特許第6367684号(P6367684)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6367684農薬活性成分放出制御剤及び徐放性農薬組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367684
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】農薬活性成分放出制御剤及び徐放性農薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 25/10 20060101AFI20180723BHJP
   A01N 25/12 20060101ALI20180723BHJP
   A01N 43/707 20060101ALI20180723BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   A01N25/10
   A01N25/12
   A01N43/707
   A01P7/04
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-215971(P2014-215971)
(22)【出願日】2014年10月23日
(65)【公開番号】特開2016-84288(P2016-84288A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2017年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100081798
【弁理士】
【氏名又は名称】入山 宏正
(72)【発明者】
【氏名】横井 宇
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 信臣
【審査官】 石井 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−513163(JP,A)
【文献】 特開平11−001403(JP,A)
【文献】 特開2001−010901(JP,A)
【文献】 特開平11−79904(JP,A)
【文献】 特開2003−34748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構成単位Aが20〜49.5モル%、下記の構成単位Bが0.5〜30モル%、下記の構成単位Cが5〜48モル%及び下記の構成単位Dが2〜45モル%(合計100モル%)の割合から構成され、数平均分子量が5000〜100000であるポリエステル樹脂を含有して成ることを特徴とする農薬活性成分放出制御剤。
構成単位A:炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸から形成された構成単位及び/又は炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体から形成された構成単位
構成単位B:分子中にスルホン酸塩基を有する炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸の塩から形成された構成単位、分子中にスルホン酸塩基を有する炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体の塩から形成された構成単位、炭素数9〜20の3又は4価の芳香族ポリカルボン酸から形成された構成単位及び炭素数9〜20の3又は4価の芳香族ポリカルボン酸のエステル形成性誘導体から形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上
構成単位C:エチレングリコールから形成された構成単位及び/又はプロピレングリコールから形成された構成単位
構成単位D:炭素数4〜10のジオールから形成された構成単位及び/又は分子中に炭素数2〜4のオキシアルキレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基を有する分子量400〜5000のポリアルキレングリコールから形成される構成単位
【請求項2】
更に下記の樹脂、下記のワックス、有機リン酸エステル及び有機リン酸エステルの塩から選ばれる一つ又は二つ以上を含有して成る請求項1記載の農薬活性成分放出制御剤。
樹脂:ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル-エチレン共重合物、ポリウレタン及びポリオレフィンから選ばれる一つ又は二つ以上
ワックス:カルナバワックス、パラフィンワックス、ヒマシ硬化油、菜種硬化油及びパーム硬化油から選ばれる一つ又は二つ以上
【請求項3】
ポリエステル樹脂20〜80質量%、樹脂、ワックス、有機リン酸エステル及び有機リン酸エステルの塩を合計で20〜80質量%(全合計100質量%)の割合で含有して成る請求項2記載の農薬活性成分放出制御剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つの項記載の農薬活性成分放出制御剤、農薬活性成分及び増量剤を含有して成ることを特徴とする徐放性農薬組成物。
【請求項5】
農薬活性成分放出制御剤100質量部に対し、農薬活性成分1〜500質量部及び増量剤200〜2000質量部を含有して成る請求項4記載の徐放性農薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬活性成分の溶出速度を抑制し、薬効を長期に持続させ、農作物に対する薬害を低減する農薬活性成分放出制御剤及び徐放性農薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農薬活性成分放出制御剤や徐放性農薬組成物として、農薬活性成分に加えてパラフィンワックスや粘度鉱物や界面活性剤等を含有するもの(例えば、特許文献1参照)、農薬活性成分を含む農薬粒剤を熱硬化性樹脂を主成分とする樹脂被膜で被覆するもの(例えば、特許文献2参照)、農薬活性成分をポリ乳酸樹脂で被覆するもの(例えば、特許文献3参照)、粒剤製造時にポリ乳酸樹脂をエマルション化したものを練り合わせるもの(例えば、特許文献4参照)等が提案されている。しかし、これら従来の農薬用活性成分放出制御剤や徐放性農薬組成物には、農薬活性成分の放出制御効果が不十分という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−288803号公報
【特許文献2】特開平11−5704号公報
【特許文献3】特開2002−104904号公報
【特許文献4】特開2005−2081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、農薬活性成分が水溶解度の高いものであっても優れた放出制御効果を示す農薬活性成分放出制御剤及びかかる農薬活性成分放出制御剤を含有する徐放性農薬組成物を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、特定の四つの構成単位が特定の割合から構成された特定の数平均分子量のポリエステル樹脂を含有して成る農薬活性成分放出制御剤が正しく好適であることを見出した。
【0006】
すなわち本発明は、下記の構成単位Aが20〜49.5モル%、下記の構成単位Bが0.5〜30モル%、下記の構成単位Cが5〜48モル%及び下記の構成単位Dが2〜45モル%(合計100モル%)の割合から構成され、数平均分子量が5000〜100000であるポリエステル樹脂を含有して成ることを特徴とする農薬活性成分放出制御剤に係る。また本発明は、かかる農薬活性成分放出制御剤を含有する徐放性農薬組成物に係る。
【0007】
構成単位A:炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸から形成された構成単位及び/又は炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体から形成された構成単位
【0008】
構成単位B:分子中にスルホン酸塩基を有する炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸の塩から形成された構成単位、分子中にスルホン酸塩基を有する炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体の塩から形成された構成単位、炭素数9〜20の3又は4価の芳香族ポリカルボン酸から形成された構成単位及び炭素数9〜20の3又は4価の芳香族ポリカルボン酸のエステル形成性誘導体から形成された構成単位から選ばれる一つ又は二つ以上
【0009】
構成単位C:エチレングリコールから形成された構成単位及び/又はプロピレングリコールから形成された構成単位
【0010】
構成単位D:炭素数4〜10のジオールから形成された構成単位及び/又は分子中に炭素数2〜4のオキシアルキレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基を有する分子量400〜5000のポリアルキレングリコールから形成される構成単位
【0011】
先ず、本発明に係る農薬活性成分放出制御剤(以下、本発明の放出制御剤という)について説明する。本発明の放出制御剤は、前記の構成単位Aが20〜49.5モル%、前記の構成単位Bが0.5〜30モル%、前記の構成単位Cが5〜48モル%及び前記の構成単位Dが2〜45モル%(合計100モル%)の割合から構成され、数平均分子量が5000〜100000であるポリエステル樹脂を含有して成るものである。ポリエステル樹脂中の構成単位の割合は、NMR法により求められ、ポリエステル樹脂を重クロロホルムへ溶解させ、HNMR測定から得られるピーク面積から算出できる。また数平均分子量はGPC法により求められ、分子量は標準ポリスチレンより作成した検量線を用いて算出できる。
【0012】
構成単位Aとしては、1)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸等の、炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸から形成された構成単位、2)フタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジエチル、1,4−ナフタレンジカルボン酸ジメチル等の、炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体から形成された構成単位が挙げられる。
【0013】
構成単位Bとしては、1)スルホフタル酸のアルカリ金属塩、スルホイソフタル酸のアルカリ金属塩、スルホテレフタル酸のアルカリ金属塩、スルホフタル酸のアルカリ土類金属塩、スルホイソフタル酸のアルカリ土類金属塩、スルホテレフタル酸のアルカリ土類金属塩、スルホ=2,6−ナフタレンジカルボン酸のアルカリ金属塩、スルホ=2,3−ナフタレンジカルボン酸のアルカリ金属塩、スルホ=1,4−ナフタレンジカルボン酸のアルカリ金属塩、スルホ=2,6−ナフタレンジカルボン酸のアルカリ土類金属塩、スルホ=2,3−ナフタレンジカルボン酸のアルカリ土類金属塩、スルホ=1,4−ナフタレンジカルボン酸のアルカリ土類金属塩等の、分子中にスルホン酸塩基を有する炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸の塩から形成された構成単位、2)スルホフタル酸ジメチルのアルカリ金属塩、スルホイソフタル酸ジメチルのアルカリ金属塩、スルホテレフタル酸ジメチルのアルカリ金属塩、スルホフタル酸ジメチルのアルカリ土類金属塩、スルホイソフタル酸ジメチルのアルカリ土類金属塩、スルホテレフタル酸ジメチルのアルカリ土類金属塩、スルホ=2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルのアルカリ金属塩、スルホ=2,3−ナフタレンジカルボン酸ジメチルのアルカリ金属塩、スルホ=1,4−ナフタレンジカルボン酸ジメチルのアルカリ金属塩、スルホ=2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルのアルカリ土類金属塩、スルホ=2,3−ナフタレンジカルボン酸ジメチルのアルカリ土類金属塩、スルホ=1,4−ナフタレンジカルボン酸ジメチルのアルカリ土類金属塩等の、分子中にスルホン酸塩基を有する炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体の塩から形成された構成単位、3)トリメリット酸、ピロメリット酸、トリメシン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸等の、炭素数9〜20の3又は4価の芳香族ポリカルボン酸から形成された構成単位、4)トリメリット酸トリメチル、ピロメリット酸テトラメチル、トリメシン酸トリメチル、ベンゾフェノンテトラカルボン酸テトラメチル、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸ジメチル等の、炭素数9〜20の3又は4価の芳香族ポリカルボン酸のエステル形成性誘導体から形成された構成単位が挙げられる。
【0014】
構成単位Cとしては、エチレングリコール、プロピレングリコールから形成された構成単位が挙げられる。
【0015】
構成単位Dとしては、1)1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール等の、炭素数4〜10のジオールから形成された構成単位、2)分子中にオキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン等の炭素数2〜4のオキシアルキレン単位で構成されたポリオキシアルキレン基を有する分子量400〜5000のポリアルキレングリコールから形成される構成単位が挙げられる。
【0016】
本発明の放出制御剤としては、前記したポリエステル樹脂以外に、更に下記の樹脂、下記のワックス、有機リン酸エステル及び有機リン酸エステルの塩から選ばれる一つ又は二つ以上を含有して成るものが好ましい。
【0017】
樹脂:ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル-エチレン共重合物、ポリウレタン及びポリオレフィンから選ばれる一つ又は二つ以上
【0018】
ワックス:カルナバワックス、パラフィンワックス、ヒマシ硬化油、菜種硬化油及びパーム硬化油から選ばれる一つ又は二つ以上
【0019】
前記の有機リン酸エステルとしては、分子中に、1)ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、エイコシル基、ベヘニル基、テトラコシル基、イソステアリル基等の炭素数14〜24の飽和脂肪族炭化水素基、2)ミリストオレイル基、オレイル基、エイコセニル基、テトラコセニル基等の炭素数14〜24の不飽和脂肪族炭化水素基を有するものが挙げられるが、なかでも分子中にステアリル基、ベヘニル基、エイコシル基、オレイル基等の炭素数18〜22の脂肪族炭化水素基を有する有機リン酸エステルが好ましい。
【0020】
また前記の有機リン酸エステルの塩としては、前記した有機リン酸エステルとのアルカリ金属塩、有機アンモニウム塩、アンモニウム塩が挙げられる。具体的には、前記した有機リン酸エステルのカリウム塩、ナトリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩、トリエタノールアンモニウム塩、ジエタノールアンモニウム塩、モノエタノールアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリブチルアンモニウム塩等の有機アンモニウム塩、更にはアンモニウム塩等が挙げられ、なかでもカリウム塩、ナトリウム塩、ジエタノールアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩が好ましい。
【0021】
本発明の放出制御剤は、その組成比率に特に制限はないが、ポリエステル樹脂を20〜80質量%、樹脂、ワックス、有機リン酸エステル及び有機リン酸エステルの塩から選ばれる一つ又は二つ以上を合計で20〜80質量%(全合計100質量%)の割合で含有して成るものが好ましい。
【0022】
次に、本発明に係る徐放性農薬組成物(以下、本発明の農薬組成物という)について説明する。本発明の農薬組成物は、本発明の放出制御剤、農薬活性成分及び増量剤を含有してなるものである。その組成比率に特に制限はないが、本発明の放出制御剤100質量部に対し、農薬活性成分1〜500質量部及び増量剤200〜2000質量部を含有して成るものが好ましい。
【0023】
本発明の農薬組成物に供する農薬活性成分としては、20℃における水溶解度が0.005〜80g/100mlである農薬活性成分であり、その具体例としてピメトロジン(水溶解度=0.03)、カルボフラン(水溶解度=0.03)、メソミル(水溶解度=5.79)、エチオフェンカルブ(水溶解度=0.18)、アセフェート(水溶解度=79.0)、ジメトエート(水溶解度=2.5)、チオシクラム(水溶解度=8.0g)、ピリミカーブ(水溶解度=0.3)、オキサミル(水溶解度=28.0)等の殺虫剤、シモキサニル(水溶解度=0.1)、ヒドロキシイソキサゾール(水溶解度=8.5)、メタラキシル(水溶解度=0.71)、ホセチルアルミ(水溶解度=12.0)、イミノクタジン酢酸塩(水溶解度=76.4)、ダゾメット(水溶解度=0.3)、ジメチリモール(水溶解度=0.12)、ピロキロン(水溶解度=0.4)等の殺菌剤、アロキシジム(水溶解度>200)、ジメタクロール(水溶解度=0.2)、セトキシジム(水溶解度=0.47)、ニコスルフロン(水溶解度=0.007)、ジクワット(水溶解度=70)等の除草剤、ジクロルプロップ(水溶解度=0.035)、ダミノジット(水溶解度=10)等の植物成長調節剤等が挙げられる。農薬活性成分としては、以上例示したような農薬活性成分から選ばれる一つ又は二つ以上を使用できる。また本発明の農薬組成物に供する増量剤としては、1)ベントナイト、タルク、クレー、珪藻土、無晶形二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の無機質微粉体、2)硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化カリウム、尿素等の低分子水溶性化合物、3)グルコース、果糖、蔗糖、乳糖等の糖類、4)微結晶セルロース、木粉、米糠、ふすま、モミガラ等の有機質粉末等が挙げられ、なかでも無機質微粉体が好ましい。
【0024】
本発明の農薬組成物は、公知の方法により作製できる。例えば、1)本発明の放出制御剤、農薬活性成分、増量剤及び水を撹拌混合機を用いて混練し、その混合物を造粒機を用いて造粒して造粒物とした後、乾燥する方法、2)農薬活性成分、増量剤及び水を撹拌混合機を用いて混練し、その混合物を造粒機を用いて造粒して乾燥した後、本発明の放出制御剤を用いてコーティングする方法、3)本発明の放出制御剤、増量剤及び水を撹拌混合機を用いて混練し、その混合物を造粒機を用いて造粒物とした後、その造粒物に農薬活性成分を含浸、吸着させ、乾燥する方法等が挙げられ、いずれの方法においても各成分の混合順序を入れ替えることができる。ここで撹拌混合機としては、ナウタミキサー、リボンブレンダー、ロータリーブレンダー、V型混合機等を適用でき、また造粒機としては押出し造粒機、混合造粒機、転動造粒機、流動層造粒機等を適用できる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明した本発明によると、農薬活性成分が水溶解度の高いものであっても優れた放出制御効果を発揮する。
【実施例】
【0026】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれら実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0027】
試験区分1(ポリエステル樹脂の合成)
・ポリエステル樹脂(P−1)、(P−3)、(P−4)及び(RP−1)〜(RP−4)の合成
テレフタル酸ジメチル81.56g(0.42モル)、イソフタル酸ジメチル81.56g(0.42モル)、5−スルホイソフタル酸ジメチル=ナトリウム11.2g(0.04モル)、エチレングリコール9.93g(0.16モル)、1,6−ヘキサンジオール127.65g(1.08モル)、ジエチレングリコール33.96g(0.32モル)及びエステル交換触媒としてテトラブチルチタネート(IV)0.15gを反応容器に仕込み、反応容器内を窒素置換した後、常圧化で200℃に昇温し、副生するメタノールを留去しながら2時間エステル交換反応を行い、更に230℃まで昇温して2時間エステル交換反応を行った。次に250℃まで昇温後、徐々に反応容器内を減圧して15分後に100Paとし、同減圧下で30分間重縮合反応を行い、ポリエステル樹脂180gを得た。このポリエステル樹脂を重クロロホルムに溶解させ、NMR分析を行うと、構成単位Aのテレフタル酸ジメチルから形成された構成単位を24モル%、イソフタル酸ジメチルから形成された構成単位を24モル%、構成単位Bの5−スルホイソフタル酸ジメチル=リチウムから形成された構成単位を2モル%、構成単位Cのエチレングリコールから形成された構成単位を5モル%、構成単位Dの1,6−ヘキサンジオールから形成された構成単位を35モル%、ジエチレングリコールから形成された構成単位を10モル%(合計100モル%)の割合で有していて、GPC分析を行い、標準ポリスチレンを用いた検量線から算出された数平均分子量は10000のものであった。これをポリエステル樹脂(P−1)とした。同様にして、表1に記載のポリエステル樹脂(P−3)、(P−4)及び(RP−1)〜(RP−4)を合成した。
【0028】
・ポリエステル樹脂(P−2)、(P−5)及び(RP−5)、(RP−6)の合成
テレフタル酸86.39g(0.52モル)、イソフタル酸59.80g(0.36モル)、エチレングリコール33.53g(0.54モル)、1,4−ブタンジオール107.24g(1.19モル)及びエステル化触媒として酢酸亜鉛(II)・二水和物0.12gを反応容器に仕込み、反応容器内を窒素置換した後、窒素にて0.5MPaまで加圧し、220℃で2時間保持した。反応容器内を徐々に常圧に戻し、副生する水を留去しながら2時間エステル化反応を行い、更に230℃まで昇温して1時間エステル化反応を行った。次に260℃まで昇温後、徐々に反応容器内を減圧して15分後に100Paとし、同減圧下で30分間重縮合反応を行ったところで窒素にて常圧に戻し、230℃まで冷却した。冷却後、トリメリット酸23.06g(0.12モル)を加えて反応容器を密閉し、撹拌しながら1時間解重合反応を行い、ポリエステル樹脂200gを得た。このポリエステル樹脂を前記のNMR法により分析すると、構成単位Aのテレフタル酸から形成された構成単位を26モル%、イソフタル酸から形成された構成単位を18モル%、構成単位Bのトリメリット酸から形成された構成単位を6モル%、構成単位Cのエチレングリコールから形成された構成単位を15モル%、構成単位Dの1,4−ブタンジオールから形成された構成単位を35モル%(合計100モル%)の割合で有していて、前記のGPC法により求められた数平均分子量は44000のものであった。これをポリエステル樹脂(P−2)とした。同様にして、表1に記載のポリエステル樹脂(P−5)及び(RP−5)、(RP−6)を合成した。

















【0029】
【表1】
【0030】
表1において、
A−1:テレフタル酸ジメチルから形成された構成単位
A−2:テレフタル酸から形成された構成単位
A−3:イソフタル酸ジメチルから形成された構成単位
A−4:イソフタル酸から形成された構成単位
A−5:2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルから形成された構成単位
A−6:2,6−ナフタレンジカルボン酸から形成された構成単位
B−1:5−スルホイソフタル酸ジメチル=ナトリウムから形成された構成単位
B−2:5−スルホイソフタル酸ジメチル=リチウムから形成された構成単位
B−3:5−スルホ−1,4−ナフタレンジカルボン酸=ナトリウムから形成された構成単位
B−4:トリメリット酸から形成された構成単位
C−1:エチレングリコールから形成された構成単位
C−2:1,3−プロパンジオールから形成された構成単位
D−1:1,8−オクタンジオールから形成された構成単位
D−2:1,6−ヘキサンジオールから形成された構成単位
D−3:1,4−ブタンジオールから形成された構成単位
D−4:ジエチレングリコールから形成された構成単位
D−5:ポリエチレングリコール(Mw=3400)から形成された構成単位
【0031】
試験区分2(ポリエステル樹脂エマルションの調製)
・ポリエステル樹脂(P−1)、(P−3)、(P−4)及び(RP−1)〜(RP−4)のエマルションの調製
試験区分1で合成したポリエステル樹脂(P−1)40部及びテトラヒドロフラン105部を容器に仕込み、室温で混合して均一溶液とした。次に、この均一溶液を室温で撹拌しながら、これに室温の水120部を徐々に滴下して、ポリエステル樹脂−テトラヒドロフラン−水の分散系を得た。さらにこの分散系を撹拌しながら、容器内を常圧下にて60〜80℃とし、テトラヒドロフランを留去して、ポリエステル樹脂(P−1)の固形分濃度25%のエマルションを得た。同様にして、ポリエステル樹脂(P−3)、(P−4)及び(RP−1)〜(RP−4)の固形分濃度25%のエマルションを調製した。
【0032】
・ポリエステル樹脂(P−2)、(P−5)及び(RP−5)、(RP−6)のエマルションの調製
純水240部及びイソプロピルアルコール60部を容器に仕込み、撹拌しながら、試験区分1で合成したポリエステル樹脂(P−2)100部を投入した。次にこのポリエステル樹脂の酸価に対して1.5倍当量の25%アンモニア水4部を投入して、ポリエステル樹脂−イソプロピルアルコール−水の分散系とした。さらにこの分散系を撹拌しながら、容器内を常圧下にて80℃まで加温し、イソプロピルアルコールを留去した。留去はイソプロピルアルコールの1.5倍量のイソプロピルアルコールと水との混合物を回収して終了した。留去後、容器内を20℃まで冷却して、ポリエステル樹脂(P−2)の固形分濃度30%のエマルションを得た。同様にして、ポリエステル樹脂(P−5)及び(RP−5)、(RP−6)の固形分濃度30%のエマルションを調製した。
【0033】
試験区分3(農薬活性成分放出制御剤及び徐放性農薬組成物の調製)
・実施例1〜3、7、8及び比較例1〜9
試験区分2で調製したポリエステル樹脂(P−1)の固形分濃度25%のエマルション160部(固形分として40部)とカルナバワックスの固形分30%のエマルション200部(固形分として60部)とを混合し、実施例1の農薬活性成分放出制御剤を調製した。次に農薬活性成分としてピメトロジン80部、増量剤としてクレー260部、珪藻土550部及び結合剤としてキサンタンガム10部を混合した後、前記で調製した実施例1の農薬活性成分放出制御剤100部を添加して徐放性農薬組成物を調製した。これに適量の水を加えて十分混練し、その混練物を目開き1.2mmのスクリーンを装着したバスケット型造粒器(筒井理化学器械社製のKAR−75形)に供し、押出し成形した。押出し成形物を2〜4mmの長さに切断した後、105℃の恒温器にて2時間乾燥し、農薬粒剤を製造した。同様にして、表2に記載の実施例2、3、7、8及び表3に記載の比較例1〜9の農薬活性成分放出制御剤を調製し、更に徐放性農薬組成物を調製して、農薬粒剤を製造した。
【0034】
・実施例4〜6、9及び比較例10〜16
試験区分2で調製したポリエステル樹脂(P−1)の固形分濃度25%のエマルション296部(固形分として74部)と酢酸ビニルの固形分濃度55%のエマルション47.3部(固形分として26部)とを混合し、実施例4の農薬活性成分放出制御剤を調製した。次に調製した実施例4の農薬活性成分放出制御剤100部、農薬活性成分としてピメトロジン107部を混合した後、増量剤として珪藻土462部を混合し、徐放性農薬組成物を調製した。これに適量の水を加えて十分混練し、その混練物を目開き1.2mmのスクリーンを装着したバスケット型造粒器(筒井理化学器械社製のKAR−75形)に供し、押出し成形した。押出し成形物を2〜4mmの長さに切断した後、54℃の恒温器にて4時間乾燥し、農薬粒剤を製造した。同様にして、表2に記載の実施例5、6、9及び表3に記載の比較例10〜16の農薬活性成分放出制御剤を調製し、更に徐放性農薬組成物を調製して、農薬粒剤を製造した。
【0035】
・実施例10及び比較例17、18
農薬活性成分としてピメトロジン50部、増量剤としてクレー640部、珪藻土200部及び結合剤としてカルボキシメチルセルロース10部を混合した。これに適量の水を加えて十分混練し、その混練物を目開き1.2mmのスクリーンを装着したバスケット型造粒器(筒井理化学器械社製のKAR−75形)に供し、押出し成形した。押出し成形物を2〜4mmの長さに切断した後、54℃の恒温器にて4時間乾燥した。次にパン型造粒器(アズワン社製、DPZ−01型)へ乾燥物を投入し、40〜50℃にて転動させながら、試験区分2で調製したポリエステル樹脂の固形分濃度25%のエマルション(P−3)をスプレーした。被覆量がポリエステル樹脂(P−3)の固形分として100部となるまでスプレーと乾燥を繰り返し、徐放性農薬組成物を調製すると同時に農薬粒剤を製造した。
【0036】
試験区分4(農薬粒剤の評価)
・溶出率の評価
溶出試験器(宮本理研工業社製のPJ−62N型)のフラスコにイオン交換水1000gを量りとり、水槽温度を40℃、シャフト回転速度を40rpmに設定した。水槽温度が40℃に達した時点で、シャフトを停止させ、試験区分3で製造した農薬粒剤200mgを投入した。1時間後及び4時間後にフラスコ中心部より採水し、その採取した水中の農薬活性成分濃度を液体クロマトグラフィーで測定して、溶出した農薬活性成分量を算出した。供試した農薬粒剤中の農薬活性成分が完全に溶出した場合の濃度を溶出率100%として溶出率を算出し、下記の基準で評価した。
◎:溶出率が35%未満
○:溶出率が35%以上55%未満
△:溶出率が55%以上75%未満
×:溶出率が75%以上90%未満
××:溶出率が90%以上
























【0037】
【表2】






















【0038】
【表3】
【0039】
表2及び表3において、
農薬活性成分、増量剤及びその他の割合(部):農薬活性成分放出制御剤100質量部に対する部
P−1〜P−5,RP−1〜RP−6:表1に記載のポリエステル樹脂
H−1:カルナバワックスエマルション(融点:85℃)
H−2:酢酸ビニルの固形分濃度55%のエマルション(Tg:30℃)
H−3:ウレタン樹脂の固形分濃度30%のエマルション(Tg:40℃)
H−4:オレフィン樹脂の固形分濃度30%のエマルション(Tg:20℃)
H−5:ベヘニルリン酸=カリウムの固形分濃度28%のエマルション
H−6:粉末カルナバワックス(融点:85℃)
H−7:ポリ乳酸樹脂(融点:165℃)
I−1:ピメトロジン(水溶解度270ppm)
J−1:クレー
J−2:珪藻土
J−3:ベントナイト
K−1:キサンタンガム
K−2:カルボキシメチルセルロース
K−3:ジアルキルスルホコハク酸塩
※1:乳化しなかったので測定しなかった