(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記送信側Running鍵生成ステップにおいて、同相成分についての前記送信側Running鍵である送信側第1Running鍵を生成し、直交成分についての前記送信側Running鍵である送信側第2Running鍵を生成し、
前記強度変調ステップにおいて、増幅された同相成分の多値信号と前記送信側第1Running鍵生成部と、増幅された直交成分の多値信号と前記送信側第2Running鍵生成部とに基づいて搬送波の光強度を多値変調し、
送信装置から受信した、光強度が多値変調されたM値の多値信号を同相成分と直交成分とに分離する分離ステップを含み、
前記受信側Running鍵生成ステップにおいて、送信装置と共通の同相成分の暗号鍵に基づいて受信側第1Running鍵を生成し、送信装置と共通の直交成分の暗号鍵に基づいて受信側第2Running鍵を生成し、
前記閾値生成ステップにおいて、前記受信側第1Running鍵に基づいて、前記同相成分の多値信号であって前記第1象限にのみ配置された前記多値信号と同じ大きさの多値信号判定用の第1閾値を生成し、前記受信側第2Running鍵に基づいて、前記直交成分の多値信号であって前記第1象限にのみ配置された前記多値信号と同じ大きさの多値信号判定用の第2閾値を生成し、
前記信号レベル判定ステップにおいて、前記第1閾値と、前記同相成分の多値信号を2値識別するためにあらかじめ定められた第1固定閾値とのレベルを比較することによって前記多値信号の同相成分のレベルを判定して2値識別し、前記第2閾値と、前記直交成分の多値信号を2値識別するためにあらかじめ定められた第2固定閾値とのレベルを比較することによって前記多値信号の直交成分のレベルを判定して2値識別する、
ことを特徴とする請求項4に記載の光通信方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明にかかる光送信装置、光受信装置、および光通信方法の実施の形態を詳細に説明する。以下では、
図1に示すように、IQ平面上の第一象限で変調器を駆動するものとする。また、4値ASK方式、8値ASK方式での送信装置、受信装置の動作を説明することにより、任意のM値ASK方式にも本発明を適用することができるものである。
【0014】
(実施例1)
図2は、4値ASK方式による光通信システムにおける送信装置の構成例を示す図である。
図2に示すように、本システムの送信装置は、S/P変換部201と、多値信号生成部202と、暗号鍵記憶部203と、Running鍵生成部204と、多値信号増幅器205と、レーザダイオード206と、強度変調器207とを有して構成されている。
【0015】
S/P変換部201は、送信データを最上位ビット(MSB)であるd
1、最下位ビット(LSB)であるd
0にパラレル変換する。多値信号生成部202は、パラレル変換された送信データを多値化し出力する。出力される多値信号の信号レベルsは任意のM値のASK方式の場合、(数1)で表現される。
図2に示した4値ASK方式の場合は、(数2)により表される。
【0018】
暗号鍵記憶部203は、Running鍵を生成するための初期鍵を記憶する。Running鍵生成部204は、共通鍵である初期鍵から乱数を順次発生させる。発生された乱数が暗号化のためのRunning鍵となる。多値信号増幅器205は、生成されたRunning鍵を用いて、出力された多値信号を増幅する。レーザダイオード206は、連続光を出力する光源であり、強度変調器207は、多値信号増幅器205により増幅された多値信号を用いて、連続光を強度変調する。
【0019】
図3は、本実施の形態における光通信システムにおける受信装置の構成例を示す図である。
図3に示すように、本システムの受信装置は、O/E変換部301と、線形増幅器302と、暗号鍵記憶部303と、Running鍵生成部304と、閾値生成部305と、信号レベル判定部306と、P/S変換部307とを有して構成されている。さらに、信号判定部306は、第1識別器3061と、第2識別器3062と、第3識別器3063と、デコーダ3064とを有している。
【0020】
O/E変換部301は、送信装置から受信した光信号を光電変換する。線形増幅器302は、光電変換された光信号を増幅する。増幅された信号は信号レベル判定部306の第1識別器3061、第2識別器3062、第3識別器3063に入力される。
【0021】
暗号鍵記憶部303は、送信装置と同様の共通鍵である初期鍵を記憶する。Running鍵生成部304は、共通鍵である初期鍵から乱数を順次発生させる。送信装置と同様、発生された乱数が暗号化のためのRunning鍵となる。閾値生成部305は、生成されたRunning鍵を用いて多値信号判定用の閾値を生成する。生成された閾値は、信号レベル判定部306に入力され、第1識別器3061、第2識別器3062、第3識別器3063は、生成された閾値とあらかじめ設定されている第1固定閾値、第2固定閾値、第3固定閾値とを用いて、増幅された信号を2値識別する。
【0022】
信号レベル判定部306は、上述した識別器を用いて増幅された信号を2値識別し、デコーダ3064は、2値識別された信号の最上位ビット(MSB)であるb
1、最下位ビット(LSB)であるb
0を出力する。P/S変換部307は、デコーダ3064による出力信号をP/S変換した復調データを出力する。
【0023】
図4は、4値ASK方式のコンスタレーションを示す図である。本実施の形態では、ASK方式を採用しているため、
図4に示すように、Ichにのみデータを載せる。
【0024】
図5は、
図3に示したデコーダ3064の真理値表である。真理値表は、(数3)に示した論理式によって定めることができ、この論理式を満たす回路構成とすることにより、4値ASK方式のデコーダを実現することができる。
【0026】
図6は、
図2に示した送信装置、
図3に示した受信装置を用いた4値ASK方式による信号遷移図である。
図6二重線の上段は送信側、下段は受信側での値を示している。
図6に示すように、例えば、周期2T、3Tにおける送信データが、
それぞれ「1」、「0」である場合、S/P変換部201の出力は、それぞれd
0が「1」、d
1が「0」となり、多値信号生成部202の出力は「1」となる。
【0027】
Running鍵生成部204は、共通鍵である暗号鍵を用いてRunning鍵を出力する。Running鍵の出力値は、暗号鍵203およびRunning鍵生成部204の構成により決まる。
図6では、周期2T、3TにおけるRunning鍵の出力値は、「0.75」としている。
【0028】
多値信号増幅器205は、多値信号生成部202の出力値にRunning鍵生成部204の出力値を加算して増幅し、強度変調器207から出力される。
図6では、多値信号生成部202の出力値「1」にRunning鍵生成部204の出力値「0.75」を加算した「1.75」が出力され、受信装置に送信される。
【0029】
受信装置では、送信装置から出力された信号レベルを維持するため、線形増幅器302は、O/E変換部301によって光電変換された信号を増幅する。
図6では、線形増幅器302は、その出力値を送信装置と同じ「1.75」となる。
【0030】
閾値生成部305は、送信装置と共通の暗号鍵から生成されたRunning鍵を用いて、送信装置のRunning鍵生成部204の信号レベルの遷移と同じ遷移となる信号レベルを出力する。
図6に示す例では、閾値生成部305による周期2T、3Tにおける出力値は、送信装置のRunning鍵生成部204と同じ「0.75」であることがわかる。
【0031】
なお、本来であれば、回路の損失や利得により絶対値は変化するが、信号レベルが遷移する方向は等しい。また、
図6は、説明を容易にするために、損失や利得はないものとして表現している。
【0032】
受信装置の各識別器に入力される閾値は、固定閾値と閾値生成部305の出力値との和となる。第1識別器3061は信号レベル0と1を識別するため、第1固定閾値は0と1の中心である0.5とし、第2識別器3062は信号レベル1と2を識別するため、第2固定閾値は1と2の中心である1.5とし、第3識別器3063は信号レベル2と3を識別するため、第3固定閾値は2と3の中心である2.5としている。
【0033】
図6に示すように、例えば、周期2T、3Tにおける第1閾値は、閾値生成部305の出力値「0.75」と、第1固定閾値「0.5」を加算した「1.25」となり、第2閾値は、閾値生成部305の出力値「0.75」と、第2固定閾値「1.5」を加算した「2.25」となり、第3閾値は、閾値生成部305の出力値「0.75」と、第3固定閾値「2.5」を加算した「3.25」となる。したがって、第1識別器3061、第2識別器3062、第3識別器3063の出力値は、それぞれ、「1」、「0」、「0」となる。
【0034】
この出力値がデコーダ3064の入力となり、デコーダ3064は、「0」を最上位ビット(MSB)として出力し、「1」を最下位ビット(LSB)として出力する。P/S変換部307によりシリアル変換された復調データ「1」、「0」が出力される。そして、出力された復調データは、送信データと等しいことがわかる。
【0035】
このように、本システムを用いることにより、DWDM方式を用いることなく、4値ASK方式によりY−00プロトコルによる光通信の伝送容量を増加することが可能となる。
【0036】
続いて、8値ASK方式による光通信システムについて説明する。基本的な考え方は4値ASK方式の場合と同様であるため、重複する機能については説明を省略している。
【0037】
図7は、8値ASK方式による光通信システムにおける送信装置の構成例を示す図である。
図7に示すように、本システムの送信装置は、S/P変換部701と、多値信号生成部702と、暗号鍵記憶部703と、Running鍵生成部704と、多値信号増幅器705と、レーザダイオード706と、強度変調器707とを有して構成されている。
図7に示した送信装置では、S/P変換部701によって、送信データを最上位ビット(MSB)であるd
2、d
1、最下位ビット(LSB)であるd
0にパラレル変換し、これらの各値が多値信号生成部702の入力となって多値化される。
【0038】
多値信号生成部202が出力する多値信号の信号レベルsは、
図7に示した8値ASK方式の場合は、(数4)により表される。
【0040】
以降、4値ASK方式の場合と同様に、Running鍵を用いて出力された多値信号を増幅し、強度変調器707は、レーザダイオード706によって出力された連続光を、多値信号増幅器205により増幅された多値信号を用いて強度変調する。
【0041】
図8は、本実施の形態における光通信システムにおける受信装置の構成例を示す図である。
図8に示すように、本システムの受信装置は、O/E変換部801と、線形増幅器802と、暗号鍵記憶部803と、Running鍵生成部804と、閾値生成部805と、信号レベル判定部806と、P/S変換部807とを有して構成されている。さらに、信号判定部806は、第1識別器8061〜第7識別器8067までの各識別器と、デコーダ3068とを有している。
【0042】
図8に示した受信装置では、O/E変換部801によって光電変換され、線形増幅器802によって増幅された信号が、信号レベル判定部806の第1識別器8061〜第7識別器8067の各識別器に入力され、閾値生成部305は、Running鍵生成部304によって生成されたRunning鍵を用いて多値信号判定用の閾値を生成する。
【0043】
第1識別器8061から第7識別器8067の各識別器は、生成された閾値とあらかじめ設定されている第1固定閾値から第7固定閾値を用いて、増幅された信号を2値識別する。
【0044】
信号レベル判定部806は、上述した識別器を用いて増幅された信号を2値識別し、デコーダ8068は、2値識別された信号の最上位ビット(MSB)であるb
2、b
1、最下位ビット(LSB)であるb
0を出力し、P/S変換部807は、デコーダ8068による出力信号をP/S変換した復調データを出力する。
【0045】
図9は、8値ASK方式のコンスタレーションを示す図である。4値ASK方式の場合と同様ASK方式を採用しているため、
図8に示すように、Ichにのみデータを載せる。
【0046】
図10は、
図8に示したデコーダ8068の真理値表である。真理値表は、(数5)に示した論理式によって定めることができ、この論理式を満足する回路構成とすることにより、8値ASK方式のデコーダを実現することができる。
【0048】
図11は、
図7に示した送信装置、
図8に示した受信装置を用いた8値ASK方式による信号遷移図である。
図11二重線の上段は送信側、下段は受信側での値を示している。
図11に示すように、例えば、周期0T、1T、2Tにおける送信データが、それぞれ「0」、「0」、「1」である場合、S/P変換部701の出力は、それぞれd
0が「0」、d
1が「0」、d
2が「1」となり、多値信号生成部702の出力は「4」となる。
【0049】
Running鍵生成部704は、4値ASK方式の場合と同様、共通鍵である暗号鍵を用いてRunning鍵を出力する。Running鍵の出力値は暗号鍵703およびRunning鍵生成部704の構成により決まる。
図11では、周期0T、1T、2TにおけるRunning鍵生成部の出力値は、「0.125」としている。
【0050】
多値信号増幅器705は、多値信号生成部702の出力値にRunning鍵生成部704の出力値を加算して増幅し、強度変調器707から出力される。
図11では、多値信号生成部702の出力値「4」にRunning鍵生成部703の出力値「0.125」を加算した「4.125」が出力され、受信装置に送信される。
【0051】
受信装置では、4値ASK方式の場合と同様、線形増幅器802は、O/E変換部801によって光電変換された信号を増幅し、その出力値を送信装置と同じ「4.125」とする。
【0052】
閾値生成部805は、4値ASK方式の場合と同様、送信装置と共通の暗号鍵から生成されたRunning鍵を用いて、送信装置のRunning鍵生成部704の信号レベルの遷移と同じ遷移となる信号レベルを出力する。
図11に示す例では、閾値生成部805による周期0T、2T、3Tにおける出力値は、送信装置のRunning鍵生成部204と同じ「0.125」であることがわかる。
【0053】
なお、4値ASK方式と同様、回路の損失や利得により絶対値は変化するが、信号レベルが遷移する方向は等しく、また、
図11は、説明を容易にするために、損失や利得はないものとして表現している。
【0054】
受信装置の各識別器に入力される閾値は、固定閾値と閾値生成部805の出力値との和となる。第1識別器8061は信号レベル0と1を識別するため、第1固定閾値は0と1の中心である0.5とし、第2識別器3062は信号レベル1と2を識別するため、第2固定閾値は1と2の中心である1.5とし、第3識別器3063は信号レベル2と3を識別するため、第3固定閾値は2と3の中心である2.5とし、以降同様に固定閾値を定め、第7固定閾値では6と7の中心である6.5としている。
【0055】
図11に示すように、例えば、周期0T、2T、3Tにおける第1閾値は、閾値生成部805の出力値「0.125」と、第1固定閾値「0.5」を加算した「0.625」となる。以降、4値ASK方式の場合と同様に閾値を定め、第7閾値は、閾値生成部805の出力値「0.125」と、第7固定閾値「6.5」を加算した「6.625」となる。したがって、各識別器の出力値は、第1識別器8061から第4識別器8064までは「1」、第5識別器8065から第7識別器8067までの出力値は、「0」となる。
【0056】
この出力値がデコーダ8068の入力となり、デコーダ8068は、「1」を最上位ビット(MSB)として出力し、「0」を最下位ビット(LSB)として出力する。P/S変換部807によりシリアル変換された復調データ「1」「0」が出力される。そして、出力された復調データは、送信データと等しいことがわかる。
【0057】
このように、4値ASK方式の場合と同様、DWDM方式を用いることなくY−00プロトコルによる光通信の伝送容量を増加することが可能となる。すなわち、任意のM値ASK方式によりY−00プロトコルによる光通信の伝送容量を増加することができる。
【0058】
実施例1では、Ichにのみデータを載せた任意のM値ASK方式の採用により、伝送容量の増加を実現したが、IchだけでなくQchにもデータを載せたほうが、さらなる大容量化を実現することができる。そこで、以下では、直交位相(In−phase(Ich)とQuadrature(Qch))を用いたM値ASK方式を採用した場合について説明する。また、QAM、APSKと差別化するために、実施例1の場合と同様、IQ平面上の第一象限で変調器を駆動するものとする。また、直交位相を用いた8値ASK方式、16値ASK方式での送信装置、受信装置の動作を説明することにより、直交位相を用いた任意のM値ASK方式にも本発明を適用することができるものである。
【0059】
(実施例2)
図12は、直交位相を用いた8値ASK方式による光通信システムにおける送信装置の構成例を示す図である。
図12に示すように、本システムの送信装置は、S/P変換部1201と、多値信号生成部1202と、第1暗号鍵記憶部1203と、第1Running鍵生成部1204と、第1多値信号増幅器1205と、第2暗号鍵記憶部1206と、第2Running鍵生成部1207と、第2多値信号増幅器1208と、レーザダイオード1209と、IQ変調器1210と、RZ変調器1211とを有して構成されている。
【0060】
S/P変換部1201は、送信データを最上位ビット(MSB)であるd
3、d
2、d
1、最下位ビット(LSB)であるd
0にパラレル変換する。多値信号生成部1202は、パラレル変換された送信データの多値信号を出力する。出力される多値信号のうちIch成分およびQch成分の信号レベルは、それぞれ(数6)で表現される。
【0062】
第1暗号鍵記憶部1203は、第1Running鍵を生成するための初期鍵を記憶する。第1Running鍵生成部1204は、共通鍵である初期鍵から乱数を順次発生させる。発生された乱数が暗号化のためのRunning鍵となる。第1多値信号増幅器1205は、生成された第1Running鍵を用いて、出力された多値信号を増幅する。
【0063】
第2暗号鍵記憶部1206は、第2Running鍵を生成するための初期鍵を記憶する。第2Running鍵生成部1207は、共通鍵である初期鍵から乱数を順次発生させる。発生された乱数が暗号化のためのRunning鍵となる。第2多値信号増幅器1208は、生成された第2Running鍵を用いて、出力された多値信号を増幅する。
【0064】
レーザダイオード1209は、連続光を出力する光源であり、IQ変調器1210は、第1多値信号増幅器1205および第2多値信号増幅器1208により増幅されたIch成分およびQch成分の信号を用いて、レーザ光による連続光を強度変調する。RZ変調器1211は、光強度の変化点における光ファイバの波長分散、および光ファイバの非線形効果による波形劣化を抑えるために、RZパルスに変換する。
【0065】
図13は、本実施の形態における光通信システムにおける受信装置の構成例を示す図である。
図13に示すように、本システムの受信装置は、第1遅延干渉計1301と、第1バランスドレシーバ1302と、第1ADC1303と、第2遅延干渉計1304と、第2バランスドレシーバ1305と、第2ADC1306と、位相検出部1307と、IQ分離部1308と、第1暗号鍵記憶部1309と、第1Running鍵生成部1310と、第1閾値生成部1311と、第1信号レベル判定部1312と、第2暗号鍵記憶部1313と、第2Running鍵生成部1314と、第2閾値生成部1315と、第2信号レベル判定部1316と、P/S変換部1317とを有している。
【0066】
第1遅延干渉計1301は、送信装置から受信したRZ変調された信号のIch成分の信号を遅延検波する。第1バランスドレシーバ1302は、正相、逆相のフォトダイオード電流の差動検出によりIch成分の信号を復調する。第1ADC1303は、復調されたIch成分の信号をAD変換する。第2遅延干渉計1304、第2バランスドレシーバ1305、第2ADC1306は、それぞれQch成分について、上記Ich成分の信号と同様の機能を実現する。
【0067】
位相検出部1307は、Ich成分およびQch成分の各信号より、それぞれ位相θ成分、IchおよびQchの合成信号振幅r成分を検出する。IQ分離部1308は、IchおよびQchの各成分の信号を、Ich成分およびQch成分に戻した信号を出力する。具体的には、位相検出部1307は、Ich成分の第1ADC1303の出力i(kT)、Qch成分の第2ADC1306の出力q(kT)より、合成信号振幅r(kT)および1ビット前の位相との差分Δθ(kT)を求め、全Δθ(kT)の和を取ることで受信信号の位相θ(kT)が求められる。
【0068】
位相検出部1307は、(数7)を用いて上記位相を算出する。IQ分離部1308は、r(kT)、θ(kT)より、(数8)用いて、Ich成分、sQch成分の信号に分離する。
【0071】
IQ分離部1308によって分離された信号は、それぞれ第1信号レベル判定部1312、第2信号レベル判定部1316に入力される。
【0072】
第1暗号鍵記憶部1309は、送信装置と同様の共通鍵(第1暗号鍵)である初期鍵を記憶する。第1Running鍵生成部1310は、共通鍵である初期鍵から乱数を順次発生させる。送信装置と同様、発生された乱数が暗号化のための第1Running鍵となる。第1閾値生成部1311は、生成された第1Running鍵を用いて多値信号判定用の閾値を生成する。生成された閾値は、第1信号レベル判定部1312に入力される。
【0073】
第1信号レベル判定部1312は、
図3に示した信号レベル判定部306と同様の構成を有し、各識別器を用いてIch成分の信号を2値識別し、デコーダ3064が2値識別された信号であるb
1、最下位ビット(LSB)であるb
0を出力する。
【0074】
第2暗号鍵記憶部1313は、送信装置と同様の共通鍵(第2暗号鍵)である初期鍵を記憶する。第2Running鍵生成部1314は、共通鍵である初期鍵から乱数を順次発生させる。送信装置と同様、発生された乱数が暗号化のための第2Running鍵となる。第2閾値生成部1315は、生成された第2Running鍵を用いて多値信号判用の閾値を生成する。生成された閾値は、第2信号レベル判定部1315に入力される。
【0075】
第2信号レベル判定部1316は、第1信号レベル判定部1312と同様、
図3に示した信号レベル判定部306と同様の構成を有し、各識別器を用いてQch成分の信号を2値識別し、デコーダ3064が2値識別された信号の最上位ビット(MSB)であるb
3、b
2を出力する。
【0076】
P/S変換部1317は、デコーダ3064による出力信号をP/S変換した復調データを出力する。
【0077】
図15は、8値ASK方式のコンスタレーションを示す図である。本実施の形態では、直交位相を用いたASK方式を採用しているため、
図15に示すように、IchおよびQchの両方にデータを載せる。
【0078】
図16は、
図12に示した送信装置、
図13に示した受信装置を用いた8値ASK方式による信号遷移図である。
図16二重線の上段は送信側、下段は受信側での値を示している。
図16に示すように、例えば、周期4T、5T、6T、7Tにおける送信データが、それぞれ「1」、「0」、「0」、「1」である場合、S/P変換部1201の出力は、d
0が「1」、d
1が「0」、d
2が「0」、d
3が「1」となり、多値信号生成部202のIch成分およびQch成分が、それぞれ「1」、「2」となる。
【0079】
第1Running鍵生成部1204は、共通鍵である第1暗号鍵、第2暗号鍵を用いてそれぞれ第1Running鍵、第2Running鍵を出力する。各Running鍵の出力値は、各暗号鍵および各Running鍵生成部の構成により決まる。
図16では、周期0T、1T、2Tにおける第1Running鍵および第2のRunning鍵の出力値は、それぞれ「0.75」、「0.875」としている。
【0080】
第1多値信号増幅器1205は、多値信号生成部1202の出力値(Ich)に第1Running鍵生成部1204の出力値を加算して増幅する。
図16では、多値信号生成部1202のIch成分の出力値「1」に第1Running鍵生成部1204の出力値「0.75」を加算した「1.75」が出力され、IQ変調器1210に出力される。同様に、第2多値信号増幅器1208は、多値信号生成部1202の出力値(Qch)に第2Running鍵生成部1207の出力値を加算して増幅する。
図16では、多値信号生成部1202のQch成分の出力値「2」に第2Running鍵生成部1207の出力値「0.875」を加算した「2.875」が出力され、IQ変調器1210に出力される。
【0081】
IQ変調器1210により強度変調されたIch成分およびQch成分の各信号は、RZ変調器1211により出力される。
【0082】
受信装置では、Ich成分およびQch成分の各信号が、各成分の遅延干渉計およびバランスドレシーバを経由して出力される。Ich成分およびQch成分の出力については、第1ADC1303および第2ADC1306は、(数7)を用いて、それぞれ「2.85」、「1.79」の各値となる。
【0083】
位相検出部1307は、出力されたIch成分およびQch成分の各出力値をそれぞれθ成分およびr成分に変換し、「58.67」、「3.37」より、IQ分離部1308は、(数7)および(数8)を用いて、変換された各成分の信号を、Ich成分およびQch成分に戻し、「1.750」、「2.875」を出力する。
【0084】
第1閾値生成部1311は、送信装置と共通の暗号鍵(第1暗号鍵)から生成された第1Running鍵を用いて、送信装置の第1Running鍵生成部1204の信号レベルの遷移と同じ遷移となる信号レベル(「0.75」)を出力する。同様に、第2閾値生成部1315は、送信装置と共通の暗号鍵(第2暗号鍵)から生成された第2Running鍵を用いて、送信装置の第2Running鍵生成部1207の信号レベルの遷移と同じ遷移となる信号レベル(「0.875」)を出力する。
【0085】
なお、実施例1の場合と同様、本来であれば、回路の損失や利得により絶対値は変化するが、信号レベルが遷移する方向は等しい。また、
図16は、説明を容易にするために、損失や利得はないものとして表現している。
【0086】
受信装置の各識別器に入力される閾値は、実施例1の場合と同様、各固定閾値と各閾値生成部の出力値との和となる。例えば、
図16では、周期4T、5T、6T、7TにおけるIch成分の第1閾値は、第1閾値生成部1311の出力値「0.75」と、第1固定閾値「0.5」を加算した「1.25」となる。以下、同様に、Ich成分の第2閾値、第3閾値は、それぞれ「2.25」、「3.25」となる。この出力値が第1信号レベル判定部1312のデコーダ3064の入力となり、デコーダ3064は、「0」、「1」(最下位ビット(LSB))を出力する。
【0087】
Qch成分についてもIch成分と同様であるため説明を省略するが、
図16に示すように、第2信号レベル判定部1316のデコーダ3064からの出力値は、「1」(最上位ビット(MSB))、「0」を出力し、P/S変換部1317によりシリアル変換された復調データ「1」「0」「0」「1」が出力される。そして、出力された復調データは、送信データと等しいことがわかる。
【0088】
このように、本システムを用いることにより、DWDM方式を用いることなく、直交位相を用いた8値ASK方式によりY−00プロトコルによる光通信の伝送容量を増加することが可能となる。
【0089】
なお、上述した例では、受信装置を直接検波方法により信号の強度を直接検出する構成により上記大容量化を実現したが、コヒーレント検波方法を用いることも可能である。
【0090】
図14は、コヒーレント検波受信器の構成を示す図である。ローカルオシレータの出力パワーを受信光パワーより大きくすることで信号成分を増大させ、受信光パワーに依存しない雑音、例えば熱雑音等を相対的に小さすることができ、量子雑音のみとする方式である。これは、ディジタルコヒーレント受信器で用いられている方式である。
【0091】
図14に示すように、コヒーレント検波受信器は、ローカルオシレータ1401と、90度光ハイブリッド1402と、第1バランスドレシーバ1403と、第1混合器1404と、第1ローパスフィルタ1405と、第1線形増幅器1406と、第2バランスドレシーバ1407と、第2混合器1408と、第2ローパスフィルタ1409と、第2線形増幅器1410と、第1暗号鍵記憶部1411と、第1Running鍵生成部1412と、第1閾値生成部1413と、第1信号レベル判定部1414と、第2暗号鍵記憶部1415と、第2Running鍵生成部1416と、第2閾値生成部1417と、第2信号レベル判定部1418と、P/S変換部1419とを有している。
【0092】
ローカルオシレータ1401は、周波数変換、および雑音低減を目的とした局部発信信号を発生する。90度光ハイブリッド1402は、送信装置から受信した光信号と局部発信信号を入力し、その入力信号をIch成分とQch成分に分離して出力する。第1バランスドレシーバ1403は、正相、逆相のフォトダイオード電流の差動検出によりIch成分の信号を復調する。
【0093】
第1混合器1404は、発信器1420を用いて、復調されたIch成分およびQch成分の信号との同期検波を行う。発信器1420と復調されたIch成分およびQch成分の信号の周波数を等しくすることで、送信信号の位相と等しい位相を有する信号を出力することができる。第1混合器1404の出力Ich成分の信号は、第1ローパスフィルタ1405により高周波成分が逓減された後、第1線形増幅器1406により増幅される。
【0094】
第2バランスドレシーバ1407、第2混合器1408、第2ローパスフィルタ1409、第2線形増幅器1410は、Qch成分について、上記Ich成分と同様に処理する。また、第1暗号鍵記憶部1411、第1Running鍵生成部1412、第1閾値生成部1413、第1信号レベル判定部1414、第2暗号鍵記憶部1415、第2Running鍵生成部1416、第2閾値生成部1417、第2信号レベル判定部1418、P/S変換部1419については、上述した直接検波方式と同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0095】
図17は、
図12に示した送信装置、
図14に示したコヒーレント検波受信器を用いた8値ASK方式による信号遷移図である。受信装置としてコヒーレント検波受信器を用いた場合も、
図16に示した直接検波方式と同様、送信装置側で強度変調された信号が、コヒーレント検波受信器の90度光ハイブリッド、バランスドレシーバ等の各部を介して線形増幅器に入力される。そして、Ich成分およびQch成分について、各閾値生成部により、送信装置と共通の暗号鍵から生成された各Running鍵を用いて、送信装置のRunning鍵生成部の信号レベルの遷移と同じ遷移となる信号レベルが出力される。さらに、各識別器に、各固定閾値と各閾値生成部の出力値との和が入力され、デコード後、シリアル変換され、その復調データが送信データと等しいことがわかる。
【0096】
このように、受信装置にコヒーレント検波受信器を用いた場合であっても、伝送容量の増加を実現することができる。
【0097】
続いて、直交位相を用いた16値ASK方式による光通信システムについて説明する。基本的な考え方は8値ASK方式の場合と同様であるため、重複する機能については説明を省略している。
【0098】
図18は、直交位相を用いた16値ASK方式による光通信システムにおける送信装置の構成例を示す図である。
図18に示すように、本システムの送信装置は、S/P変換部1801と、多値信号生成部1802と、第1暗号鍵記憶部1803と、第1Running鍵生成部1804と、第1多値信号増幅器1805と、第2暗号鍵記憶部1806と、第2Running鍵生成部1807と、第2多値信号増幅器1808と、レーザダイオード1809と、IQ変調器1810と、RZ変調器1811とを有して構成されている。
【0099】
S/P変換部1801は、8値ASK方式の場合と同様、送信データを最上位ビット(MSB)であるd
5、d
4、d
3、d
2、d
1、最下位ビット(LSB)であるd
0にパラレル変換する。多値信号生成部1802は、パラレル変換された送信データの多値信号を出力する。出力される多値信号のうちIch成分およびQch成分の信号レベルは、それぞれ(数9)で表現される。
【0101】
その後、8値ASK方式の場合と同様、Ich成分およびQch成分についてRunning鍵が生成され、各多値信号増幅器により、生成されたRunning鍵を用いて、出力された多値信号が増幅され、IQ変調器1810により、増幅されたIch成分およびQch成分の信号を用いて、レーザ光による連続光を強度変調後、RZ変調器1811により、RZパルスに変換する。
【0102】
図19は、本実施の形態における光通信システムにおける受信装置の構成例を示す図である。
図19に示すように、直交位相を用いた8値ASK方式の場合と同様、本システムの受信装置は、第1遅延干渉計1901と、第1バランスドレシーバ1902と、第1ADC1903と、第2遅延干渉計1904と、第2バランスドレシーバ1905と、第2ADC1906と、位相検出部1907と、IQ分離部1908と、第1暗号鍵記憶部1909と、第1Running鍵生成部1910と、第1閾値生成部1911と、第1信号レベル判定部1912と、第2暗号鍵記憶部1913と、第2Running鍵生成部1914と、第2閾値生成部1915と、第2信号レベル判定部1916と、P/S変換部1917とを有している。
【0103】
Ich成分およびQch成分の各遅延干渉計、バランスドレシーバ、ADC、および位相検出部、IQ分離部については、直交位相を用いた8値ASK方式の場合と同様であるため説明を省略するが、IQ分離部1908によって分離された信号、および各閾値生成部が、各Running鍵生成部により生成されたRunning鍵を用いて生成した多値信号判定用の閾値がそれぞれ第1信号レベル判定部1912、第2信号レベル判定部1916に入力される。各信号レベル判定部は、各識別器を用いて増幅された信号を2値識別し、最上位ビット(MSB)であるd
5、d
4、d
3、d
2、d
1、最下位ビット(LSB)であるd
0を出力し、P/S変換部によりシリアル変換された復調データを出力する。
【0104】
図21は、16値ASK方式のコンスタレーションを示す図である。本実施の形態では、直交位相を用いたASK方式を採用しているため、
図21に示すように、IchおよびQchの両方にデータを載せる。
【0105】
図22は、
図18に示した送信装置、
図19に示した受信装置を用いた16値ASK方式による信号遷移図である。
図22に示すように、例えば、周期0T〜5Tにおける送信データが、それぞれ「0」、「0」、「0」、「0」、「1」、「0」である場合、多値信号生成部からのIch成分およびQch成分の出力が、それぞれ「0」、「2」となる。
【0106】
直交位相を用いた8値ASK方式の場合と同様、各Running鍵生成部によりRunning鍵が出力され、各多値信号増幅器により、多値信号生成部の出力値にRunning鍵生成部の出力値が加算され、IQ変調器に出力される。さらに、IQ変調器1810により強度変調されたIch成分およびQch成分の各信号が、出力値を維持したままRZ変調器1811により出力される。
【0107】
受信装置では、直交位相を用いた8値ASK方式の場合と同様、Ich成分およびQch成分の各信号が、各成分の遅延干渉計およびバランスドレシーバを経由して出力される。Ich成分およびQch成分の出力については、第1ADC1903および第2ADC1906は、(数7)を用いて求められる。
【0108】
位相検出部1907は、出力されたIch成分およびQch成分の各出力値をそれぞれθ成分およびr成分に変換し、IQ分離部1308は、(数7)および(数8)を用いて、変換された各成分の信号を、Ich成分およびQch成分に戻す。
【0109】
以降、各閾値生成部によりRunning鍵が生成され、直交位相を用いた8値ASK方式の場合と同様、各信号レベル判定部により、「0」(最上位ビット(MSB))、「0」、「0」、「0」、「1」、「0」(最下位ビット(LSB))が出力され、P/S変換部1917によりシリアル変換された復調データが出力される。そして、出力された復調データは、送信データと等しいことがわかる。
【0110】
このように、直交位相を用いた16値ASK方式を用いた場合でも、直交位相を用いた8値ASK方式と同様に、Y−00プロトコルによる光通信の伝送容量を増加することが可能となる。
【0111】
直交位相を用いた16値ASK方式の場合においても、受信装置にコヒーレント検波方法を用いることも可能である。
【0112】
図20は、コヒーレント検波受信器の構成を示す図である。
図20に示すように、コヒーレント検波受信器は、ローカルオシレータ2001と、90度光ハイブリッド2002と、第1バランスドレシーバ2003と、第1混合器2004と、第1ローパスフィルタ2005と、第1線形増幅器2006と、第2バランスドレシーバ2007と、第2混合器2008と、第2ローパスフィルタ2009と、第2線形増幅器2010と、第1暗号鍵記憶部2011と、第1Running鍵生成部2012と、第1閾値生成部2013と、第1信号レベル判定部2014と、第2暗号鍵記憶部2015と、第2Running鍵生成部2016と、第2閾値生成部2017と、第2信号レベル判定部2018と、P/S変換部2019とを有している。
【0113】
直交位相を用いた8値ASK方式の場合と同様、ローカルオシレータ2001、90度光ハイブリッド2002、各バランスドレシーバ、各混合器、各ローパスフィルタ、各線形増幅器により増幅されたIch成分およびQch成分の各信号が、各信号レベル判定部に入力される。
【0114】
さらに、各閾値生成部により多値信号判定用の閾値が生成され、直接検波方式と同様、各信号レベル判定部により、「0」(最上位ビット(MSB))、「0」、「0」、「0」、「1」、「0」(最下位ビット(LSB))が出力され、P/S変換部2019によりシリアル変換された復調データが出力される。
【0115】
図23は、
図18に示した送信装置、
図20に示したコヒーレント検波受信器を用いた16値ASK方式による信号遷移図である。この場合も、
図22に示した直接検波方式と同様、送信装置側で強度変調された信号が、コヒーレント検波受信器の90度光ハイブリッド、バランスドレシーバ等の各部を介して線形増幅器に入力され、Ich成分およびQch成分について、各閾値生成部により、送信装置と共通の暗号鍵から生成された各Running鍵を用いて、送信装置のRunning鍵生成部の信号レベルの遷移と同じ遷移となる信号レベルが出力され、各識別器に、各固定閾値と各閾値生成部の出力値との和が入力され、デコード後、シリアル変換され、その復調データが送信データと等しいことがわかる。
【0116】
このように、直交位相を用いた16値ASK方式において受信装置にコヒーレント検波受信器を用いた場合であっても、伝送容量の増加を実現することができる。