(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367647
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】ハイブリッド自動車および温度管理方法
(51)【国際特許分類】
B60W 10/08 20060101AFI20180723BHJP
B60W 20/50 20160101ALI20180723BHJP
B60L 3/00 20060101ALI20180723BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20180723BHJP
B60K 6/547 20071001ALI20180723BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60W20/50ZHV
B60L3/00 J
B60K6/48
B60K6/547
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-167927(P2014-167927)
(22)【出願日】2014年8月20日
(65)【公開番号】特開2016-43741(P2016-43741A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年6月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】清水 邦敏
【審査官】
増子 真
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−023378(JP,A)
【文献】
特開2009−081958(JP,A)
【文献】
特開2006−304561(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/046309(WO,A1)
【文献】
特開2013−156097(JP,A)
【文献】
特開平04−295278(JP,A)
【文献】
特開2005−354785(JP,A)
【文献】
特開2006−211886(JP,A)
【文献】
特開2009−005423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 − 6/547
B60W 10/00 − 20/50
B60L 1/00 − 3/12
B60L 7/00 − 13/00
B60L 15/00 − 15/42
H02P 21/00 − 25/03
H02P 25/04
H02P 25/10 − 27/18
H02M 7/00 − 7/40
H02M 7/42 − 7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、電動発電機と、前記電動発電機に電力を供給すると共に前記電動発電機が発電機として動作するときに充電されるバッテリと、前記バッテリと前記電動発電機との間で電力の授受を制御するインバータと、を有するハイブリッド自動車において、
前記インバータを含む電動車用機器の温度上昇度の情報と通電電流の情報に基づいて電動車用機器の所定時間後の温度を予測する温度予測手段と、
前記温度予測手段の予測によって、他の電動車用機器に比べて比熱が大きい前記電動車用機器の所定時間後の温度が上限に達すると予測される場合には当該電動車用機器に通常の制御により要求される電流に比べて大きい電流を間欠的に与える電流制御手段と
を有する制御装置を有する、
ことを特徴とするハイブリッド自動車。
【請求項2】
エンジンと、電動発電機と、前記電動発電機に電力を供給すると共に前記電動発電機が発電機として動作するときに充電されるバッテリと、前記バッテリと前記電動発電機との間で電力の授受を制御するインバータと、を有するハイブリッド自動車において、
前記インバータを含む電動車用機器の温度上昇度の情報と通電電流の情報に基づいて電動車用機器の所定時間後の温度を予測する温度予測手段と、
前記温度予測手段の予測によって他の電動車用機器に比べて比熱が小さい前記電動車用機器の所定時間後の温度が上限に達すると予測される場合には当該電動用機器に通常の制御で要求される電流に比べて小さい電流を連続的に与える電流制御手段と
を有する制御装置を有する、
ことを特徴とするハイブリッド自動車。
【請求項3】
請求項1または2に記載のハイブリッド自動車において、
前記温度予測手段は、前記温度上昇度の情報として、予め測定された温度上昇度の情報を用いる、
ことを特徴とするハイブリッド自動車。
【請求項4】
請求項1または2に記載のハイブリッド自動車において、
前記温度予測手段は、前記温度上昇度の情報として、所定時間前から現時点までに実測された温度上昇度の情報を用いる、
ことを特徴とするハイブリッド自動車。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のハイブリッド自動車において、
前記インバータを含む電動車用機器の前記温度上昇度の情報を記憶する温度情報記憶手段と、
前記電動車用機器の通電電流をその大きさと時間とについて所定の期間記録する電流情報記憶手段と、
を有し、
前記温度予測手段は、前記温度情報記憶手段に記憶されている前記電動車用機器の前記温度上昇度の情報と前記電流情報記憶手段に記憶されている前記電動車用機器の通電電流の情報に基づいて前記電動車用機器の所定時間後の温度を予測する、
ことを特徴とするハイブリッド自動車。
【請求項6】
エンジンと、電動発電機と、前記電動発電機に電力を供給すると共に前記電動発電機が発電機として動作するときに充電されるバッテリと、前記バッテリと前記電動発電機との間で電力の授受を制御するインバータと、を有するハイブリッド自動車の制御装置が実行する温度管理方法において、
前記インバータを含む電動車用機器の温度上昇度の情報と通電電流の情報に基づいて電動車用機器の所定時間後の温度を予測する温度予測ステップと、
前記温度予測ステップの処理により予測した前記電動車用機器の所定時間後の温度とその電動車用機器の比熱の大きさに応じて前記電動車用機器に流す電流の流し方を変更するステップと、
前記温度予測ステップの処理により他の電動車用機器に比べて比熱が大きい前記電動車用機器の所定時間後の温度が上限に達すると予測される場合には当該電動車用機器に通常の制御により要求される電流に比べて大きい電流を間欠的に与える電流制御ステップと、
を有する、
ことを特徴とする温度管理方法。
【請求項7】
エンジンと、電動発電機と、前記電動発電機に電力を供給すると共に前記電動発電機が発電機として動作するときに充電されるバッテリと、前記バッテリと前記電動発電機との間で電力の授受を制御するインバータと、を有するハイブリッド自動車の制御装置が実行する温度管理方法において、
前記インバータを含む電動車用機器の温度上昇度の情報と通電電流の情報に基づいて電動車用機器の所定時間後の温度を予測する温度予測ステップと、
前記温度予測ステップの処理により他の電動車用機器に比べて比熱が小さい前記電動車用機器の所定時間後の温度が上限に達すると予測される場合には当該電動用機器に通常の制御で要求される電流に比べて小さい電流を連続的に与える電流制御ステップと、
を有することを特徴とする温度管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車および温度管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車は、走行用のエンジンと電動発電機とを有し、エンジンのみによる走行、電動発電機のみによる走行、およびエンジンと電動発電機とが協働する走行が可能である。また、電動発電機に電力を供給すると共に電動発電機が発電機として動作するときに充電されるバッテリを有し、バッテリと電動発電機との間で電力の授受を制御するインバータを有する。
【0003】
このようなハイブリッド自動車では、電動発電機、インバータ、およびバッテリなどの電動車用機器の温度管理がなされており、上限を超えるような温度上昇があると、電動車用機器の運転は出力を絞る、または停止するような制御が実施される(たとえば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−211886号公報
【特許文献2】特開2009−5423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハイブリッド自動車が有する電動発電機、インバータおよびバッテリなどの電動車用機器の中で、特にインバータは、多数の電子部品により構成されている。たとえば、インバータは、スイッチング素子、コンデンサ、電流センサ(CT: Current Transformer)などを有する。
【0006】
これらの電子部品の温度特性は一様ではなく様々である。たとえば、ある電子部品の温度が上限に達したとしても他の電子部品の温度は未だ上限に達していないという状況も有り得る。しかしながら、インバータを構成するいずれか1つの電子部品が上限温度に達してしまうと、他の電子部品が未だ運転可能であってもインバータ全体を一時的に停止させる必要が生じる。これによれば、インバータの運転効率が低下する場合がある。これは、電動発電機やバッテリなどの他の電動車用機器についても同じことがいえる。このようにして、電動車用機器の運転効率が低下すると、エンジンによるアシストの割合が多くなり、ハイブリッド自動車の燃費低減効果を高く保てない場合がある。
【0007】
本発明は、このような背景の下に行われたものであって、電動車用機器の運転効率を高く保つことができるように電動車用機器の温度管理を実現することができるハイブリッド自動車、および温度管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エンジンと、電動発電機と、電動発電機に電力を供給すると共に電動発電機が発電機として動作するときに充電されるバッテリと、バッテリと電動発電機との間で電力の授受を制御するインバータと、を有するハイブリッド自動車において、インバータを含む電動車用機器の温度上昇度の情報と通電電流の情報に基づいて電動車用機器の所定時間後の温度を予測する温度予測手段と、温度予測手段
の予測
によって、他の電動車用機器に比べて比熱が大きい電動車用機器の所定時間後の温度が上限に達すると予測される場合には当該電動車用機器に通常の制御により要求される電流に比べて大きい電流を間欠的に与える電流制御手段とを有する制御装置を有するものである。
また、本発明の電流制御手段は、温度予測手段の予測によって他の電動車用機器に比べて比熱が小さい電動車用機器の所定時間後の温度が上限に達すると予測される場合には当該電動用機器に通常の制御で要求される電流に比べて小さい電流を連続的に与えることができる。
【0009】
このときに、温度予測手段は、温度上昇度の情報として、予め測定された温度上昇度の情報を用いることができる。
【0010】
あるいは、温度予測手段は、温度上昇度の情報として、所定時間前から現時点までに実測された温度上昇度の情報を用いることができる。
【0011】
たとえば、インバータを含む電動車用機器の温度上昇度の情報を記憶する温度情報記憶手段と、電動車用機器の通電電流をその大きさと時間とについて所定の期間記録する電流情報記憶手段と、を有し、温度予測手段は、温度情報記憶手段に記憶されている電動車用機器の温度上昇度の情報と電流情報記憶手段に記憶されている電動車用機器の通電電流の情報に基づいて電動車用機器の所定時間後の温度を予測するものである。
【0013】
本発明の他の観点は、エンジンと、電動発電機と、電動発電機に電力を供給すると共に電動発電機が発電機として動作するときに充電されるバッテリと、バッテリと電動発電機との間で電力の授受を制御するインバータと、を有するハイブリッド自動車の制御装置が実行する温度管理方法において、インバータを含む電動車用機器の温度上昇度の情報と通電電流の情報に基づいて電動車用機器の所定時間後の温度を予測する温度予測ステップと、温度予測ステップの処理により予測した電動車用機器の所定時間後の温度とその電動車用機器の比熱の大きさに応じて電動車用機器に流す電流の流し方を変更するステップと、温度予測ステップの処理により
他の電動車用機器に比べて比熱が大きい電動車用機器の所定時間後の温度が上限に達すると予測される場合には当該電動車用機器に通常の制御により要求される電流に比べて大きい電流を間欠的に与える電流制御ステップと、を有するものである。
また、本発明の電流制御ステップは、温度予測ステップの処理により他の電動車用機器に比べて比熱が小さい電動車用機器の所定時間後の温度が上限に達すると予測される場合には当該電動用機器に通常の制御で要求される電流に比べて小さい電流を連続的に与えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電動車用機器の運転効率を高く保つことができるように電動車用機器の温度管理を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係るハイブリッド自動車の要部構成図である。
【
図3】
図2の電力授受パターン変更部が選択する電力授受パターンのうち比較的大きな電流を短時間流すことを繰り返すパターンを示す図である。
【
図4】
図2の電力授受パターン変更部が選択する電力授受パターンのうち比較的小さな電流を連続的に流すパターンを示す図である。
【
図5】
図1の制御装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態に係るハイブリッド自動車1について
図1〜
図5を参照しながら説明する。
【0018】
ハイブリッド自動車1の要部構成を
図1を参照しながら説明する。
【0019】
ハイブリッド自動車1は、
図1に示すように、制御装置10、エンジン11、電動発電機12、バッテリ13、インバータ14、およびクラッチ15を要部構成として有する。電動発電機12の出力は、プロペラシャフト16、ディファレンシャルギア17を介して駆動輪18に伝達される。また、電動発電機12とプロペラシャフト16との間には、トランスミッション19が配置される。トランスミッション19は、たとえばAMT(Automated Manual Transmission)と呼ばれるものであり、ハイブリッド自動車1の走行中には、車速や要求トルクなどに応じて自動的に変速される機械式の変速装置である。
【0020】
このような構成を有するハイブリッド自動車1は、エンジン11による走行(エンジン走行モード)、電動発電機12による走行(電動走行モード)、エンジン11と電動発電機12とが協働する走行(ハイブリッド走行モード)のいずれかの走行モードが選択可能であり、減速中または下り勾配路を走行中には、駆動輪18の回転力により電動発電機12を発電機として動作させてバッテリ13に充電(回生)が可能である。また、ハイブリッド自動車1は、エンジン走行モードで走行中には、電動発電機12をエンジン11の動力によって発電機として動作させてバッテリ13に充電が可能である。
【0021】
制御装置10は、エンジン11、電動発電機12、バッテリ13、インバータ14、およびクラッチ15の動作を制御する。なお、実際には、エンジン11、電動発電機12、バッテリ13、インバータ14、およびクラッチ15に、それぞれ個別のECU(Electric Control Unit)が配置され、これらが互いにCAN(Controller Area Network)通信を行いながら協働して制御を実施している場合があるが、ここでは1つの制御装置10として説明する。
【0022】
エンジン11は、ガソリン、軽油、またはCNG(Compressed Natural Gas)などを燃料とする内燃機関である。なお、適用が可能であれば、エンジン11を内燃機関に限定するものではない。
【0023】
電動発電機12は、バッテリ13から供給される電力によって、ハイブリッド自動車1の走行用の動力を発生するものであると共に、他からの動力によって駆動されることで、バッテリ13に充電を行う発電機としても動作する。ここで電動発電機12を発電機として動作させる動力としては、たとえば、エンジン11の動力である。その他にもハイブリッド自動車1の減速時や下り勾配路の走行中などに、駆動輪18の回転がディファレンシャルギア17およびプロペラシャフト16を介して電動発電機12に伝達されることでも電動発電機12は発電機として動作する。
【0024】
バッテリ13は、電動発電機12に電力を供給すると共に、電動発電機12が発電機として動作する際には、電動発電機12が発電した電力によって充電される。
【0025】
インバータ14は、バッテリ13の直流電力を3相交流電力に変換して電動発電機12に供給すると共に、電動発電機12が発電機として動作する際には、電動発電機12が発電する3相交流電力を直流電力に変換してバッテリ13に供給する整流器としても動作する。よって、バッテリ13から電動発電機12に電力が供給されているときには、インバータ14の出力を絞る、または停止することにより、電動発電機12のトルクを絞る、または停止することになる。一方、電動発電機12からバッテリ13に電力が供給されているときには、インバータ14の出力を絞る、または停止することにより、バッテリ13の充電電力を絞る、または停止することになる。
【0026】
クラッチ15は、エンジン11と電動発電機12との間の動力伝達を接断する。クラッチ15が接続されていると、ハイブリッド自動車1は、電動発電機12によってエンジン11を始動させることができる。また、クラッチ15が接続されていると、ハイブリッド自動車1は、エンジン11のみによるエンジン走行モードおよびエンジン11と電動発電機12とが協働するハイブリッド走行モードのいずれかが選択可能になる。また、クラッチ15が接続されていると、ハイブリッド自動車1は、エンジン11により電動発電機12を発電機として動作させることができる。
【0027】
一方、クラッチ15が切断されていると、ハイブリッド自動車1は、電動発電機12のみによる電動走行モードに際し、エンジン11のフリクションを受けることなく効率良く走行可能である。また、クラッチ15が切断されていると、ハイブリッド自動車1は、電動発電機12が回生を実施しているときに、エンジン11のフリクションを受けることなく効率良く回生が可能である。
【0028】
このようなハイブリッド自動車1の制御装置10は、インバータ14を含む電動車用機器の温度上昇度の情報と通電電流の情報に基づいて電動車用機器の所定時間後の温度を予測し、予測した電動車用機器の所定時間後の温度とその電動車用機器の比熱の大きさに応じて電動車用機器に流す電流の流し方を変更する。ここで温度上昇度の情報とは、電動車用機器の使われ方に対してどのように温度が上昇して行くかの情報であり、たとえば、電動車用機器のいずれかに対してある電流値を所定時間流すとどれくらい温度が上昇するかという情報である。
【0029】
このときに、温度上昇度の情報として、予め測定された温度上昇度の情報を用いることもできるし、温度上昇度の情報として、所定時間前から現時点までに実測された温度上昇度の情報を用いることもできる。
【0030】
本実施の形態では、
図2に示すように、インバータ14を含む電動車用機器の温度上昇度の情報を記憶する温度情報記憶部20と、電動車用機器の通電電流をその大きさと時間とについて所定の期間記録する電流情報記憶部21と、温度情報記憶部20に記憶されている電動車用機器の温度上昇度の情報と電流情報記憶部21に記憶されている電動車用機器の通電電流の情報に基づいて電動車用機器の所定時間後の温度を予測する温度予測部22と、温度予測部22が予測した電動車用機器の所定時間後の温度とその電動車用機器の比熱の大きさに応じて電動車用機器に流す電流の流し方を変更する手段としての電流波形変更部23と、を有する。
【0031】
なお、本実施の形態では、電動車用機器の例として、インバータ14の他にも電動発電機12およびバッテリ13も含む。特に、インバータ14については、その構成部材であるスイッチング素子、コンデンサ、および電流センサ(たとえば、特開2013−146128号公報の
図1等参照)に分けて温度上昇度の情報と通電電流の情報を記憶する。以下では、説明の便宜上、これら電動発電機12、バッテリ13、およびインバータ14の構成部材であるスイッチング素子、コンデンサ、および電流センサを部材または各部材と総称する。
【0032】
これらの各部材は、一定の電力(エネルギ)を与えたときに、それぞれ温度の上がり方、下がり方が一様ではない。たとえば、電動発電機12は、他の部材に比べて比熱が大きいため、温度は上がり難く下がり難い。また、バッテリ13も他の部材に比べて比熱は大きい。また、インバータ14の構成部材では、コンデンサや電流センサも他の部材に比べて比熱は大きい。
【0033】
一方、インバータ14の構成部材の中で、スイッチング素子に用いられるIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ:Insulated Gate Bipolar Transistor)などは、他の部材に比べて比熱が小さいため、特にPNジャンクション付近の温度は上がり易く下がり易い。温度情報記憶部20は、これら各部材の温度上昇度の情報を記憶している。
【0034】
電流情報記憶部21は、各部材の通電電流の大きさと時間を所定の期間記憶する。
【0035】
温度予測部22は、電流情報記憶部21に記憶されている各部材の通電電流の情報と温度情報記憶部20に記憶されている各部材の温度上昇度の情報に基づき各部材の所定時間後の温度を予測する。
【0036】
たとえば、温度情報記憶部20には、各部材の温度上昇度の情報が予め記憶されているので、電流情報記憶部21に記憶されている各部材の所定時間の通電電流の大きさがわかると、その大きさの通電電流が今後さらに所定時間流れ続けたと仮定した場合の各部材の温度を予測することができる。
【0037】
電流波形変更部23は、インバータ14を制御することにより、バッテリ13と電動発電機12との間の電流の流し方を制御することができる。電流波形変更部23は、他の部材に比べて比熱が大きな部材の温度が所定時間後に上限に達すると予測される場合には、
図3に示すように、通常の制御により要求される電流(ここでは正弦波波形の電流)に比べて大きな電流を短時間だけ流すことを繰り返す電流の流し方を選択する(このような電流の流し方を大電流瞬時を繰り返す電流の流し方と称する。)。これによれば、比熱が大きな部材は、一瞬だけ大きな電流が流れても殆ど温度は上昇しないので、電力を供給しつつ温度の上昇を抑えることができる。
【0038】
一方、電流波形変更部23は、他の部材に比べて比熱が小さな部材の温度が所定時間後に上限に達すると予測される場合には、
図4に示すように、通常の制御により要求される電流に比べて小さな電流を連続的に流すという電流の流し方を選択する(このような電流の流し方を小電流連続の電流の流し方と称する。)。これによれば、比熱が小さな部材は、大きな電流に対してはすぐに温度が上昇するので、小さい電流を連続的に流すことで、電力を供給しつつ温度の上昇を抑えることができる。
【0039】
次に、制御装置10の動作を
図5のフローチャートを参照しながら説明する。
図5のフローチャートは、制御装置10の中の電流波形変更部23の動作を示している。
図5のフローチャートにおけるSTARTの条件は、ハイブリッド自動車1のキースイッチ(不図示)がON状態であり、制御装置10が稼働中という条件である。なお、
図5のフローチャートのSTARTからENDまでの処理は、1周期分の処理であり、1周期分の処理が終了(END)してもSTARTの条件が満たされていれば、処理は、再び開始(START)される。また、STARTの時点では、各部材の温度は上限に達しない範囲にあり、電流波形変更部23は、正弦波に近い電流波形でインバータ14の電流を制御している。
【0040】
ハイブリッド自動車1のキースイッチがON状態に操作されて制御装置10が稼働し、STARTの条件が満たされると、処理は、ステップS1に進む。
【0041】
ステップS1において、電流波形変更部23は、温度予測部22において、各部材の所定時間後の温度は予測できたか否かを判定する。ステップS1において、各部材の所定時間後の温度は予測できたと判定されると、処理は、ステップS2に進む。ステップS1において、未だ各部材の所定時間後の温度は予測できていないと判定されると、処理は、ステップS1を繰り返す。
【0042】
ステップS2において、電流波形変更部23は、所定時間後に上限温度に達すると予測される部材はあるか否かを判定する。ステップS2において、所定時間後に上限温度に達すると予測される部材があると判定されると、処理は、ステップS3に進む。一方、ステップS2において、所定時間後に上限温度に達すると予測される部材が無いと判定されると、処理は、ステップS1に戻る。
【0043】
ステップS3において、電流波形変更部23は、比熱の小さい部材(たとえば、インバータ14のスイッチング素子(IGBTなど))が所定時間後に上限温度に達すると予測されるか否かを判定する。ステップS3において、比熱の小さい部材が所定時間後に上限温度に達すると予測されると判定されると、処理は、ステップS4に進む。一方、ステップS3において、比熱の小さい部材が所定時間後に上限温度に達すると予測されていないと判定されると、処理は、ステップS6に進む。
【0044】
たとえば、ハイブリッド自動車1が頻繁に発進停止を繰り返す場合には、インバータ14のスイッチング素子(IGBTなど)に対し、発進時に大きな電流が流れるため、比熱の小さいスイッチング素子の温度が上昇する。このような場合には、ステップS3でYesとなって、処理は、ステップS4に進む。一方、ハイブリッド自動車1が連続する登坂路を走行中であれば、バッテリ13からインバータ14を介して電動発電機12へほぼ一定の電流が流れ続ける。このため、比熱の大きいバッテリ13および電動発電機12の温度が上昇する。また、インバータ14を構成する部材のうち比熱の大きいコンデンサや電流センサの温度が上昇する。これは連続する降坂路でも同様であり、降坂路の場合には、電動発電機12からインバータ14を介してバッテリ13へほぼ一定の電流が流れ続ける。このような場合には、ステップS3でNoとなって、処理は、ステップS6に進む。
【0045】
ステップS4において、電流波形変更部23は、ステップS3で、比熱の小さい部材が所定時間後に上限温度に達すると予測されたので、この温度上昇を抑えるために、
図4に示す小電流連続の電流の流し方を選択する。ステップS4において、小電力連続の電流の流し方が選択されると、処理は、ステップS5に進む。
【0046】
ステップS5において、電流波形変更部23は、所定時間後に上限温度に達すると予測される部材は無くなったか否かを判定する。ステップS5において、所定時間後に上限温度に達すると予測される部材は無くなったと判定されると、1周期分の処理を終了する(END)。一方、ステップS5において、上限温度に達すると予測される部材は無くならないと判定されると、処理は、ステップS7に進む。
【0047】
ステップS6において、電流波形変更部23は、比熱の大きい部材(たとえば、電動発電機12、バッテリ13、インバータ14のコンデンサおよび電流センサ)が所定時間後に上限温度に達すると予測されたので、
図3に示す大電流瞬時を繰り返す電流の流し方を選択する。ステップS6において、
図3に示す大電流瞬時を繰り返す電流の流し方が選択されると、処理は、ステップS5に進む。
【0048】
ステップS7は、ステップS1〜S6までの処理を実施しても所定時間後の上限温度に達する部材が存在する場合に適用する処理である。ステップS7において、制御装置10は、所定時間後に上限温度に達すると予測される部材の出力を絞る、または停止させ、1周期分の処理を終了する(END)。なお、ステップS7において、所定時間後に上限温度に達すると予測される部材の出力を絞る、または停止させた後に、この部材の温度が所定時間後に上限温度に達しないと予測されるようになった場合の処理については、従来からの処理であるので、詳細な説明は省略する。たとえば、ステップS7において、所定時間後に上限温度に達すると予測される部材の出力を絞る、または停止させた後に、この部材の温度が所定時間後に上限温度に達しないと予測されるようになった場合には、自動的に、この部材の出力を上げる、または出力を開始する処理をフローチャートが終了(END)する前段に設けてもよい。
【0049】
このように、制御装置10は、温度予測部22が予測した所定時間後の各部材の温度とその部材の比熱の大きさに応じて、インバータ14を介するバッテリ13と電動発電機12との間の電流の流し方を適宜変更する(
図5のステップS4,S6)。これによれば、所定時間後に上限温度に達すると予測される部材について、出力を絞ったり、または停止させることなく、温度の上昇を抑える、または温度を下降させることにより、ステップS7で所定時間後に上限温度に達すると予測されるした部材の出力を絞ったり、または停止させる機会を少なくし、各部材(電動発電機12、バッテリ13、インバータ14)の運転効率を高くすることができる。このようにして、電動車用機器(電動発電機12、バッテリ13、インバータ14など)の運転効率を高くすると、エンジン11によるアシストの割合を少なくすることができ、ハイブリッド自動車1の燃費低減効果を高く保つことができる。
【0050】
(その他の実施の形態)
上述した本実施の形態では、電動車用機器の例として、電動発電機12、バッテリ13、およびインバータ14について説明したが、制御装置10の制御対象を電動発電機12、バッテリ13、およびインバータ14に限定するものではない。
【0051】
また、制御装置10は、情報処理装置が予めインストールされている所定のプログラムを実行することによって実現することができる。このような情報処理装置は、たとえば、不図示のメモリ、CPU(Central Processing Unit)、入出力ポートなどを有する。情報処理装置のCPUは、メモリなどから所定のプログラムとして制御プログラムを読み込んで実行する。これにより、情報処理装置には、制御装置10の機能が実現される。なお、CPUの代わりにASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)、DSP(Digital Signal Processor)などを用いてもよい。また、後述する設定値保存部12mは、上述のメモリ(不図示)内の一部の記憶領域に実現される。
【0052】
また、上述の所定のプログラムは、制御装置10の出荷前に、情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであっても、制御装置10の出荷後に、情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであってもよい。また、プログラムの一部が、制御装置10の出荷後に、情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであってもよい。制御装置10の出荷後に、情報処理装置のメモリなどに記憶されるプログラムは、例えば、CD−ROMなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に記憶されているものをインストールしたものであっても、インターネットなどの伝送媒体を介してダウンロードしたものをインストールしたものであってもよい。
【0053】
また、上述の所定のプログラムは、情報処理装置によって直接実行可能なものだけでなく、ハードディスクなどにインストールすることによって実行可能となるものも含む。また、圧縮されたり、暗号化されたりしたものも含む。
【0054】
このように、情報処理装置とプログラムによって制御装置10を実現することにより、大量生産や仕様変更(または設計変更)に対して柔軟に対応可能となる。
【0055】
なお、情報処理装置が実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであってもよいし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…ハイブリッド自動車、10…制御装置、11…エンジン、12…電動発電機、13…バッテリ、14…インバータ、15…クラッチ、20…温度情報記憶部(温度情報記憶手段)、21…電流情報記憶部(電流情報記憶手段)、22…温度予測部(温度予測手段)、23…電流波形変更部(変更する手段)