簡略化できる。しかも、吸引力低下手段が、搬送手段による可食体の搬送中に、チャンバ部の流路抵抗を搬送手段の搬送方向に沿って徐々に増加させることで、吸引手段による吸引力を受渡し部分において搬送方向に沿って徐々に低下させており、これにより、吸引力の急激な変化が原因で可食体が搬送面上で暴れたり振動したりすることなく、可食体を搬送面上で安定して搬送できるようになる。
【0008】
本発明において、吸引力低下手段は、チャンバ部の断面積が搬送手段の搬送方向に沿って徐々に減少するように、チャンバ部を構成している。
【0015】
本発明に係る可食体処理装置は、本発明に係る搬送装置を備えた可食体処理装置において、当該可食体処理装置が可食体に対して処理を行う複数の処理ユニットから構成されており、吸引手段および吸引力低下手段が、搬送方向上流側の処理ユニットから搬送方向下流側の処理ユニットへの可食体の受渡し部分に設けられている。
【0016】
本発明の可食体処理装置によれば、本発明に係る搬送装置の吸引手段および吸引力低下手段が、当該搬送装置の搬送手段の搬送経路全長にわたって設けられるのではなく、搬送方向上流側の処理ユニットから搬送方向下流側の処理ユニットへの可食体の受渡し部分に設けられるので、当該搬送装置を含む可食体処理装置全体の構造を簡略化できる。しかも、吸引力低下手段が、搬送方向上流側の処理ユニットから搬送方向下流側の処理ユニットへの可食体受渡し部分において、吸引手段による吸引力を搬送方向に沿って徐々に低下させているので、可食体がこれらの受渡し部分で暴れたり振動したりすることなく、可食体をこれらの受渡し部分で安定して搬送でき、これにより、処理精度を向上できるようになる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によれば、可食体に対する吸引を搬送手段への可食体の受渡し部分において行うようにしたので、搬送経路全長にわたって吸引手段を設ける必要がなくなり、これにより、装置全体の構造を簡略化できる。しかも、当該受渡し部分において可食体の搬送中に吸引力を搬送方向に沿って徐々に低下させており、これにより、吸引力の急激な変化が原因で可食体が搬送面上で暴れたり振動したりすることなく、可食体を搬送面上で安定して搬送できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施例による搬送装置が採用された可食体処理装置としての経口投与剤印刷装置の概略構成図である。
図2】前記搬送装置(図1)の搬送方向上流部分の平面概略図である。
図3】前記搬送装置(図1)の搬送方向上流部分の縦断面図である。
図4図2のIV-IV線断面図であって、前記搬送装置(図1)の搬送方向上流部分の横断面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1ないし図4は、本発明の一実施例による搬送装置を説明するための図である。ここでは、可食体として錠剤等の経口投与剤(図示例では円盤状つまり平面形状が円形状のもの)を例にとるとともに、可食体処理装置として経口投与剤用印刷装置を例にとっている。図1は、本搬送装置を含む経口投与剤用印刷装置の概略構成を示しており、図2ないし図4は、本搬送装置の詳細を示している。
【0020】
図1に示すように、この印刷装置1は、錠剤やカプセル等の経口投与剤Wに印刷処理を行うための装置であって、処理すべき多数の経口投与剤Wが収容されたホッパ(図示せず)から導入される経口投与剤Wを順次供給する供給部2と、供給部2から供給された各経口投与剤Wを図示矢印方向(同図右方)に搬送する第1の搬送コンベア3と、第1の搬送コンベア3の下方に配設され、第1の搬送コンベア3から移載されかつ表裏が反転された各経口投与剤Wを図示矢印方向(同図左方)に搬送する第2の搬送コンベア4と、第2の搬送コンベア4の下流端において第2の搬送コンベア4の上方に配設され、第2の搬送コンベア4から移載された各経口投与剤Wを良品および印刷不良等の不良品に分けて系外排出する排出コンベア5とを備えている。
【0021】
第1の搬送コンベア3は、プーリ30および反転ローラ31に巻き掛けられ、第2の搬送コンベア4は、プーリ40、41に巻き掛けられ、排出コンベア5は、プーリ50、51に巻き掛けられている。各コンベアは、例えばサーボモータによって駆動されており、各コンベアの位置は、例えばエンコーダによって検出されている。反転ローラ31の内部には、反転中の各経口投与剤Wを吸着保持するためのチャンバ部31Aが設けられており、排出コンベア5の内部には、搬送中の各経口投与剤Wを吸着保持するためのチャンバ部5Aが設けられている。なお、図示していないが、反転ローラ31内部のチャンバ部31Aは、円周方向に沿って配設された複数のチャンバから構成されており、チャンバごとに正圧を噴出できるようになっている。
【0022】
第1の搬送コンベア3には、第1の搬送コンベア3の搬送方向上流側に配置され、印刷処理前の各経口投与剤Wを検出する検出用センサSと、第1の搬送コンベア3による搬送中に各経口投与剤Wの一方の面に文字や図形、絵柄等の印刷を行う印字ヘッドPとが設けられている。同様に、第2の搬送コンベア4には、第2の搬送コンベア4の搬送方向上流側に配置され、印刷処理前の各経口投与剤Wを検出する検出用センサS’と、第2の搬送コンベア4による搬送中に各経口投与剤Wの他方の面に文字や図形、絵柄等の印刷を行う印字ヘッドP’と、印刷処理後の経口投与剤Wを検査する検査用センサS’とが設けられている。排出コンベア5には、排出コンベア5の搬送方向上流側に配置され、経口投与剤Wを検査する検査用センサSと、不良品排出用シュート55、56および良品排出シュート57と、エアを噴出することで各経口投与剤Wをそれぞれ対応するシュートに排出するためのノズルN、N、Nと、各経口投与剤Wの排出の有無を確認するためのセンサS、Sとが設けられている。
【0023】
経口投与剤Wの検出用および検査用の各センサS、S’およびS、S’は、例えばエリアセンサカメラやラインセンサカメラから構成されている。印字ヘッドP、P’は、例えばインクジェットプリントヘッドまたはレーザープリントヘッドから構成されている。
【0024】
第1の搬送コンベア3は、図2に示すように、複数本(この例では8本)の搬送ベルト32から構成されている。各搬送ベルト32は、各々の搬送方向(図示矢印方向)と直交する方向に所定の間隙32cを隔てて配設されており、各経口投与剤Wは、これらの間隙32c上に配置されている。各経口投与剤Wは、直線状に延びる各間隙32cに沿って搬送方向に整列して配置されており、そのため、第1の搬送コンベア3は、経口投与剤搬送用の7本のレーンを有している。各経口投与剤Wは、各搬送ベルト32の各々の搬送面により構成される、第1の搬送コンベア3の搬送面上において、搬送方向(図2左右方向)およびこれと直交する方向(同図上下方向)に配置されており、搬送面全体に分布している。
【0025】
なお、ここでの図示は省略するが、第2の搬送コンベア4および排出コンベア5も、第1の搬送コンベア3と同様に、互いに間隙を隔てて配設された複数本(ここでは8本)の搬送ベルトから構成されており、各経口投与剤Wは、対応する各間隙の上に配置されている。各経口投与剤Wは、これらの搬送ベルトの各々の搬送面により構成されるコンベア搬送面上において、搬送方向およびこれと直交する方向に配置されており、コンベア搬送面全体に分布している。
【0026】
供給部2は、第1の搬送コンベア3に向かって下方に傾斜しつつ(図1参照)、その後端部分(図1図2右端部分)が第1の搬送コンベア3の上にオーバラップして配置されている。供給部2は、図2に示すように、経口投与剤Wが通過し得る複数本(この例では7本)の溝20を有しており、各溝20は、各搬送ベルト3の各間隙3c上において搬送方向に沿って延びている。供給部2の後端部分において各溝20の搬送方向下流側には、各溝20と同程度の幅を有しかつ各々上下方向(図2紙面垂直方向)に開口する開口部21がそれぞれ形成されており、各開口部21も各搬送ベルト3の各間隙3c上において搬送方向に沿って延びている。
【0027】
第1の搬送コンベア3の下方には、図3および図4に示すように、各搬送ベルト32に下方から当接する当接ベース35が配置されている。当接ベース35は、第1の搬送コンベア3の搬送方向およびこれと直交する方向に延在する部材である。
【0028】
当接ベース35において、供給部2と第1の搬送コンベア3とのオーバラップ部分に対応する領域およびこれに続く搬送方向下流側領域の一部には、当該当接ベース35を上下に貫通する多数の貫通孔35aが形成されている。各貫通孔35aは、各搬送ベルト32の各間隙3cに沿って整列して配置されており、各間隙3cに開口している(図2参照)。すなわち、各貫通孔35aは、第1の搬送コンベア3の搬送面の側に開口している。
【0029】
当接ベース35の下方(つまり第1の搬送コンベア3の搬送面の裏側)には、各貫通孔35aに連通する内部空間であるチャンバ部10が設けられている。チャンバ部10は、図3および図4に示すように、当接ベース35の搬送方向上流側に配置されかつ横断面形状(つまり搬送方向と直交方向の断面形状)が同一矩形状の内部空間を画成する上下方向の側壁部10A、10B、10Cおよび水平方向の底壁部10Dと、搬送方向下流側に配置されかつ横断面形状が搬送方向下流側に向かうにしたがい徐々に扁平な矩形状となる(すなわち横断面積が徐々に減少する)内部空間を画成する上下方向の側壁部10B、10Cおよび斜め上方に傾斜する底壁部10Eとから構成されている。チャンバ部10は、図示していないが、外部のブロアやバキュームポンプ等に連結されており、これらのブロアやバキュームポンプの駆動により、チャンバ部10の内部のエアが吸引されるようになっている。
【0030】
このように、チャンバ部10と連通する各貫通孔35aからエアが吸引されることで、第1の搬送コンベア3の搬送面上の各経口投与剤Wが、隣り合う各搬送ベルト32間の各間隙32cから下方に吸引されて、当該搬送面上に吸着保持されるようになっている。そして、チャンバ部10を画成する壁部の一つである底壁部10Eが搬送方向下流側に向かって斜め上方に傾斜しており、搬送方向下流側の内部空間の横断面積が搬送方向下流側に向かうにしたがい徐々に減少しているので、当該内部空間の流路抵抗は搬送方向下流側に向かうにしたがい徐々に増加している。そのため、経口投与剤Wに対する各貫通孔35aからの吸引力は、当該内部空間において搬送方向下流側の貫通孔35aほど低下することになる(図3中の矢印参照)。
【0031】
第2の搬送コンベア4の搬送方向上流側において、第2の搬送コンベア4の搬送面の裏側には、チャンバ部10と同様のチャンバ部11が設けられている(図1参照)。すなわち、チャンバ部11についても、その内部空間の横断面積が搬送方向下流側に向かうにしたがい徐々に減少しており、チャンバ部11を画成する壁部の一つである底壁部が搬送方向下流側にいくにしたがい、斜め上方に(つまり搬送面に向かって)直線状に傾斜している。また、チャンバ部11は、外部のブロアやバキュームポンプ等に連結されており、これらのブロアやバキュームポンプの駆動によりチャンバ部11の内部のエアが吸引されることで、経口投与剤Wが第2の搬送コンベア4の搬送面上に吸着保持されるようになっている。
【0032】
次に、本実施例の作用効果について説明する。
上述のように構成される印刷装置1の運転時には、供給部2から供給される多数の経口投与剤Wは、供給部2の各溝20を通って搬送方向下流側の第1の搬送コンベア3に向かって移動する(図1図2参照)。そして、各経口投与剤Wが供給部2の搬送方向下流端の開口部21の位置まで移動すると、各経口投与剤Wは、第1の搬送コンベア3の対応する各搬送ベルト32の間の各間隙32c上に配置される。このとき、第1の搬送コンベア3の裏面側に設けられたチャンバ部10内のエアが吸引されていることで、各貫通孔35aからエアが吸引されており、そのため、各間隙32c上に配置された各経口投与剤Wは、各貫通孔35aから間隙32cに作用する吸引力によって、対応する各搬送ベルト32の各搬送面上に吸着保持される。
【0033】
対応する各搬送ベルト32の各搬送面上に配置された経口投与剤Wは、当該各搬送面上に吸着保持された状態で、各搬送ベルト32の走行とともに搬送方向下流側(図2右側)に向かって移動する。経口投与剤Wが、チャンバ部10の底壁部10Eの上方に位置する各貫通孔35aの位置までくると(図3参照)、これらの貫通孔35aからの吸引力が、搬送方向下流側に向かうにしたがい徐々に低下する。これにより、各搬送ベルト32上の経口投与剤Wに対する吸引力が急激に変化することがないので、吸引力の急激な変化が原因で経口投与剤Wが搬送面上で暴れたり振動したりすることなく、経口投与剤Wを搬送ベルト32の搬送面上で安定して搬送できるようになる。その結果、第1の搬送コンベア3上において、検出用センサSによる経口投与剤Wの検出精度、および印字ヘッドPによる経口投与剤Wの印刷精度を向上できる。
【0034】
経口投与剤Wが反転ローラ31の位置まで移動すると、反転ローラ31内部のチャンバ部31A内のエアが吸引されていることで、各搬送ベルト32の各間隙32c上に配置された経口投与剤Wは、各間隙32cに作用する吸引力によって、対応する各搬送ベルト32の各搬送面上に吸着保持され、その状態で各搬送ベルト32の走行とともに反転ローラ31の周りを回転して、下方の第2の搬送コンベア4に向かって移動する。
【0035】
反転ローラ31上の経口投与剤Wが第2の搬送コンベア4と対向する位置まで移動すると、当該経口投与剤Wに対応する反転ローラ内部のチャンバから正圧が噴出されるので、当該経口投与剤Wは第2の搬送コンベア4に移載される。
【0036】
反転ローラ31から第2の搬送コンベア4に受け渡された経口投与剤Wは、第2の搬送コンベア4を構成する各搬送ベルトの間の各間隙の上に載置される。このとき、第2の搬送コンベア4の裏面側に設けられたチャンバ部11内のエアが吸引されているので、各搬送ベルトの各間隙上に配置された各経口投与剤Wは、各間隙に作用する吸引力によって、対応する各搬送ベルトの各搬送面上に吸着保持され、その状態で第2の搬送コンベア4の走行とともに搬送方向下流側(図1左側)に向かって移動する。
【0037】
このとき、チャンバ部11の内部空間の横断面積が搬送方向下流側に向かうにしたがい徐々に減少しており、そのため、第2の搬送コンベア4上の経口投与剤Wに対する吸引力は、搬送方向下流側に向かうにしたがい徐々に低下する。これにより、各搬送ベルト上の経口投与剤Wに対する吸引力が急激に変化することがないので、吸引力の急激な変化が原因で経口投与剤Wが搬送面上で暴れたり振動したりすることなく、経口投与剤Wを第2の搬送コンベア4の搬送面上で安定して搬送できるようになる。その結果、第2の搬送コンベア4上において、検出用センサS’による経口投与剤Wの検出精度、印字ヘッドP’による経口投与剤Wの印字精度、ならびに検査用センサS’による経口投与剤Wの検査精度を向上できる。
【0038】
次に、第2の搬送コンベア4の搬送方向下流側に向かって搬送される各経口投与剤Wは、排出コンベア5の搬送面と対向する位置まで移動すると、排出コンベア5の裏面側のチャンバ部5A内のエアが吸引されていることで、第2の搬送コンベア4から排出コンベア5の搬送面に受け渡されて、排出コンベア5の搬送面に吸着保持される。その状態で排出コンベア5の走行とともに、搬送方向下流側(図1左側)に向かって移動する。
【0039】
排出コンベア5により搬送される各経口投与剤Wは、排出コンベア5の搬送方向上流側において、検査用センサSにより、第1のコンベア3での搬送中の印字ヘッドPによる印刷状態ならびに経口投与剤Wの印刷側の一方の面の状態が検査される。その一方、第2のコンベア4での搬送中の印字ヘッドP’による印刷状態は、検査用センサS’により検査されている。検査用センサSまたはS’の検査結果により印刷不良等の不良品と判断された経口投与剤Wは、排出コンベア5による搬送中に、ノズルNからのエア噴出によって不良品排出シュート55に排出される。不良品の排出の有無は、下流側のセンサSによって検出される。ノズルNによる不良品排出が失敗した場合には、当該不良品はノズルNからのエア噴出によって不良品排出シュート56に排出される。不良品の排出の有無は、下流側のセンサSによって検出される。万一、当該不良品の排出がさらに失敗した場合には、装置が緊急停止する。また、良品に関しては、排出コンベア5の搬送方向下流側において、ノズルNからのエア噴出によって良品排出シュート57に排出されるようになっている。
【0040】
このような本実施例によれば、各チャンバ部10、11を各々対応するコンベアの搬送経路の一部(具体的には、供給部2から第1の搬送コンベア3への経口投与剤受渡し部分、および反転ローラ31から第2の搬送コンベア4への経口投与剤受渡し部分)にのみ設け、経口投与剤Wに対する吸引を各コンベアの搬送経路の一部でのみ行うようにしたので、搬送経路全長にわたってチャンバ部を設ける必要がなくなり、これにより、装置全体の構造を簡略化でき、装置全体を小型化できる。
【0041】
しかも、各チャンバ部10、11の各内部空間の横断面積を搬送方向下流側に向かうにしたがい徐々に減少させるようにしたので、各経口投与剤Wに対する吸引力を搬送方向下流側に向かうにしたがい徐々に低下させることができ、これにより、上記各経口投与剤受渡し部分において、吸引力の急激な変化が原因で各経口投与剤Wがコンベア搬送面上で暴れたり振動したりすることなく、各経口投与剤Wを上記各経口投与剤受渡し部分のコンベア搬送面上で安定して搬送できるようになり、これにより、経口投与剤の検出精度や検査精度ならびに印刷精度を向上できる。さらに、各コンベアが多数の経口投与剤Wを搬送面上において搬送方向およびこれと直交する方向に配置しつつ搬送するので、一度に多量の経口投与剤Wを搬送でき、印刷処理速度を含む処理速度を向上できる。
【0042】
以上、本発明に好適な実施例について説明したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、本発明には種々の変形例が含まれる。以下に変形例のいくつかの例を挙げておく。
【0043】
前記実施例では、可食体として錠剤等の経口投与剤を例にとって説明したが、本発明は、菓子類等の食品やその他の可食体にも適用でき、これらに印刷等の処理を行う処理装置に適用可能である。
【0044】
前記実施例では、経口投与剤Wを搬送するコンベアとして、互いに離間配設された複数本のベルトが用いられているが、これら複数本のベルトの代わりに、搬送方向と直交する方向にも延設された幅広の1本のベルトを用い、当該ベルトの搬送面に多数の貫通孔を形成してこれらの貫通孔からエアを吸引することで、各経口投与剤Wを搬送面上で吸着保持するようにしてもよい。
【0045】
前記実施例では、各チャンバの横断面積を減少させる壁として、コンベアの搬送方向下流側にいくにしたがってコンベア搬送面に向かって斜め方向に直線状に延びる底壁部を用いた例を示したが、当該底壁部の代わりに、例えば、搬送コンベアに向かって斜め方向に階段状または波板状に延びる底壁部を用いるようにしてもよく、その他の断面形状を有する壁(例えば壁面にリブを配設したもの等)を用いてもよい。また、このような壁において、壁面での摩擦損失を増大させるために、壁面の摩擦係数を増大させるような表面処理を当該壁面に施すようにしてもよい。例えば、シボ加工やサンドブラスト処理を施すことにより、表面に多数の凹凸を形成する等。
【0046】
前記実施例では、チャンバ部内の流路抵抗を徐々に増大させるための手法としては、チャンバ部の内部空間の横断面積を搬送方向下流側に向かって徐々に減少させるようにした例を示したが、その他の手法を採用するようにしてもよい。例えば、これとは逆に、チャンバ部の内部空間の横断面積を搬送方向下流側に向かって徐々に増大させるようにしてもよい。あるいは、各貫通孔の径を搬送方向下流側に向かうにしたがって徐々に小さくしたり、各貫通孔の径を変化させずに各貫通孔の内面の粗さを搬送方向下流側に向かうにしたがって徐々に粗くしたりしてもよい。
【0047】
前記実施例では、印刷装置1が反転ローラ31を有し、反転後の経口投与剤Wにも印字を行うようにした例を示したが、経口投与剤Wの表裏いずれか一方の面にのみ印字すればよい場合には、反転ローラ31は省略可能である。
【0048】
前記実施例では、吸引手段の一部を構成するチャンバ部10、11を、供給部2から第1の搬送コンベア3への経口投与剤受渡し部分、反転ローラ31から第2の搬送コンベア4への経口投与剤受渡し部分の双方に設けた例を示したが、反転ローラ31が省略できる場合には、当然のことながら、チャンバ部12は不要となる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように、本発明は、経口投与剤の搬送方法および搬送装置に有用であり、とくに、装置全体の構造の簡略化ならびに経口投与剤の搬送の安定化を要求されるものに適している。
【符号の説明】
【0050】
1: 経口投与剤用印刷装置(可食体処理装置)

2: 供給部

3: 第1の搬送コンベア(搬送手段)
31: 反転ローラ

4: 第2の搬送コンベア(搬送手段)

10、11: チャンバ部(吸引手段)
10E: 底壁部(吸引力低下手段)

W: 経口投与剤(可食体)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0051】
【特許文献1】国際公開第2009/025371号(段落[0056]〜〔0064]ならびに図2および図3参照)
図1
図2
図3
図4