特許第6367633号(P6367633)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6367633α−PbO2型結晶TiO2微粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367633
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】α−PbO2型結晶TiO2微粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/047 20060101AFI20180723BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20180723BHJP
   B01J 21/06 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   C01G23/047
   B01J35/02 J
   B01J21/06 M
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-148672(P2014-148672)
(22)【出願日】2014年7月22日
(65)【公開番号】特開2016-23104(P2016-23104A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2017年6月27日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年6月25日メルパルク横浜において開催されたThe Eighth International Conference on the Science and Technology for Advanced Ceramics (STAC−8)で発表
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】村田 秀信
(72)【発明者】
【氏名】谷口 尚
【審査官】 若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第103011270(CN,A)
【文献】 MENG, D.W. et al,High-pressure polymorphic transformation of rutile to α-PbO2-type TiO2 at {0 1 1}R twin boundaries,Micron,2007年 7月10日,Vol.39, No.3,p.280-286,DOI:10.1016/j.micron.2007.07.001
【文献】 CHEN, S.-Y. et al.,Laser Ablation Condensation of α-PbO2-Type TiO2,Phys. Rev. Lett.,2002年 8月26日,Vol.89, No.9,p.096106-1-096106-4,DOI:10.1103/PhysRevLett.89.096106
【文献】 GREY, I. E. et al,TiO2-II. Ambient pressure preparation and structure refinement,Materials Research Bulletin,1988年 5月,Vol.23, No.5,p.743-753,DOI:10.1016/0025-5408(88)90040-2
【文献】 AKAOGI, M. et al.,High-pressure phase relations in the system TiO2-ZrO2 to 12 GPa: stability of α-PbO2-type srilankite solid solutions of (Ti1-X,ZrX)O2(0≦X≦0.6),Physics and Chemistry of Minerals,2012年 8月 7日,Vol.39, No.10,p.797-802,DOI:10.1007/s00269-012-0534-8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 1/00−23/08
B01J 21/00−38/74
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
径が100nm以下のルチル型結晶TiO粒子及び/又は径が100nm以下のアナターゼ型結晶TiO粒子を有する粉末を出発原料として高温高圧処理して、径が100nm以下のα−PbO型結晶TiOからなるα−PbO型結晶TiO微粒子を製造する方法であって、
前記高温高圧処理が、300℃以上500℃以下の温度で、3GPa以上7.7GPa以下の圧力を、3時間以下の処理時間で、前記出発原料に適用する高温高圧工程と、前記出発原料を前記圧力及び温度に昇圧昇温する昇圧昇温工程とからなることを特徴とするα−PbO型結晶TiO微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記高温高圧処理の後、高圧セルを高温から室温まで急冷してから、高圧から大気圧まで除圧することを特徴とする請求項1に記載のα−PbO型結晶TiO微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記急冷の処理時間が、10分以下の時間であることを特徴とする請求項2に記載のα−PbO型結晶TiO微粒子の製造方法。
【請求項4】
前記除圧の処理時間が、2時間以下の時間であることを特徴とする請求項2に記載のα−PbO型結晶TiO微粒子の製造方法。
【請求項5】
前記高温高圧処理が、前記出発原料をカプセル内に充填し、前記カプセルを高圧セル内に装填してから、前記高圧セルを高温高圧装置内に配置して、行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のα−PbO型結晶TiO微粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−PbO型結晶TiO微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化チタン(TiO)は安全・安定・安価という特徴を有し、光触媒活性を有する材料として注目されている。
【0003】
TiOには、低温安定相のアナターゼ(anatase)型と、最安定相のルチル(rutile)型という結晶構造があり、アナターゼ型がルチル型に比べて10倍程高い光触媒活性を示すことが知られている(非特許文献1)。アナターゼ型は約750℃でルチル型に構造転移するが、光触媒としての使用方法としては安定とみなしてよい。
図1は、アナターゼ型(a)と、ルチル型(b)の結晶構造図である。
【0004】
TiOの結晶構造には、アナターゼ型及びルチル型の他に、例えば、高圧相のα−PbO型という結晶構造がある。この結晶構造は、常圧下に回収可能であり、大気圧下でも準安定である。
図2は、α−PbO型の結晶構造図である。
【0005】
TiOについて、例えば、非特許文献2には、“Photo−Catalytic Application of High−Pressure Phase of TiO”に関するものが含まれる(物件提出書にて提出)。
また、非特許文献3は、“α−PbO型TiOの光触媒活性”に関するものである。これらの文献では、rutile型、anatase型、alpha−PbO2型の光触媒特性が比較されている。
【0006】
TiOナノ粒子が高い光触媒特性を示す報告はある(特許文献1)。また、TiO複合化多孔質シリカ光触媒粒子の製造方法及びTiO複合化多孔質シリカ光触媒粒子に係る報告もある(特許文献2)。二酸化チタンナノ粒子を含む二酸化チタン組成物およびその製造と使用に関する報告もある(特許文献3)。
しかし、α−PbO型TiOナノ粒子の製造方法はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2010/087445号
【特許文献2】特開2014−24041号公報
【特許文献3】特表2011−524920号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】M.Xu,et al.,Phys.Rev.Lett.106,138302(2011).
【非特許文献2】Seventh International Conference on Science and Technology of Advanced Ceramics (STAC−7、2013年6月19日開催)当日配布資料
【非特許文献3】第54回高圧討論会講演要旨集、P.21、2013年10月30日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、光触媒活性の高いα−PbO型結晶TiO微粒子の製造方法を提供することを課題とする。
【0010】
上記事情を鑑みて、試行錯誤することにより、本発明者は、出発原料として、粒径10〜15nmのアナターゼ型又はルチル型TiO粒子を用い、300℃以上500℃以下の温度で、3GPa以上7.7GPa以下の圧力を、3時間以下の処理時間で、前記出発原料に適用する高温高圧工程と、前記出発原料を前記温度及び圧力に昇温昇圧する昇温昇圧工程とからなる高温高圧処理することにより、粒成長させずにα−PbO型TiOに変換させることができ、径が100nm以下の粒子を有するα−PbO型TiO微粒子含有粉末を製造できることを見出して、本発明を完成した。
本発明は、以下の構成を有する。
【0011】
(1) 径が100nm以下のα−PbO型結晶TiOからなることを特徴とするα−PbO型結晶TiO微粒子。
【0012】
(2) 径が100nm以下のルチル型結晶TiO粒子及び/又は径が100nm以下のアナターゼ型結晶TiO粒子を有する粉末を出発原料として高温高圧処理して、径が100nm以下のα−PbO型結晶TiOからなるα−PbO型結晶TiO微粒子を製造することを特徴とするα−PbO型結晶TiO微粒子の製造方法。
(3) 前記高温高圧処理が、300℃以上500℃以下の温度で、3GPa以上7.7GPa以下の圧力を、3時間以下の処理時間で、前記出発原料に適用する高温高圧工程と、前記出発原料を前記圧力及び温度に昇圧昇温する昇圧昇温工程とからなることを特徴とする(2)に記載のα−PbO型結晶TiO微粒子の製造方法。
(4) 前記高温高圧処理の後、高圧セルを高温から室温まで急冷してから、高圧から大気圧まで除圧することを特徴とする(3)に記載のα−PbO型結晶TiO微粒子の製造方法。
【0013】
(5) 前記急冷の処理時間が、10分以下の時間であることを特徴とする(4)に記載のα−PbO型結晶TiO微粒子の製造方法。
(6) 前記除圧の処理時間が、2時間以下の時間であることを特徴とする(4)に記載のα−PbO型結晶TiO微粒子の製造方法。
(7) 前記高温高圧処理が、前記出発原料をカプセル内に充填し、前記カプセルを高圧セル内に装填してから、前記高圧セルを高温高圧装置内に配置して、行うことを特徴とする(2)〜(6)のいずれかに記載のα−PbO型結晶TiO微粒子の製造方法。
【0014】
(8) (1)に記載α−PbO型結晶TiO微粒子のみからなることを特徴とする請求項1に記載のα−PbO型結晶TiO微粒子含有粉末。
(9) (1)に記載α−PbO型結晶TiO微粒子と、径が100nm以下のルチル型結晶TiO粒子と、を有することを特徴とするα−PbO型結晶TiO微粒子含有粉末。
(10) 更に、径が100nm以下のアナターゼ型結晶TiO粒子を有することを特徴とする(9)に記載のα−PbO型結晶TiO微粒子含有粉末。
【発明の効果】
【0015】
本発明のα−PbO型結晶TiO微粒子は、径が100nm以下のα−PbO型結晶TiOからなる構成なので、光触媒活性の高い光触媒として利用できる。
【0016】
本発明のα−PbO型結晶TiO微粒子の製造方法は、径が100nm以下のルチル型結晶TiO粒子及び/又は径が100nm以下のアナターゼ型結晶TiO粒子を有する粉末を出発原料として高温高圧処理して、径が100nm以下のα−PbO型結晶TiOからなるα−PbO型結晶TiO微粒子を製造する構成なので、前記出発原料を、なるべく粒成長させずにα−PbO型結晶TiOに変換させることができ、所望の径のα−PbO型結晶TiO微粒子を容易に製造できる。
【0017】
本発明のα−PbO型結晶TiO微粒子含有粉末は、先に記載α−PbO型結晶TiO微粒子のみからなる構成なので、光触媒活性の高い光触媒として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】アナターゼ型(a)と、ルチル型(b)の結晶構造図である。
図2】α−PbO型の結晶構造図である。
図3】本発明の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子含有粉末の一例を示す部分拡大図である。
図4】本発明の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子含有粉末の別の一例を示す図である。
図5】本発明の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子含有粉末の更に別の一例を示す図である。
図6】白金カプセルを高圧セルに配置したときの断面模式図である。
図7】ベルト型高温高圧装置の高圧プレス部の写真と、ベルトとアンビル部の写真である。
図8】実施例1−1〜1−7試料及び比較例1試料のXRDパターンである。
図9】実施例2−1〜2−7試料及び比較例1試料のXRDパターンである。
図10】7.7GPaの高圧下、粒径の温度処理温度依存性を示すグラフである。
図11】実施例2−3、2−4、2−5、2−6、2−7、2−8試料のSEM観察像である。
図12】光触媒活性測定系の概略図である。
図13】実施例2−3試料(7.7GPa、400℃処理)の光触媒活性評価を示すグラフである。
図14】紫外可視領域の吸収スペクトル測定結果である。
図15】XRD再測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(本発明の第1の実施形態)
(α−PbO型結晶TiO微粒子含有粉末)
まず、本発明の第1の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子含有粉末について説明する。
図3は、本発明の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子含有粉末の一例を示す部分拡大図である。
図3に示すように、本発明の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子含有粉末10は、α−PbO型結晶TiO微粒子11を有する。
【0020】
α−PbO型結晶TiO微粒子含有粉末10は、α−PbO型結晶TiO微粒子11のみからなる。この構成により、単位質量あたりの表面積を大きくでき、単位質量あたりの光触媒活性を高めることができる。
径d11が50nm以下の粒子のみを有することがより好ましい。単位質量あたりの表面積をより大きくでき、単位質量あたりの光触媒活性をより高めることができる。
【0021】
(α−PbO型結晶TiO微粒子)
本発明の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子11は、径が100nm以下のα−PbO型結晶TiOからなる。
α−PbO型結晶TiO表面で、光触媒を活性高く行うことができる。
【0022】
径d11は、100nm以下とされている。これにより、単位質量あたりの表面積を大きくでき、単位質量あたりの光触媒活性を高めることができる。径d11が100nm超の場合は、光触媒活性を高めることができない。
なお、径d11が50nm以下の粒子に限定することがより好ましい。単位質量あたりの表面積をより大きくでき、単位質量あたりの光触媒活性をより高めることができる。
【0023】
(本発明の第2の実施形態)
図4は、本発明の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子含有粉末の別の一例を示す図である。
本発明の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子含有粉末30は、本発明の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子11と、径が100nm以下のルチル型結晶TiO粒子12と、を有してなる。この構成としても、本発明の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子を有する構成なので、単位質量あたりの表面積を大きくでき、単位質量あたりの光触媒活性を高めることができる。
【0024】
(本発明の第3の実施形態)
図5は、本発明の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子含有粉末の更に別の一例を示す図である。
本発明の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子含有粉末40は、本発明の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子11と、径が100nm以下のルチル型結晶TiO粒子12と、更に、径が100nm以下のアナターゼ型結晶TiO粒子13を有してなる。この構成としても、本発明の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子を有する構成なので、単位質量あたりの表面積を大きくでき、単位質量あたりの光触媒活性を高めることができる。
【0025】
(α−PbO型結晶TiO微粒子の製造方法)
次に、本発明の第1の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子の製造方法について説明する。
本発明の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子の製造方法は、まず、径が100nm以下のルチル型結晶TiO粒子及び/又は径が100nm以下のアナターゼ型結晶TiO粒子を有する粉末を出発原料として用意する。
【0026】
次に、これを高温高圧処理する。
前記高温高圧処理は、300℃以上500℃以下の温度で、3GPa以上7.7GPa以下の圧力を、3時間以下の処理時間で、前記出発原料に適用する高温高圧工程と、前記出発原料を前記圧力及び温度に昇圧昇温する昇圧昇温工程とからなる処理である。
高温の処理温度は、報告されている状態図を外挿すると、300℃で、3GPa以上がα−PbO型TiOの安定領域になるため、300℃以上とすればよい。逆に、500℃超とすると、粒成長が起こり、粒子の粗大化という問題が生じる。
高圧の処理圧力も、報告されている状態図を外挿すると、300℃で、3GPa以上がα−PbO型TiOの安定領域になるため、3GPa以上とすればよい。逆に、7.7GPa超とすると高圧装置の部材の消耗および一度に合成できる試料量の減少という問題が生じる。
高温高圧工程の処理時間は、0分でもよい。rutile、anatase→α−PbOへの変化は速いので、例えば、処理温度を500℃とすると、温度を上げる途中でα−PbOへの相転移が完了するためである。逆に、3時間超としても得られる利点がなく、合成コストの上昇という問題が生じる。
前記高温高圧処理は、前記出発原料をカプセル内に充填し、前記カプセルを高圧セル内に装填してから、前記高圧セルを高温高圧装置内に配置して、行う。
高温高圧処理には、例えば、ベルト式の高温高圧装置を用いる。
【0027】
前記高温高圧処理の後、高圧セルを高温から室温まで急冷してから、高圧から大気圧まで除圧することが好ましい。
前記急冷の処理時間は、10分以下の時間とすることが好ましい。
前記除圧の処理時間は、2時間以下の時間とすることが好ましい。
【0028】
以上の工程により、径が100nm以下のα−PbO型結晶TiOからなるα−PbO型結晶TiO微粒子を製造できる。
【0029】
本発明の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子11は、径d11が100nm以下のα−PbO型結晶TiOからなる構成なので、光触媒活性の高い光触媒として利用できる。
【0030】
本発明の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子11の製造方法は、径が100nm以下のルチル型結晶TiO粒子及び/又は径が100nm以下のアナターゼ型結晶TiO粒子を有する粉末を出発原料として高温高圧処理して、径が100nm以下のα−PbO型結晶TiOからなるα−PbO型結晶TiO微粒子を製造する構成なので、前記出発原料を、なるべく粒成長させずにα−PbO型結晶TiOに変換させることができ、所望の径のα−PbO型結晶TiO微粒子を容易に製造できる。
【0031】
本発明の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子11は、前記高温高圧処理が、300℃以上500℃以下の温度で、3GPa以上7.7GPa以下の圧力を、3時間以下の処理時間で、前記出発原料に適用する高温高圧工程と、前記出発原料を前記圧力及び温度に昇圧昇温する昇圧昇温工程とからなる構成なので、前記出発原料を、なるべく粒成長させずにα−PbO型結晶TiOに変換させることができ、所望の径のα−PbO型結晶TiO微粒子を容易に製造できる。
【0032】
本発明の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子11は、前記高温高圧処理の後、高圧セルを高温から室温まで急冷してから、高圧から大気圧まで除圧する構成なので、前記出発原料を、なるべく粒成長させずにα−PbO型結晶TiOに変換させることができ、所望の径のα−PbO型結晶TiO微粒子を容易に製造できる。
【0033】
本発明の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子11は、前記急冷の処理時間が、10分以下の時間である構成なので、前記出発原料を、なるべく粒成長させずにα−PbO型結晶TiOに変換させることができ、所望の径のα−PbO型結晶TiO微粒子を容易に製造できる。
【0034】
本発明の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子11は、前記除圧の処理時間が、2時間以下の時間である構成なので、前記出発原料を、なるべく粒成長させずにα−PbO型結晶TiOに変換させることができ、所望の径のα−PbO型結晶TiO微粒子を容易に製造できる。
【0035】
本発明の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子11は、前記高温高圧処理が、前記出発原料をカプセル内に充填し、前記カプセルを高圧セル内に装填してから、前記高圧セルを高温高圧装置内に配置して、行う構成なので、前記出発原料を、なるべく粒成長させずにα−PbO型結晶TiOに変換させることができ、所望の径のα−PbO型結晶TiO微粒子を容易に製造できる。
【0036】
本発明の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子含有粉末10は、α−PbO型結晶TiO微粒子11のみからなる構成なので、光触媒活性の高い光触媒として利用できる。
【0037】
本発明の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子含有粉末20は、α−PbO型結晶TiO微粒子11と、径が100nm以下のルチル型結晶TiO粒子12と、を有する構成なので、光触媒活性の高い光触媒として利用できる。
【0038】
本発明の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子含有粉末30は、更に、径が100nm以下のアナターゼ型結晶TiO粒子13を有する構成なので、光触媒活性の高い光触媒として利用できる。
【0039】
本発明の実施形態であるα−PbO型結晶TiO微粒子、その製造方法及びα−PbO型結晶TiO微粒子含有粉末は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で、種々変更して実施することができる。本実施形態の具体例を以下の実施例で示す。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
(実施例1−1)
(合成)
α−PbO型TiOに関しても、ナノ粒子・ナノ多結晶体化を行うことで、光触媒活性を向上させることを目的とし、ナノ多結晶体の合成実験を行った。
【0041】
まず、出発原料(starting material)として、ルチル型−アナターゼ型TiO混合粉末(TECNAN社製)を用意した。これは、粒径10nm以上15nm以下のルチル型TiOナノ粒子と、粒径10nm以上15nm以下のアナターゼ型TiOナノ粒子を、ルチル型:アナターゼ型=21.2:78.8となる質量比で混合した粉末であった。
次に、これを、白金カプセルに封入した。
次に、白金カプセルを高圧セル内に配置した。図6は、白金カプセルを高圧セルに配置したときの断面模式図である。
【0042】
次に、高圧セルをベルト型高温高圧装置内に配置した。図7は、ベルト型高温高圧装置の高圧プレス部の写真と、ベルトとアンビル部の写真である。
次に、白金カプセルを温度200℃に加熱した。
次に、圧力5.5GPaを加圧し、1時間、状態を維持して、白金カプセル内の出発原料を高温高圧処理した。
処理後、室温まで急冷した。
急冷後、除圧した。
以上のようにして、実施例1−1試料を製造した。
【0043】
(実施例1−2)
温度300℃とした他は実施例1−1と同様にして、高温高圧処理して、実施例1−2試料を製造した。
【0044】
(実施例1−3)
温度400℃とした他は実施例1−1と同様にして、高温高圧処理して、実施例1−3試料を製造した。
【0045】
(実施例1−4)
温度500℃とした他は実施例1−1と同様にして、高温高圧処理して、実施例1−4試料を製造した。
【0046】
(実施例1−5)
温度600℃とした他は実施例1−1と同様にして、高温高圧処理して、実施例1−5試料を製造した。
【0047】
(実施例1−6)
温度700℃とした他は実施例1−1と同様にして、高温高圧処理して、実施例1−6試料を製造した。
【0048】
(実施例1−7)
温度800℃とした他は実施例1−1と同様にして、高温高圧処理して、実施例1−7試料を製造した。
【0049】
(比較例1)
出発原料であるルチル型−アナターゼ型TiO混合粉末(TECNAN社製)を比較例1試料として用意した。
【0050】
(XRD測定)
次に、5.5GPaの高圧下、200℃、300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃の高温処理を1時間した実施例1−1、1−2、1−3、1−4、1−5、1−6、1−7試料及び出発原料である比較例1試料のXRD測定を行った。
図8は、実施例1−1〜1−7試料及び比較例1試料のXRDパターンである。
ルチル型TiO、アナターゼ型TiO及びα−PbO型TiOの標準データも合わせて示した。
【0051】
5.5GPaの高圧下、300℃以上の高温処理を1時間した場合には、ルチル型TiOとα−PbO型TiOの混合粉末が得られた。すなわち、300℃以上の800℃以下の高温処理では、どの温度でもルチル型TiOが混在した。
【0052】
(実施例2−1)
圧力7.7GPaとした他は実施例1−1と同様にして、高温高圧処理して、実施例2−1試料を製造した。
【0053】
(実施例2−2)
温度300℃とした他は実施例2−1と同様にして、高温高圧処理して、実施例2−2試料を製造した。
【0054】
(実施例2−3)
温度400℃とした他は実施例2−1と同様にして、高温高圧処理して、実施例2−3試料を製造した。
【0055】
(実施例2−4)
温度500℃とした他は実施例2−1と同様にして、高温高圧処理して、実施例2−4試料を製造した。
【0056】
(実施例2−5)
温度600℃とした他は実施例2−1と同様にして、高温高圧処理して、実施例2−5試料を製造した。
【0057】
(実施例2−6)
温度700℃とした他は実施例2−1と同様にして、高温高圧処理して、実施例2−6試料を製造した。
【0058】
(実施例2−7)
温度800℃とした他は実施例2−1と同様にして、高温高圧処理して、実施例2−7試料を製造した。
【0059】
(実施例2−8)
温度1100℃とした他は実施例2−1と同様にして、高温高圧処理して、実施例2−7試料を製造した。
【0060】
(XRD測定)
次に、7.7GPaの高圧下、200℃、300℃、400℃、500℃、600℃、700℃、800℃の高温処理を1時間した実施例2−1、2−2、2−3、2−4、2−5、2−6、2−7試料及び出発原料である比較例1試料のXRD測定を行った。
図9は、実施例2−1〜2−7試料及び比較例1試料のXRDパターンである。
ルチル型TiO、アナターゼ型TiO及びα−PbO型TiOの標準データも合わせて示した。
【0061】
7.7GPaの高圧下、300℃の高温処理を1時間した場合には、ルチル型TiO微粒子とα−PbO型TiO微粒子の混合粉末が得られた。
しかし、7.7GPaの高圧下、400℃以上の高温処理を1時間した場合には、α−PbO型TiO微粒子のみからなる粉末が得られた。
【0062】
(粒径算出)
次に、Scherrerの式を用いて、XRDパターンの半値幅から、実施例2−1、2−2、2−3、2−4、2−5、2−6試料の粒径を算出した。
図10は、7.7GPaの高圧下、粒径の温度処理温度依存性を示すグラフである。
粒径は、処理温度に1次線形で比例して、大きくなった。
7.7GPaの高圧下、500℃以下の高温処理を1時間した場合には、粒径80nm以下のα−PbO型TiO微粒子のみからなる粉末が得られた。
また、7.7GPaの高圧下、400℃以下の高温処理を1時間した場合には、粒径45nm以下のα−PbO型TiO微粒子のみからなる粉末が得られた。
また、7.7GPaの高圧下、300℃以下の高温処理を1時間した場合には、ルチル型TiO微粒子が混在していたが、出発原料の結晶サイズを反映した粒径15nm以下のα−PbO型TiO微粒子が得られた。
【0063】
(SEM観察)
次に、実施例2−3、2−4、2−5、2−6、2−7、2−8試料のSEM観察を行った。
図11は、実施例2−3、2−4、2−5、2−6、2−7、2−8試料のSEM観察像である。
【0064】
7.7GPaの高圧下、500℃以下の高温処理を1時間した場合には、粒径80nm以下のα−PbO型TiO微粒子のみからなる粉末が得られた。
また、7.7GPaの高圧下、400℃以下の高温処理を1時間した場合には、粒径45nm以下のα−PbO型TiO微粒子のみからなる粉末が得られた。
【0065】
(光触媒活性評価)
次に、実施例2−3試料(7.7GPa、400℃処理)及び実施例2−2試料(7.7GPa、300℃処理)の光触媒活性評価を行った。
図12は、光触媒活性測定系の概略図である。
光触媒活性評価は、前記測定系の反応セル内の水素発生実験により行った。表1は、評価実験条件である。
【0066】
【表1】
【0067】
図13は、実施例2−3試料(7.7GPa、400℃処理)の光触媒活性評価を示すグラフである。水素発生量の経時変化を示したグラフである。
α−PbO型TiO(粒径2μm)、Aeroxide P25(混合粉末、粒径 21nm)、アナターゼ型TiO(粒径300nm)の測定結果も合わせて示した。 図13では、α−PbO型TiO(粒径2μm)を「bulk」と表記している。
α−PbO型TiO(粒径2μm)の光触媒活性は、アナターゼ型TiO(粒径300nm)よりは良かった。
一方、実施例2−3試料(7.7GPa、400℃処理)は、24時間の時点で排出水素量がAeroxide P25の約2倍となり、「bulk」及びAeroxide P25よりも光触媒活性が高かった。
実施例2−3試料(7.7GPa、400℃処理)が、粒径45nm以下のα−PbO型TiO微粒子のみからなる構成による効果であると推定した。
【0068】
(紫外可視吸収スペクトル測定)
次に、拡散反射法により、実施例2−2〜2−7の紫外可視領域の吸収スペクトルを測定した。比較のために、α−PbO型TiO(粒径2μm)も測定した。図14では、α−PbO型TiO(粒径2μm)を「bulk」と表記している。なお、拡散反射スペクトルにクベルカ−ムンク(Kubelka−Munk)変換を行って、吸光度に変換した。
図14は、紫外可視領域の吸収スペクトル測定結果である。
ナノ粒子化により、半導体ナノ粒子と同様に、吸収端の「ブルーシフト」(短波長・高エネルギー側へのシフト)が観測された。
【0069】
(XRD再測定:長期間の安定性)
7.7GPa、400℃試料(実施例2−3)を、10か月以上、大気中に放置してから、X線回折を再測定した。
図15は、XRD再測定結果である。
大気中に10か月以上放置しても、XRDスペクトルは完全に重なり結晶構造に変換の無いことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のα−PbO型結晶TiO微粒子、その製造方法及びα−PbO型結晶TiO微粒子含有粉末は、光触媒活性の高いα−PbO型結晶TiO微粒子、その製造方法及び光触媒活性の高いα−PbO型結晶TiO微粒子含有粉末として利用でき、光触媒産業等において利用可能性がある。
【符号の説明】
【0071】
10…α−PbO型結晶TiO微粒子含有粉末、11…α−PbO型結晶TiO微粒子、12…ルチル型結晶TiO粒子、13…アナターゼ型結晶TiO粒子、20、30…α−PbO型結晶TiO微粒子含有粉末。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15