特許第6367674号(P6367674)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367674
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】発振器
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20180723BHJP
   H03L 7/16 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   H03B5/32 H
   H03L7/16
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-202992(P2014-202992)
(22)【出願日】2014年10月1日
(65)【公開番号】特開2015-213290(P2015-213290A)
(43)【公開日】2015年11月26日
【審査請求日】2017年7月7日
(31)【優先権主張番号】特願2014-83911(P2014-83911)
(32)【優先日】2014年4月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(72)【発明者】
【氏名】陳 ▲ぶん▼任
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 重善
【審査官】 竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−115510(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0171953(US,A1)
【文献】 特開2006−333184(JP,A)
【文献】 特開2002−176318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/00−5/42
H03L 7/00−7/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電振動素子と、
前記圧電振動素子の共振周波数である第1周波数の第1発振信号を出力するとともに、前記第1周波数と異なる第2周波数の第2発振信号を出力する回路素子と、
前記圧電振動素子及び前記回路素子を収容する収容部と、
を備え、
前記回路素子は、
前記圧電振動素子からの信号の入力を受ける振動素子入力端子と、
前記圧電振動素子へと信号を出力させる振動素子出力端子と、
前記第1周波数の信号を出力する第1信号出力端子と、
前記第2周波数の信号を出力する第2信号出力端子と、
を有し、
前記収容部は、
前記振動素子出力端子に接続された第1配線を有する第1配線層と、
前記第1信号出力端子に接続された第2配線、及び前記第2信号出力端子に接続された第3配線を有する第2配線層と、
を有し、
前記第1配線は、前記第2配線層に投影されると前記第2配線の少なくとも一部と重なり、かつ前記第3配線と重ならない位置に形成されている、
発振器。
【請求項2】
前記第1配線は、前記圧電振動素子が有する複数の電極のうちの1つと前記振動素子出力端子とを接続し、前記第2配線は、前記第1信号出力端子と前記発振器の外部端子とを接続する、
請求項1に記載の発振器。
【請求項3】
前記第1配線は、一端が前記圧電振動素子に接続されており、かつ、他端が前記振動素子出力端子に接続されていない配線をさらに含む、
請求項1又は2に記載の発振器。
【請求項4】
前記収容部は、前記第1配線層が形成された第1基板と、前記第2配線層が形成された第2基板とを有し、前記第1配線層と前記第2配線層とがビアホールにより接続されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の発振器。
【請求項5】
前記第1配線層と前記第2配線層との距離は、前記回路素子の高さよりも大きい、
請求項4に記載の発振器。
【請求項6】
前記第1配線層と前記第2配線層との間に、前記第2配線層に投影されると前記第2配線の少なくとも一部と重なる領域を含む領域に形成されたグランドパターンをさらに有する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の発振信号を出力可能な発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の発振信号を出力することができる発振器が知られている。例えば、特許文献1においては、1つの圧電振動素子を用いて2つの発振信号を発生する発振回路を備える発振器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−115510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の発振器においては、出力される発振信号の電気的特性の劣化を防ぐために、圧電振動素子と発振回路とを接続する配線と、発振回路から出力される発振信号を外部に出力するための配線とが交差しないように構成されている。しかしながら、発振回路を集積回路により構成する発振器においては、集積回路のピン配置によっては、複数の配線を交差させないようにするために、配線の引き回しが複雑になる場合がある。配線の引き回しが複雑になると、基板の層数を増やすことによりコストが上がったり、発振器が大きくなったりするという問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明は、発振器における配線の引き回しの自由度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発振器は、圧電振動素子と、前記圧電振動素子の共振周波数である第1周波数の第1発振信号を出力するとともに、前記第1周波数と異なる第2周波数の第2発振信号を出力する回路素子と、前記圧電振動素子及び前記回路素子を収容する収容部と、を備え、前記回路素子は、前記圧電振動素子からの信号の入力を受ける振動素子入力端子と、前記圧電振動素子へと信号を出力させる振動素子出力端子と、前記第1周波数の信号を出力する第1信号出力端子と、前記第2周波数の信号を出力する第2信号出力端子と、を有し、前記収容部は、前記振動素子出力端子に接続された第1配線を有する第1配線層と、前記第1信号出力端子に接続された第2配線、及び前記第2信号出力端子に接続された第3配線を有する第2配線層と、を有し、前記第1配線は、前記第2配線層に投影されると前記第2配線の少なくとも一部と重なり、かつ前記第3配線と重ならない位置に形成されている。
【0007】
前記第1配線は、例えば、前記圧電振動素子が有する複数の電極のうちの1つと前記振動素子出力端子とを接続し、前記第2配線は、前記第1信号出力端子と前記発振器の外部端子とを接続する。また、前記第1配線は、一端が前記圧電振動素子に接続されており、かつ、他端が前記振動素子出力端子に接続されていない配線をさらに含んでもよい。
【0008】
前記収容部は、前記第1配線層が形成された第1基板と、前記第2配線層が形成された第2基板とを有し、前記第1配線層と前記第2配線層とがビアホールにより接続されていてもよい。前記第1配線層と前記第2配線層との距離は、例えば、前記回路素子の高さよりも大きい。
【0009】
また、上記の発振器は、前記第1配線層と前記第2配線層との間に、前記第2配線層に投影されると前記第2配線の少なくとも一部と重なる領域を含む領域に形成されたグランドパターンをさらに有してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発振器における配線の引き回しの自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】発振器の概略回路構成を示す図である。
図2】集積回路のピン配置の一例を示す図である。
図3】発振器の垂直方向の断面図である。
図4】発振器の水平方向の断面図である。
図5】第2の実施形態に係る集積回路のピン配置を示す図である。
図6】第2の実施形態に係る発振器の水平方向の断面図である。
図7】KO端子から出力される信号の波形と、MO端子から出力される信号の波形とを示す図である。
図8】KO端子から出力される信号の波形と、MO端子から出力される信号の波形とを示す図である。
図9】KO端子から出力される信号の波形と、MO端子から出力される信号の波形とを示す図である。
図10】第3の実施形態に係る発振器の垂直方向の断面図である。
図11】第3の実施形態に係る発振器の水平方向の断面図である。
図12】第3の実施形態に係る発振器の変形例1における水平方向の断面図である。
図13】第3の実施形態に係る発振器の変形例2における水平方向の断面図である。
図14】第3の実施形態に係る発振器の変形例3における水平方向の断面図である。
図15】第4の実施形態に係る発振器の水平方向の断面図である。
図16】第4の実施形態に係る発振器の変形例における水平方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施形態>
[発振器1の基本構成]
図1は、発振器1の概略回路構成を示す図である。発振器1は、水晶振動子2と、集積回路3とを備える。
発振器1は、MHz帯の発振信号を出力するための端子T1と、KHz帯の発振信号を出力するための端子T2と、電源電圧を入力するための電源端子T3と、グランドを接続するためのグランド端子T4と、発振信号を出力するか否かを制御する電圧を入力するための出力制御端子T5とを有する。
【0013】
水晶振動子2は、第1接続電極24及び第2接続電極25を有する圧電振動素子である。
集積回路3は、水晶振動子2を発振させるための回路を含む回路素子である。集積回路3は、例えば、能動素子及び受動素子を組み合わせた回路が形成された半導体のベアチップである。集積回路3は、電源電圧を入力するためのVDD端子、グランドに接続するためのGND端子、発振信号を出力するか否かを制御する電圧を入力するためのOE端子、XIN端子、XOUT端子、MO端子、KO端子を有する。図2は、集積回路3のピン配置の一例を示す図である。
【0014】
XIN端子は、水晶振動子2からの信号の入力を受ける振動素子入力端子であり、XOUT端子は、水晶振動子2へと信号を出力する振動素子出力端子である。水晶振動子2の第1接続電極24は、配線4を介してXIN端子に接続されており、水晶振動子2の第2接続電極25は、配線5を介してXOUT端子に接続されている。
【0015】
集積回路3は、水晶振動子2の共振周波数に等しいMHz帯の第1周波数の第1発振信号を、第1信号出力端子としてのMO端子から出力する。また、集積回路3は、第1周波数と異なるKHz帯の第2周波数の第2発振信号を、第2信号出力端子としてのKO端子から出力する。
【0016】
図1に示すように、集積回路3は、発振回路31と、分周回路32と、バッファ33と、バッファ34とを有する。発振回路31は、配線4を介してXIN端子から入力された発振信号を増幅してXOUT端子から出力する増幅回路を有する。XOUT端子から出力された第1発振信号は、配線5を介して水晶振動子2へと入力される。発振回路31は、増幅回路により増幅して生成された発振信号を分周回路32及びバッファ33へと出力する。
【0017】
分周回路32は、発振回路31が出力する発振信号を分周して、第1周波数よりも低い第2周波数の第2発振信号を出力する。バッファ33は、発振回路31から出力された第1発振信号を増幅し、MO端子を介して外部に出力する。MO端子から出力された第1発振信号は、配線6及び端子T1を介して、発振器1の外部へと出力される。バッファ34は、分周回路32から出力された第2発振信号を増幅し、KO端子を介して外部に出力する。KO端子から出力された第2発振信号は、配線7及び端子T2を介して、発振器1の外部へと出力される。なお、発振器1は、分周回路32の代わりにPLL回路を用いて第2発振信号を発生させてもよい。
【0018】
[発振器1の構造]
続いて、図3及び図4を参照して、発振器1の構造について説明する。
図3は、発振器1の垂直方向の断面図である。図4は、発振器1の水平方向の断面図である。図4(a)は、図3に示すA−A線における断面図であり、図4(b)は、図3に示すB−B線における断面図(第1配線層)であり、図4(c)は、図3に示すC−C線における断面図(第2配線層)であり、図4(d)は、図3に示すD−D線における断面図(第3配線層)であり、図4(e)は、図3に示すE−E線における断面図である。また、図3は、図4(b)に示すX−X線における断面図である。なお、図4においては、発振器1が有する全ての配線を示しておらず、集積回路3のXIN端子、XOUT端子、MO端子及びKO端子に接続されている配線を示している。
【0019】
発振器1においては、水晶振動子2及び集積回路3が収容部10に収容されている。収容部10は、リッド板11と、基板12と、基板13と、基板14とが層状に積み重ねられて、直方体の形状に構成されている。収容部10の内部には空洞15が形成されており、空洞15の内部に水晶振動子2及び集積回路3が実装されている。
【0020】
リッド板11は、平板状の金属部材により形成されている。リッド板11が封止材16を介して基板12と接合されることにより、空洞15が密封されている。
基板12、基板13及び基板14は、セラミック部材により形成されている。基板12は、水晶振動子2の厚みよりも大きな厚みを有しており、かつ、水晶振動子2の面積よりも大きな穴部を有している。
【0021】
基板13は、集積回路3の厚みよりも大きな厚みを有しており、かつ、集積回路3の面積よりも大きな穴部を有している。基板13が有する穴部は、基板12が有する穴部よりも小さい。基板13には、水晶振動子2の第1接続電極24が固定されるパッド4a、水晶振動子2の第2接続電極25が固定されるパッド5a、及び第2接続電極25とXOUT端子とを接続するための配線5bを含む第1配線層が形成されている。図4(b)に示すように、パッド4a、及びパッド5aは、第1配線層における基板12と重ならない領域に形成されている。
【0022】
基板14は、基板141及び基板142を含む多層基板である。基板14は、集積回路3が実装される基板141の主面に形成された、図4(c)に示す第2配線層と、基板141と基板142との間に形成された、図4(d)に示す第3配線層とを有する。第2配線層及び第3配線層には、集積回路3の端子に接続される配線が形成されている。基板14の裏面には、端子T1及びT2を含む6個の端子が形成されている。
【0023】
水晶振動子2は、平板状の水晶片21と、励振電極22と、励振電極23と、第1接続電極24と、第2接続電極25とを有する。第1接続電極24は、導電性接着剤を介してパッド4aに固定されている。第2接続電極25は、導電性接着剤を介してパッド5aに固定されている。
【0024】
なお、水晶振動子2が固定されるパッド4a及びパッド5aが形成されている第1配線層と、集積回路3が実装される第2配線層との距離は、集積回路3の高さよりも大きいので、水晶振動子2の下に集積回路3を配置することができる。例えば、本実施形態に係る集積回路3は、水晶振動子2の少なくとも一部と重なる位置において、基板141の上に形成された第2配線層に、バンプにより固定されている。
【0025】
以下、集積回路3のXIN端子、XOUT端子、MO端子及びKO端子に接続されている配線について説明する。
配線4は、水晶振動子2の第1接続電極24と集積回路3のXIN端子とを接続する配線である。配線4は、基板13の第1配線層に形成されたパッド4aと、基板13を貫通するビアホール4bと、基板141上の第2配線層に形成された配線4cとを含んで構成される。パッド4a及び配線4cは、ビアホール4bにより接続されている。
【0026】
配線5は、水晶振動子2の第2接続電極25と集積回路3のXOUT端子とを接続する配線である。配線5は、第1配線層に形成されたパッド5a及び配線5bと、基板13を貫通するビアホール5cと、第2配線層に形成された配線5dとを含んで構成される。配線5b及び配線5dは、ビアホール5cにより接続されている。図4(b)に示すように、配線5bは、パッド5aを起点として、基板13の穴部を迂回して、集積回路3のXOUT端子の位置の付近に形成されたビアホール5cまで延伸されている。
【0027】
配線6は、集積回路3のMO端子と端子T1とを接続する配線である。配線6は、例えば、基板141上の第2配線層に形成された配線6aと、端子T1の近傍のキャスタレーション(不図示)に形成された金属膜とを含む。第2配線層に形成された配線と端子T1とは、キャスタレーションに形成された金属膜の代わりに、ビアホールを介して接続されてもよい。
【0028】
配線7は、集積回路3のKO端子と端子T2とを接続する配線である。配線7は、基板141上の第2配線層に形成された配線7aと、基板141を貫通するビアホール7bと、基板142上の第3配線層に形成された配線7cと、基板142を貫通するビアホール7dとを含んで構成されている。配線7a及び配線7cは、ビアホール7bにより接続されている。配線7c及び端子T2は、ビアホール7dにより接続されている。
【0029】
配線4、配線5、配線6及び配線7のうち、配線5と配線6とは、それぞれ異なる層において互いに交差する位置に形成されている。配線5は、配線7とは交差しておらず、配線4は、配線6及び配線7のいずれの配線とも交差していない。すなわち、配線5は、図4(c)の破線が示すように、第2配線層に投影されると配線6の少なくとも一部と重なり、かつ配線7と重ならない位置に形成されている。
【0030】
配線5と配線6とが交差する場合には、配線5と配線6との間に寄生容量が生じることにより、配線5において伝送される発振信号と配線6において伝送される発振信号とが互いに干渉する。しかし、配線6において伝送される発振信号の周波数は、配線5において伝送される発振信号の周波数である第1周波数と等しい。したがって、配線5において伝送される発振信号と、配線6において伝送される発振信号とが互いに干渉したとしても、寄生容量が、配線6において伝送される発振信号の特性に及ぼす影響は比較的小さい。そして、配線5は、配線5において伝送される発振信号と異なる周波数の発振信号が伝送される配線7とは交差していないので、配線7において伝送される発振信号の特性に影響を与えない。
【0031】
以上のとおり、本実施形態に係る発振器1は、集積回路3のXOUT端子に接続された配線5と、集積回路3のMO端子に接続された配線6とが異なる配線層において交差しているので、XOUT端子から出力される発振信号とMO端子から出力される発振信号とが干渉し合うことなく、水晶振動子2と集積回路3とを小さな空間内で接続することができる。このようにすることで、発振器1における配線の引き回しの自由度が向上し、発振器1の小型化を実現するとともに、所望の電気的特性を得ることが可能になる。
【0032】
<第2の実施形態>
図5は、第2の実施形態に係る発振器1に設けられている集積回路3のピン配置を示す図である。第2の実施形態に係る集積回路3は、XOUT端子及びGND端子の位置が第1の実施形態と異なり、他の点で同じである。図6は、第2の実施形態に係る発振器1の水平方向の断面図である。図6(a)は、第1の実施形態における図4(b)に対応し、図6(b)は、第1の実施形態における図4(c)に対応する。
【0033】
集積回路3が、図5に示すピン配置を有するので、図6(a)及び図6(b)に示すように、水晶振動子2の第2接続電極25は、パッド5a、基板13に形成されたビアホール5e、及び第2配線層に形成された配線5fを介して集積回路3のXOUT端子に接続されている。この場合、基板13上の第1配線層に配線5bが形成されていなくても、水晶振動子2の第2接続電極25を集積回路3のXOUT端子に接続することができる。
【0034】
しかし、図6(a)に示すように、第1配線層に配線5bを形成してもよい。第1実施形態と同様に、配線5bと配線6との間に寄生容量が存在したとしても、配線5bにおいて伝送される発振信号の周波数と配線6において伝送される発振信号の周波数とが等しいので、寄生容量が、配線6において伝送される発振信号の特性に及ぼす影響は十分に小さい。したがって、例えば、配線5bが形成された基板13を用いることで、図2に示したピン配置の集積回路3、及び図5に示したピン配置の集積回路3のいずれの集積回路3を有する発振器1においても基板13を使用することができる。その結果、さまざまな種類の発振器1で同一の基板13を共用できるので、発振器1の生産効率が向上する。
【0035】
<実験例>
上記の説明のとおり、配線5と配線6とを交差させたとしても、出力される発振信号に与える影響が十分に小さいことを確認するために、XIN端子、XOUT端子、KO端子及びMO端子から選択された2つの端子間にキャパシタを接続した状態で、KO端子から出力される32KHzの信号(以下、KHz帯信号)の波形と、MO端子から出力されるMHz帯の信号(以下、MHz帯信号)の波形を観測する実験を行った。端子間に、c1(pF)、c2(pF)、c3(pF)、c4(pF)の容量値を有する4種類のキャパシタを接続し、それぞれのキャパシタを接続した状態における波形を観測した。なお、c1<c2<c3<c4である。
【0036】
図7は、集積回路3のXIN端子とKO端子との間にキャパシタを接続した場合の、KO端子から出力されるKHz帯信号の波形と、MO端子から出力されるMHz帯信号の波形とを示す図である。XIN端子とKO端子との間にキャパシタを接続した場合は、配線4と配線7とを交差させた場合に対応する。なお、図7に示す波形図は、オシロスコープで実測した波形の傾向を示す図である。
【0037】
図7(a)は、キャパシタの容量がc1(pF)の場合のKHz帯信号の波形を示し、図7(b)は、キャパシタの容量がc1(pF)の場合のMHz帯信号の波形を示している。図7(c)は、キャパシタの容量がc2(pF)の場合のKHz帯信号の波形を示し、図7(d)は、キャパシタの容量がc2(pF)の場合のMHz帯信号の波形を示している。図7(e)は、キャパシタの容量がc3(pF)の場合のKHz帯信号の波形を示し、図7(f)は、キャパシタの容量がc3(pF)の場合のMHz帯信号の波形を示している。なお、キャパシタの容量がc4(pF)の場合には、異常発振が発生した。
【0038】
図7(c)及び図7(e)から明らかなように、キャパシタの容量が増加するにつれて、KHz帯信号に重畳されるノイズの影響が大きくなっている。このノイズは、XIN端子に入力される発振信号が、キャパシタを介してKO信号に重畳されたことに起因すると考えられる。また、キャパシタの容量がc4(pF)の場合には、32KHzにおけるXIN端子とKO端子との間のインピーダンスが小さくなり、KO端子から出力されるKHz帯信号がキャパシタを介してXIN端子に入力されたことに起因して、異常発振が発生したと考えられる。
【0039】
図8は、集積回路3のXOUT端子とKO端子との間にキャパシタを接続した場合の、KO端子から出力されるKHz帯信号の波形と、MO端子から出力されるMHz帯信号の波形とを示す図である。XOUT端子とKO端子との間にキャパシタを接続した場合は、配線5と配線7とを交差させた場合に対応する。なお、図8に示す波形図は、オシロスコープで実測した波形の傾向を示す図である。
【0040】
図8(a)は、キャパシタの容量がc1(pF)の場合のKHz帯信号の波形を示し、図8(b)は、キャパシタの容量がc1(pF)の場合のMHz帯信号の波形を示している。図8(c)は、キャパシタの容量がc2(pF)の場合のKHz帯信号の波形を示し、図8(d)は、キャパシタの容量がc2(pF)の場合のMHz帯信号の波形を示している。図8(e)は、キャパシタの容量がc3(pF)の場合のKHz帯信号の波形を示し、図8(f)は、キャパシタの容量がc3(pF)の場合のMHz帯信号の波形を示している。図8(g)は、キャパシタの容量がc4(pF)の場合のKHz帯信号の波形を示し、図8(h)は、キャパシタの容量がc4(pF)の場合のMHz帯信号の波形を示している。
【0041】
図8(c)、図8(e)及び図8(g)から明らかなように、キャパシタの容量が増加するにつれて、KHz帯信号に重畳されるノイズの影響が大きくなっている。このノイズは、XOUT端子から出力される発振信号が、キャパシタを介してKO信号に重畳されたことに起因すると考えられる。
【0042】
図9は、集積回路3のXOUT端子とMO端子との間にキャパシタを接続した場合の、KO端子から出力されるKHz帯信号の波形と、MO端子から出力されるMHz帯信号の波形とを示す図である。XOUT端子とMO端子との間にキャパシタを接続した場合は、配線5と配線6とを交差させた場合に対応する。なお、図9に示す波形図は、オシロスコープで実測した波形の傾向を示す図である。
【0043】
図9(a)は、キャパシタの容量がc1(pF)の場合のKHz帯信号の波形を示し、図9(b)は、キャパシタの容量がc1(pF)の場合のMHz帯信号の波形を示している。図9(c)は、キャパシタの容量がc2(pF)の場合のKHz帯信号の波形を示し、図9(d)は、キャパシタの容量がc2(pF)の場合のMHz帯信号の波形を示している。図9(e)は、キャパシタの容量がc3(pF)の場合のKHz帯信号の波形を示し、図9(f)は、キャパシタの容量がc3(pF)の場合のMHz帯信号の波形を示している。図9(g)は、キャパシタの容量がc4(pF)の場合のKHz帯信号の波形を示し、図9(h)は、キャパシタの容量がc4(pF)の場合のMHz帯信号の波形を示している。
【0044】
図9(d)、図9(f)及び図9(h)に示されるように、キャパシタの容量が大きくなるにつれて、MHz帯信号に歪が生じるが、KHz帯信号及びMHz帯信号ともに、良好に発振している。
【0045】
なお、集積回路3のXIN端子とMO端子間にキャパシタを接続した場合は、KHz帯信号及びMHz帯信号の両方に異常発振が発生した。XIN端子とMO端子間にキャパシタを接続した場合、水晶振動子2からのMHz帯信号とMO端子からのMHz帯信号とがXIN端子に入力されるので、不安定な動作になると考えられる。
【0046】
以上の実験結果から、集積回路3のXOUT端子とMO端子との間にキャパシタを接続した場合には、KO端子から出力されるKHz帯信号、及びMO端子から出力されるMHz帯信号の両方が、良好な波形を維持できることが確認された。その結果、第1の実施形態及び第2の実施形態のように、配線5と配線6とを交差させることで、配線の引き回しの自由度を向上しつつ、発振器1が出力する発振信号の電気的特性を良好に維持できることを確認できた。
【0047】
<第3の実施形態>
図10は、第3の実施形態に係る発振器1の垂直方向の断面図である。図11は、第3の実施形態に係る発振器1の水平方向の断面図である。第3の実施形態に係る発振器1は、配線5bを含む第1配線層と、配線5d及び配線6aを含む第2配線層との間に、グランドパターン8aが形成されている点で、第1の実施形態に係る発振器1と異なり、他の点で同じである。
【0048】
図11(a)〜図11(e)は、図4(a)〜図4(e)と同一である。図11(f)は、第3の実施形態に係る発振器1が、第1配線層と第2配線層との間に有するグランドパターン8aを示す図である。
【0049】
グランドパターン8aは、基板13における第1配線層と基板141との間のいずれかの位置において、第1配線層に形成された配線5bと第2配線層に形成された配線6aとが交差する領域の近傍を含む領域に形成されている。グランドパターン8aは、グランドパターン8aが形成されている平面において、ビアホール4b及びビアホール5cの近傍、及び基板13の端部の近傍を除く全領域に形成されている。
【0050】
このように、第3の実施形態に係る発振器1は、配線5bが形成された第1配線層と、配線6aが形成された第2配線層との間において、配線5bと配線6aとが交差する領域を少なくとも含む領域に、グランドパターン8aを有する。発振器1がこのような構成を有することにより、配線5bを伝送されるXOUT端子から出力される発振信号と、配線6aを伝送されるMO端子から出力される発振信号とが、第1の実施形態に係る発振器1よりも干渉しづらくなる。したがって、本実施形態に係る発振器1においては、配線の引き回しの自由度がさらに向上し、発振器1のさらなる小型化を実現するとともに、所望の電気的特性を得ることが可能になる。
【0051】
なお、上記の説明においては、グランドパターン8aが、基板13内に形成されている例について説明したが、これに限らない。発振器1が、基板13と基板141との間に他の基板を有し、グランドパターン8aが、基板13と基板141との間に設けられた基板上に形成されていてもよい。
【0052】
図12は、第3の実施形態に係る発振器1の変形例1における水平方向の断面図である。図12は、図12(d)に示すように、基板141と基板142との間の第3配線層にグランドパターン8bが設けられている点で図11と異なり、他の点で同じである。このように、発振器1は、グランドパターン8a及びグランドパターン8bを有してもよい。また、発振器1は、グランドパターン8aを有することなく、グランドパターン8bを有してもよい。
【0053】
図13は、第3の実施形態に係る発振器1の変形例2における水平方向の断面図である。図13(a)〜図13(e)は、図11(a)〜図11(e)と同一である。図13(f)は、図11(f)に示したグランドパターン8aの代わりとしてのグランドパターン8cを示している。グランドパターン8cは、配線5bと配線6aとが交差する領域を少なくとも含み、かつ、グランドパターン8aよりも面積が小さい。このように、第1配線層と第2配線層との間に形成されるグランドパターン8は、配線5bと配線6aとが交差する領域を少なくとも含めば、任意の形状でよい。
【0054】
なお、上記の説明においては、グランドパターン8cが、基板13内に形成されている例について説明したが、これに限らない。発振器1が、基板13と基板141との間に他の基板を有し、グランドパターン8cが、基板13と基板141との間に設けられた基板上に形成されていてもよい。
【0055】
図14は、第3の実施形態に係る発振器1の変形例3における水平方向の断面図である。図14は、図14(d)に示すように、基板141と基板142との間の第3配線層にグランドパターン8bが設けられている点で図13と異なり、他の点で同じである。このように、発振器1は、グランドパターン8b及びグランドパターン8cを有してもよい。また、発振器1は、グランドパターン8cを有することなく、グランドパターン8bを有してもよい。
【0056】
<第4の実施形態>
図15は、第4の実施形態に係る発振器1の水平方向の断面図である。図15(a)及び図15(b)は、図6(a)及び図6(b)と同一である。図15(c)は、第4の実施形態に係る発振器1が、図15(a)に示す第1配線層と図15(b)に示す第2配線層との間に有するグランドパターン8cを示す図である。第4の実施形態に係る発振器1は、グランドパターン8cが設けられている点で、第2の実施形態に係る発振器1と異なり、他の点で同じである。
【0057】
グランドパターン8cは、基板13に形成された配線5bと基板141に形成された配線6aとが交差する領域の近傍を含む領域に形成されている。グランドパターン8cは、グランドパターン8cが形成されている平面において、ビアホール4b及びビアホール5eの近傍、及び基板13の端部の近傍を除く全領域に形成されている。
【0058】
発振器1が、グランドパターン8cを有することで、第3の実施形態に係る発振器1と同様に、配線5bを伝送されるXOUT端子から出力される発振信号と、配線6aを伝送されるMO端子から出力される発振信号とが、第2の実施形態に係る発振器1よりも干渉しづらくなる。
【0059】
図16は、第4の実施形態に係る発振器1の変形例における水平方向の断面図である。図16(a)及び図16(b)は、図15(a)及び図15(b)と同一である。図16(c)は、図13(c)に示した基板17におけるグランドパターン8cの代わりとしてのグランドパターン8dを示している。グランドパターン8dは、配線5bと配線6aとが交差する領域を少なくとも含み、かつ、グランドパターン8cよりも面積が小さい。このように、第1配線層と第2配線層との間に形成されるグランドパターン8は、配線5bと配線6aとが交差する領域を少なくとも含めば、任意の形状でよい。
【0060】
なお、上記の説明においては、グランドパターン8c及び8dが、基板13内に形成されている例について説明したが、これに限らない。発振器1が、基板13と基板141との間に他の基板を有し、グランドパターン8c及び8dが、基板13と基板141との間に設けられた基板上に形成されていてもよい。
【0061】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0062】
例えば、上記の実施形態においては、基板13に第1配線層が形成され、基板14に第2配線層が形成されている場合について説明したが、第1配線層及び第2配線層が同一の基板に形成されていてもよい。
【0063】
また、上記の実施形態においては、圧電振動素子としての水晶振動子2が平板状である場合について説明したが、圧電振動素子は、他の形状や他の種別を有していてもよい。また、上記の実施形態においては、水晶振動子2の下に集積回路3が配置される構成について説明したが、水晶振動子2及び集積回路3が重なり合うことなく配置されていてもよい。
【0064】
また、上記の実施形態においては、第1周波数がMHz帯の周波数であり、第2周波数がKHz帯の周波数であるとして説明したが、第1周波数及び第2周波数は任意の周波数であってよい。
【符号の説明】
【0065】
1・・・発振器
2・・・水晶振動子
3・・・集積回路
4・・・配線
5・・・配線
6・・・配線
7・・・配線
8・・・グランドパターン
11・・・リッド板
12・・・基板
13・・・基板
14・・・基板
21・・・水晶片
22・・・励振電極
23・・・励振電極
24・・・第1接続電極
25・・・第2接続電極
31・・・発振回路
32・・・分周回路
33・・・バッファ
34・・・バッファ
141・・・基板
142・・・基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16