特許第6367695号(P6367695)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367695
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】空気清浄機
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20180723BHJP
   F24F 7/00 20060101ALI20180723BHJP
   B27M 1/00 20060101ALI20180723BHJP
   B27M 3/00 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   A61L9/01 H
   A61L9/01 M
   F24F7/00 A
   B27M1/00 B
   B27M1/00 Z
   B27M3/00 A
   B27M3/00 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-237090(P2014-237090)
(22)【出願日】2014年11月5日
(65)【公開番号】特開2016-87385(P2016-87385A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】510260961
【氏名又は名称】古田 元
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(72)【発明者】
【氏名】古田 元
【審査官】 松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−038142(JP,A)
【文献】 特開2015−021724(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0044339(US,A1)
【文献】 特開平08−294610(JP,A)
【文献】 特開2013−014869(JP,A)
【文献】 特開2012−254301(JP,A)
【文献】 特開2006−175404(JP,A)
【文献】 特開2007−296460(JP,A)
【文献】 特開平09−099049(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00− 9/22
B27M 1/00− 3/38
F24F 7/00− 7/007
F24F 13/00− 13/078
B01D 39/00− 41/04
B01J 20/00− 20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気取り入れ部と、スギ・ヒノキの木材を加工した複数のフィルター部と、空気排出部を備えた空気清浄機であって、
前記空気取り入れ部には、シロッコファンが設置されており、
前記複数のフィルター部は、スギ・ヒノキの木材の木口面を利用しており、前記空気取り入れ部から取り入れた空気を前記空気排出部に送るための空気通過機能として、スギ・ヒノキの木材の木口面に複数の空気通過口(φ5mm〜φ6mm)を備えた前記複数のフィルター部が空間部を介在させつつ、前記空気排出部から前記空気取り入れ部の間に積層されていることを特徴とする空気清浄機。
【請求項2】
空気取り入れ部と、スギ・ヒノキの木材を加工した複数のフィルター部と、空気排出部を備えた空気清浄機であって、
前記空気取り入れ部には、シロッコファンが設置されており、
前記複数のフィルター部は、スギ・ヒノキの木材の木口面を利用しており、前記空気取り入れ部から取り入れた空気を前記空気排出部に送るための空気通過機能として、スギ・ヒノキの木材の木口面の中央部にφ30mm〜φ40mmの空気通過口を備えた前記フィルター部と、スギ・ヒノキの木材の木口面の四隅に空気通過口を備えた前記フィルター部を、空間部を介在させつつ、前記空気排出部から前記空気取り入れ部の間に交互に積層させていることを特徴とする空気清浄機。
【請求項3】
前記複数のフィルター部は、上面、及び下面が凹溝加工されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気清浄機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気の浄化、殺菌、調湿作用を有する空気清浄機に関する。さらに言えばスギ・ヒノキ等の木材が持つ特性を利用することにより空気の浄化作用のみならず、殺菌作用、調湿作用、さらには精神安定効果、リラックス効果も有する空気清浄機に関する。
【背景技術】
【0002】
森林には、大気浄化作用があることが知られているが、木材そのもの(特にスギの木・ヒノキ)も同様に大気浄化作用がある。即ち、木材そのもの(スギの木やヒノキ)は、大気汚染物質、タバコ等に含まれるホルムアルデヒドやオゾン等の有害物質や生活臭を効果的に吸収することが知られている。さらに、木材に含まれる精油の成分には、人に有益なフィトンチッド(殺菌作用がある)が多く含まれており、抗菌、防虫効果もある。さらに、スギの甘い豊かな芳香は、脳と自律神経に直接作用して鎮静、リラックス効果があると言われている。
【0003】
一方、空気清浄機とは、空気中に浮遊する塵埃や花粉、ハウスダスト等を除去するための機器であり、エアクリーナーとも言う。現在、一般的な家電製品として流通している空気清浄機の多くは、花粉症対策としての需要が大きく、微粒子である花粉、及び臭気を取り除く機能を有している。ファン式空気清浄機は、現在の主流となっている方式で、扇風機やエアコンと同じようにファンによって強制的に空気を吸い込んで、フィルターで濾過し、浄化された空気を吹き出す方式である。空気清浄機は、目の細かい不織布のフィルターで微粒子を集塵・濾過し、臭いについては活性炭等で吸着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−230831
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
木材を原料とした室内の揮発性有機化合物の吸収材として、特許文献1には、「木材を800〜3000℃で焼いた高温焼成木質炭と、木材を400℃以上〜800℃未満の温度で焼いた低温焼成木質炭とを重量割合で10:100〜100:1の割合で混合した混合木質炭を含む吸着材、および前記の混合木質炭を、包袋に収容し、さらに該収容体を支持材にて保持してなるホルムアルデヒドなどの揮発性有機化合物の吸着材、および前記の吸着材を使用する室内の揮発性有機化合物の除去法。(特許文献1:要約の解決手段)」が記載されている。
【0006】
特許文献1に係る発明は、木材を原料として使用して室内の揮発性有機化合物を除去する方法であって、本発明のように、空気浄化作用のみならず、殺菌作用、調湿作用、さらには精神安定効果、リラックス効果も有するものではない。出願人らは、木材そのもの(特にスギの木・ヒノキ)の有する特性に着目し、鋭意研究を重ねた結果、空気浄化作用だけでなく、殺菌作用、調湿作用、消臭効果、さらには、リラックス効果を生かした空気清浄機を発明するに至った。
【0007】
本発明の目的は、国産材スギ・ヒノキ等の木材が持つ特性を利用することにより空気浄化作用のみならず、殺菌作用、調湿作用、消臭効果、さらには精神安定効果、リラックス効果も有する空気清浄機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本願請求項1に記載された発明は、空気取り入れ部と、スギ・ヒノキの木材を加工した複数のフィルター部と、空気排出部を備えた空気清浄機であって、前記空気取り入れ部には、シロッコファンが設置されており、前記複数のフィルター部は、スギ・ヒノキの木材の木口面を利用しており、前記空気取り入れ部から取り入れた空気を前記空気排出部に送るための空気通過機能として、スギ・ヒノキの木材の木口面に複数の空気通過口(φ5mm〜φ6mm)を備えた前記複数のフィルター部が空間部を介在させつつ、前記空気排出部から前記空気取り入れ部の間に積層されている空気清浄機であることを特徴とするものである。
【0009】
本願請求項2に記載された発明は、 空気取り入れ部と、スギ・ヒノキの木材を加工した複数のフィルター部と、空気排出部を備えた空気清浄機であって、前記空気取り入れ部には、シロッコファンが設置されており、前記複数のフィルター部は、スギ・ヒノキの木材の木口面を利用しており、前記空気取り入れ部から取り入れた空気を前記空気排出部に送るための空気通過機能として、スギ・ヒノキの木材の木口面の中央部にφ30mm〜φ40mmの空気通過口を備えた前記フィルター部と、スギ・ヒノキの木材の木口面の四隅に空気通過口を備えた前記フィルター部を、空間部を介在させつつ、前記空気排出部から前記空気取り入れ部の間に交互に積層させている空気清浄機であることを特徴とするものである。
【0010】
本願請求項3に記載した発明は、請求項1または請求項2に記載した発明において、前記複数のフィルター部は、上面、及び下面が凹溝加工されている空気清浄機であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、室内空気の浄化作用が図られ、大気汚染物質、そして、化学物質過敏症の人が罹る喘息等の呼吸器疾患の主因である二酸化窒素(NO)、ホルムアルデヒド、オゾン、PM2.5を吸収し、室内空気を浄化するのみならず、室内湿度を調整することができるようになった。室内湿度を50%〜60%に調整することができるのでインフルエンザ菌の繁殖を抑え、カビの発生やダニの活性化を抑えることができるようになった。そして、フィトンチッドによる殺菌作用以外にも、木材(特にスギの木・ヒノキ)が放出するセドロール、天然セキステルベン類による効果として鎮静効果・リラックス効果が期待できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】空気清浄機の正面図、及びフィルター部の上面図である。
図2】他の実施例(凹溝フィルター)に係る空気清浄機の正面図、及びフィルター部の上面図である。
図3】他の実施例(チップ材)に係る空気清浄機を表す正面図である。
図4】スギ木口面利用のフィルター部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<空気清浄機の構造>
以下、本発明に係る空気清浄機10について、図1図4を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明に係る空気清浄機10の正面図、及びフィルター部30の上面図である。
【0015】
本発明に係る空気清浄機10は、図1の正面図に記載したように、空気取り入れ部20と、木材を加工した複数のフィルター部30と、空気排出部40を備えており、空気取り入れ部20は、扇風機やエアコンと同じようにファンによって、空気清浄機10の外部から、空気取り入れ口を通過させて、強制的に空気を吸い込むようになっている。使用されるファンは、空気の押し出しに向くプロペラファン(扇風機等のファン)ではなく、吸い込みに適するシロッコファン(天井据付式の換気扇等に使われる)である。
【0016】
フィルター部30の上面図(図1)に記載したように、フィルター部30は、スギ、ヒノキの木口面(木材を水平にスライスした断面=図1上面図で年輪が見える)を利用している。木口面と板目面(木材を垂直にスライスした断面)では、樹木の軸方向に長い構造をしている仮道管(長さ3mm程度、縦幅、横幅共に数十μm程度)の切断面である木口面の方が空気の浄化能力が大きいことが研究により明らかになっており、本発明に係る空気清浄機10のフィルター部30として使用する際、かかる微細構造に関する研究事実を考慮した。フィルター部30を空気が通過できるようにするため、空気通過口80として、φ5mm〜φ6mmの穴を複数箇所(80箇所〜90箇所)に穿設している。
【0017】
本発明に係る空気清浄機10は複数のフィルター部30を、空間部60を挟みつつ、多段式に積層している(50〜60段)ことに特徴がある。空気はフィルター部30を通過して、空間部60を通過して、また次のフィルター部30を通過するようになっている。空間部60には、木材(スギ・ヒノキ等)が有する精油成分が放出されて蓄積されている。空間部60があることにより、空気清浄機10内の空気の流れを変え、空気の浄化能力が大きいとされる木口面全体に万遍なく、空気を接触させ、より多くスギの木・ヒノキの持つ特性を引き出すようにすることができる。要するに、スギの木・ヒノキ等で構成された複数のフィルター部30を循環風が通過する時、循環風は、木材と多大な接触面積を持ち、スギ・ヒノキ等の木の持つ人に有益な成分や特性(有害物質等の吸着、木材の香りを含んだ等)を含んだ新しい風に生まれ変わるわけである。
【0018】
フィルター部30は、樹木の軸方向に長い構造をしている仮道管(長さ3mm程度、縦幅、横幅共に数十μm程度)の切断面であるため、空気の浄化能力が大きいとされるスギ木口面を使用しており、大気汚染物質、化学物質過敏症の人が罹る喘息等の呼吸器疾患の主因である二酸化窒素(NO)、ホルムアルデヒド、オゾン、PM2.5等を吸収し、固定する機能を有している。そして、複数の(50段〜60段程度)フィルター部30を通過した浄化された空気は、空気排出部40から、空気清浄機10の外へと流れ出す。この時、スギの甘い豊かな芳香(セドロール、天然セキステルベン等)も伴って、空気清浄機10の外(室内)へと流れ出す。
【0019】
<空気清浄機の他の実施例>
以上、本発明に係る空気清浄機10の構造について説明したが、以下に、本発明に係る空気清浄機10の他の実施例について説明する。図2は、他の実施例(凹溝フィルター)に係る空気清浄機10の正面図、及びフィルター部30の上面図である。
【0020】
図2における実施例では、フィルター部30の形状に特徴がある。即ち、フィルター部30の上面、及び下面が凹溝70加工されている。フィルター部30の上面、及び下面に凹溝70加工することで、フィルター部30の有する表面積が増える。フィルター部30と空気清浄機10内を流れる空気との接触面積を増やすことで、木材(特にスギ・ヒノキ)の持つ特性をさらに引き出すことができる。
【0021】
さらに、図2における実施例では、空気通過機能50として、空気通過口80の位置を変えた2種類のフィルターを交互に設置している。即ち、図2の上面図(上)に記載したように、フィルター部30の略中央部にφ30mm〜Φ40mmの空気通過口80を設置したものと、図2の上面図(下)に記載したように、フィルター部30の四隅に空気通過口を設置したものである。これらが空間部60を介在させつつ、交互に繰り返すように積層されている。空気清浄機10内の空気の流れを変え、空気の浄化能力が大きいとされる木口面全体に万遍なく、空気清浄機10内を流れる空気を接触させ、より多くスギ・ヒノキの持つ特性を引き出すようにするためである。
【0022】
図3における実施例では、フィルター部30に木材をチップ状に加工したものを設置している。チップ材自体は木材との比較において、密度が疎であるため、空気取り入れ部20からフィルター部30に流れてきた空気を通過させることができる。即ち、チップ状に加工したフィルター部30は、これ自体が空気通過機能50を有している。
<空気清浄機の効果>
【0023】
図4は、スギ木口面利用の空気清浄機10のフィルター部30の斜視図である。本発明に係る空気清浄機10のフィルター部30としては、樹木の軸方向に長い構造をしている仮道管(縦幅、横幅共に数十μm程度)の切断面であるため、空気の浄化能力が板目面よりも大きいとされるスギ・ヒノキ木口面を利用した木材(スギ・ヒノキ)を使用している。スギ・ヒノキ木口面利用の空気清浄機10のフィルター部30は内部(微細構造)に、二酸化窒素(NO)を吸着し固定する機能、室内の有害化学物質(ホルムアルデヒド等)を吸着し固定する機能、湿気を吸放出する機能を有し、それ以外にも、脳と自律神経に直接作用して鎮静・リラックス効果があるとされるセドロール、天然セキステルベン類等を放出する。
【0024】
これらの機能により、室内空気の浄化作用が図られ、大気汚染物質、そして、化学物質過敏症の人が罹る喘息等の呼吸器疾患の主因であるNO、ホルムアルデヒド、オゾン、PM2.5等を吸収し、室内空気を浄化するのみならず、室内湿度を調整することができるようになった。即ち、室内湿度を、人間が生活するのに最も好ましいとされる50%〜60%に調整できるのでインフルエンザ菌の繁殖を抑え(湿度50%になるとインフルエンザの97%が死滅する)、カビの発生やダニの活性化(湿度70%以上で活性化する)を抑えることができるし、結果として、近年深刻な問題として注目されている幼児のアトピーによる肌荒れ(乾燥し過ぎによる)やアトピー性喘息(多湿気による)も抑えることができる。
【0025】
そして、木材(特にスギの木・ヒノキ)が放出するセドロール、天然セキステルべン類(αビネン)による効果として、鎮静効果・リラックス効果が期待できる。さらに、木材(特にスギの木・ヒノキ)が含有する精油の成分に含まれるフィトンチッドによる殺菌効果もある。これらの効果は人体に対して安全な天然物質によるものであるため副作用の心配が全く無いと言える。
【0026】
<空気清浄機の変更例>
本発明に係る空気清浄機10は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、空気取り入れ部20、フィルター部30、空気排出部40、空気通過機能50、空間部60、凹溝70、空気通過口80等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係る空気清浄機は、上記の如く優れた効果を奏するものであるので、空気浄化作用のみならず、殺菌作用、調湿作用、さらには精神安定効果、リラックス効果も有する空気清浄機に関する分野で好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0028】
10・・空気清浄機
20・・空気取り入れ部
30・・フィルター部
40・・空気排出部
50・・空気通過機能
60・・空間部
70・・凹溝
80・・空気通過口
図1
図2
図3
図4