(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の被膜形成用樹脂、塗液、積層体、加飾樹脂成形品を構成する各成分、および該加飾樹脂成形品の調整方法等について順次具体的に説明する。
【0013】
<被膜形成用樹脂(印刷インキを構成するバインダー樹脂)>
本発明の被膜形成用樹脂の一例として、印刷インキを構成するバインダー樹脂が好適に使用される。
本発明の印刷インキを構成するバインダー樹脂であるポリカーボネート樹脂は、下記一般式(1)で表される構成単位を含み、全構成単位における該構成単位(A)の割合は、10〜100モル%であり、好ましくは、50〜100モル%であり、さらに好ましくは、70〜100モル%である。10モル%より小さいと耐熱性が低くなりすぎるため、印刷部分が320℃以上の高温で成形した際に溶融し、滲みやぼやけを生じることとなり好ましくない。
【0015】
本発明のポリカーボネートにおける一般式(1)で表される構造において、式中、R
1およびR
2は、各々独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。R
3およびR
4は、各々独立して、水素原子または炭素原子数1〜6のアルキル基である。
本発明のポリカーボネートにおける一般式(1)で表される構造において、R
1およびR
2は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基であることが好ましく、さらにメチル基であることがより好ましい。
【0016】
本発明のポリカーボネートは、下記一般式(1)で表される構成単位と下記一般式(2)で表されるカーボネート単位を含有するポリカーボネート共重合体であることが好ましい。
【0019】
本発明のポリカーボネートにおける一般式(1)で表される構成単位(A)中、R
1およびR
2は、各々独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、R
3およびR
4は、各々独立して、水素原子数または炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。
R
1およびR
2は、好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基であり、さらに好ましくは、メチル基である。
R
3およびR
4は、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基であり、さらに好ましくは、水素原子である。
【0020】
本発明のポリカーボネートにおける一般式(1)中のR
1、R
2、R
3およびR
4の結合位置は、それぞれのフェニル基に置換されているヒドロキシル基を基準として、オルソ位、メタ位、パラ位から選ばれる任意の位置である。これらの中でも、オルソ位が好ましく、R
1およびR
2が、オルソ位のメチル基であり、R
3およびR
4が水素原子または、オルソ位のメチル基であることが最も好ましい。
上記以外の場合は、インサートフィルムに対する印刷インキの接着性に劣る場合がある。
【0021】
本発明のポリカーボネートにおける一般式(2)中、Wは下記式(2−1)〜(2−3)および(2−5)からなる群より選択される少なくとも1種の二価の有機残基、単結合、または下記式(2−4)のいずれかの結合を表し、R
5、R
6、R
7およびR
8は夫々独立して水素原子または炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよいアルキル基または炭素原子数6〜10のアリール基、または炭素原子数1〜6のアルコキシ基を表す。
【0022】
【化13】
(式(2−1)中、R
9、R
10、R
11およびR
12はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数1〜3のアルキル基を表す。)
【0023】
【化14】
(式(2−2)中、R
13およびR
14はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子または炭素原子数1〜3のアルキル基を表す。)
【0024】
【化15】
(式(2−3)中、uは4〜11の整数を表す。)
【0026】
【化17】
(式(2−5)中、R
15およびR
16はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、および炭素原子数1〜10の炭化水素基から選択される基を表す。)
【0027】
上記式(2)におけるWが単結合である構成単位を誘導する化合物としては、4,4’−ビフェノールおよび4,4’−ビス(2,6−ジメチル)ジフェノール等が挙げられる。
【0028】
Wが式(2−1)である構成単位を誘導する化合物としては、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン(通常“ビスフェノールM”と称される)、およびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。
【0029】
Wが式(2−2)である構成単位を誘導する化合物としては、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、および9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン等が挙げられる。
【0030】
Wが式(2−3)である構成単位を誘導する化合物としては、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0031】
Wが式(2−4)のいずれかである構成単位を誘導する化合物としては、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエ−テル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエ−テル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィドおよびビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン等が挙げられる。
【0032】
Wが式(2−5)である構成単位を誘導する化合物としては、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3−メトキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−フェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−クロロフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通常“ビスフェノールA”と称される)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(通常“ビスフェノールC”と称される)、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、および1,1−ビス(2,3−ジメチルー4−ヒドロキシフェニル)デカン等が例示される。
【0033】
上記二価フェノールの中でも、式(2−1)ではビスフェノールM、式(2−2)では9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、式(2−3)では1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、式(2−4)では3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、並びに式(2−5)ではビスフェノールA、ビスフェノールCが好ましい。最も好適な二価フェノールは、ビスフェノールAである。
【0034】
更に式(2)以外の構成単位に誘導される二価フェノールとして、好適には2,6−ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、レゾルシノール、炭素原子数1〜3のアルキル基で置換されたレゾルシノール、3−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,3−トリメチルインダン−5−オール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン−5−オール、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチルスピロインダン、1−メチル−1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−イソプロピルシクロヘキサン、1−メチル−2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]シクロヘキサン、1,6−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,6−ヘキサンジオン、およびエチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル等が例示される。
【0035】
R
5、R
6、R
7およびR
8は、好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基、4−メチルフェニル基、ナフチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基であり、さらに好ましくは、水素原子である。
【0036】
上記以外の場合は、耐熱性が低くなる場合があり、インサートフィルムの印刷部分が高温で成形した際に溶融し、滲みが生じることになるので好ましくない。
全構成単位における構成単位(A)の割合は、10〜100モル%であり、好ましくは、50〜100モル%であり、さらに好ましくは、70〜100モル%である。
10モル%未満であると、耐熱性が低くなる場合があり、インサートフィルムの印刷部分が高温で成形した際に溶融し、滲みが生じることになるため好ましくない。
【0037】
本発明におけるインキを構成するバインダー樹脂として使用される前記一般式(1)で表されるポリカーボネート樹脂は、比粘度(η
SP)が0.2〜2.0のものが好ましく、0.35〜0.92の範囲のものがより好ましい。比粘度が0.2以上ではバインダー樹脂としての強度が強く、耐熱性が向上し好ましい。比粘度が2.0以下であるとインキの溶剤に溶け易くなり、インキの安定性が向上し好ましい。比粘度(η
SP)は20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求めることができる。
比粘度(η
SP)=(t−t
0)/t
0
[t
0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
【0038】
<ポリカーボネートの製造方法>
下記一般式(4)とホスゲン等の炭酸エステル形成性化合物と反応させることによって製造することができる。
【0039】
(ジオール成分(原料モノマー))
本発明のポリカーボネート樹脂に使用される原料モノマーは、下記一般式(4)で表される化合物である。
前記一般式(1)で表される構成単位は、次の一般式(4)で表される構造式から誘導されるものである。
【0041】
(式中、R
19およびR
20は、各々独立して、炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。R
21およびR
22は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基を表す。)
【0042】
このような前記一般式(4)で表される特定の二価フェノール類としては、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジエチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジイソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、などが挙げられる。
これらの中でも、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが好ましい。
前記式(4)で表される二価フェノール類は、全使用二価フェノール類の内、好ましくは、10モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上、最も好ましくは、70モル%以上使用されることが好ましい。10モル%以上であると印刷インキの耐熱性、耐傷擦性が向上するため、好ましい。
【0043】
(製造方法)
本発明に使用するポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ成分にホスゲンや炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。次にこれらの製造方法について基本的な手段を簡単に説明する。
カーボネート前駆物質として、例えばホスゲンを使用する界面重縮合法では、通常酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物またはピリジンなどのアミン化合物が用いられる。溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩などの触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は数分〜5時間である。
【0044】
カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いる溶融法は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点などにより異なるが、通常120〜300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また反応を促進するために通常エステル交換反応に使用される触媒を使用することもできる。前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0045】
前記ポリカーボネート樹脂は、その重合反応において、末端停止剤として通常使用される単官能フェノール類を使用することができる。殊にカーボネート前駆物質としてホスゲンを使用する反応の場合、単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られたポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。
かかる単官能フェノール類としては、一般にはフェノール又は低級アルキル置換フェノールであって、下記一般式(5)で表される単官能フェノール類を示すことができる。
【0047】
(式中、Aは水素原子、炭素原子数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基あるいはアリールアルキル基であり、rは1〜5、好ましくは1〜3の整数である。)
【0048】
上記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。
また、他の単官能フェノール類としては、長鎖のアルキル基あるいは脂肪族ポリエステル基を置換基として有するフェノール類または安息香酸クロライド類、もしくは長鎖のアルキルカルボン酸クロライド類を使用することができる。なかでも、下記一般式(6)および(7)で表される長鎖のアルキル基を置換基として有するフェノール類が好ましく使用される。
【0051】
(式中、Xは−R−O−、−R−CO−O−または−R−O−CO−である、ここでRは単結合または炭素原子数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、nは10〜50の整数を示す。)
【0052】
かかる式(6)の置換フェノール類としてはnが10〜30、特に10〜26のものが好ましく、その具体例としては例えばデシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノール及びトリアコンチルフェノール等を挙げることができる。
【0053】
また、式(7)の置換フェノール類としてはXが−R−CO−O−であり、Rが単結合である化合物が適当であり、nが10〜30、特に10〜26のものが好適であって、その具体例としては例えばヒドロキシ安息香酸デシル、ヒドロキシ安息香酸ドデシル、ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、ヒドロキシ安息香酸エイコシル、ヒドロキシ安息香酸ドコシルおよびヒドロキシ安息香酸トリアコンチルが挙げられる。
これらの末端停止剤は、得られたポリカーボネート樹脂の全末端に対して少なくとも5モル%、さらに少なくとも10モル%末端に導入されることが望ましく、また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
【0054】
前記ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジカルボン酸、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸あるいはその誘導体を共重合したポリエステルカーボネート樹脂であってもよい。また少量の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネート樹脂であってもよい。また、分岐構造単位は、多官能性芳香族化合物から誘導されるだけでなく、溶融エステル交換反応時の副反応の如き、多官能性芳香族化合物を用いることなく誘導されるものであってもよい。
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重縮合法または溶融エステル交換法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールの酸化防止剤等を使用してもよい。
【0055】
本発明の被膜形成用樹脂によって形成された被膜層は、JIS K5600に準拠した鉛筆硬度が、H以上であることが好ましい。さらに、被膜層の鉛筆硬度は、好ましくは、2H以上である。なお、被膜層の鉛筆硬度の上限は、特に制限されないが、通常、3H以下である。鉛筆硬度がH未満の被膜層ではインクを印刷した際に印刷部分が傷つきやすい。なお従来のビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂では鉛筆硬度は2Bであり不十分である。
【0056】
<塗液(印刷インキ)>
本発明の塗料液は、被膜形成用樹脂と溶媒を構成成分とする。
本発明の被膜形成用樹脂が構成成分である塗液の一例として、印刷インキが好適に使用される。
本発明の塗液が印刷インキである場合、前記バインダー樹脂と染・顔料を所望の溶媒に溶解して好適に使用される。本発明の塗液において使用される染・顔料としては、例えば、アントラキノン系、ナフトキノン系等の染料、酸化チタン、カーボンブラック、炭酸カルシウム、金属粒子等の無機顔料、アゾ顔料、フタロシアニン顔料等の有機顔料等が挙げられる。これらの染・顔料はインキ中に溶解あるいは分散した状態でバインダー樹脂と共に存在する。
【0057】
また、本発明の塗液に用いられる溶剤としては、以下の溶剤が挙げられる。即ち、インキ調製のための溶剤としては、非ハロゲン系有機溶剤が好ましく、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソホロン等の環状ケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。また溶剤は単独で用いても、2種以上の混合溶剤で用いても良い。さらには染・顔料分散性、塗布性や乾燥性等を向上させる目的で、メタノール、エタノール等のアルコール、メチルエチルケトン、アセトン等の非環状ケトン、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸メトキシプロピル等のエステル類、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類、アルキレングリコール類及びその誘導体、シリコーンオイル、大豆油等のオイル類などの溶剤または貧溶剤を併用することも可能である。
【0058】
その中でも、その沸点が120℃以上であるキシレン、シクロヘキサノン、イソホロン酢酸ブチルが溶剤として好ましい。
前記塗液には、バインダー樹脂及び染・顔料の他に必要に応じて、有機及び無機微粒子、離型剤、酸化防止剤、可塑剤、分散剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤等を添加しても良い。
塗液中のバインダー樹脂の配合量は、極限粘度や溶剤溶解性に左右されるが、1〜70重量%が好ましく、5〜50重量%がより好ましい。バインダー樹脂の濃度がかかる範囲内であると、溶剤溶解性とインキ塗布性がバランスよく、作業性が向上する。
【0059】
<積層体(加飾印刷フィルム)>
本発明の積層体は、前記塗液から形成された被膜層と、基材層から構成され、積層体の一例として、加飾印刷フィルム(加飾用積層体)が好適に使用される。
また、基材層の一例として、熱可塑性樹脂からなる基材フィルムが好適に使用される。
【0060】
本発明において、前記耐熱性印刷インキは基材フィルムに塗布され、インサート成形加飾用に用いられる。基材フィルムに使用される樹脂フィルムとしては熱可塑性樹脂フィルムであり、具体的にはポリカーボネート樹脂フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、耐熱ポリオレフィン樹脂フィルム、ポリカーボネート/ポリエステルブレンドフィルム、ポリカーボネート/ABSブレンドフィルム等であり、特にポリカーボネート樹脂フィルム、ポリカーボネート/ポリエステルブレンドフィルムが透明性、耐熱性、機械的強度等に優れ好ましく用いられる。
【0061】
特に、基材フィルム(基材層)として、一般式(3)で表される構造単位を含むポリカーボネート樹脂フィルムが本発明の印刷インキには好適である。
【化22】
(式中、R
17およびR
18は、各々独立して、水素原子または、炭素原子数1〜6のアルキル基を表す)
【0062】
また、前記一般式(3)で表される構成単位を構成する芳香族ジヒドロキシ成分としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(ビスフェノールC)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどが挙げられ、なかでもビスフェノールA、ビスフェノールCが好ましい。これらの芳香族ヒドロキシ成分を二種以上用いて共重合、またはホモポリマー同士のポリマーブレンドを使用してもよい。
これらの樹脂フィルムは、通常0.01〜2mmの厚みであり、0.1〜0.5mmの厚みが好ましい。
【0063】
<積層体(加飾印刷フィルム)の製造方法>
次に、積層体の一例である、加飾印刷フィルムの製造方法について説明する。
本発明の被膜形成用樹脂を構成成分とする印刷インキを基材フィルムに塗布する方法としては、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷等が挙げられるが、塗布するインキ層の膜厚範囲が広く、インキ層を厚くすることができる点から、スクリーン印刷が特に好ましい。塗布されたインキは、自然放置、冷・温送風、赤外線照射、加熱焼付、紫外線照射等により乾燥することで乾燥した印刷面が得られる。
【0064】
本発明の被膜形成用樹脂を構成成分とする印刷インキは、熱可塑性樹脂を加飾する目的でインサート成形する際の加飾印刷フィルムのインキとして好適に使用することができる。
インサート成形で本発明の積層体に貼り合わされる樹脂(インサート用樹脂)としては、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリサルフォン、ナイロン等があげられる。インサート樹脂として用いられるポリカーボネートとしては、前記式(3)で表される構成単位を含むポリカーボネート樹脂が挙げられる。中でも本発明の被膜形成用樹脂を用いた加飾印刷フィルムは、高温、特に320℃以上、好ましくは320〜360℃で加飾を施した場合、インサート成形後の印刷部パターンに滲みやぼやけが見られず印刷部の接着性も優れている。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何らの制
限を受けるものではない。なお、実施例中の部は重量部であり、%は重量%である。なお、評価は下記の方法によった。
【0066】
[被膜形成用樹脂の比粘度(ηSP)の測定方法]ポリカーボネート樹脂0.7gを塩化メチレン100mlに溶解し、20℃で測定し求めた。
【0067】
[被膜形成用樹脂の耐熱性の測定方法]デュポン社製910型DSC型DSC測定装置にて、樹脂量10mg、48ml/分の窒素気流下、20℃/分の昇温条件で測定し、ガラス転移温度(Tg)を求めた。
【0068】
[被膜形成用樹脂の熱安定性の測定方法]ポリカーボネート樹脂5gを脱気した試験管中でブロックヒーターを用いて350℃に10分間保ち、前後の比粘度(ηSP)の変化(ΔηSP)を測定した。
【0069】
[積層体の鉛筆硬度]各実施例で金型に装着する前の積層体(印刷フィルム)の被膜層側から「JIS K5600」に準拠して、鉛筆硬度を測定した。
【0070】
[スクリーン印刷後の外観]市販ポリカーボネート樹脂フィルム(帝人製;パンライトフィルムPC−2151、厚み0.2mm)上にスクリーン印刷した印刷フィルムの印刷部分に白化が見られない場合を○、白化がわずかでも見られる場合を×で表示した。
【0071】
[スクリーン印刷面の磨耗強度]市販ポリカーボネート樹脂フィルム(帝人製;パンライトフィルムPC−2151、厚み0.2mm)上にスクリーン印刷した印刷フィルムを用い、砂消しゴムを用いて印刷部に負荷5N/cm
2、速度1Hz/往復にて30往復させた後の印刷面外観を観察し、印刷部に変化がない場合を○、印刷パターンに削れ等変化がある場合を×とした。
【0072】
[インキの保存安定性]ポリカーボネート樹脂、染料または顔料、溶剤を混合した実施例で使用の印刷用インキを、常温で1日間放置した後、インキがゲル化しているかどうかを目視で判定した。
【0073】
[インサート成形後の印刷部の外観]印刷フィルムを同サイズの厚さ2mmの金型に装着し、射出成形機金型内に印刷面を内側にして装着し、ポリカーボネート樹脂ペレット(帝人製:パンライトL−1225)を用いてインサート成形を行った。得られたインサート成形後の成形品の印刷パターンに変化がない場合を○、印刷部パターンにわずかでも滲みやぼやけ等変化がある場合を×で表示した。
【0074】
<実施例1>
48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液137部と蒸留水677部に、原料モノマーである1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(以下「C−TMC」と略称)141部(0.4mol)とハイドロサルファイト0.3gを溶解した。これにメチレンクロライド460部を加えて撹拌しつつ、25℃に保ちながら、ついでホスゲン60部を60分で吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、15分程度静置した。その後、分子量調節剤としてp−t−ブチルフェノール(以下「PTBP」と略称:大日本インキ化学工業株式会社製)2.19部、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液17部を加え徐々に攪拌速度を上げて、反応液を乳化させ、乳化後、0.1部のトリエチルアミンを加え、28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈して蒸留水で繰り返し水洗した後、蒸留水中に塩酸をpH3以下となるように添加し水洗し、さらに水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになるまで水洗を繰り返した。得られたポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液を目開き0.3μmのフィルターに通過させ、さらに軸受け部に異物取り出し口を有する隔離室付きニーダー中の温水に滴下し、塩化メチレンを留去しながらポリカーボネート樹脂をフレーク化し、引続き該含液フレークを粉砕・乾燥してパウダー(比粘度0.365)を得た。得られた重合体を赤外線吸収スペクトルにより分析した結果、1770cm
−1付近の位置にカルボニル基による吸収、1240cm
−1付近の位置にエーテル結合による吸収が認められ、カーボネート結合を有するポリカーボネート樹脂であることが確認された。
【0075】
得られたポリカーボネート樹脂をバインダー樹脂として30重量部、染料としてアントラキノン系Plast Red 8370(有本化学工業株式会社)10重量部、溶剤としてイソホロン80重量部を混合して、印刷用インキを調整した。次に、基材フィルムとして厚み0.2mmの市販ポリカーボネート樹脂フィルム(帝人製;パンライトフィルムPC−2151)の片面に、前記印刷用インキをシルクスクリーン印刷機(300型半自動スクリーン印刷機、江口孔板製)を用いてスクリーン印刷し、100℃で60分間乾燥させて、印刷フィルムを得た。印刷フィルムを同サイズの厚さ2mmの金型に装着し、射出成形機金型内に印刷面を内側にして装着し、ポリカーボネート樹脂ペレット(帝人製:パンライトL−1225)を用いて300、320、340、360℃の成形温度でそれぞれインサート成形を行った。得られたインサート成形品の印刷、乾燥後の印刷フィルム外観、調整したインキの保存安定性及びインサート成形後の成形品印刷部外観を評価した。結果を表1、2に記載した。
【0076】
<実施例2>
PTBPを0.56部に変更し、実施例1と同様に重合を行い、ポリカーボネート(比粘度0.895)を得た。得られたポリカーボネートを実施例1と同様にインキバインダー樹脂として用いて、印刷、成形、評価を行った。結果を表1、2に記載した。
【0077】
<実施例3>
PTBPを1.56部に変更し、実施例1と同様に重合を行い、ポリカーボネート(比粘度0.538)を得た。得られたポリカーボネートを実施例1と同様にインキバインダー樹脂として用いて、印刷、成形、評価を行った。結果を表1、2に記載した。
【0078】
<実施例4>
48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液137部と蒸留水241部に、原料モノマーである1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(以下「D−TMC」と略称)152部(0.4mol)とハイドロサルファイト0.3部を溶解した。これにメチレンクロライド355部を加えて撹拌しつつ、25℃に保ちながら、トリエチルアミン0.4部を加え、ついでホスゲン60部を80分で吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、15分程度静置した。その後、分子量調節剤としてPTBT1.56部、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液17部を20分程度滴下しながら加え徐々に攪拌速度を上げて、反応液を乳化させ、乳化後、0.8部のトリエチルアミンを加え、28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。以降は、実施例1と同様に操作を行い、ポリカーボネート(比粘度0.452)を得た。得られたポリカーボネートを実施例1と同様にインキバインダー樹脂として用いて、印刷、成形、評価を行った。結果を表1、2に記載した。
【0079】
<実施例5>
PTBPを0.78部に変更した以外は、実施例4と同様に重合を行い、ポリカーボネート(比粘度0.804)を得た。得られたポリカーボネートを実施例1と同様にインキバインダー樹脂として用いて、印刷、成形、評価を行った。結果を表1、2に記載した。
【0080】
<実施例6>
原料モノマーをC−TMC70.7部(0.2mol)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下「BPA」と略称:三井化学化学株式会社製)47.6部(0.2mol)に変更した以外は、実施例1と同様に重合を行い、ポリカーボネート(比粘度0.371)を得た。得られたポリカーボネートを実施例1と同様にインキバインダー樹脂として用いて、印刷、成形、評価を行った。結果を表1、2に記載した。
【0081】
<実施例7>
原料モノマーをC−TMC99.0部(0.29mol)、BPA28.6部(0.12mol)に変更した以外は、実施例1と同様に重合を行い、ポリカーボネート(比粘度0.368)を得た。得られたポリカーボネートを実施例1と同様にインキバインダー樹脂として用いて、印刷、成形、評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0082】
<実施例8>
48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液124部と蒸留水701部に、原料モノマーであるC−TMC132部(0.39mol)、2,2−ビス−(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(以下「BPC」と略称:本州化学工業株式会社製)11部(0.04mol)およびハイドロサルファイト0.3部を溶解した。これにメチレンクロライド551部を加えて撹拌しつつ、20℃に保ちながら、ホスゲン60部を80分で吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、15分程度静置した。その後、分子量調節剤としてPTBT2.01部、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液18部を20分程度滴下しながら加え徐々に攪拌速度を上げて、反応液を乳化させ、乳化後、0.1部のトリエチルアミンを加え、28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。以降は、実施例1と同様に操作を行い、ポリカーボネート(比粘度0.446)を得た。得られたポリカーボネート樹脂を実施例1と同様にインキバインダー樹脂として用いて、印刷、成形、評価を行った。結果を表1、2に記載した。
【0083】
<実施例9>
48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液124部と蒸留水701部に、原料モノマーであるC−TMC44部(0.13mol)、BPC77部(0.28mol)およびハイドロサルファイト0.3部を溶解した。これにメチレンクロライド551部を加えて撹拌しつつ、20℃に保ちながら、ホスゲン60部を80分で吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、15分程度静置した。その後、分子量調節剤としてPTBT2.01部、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液18部を20分程度滴下しながら加え徐々に攪拌速度を上げて、反応液を乳化させ、乳化後、0.1部のトリエチルアミンを加え、28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。以降は、実施例1と同様に操作を行い、ポリカーボネート(比粘度0.382)を得た。得られたポリカーボネート樹脂を実施例1と同様にインキバインダー樹脂として用いて、印刷、成形、評価を行った。結果を表1、2に記載した。
【0084】
<実施例10>
染料の代わりに、コバルトブルー系顔料(バイエル製;Lightfast Blue100)を20重量部用い、溶剤としてイソホロンからシクロヘキサノン50重量部、ジオキソラン50重量部に変更した以外は実施例1と同様に操作を行い、印刷、成形、評価を行った。結果を表1、2に記載した。
【0085】
<比較例1>
48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液111部に原料モノマーであるBPA123g(0.4mol)とハイドロサルファイト0.3gを溶解した。これにメチレンクロライド551部を加えて撹拌しつつ、25℃に保ちながら、ついでホスゲン60部を60分で吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、15分程度静置した。その後、分子量調節剤としてPTBT2.25部、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液22部を加え徐々に攪拌速度を上げて、反応液を乳化させ、乳化後、0.14部のトリエチルアミンを加え、28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。以降は、実施例1と同様に操作を行い、ポリカーボネート(比粘度0.429)を得た。得られたポリカーボネートを実施例1と同様にインキバインダー樹脂として用いて、印刷、成形、評価を行った。結果を表1、2に記載した。
【0086】
<比較例2>
溶剤としてイソホロンから塩化メチレン100重量部に変更した以外は、比較例1と同様に重合を行い、ポリカーボネート(比粘度0.429)を得た。得られたポリカーボネートを実施例1と同様にインキバインダー樹脂として用いて、印刷、成形、評価を行った。結果を表1、2に記載した。
【0087】
<比較例3>
48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液187部と蒸留水1090部に、原料モノマーである2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(以下「BPZ」と略称:本州化学工業株式会社製)130部(0.4mol)とハイドロサルファイト0.3gを溶解した。これにメチレンクロライド535部を加えて撹拌しつつ、25℃以上に保ちながら、ついでホスゲン60部を60分で吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、15分程度静置した。その後、分子量調節剤としてPTBT0.91部、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液20部を加え徐々に攪拌速度を上げて、反応液を乳化させ、乳化後、0.12部のトリエチルアミンを加え、28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。以降は、実施例1と同様に操作を行い、ポリカーボネート(比粘度0.714)を得た。得られたポリカーボネートを実施例1と同様にインキバインダー樹脂として用いて、印刷、成形、評価を行った。結果を表1、2に記載した。
【0088】
<比較例4>
48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液160部と蒸留水623部に、原料モノマーである2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン(以下「C−BPZ」と略称:本州化学工業株式会社製)128部(0.4mol)とハイドロサルファイト0.3gを溶解した。これにメチレンクロライド478部を加えて撹拌しつつ、25℃以上に保ちながら、ついでホスゲン60部を60分で吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、15分程度静置した。その後、分子量調節剤としてPTBT2.27部、48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液18部を加え徐々に攪拌速度を上げて、反応液を乳化させ、乳化後、0.1部のトリエチルアミンを加え、28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。以降は、実施例1と同様に操作を行い、ポリカーボネート(比粘度0.366)を得た。得られたポリカーボネートを実施例1と同様にインキバインダー樹脂として用いて、印刷、成形、評価を行った。結果を表1、2に記載した。
【0089】
<比較例5>
48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液154部と蒸留水1183部に、原料モノマーである1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(以下「TMC」と略称:本州化学工業株式会社製)146部(0.4mol)とハイドロサルファイト0.3gを溶解した。これにメチレンクロライド719部を加えて撹拌しつつ、25℃に保ちながら、ついでホスゲン60部を60分で吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、15分程度静置した。その後、分子量調節剤としてPTBT2.04部、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液19部を加え徐々に攪拌速度を上げて、反応液を乳化させ、乳化後、0.12部のトリエチルアミンを加え、28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。以降は、実施例1と同様に操作を行い、ポリカーボネート(比粘度0.417)を得た。得られたポリカーボネートを実施例1と同様にインキバインダー樹脂として用いて、印刷、成形、評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0090】
<比較例6>
PTBPを0.63部に変更した以外は比較例5と同様に操作を行い、ポリカーボネート(比粘度0.895)を得た。染料の代わりに、コバルトブルー系顔料(バイエル製;Lightfast Blue100)を20重量部用い、溶剤としてイソホロンからシクロヘキサノン50重量部、ジオキソラン50重量部に変更した以外は実施例1と同様に印刷、成形、評価を行った。結果を表1、2に記載した。
【0091】
<比較例7>
原料モノマーをTMC50部(0.16mol)、およびBPA70部(0.31mol)に変更し、PTBPを2.47部に変更した以外は、比較例5と同様に重合を行い、ポリカーボネート(比粘度0.374)を得た。得られたポリカーボネートを実施例1と同様にインキバインダー樹脂として用いて、印刷、成形、評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0092】
<比較例8>
原料モノマーをC−TMC7.1部(0.02mol)、BPA90.5部(0.40mol)に変更した以外は、実施例1と同様に重合を行い、ポリカーボネート(比粘度0.365)を得た。得られたポリカーボネートを実施例1と同様にインキバインダー樹脂として用いて、印刷、成形、評価を行った。結果を表1、2に記載した。
【0093】
<実施例11〜20>
48.5重量%水酸化ナトリウム水溶液115部と蒸留水587部に、原料モノマーであるBPC119部(0.4mol)とハイドロサルファイト0.3gを溶解した。これにメチレンクロライド594部を加えて撹拌しつつ、20℃以上に保ちながら、ついでホスゲン60部を70分で吹き込んだ。ホスゲン吹き込み終了後、15分程度静置した。その後、分子量調節剤としてPTBT1.68部、48.5重量%の水酸化ナトリウム水溶液19部を加え徐々に攪拌速度を上げて、反応液を乳化させ、乳化後、0.16部のトリエチルアミンを加え、28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。以降は、実施例1と同様に操作を行い、ポリカーボネート(比粘度0.469)
を得た。得られたポリカーボネート樹脂パウダーを用い、減圧乾燥式の棚段乾燥機を用いて、120℃で3時間乾燥した。溶融ポリマーの異物を除去するための平均目開きが40μmであるステンレス不織布製のディスク形状フィルタを用いた。濾過後の溶融樹脂を280℃に設定したダイにより、回転する直径80mm、ロール面長180mmの冷却ロール面に押出した。押出しダイのリップ幅は150mm、リップ間隙は約2mmとした。樹脂フィルムを均一に冷却して引き取るために、樹脂フィルム全幅を静電密着法により冷却ロール面に密着させた。静電密着のための電極にはステンレス製ピアノ線を清浄に磨いたものを用いた。このピアノ線に直流電源のプラス電極をつなぎ、冷却ドラム側は接地した。印加電圧は7KVとした。かくして厚みが0.2mmの樹脂フィルムを冷却ロール回転速度10m/分で、テイクオフロールを介して引き取った。樹脂フィルムの両端部を10mmずつ切り除いて130mm幅の樹脂フィルムを得た。該フィルムを基材フィルムとした以外は、各実施例1〜9と同様の操作を実施した。結果を表3に示す。
【0094】
<比較例9〜16>
基体フィルムを実施例11〜20で用いたBPCからなるポリカーボネート樹脂フィルムに変更した以外は、各比較例1〜9と同様の操作を実施した。結果を表3に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
実施例1〜9で得られたポリカーボネート樹脂は耐熱性が高く、鉛筆硬度が高い。これらをバインダー樹脂に用いて調整した耐熱性印刷インキは、保存安定性に優れ、スクリーン印刷し、乾燥後の印刷部分外観も良好である。また、印刷部分の磨耗試験後の外観変化も観察されなかったことから耐傷擦性に優れているといえる。さらに、耐熱性印刷インキを印刷した樹脂フィルムをインサート成形した際に成形温度が320℃での成形後の印刷部分に滲みやぼやけは観察されなかった。特に実施例2,4,5は成形温度360℃においても印刷部の外観不良は観察できなかったことからこれまでにない耐熱性に優れた耐熱性印刷インキであるといえる。
【0098】
これに対して、比較例1,2で得られたポリカーボネート樹脂からなる印刷インキは保存安定性が悪く、印刷後の乾燥後に白化が生じた。また、比較例1〜8において比較例4を除く鉛筆硬度がHよりも低いポリカーボネート樹脂をバインダー樹脂として調合した印刷インキは、印刷後の磨耗試験において、けずれ等の外観不良が生じた。また、比較例4は印刷インキの保存安定性や磨耗試験は良好であるが、インサート成形した際に成形温度が300℃において印刷部分に滲みやぼやけが生じた。
【0099】
【表3】
【0100】
実施例11〜20で得られたポリカーボネート樹脂は耐熱性が高く、鉛筆硬度が高い。これらをバインダー樹脂に用いた印刷インキは保存安定性に優れ、基材フィルムを核置換ビスフェノール構造を有するポリカーボネート樹脂に変更したところ、印刷後の外観は良好であり、印刷部分の磨耗試験後の外観変化も生じなかった。特筆すべきは、印刷フィルムをインサート成形した際に成形温度が320℃における成形後の印刷部分に滲みやぼやけは生じず、実施例11〜15、13、19〜20においては成形温度360℃においても印刷部分に滲みやぼやけは生じなかった。これは、印刷インキと基材フィルムとの接着性が向上したためである。
【0101】
これに対して、比較例9〜16は比較例1〜8と同傾向であるが、比較例12においては成形温度300℃において印刷部分の滲みやぼやけが生じなかった。これは、基材フィルムとの印刷インキの接着性向上によるものと推察される。また、比較例13、14においては基材フィルムの変更による接着性低下が生じ、印刷後、印刷インキを乾燥した後に滲みが生じた。