(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明を実施した板金加工システムの概略を示す全体斜視図であり、
図2は、
図1に示した板金モデル作成装置(CAD)5の概略構成を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、板金加工システム1は、LAN3を介して、製造シミュレーションを行って板金三次元(3D)モデルを作成する板金モデル作成装置(CAD)5と、CAD5により作成された板金3DモデルからNCデータを生成するコンピュータ支援装置(CAM)7と、CAM7からのNCデータに基づいて板金加工を行う加工機9と、種々のデータを記憶するデータベース10と、が接続された構成となっている。
【0015】
図2に示すように、CAD5は、CPU11に、RAM13と、ROM15と、ディスプレイ17と、入力装置19とが接続されており、CPU11がLAN3に接続されている。
【0016】
そして、CPU11は、後述するように、ROM15に記憶されている板金モデル作成プログラムに従い、データベース10よりのデータに基づいて板金3Dモデルおよび製造板金3Dモデルを作成するようになっている。
【0017】
次に、
図3〜7を参照してCAD5による板金モデル作成動作について説明する。
【0018】
図3は、
図1および
図2に示したCAD5による板金モデル作成動作のフローチャートであり、
図4〜7は、
図1および
図2に示したCAD5による板金モデル作成動作の説明図である。
【0019】
板金モデル作成動作は、まず、過去に実際に加工された材料の板厚を、前もって所定のパラメータに基づいて履歴管理して統計値を算出しておき、通常の公称板厚に基づいて作成された板金3Dモデル(一次板金モデル)に対して、その統計値を加味して、製造板金3Dモデル(二次板金モデル)を作成するようになっている。
【0020】
まず、
図3のステップ101において、前工程として、過去に実際に加工された材料の板厚を、前もって所定のパラメータに基づいて履歴管理して実板厚の統計値を得る。
【0021】
すなわち、加工機9によって加工された板金製品は、通常、材料棚等に保管されることとなるが、その加工された板金製品の実板厚を履歴管理し、実板厚のヒストグラムとして集め、その統計値を算出して記憶しておく。
【0022】
すなわち、加工された板金製品の実板厚が測定され、履歴管理として、例えば、材質や製造元やロット等の板金材料の種類毎に分類され、
図4に示すようなヒストグラムに集計され、そのヒストグラムから平均値や中央値等の統計値が算出され記憶される。
【0023】
実際には、加工された板金製品の実板厚の測定は、オペレータにより行われ、材質等の材料の種類情報と共に、CAD5に入力される。CAD5は、
図4に示すようなヒストグラムを集計し、そのヒストグラムから平均値や中央値等の統計値を算出し、データベース10に記憶する。なお、この実施形態では、ヒストグラムの集計および統計値の算出は、CAD5によって行われるようになっていたが、他にコンピュータを設け、そのコンピュータによって行うようにしても良い。
【0024】
次に、ステップ103において、通常の公称板厚に基づいて、これから加工する板金製品の板金3Dモデル(一次板金モデル)を作成する。
【0025】
すなわち、CAD5によって、以下のようにペーパーモデルから、板金3Dモデルが作成される。ここで、ペーパーモデルとは、板金製品が面で表現されたサーフェイスモデルのことを言い、また、板金3Dモデルとは、板金製品を構成する外面、内面、及び板厚面を含む全ての面が立体的に表現されたソリッドモデルのことを言う。
【0026】
まず、CAD5のCPU11により、板金製品のペーパーモデルに対し、曲げ箇所、切断箇所、及び突き合わせパターンに関する属性情報が付加されるとともに、板金材料の材質、板厚、及び板厚方向に関する板金情報が付加される。すなわち、板金情報は、板金材料の種類を規定する。
【0027】
そして、板金情報には、板金製品において寸法精度が要求される箇所の情報も含まれ、この寸法精度が要求される箇所の情報としては、後述するように、外側寸法の箇所と、内側寸法の箇所と、フランジごとの寸法の箇所などがある。
【0028】
ここで、上記板厚としては、公称板厚が用いられる。
【0029】
そして、CPU11の制御により、ペーパーモデルを構成する全ての面を対象として、ペーパーモデルを、その面形状および公称板厚に合わせて複数のフランジに分割し、その各フランジを接合することによって板金製品の板金3Dモデルが作成される。
【0030】
次に、ステップ105において、ステップ101において取得された実板厚の統計値を用いて、ステップ103において作成された板金製品の板金3Dモデル(一次板金モデル)から製造板金3Dモデル(二次板金モデル)を作成する。
【0031】
すなわち、CPU11の制御により、板金ワークの材質、板厚、及び板厚方向に関する板金情報から板金材料の種類毎に分類された実板厚の
平均値や中央値等の統計値の1つが選択され、作成された板金製品の板金3Dモデルにおける公称板厚値が、選択された実板厚の統計値を用いた仮想実板厚値に変更され、製造板金3Dモデルが作成される。
【0032】
そして、ここでは、加工板金製品には、寸法精度が要求される箇所と、寸法精度が要求されない箇所とが存在するので、以下に説明するように、それぞれの箇所に対応して、寸法を変更するようにしている。
【0033】
次に、製造板金3Dモデルの製造について、加工板金製品における寸法精度が要求される箇所として、外側寸法が重要な場合と、内側寸法が重要な場合と、フランジごとに重要寸法が異なる場合とを例に取って説明する。
【0034】
図5は、外側寸法が重要な場合における製造板金3Dモデルの作成動作の説明図である。
【0035】
外側寸法が重要な場合では、
図5(a)の例に示すように、板金3DモデルMの外側寸法は、D1=30、D2=35、D3=20、D4=80、D5=55となっており、これらの寸法を保持することが重要となる(数値単位:mm)。ここで、公称板厚をTとすると、実板厚はtで示されている。
【0036】
次に、
図5(b)に示すように、板金3DモデルMは、その形状に合わせて分割された複数のフランジm1〜m5を接合することにより表現される。まず、その各フランジm1〜m5において、公称板厚値Tが、取得された実板厚の統計値を用いた仮想実板厚値tに変更される(
図5(b)において矢印Bで示される)。
【0037】
そして、各接合点は、板金情報に含まれる寸法精度が要求される箇所の情報に基づいて決定される。
【0038】
すなわち、この場合、外側寸法が重要となるので、各フランジm1〜m5の接合点は、
図5(b)に示すように、フランジm1の接合点はm1cとなり、フランジm2の接合点はm2c1、m2c2となり、フランジm3の接合点はm3c1、m3c2となり、フランジm4の接合点はm4c1、m4c2となり、フランジm5の接合点はm5cとなる。
【0039】
接合点はm1cと接合点はm2c1とが接合され、接合点はm2c2と接合点はm3c1とが接合され、接合点はm3c2と接合点はm4c1とが接合され、接合点はm4c2と接合点はm5cとが接合され、
図5(c)に示すようなフランジ同士の接合として表現される。
【0040】
図5(c)に示すようなフランジ同士の接合に基づいて板金3Dモデルを形成すると、
図5(d)に示すように、実板厚値を反映させながら、外側寸法に影響を与えないように形成された製造板金3Dモデルを得ることができる。
【0041】
図6は、内側寸法が重要な場合における製造板金3Dモデルの作成動作の説明図である。
【0042】
内側寸法が重要な場合では、
図6(a)の例に示すように、板金3DモデルMの内側寸法は、D6=25、D7=35、D8=25、D9=70、D10=50となっており、これらの寸法を保持することが重要となる(数値単位:mm)。ここで、公称板厚をTとすると、実板厚はtで示されている。
【0043】
次に、
図6(b)に示すように、板金3DモデルMを、その形状に合わせて、複数のフランジm1〜m5に分割し、その各フランジm1〜m5を接合することにより表現する。まず、その各フランジm1〜m5において、公称板厚値Tが、取得された実板厚の統計値を用いた仮想実板厚値tに変更される(
図6(b)において矢印Bで示される)。
【0044】
そして、この場合、内側寸法が重要となるので、各フランジm1〜m5の接合点は、
図6(b)に示すように、フランジm1の接合点はm1cとなり、フランジm2の接合点はm2c1、m2c2となり、フランジm3の接合点はm3c1、m3c2となり、フランジm4の接合点はm4c1、m4c2となり、フランジm5の接合点はm5cとなる。
【0045】
そして、接合点はm1cと接合点はm2c1とが接合され、接合点はm2c2と接合点はm3c1とが接合され、接合点はm3c2と接合点はm4c1とが接合され、接合点はm4c2と接合点はm5cとが接合され、
図6(c)に示すようなフランジ同士の接合として表現される。
【0046】
上記
図6(c)に示すようなフランジ同士の接合に基づいて板金3Dモデルを形成すると、
図6(d)に示すように、実板厚値を反映させながら、内側寸法に影響を与えないように形成された製造板金3Dモデルを得ることができる。
【0047】
図7は、フランジごとに重要寸法が異なる場合における製造板金3Dモデルの作成動作の説明図である。
【0048】
フランジごとに重要寸法が異なる場合では、
図7(a)の例に示すように、板金3DモデルMのフランジごとの重要寸法は、D11=30、D12=40、D13=30、D14=80、D15=55となっており、これらの寸法を保持することが重要となる(数値単位:mm)。ここで、公称板厚をTとすると、実板厚はtで示されている。
【0049】
次に、
図7(b)に示すように、板金3DモデルMを、その形状に合わせて、複数のフランジm1〜m5に分割し、その各フランジm1〜m5を接合することにより表現する。まず、その各フランジm1〜m5において、公称板厚値Tが、取得された実板厚の統計値を用いた仮想実板厚値tに変更される(
図7(b)において矢印Bで示される)。
【0050】
そして、この場合、外側寸法が重要となるので、各フランジm1〜m5の接合点は、
図7(b)に示すように、フランジm1の接合点はm1cとなり、フランジm2の接合点はm2c1、m2c2となり、フランジm3の接合点はm3c1、m3c2となり、フランジm4の接合点はm4c1、m4c2となり、フランジm5の接合点はm5cとなる。
【0051】
接合点はm1cと接合点はm2c1とが接合され、接合点はm2c2と接合点はm3c1とが接合され、接合点はm3c2と接合点はm4c1とが接合され、接合点はm4c2と接合点はm5cとが接合され、
図7(c)に示すようなフランジ同士の接合として表現される。
【0052】
図7(c)に示すようなフランジ同士の接合に基づいて板金3Dモデルを形成すると、
図7(d)に示すように、実板厚値を反映させながら、内側寸法に影響を与えないように形成された製造板金3Dモデルを得ることができる。
【0053】
図3のフローチャートに戻り、ステップ107において、ステップ105において作成された製造板金3Dモデル(二次板金モデル)に基づいて、CAM7により、NCデータが生成され、ステップ109において、CAM7により生成されたNCデータに基づいて、加工機9により実加工が行われる。
【0054】
この発明は前述の発明の実施の形態に限定されることなく、以下のように適宜な変更を行うことにより、その他の態様で実施し得るものである。
【0055】
すなわち、上記実施形態では、
図3のステップ105において、取得され選択された実板厚の統計値を用いて、作成された板金製品の板金3Dモデルから製造板金3Dモデルを作成するようにしていたが、作成された板金製品の板金3Dモデルに対して、設計者が直接に実板厚を指定し、製造板金3Dモデルを作成するようにしても良い。