(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367641
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】複合容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 23/00 20060101AFI20180723BHJP
B65D 23/08 20060101ALI20180723BHJP
B29C 49/20 20060101ALI20180723BHJP
B29C 33/12 20060101ALI20180723BHJP
B65D 1/00 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
B65D23/00 F
B65D23/08 Z
B29C49/20
B29C33/12
B65D1/00 120
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-156923(P2014-156923)
(22)【出願日】2014年7月31日
(65)【公開番号】特開2016-33040(P2016-33040A)
(43)【公開日】2016年3月10日
【審査請求日】2017年1月27日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】田端 真一
(72)【発明者】
【氏名】塩川 満
【審査官】
植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−064029(JP,A)
【文献】
実開平07−000833(JP,U)
【文献】
特開平08−058796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 23/00−25/56
B65D 1/00
B29C 33/12
B29C 49/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製容器本体と紙筒とを組み合わせた複合容器において、
前記紙筒は、前記容器本体の外周面にインモールド成形によって装着されており、
前記紙筒は、矩形状の紙片を丸めて、周方向の一方の端縁に形成した少なくとも1つの突起を、周方向の他方の端縁に形成した少なくとも1つのスリットに挿入することで形成され、前記突起は、前記インモールド成形時に前記スリット内を周方向に移動可能であることを特徴とする複合容器。
【請求項2】
合成樹脂製容器本体と紙筒とを組み合わせた複合容器の製造方法において、
矩形状の紙片を丸めて、周方向の一方の端縁に形成した突起を、周方向の他方の端縁に形成したスリットに、前記突起が前記スリット内を周方向に移動可能となるように挿入することで形成された紙筒を金型内に配置し、
前記金型内において前記紙筒の内側に配置されたプリフォーム又はパリソンをブロー成形することで、前記紙筒を前記容器本体の外周面に装着することを特徴とする複合容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製容器本体と紙筒とを組み合わせた複合容器及びその製造方法に関し、特に、製造工程を簡略化するためにインモールド成形を行った場合であっても、良好な外観を有する複合容器を提供しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
環境保護やコストの削減を目的として、合成樹脂製の容器本体の薄肉化を図る取り組みが行われている。このようなものとして特許文献1には、薄肉化によって低減することになるボトル状の容器本体の剛性を、該容器本体の外周面に装着される紙筒で補うようにした複合容器が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3750844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したような従来の複合容器は、容器本体を成形した後、別途作成しておいた紙筒を被せて作られており、両者を組み合わせる工程を要するため、コスト削減に限界を来していた。
【0005】
また、このような複合容器を、内部に予め紙筒を配置した金型により容器本体を成形する、所謂インモールド成形により形成する場合には、伸縮変形を生じない紙を材質としているため、紙筒と容器本体との寸法精度を高度に保つ必要があった。例えば、目的とする容器本体の径より紙筒の径が小さい場合には、紙筒が破損したり、容器本体が不良形状となる問題があった。
【0006】
本発明は、前記の現状に鑑み開発されたもので、製造工程を簡略化するためにインモールド成形を行った場合であっても、良好な外観を有する複合容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の要旨構成は以下のとおりである。
1.合成樹脂製容器本体と紙筒とを組み合わせた複合容器において、前記紙筒は、前記容器本体の外周面に
インモールド成形によって装着されており、前記紙筒は、矩形状の紙片を丸めて、周方向の一方の端縁に形成した少なくとも1つの突起を、周方向の他方の端縁に形成した少なくとも1つのスリットに挿入することで形成され、前記突起は、
前記インモールド成形時に前記スリット内を周方向に移動可能であることを特徴とする複合容器。
【0008】
2.合成樹脂製容器本体と紙筒とを組み合わせた複合容器の製造方法において、矩形状の紙片を丸めて、周方向の一方の端縁に形成した突起を、周方向の他方の端縁に形成したスリットに、前記突起が前記スリット内を周方向に移動可能となるように挿入することで形成された紙筒を金型内に配置し、前記金型内において前記紙筒の内側に配置されたプリフォーム又はパリソンをブロー成形することで、前記紙筒を前記容器本体の外周面に装着することを特徴とする複合容器の製造方法。
【0009】
ここに、「ブロー成形」とは、射出成形によって形成されたプリフォームをブロー成形する二軸延伸ブロー成形や、押出された筒状のパリソンを金型で挟み込んだ後にブロー成形する押出ブロー成形を含むものとする。
【0010】
前記の複合容器及び複合容器の製造方法によれば、金型内に紙筒を配置し、プリフォーム又はパリソンをブロー成形するインモールド成形によって複合容器を形成するようにして製造工程を簡略化するに際し、ブロー成形時における紙筒の損傷の発生を効果的に防止することができる。すなわち、ブロー成形に際し、突起がスリット内を周方向に移動可能であることにより、容器本体の胴部を形成しようとするプリフォーム又はパリソンの拡径変形に紙筒が追随して拡径変形し、成形完了時に要求される周長を安定して実現することが可能となる。
【0011】
また、複合容器の製造方法においては、ブロー成形の加圧媒体として気体を用いることができることは言うまでもなく、気体に代えて液体を用いてもよい。
【発明の効果】
【0012】
したがって、本発明に従う複合容器及び複合容器の製造方法によれば、製造工程を簡略化するためにインモールド成形を行った場合であっても、良好な外観を有する複合容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る複合容器を示す斜視図である。
【
図2】本発明における紙筒の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る複合容器1について詳細に例示説明する。なお、本明細書において、「上」とは複合容器1の底部21に対し口部24が位置する側であり、「下」とはその逆側である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る複合容器1は、合成樹脂製容器本体20と、紙筒30とで構成されている。容器本体20は、中央が隆起した円板状をなす底部21の外周縁から立ち上がる円筒状の胴部22の上端縁に、上方に向って縮径する肩部23を介して円筒状の口部24を立設してなるボトル状をなしている。なお、本実施形態において、胴部22は上方に向かってわずかに拡径するテーパ状をなしている。口部24には、円環状のネックリング25が形成されている。
【0016】
紙筒30は、容器本体20の胴部22における上端縁22aから下端縁22bにわたる外周面に装着されている。紙筒30は、矩形状の紙片を丸めて、周方向の一方の端縁(縁部)から突出するように形成した少なくとも1つの突起31を、周方向の他方の端縁(縁部から内側にずれた位置)に形成した少なくとも1つのスリット32に挿入することで形成されている。このとき、紙片の端縁同士は所定の範囲で重ね合わされている。なお、本実施形態では、4つの突起31及び4つのスリット32が、それぞれ、上下方向に沿って等間隔に配置されている。各突起31は、対応するスリット32からの抜け出しを防止する爪部31aを有しており、突起31のスリット32からの抜け出しが防止されるように形成されている。また、爪部31aの内縁部(紙片の縁部と対向する辺部分)と紙片の縁部との間には所定の間隔gが設けられており、この間隔gが、二軸延伸ブロー成形に際して、突起31がスリット32内を周方向に移動可能な距離となっている。
【0017】
そして、複合容器1は、金型内に紙筒30を配置し、気体や液体を加圧媒体としてプリフォームを二軸延伸ブロー成形することで、紙筒30が容器本体20の胴部22外周面に装着されて形成されている。金型内に紙筒30を配置するに際しては、まず、紙筒30を構成する紙片を丸めて、各突起31を対応する各スリット32に挿入し、図示したような筒状をなす紙筒30とし、該紙筒30を金型内に配置する。金型は、例えば、複数の割型によって構成される上型と単一の下型とによって構成することができる。この場合、紙筒30を金型内に配置し、射出成形によって形成され、ブロー成形に適した温度に保たれたプリフォームを配置して型締めすることで、プリフォームを二軸延伸ブロー成形することができる。
【0018】
プリフォームは、試験管状をなす本体部の上部にネックリングを有している。二軸延伸ブロー成形に際しては、プリフォームの本体部の口部から延伸ロッドを挿入し、該本体部の底部を下方に延伸させると共に、該本体部の口部から加圧媒体を導入することで、該本体部の周壁部を径方向外側に延伸させることができる。なお、二軸延伸ブロー成形に際しては、必ずしも延伸ロッドを用いる必要はなく、例えば、プリフォームの本体部の口部から加圧媒体を導入することで、該本体部の底部を下方に延伸させると共に該本体部の周壁部を径方向外側に延伸させてもよい。また、金型における、紙筒30の上端縁外周面に対応する位置には、周方向に延びる複数の横溝が形成されており、二軸延伸ブロー成形の結果、紙筒30及び容器本体20には、該横溝に対応する複数の突条33が形成されている。
【0019】
本実施形態によれば、金型内に紙筒30を配置し、プリフォームを二軸延伸ブロー成形することで複合容器1を形成するため、二軸延伸ブロー成形後に別途、紙筒30を装着する工程を設ける必要がない。
【0020】
また、紙筒30を、矩形状の紙片を丸めて、周方向の一方の端縁に形成した少なくとも1つの突起31を、周方向の他方の端縁に形成した少なくとも1つのスリット32に挿入することで形成しており、前記一方の端縁と他方の端縁との重ね合わせ部分が形成されている。前記重ね合わせ部分の幅wは、爪部31aの内縁部(紙片の縁部と対向する辺部分)と紙片の縁部との間に設けられた所定の間隔g以上となっているため、紙筒が拡径しても、紙筒に隙間が生じることがない。
【0021】
また、二軸延伸ブロー成形に際し、各突起31が、対応するスリット32内を周方向に移動可能であることにより、容器本体20の胴部22を形成しようとするプリフォームの拡径変形に紙筒30が追随して拡径変形し、成形完了時に要求される周長を安定して実現することが可能となる。したがって、二軸延伸ブロー成形時における紙筒30の損傷の発生を効果的に防止することができる。
【0022】
なお、前述したところは本発明の一実施形態を示したにすぎず、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができることは言うまでもない。
例えば、
図2(a)に示すように、紙筒30は容器本体20の胴部22全体を覆うものではなく、一部を覆うものでもよく、肩部23を覆うものでも良い。
さらに、突起31は、その先端に下方に向けて突出する爪部31aを設け、概略L字状となっているが、上方に向けて爪部31aを突出してもよく、さらには、
図2(b)に示すように、爪部31aを上下両方向に突出させ、概略T字状としてもよい。
また、ブロー成形としては、プリフォームをブロー成形する二軸延伸ブロー成形を用いているが、押出された筒状のパリソンを金型で挟み込んだ後にブロー成形する押出ブロー成形を用いてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 複合容器
20 容器本体
21 底部
22 胴部
22a 胴部の上端縁
22b 胴部の下端縁
23 肩部
24 口部
25 ネックリング
30 紙筒
31 突起
31a 爪部
32 スリット
33 突条
g 間隔(突起がスリット内を周方向に移動可能な距離)
w 重ね合わせ部分の幅