(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367632
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】胃瘻チューブ用挿入補助具
(51)【国際特許分類】
A61M 25/02 20060101AFI20180723BHJP
A61J 15/00 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
A61M25/02 504
A61J15/00 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-148596(P2014-148596)
(22)【出願日】2014年7月22日
(65)【公開番号】特開2016-22186(P2016-22186A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年5月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 大輔
【審査官】
芝井 隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−040293(JP,A)
【文献】
特表2008−543490(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0154440(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61J 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胃瘻チューブを保持して胃瘻に挿入する胃瘻チューブ用挿入補助具であって、
胃瘻チューブに設けられた可撓性を有する椀状のバンパー部を前方端部に保持する棒状の保持ロッドと、該保持ロッドの前方端部に設けられて前記バンパー部を係止する係止部材とを備えるものにおいて、
前記係止部材は、その外周面の一部に、前記保持ロッドの外方に向かって突出する突出部を備え、
該突出部は、予め胃瘻に留置させた線状のガイド部材を前記保持ロッドの外方位置で挿通させるガイド孔を備え、
前記突出部は、互いに対向して前後方向に延びる一対の側壁板と、一方側壁板の前後方向中間部から他方側壁板の前後方向中間部に架け渡されることで両側壁板を連結する連結壁とを備え、
該連結壁に、前記ガイド孔が形成されていることを特徴とする胃瘻チューブ用挿入補助具。
【請求項2】
請求項1記載の胃瘻チューブ用挿入補助具において、前記突出部の前方端部側には、前記保持ロッドから次第に離反する方向に傾斜する挿入案内傾斜部が形成されており、
前記突出部の後方端部側には、前記保持ロッドに向かって次第に接近する方向に傾斜する抜去案内傾斜部が形成されていることを特徴とする胃瘻チューブ用挿入補助具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
胃内に栄養物を送り込むための胃瘻チューブを胃瘻に挿入する際に使用する胃瘻チューブ用挿入補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
胃瘻チューブは、胃瘻を介して先端が胃内に挿入されるチューブ本体と、胃内に留置される椀状のバンパー部とを備えている。このような胃瘻チューブを胃瘻を介して胃内に挿入するときには、一般に、胃瘻チューブ用挿入補助具が用いられる。
【0003】
この種の胃瘻チューブ用挿入補助具として、ステンレス製の保持ロッドと、その先端部に装着された合成樹脂製の係止部材とを備えるものが知られている(下記特許文献1参照)。
【0004】
この胃瘻チューブ用挿入補助具を用いるときには、先ず、胃瘻チューブのバンパー部の周方向1箇所に保持ロッドの先端部を係止させ、次いで、チューブ本体を基端部方向に引っ張ることによりバンパー部を細長い形状に変形させる。そして、この状態を維持して保持ロッドと共に胃瘻チューブを胃瘻に挿入する。その後、バンパー部が胃内に入ったところで保持ロッドを抜き取る。これにより、バンパー部が胃内において椀状に復元し、胃内からの胃瘻チューブの抜け出しが規制されて胃瘻チューブが留置された状態となる。
【0005】
ところで、胃瘻は腹壁と胃壁とを共に貫通して形成されているが、胃瘻チューブを胃瘻に挿入するとき、腹壁の瘻孔と胃壁の瘻孔とが位置ずれしていると、腹壁の瘻孔を通過した胃瘻チューブのバンパー部が胃壁の瘻孔以外の箇所に当接してしまい、バンパー部を胃壁の瘻孔に円滑に挿入することができない場合がある。
【0006】
そこで、ガイドワイヤ等の線状のガイド部材を用いて胃瘻チューブを胃瘻に挿入することが行われる。即ち、特許文献1に示された胃瘻チューブ用挿入補助具においては、施術者が把持する柄部から保持ロッド及び係止部材に亘って連通する案内通路が形成されており、この案内通路にガイド部材を挿通させることができるようになっている。一方、ガイド部材は、予め腹壁の瘻孔と胃壁の瘻孔とに挿通させた状態で胃瘻に留置されている。
【0007】
胃瘻チューブを胃瘻に挿入するときには、バンパー部を保持ロッドに保持させた状態で、ガイド部材を係止部材の先端から保持ロッド内に挿入する。バンパー部には係止部材の先端が貫通する貫通孔が形成されており、バンパー部を貫通して露出する係止部材の先端には案内通路が開口している。この開口から案内通路にガイド部材を挿入し、柄部に設けられた案内通路の終端開口から柄部の外方にガイド部材を導出させる。次いで、ガイド部材に沿わせるようにして、保持ロッドと共に胃瘻チューブをバンパー部が胃内に到達するまで胃瘻に挿入する。その後、ガイド部材を胃瘻から抜去し、ガイド部材を胃瘻から抜去する。
【0008】
このように、予め胃瘻に留置させたガイド部材により、腹壁の瘻孔と胃壁の瘻孔との位置ずれを抑制した状態で、瘻チューブを胃瘻に円滑に挿入することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−254578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記特許文献1のものでは、ガイド部材の案内通路が、係止部材、保持ロッド及び柄部を連通して形成されているためにその挿通距離が極めて長く、ガイド部材の挿通作業が迅速に行えない不都合がある。
【0011】
また、上記特許文献1のものでは、ガイド部材がバンパー部の周壁を貫通した状態で胃瘻チューブを胃瘻に挿入するため、次のような不都合がある。即ち、バンパー部が胃内に入りきらないうちに、誤って保持ロッドをバンパー部から外してしまった場合、胃瘻の中途位置で残留するバンパー部を一旦胃瘻から抜き取って再度挿入し直す必要がある。このとき、バンパー部は胃瘻の内部で折り畳まれるように変形し、バンパー部を貫通するガイド部材はバンパー部によって締め付けられた状態となる。この状態で、バンパー部を胃瘻から抜き取ると、バンパー部と共にガイド部材も胃内から抜けてしまい、胃瘻チューブを胃瘻に挿入し直すときにガイド部材を用いることができなくなって、胃瘻チューブの円滑な挿入作業が望めないおそれがある。
【0012】
上記の点に鑑み、本発明は、ガイド部材を用いた胃瘻チューブの挿入作業を円滑に行うことができる胃瘻チューブ用挿入補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、胃瘻チューブを保持して胃瘻に挿入する胃瘻チューブ用挿入補助具であって、胃瘻チューブに設けられた可撓性を有する椀状のバンパー部を前方端部に保持する棒状の保持ロッドと、該保持ロッドの前方端部に設けられて前記バンパー部を係止する係止部材とを備えるものにおいて、前記係止部材は、その外周面の一部に、前記保持ロッドの外方に向かって突出する突出部を備え、該突出部は、予め胃瘻に留置させた線状のガイド部材を前記保持ロッドの外方位置で挿通させるガイド孔を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、前記係止部材に前記突出部を設け、この突出部に前記ガイド孔を設けたことにより、保持ロッド内の案内通路にガイド部材を挿通させる場合に比べて、ガイド孔へのガイド部材の挿通作業を極めて容易且つ迅速に行うことができる。しかも、前記突出部に前記ガイド孔を設けたことにより、胃瘻チューブのバンパー部を貫通させることなくガイド部材による案内操作が可能となる。これにより、万一保持ロッドをバンパー部から外してしまい、胃瘻の中途位置で残留するバンパー部が胃瘻の内部で折り畳まれるように変形しても、ガイド部材がバンパー部を貫通している場合に比べて、バンパー部によるガイド部材の締め付けは殆どない。よって、ガイド部材が胃瘻に留置されている状態を維持してバンパー部のみを胃瘻から抜き取ることができ、胃瘻チューブを胃瘻に挿入し直す際にも再度ガイド部材を用いることができるので、胃瘻チューブを円滑に再挿入することができる。
【0015】
また、本発明において、前記突出部は、互いに対向して前後方向に延びる一対の側壁板と、両側壁板の間に位置して両側壁板を連結する連結壁とを備え、該連結壁に、前記ガイド孔が形成されていることを特徴とする。
【0016】
これによれば、前記連結壁を比較的薄くしてガイド孔の全長を極めて小さくすることができる。従って、ガイド孔に対してガイド部材を抵抗なく且つ迅速に挿通させることができる。また、係止部材に係止させた状態のバンパー部は、一対の側壁板によって両側壁板の間に位置するガイド部材への接触が抑制され、ガイド孔内のガイド部材を円滑に挿通移動させることができるので、ガイド部材の案内による胃瘻チューブの胃瘻への挿入作業を円滑に行うことができる。
【0017】
ところで、前記突出部は、係止部材の外周面の一部に突設されていることにより、突出部が胃瘻を通過するときに、胃瘻に引っ掛かって胃瘻を損傷させるおそれがある。そこで、本発明においては、前記突出部の前方端部側に、前記保持ロッドから次第に離反する方向に傾斜する挿入案内傾斜部を形成しておき、前記突出部の後方端部側に、前記保持ロッドに向かって次第に接近する方向に傾斜する抜去案内傾斜部を形成しておくことが好ましい。
【0018】
これによれば、胃瘻チューブのバンパー部を胃瘻に挿入する際には、挿入案内傾斜部によって突出部が胃瘻に引っ掛かることが防止され、胃内に収めたバンパー部の保持を解除した保持ロッドを胃瘻から抜去する際には、抜去案内傾斜部によって突出部が胃瘻に引っ掛かることが防止される。従って、係止部材から突出する突出部を設けても、胃瘻への引っ掛かりや胃瘻の損傷を防止して、胃瘻チューブの挿入作業を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態の胃瘻チューブ用挿入補助具を示す側面図。
【
図2】胃瘻チューブを保持した状態の胃瘻チューブ用挿入補助具を示す側面図。
【
図7】係止部材及び保持ロッドの前方端部を示す説明的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の胃瘻チューブ用挿入補助具1(以下単に「挿入補助具1」という。)は、
図1に示すように、ステンレス等の金属製の保持ロッド2と、保持ロッド2の後端部に設けられた合成樹脂製の柄部3とを備えている。柄部3は、側面視で角度のついたL字状に形成され、施術者が把持しやすいように形成されている。
【0021】
本実施形態の挿入補助具1は、
図2に示すように、胃瘻チューブ4を保持する。ここで先ず、本実施形態において採用した胃瘻チューブ4の構成について説明する。胃瘻チューブ4は、周知のものであるが、
図3及び
図4に示すように、内部に栄養物等を流すチューブ本体5と、チューブ本体5の先端に設けられた椀状のバンパー部6とを備えている。チューブ本体5とバンパー部6とは可撓性を有する合成樹脂(シリコーン樹脂)によって一体に形成されている。
【0022】
図3及び
図4に示すように、バンパー部6の周壁部の周方向一側の内面には径方向内方に突出する厚肉部7が形成され、厚肉部7にはバンパー部6の径方向内方に開口する穴部8が形成されている。バンパー部6の外径は、チューブ本体5の外径よりも大きく形成されている。またバンパー部6の中央部には、チューブ本体5と連通する連通口9が形成されている。バンパー部6の周壁部の穴部8と対向する位置には、切欠部10が形成されている。
【0023】
上記構成の胃瘻チューブ4を保持する本実施形態の挿入補助具1は、
図2に示すように、保持ロッド2の後端側(柄部3の前端)に胃瘻チューブ4のチューブ本体5を係止するチューブ係止部11を備えている。更に、保持ロッド2の先端(前端)には、胃瘻チューブ4のバンパー部6を係止する合成樹脂製の係止部材12が取り付けられている。
【0024】
係止部材12は、
図5〜
図7に示すように、保持ロッド2に嵌合し固定される筒状の本体部13と、本体部13の先端(前端)から前方に延びる小径部14と、本体部13の一側方に突出する突出部15とによって構成されている。
【0025】
突出部15は、
図6に示すように、互いに対向する一対の側壁板16,16と、両側壁板16,16の間に位置して両側壁板16,16を連結する連結壁17とにより構成されている。連結壁17には、ガイド孔18が形成されており、このガイド孔18には、
図7に示すように、ガイドワイヤ等の線状のガイド部材Wを挿通させることができるようになっている。これにより、ガイド部材Wは、従来のようにバンパー部6を貫通することなく、ガイド孔18に挿通されたガイド部材Wは、保持ロッド2の外方に位置する。また、連結壁17はその肉厚が比較的薄く形成されていることにより、ガイド孔18の全長は極めて小さい。
【0026】
更に、突出部15の各連結壁17の前方端部側には、本体部13に挿着された保持ロッド2から次第に離反する方向に滑らかに湾曲しながら傾斜する挿入案内傾斜部19が形成されており、突出部15の各連結壁17の後方端部側には、本体部13に挿着された保持ロッド2に向かって次第に接近する方向に滑らかに湾曲しながら傾斜する抜去案内傾斜部20が形成されている。
【0027】
上記構成の挿入補助具1に胃瘻チューブ4を保持させるときには、
図2及び
図5を参照して、先ず、バンパー部6の内面の厚肉部7に形成された穴部8に挿入補助具1の保持ロッド2の前端に取り付けられている係止部材12の小径部14を挿入する。次いで、チューブ本体5を保持ロッド2に沿って後方に引っ張る。そして、チューブ本体5を挿入補助具1のチューブ係止部11に係止させる。
【0028】
これにより、バンパー部6が係止部材12に係止させれた状態で細長い形状に変形すると共に、チューブ本体5が保持ロッド2の長手方向に沿う姿勢となって胃瘻チューブ4が挿入補助具1に保持される。
【0029】
胃瘻チューブ4が挿入補助具1に保持されると、細長く変形したバンパー部6が保持ロッド2の先端の係止部材12を包み込むように変形する。このとき、係止部材12の突出部15の両側壁板16,16がバンパー部6を規制して連結壁17のガイド孔18が覆い隠されることがない。そして、係止部材12の突出部15が、バンパー部6から突出した状態にあっても、突出部15に形成されている挿入案内傾斜部19及び抜去案内傾斜部20によって、胃瘻に挿入する際及び胃瘻から抜去する際に、その抵抗を小とすることができる。
【0030】
胃瘻チューブ4を胃瘻に挿入するときには、図示しないが、先ず、胃内から胃瘻を介して患者の体外に引き出されているガイドワイヤ等のガイド部材Wを、係止部材12の突出部15のガイド孔18に挿通させる。このとき、
図7に示すように、両側壁板16,16がバンパー部6を規制してガイド孔18が視認可能な状態となっている。しかも、連結壁17の肉厚は比較的薄く、ガイド孔18の全長は極めて小さい。従って、ガイド孔18へのガイド部材Wの挿通抵抗抵抗が小さく、ガイド孔18へのガイド部材Wの挿通作業を迅速に行うことができる。
【0031】
次いで、ガイド部材Wに沿って保持ロッド2と共に胃瘻チューブ4のバンパー部6を胃瘻に挿入する。なお、図示しないが、操作失敗等が生じて、バンパー部6が胃瘻の中途位置で保持ロッド2から外れた場合には、一旦バンパー部6と保持ロッド2とを胃瘻から抜き取って再度挿入操作を行う。このとき、従来のようなガイド部材Wがバンパー部6を貫通している場合と異なり、ガイド部材Wは、係止部材12の突出部15のガイド孔18によりバンパー部6に貫通することなく保持ロッド2を案内している。よって、残留するバンパー部6が胃瘻の内部で折り畳まれるように変形しても、変形したバンパー部6によるガイド部材Wの締め付けは殆どなく、操作失敗等が生じて一旦バンパー部6と保持ロッド2とを胃瘻から抜き取る際に、ガイド部材Wの不用意な抜け出しを防止することができる。
【0032】
そして、胃瘻チューブ4のバンパー部6が胃内に入ったところで、チューブ本体5をチューブ係止部11から取り外し、ガイド部材Wを胃瘻から抜去した後、挿入補助具1の保持ロッド2を胃瘻から抜去する。以上の手技により、ガイド部材W及び挿入補助具1を利用して胃瘻チューブ4を確実に胃瘻に挿入することができる。
【符号の説明】
【0033】
1…胃瘻チューブ用挿入補助具、2…保持ロッド、4…胃瘻チューブ、6…バンパー部、12…係止部材、15…突出部、16…側壁板、17…連結壁、18…ガイド孔、19…挿入案内傾斜部、20…抜去案内傾斜部、W…ガイド部材。