特許第6367598号(P6367598)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367598
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】両面粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/26 20180101AFI20180723BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20180723BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   C09J7/26
   C09J201/00
   C09J11/06
【請求項の数】8
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2014-85653(P2014-85653)
(22)【出願日】2014年4月17日
(65)【公開番号】特開2015-120876(P2015-120876A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2017年2月22日
(31)【優先権主張番号】特願2013-242382(P2013-242382)
(32)【優先日】2013年11月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100174159
【弁理士】
【氏名又は名称】梅原 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】中山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】廣西 正人
【審査官】 松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−213104(JP,A)
【文献】 特開2009−258274(JP,A)
【文献】 特開2013−053179(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/141167(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/041313(WO,A1)
【文献】 特開2014−185310(JP,A)
【文献】 特開2014−196457(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/156816(WO,A1)
【文献】 特開2009−108314(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0132558(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体基材と、
前記発泡体基材の第一面に設けられた第一粘着剤層と、
前記発泡体基材の第二面に設けられた第二粘着剤層とを含み、
前記発泡体基材は、その発泡倍率が2.15cm/g以下であり、
前記発泡体基材は、その25%圧縮強度が500kPa以上であり、
前記発泡体基材は、その流れ方向における引張伸度が400%以上であり、その幅方向における引張伸度が200%以上である、両面粘着シート。
【請求項2】
前記発泡体基材は、その基材凝集力が40N/20mm以上である、請求項1に記載の両面粘着シート。
【請求項3】
前記発泡体基材は、その流れ方向における引張強度が15MPa以上である、請求項1または2に記載の両面粘着シート。
【請求項4】
前記発泡体基材は、ポリオレフィン系発泡体基材である、請求項1からのいずれか一項に記載の両面粘着シート。
【請求項5】
前記第一粘着剤層および前記第二粘着剤層の少なくとも一方を構成する粘着剤は、軟化点135℃以上の粘着付与樹脂を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の両面粘着シート。
【請求項6】
前記発泡体基材は、前記25%圧縮強度の値を前記発泡倍率の値で除した値が250g・kPa/cm以上である、請求項1からのいずれか一項に記載の両面粘着シート。
【請求項7】
前記両面粘着シートの総厚みは70μm以上500μm以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の両面粘着シート。
【請求項8】
携帯型電子機器の部品を接合するために用いられる、請求項1からのいずれか一項に記載の両面粘着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡体基材を備えた両面粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、粘着剤(感圧接着剤ともいう。以下同じ。)は、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する。このような性質を活かして、粘着剤は、例えば基材の両面に粘着剤層を設けた基材付き両面粘着シートの形態で、様々な分野において接合や固定などの目的で広く利用されている。
【0003】
上記基材付き両面粘着シートにおける基材としては一般に、プラスチックフィルム、不織布、紙などの他に、気泡構造を有する発泡体などを用いることができる。上記発泡体を用いた両面粘着シート(発泡体基材付き両面粘着シート)は、気泡構造を有しないプラスチックフィルムを基材とする両面粘着シートに比べて、衝撃吸収性や凹凸追従性等の点で有利なものとなり得る。また、不織布を基材とする両面粘着シートに比べて、防水性やシール性等の点で有利なものとなり得る。このため、例えば携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン、ノートパソコン等の携帯型電子機器における部品の接合や固定等にも好ましく適用することができる。発泡体基材付き両面粘着シートに関する技術文献としては特許文献1〜3が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−155969号公報
【特許文献2】国際公開第2013/099755号
【特許文献3】国際公開第2013/141167号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、製品の小型化、軽量化等の観点から、部品の接合等に用いられる両面粘着シートの細幅化が要求されている。例えば、携帯型電子機器の表示パネル(ガラスレンズ等)の固定に用いられる両面粘着シートでは、情報表示部の大画面化、デザイン性の向上、設計自由度の向上等の観点からも、両面粘着シートを細幅化することは有意義である。
【0006】
ところで、携帯型電子機器等において部品の接合等に用いられる両面粘着シートには、落下等の衝撃に耐えて接合を維持する性能(以下、耐衝撃性ともいう。)が求められる。
一方、上記両面粘着シートの細幅化に伴い、落下等の衝撃により、例えば携帯型電子機器等における表示パネルのように、本来衝撃を受ける部分としては設計されていない部品が損傷する事象がみられるようになってきた。そこで両面粘着シートには、落下等の衝撃を受けた際に製品が破損することを抑制する性能(以下、衝撃保護性ともいう。)が求められる。
そこで本発明は、耐衝撃性に加えて、衝撃保護性に優れた両面粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、衝撃に対する両面粘着シートの挙動を詳細に検討した結果、衝撃により粘着シートが瞬間的に厚み方向に変形する現象が衝撃保護性を損なう一因となっていることを見出した。そして、耐衝撃性と衝撃保護性との両立に適した両面粘着シートを見出して本発明を完成した。
【0008】
ここに開示される両面粘着シートは、発泡体基材と、該発泡体基材の第一面に設けられた第一粘着剤層と、該発泡体基材の第二面に設けられた第二粘着剤層とを含む。上記発泡体基材の発泡倍率は2.0cm/g以下である。また、上記発泡体基材の25%圧縮強度は200kPa以上である。かかる構成の両面粘着シート(発泡体基材付き両面粘着シート)は、耐衝撃性に優れたものとなり得る。また、衝撃を受けた際における厚み方向の変形量(衝撃時厚み方向変形量ともいう。以下、同じ)が小さく、良好な衝撃保護性を示すものとなり得る。
【0009】
ここに開示される両面粘着シートの好ましい一態様において、前記発泡体基材は、その25%圧縮強度が500kPa以上である。かかる発泡体基材を含む両面粘着シートは、衝撃時厚み方向変形量が小さく、より良好な衝撃保護性を示すものとなり得る。
【0010】
ここに開示される両面粘着シートの好ましい一態様において、前記発泡体基材は、その基材凝集力が40N/20mm以上である。かかる発泡体基材を含む両面粘着シートは、より良好な耐衝撃性を示すものとなり得る。
【0011】
ここに開示される両面粘着シートの好ましい一態様において、前記発泡体基材としては、例えばその流れ方向(MDともいう。以下同じ。)における引張伸度が400%以上であるものを好ましく用いることができる。かかる発泡体基材を含む両面粘着シートは、該両面粘着シートの取扱性等の観点から好ましい。かかる観点から、前記発泡体基材の幅方向(TDともいう。以下同じ。)における引張伸度は200%以上であることが好ましい。
【0012】
ここに開示される両面粘着シートの好ましい一態様において、前記発泡体基材は、その流れ方向(MD)における引張強度が15MPa以上である。かかる発泡体基材を含む両面粘着シートは、より良好な取扱性を示すものとなり得る。
【0013】
ここに開示される両面粘着シートの好ましい一態様において、前記発泡体基材は、ポリオレフィン系発泡体基材である。かかる発泡体基材を含む両面粘着シートは、衝撃保護性に優れ、かつ良好な耐衝撃性を示すものとなり得る。
【0014】
ここに開示される両面粘着シートの好ましい一態様において、前記第一粘着剤層および前記第二粘着剤層の少なくとも一方を構成する粘着剤は、軟化点135℃以上の粘着付与樹脂を含む。かかる態様によると、より耐反撥性に優れた両面粘着シートが実現され得る。
【0015】
ここに開示される両面粘着シートは、耐衝撃性および衝撃保護性に優れることから、例えば、携帯型電子機器の部品を接合するために用いられる両面粘着シートとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態に係る両面粘着シートの構成を示す模式的断面図である。
図2】押圧接着力を測定する際に用いる評価用サンプルを示す説明図である。
図3】押圧接着力の測定方法を示す説明図である。
図4】耐衝撃性を評価する際に用いる評価用サンプルを示す説明図である。
図5】衝撃時厚み方向変形量の測定方法を示す説明図である。
図6】基材凝集力の測定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明することがあり、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、製品として実際に提供される本発明の粘着シートのサイズや縮尺を正確に表したものではない。
【0018】
この明細書において「粘着剤」とは、前述のように、室温付近の温度域において柔らかい固体(粘弾性体)の状態を呈し、圧力により簡単に被着体に接着する性質を有する材料をいう。ここでいう粘着剤は、「C. A. Dahlquist, “Adhesion: Fundamental and Practice”, McLaren & Sons, (1966) P. 143」に定義されているとおり、一般的に、複素引張弾性率E(1Hz)<10dyne/cmを満たす性質を有する材料(典型的には、25℃において上記性質を有する材料)である。また、粘着剤の「ベースポリマー」とは、該粘着剤に含まれるゴム状ポリマー(室温付近の温度域においてゴム弾性を示すポリマー)のうちの主成分(すなわち、該ゴム状ポリマーの50重量%以上を占める成分)をいう。
【0019】
ここに開示される両面粘着シート(テープ状等の長尺状の形態であり得る。)は、発泡体基材と、その発泡体基材の第一面および第二面にそれぞれ設けられた第一粘着剤層と第二粘着剤層とを含んで構成されている。例えば、図1に示す断面構造を有する形態の両面粘着シートであり得る。この両面粘着シート1は、シート状の発泡体基材15と、その基材15の両面にそれぞれ支持された第一粘着剤層11および第二粘着剤層12とを備える。より詳しくは、基材15の第一面15Aおよび第二面15B(いずれも非剥離性)に、第一粘着剤層11および第二粘着剤層12がそれぞれ設けられている。使用前(被着体への貼り付け前)の両面粘着シート1は、図1に示すように、前面17Aおよび背面17Bがいずれも剥離面である剥離ライナー17と重ね合わされて渦巻き状に巻回された形態であり得る。かかる形態の両面粘着シート1は、第二粘着剤層12の表面(第二粘着面12A)が剥離ライナー17の前面17Aにより保護され、また第一粘着剤層11の表面(第一粘着面11A)が剥離ライナー17の背面17Bにより保護されている。あるいは、第一粘着面11Aおよび第二粘着面12Aが、2枚の独立した剥離ライナーによりそれぞれ保護された形態であってもよい。
【0020】
剥離ライナーとしては、慣用の剥離紙等を使用することができ、特に限定されない。例えば、プラスチックフィルムや紙等のライナー基材の表面に剥離処理層を有する剥離ライナー;フッ素系ポリマー(ポリテトラフルオロエチレン等)やポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)のような低接着性材料からなる剥離ライナー;等を用いることができる。上記剥離処理層は、例えば、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離処理剤により上記ライナー基材を表面処理して形成されたものであり得る。
【0021】
ここに開示される両面粘着シートの総厚みは、特に限定されないが、例えば50μm以上1000μm以下、好ましくは70μm以上500μm以下、より好ましくは100μm以上350μm以下、さらに好ましくは150μm以上320μm以下、例えば190μm以上300μm以下とすることができる。両面粘着シートの総厚みを上述した上限値以下にすることにより、製品の薄膜化、小型化、軽量化、省資源化等の点で有利となり得る。また、両面粘着シートの総厚みを上述した下限値以上にすることにより、優れた耐衝撃性や防水性を示すものとなり得る。
【0022】
ここで、両面粘着シートの総厚みとは、一方の粘着面から他方の粘着面までの厚みをいい、図1に示す例では、第一粘着面11Aから第二粘着面12Aまでの厚みtをいう。したがって、例えば、被着体への貼付け前において粘着面が剥離ライナーで保護された形態の両面粘着シートであっても、該剥離ライナーの厚さは、ここでいう両面粘着シートの厚みには含めないものとする。
【0023】
<発泡体基材>
ここに開示される技術において、発泡体基材とは、気泡(気泡構造)を有する部分を備えた基材であって、典型的には、少なくとも1層の薄い層状の発泡体(発泡体層)を含む基材をいう。上記発泡体基材は、上記発泡体層のみにより実質的に構成された基材であってもよい。特に限定するものではないが、ここに開示される技術における発泡体基材の一好適例として、単層(1層)の発泡体層からなる発泡体基材が挙げられる。
【0024】
発泡体基材の厚さは、特に限定されず、両面粘着シートの強度や柔軟性、使用目的等に応じて適宜設定することができる。所望の粘着特性を発揮し得る粘着剤層の厚みを確保しやすいという観点から、通常は、発泡体基材の厚さを700μm以下とすることが適当であり、好ましくは400μm以下、より好ましくは300μm以下、例えば200μm以下である。厚さ180μm以下の発泡体基材を用いてもよい。また、両面粘着シートの耐反撥性や耐衝撃性等の観点からは、発泡体基材の厚さを30μm以上とすることが適当であり、好ましくは50μm以上、より好ましくは60μm以上(例えば80μm以上)である。ここでいう耐反撥性とは、上記両面粘着シートを被着体の表面形状(曲面、段差のある表面等であり得る。)に沿って弾性変形させた際に、該両面粘着シートが元の形状に戻ろうとする反撥力に抗して、該両面粘着シートを上記弾性変形させた形状に保持する性能(すなわち、両面粘着シートの反撥力に耐える性能)のことをいう。
【0025】
発泡体基材の材質は特に制限されない。通常は、プラスチック材料の発泡体(プラスチック発泡体)により形成された発泡体層を含む発泡体基材が好ましい。プラスチック発泡体を形成するためのプラスチック材料(ゴム材料を包含する意味である。)は、特に制限されず、公知のプラスチック材料の中から適宜選択することができる。プラスチック材料は、1種を単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0026】
プラスチック発泡体の具体例としては、ポリエチレン製発泡体、ポリプロピレン製発泡体等のポリオレフィン系樹脂製発泡体;ポリエチレンテレフタレート製発泡体、ポリエチレンナフタレート製発泡体、ポリブチレンテレフタレート製発泡体等のポリエステル系樹脂製発泡体;ポリ塩化ビニル製発泡体等のポリ塩化ビニル系樹脂製発泡体;酢酸ビニル系樹脂製発泡体;ポリフェニレンスルフィド樹脂製発泡体;脂肪族ポリアミド(ナイロン)樹脂製発泡体、全芳香族ポリアミド(アラミド)樹脂製発泡体等のアミド系樹脂製発泡体;ポリイミド系樹脂製発泡体;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)製発泡体;ポリスチレン製発泡体等のスチレン系樹脂製発泡体;ポリウレタン樹脂製発泡体等のウレタン系樹脂製発泡体;等が挙げられる。また、プラスチック発泡体として、ポリクロロプレンゴム製発泡体等のゴム系樹脂製発泡体を用いてもよい。
【0027】
好ましい発泡体として、ポリオレフィン系樹脂製発泡体(以下、「ポリオレフィン系発泡体」ともいう。)が例示される。上記ポリオレフィン系発泡体を構成するプラスチック材料(すなわちポリオレフィン系樹脂)としては、公知または慣用の各種のポリオレフィン系樹脂を特に限定なく用いることができる。例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。LLDPEの例としては、チーグラー・ナッタ触媒系直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒系直鎖状低密度ポリエチレン等が挙げられる。このようなポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0028】
ここに開示される技術における発泡体基材の好適例としては、耐衝撃性や衝撃保護性、防水性等の観点から、ポリエチレン系樹脂の発泡体から実質的に構成されるポリエチレン系発泡体基材、ポリプロピレン系樹脂の発泡体から実質的に構成されるポリプロピレン系発泡体基材等が挙げられる。ここで、ポリエチレン系樹脂とは、エチレンを主モノマー(すなわち、モノマーのなかの主成分)とする樹脂を指し、HDPE、LDPE、LLDPE等のほか、エチレンの共重合割合が50重量%を超えるエチレン−プロピレン共重合体やエチレン−酢酸ビニル共重合体等を包含し得る。同様に、ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンを主モノマーとする樹脂を指す。ここに開示される技術における発泡体基材としては、ポリエチレン系発泡体基材を好ましく採用し得る。
【0029】
上記プラスチック発泡体(典型的にはポリオレフィン系発泡体)の製造方法としては特に限定されるものではなく、公知の方法により製造され得る。例えば、上記プラスチック材料、もしくは上記プラスチック発泡体の成形工程、架橋工程および発泡工程を含む方法により製造し得る。また、必要に応じて延伸工程を含み得る。
上記プラスチック発泡体を架橋させる方法としては、例えば、有機過酸化物などを用いる化学架橋法、または電離性放射線を照射する電離性放射線架橋法などが挙げられ、これらの方法は併用され得る。上記電離性放射線としては、電子線、α線、β線、γ線などが例示される。電離性放射線の線量は特に限定されず、発泡体基材の目標物性(例えば架橋度)等を考慮して適切な照射線量に設定することができる。
【0030】
上記発泡体基材(例えばポリオレフィン系発泡体基材)の平均気泡径は、特に限定されないが、通常は、防水性の観点から500μm以下であることが好ましく、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは100μm以下、例えば75μm以下である。一方、耐衝撃性の観点から、上記発泡体基材の平均気泡径は5μm以上であることが好ましく、より好ましくは10μm以上である。なお平均気泡径は、例えば、光学顕微鏡により測定することができる。
【0031】
上記平均気泡径は、通常、気泡含有層である発泡体基材の厚さの50%以下であることが適当であり、30%以下(例えば10%以下)であることが好ましい。上記平均気泡径を発泡体基材の厚さの50%以下とすることにより、防水性がより向上する傾向がある。
【0032】
ここに開示される技術の好ましい一態様において、上記発泡体基材としては、例えば発泡倍率2.15cm/g以下のものを用いることができる。衝撃時厚み方向変形量をよりよく抑制し、衝撃保護性を向上させる観点から、発泡体基材の発泡倍率は、2.0cm/g以下であることが好ましく、1.95cm/g以下であることがより好ましく、1.9cm/g以下であることがより好ましい。好ましい一態様において、発泡体基材の発泡倍率は、例えば1.85cm/g以下であってもよく、さらに1.8cm/g以下であってもよい。発泡倍率の下限は特に限定されない。耐衝撃性等の観点から、発泡体基材の発泡倍率は、通常、1.1cm/g以上が適当であり、1.2cm/g以上であることが好ましく、1.5cm/g以上(例えば1.6cm/g以上)であることがより好ましい。発泡倍率を高くすることにより、柔軟性が向上し、段差追従性、耐反撥性が向上する傾向がある。両面粘着シートの段差追従性が良好であると、一般に、段差を有する被着体に貼り合わせた場合でも、被着体表面との間に隙間を生じにくく、防水性が向上する。なお、本明細書において、発泡体基材の発泡倍率は、JIS K 6767に準拠して測定される見掛け密度(g/cm)の逆数として定義される。
【0033】
ここに開示される技術の他の好ましい一態様において、上記発泡体基材の発泡倍率は、1.8cm/g以下であることが好ましく、1.7cm/g以下(典型的には1.6cm/g以下、例えば1.55cm/g以下)であることがより好ましい。このとき、上記発泡倍率の下限は、特に限定されないが、例えば1.1cm/g以上が適当であり、1.2cm/g以上であることが好ましく、1.25cm/g以上であることがさらに好ましい。発泡倍率が上述する範囲である発泡体を用いた両面粘着シートは、細幅(例えば1mm未満)であっても高い押圧接着力を発揮し得るため、好ましい。
【0034】
上記発泡体基材(例えばポリオレフィン系発泡体基材)の引張伸度は、特に限定されない。例えば、流れ方向(MD)の引張伸度が200%以上800%以下(より好ましくは300%以上700%以下、さらに好ましくは400%以上600%以下、例えば450以上500%以下)であることが好ましい。また、幅方向(TD)の引張伸度が50%以上800%以下(より好ましくは100%以上600%以下、さらに好ましくは200%以上500%以下、例えば250%以上400%以下)であることが好ましい。上述した下限値以上の伸びとすることにより、耐衝撃性や段差追従性が向上し得る。また、上述した上限値以下の伸びとすることにより、発泡体基材の強度が向上し、取扱性や衝撃保護性が向上し得る。発泡体基材の伸びは、JIS K 6767に準拠して測定される。上記発泡体基材の伸びは、例えば、架橋度や発泡倍率等により制御することができる。
【0035】
上記発泡体基材(例えばポリオレフィン系発泡体基材)の引張強さ(引張強度)は、特に限定されない。例えば、流れ方向(MD)の引張強さが5MPa以上35MPa以下(より好ましくは10MPa以上30MPa以下、さらに好ましくは12MPa以上28MPa以下、典型的には15MPa以上25MPa以下、例えば16MPa以上20MPa以下)であることが好ましい。また、幅方向(TD)の引張強さが1MPa以上25MPa以下(より好ましくは5MPa以上20MPa以下、さらに好ましくは7MPa以上15MPa以下、典型的には8MPa以上12MPa以下、例えば9MPa以上11MPa以下)であることが好ましい。上述した下限値以上の引張強さとすることにより、例えば貼り損じた両面粘着シートを引きはがす際に、基材(ひいては両面粘着シート)が千切れることなく容易に剥離させられる等、優れた取扱性(リワーク性)を示し得る。また、このように両面粘着シートを引きはがしやすいことは、製品を解体して部品をリサイクルする際や、不具合部品を交換する際等にも有利である。一方、上述した上限値以下の引張強さとすることにより、耐衝撃性や段差追従性が向上し得る。発泡体基材の引張強さ(流れ方向の引張強さ、幅方向の引張強さ)は、JIS K 6767に準拠して測定される。上記発泡体基材の引張強さは、例えば、架橋度や発泡倍率等により制御することができる。
【0036】
上記発泡体基材(例えばポリオレフィン系発泡体基材)の25%圧縮強度は、特に限定されず、例えば、100kPa以上1200kPa以下であり得る。衝撃保護性の観点から、上記発泡体基材の25%圧縮強度は、好ましくは200kPa以上1100kPa以下、より好ましくは400kPa以上1000kPa以下、さらに好ましくは500kPa以上900kPa以下であり、例えば550kPa以上850kPa以下であることが好ましい。ここで上記発泡体基材の25%圧縮強度とは、該発泡体基材を約25mmの厚さとなるように積み重ねて平板で挟み込み、それを当初の厚さの25%に相当する厚さ分だけ圧縮したときの荷重をいう。すなわち、上記積み重ねた発泡体基材を当初の厚さの75%に相当する厚さまで圧縮したときの荷重をいう。25%圧縮強度を大きくすることにより、両面粘着シートの衝撃時厚み方向変形量が抑制され良好な衝撃保護性を示す傾向があり、さらに加工時の寸法安定性が向上し得る。一方、25%圧縮強度を1200kPa以下とすることにより、耐反撥性や段差追従性が向上し得る。発泡体基材の25%圧縮強度は、JIS K 6767に準拠して測定される。上記発泡体基材の25%圧縮強度は、例えば、架橋度や発泡倍率等により制御することができる。
【0037】
一般に、上記発泡体基材の25%圧縮強度は、上記発泡体基材の発泡倍率が小さくなるほど向上する傾向がある。特に限定するものではないが、上記発泡体基材の、25%圧縮強度の値を発泡倍率の値で除した値(以下、(25%圧縮強度)/(発泡倍率)ともいう。)は、100g・kPa/cm以上であることが好ましく、より好ましくは180g・kPa/cm以上、さらに好ましくは200g・kPa/cm以上、例えば250g・kPa/cm以上、典型的には300g・kPa/cm以上であることが好ましい。上記(25%圧縮強度)/(発泡倍率)を上述する下限値以上とすると、両面粘着シートの衝撃時厚み方向変形量がよりよく抑制され、衝撃保護性が向上する傾向がある。好ましい一態様において、(25%圧縮強度)/(発泡倍率)が400g・kPa/cm以上、さらには450g・kPa/cm以上、例えば500g・kPa/cm以上の発泡体基材を用いてもよい。上記(25%圧縮強度)/(発泡倍率)の上限値は特に限定されないが、耐反撥性、段差追従性の観点から1100g・kPa/cm以下とすることが好ましく、より好ましくは800g・kPa/cm以下、さらに好ましくは700g・kPa/cm以下、例えば600g・kPa/cm以下とすることが好ましい。
【0038】
上記発泡体基材の密度(見掛け密度)は、特に限定されず、例えば0.46g/cmより大きく0.9g/cm以下であり得る。衝撃保護性の観点から、上記発泡体基材の密度は、好ましくは0.5g/cm以上0.8g/cm以下であり、より好ましくは0.51g/cm以上0.75g/cm以下であり、好ましい他の一態様において、密度が0.55g/cm以上0.72g/cm以下(例えば0.6g/cm以上0.7g/cm以下)である発泡体基材を用いることができる。密度を大きくすることにより、衝撃時厚み方向変形量の抑制、発泡体基材の強度(ひいては両面粘着シートの強度)の向上、耐衝撃性や取扱性の向上が達成される傾向にある。一方、密度を0.9g/cm以下とすることにより、段差追従性、耐反撥性、防水性が向上する傾向にある。なお、発泡体基材の密度(見掛け密度)は、例えば、JIS K 6767に準拠する方法により測定することができる。
【0039】
上記発泡体基材の後述する測定法により測定される凝集力(基材凝集力ともいう。単位:N/20mm)は、特に限定されないが、30N/20mm以上であることが好ましい。基材凝集力は、より好ましくは40N/20mm以上、さらに好ましくは50N/20mm以上、例えば55N/20mm以上である。また、基材凝集力の上限値は、特に限定されないが、例えば、基材凝集力が200N/20mm以下、より好ましくは150N/20mm以下、例えば100N/20mm以下の発泡体基材が好適に用いられ得る。発泡体基材の基材凝集力を上述する下限値以上とすると、衝撃による発泡体基材の損傷がよりよく防止されるので、接合信頼性がよく、より良好な耐衝撃性を示し得る。発泡体基材の基材凝集力を上述する上限値以下とすると、衝撃吸収性が良く、良好な耐衝撃性を示す傾向がある。
【0040】
上記発泡体基材には、必要に応じて、充填剤(無機充填剤、有機充填剤等)、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤、難燃剤、界面活性剤等の各種添加剤が配合されていてもよい。
【0041】
ここに開示される技術における発泡体基材は、該発泡体基材を備える両面粘着シートにおいて所望の意匠性や光学特性(例えば、遮光性、光反射性等)を発現させるために、着色されていてもよい。この着色には、公知の有機または無機の着色剤を、1種を単独で、または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0042】
例えば、ここに開示される両面粘着シートを遮光用途に用いる場合、発泡体基材の可視光透過率は、特に限定されないが、後述の両面粘着シートの可視光透過率と同様に、0%以上15%以下であることが好ましく、より好ましくは0%以上10%以下である。また、ここに開示される両面粘着シートを光反射用途に用いる場合、発泡体基材の可視光反射率は、両面粘着シートの可視光反射率と同様に、20%以上100%以下が好ましく、より好ましくは25%以上100%以下である。
【0043】
発泡体基材の可視光透過率は、分光光度計(例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計、型式「U−4100」)を用いて、波長550nmにおいて、発泡体基材の一方の面側から照射して他方の面側に透過した光の強度を測定することにより求めることができる。発泡体基材の可視光反射率は、上記分光光度計を用いて、波長550nmにおいて、発泡体基材の一方の面に照射して反射した光の強度を測定することにより求めることができる。なお、両面粘着シートの可視光透過率や可視光反射率も、同様の方法により求めることができる。
【0044】
ここに開示される両面粘着シートを遮光用途に用いる場合、上記発泡体基材は黒色に着色されていることが好ましい。黒色としては、L*a*b*表色系で規定されるL*(明度)で、35以下(例えば、0〜35)が好ましく、より好ましくは30以下(例えば、0〜30)である。なお、L*a*b*表色系で規定されるa*やb*は、それぞれ、L*の値に応じて適宜選択することができる。a*やb*としては、特に限定されないが、両方とも−10〜10(より好ましくは−5〜5、さらに好ましくは−2.5〜2.5)の範囲であることが好ましい。例えば、a*およびb*がいずれも0または略0であることが好ましい。
【0045】
なお、本明細書において、L*a*b*表色系で規定されるL*、a*、b*は、色彩色差計(例えば、ミノルタ社製の色彩色差計、商品名「CR−200」)を用いて測定することにより求められる。なお、L*a*b*表色系は、国際照明委員会(CIE)が1976年に推奨した色空間であり、CIE1976(L*a*b*)表色系と称される色空間のことを意味している。また、L*a*b*表色系は、日本工業規格では、JIS Z 8729に規定されている。
【0046】
発泡体基材を黒色に着色する際に用いられる黒色着色剤としては、例えば、カーボンブラック(ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等)、グラファイト、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、ペリレンブラック、チタンブラック、シアニンブラック、活性炭、フェライト(非磁性フェライト、磁性フェライト等)、マグネタイト、酸化クロム、酸化鉄、二硫化モリブデン、クロム錯体、複合酸化物系黒色色素、アントラキノン系有機黒色色素等を用いることができる。コストや入手性の観点から好ましい黒色着色剤として、カーボンブラックが例示される。黒色着色剤の使用量は特に限定されず、所望の光学特性を付与できるように適宜調整した量とすることができる。
【0047】
ここに開示される両面粘着シートを光反射用途に用いる場合、上記発泡体基材は白色に着色されていることが好ましい。白色としては、L*a*b*表色系で規定されるL*(明度)で、87以上(例えば、87〜100)が好ましく、より好ましくは90以上(例えば、90〜100)である。L*a*b*表色系で規定されるa*やb*は、それぞれ、L*の値に応じて適宜選択することができる。a*やb*としては、例えば、両方とも−10〜10(より好ましくは−5〜5、さらに好ましくは−2.5〜2.5)の範囲であることが好ましい。例えば、a*およびb*がいずれも0または略0であることが好ましい。
【0048】
発泡体基材を白色に着色する際に用いられる白色着色剤としては、例えば、酸化チタン(ルチル型二酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタン等の二酸化チタン)、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化スズ、酸化バリウム、酸化セシウム、酸化イットリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム(軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム等)、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、亜鉛華、硫化亜鉛、タルク、シリカ、アルミナ、クレー、カオリン、燐酸チタン、マイカ、石膏、ホワイトカーボン、珪藻土、ベントナイト、リトポン、ゼオライト、セリサイト、加水ハロイサイト等の無機系白色着色剤や、アクリル系樹脂粒子、ポリスチレン系樹脂粒子、ポリウレタン系樹脂粒子、アミド系樹脂粒子、ポリカーボネート系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子、尿素−ホルマリン系樹脂粒子、メラミン系樹脂粒子等の有機系白色着色剤等が挙げられる。白色着色剤の使用量は特に限定されず、所望の光学特性を付与できるように適宜調整した量とすることができる。
【0049】
発泡体基材の表面には、必要に応じて、適宜の表面処理が施されていてもよい。この表面処理は、例えば、隣接する材料(例えば粘着剤層)に対する密着性を高めるための化学的または物理的な処理であり得る。かかる表面処理の例としては、コロナ放電処理、クロム酸処理、オゾン曝露、火炎曝露、紫外線照射処理、プラズマ処理、下塗剤(プライマー)の塗付等が挙げられる。
【0050】
ここに開示される技術において、第一粘着剤層および第二粘着剤層の各々に含まれる粘着剤の種類は特に限定されない。該粘着剤としては、例えばアクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系、シリコーン系、ポリアミド系、フッ素系等の各種ポリマー(粘着性ポリマー)から選択される1種または2種以上をベースポリマーとして含む粘着剤であり得る。好ましい一態様では、上記粘着剤層の主成分がアクリル系粘着剤である。ここに開示される技術は、実質的にアクリル系粘着剤からなる粘着剤層を備えた両面粘着シートの形態で好ましく実施され得る。
【0051】
ここで「アクリル系粘着剤」とは、アクリル系ポリマーをベースポリマー(ポリマー成分のなかの主成分、すなわち50重量%以上を占める成分)とする粘着剤を指す。「アクリル系ポリマー」とは、一分子中に少なくとも一つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(以下、これを「アクリル系モノマー」ということがある。)を主構成単量体成分(モノマーの主成分、すなわちアクリル系ポリマーを構成するモノマーの総量のうち50重量%以上を占める成分)とするポリマーを指す。また、本明細書中において「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基を包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートを包括的に指す意味である。
【0052】
上記アクリル系ポリマーは、典型的には、アルキル(メタ)アクリレートを主構成単量体成分とするポリマーである。上記アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、下記式(1)で表される化合物を好適に用いることができる。
CH=C(R)COOR (1)
ここで、上記式(1)中のRは水素原子またはメチル基である。Rは炭素原子数1〜20のアルキル基である。粘着特性に優れた粘着剤が得られやすいことから、Rが炭素原子数2〜14(以下、このような炭素原子数の範囲をC2−14と表わすことがある。)のアルキル基であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。C2−14のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソアミル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、イソデシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、等が挙げられる。
【0053】
好ましい一態様では、アクリル系ポリマーの合成に使用するモノマーの総量のうち、凡そ50重量%以上(典型的には50重量%以上99.9重量%以下)、より好ましくは70重量%以上(典型的には70重量%以上99.9重量%以下)、例えば凡そ85重量%以上(典型的には85重量%以上99.9重量%以下)が、上記式(1)におけるRがC2−14のアルキル(メタ)アクリレート(より好ましくはC4−10のアルキル(メタ)アクリレート。特に好ましくは、ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートの一方または両方)から選択される1種または2種以上により占められる。このようなモノマー組成から得られたアクリル系ポリマーによると、良好な粘着特性を示す粘着剤が形成されやすいので好ましい。
【0054】
特に限定するものではないが、ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーとしては、水酸基(−OH)を有するアクリル系モノマーが共重合されたものを好ましく用いることができる。水酸基を有するアクリル系モノマーの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシへキシル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシへキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルアクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、等が挙げられる。かかる水酸基含有アクリル系モノマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
このような水酸基含有アクリル系モノマーが共重合されたアクリル系ポリマーによると、粘着力と凝集力とのバランスに優れ、再剥離性に優れた粘着剤が得られやすいので好ましい。特に好ましい水酸基含有アクリル系モノマーとして、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。例えば、上記ヒドロキシアルキル基におけるアルキル基が炭素原子数2〜4の直鎖状であるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを好ましく使用し得る。
【0056】
このような水酸基含有アクリル系モノマーは、アクリル系ポリマーの合成に使用するモノマーの総量のうち凡そ0.001重量%以上10重量%以下の範囲で使用されることが好ましい。このことによって、上記粘着力と凝集力とをより高レベルでバランスさせた両面粘着シートが実現され得る。水酸基含有アクリル系モノマーの使用量を凡そ0.01重量%以上5重量%以下(例えば0.05重量%以上2重量%以下)とすることにより、さらに良好な結果が達成され得る。あるいは、ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーは、水酸基含有アクリル系モノマーが共重合されていないものであってもよい。
【0057】
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーには、本発明の効果を顕著に損なわない範囲で、上記以外のモノマー(その他モノマー)が共重合されていてもよい。かかるモノマーは、例えば、アクリル系ポリマーのガラス転移温度の調整、粘着性能(例えば剥離性)の調整等の目的で使用することができる。例えば、粘着剤の凝集力や耐熱性を向上させ得るモノマーとして、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステル類、芳香族ビニル化合物等が挙げられる。また、アクリル系ポリマーに架橋基点となり得る官能基を導入し、あるいは接着力の向上に寄与し得るモノマーとして、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、(メタ)アクリロイルモルホリン、ビニルエーテル類等が挙げられる。例えば、上記その他モノマーとしてカルボキシル基含有モノマーが共重合されたアクリル系ポリマーが好ましい。
【0058】
スルホン酸基含有モノマーとしては、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム等が例示される。
リン酸基含有モノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートが例示される。
シアノ基含有モノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が例示される。
ビニルエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル等が例示される。
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、その他の置換スチレン等が例示される。
【0059】
また、カルボキシル基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等が例示される。
酸無水物基含有モノマーとしては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、上記カルボキシル基含有モノマーの酸無水物体等が挙げられる。
アミド基含有モノマーとしては、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等が例示される。
アミノ基含有モノマーとしては、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が例示される。
イミド基含有モノマーとしては、シクロへキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド、N−シクロへキシルマレイミド、イタコンイミド等が例示される。
エポキシ基含有モノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等が例示される。
ビニルエーテル類としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等が例示される。
【0060】
このような「その他モノマー」は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよいが、全体としての含有量は、アクリル系ポリマーの合成に使用するモノマーの総量のうち凡そ40重量%以下(典型的には、0.001重量%以上40重量%以下)とすることが好ましく、凡そ30重量%以下(典型的には0.01重量%以上30重量%以下、例えば0.1重量%以上10重量%以下)とすることがより好ましい。上記その他モノマーとしてカルボキシル基含有モノマーを用いる場合、その含有量は、上記モノマー総量のうち例えば0.1重量%以上10重量%以下とすることができ、通常は0.2重量%以上8重量%以下、例えば0.5重量%以上5重量%以下とすることが適当である。また、上記その他モノマーとしてビニルエステル類(例えば酢酸ビニル)を用いる場合、その含有量は、上記モノマー総量のうち例えば0.1重量%以上20重量%以下とすることができ、通常は0.5重量%以上10重量%以下とすることが適当である。
【0061】
上記アクリル系ポリマーの共重合組成は、該ポリマーのガラス転移温度(Tg)が−15℃以下(典型的には−70℃以上−15℃以下)となるように設計されていることが適当であり、好ましくは−25℃以下(例えば−60℃以上−25℃以下)、より好ましくは−40℃以下(例えば−60℃以上−40℃以下)である。アクリル系ポリマーのTgを上述した上限値以下とすることは、両面粘着シートの耐衝撃性等の観点から好ましい。
【0062】
アクリル系ポリマーのTgは、モノマー組成(すなわち、該ポリマーの合成に使用するモノマーの種類や使用量比)を適宜変えることにより調整することができる。ここで、アクリル系ポリマーのTgとは、該ポリマーを構成する各モノマーの単独重合体(ホモポリマー)のTgおよび該モノマーの重量分率(重量基準の共重合割合)に基づいてフォックス(Fox)の式から求められる値をいう。ホモポリマーのTgとしては、公知資料に記載の値を採用するものとする。
【0063】
ここに開示される技術では、上記ホモポリマーのTgとして、具体的には以下の値を用いるものとする。
2−エチルヘキシルアクリレート −70℃
ブチルアクリレート −55℃
エチルアクリレート −22℃
メチルアクリレート 8℃
メチルメタクリレート 105℃
シクロヘキシルメタクリレート 66℃
酢酸ビニル 32℃
スチレン 100℃
アクリル酸 106℃
メタクリル酸 228℃
【0064】
上記で例示した以外のホモポリマーのTgについては、「Polymer Handbook」(第3版、JohnWiley&Sons,Inc、1989年)に記載の数値を用いるものとする。
【0065】
「Polymer Handbook」(第3版、JohnWiley&Sons,Inc、1989年)にも記載されていない場合には、以下の測定方法により得られる値を用いるものとする。
具体的には、温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却管を備えた反応器に、モノマー100重量部、アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部及び重合溶媒として酢酸エチル200重量部を投入し、窒素ガスを流通させながら1時間攪拌する。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し10時間反応させる。次いで、室温まで冷却し、固形分濃度33重量%のホモポリマー溶液を得る。次いで、このホモポリマー溶液を剥離ライナー上に流延塗付し、乾燥して厚さ約2mmの試験サンプル(シート状のホモポリマー)を作製する。この試験サンプルを直径7.9mmの円盤状に打ち抜き、パラレルプレートで挟み込み、粘弾性試験機(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、機種名「ARES」)を用いて周波数1Hzのせん断歪みを与えながら、温度領域−70℃〜150℃、5℃/分の昇温速度でせん断モードにより粘弾性を測定し、せん断損失弾性率G”のピークトップ温度に相当する温度(G”カーブが極大となる温度)をホモポリマーのTgとする。
【0066】
ここに開示される技術における粘着剤は、該粘着剤のせん断損失弾性率G”のピークトップ温度が−10℃以下(典型的には−40℃以上−10℃以下)となるように設計されていることが好ましい。例えば、上記ピークトップ温度が−35℃以上−15℃以下となるように設計された粘着剤が好ましい。せん断損失弾性率G”のピークトップ温度は、厚さ1mmのシート状の粘着剤を、直径7.9mmの円盤状に打ち抜き、パラレルプレートで挟み込み、上記粘弾性試験機(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、機種名「ARES」)を用いて周波数1Hzのせん断歪みを与えながら、温度領域−70℃〜150℃、5℃/分の昇温速度でせん断モードにより損失弾性率G”の温度依存性を測定し、そのピークトップに相当する温度(G”カーブが極大となる温度)を求めることにより把握することができる。
【0067】
なお、アクリル系ポリマーのせん断損失弾性率G”のピークトップ温度は、該アクリル系ポリマーのモノマー組成(すなわち、該ポリマーの合成に使用するモノマーの種類や使用量比)を適宜変えることにより調整することができる。粘着剤のせん断損失弾性率G”のピークトップ温度は、アクリル系ポリマーのモノマー組成(すなわち、該ポリマーの合成に使用するモノマーの種類や使用量比)や、後述する粘着付与剤の使用の有無、使用する場合における種類や使用量等を適宜変えることにより調整することができる。
【0068】
かかるアクリル系ポリマーを得る方法は特に限定されず、溶液重合法、乳化重合法、塊状重合法、懸濁重合法等の、アクリル系ポリマーの合成手法として知られている各種の重合方法を適宜採用することができる。例えば、溶液重合法を好ましく用いることができる。溶液重合を行う際のモノマー供給方法としては、全モノマー原料を一度に供給する一括仕込み方式、連続供給(滴下)方式、分割供給(滴下)方式等を適宜採用することができる。重合温度は、使用するモノマーおよび溶媒の種類、重合開始剤の種類等に応じて適宜選択することができ、例えば20℃〜170℃(典型的には40℃〜140℃)程度とすることができる。
【0069】
溶液重合に用いる溶媒(重合溶媒)は、公知ないし慣用の有機溶媒から適宜選択することができる。例えば、トルエン、キシレン等の芳香族化合物類(典型的には芳香族炭化水素類);酢酸エチル、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族または脂環式炭化水素類;1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化アルカン類;イソプロピルアルコール、1−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等の低級アルコール類(例えば、炭素原子数1〜4の一価アルコール類);tert−ブチルメチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン、アセチルアセトン等のケトン類;等から選択されるいずれか1種の溶媒、または2種以上の混合溶媒を用いることができる。例えば、全圧1気圧における沸点が20℃以上200℃以下(典型的には50℃以上150℃以下)の範囲にある重合溶媒(混合溶媒であり得る。)を使用することができる。好ましい一態様において、上記沸点が60℃以上150℃以下(例えば80℃以上130℃以下)の範囲にある重合溶媒を採用し得る。
【0070】
重合に用いる開始剤は、重合方法の種類に応じて、公知ないし慣用の重合開始剤から適宜選択することができる。例えば、アゾ系重合開始剤を好ましく使用し得る。アゾ系重合開始剤の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等が挙げられる。
【0071】
重合開始剤の他の例としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、過酸化水素等の、過酸化物系開始剤;フェニル置換エタン等の、置換エタン系開始剤;芳香族カルボニル化合物;等が挙げられる。重合開始剤のさらに他の例として、過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤が挙げられる。かかるレドックス系開始剤の例としては、過酸化物とアスコルビン酸との組み合わせ(過酸化水素水とアスコルビン酸との組み合わせ等)、過酸化物と鉄(II)塩との組み合わせ(過酸化水素水と鉄(II)塩との組み合わせ等)、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせ、等が挙げられる。
【0072】
このような重合開始剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、通常の使用量であればよく、例えば、全モノマー成分100重量部に対して0.005重量部以上1重量部以下(典型的には0.01重量部以上1重量部以下)程度の範囲から選択することができる。
【0073】
かかる溶液重合によると、アクリル系ポリマーが有機溶媒に溶解した態様の重合反応液が得られる。ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーとしては、上記重合反応液または該反応液に適当な後処理を施したものを好ましく用いることができる。典型的には、後処理を施した後のアクリル系ポリマー含有溶液を適当な粘度(濃度)に調整して使用する。あるいは、溶液重合方法以外の重合方法(例えば、エマルション重合、光重合、バルク重合等)を利用してアクリル系ポリマーを合成し、該重合体を有機溶媒に溶解させて溶液状に調製したものを用いてもよい。
【0074】
ここに開示される技術におけるアクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されず、例えば10×10以上500×10以下の範囲であり得る。リワーク性や再剥離性等の取扱性と、180度剥離強度等の粘着性能とを高レベルでバランスさせる観点から、アクリル系ポリマーのMwは、10×10以上150×10以下の範囲にあることが好ましく、15×10以上100×10以下の範囲がより好ましく、15×10以上75×10以下の範囲がさらに好ましい。好ましい一態様において、アクリル系ポリマーのMwを20×10以上75×10未満とすることができる。より好ましい一態様において、アクリル系ポリマーのMwを20×10以上70×10未満(例えば32×10以上67×10以下、典型的には35×10以上65×10以下)としてもよい。ここでMwとは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により得られた標準ポリスチレン換算の値をいう。
【0075】
ここに開示される技術における粘着剤組成物は、粘着付与樹脂を含む組成であり得る。粘着付与樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ロジン系、テルペン系、炭化水素系、エポキシ系、ポリアミド系、エラストマー系、フェノール系、ケトン系等、の各種粘着付与樹脂を用いることができる。このような粘着付与樹脂は、単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0076】
ロジン系粘着付与樹脂の具体的としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン(生ロジン);これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合等により変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等);その他の各種ロジン誘導体;等が挙げられる。上記ロジン誘導体の例としては、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、ロジンのエステル化物)、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)をアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、変性ロジンのエステル化物)等のロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)、不飽和脂肪酸変性ロジン類または不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシル基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩;ロジン類(未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂;等が挙げられる。
【0077】
テルペン系粘着付与樹脂の例としては、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体などのテルペン樹脂;これらのテルペン樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性等)した変性テルペン樹脂;等が挙げられる。上記変性テルペン樹脂の例としては、テルペンフェノール樹脂、スチレン変性テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等が挙げられる。
【0078】
炭化水素系粘着付与樹脂の例としては、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂(スチレン−オレフィン系共重合体等)、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂等の各種の炭化水素系の樹脂が挙げられる。脂肪族系炭化水素樹脂としては、炭素原子数4〜5程度のオレフィンおよびジエンから選択される1種または2種以上の脂肪族炭化水素の重合体等が例示される。上記オレフィンの例としては、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン等が挙げられる。上記ジエンの例としては、ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン等が挙げられる。芳香族系炭化水素樹脂の例としては、炭素原子数8〜10程度のビニル基含有芳香族系炭化水素(スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、インデン、メチルインデン等)の重合体等が挙げられる。脂肪族系環状炭化水素樹脂の例としては、いわゆる「C4石油留分」や「C5石油留分」を環化二量体化した後に重合させた脂環式炭化水素系樹脂;環状ジエン化合物(シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ジペンテン等)の重合体またはその水素添加物;芳香族系炭化水素樹脂または脂肪族・芳香族系石油樹脂の芳香環を水素添加した脂環式炭化水素系樹脂;等が挙げられる。
【0079】
ここに開示される技術では、上記粘着付与樹脂として、軟化点(軟化温度)が凡そ100℃以上(好ましくは凡そ120℃以上、より好ましくは凡そ135℃以上)であるものを好ましく使用し得る。上述した下限値以上の軟化点をもつ粘着付与樹脂を含む粘着剤によると、より耐反撥性に優れた両面粘着シートが実現され得る。上記で例示した粘着付与樹脂のうち、このような軟化点を有するテルペン系粘着付与樹脂(例えばテルペンフェノール樹脂)、ロジン系粘着付与樹脂(例えば、重合ロジンのエステル化物)等を好ましく用いることができる。上記粘着付与樹脂は、例えば、軟化点135℃以上のテルペンフェノール樹脂を含む態様で好ましく用いられ得る。また、軟化点140℃以上の粘着付与樹脂を含む粘着剤によると、特に優れた耐反撥性が実現され得る。例えば、軟化点が140℃以上のテルペンフェノール樹脂を好ましく使用し得る。ここに開示される技術は、上記粘着剤に含まれる全粘着付与樹脂に占める軟化点140℃以上の粘着付与樹脂の割合が50重量%超、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上(例えば95重量%以上100重量%以下)である態様で好ましく実施され得る。粘着付与樹脂の軟化点の上限は特に制限されず、例えば凡そ200℃以下(典型的には凡そ180℃以下)とすることができる。なお、ここでいう粘着付与樹脂の軟化点は、JIS K 5902およびJIS K 2207のいずれかに規定する軟化点試験方法(環球法)によって測定された値として定義される。
【0080】
粘着付与樹脂の使用量は特に制限されず、目的とする粘着性能(接着力等)に応じて適宜設定することができる。例えば、固形分基準で、アクリル系ポリマー100重量部に対して、粘着付与樹脂を凡そ10重量部以上100重量部以下(より好ましくは15重量部以上80重量部以下、さらに好ましくは20重量部以上60重量部以下)の割合で使用することが好ましい。
【0081】
上記粘着剤組成物には、必要に応じて架橋剤が用いられていてもよい。架橋剤の種類は特に制限されず、公知ないし慣用の架橋剤(例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、アミン系架橋剤等)から適宜選択して用いることができる。架橋剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋剤の使用量は特に制限されず、例えば、アクリル系ポリマー100重量部に対して凡そ10重量部以下(例えば凡そ0.005重量部以上10重量部以下、好ましくは凡そ0.01重量部以上5重量部以下)程度の範囲から選択することができる。
【0082】
上記粘着剤組成物は、必要に応じて、レベリング剤、架橋助剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、着色剤(顔料、染料等)、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤等の、粘着剤組成物の分野において一般的な各種の添加剤を含有するものであり得る。このような各種添加剤については、従来公知のものを常法により使用することができ、特に本発明を特徴づけるものではないので、詳細な説明は省略する。
【0083】
剥離ライナーとしては、両面粘着シートの分野において周知ないし慣用のものを適宜選択して用いることができる。例えば、ライナー基材の表面に剥離処理が施された構成の剥離ライナーを好適に用いることができる。この種の剥離ライナーを構成するライナー基材(剥離処理対象)としては、各種の樹脂フィルム類、紙類、布類、ゴムシート類、発泡体シート類、金属箔、これらの複合体(例えば、紙の両面にオレフィン樹脂がラミネートされた積層構造のシート)等を適宜選択して用いることができる。上記剥離処理は、公知または慣用の剥離処理剤(例えば、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系等の剥離処理剤)を用いて常法により行うことができる。また、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリエチレン/ポリプロピレン混合物)、フッ素系ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン)等の低接着性のライナー基材を、該ライナー基材の表面に剥離処理を施すことなく剥離ライナーとして用いてもよい。あるいは、かかる低接着性のライナー基材に剥離処理を施したものを用いてもよい。
【0084】
粘着剤組成物の塗付は、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等の、公知ないし慣用のコーターを用いて行うことができる。特に限定するものではないが、粘着剤組成物の塗付量は、乾燥後において(すなわち固形分基準で)例えば凡そ5μm以上150μm以下の厚さ(片面当たりの厚さ)の粘着剤層が形成される程度の量とすることができる。両面粘着シートの軽量化および/または薄型化と粘着性能を高レベルでバランスさせる観点からは、上記片面当たりの粘着剤層の厚さを凡そ10μm以上110μm以下とすることが適当であり、凡そ15μm以上100μm以下、典型的にはは20μm以上80μm以下とすることが好ましい。両面粘着シートの薄型化等の観点から、粘着剤層の厚さは50μm以下としてもよく、さらに35μm以下としてもよい。架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、粘着剤組成物の乾燥は加熱下で行うことが好ましい。通常は、例えば凡そ40℃〜120℃程度の乾燥温度を好ましく採用することができる。
【0085】
発泡体基材上に粘着剤層を形成する方法としては、従来公知の種々の方法を適用し得る。例えば、上記粘着剤組成物を発泡体基材に直接塗付する方法(直接法)、適当な剥離面上に上記粘着剤組成物を塗付して該剥離面上に粘着剤層を形成し、その粘着剤層を発泡体基材に貼り合せて転写する方法(転写法)等が挙げられる。これらの方法を組み合わせて用いてもよい。また、第一粘着剤層と第二粘着剤層とで異なる方法を採用してもよい。溶媒を含む粘着剤組成物を用いる場合には、架橋反応の促進、製造効率向上等の観点から、該粘着剤組成物を加熱下で乾燥させることが好ましい。
【0086】
粘着剤層の総厚み(第一粘着剤層と第二粘着剤層の合計厚み)は、特に限定されないが、例えば、10μm以上600μm以下とすることができる。粘着性能の観点から、通常は、粘着剤層の総厚みを20μm以上とすることが適当であり、好ましくは30μm以上、より好ましくは40μm以上である。また、所望の特性を発揮し得る発泡体基材の厚みを確保しやすいという観点から、通常は、粘着剤層の総厚みを200μm以下とすることが適当であり、好ましくは160μm以下、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下、例えば70μm以下である。
第一粘着剤層の厚みと第二粘着剤層の厚みとは、同一の厚みであってもよく、異なる厚みであってもよい。通常は、両粘着剤層の厚みが概ね同程度である構成を好ましく採用し得る。また各粘着剤層は、単層および多層のいずれの形態を有していてもよい。
【0087】
粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率は特に限定されず、例えば10重量%以上70重量%以下であり得る。リワーク性や再剥離性等の取扱性と耐衝撃性とを高レベルでバランスさせる観点から、通常は、上記粘着剤のゲル分率として、15重量%以上50重量%以下の範囲が適当であり、18重量%以上45重量%以下の範囲が好ましく、20重量%以上40重量%以下(例えば20重量%以上35重量%以下、典型的には20重量%以上30重量%未満)の範囲が特に好ましい。ゲル分率は、ベースポリマーのモノマー組成や分子量、架橋剤その他の添加剤等により調節することができる。粘着剤のゲル分率は、以下の方法により求めることができる。
【0088】
[ゲル分率]
粘着剤組成物を130℃で2時間乾燥させた後、その乾燥物(試料)約0.1gをポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂製多孔質シートで包み、口を凧糸で縛る。この包みを容量50mLのスクリュー管に入れ、酢酸エチルを満たして室温(典型的には23℃)で7日間放置した後、上記包みを取り出して130℃で2時間乾燥させ、次式:ゲル分率(%)=(浸漬・乾燥後の試料重量)/(浸漬前の試料重量)×100;によりゲル分率を算出する。上記PTFE樹脂製多孔質シートとしては、日東電工(株)製の商品名「ニトフロン(登録商標)NTF1122」またはその相当品を使用することができる。
【0089】
ここに開示される両面粘着シートは、本発明の効果を大きく損なわない範囲で、発泡体基材および粘着剤層以外の層(中間層、下塗り層等。以下「他の層」ともいう。)をさらに含んでもよい。例えば、発泡体基材といずれか一方または両方の粘着剤層との間に上記他の層が設けられていてもよい。このような構成の両面粘着シートでは、上記他の層の厚みは両面粘着シートの総厚み(すなわち、一方の粘着面から他方の粘着面までの厚み)に含まれる。
【0090】
ここに開示される技術の好ましい一態様によると、押圧接着力が40N以上(より好ましくは100N以上、さらに好ましくは180N以上、典型的には200N以上、例えば240N以上)の性能を示す両面粘着シートが提供され得る。このように押圧接着力の高い両面粘着シートは、該両面粘着シートを用いて部材を貼り合わせた場合、内部応力による剥がれが生じにくく、接着信頼性に優れるので好ましい。
【0091】
ここに開示される技術の好ましい他の一態様によると、上記押圧接着力が250N以上(より好ましくは300N以上、さらに好ましくは330N以上)である両面粘着シートが提供され得る。上記押圧接着力が250N以上の両面粘着シートは、より高い接着信頼性を示し得る。
【0092】
上記押圧接着力は、横59cm、縦113cm、幅1mmの窓枠状(「額縁状」ともいう)の両面粘着シートにより、ステンレス鋼(SUS)板とガラス板とを5kgの荷重を10秒間かける圧着条件で貼り合わせることによって評価用サンプルを作製し、この評価用サンプルにおいて上記ガラス板を10mm/分の負荷速度で内部から外部に向かってガラス板の厚み方向に押圧して、ガラス板とステンレス板とが分離するまでの間に観測される最大応力として定義される。上記押圧接着力は、例えば、後述する実施例に記載の手順により測定することができる。
【0093】
なお、以下の説明において、このように横59mm、縦113mm、幅1mmの窓枠状両面粘着シートを用いて測定される押圧接着力を「押圧接着力(1mm幅)」と表記することがある。同様に、横59mm、縦113mm、幅Ammの窓枠状両面粘着シートを用いて測定された押圧接着力を「押圧接着力(Amm幅)」のように表記することがある。そのうち、A<1である窓枠状両面粘着シートを用いて測定される押圧接着力を、特に「細幅押圧接着力」ということがある。細幅押圧接着力は、横59mm、縦113mm、幅Amm(ただしA<1)である窓枠状両面粘着シートを用いる点以外は、押圧接着力(1mm幅)と同様にして測定することができる。
【0094】
ここに開示される技術の好ましい一態様によると、押圧接着力(0.7mm幅)が28N以上(より好ましくは100N以上、さらに好ましくは140N以上、典型的には160N以上、例えば250N以上)である両面粘着シートが実現され得る。
ここに開示される技術の好ましい一態様によると、押圧接着力(0.5mm幅)が20N以上(より好ましくは50N以上、さらに好ましくは80N以上、典型的には110N以上、例えば160N以上)である両面粘着シートが実現され得る。
ここに開示される技術の好ましい一態様によると、押圧接着力(0.3mm幅)が12N以上(より好ましくは30N以上、さらに好ましくは40N以上、典型的には60N以上、例えば100N以上)である両面粘着シートが実現され得る。
【0095】
ここに開示される技術の他の好ましい一態様によると、後述する実施例に記載の方法で行われる耐衝撃性評価において、60回落下させた後にも剥がれや発泡体基材の割れ等の接合不具合が認められないレベルの耐衝撃性を示す両面粘着シートが実現され得る。
【0096】
ここに開示される両面粘着シートは、所望の光学特性(透過率、反射率等)を有するものであり得る。例えば、遮光用途に用いられる両面粘着シートは、可視光透過率が0%以上15%以下(より好ましくは0%以上10%以下)であることが好ましい。また、光反射用途に用いられる両面粘着シートは、可視光反射率が20%以上100%以下(より好ましくは25%以上100%以下)であることが好ましい。両面粘着シートの光学特性は、例えば、上述のように発泡体基材を着色すること等により調整することができる。
【0097】
ここに開示される両面粘着シートは、金属の腐食防止等の観点から、ハロゲンフリーであることが好ましい。両面粘着シートがハロゲンフリーであることは、例えば、この両面粘着シートが電気・電子部品の固定に用いられ得る場合において、有利な特徴となり得る。また、燃焼時におけるハロゲン含有ガスの発生を抑制し得るので、環境負荷軽減の観点からも好ましい。ハロゲンフリーの両面粘着シートは、ハロゲン化合物を発泡体基材や粘着剤の原料として意図的に用いないこと、ハロゲン化合物を意図的に配合しない発泡体基材を用いること、添加剤を用いる場合にハロゲン化合物由来の添加剤を用いないこと、等の手段を単独で、あるいは適宜組み合わせて採用することにより得ることができる。
【0098】
ここに開示される両面粘着シートは、特に限定されないが、例えば、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等の金属材料;ガラス、セラミックス等の無機材料;ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の樹脂材料;天然ゴム、ブチルゴム等のゴム材料;およびこれらの複合素材等からなる被着体に対して用いることができる。
【0099】
ここに開示される両面粘着シートは、衝撃時厚み方向変形量が抑制されていることにより衝撃保護性に優れ、かつ耐衝撃性が高いものとなり得る。このため、落下等による衝撃を受けやすい携帯機器において、接合、固定、衝撃吸収等の目的で用いられる両面粘着シートとして好適なものとなり得る。また、ここに開示される両面粘着シートは、発泡体基材を含むことから、段差追従性、耐反撥性、防水性に優れたものとなり得る。したがって、このような特長を生かして、電子機器用途、例えば、携帯型電子機器(例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット型パソコン、ノートパソコン等)の表示部を保護する保護パネル(レンズ)固定用、携帯電話のキーモジュール部材固定用、テレビのデコレーションパネル固定用、パソコンのバッテリーパック固定用、デジタルビデオカメラのレンズ防水等の用途に好ましく適用され得る。特に好ましい用途として、携帯型電子機器用途が挙げられる。特に、液晶表示装置を内蔵する携帯型電子機器に好ましく使用され得る。例えば、このような携帯型電子機器において、表示部を保護する保護パネル(レンズ)と筐体とを接合する用途等に好適である。
なお、本明細書における「レンズ」は、光の屈折作用を示す透明体及び光の屈折作用のない透明体の両方を含む概念である。つまり、本明細書における「レンズ」には、屈折作用がない、単なる携帯型電子機器の表示部を保護する保護パネルも含まれる。
【0100】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明において「部」および「%」は、特に断りがない限り重量基準である。
【0101】
<実験例1>
両面粘着シート(例1〜例10)のサンプルは、それぞれ次のようにして作製した。
(例1)
[アクリル系ポリマー(A)の作製]
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器および滴下ロートを備えた反応容器に、n−ブチルアクリレート100部と、アクリル酸5部と、重合開始剤として2、2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2部と、重合溶媒としてのトルエンとを仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、反応容器内の液温を60℃付近に保って約6時間重合反応を行って、アクリル系ポリマー(A)のトルエン溶液を得た。このアクリル系ポリマー(A)のMwは55×10であった。
ここで、アクリル系ポリマー(A)のMwは以下のようにして求めた。すなわち、上記トルエン溶液を室温で乾燥させた後、その固形分をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させて、アクリル系ポリマー(A)を約0.1g/リットルの濃度で含むTHF溶液を調製した。このTHF溶液を平均孔径0.45μmのメンブレンフィルターで濾過した濾液につきGPCを行って、アクリル系ポリマー(A)のMw(標準ポリスチレン換算)を求めた。GPC装置としては、東ソー株式会社製品、機種名「HLC−8320GPC」(カラム:TSKgel GMH−H(S))を使用した。
【0102】
[粘着剤組成物(B)の作製]
上記トルエン溶液に含まれるアクリル系ポリマー(A)100部に対し、粘着付与樹脂として、製品名「タマノル803L」(テルペンフェノール樹脂:荒川化学工業株式会社製、軟化点145℃〜160℃)30部および製品名「YSポリスターS145」(テルペンフェノール樹脂:ヤスハラケミカル株式会社製、軟化点140℃〜150℃)10部を添加し、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、製品名「コロネートL」)1部およびエポキシ系架橋剤(三菱ガス化学株式会社製、商品名「テトラッドC」)0.03部を加えてアクリル系粘着剤組成物(B)を作製した。
【0103】
市販の剥離ライナー(商品名「SLB−80W3D」、住化加工紙株式会社製)を2枚用意した。それらの剥離ライナーのそれぞれ一方の面(剥離面)に上記粘着剤組成物(B)を、乾燥後の厚さが25μmとなるように塗付し、100℃で2分間乾燥させた。このようにして、上記2枚の剥離ライナーの剥離面上にそれぞれ粘着剤層を形成した。
一方の表面および他方の表面にコロナ放電処理が施されたポリエチレン系発泡体シートからなる発泡体基材(以下「基材No.1」という。)を用意した。上記基材No.1の厚みは150μmであり、流れ方向の引張強さ(引張強度(MD))は16.3MPaであり、幅方向の引張強さ(引張強度(TD))は9.5MPaであった。
この基材No.1の一方の表面および他方の表面に上記2枚の剥離ライナー上に形成された粘着剤層を、それぞれ貼り合わせた。上記剥離ライナーは、そのまま粘着剤層上に残し、該粘着剤層の表面(粘着面)の保護に使用した。得られた構造体を80℃のラミネータ(0.3MPa、速度0.5m/分)に1回通過させた後、50℃のオーブン中で1日間養生した。このようにして、発泡体基材(No.1)の第一面および第二面にそれぞれ第一粘着剤層および第二粘着剤層を有し、総厚みが200μmである両面粘着シート(例1)を得た。
【0104】
(例2、例3)
上記基材No.1の両面にそれぞれ形成させる粘着剤層の乾燥後の厚さが50μmづつ(例2)または75μmづつ(例3)であること以外は例1の両面粘着シートの作製と同様にして、両面粘着シート(例2、例3)を得た。
【0105】
(例4)
[アクリル系ポリマー(C)の作製]
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、滴下ロートを備えた反応容器に、n−ブチルアクリレート100部と、アクリル酸2部と、酢酸ビニル5部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート0.1部と、重合開始剤として2、2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2部と、重合溶媒としてのトルエンとを仕込み、60℃で6時間溶液重合してアクリル系ポリマー(C)のトルエン溶液を得た。アクリル系ポリマー(A)と同様にして測定したアクリル系ポリマー(C)のMwは、50×10であった。
【0106】
[粘着剤組成物(D)の作製]
上記トルエン溶液に含まれるアクリル系ポリマー(C)100部に対し、粘着付与樹脂として、重合ロジンエステル樹脂(荒川化学工業社製、製品名「ペンセル D−125」、軟化点125℃)30部を添加し、架橋剤としてイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業社製、製品名「コロネートL」)2部を加えてアクリル系粘着剤組成物(D)を作製した。
【0107】
上記粘着剤組成物(B)の代わりに上記粘着剤組成物(D)を用いること以外は、例1の両面粘着シートの作製と同様にして、両面粘着シート(例4)を得た。
【0108】
(例5〜例7)
上記発泡体基材No.1の代わりに基材No.2を用いることと、該基材No.2の両面にそれぞれ形成させる粘着剤層の乾燥後の厚さが25μmづつ(例5)、50μmづつ(例6)、75μmづつ(例7)であること以外は、例4の両面粘着シートの作製と同様にして、両面粘着シート(例5〜例7)を得た。
ここで、基材No.2は、一方の表面および他方の表面にコロナ放電処理が施されたポリエチレン系発泡体シートからなる発泡体基材であり、その厚みは150μmであり、流れ方向の引張強さ(引張強度(MD))は12.3MPaであり、幅方向の引張強さ(引張強度(TD))は7.5MPaであった。
【0109】
(例8)
上記発泡体基材No.2の代わりに基材No.3を用いることと、該基材No.3の両面にそれぞれ形成させる粘着剤層の乾燥後の厚さを50μmづつとすること以外は、例4の両面粘着シートの作製法と同様にして、両面粘着シート(例8)を得た。
ここで、基材No.3は、一方の表面および他方の表面にコロナ放電処理が施されたポリエチレン系発泡体シートからなる発泡体基材であり、その厚みは100μmであり、流れ方向の引張強さ(引張強度(MD))は9.5MPaであり、幅方向の引張強さ(引張強度(TD))は8.2MPaであった。
【0110】
(例9)
上記発泡体基材No.2の代わりに基材No.4を用いること以外は、例4の両面粘着シートの作製法と同様にして、両面粘着シート(例9)を得た。
ここで、基材No.4は、一方の表面および他方の表面にコロナ放電処理が施されたポリエチレン系発泡体シートからなる発泡体基材であり、その厚みは200μmであり、流れ方向の引張強さ(引張強度(MD))は5.1MPaであり、幅方向の引張強さ(引張強度(TD))は4.6MPaであった。
【0111】
(例10)
上記発泡体基材No.2の代わりに基材No.5を用いることと、該基材No.5の両面にそれぞれ形成させる粘着剤層の乾燥後の厚さを20μmづつとすること以外は、例4の両面粘着シートの作製法と同様にして、両面粘着シート(例10)を得た。
ここで、基材No.5は、一方の表面および他方の表面にコロナ放電処理が施されたポリエチレン系発泡体シートからなる発泡体基材であり、その厚みは60μmであり、流れ方向の引張強さ(引張強度(MD))は4.8MPaであり、幅方向の引張強さ(引張強度(TD))は4.3MPaであった。
【0112】
上記例1〜例10の両面粘着シートの作製に使用した基材No.1〜No.5の発泡倍率、25%圧縮強度、引張強さおよび引張伸度を表1にまとめた。
【0113】
【表1】
【0114】
<評価試験>
(1)180度剥離強度
両面粘着シートの一方の粘着面を覆う剥離ライナーを剥がし、該一方の粘着面に厚さ25μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り合わせた。これを幅20mm、長さ100mmのサイズにカットして測定サンプルを作製した。
23℃、50%RHの環境下にて、上記測定サンプルの他方の粘着面を露出させ、該他方の粘着面をステンレス鋼板(SUS304BA板)の表面に、2kgのローラを1往復させて圧着した。これを同環境下に30分間放置した後、万能引張圧縮試験機(装置名「引張圧縮試験機、TG−1kN」ミネベア(株)製)を使用して、JIS Z 0237に準じて、引張速度300mm/分、剥離角度180度の条件で、剥離強度(N/20mm幅)を測定した。
【0115】
(2)押圧接着力
両面粘着シートを、図2に示すような横59mm、縦113mm、幅1mmの窓枠状(額縁状)にカットして、窓枠状両面粘着シートを得た。この窓枠状両面粘着シートを用いて、横59mm、縦113mm、厚み1mmのガラス板(コーニング社製Gorillaガラスを使用した。以下、同じ。)と、中央部に直径15mmの貫通孔を有するステンレス鋼板(SUS板)(横70mm、縦130mm、厚み2mm)とを、5kgの荷重を10秒間かけて圧着することにより貼り合わせて、評価用サンプルを得た。
図2は、上記評価用サンプルの概略図であって、(a)は上面図、(b)はA−A’断面図である。図2において、符号21はSUS板、符号2は窓枠状両面粘着シート、符号22はガラス板、符号21AはSUS板21に設けられた貫通孔を示している。
これらの評価用サンプルを、上記万能引張圧縮試験機にセットした。そして、SUS板の貫通孔に丸棒を通過させ、この丸棒を10mm/分の速度で下降させることにより、ガラス板をSUS板から離れる方向に押圧した。そして、ガラス板とSUS板とが分離するまでの間に観測された最大応力を押圧接着力として測定した。なお、測定は23℃、50%RHの環境下で行った。
図3は、押圧接着力の測定方法を示す概略断面図であり、符号21はSUS板、符号2は窓枠状の両面粘着シート、符号22はガラス板、符号23は丸棒、符号24は支持台を示す。評価用サンプルは、引張圧縮試験機の支持台24に図3に示すように固定され、評価用サンプルのガラス板22は、SUS板21の貫通孔21Aを通過した丸棒23により押圧される。なお、上記押圧接着力測定において、SUS板21は、ガラス板22が丸棒23で押圧されることにより加わる負荷によって撓んだり破損したりすることはなかった。
【0116】
(3)耐衝撃性
両面粘着シートを、図4に示すような横59mm、縦113mm、幅1mmの窓枠状(額縁状)にカットして、窓枠状両面粘着シートを得た。この窓枠状両面粘着シートを用いて、第一のPC板(横70mm、縦130mm、厚み2mm)と第二のPC板(横59mm、縦113mm、厚み0.55mm)とを、5kgの荷重を10秒間かける条件で圧着することにより貼り合わせて、評価用サンプルを得た(図4(a)(b)参照)。
図4は、上記評価用サンプルの概略図であって、(a)は上面図、(b)はそのB−B’断面図である。図4において、符号31は第一のPC板、符号3は窓枠状の両面粘着シート、符号32は第二のPC板を示している。
これらの評価用サンプルの、第一のPC板の背面(第二のPC板と貼り合わされた面とは反対側の面)に、160gの錘を取り付けた。上記錘付きの評価用サンプルにつき、常温(23℃程度)において、1.2mの高さからコンクリート板に60回自由落下させる落下試験を行った。このとき、上記評価用サンプルの6面が順次下方となるように、落下の向きを調節した。すなわち、6面につきそれぞれ1回の落下パターンを10サイクル行った。
そして、1回落下させる毎に、第一のPC板と第二のPC板との接合が維持されているか否を目視で確認し、第一のPC板と第二のPC板とが剥がれる(分離する)までの落下回数を、常温での落下に対する耐衝撃性として評価した。60回落下させた後にも剥がれが認められなかった場合には「60回以上」または「>60」と表示した。
【0117】
(4)耐反撥性
両面粘着シートを幅10mm、長さ100mmのサイズにカットし、その一方の粘着面を覆う剥離ライナーを剥がし、これを厚さ0.5mm、幅10mm、長さ100mmのアルミニウム板に貼り合わせて試験片を作製した。その試験片の長手方向を半径15mmの円柱に沿わせて(アルミニウム板側を内側とする。)弧状に曲げた後、試験片の他方の粘着剤層を覆う剥離ライナーを剥がし、ラミネータを用いて厚さ2mmのPC板に、試験片の曲げ形状を元に戻しながら圧着した。これを23℃の環境下に24時間放置し、次いで70℃で2時間加熱した後に、PC板表面から浮きあがった試験片の両端部の高さ(mm)をそれぞれ測定した。測定は3つの試験片を用いて行い(すなわちn=3)、それら6つの測定値の平均値を算出した。
【0118】
(5)衝撃時厚み方向変形量
両面粘着シートを横59mm、縦113mm、幅1mmの窓枠状(額縁状)にカットして、窓枠状両面粘着シートを得た。また、中央部に横50mm、縦90mmの長方形状の貫通孔を有するステンレス鋼板(SUS板)(横70mm、縦130mm、厚み2mm)と、横59mm、縦113mm、厚み1.5mmのガラス板(コーニング社製Gorillaガラス)とを用意した。上記窓枠状両面粘着シートを上記SUS板と上記ガラス板で挟み込むように貼り合わせ、5kgの荷重を10秒間かけることにより圧着し、試験片とした。上記試験片においてガラス板側が下向きとなり、SUS板と両面粘着シートとの接着面が水平となるように、SUS板を衝撃試験装置にセットした。鋼球(直径11mm、重量28g)を用意し、この鋼球を垂直に落下させたときに、鋼球が上記SUS板における貫通孔の内部を通り、該SUS板や両面粘着シートに一切触れることなく、直接上記ガラス板の表面に衝突するような位置に配置した。このとき鋼球の落下高さ(落下前の鋼球の最下部とガラス板との間の距離(垂直距離))は1mとなるように調整した。
図5は、衝撃時厚み方向変形量の測定方法を示す説明図である。図5において、符号41はステンレス鋼板(SUS板)、符号4は窓枠状の両面粘着シート、符号42はガラス板、符号43は鋼球を示している。
図5に示すように、23℃程度、50%RHの環境下において、上方から鋼球43を自由落下させた。鋼球43がガラス板42に衝突したときの両面粘着シート4の挙動を高速度カメラ(フォトロン社製、撮影速度;50000FPS(フレーム毎秒))で撮影し、その結果を画像解析することで、両面粘着シート4の厚み方向の変形量(伸び量)を計測した。具体的には、鋼球43を落下させる前の両面粘着シート4の厚み(初期厚み)と、鋼球43の衝突により鉛直方向下方に力を加えられた両面粘着シート4が厚み方向に最大に変位したときの厚み(最大厚み)とから、以下の式(2)により衝撃時厚み方向変形量を算出した。
(衝撃時厚み方向変形量)=(最大厚み)−(初期厚み) (2)
【0119】
(6)基材凝集力
両面粘着シートを幅20mm、長さ200mmのサイズにカットし、両面の粘着面にそれぞれ幅30mm、長さ300mm、厚さ0.3mmのステンレス鋼箔を貼り合わせ、圧力1.0MPaで20秒間プレスすることにより圧着した。上記貼り合わせは、両面粘着シートの幅中央とステンレス鋼箔の幅中央とが一致するように位置合わせして行った。これを50℃、50%RHの雰囲気下で24時間エージングしたものを評価用サンプルとした。
この評価用サンプルについて、23℃、50%RHの雰囲気下、万能引張圧縮試験機(装置名「引張圧縮試験機、TG−1kN」ミネベア(株)製)を用いて基材凝集力を測定した。具体的には、図6に示すように、両面粘着シート5の第一粘着剤層51および第二粘着剤層52にそれぞれ貼り合わされた第一のステンレス鋼箔56および第二のステンレス鋼箔57の長手方向の一端を上記試験機のチャック58、59でそれぞれ掴み、チャック58を上方に、チャック59を下方に、それぞれ速度150mm/minで引っ張ることにより、両面粘着シート5で接合されたステンレス鋼箔56、57をT型に引き剥がした。このT型剥離に要する力を上記試験機で測定し、これを基材凝集力(N/20mm幅)とした。なお、T形剥離後の評価用サンプルを目視で観察し、剥離が両面粘着シートにおける粘着剤層51、52とステンレス鋼箔56、57の接着界面における剥離ではなく、図6に示すように発泡体基材55の厚み内の破断によって起こっていることを確認した。
【0120】
(7)保持力
両面粘着シートの片面を覆う剥離ライナーを剥がし、厚さ25μmのPETフィルムを貼り付けて裏打ちした。これを長さ50mm、幅25mmの大きさにカットして試験片を作製した。これらの試料片の他方(すなわち該試験片におけるPETフィルムで裏打ちされた面の反対側)の面を覆う剥離ライナーを剥がし、被着体としてのフェノール樹脂板に、幅25mm、長さ25mmの接着面積にて貼り付けた。これを23℃の環境下に30分間放置した後、フェノール樹脂板を垂下し、試料片の自由端に2kgの荷重を付与した。JIS Z 0237(2004)に準じて、該荷重が付与された状態で23℃、50%RHの環境下で12時間放置した。12時間経過後、試料片が落下していた場合には、保持時間12時間未満と判定した(表2では「落下」と示している。)。それ以外の場合は、最初の貼り付け位置からの試験片のズレ距離(mm)を測定した。
【0121】
例1〜例10の両面粘着シートにおける上述した方法による測定または評価の結果を表2に示す。この表2には、各例に係る両面粘着シートの概略構成と、該両面粘着シートの粘着剤層を構成する粘着剤について上述した方法により求めたゲル分率の値とを併せて示している。
【0122】
【表2】
【0123】
上記表2に示されるように、基材No.1を用いた両面粘着シート例1〜4は、基材No.2〜No.5を用いた両面粘着シート例5〜例10に比べて、衝撃時厚み方向変形量が抑制されていた。また、例1〜例4の両面粘着シートは、例5〜例10の両面粘着シートに比べ、優れた耐衝撃性、高い基材凝集力を示した。加えて、例1〜例4の両面粘着シートは押圧接着力が高く、保持力も優れていた。例1〜例3の両面粘着シートは、耐反撥性および180度剥離強度の点で、例4の両面粘着シートよりもさらに優れた性能を示すものであった。
なお、例5〜例10の両面粘着シートについて、耐衝撃性試験における第一のポリカーボネート板と第二のポリカーボネート板との分離態様を観察したところ、基材No.3〜No.5を用いた例8〜例10の両面粘着シートでは、窓枠状両面粘着シートの全周に亘って、発泡体基材が厚み内で引き裂かれていた。また、基材No.2を用いた例5〜例7の両面粘着シートは、窓枠状両面粘着シートの全周のうち一部の長さでは発泡体基材が厚み内で引き裂かれ、他の部分では両面粘着シートが第一または第二のポリカーボネート板との界面で剥離していた。
【0124】
<実験例2>
次のようにして、例11〜例13に係る両面粘着シートのサンプルを作製した。
(例11〜例13)
上記発泡体基材No.1の代わりに基材No.6を用いること、および、該基材No.6の両面にそれぞれ形成させる粘着剤層の乾燥後の厚さを25μmづつ(例11)、50μmづつ(例12)、75μmづつ(例13)とすること以外は、例1の両面粘着シートの作成法と同様にして、両面粘着シート(例11〜例13)を得た。
ここで、基材No.6は、一方の表面および他方の表面にコロナ放電処理が施されたポリエチレン系発泡体シートからなる発泡体基材であり、その厚みは150μmであり、流れ方向の引張強さ(引張強度(MD))は19.2MPaであり、幅方向の引張強さ(引張強度(TD))は11.8MPaであった。
【0125】
上記例11〜例13の両面粘着シートの作製に使用した基材No.6の発泡倍率、25%圧縮強度、引張強さおよび引張伸度を表3にまとめた。
【0126】
【表3】
【0127】
例11〜例13に係る両面粘着シートについて、実験例1と同様の方法で測定または評価を行った結果を表4に示す。この表4には、例11〜例13の各例に係る両面粘着シートの概略構成と、該両面粘着シートの粘着剤層を構成する粘着剤について上述した方法により求めたゲル分率の値とを併せて示している。
【0128】
【表4】
【0129】
上記表4および表2に示されるように、基材No.6を用いた例11〜例13に係る両面粘着シートは、基材No.2〜No.5を用いた両面粘着シート(例5〜例10)に比べて、衝撃時厚み方向変形量が抑制されていた。また、例11〜例13に係る両面粘着シートは、基材No.1を用いた両面粘着シート(例1〜例4)と比較しても、さらに衝撃時厚み方向変形量が抑制されていることが明らかとなった。また、例11〜例13に係る両面粘着シートは、優れた耐衝撃性と、より高い基材凝集力を示した。さらに、例11〜例13に係る両面粘着シートは押圧接着力(1mm幅)がより高く、保持力もより優れていた。加えて、例11〜例13に係る両面粘着シートは、高い180度剥離強度と、優れた耐反撥性を示した。
【0130】
<実験例3>
例1〜13に係る両面粘着シートについて、以下の方法により、窓枠状両面粘着シートの幅が1mmよりも細い場合の押圧接着力(細幅押圧接着力)を測定した。
すなわち、両面粘着シートを横59mm、縦113mm、幅0.3mmの窓枠状(額縁状)にカットしたものと、横59mm、縦113mm、幅0.5mmの窓枠状(額縁状)にカットしたものと、横59mm、縦113mm、幅0.3mmの窓枠状(額縁状)にカットしたものとを用意した。これら幅0.3mm、または幅0.5mm、幅0.7mmの窓枠状両面粘着シートを用いた他は、幅1mmの窓枠状両面粘着シートを用いる上述の押圧接着力測定と同様にして、細幅押圧接着力を測定した。得られた結果を表5に示す。
【0131】
【表5】
【0132】
上記表5に示されるように、各例に係る両面粘着シートは、その幅が細くなるほど押圧接着力が小さくなる傾向がみられた。しかしながら、例1〜例4および例11〜例13に係る両面粘着シートによると、0.7mmの幅であっても160N以上の高い押圧接着力が得られた。また、例1〜例4および例11〜例13に係る両面粘着シートによると、0.5mmの幅であっても110N以上の高い押圧接着力が得られた。さらに、例1〜例4および例11〜例13に係る両面粘着シートによると、0.3mmの幅であっても60N以上の高い押圧接着力が得られた。特に、例11〜例13に係る両面粘着シートは、より高い押圧接着力を発揮した。
【0133】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【符号の説明】
【0134】
1 両面粘着シート
11 第一粘着剤層
11A 第一粘着面
12 第二粘着剤層
12A 第二粘着面
15 発泡体基材
15A 第一面
15B 第二面
17 剥離ライナー
17A 剥離ライナーの前面
17B 剥離ライナーの背面
2 両面粘着シート
21 ステンレス鋼板
21A 貫通孔
22 ガラス板
23 丸棒
24 支持台
3 両面粘着シート
31,32 ポリカーボネート板
4 両面粘着シート、
41 ステンレス鋼板
42 ガラス板
43 鋼球
5 両面粘着シート
51 第一粘着剤層
52 第二粘着剤層
55 発泡体基材
56 第一のステンレス鋼箔
57 第二のステンレス鋼箔
58、59 チャック
図1
図2
図3
図4
図5
図6