(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367717
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】誘発されたキャビテーションによって駆動される高速オンデマンド型液滴生成および単一細胞封入
(51)【国際特許分類】
B01J 19/00 20060101AFI20180723BHJP
B81B 1/00 20060101ALI20180723BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20180723BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20180723BHJP
C12M 1/42 20060101ALI20180723BHJP
C12N 11/14 20060101ALI20180723BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20180723BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
B01J19/00 321
B81B1/00
B81B3/00
C12M1/00 A
C12M1/42
C12N11/14
C12Q1/02
G01N37/00 101
【請求項の数】14
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2014-556753(P2014-556753)
(86)(22)【出願日】2013年2月8日
(65)【公表番号】特表2015-508705(P2015-508705A)
(43)【公表日】2015年3月23日
(86)【国際出願番号】US2013025434
(87)【国際公開番号】WO2013120016
(87)【国際公開日】20130815
【審査請求日】2016年2月5日
【審判番号】不服2017-13373(P2017-13373/J1)
【審判請求日】2017年9月8日
(31)【優先権主張番号】13/370,196
(32)【優先日】2012年2月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ペイ−ユ・チョウ
(72)【発明者】
【氏名】ティン−シアン・エス・ウー
(72)【発明者】
【氏名】スン−ヨン・パク
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・エー・テイテル
【合議体】
【審判長】
川端 修
【審判官】
國島 明弘
【審判官】
原 賢一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2011/0030808(US,A1)
【文献】
特表2007−515936(JP,A)
【文献】
特開平5−240872(JP,A)
【文献】
特開2004−65110(JP,A)
【文献】
特開2001−158099(JP,A)
【文献】
特開2009−100698(JP,A)
【文献】
特表2003−514236(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/092845(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0128006(US,A1)
【文献】
Park, Sung−Yong,A PULSE LASER−DRIVEN MICROFLUIDIC DEVICE FOR ULTRA−FAST DROPLET GENERATION ON DEMAND AND SINGLE−CELLS ENCAPSULATION ,14th international Conference on Miniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences, Groningen, The Netherlands, 2010, p.2129−2131
【文献】
Park, Sung−Yong,High−speed droplet generation on demand driven by pulse laser−induced cavitation.,Lab on a chip,2011
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J13/,B01J19/,B01L3/,B81B,C12M1/,G01N37/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスにおいて制御された体積を有する液滴を生成するための方法であって:
第1流体を含む第1流体管路、
第2流体を含む第2流体管路、
第3流体を含む第3流体管路、
前記第1流体管路と前記第2流体管路との間に挿入された可撓性膜、および
前記第2流体管路と前記第3流体管路との間の開口部
を提供するステップと、
前記第1流体管路中で、前記可撓性膜の一部分を前記第2流体管路中に弾性変形させるキャビテーション気泡を生成させるステップであって、前記可撓性膜の前記一部分の前記弾性変形は、前記開口部を超えて前記第3流体管路中に制御された体積の前記第2流体を押し出すために十分な速度を前記第2流体の一部に付与し、前記第3流体管路中に液滴を形成するステップと、を備える方法。
【請求項2】
前記第2流体および前記第3流体が非混和性流体である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記キャビテーション気泡が、ある体積の第1流体レーザーパルスの照射によって生成される、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記第2流体管路中の流体をモニタリングし、そのようなモニタリングによって生じたデータをコントローラに伝達するステップをさらに含み、前記コントローラが、パルスレーザーによって放射されるパルスの発生のタイミング、パルスレーザーによって放射されるパルスの発生の周波数、パルスレーザーによって放射されるパルスの波長、パルスレーザーによって放射されるパルスのエネルギー、およびパルスレーザーによって放射されるパルスの照準または場所の少なくとも1つを制御する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記第2流体が粒子又は細胞を含み、前記粒子又は細胞は押し出された前記液滴中に封入される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
複数の別個のさらなるキャビテーション気泡を少なくとも1000Hzの周波数で生成させるステップをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記液滴の体積が約500ナノリットル以下、または約200pL以下である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記方法を1kHz以上の周波数で繰り返す、請求項1記載の方法。
【請求項9】
制御された体積を有する液滴を生成するためのデバイスであって:
第1流体管路;
第2流体管路;
第3流体管路;
前記第1流体管路と前記第2流体管路との間に挿入された可撓性膜であって、前記第1流体管路中の流体における気泡の形成が、前記可撓性膜の一部を弾性変形させる力を誘導するように配置された、前記可撓性膜;
前記第2流体管路と前記第3流体管路との間の開口部であって、前記可撓性膜の一部の弾性変形が第2流体に対して力を誘発し、それによって前記開口部を通って前記第2流体管路から前記第3流体管路中に制御された体積の前記第2流体を押し出し、前記第3流体管路中に液滴を形成するように配置された、前記開口部;および
前記第1流体管路中の前記流体における前記気泡の一時的形成を誘発するエネルギーを方向づけるように動作可能に構成されたコントローラ
を含む、デバイス。
【請求項10】
前記コントローラによって、前記エネルギーがプログラム可能なタイミングで方向づけられることが可能になる、請求項9記載のデバイス。
【請求項11】
前記デバイスは、前記エネルギーを発生させるためのパルスレーザーを備える、請求項9記載のデバイス。
【請求項12】
前記コントローラが、パルスレーザーによって放射されるパルスの発生のタイミング、パルスレーザーによって放射されるパルスの発生の周波数、パルスレーザーによって放射されるパルスの波長、パルスレーザーによって放射されるパルスのエネルギー、およびパルスレーザーによって放射されるパルスの照準または場所の少なくとも1つを調節する、請求項11記載のデバイス。
【請求項13】
前記第2または前記第3流体管路をモニタリングするように構成され、モニターからのデータをコントローラに転送するようにさらに構成されたモニターをさらに含む、請求項9記載のデバイス。
【請求項14】
前記コントローラが、前記第3流体管路への前記第2流体の指定された体積を制御するようにさらに構成され、前記指定された体積が、少なくとも部分的に、前記モニターからの前記データによって決定される、請求項13記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、その全体が参照によって本明細書中に組み込まれる、2012年2月9日出願の特許文献1の恩恵および優先権を主張する。
【0002】
[政府支援の記載]
本発明は、米国航空宇宙局によって認定された認可番号第NCC2−1364号;米国国立衛生研究所によって認定された認可番号第Y018228号;ならびに全米科学財団によって認定された認可番号第0747950号、同第0852701号および同第0901154号で政府支援のもとでなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、微少流体技術の分野に関する。ある実施形態において、液滴の高速形成ならびに/または液滴、粒子、および/もしくは細胞の封入のための方法およびデバイスが、提供される。
【背景技術】
【0004】
マイクロ流体デバイスは、非常に小体積の流体に関する分析を実施するための基盤を提供するために、そしてフォトリソグラフィ技術を利用して製造される場合、安い費用で製造することができるので、大いに注目を集めている。これらのデバイスは、例えばサンプル調製、ポリメラーゼ連鎖反応を支援するための熱サイクル、および吸光度または蛍光モニタリングをはじめとする複数の機能性を組み入れた、「ラボ・オン・チップ(lab on a chip)」の役割を果たす可能性がある。それらは小型であることで、携帯デバイスでの使用のために特に好適になり、診療所または野外での高度な分析の実施の将来の実現可能性を秘めている。しかしながら、複数のサンプルの分析におけるマイクロ流体デバイスの使用に伴う課題の1つはサンプル細分化である。従来型実験用分析装置は、一連のキュベットまたは類似のレセプタクルを利用してサンプル間の汚染を防止し得るが、このやり方は、デバイス表面との相互作用がバルク駆動特性に優先する可能性がある小体積の流体で実施することが困難である。
【0005】
典型的なマイクロ流体デバイスは、このデバイス中を連続して流れる1つの流体相を利用する。離散量の流体試験サンプルまたは試薬をそのようなデバイスへ導入すると、装置のチャネルを通って移動する流体セグメントが形成される。残念なことに、そのような流体セグメントは、流路内の拡散および乱流などの力のために分散されるようになる傾向にある。加えて、流体セグメントの成分がマイクロ流体デバイスのチャネルの壁と相互作用して、しばらく経ってからしか放出されない可能性がある。そのような現象は、流体セグメント間の汚染をもたらす可能性があり、流体チャネル内の乱流を減少させる機構を有するマイクロ流体チップを設計すること、そしてサンプル間の内部容積の、時間を浪費する洗浄またはフラッシングを組み入れた試験プロトコルを設計することが必要となる。加えて、流体セグメントの分散は、特性化反応のために再現可能な体積および濃度の流体セグメント内容物を提供することを困難にする。
【0006】
この問題を解決するための1つのやり方は、分析または他の処理のためのサンプル流体が別個の低体積液滴の形態でデバイスのチャネル中に導入される、デジタル式マイクロ流体デバイスの導入であった。たとえば、生化学的または生物学的内容物を含有する水性サンプルを、非混和性油媒体を含むチャネル内を移動する水滴として導入することで、チャネル壁との相互作用が減少し、分散が防止され、液滴間の汚染が最小限に抑えられる。そのようなサンプルの特性化で使用される試薬は同様に処理することができる。しかしながら、有効であるためには、デジタル式マイクロ流体デバイスは、正確なハイスループット分析を完全に実現するために、精密に体積を制御する高速液滴生成のための機構を必要とする。
【0007】
受動機構は、そのようなデバイスを通る流れの機能として迅速かつ連続的に液滴生成するために使用することができる。非常に均一な液滴は、このようにして1秒あたり数千滴の速度で生成させることができる(非特許文献1)。特許文献2は、非混和性油の流れによって水性媒体の流れから液滴を剪断するデバイスを記載する。受動デバイスの別の例は特許文献3で開示され、ここでは、流体チャネル中に貫入するバリアが、チャネルの流体および流動特性との組み合わせで作用して渦巻きを形成し、これは液滴形成を駆動する圧力の周期的変化をもたらす。しかしながら、そのようなデバイスは、特に指定された体積のサンプル流体(たとえば、関心対象の特定の細胞を含む体積)を含有する液滴のオンデマンド型生成を提供せず、異なる体積を有する個々の液滴の生産に役立たない。このことは、異なるサンプル体積の特性化のため、そして様々な試験プロトコルの性能におけるそれらの有用性を制限する。
【0008】
液滴形成を駆動するために加えられた力の使用に依存する液滴生成のための動作可能な方法は、これらの問題に取り組むことができる。そのようなデバイスは、このデバイスを通る流れを調節する物理的成分を組み入れてもよい。この一例は、マイクロ流体デバイス中に組み入れられる空気圧駆動マイクロバルブの使用(非特許文献2)であり、これによって1秒あたり100滴もの高速で制御された液滴形成が可能になった。このやり方の別の例は、マイクロ流体チップ中に組み込まれ、空気圧によって流体相の流れを周期的に遮断して分散を提供する可撓性材料(PDMS)の可動式間仕切りを使用することであり(非特許文献3)、これは、1秒あたり20もの高い液滴形成速度を示した。さらに別の例である特許文献4は、開口部によって接続された2つのチャネルの使用を開示し、ここでは、1つのチャネル中の流動遮断器(flow interruptor)は、流体流を遮断し、その内容物の一部を第2のチャネル中へ圧入するように誘発され得る。そのようなデバイスの別の例は、特許文献5に記載され、これは、内蔵型圧電デバイスによって短時間圧縮される可撓性流体リザーバを組み入れて、液滴形成のための圧力を発生させるデバイスを開示する。そのような機構は、これらのマイクロ流体デバイスのデザインの複雑さをさらに大幅に増し、製造プロセスをさらに複雑にする。そのようなやり方の機械的な性質は、液滴が生産される可能性があり、かつ経時的に性能の変化を示し得る周波数を制限する。加えて、これらのやり方は、受動デバイスを用いて生産されるものよりも液滴サイズのばらつきが大きな液滴集団を生産する傾向がある。
【0009】
能動液滴生成に対する他のやり方は、機械的成分の不利益を回避するためにデバイスに適用される質量ゼロのまたは本質的に質量ゼロのエネルギーの使用に依存する。これらのいくつかは、液滴形成を促進するために、デバイスへの電界の適用を利用して、流体流を改変するか、または2つの流体間の界面の特性を変更する。これは、関与する流体間の伝導性において大きな差を必要とする可能性があり、このことはそのようなデバイスの有用性を制限する。たとえば、特許文献6は、電位差を利用して既存の流動パターンが液滴を生成するために充分になるまで流体間の界面での表面張力を一時的に低下させるエレクトロウェッティング効果(electrowetting)によって非混和性低および高抵抗流体間で液滴を移動させるための電位差の使用を開示する。類似のやり方が特許文献7に記載され、ここでは、電位差が、動電学的流れおよび2つの非混和性流体間の界面での干渉を含む効果の組み合わせで液滴を生成させる。電位差を使用して液滴を形成させるさらに別の例は、特許文献8に見られ、これは、導電性流体の液滴を流動性誘電体中にエレクトロスプレーするためのノズル構造と電位差の確立との組み合わせを開示する。液滴形成に関与する流体間の大きな伝導性差を必要としないやり方は、特許文献9で開示され、これは、その中に保存される流体の一部が気化するまで抵抗ヒーターを使用してデバイス内の容器の一部を加熱することを記載する。気化した流体からの圧力は、ノズルを通して非混和性流体中へと残存する流体の一部を圧入する。しかしながら、このやり方から得られる液滴生成は比較的遅く、ノズルごとに1秒につきわずか約15〜25滴だけが生じる。これらのやり方は機械的成分の使用を回避する一方で、それらは電極、抵抗ヒーターまたは類似の成分をデバイス中に組み入れることを必要とする。これによってデバイスのデザインの複雑さが増し、確実に電流を供給するために補助機構の使用をさらに必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0370196号明細書
【特許文献2】米国特許第7759111号明細書
【特許文献3】国際公開第2010/110843号
【特許文献4】米国特許出願公開第2010/0059120号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2010/0163412号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2006/0231398号明細書
【特許文献7】国際公開第2010/151776号
【特許文献8】国際公開第2011/023405号
【特許文献9】米国特許出願公開第2005/0031657号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Yobas著、2006年、Lab on a Chip, 6:1073−1079
【非特許文献2】Zeng著、2009年、Lab on a Chip 9:134−1343
【非特許文献3】Hsiung著、2006年、J. Micromechanics and Microengineering, 16: 2403−2410
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
様々な実施形態において、第2流体中で第1流体の液滴を迅速かつ再現可能な方法で生成するための新規な方法およびデバイスを本明細書中で記載する。流体は非混和性であり得、ここで、非混和性流体は互いにあまり可溶性でない流体、例えば密度または粘度などの物理的特性のために一定期間混合しない流体、および層流のために一定期間混合しない流体を含み得る。液滴形成は、第1流体内での一過性の気泡(例えばキャビテーション気泡)の膨張およびその後の収縮によって誘発される。あるいは、第1流体内での気泡形成によって、それは第2流体に対して作用することができ、それによって第3流体中で第2流体の液滴を生成させる。キャビテーション気泡は、方向づけられたエネルギー源を用いて生成させることができ、それによって電極、ヒーター、または類似の成分を、本発明を取り入れたデバイス中に組み入れる必要を除去する。好適な方向づけられたエネルギー源としては、限定されるものではないが、パルスレーザーが挙げられ、その使用によって、1滴/秒未満から100,000滴/秒までの速度で高度に再現可能な液滴のオンデマンド型形成が可能になる。液滴体積は、ある実施形態において、約1〜約150ピコリットルの範囲の液滴体積で制御することができる。ある実施形態では、生細胞は、そのような液滴内に、ある実施形態では、最高92.07%の高い細胞生存性で捕捉することができる。機械弁またはポンプは必要とされないので、これらの方法およびデバイスはマイクロ流体デバイスでの使用に特に好適である。
【0013】
1つの実施形態において、非混和性であり得る第1流体および第2流体は動作可能に連結される。ある実施形態において動作可能な連結は流体連通の形態をとり得る。他の実施形態において、可撓性膜を第1流体と第2流体との間に挿入してもよい。第1流体内でのキャビテーション気泡の生成は、第2流体の制御された体積を移動させるために充分な速度および/またはインパルスおよび/または第1流体に対する変位を生じさせる。ある実施形態において、そのようなキャビテーション気泡は1ミリ秒以内に膨張し、収縮し、約1マイクロリットル以下の制御された体積を移動させることができる。そのようなキャビテーション気泡は、例えばパルスレーザーによる照射によって生じ得る。いくつかの実施形態において、制御された体積の第2流体の体積は、パルスレーザーのエネルギーおよび/またはパルス周波数、および/または波長によって制御することができ、これらは次にコントローラによって調節することができる。
【0014】
別の実施形態において、第1流体管路および第2流体管路は開口部を介して連結される。いくつかの実施形態において、第1および第2流体管路中の流体は非混和性である。第1流体管路内でのキャビテーション気泡の生成は、第1流体の一部に、開口部を越えて第2流体管路中に第1流体の液滴を移動させるために充分な速度を付与する。ある実施形態において、開口部は、ポート、チャネル、またはノズルとして構成されてもよい。そのようなキャビテーション気泡は、例えばパルスレーザーの照射によって発生し得る。いくつかの実施形態において、レーザー照射の強度、持続期間、および/または位置によって液滴の体積を調節することができる。
【0015】
本発明の別の実施形態において、第1流体管路および第2流体管路は流体連通し、第2流体管路は開口部を介して第3流体管路に連結される。いくつかの実施形態において、第2および第3流体管路中の流体は非混和性である。第1流体管路内でのキャビテーション気泡の生成は、第2流体の一部に、開口部を通って第3流体管路中に第2流体の液滴を移動させるために充分な速度を付与する。ある実施形態において、開口部は、ポート、チャネル、またはノズルとして構成され得る。いくつかの実施形態において、第2流体は粒子および/または細胞を含み得る。第2流体管路をモニタリングしてもよく、そのようなモニタリングによって得られたデータはコントローラに伝達される。いくつかの実施形態において、キャビテーション気泡は、コントローラによって開始され得る照射によって生産される。照射はレーザーパルスの形態であり得、そしていくつかの実施形態において、液滴の体積は、レーザーパルスの強度、持続期間、および位置を用いて調節され得る。
【0016】
別の実施形態において、可撓性膜が第1流体管路と第2流体管路との間に挿入され、第2流体管路は開口部を介して第3流体管路に連結される。いくつかの実施形態において、第2および第3流体管路中の流体は非混和性である。第1流体管路内でキャビテーション気泡が生成すると、可撓性膜の一部が第2流体管路中へ弾性変形する。この弾性変形は、第2流体の一部に、開口部を通って第3流体管路中に第2流体の液滴を移動させるために充分な速度を付与する。開口部はコントローラとして構成され得る。いくつかの実施形態において、第2流体は粒子および/または細胞を含み得る。第2流体管路をモニタリングしてもよく、そのようなモニタリングによって得られたデータはコントローラに伝達される。いくつかの実施形態において、キャビテーション気泡は、コントローラによって開始され得る照射によって生産される。照射はレーザーパルスの形態であり得、そしていくつかの実施形態において、液滴の体積は、レーザーパルスの強度、持続期間、および位置を用いて調節され得る。
【0017】
本発明の別の実施形態において、第1流体管路および第2流体管路は開口部によって接続され、この場合、開口部は、第1流体管路中での気泡の形成によって、第1流体の液滴に開口部を通って第2流体管路中に移動させる力を誘導することができるように配置される。ある実施形態において、開口部はポート、チャネル、またはノズルとして構成され得る。いくつかの実施形態において、開口部はノズルとして構成される。コントローラを、エネルギー源(たとえば、パルスレーザーなど)と連結させ、これはエネルギーを第1流体管路に方向づけ、1以上の気泡を形成させることができる。いくつかの実施形態において、気泡はキャビテーション気泡であり得る。さらに他の実施形態において、エネルギー源はパルスレーザーであり;コントローラは、パルスレーザーによって生じるレーザーパルスの強度、持続期間、および/または位置を調節することによって、液滴の体積を調節するように構成することができる。
【0018】
さらに別の実施形態において、第1流体管路および第2流体管路は、可撓性膜がそれらの間に挿入されるように配置される。可撓性膜は次に、第1流体管路内で気泡が形成されると、可撓性膜の一部の弾性変形が起こるように配置され、これは次に第2流体管路中に含まれる流体に対する力を誘発する。第2流体管路および第3流体管路は、そのような力が第2流体管路の流体に加えられる場合、流体の液滴が開口部を通って第3流体管路中に押し出されるように配置された開口部によって接続される。コントローラは、エネルギーを方向づけ、その結果、第1流体管路中で気泡の一時的形成が起こるように構成される。この一時的気泡はキャビテーション気泡であり得る。ある実施形態において、開口部はポート、チャネル、またはノズルとして構成され得る。いくつかの実施形態において、開口部はノズルとして構成される。様々な実施形態において、モニターは、第2流体管路または第3流体管路をモニタリングするように構成することができ、ここで、モニターはコントローラに集められたデータを伝達する。ある実施形態において、コントローラは、第2流体管路中の流体の指定された体積の第3流体管路中への移動を制御するように構成することができ、ここで、指定された体積は、モニターから得られるデータを用いて決定される。
【0019】
いくつかの実施形態において、流体管路は、別の流体管路に押し出される周囲の流体の液滴によって封入された粒子または細胞を含み得る。モニターは、いくつかの実施形態では、コントローラと連結された場合に、特定の液滴内の特定の粒子または細胞の制御された封入を可能にし得る粒子または細胞を特性評価するために含まれ得る。
【0020】
様々な実施形態において、液滴の生成のためのデバイスが提供される。ある実施形態において、デバイスは、第2流体を含む第2流体流(例えば、マイクロ流体流)に隣接する、第1流体を含む第1流体流(例えば、マイクロ流体流)を含み、ここで、第2流体は第1流体中に非混和性である。ある実施形態において、デバイスは、第1流体流を含む、含有するおよび/または方向づける第1マイクロ流体チャネル;ならびに第2流体流を含む、含有するおよび/または方向づける第2マイクロ流体チャネルを含み、ここで、第1マイクロ流体チャネルは、第1マイクロ流体チャネルに隣接するか、または近接し、第2チャネルと(例えば、ポートまたはチャネルを介して)流体連通している。ある実施形態において、第2流体は水性流体を含む。ある実施形態において、第1流体は油または有機溶剤を含む。ある実施形態において、第1流体は、四塩化炭素、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、ヘプタン、ヘキサン、メチル−tert−ブチルエーテル、ペンタン、トルエン、および2,2,4−トリメチルペンタンからなる群から選択される溶剤を含む。ある実施形態において、第1流体は油を含む。ある実施形態において、デバイスは第1マイクロ流体流と第2マイクロ流体流との間で配置される第3流体流を含む。ある実施形態において、デバイスは第2流体とポートまたはチャネルとの間で配置される第3流体流を含む。ある実施形態において、デバイスは、ポートと第2流体との間の第2マイクロ流体チャネル中で配置される第3流体流をさらに含む。ある実施形態において、第3流体流は、封入される液滴、細胞、または粒子を含む。ある実施形態において、ポートまたはチャネルはノズルを含む。ある実施形態において、第1および/または第2マイクロ流体チャネルは、ガラス、金属、セラミック、ミネラル、プラスチック、およびポリマーからなる群から選択される材料から形成される。ある実施形態において、第1および/または第2マイクロ流体チャネルは、エラストマー材料(例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリオレフィンプラストマー(POP)、パーフルオロポリエチレン(a−PFPE)、ポリウレタン、ポリイミド、および架橋NOVOLAC(登録商標)(フェノールホルムアルデヒドポリマー)樹脂など)から形成される。
【0021】
ある実施形態において、デバイスは、約0.1fLもしくは約1fL、または約10fLもしくは約50fL、または約100fL、または約500fLから、約1μL、または約500nL、または約1nL、または約500pL、または約400pLまたは約300pLまたは約200pLまたは約150pLまでの範囲の液滴の実質的に連続した体積の調整をもたらす。ある実施形態において、デバイスは、約0.1fLから約1μLまで、または約0.1fLから約500nLまで、または約1fLから約1nLまで、または約1fLから約500pLまで、または約500fLから約500pLまで、または約1pLから約150pLまでの範囲の液滴の実質的に連続した体積調整をもたらす。ある実施形態において、デバイスは、約1,000滴/秒超、さらに好ましくは約2,000滴/秒超、さらに好ましくは約4,000滴/秒超、さらに好ましくは約6,000滴/秒超、またはさらに好ましくは約8,000滴/秒超の速度でオンデマンド液滴生成を提供することができる。ある実施形態において、デバイスは、0滴/秒、1滴/秒、2滴/秒、約5滴/秒、約10滴/秒、約20滴/秒、約50滴/秒、約100滴/秒、約500滴/秒、または約1000滴/秒から約1,500滴/秒、約2,000滴/秒、約4,000滴/秒、約6,000滴/秒、約8,000滴/秒、約10,000滴/秒、約20,000滴/秒、約50,000滴/秒、または約100,000滴/秒までの範囲の速度でオンデマンド液滴生成を提供することができる。ある実施形態において、デバイスは、約1,000超、さらに好ましくは約10,000超、さらに好ましくは約20,000滴/秒超、さらに好ましくは約40,000超、さらに好ましくは約50,000滴/秒超、さらに好ましくは約80,000超、またはさらに好ましくは約100,000滴/秒超の速度でオンデマンド液滴生成を提供することができる。ある実施形態において、デバイスは、流体流中で気泡を形成することができるエネルギー源を含むシステムまたはマイクロチャネル(またはその成分)中に存在する。ある実施形態において、エネルギー源は光エネルギー源またはマイクロ波エミッターを含む。ある実施形態において、エネルギー源はレーザー(例えば、パルスレーザー)を含む。ある実施形態において、デバイスおよび/またはシステムは、第2のマイクロ流体流中の蒸気泡を励起するように構成される。ある実施形態において、デバイスおよび/またはシステムは、ポートまたはチャネルに近接した第2のマイクロ流体チャネル中の蒸気泡を励起するように構成される。ある実施形態において、デバイスおよび/またはシステムは、第1または第2マイクロ流体流と流体連通していない第3マイクロ流体チャネルまたはチャンバー中の蒸気泡を励起するように構成される。ある実施形態において、蒸気泡は液体またはゲル媒体中で励起される。ある実施形態において、ホエアー(where)蒸気泡は油または非水性媒体中で励起される。ある実施形態において、蒸気泡は、光を吸収するナノ/マイクロ粒子(例えば色素分子、金属ナノ粒子など)を含む媒体中で励起される。ある実施形態において、デバイスは、ポリマー、プラスチック、ガラス、石英、誘電材料、半導体、ケイ素、ゲルマニウム、セラミック、および金属または金属合金からなる群から選択される材料を含む基体上に配置される。ある実施形態において、デバイスを他のマイクロ流体成分(例えば、例えばPDMSチャネル、ウェル、バルブなどのマイクロ流体成分)と一体化させる。ある実施形態において、デバイスはラボ・オン・チップの成分である。
【0022】
様々な実施形態において、液滴の生成および/または粒子もしくは細胞の封入のためのシステムが提供される。ある実施形態において、システムは、上述(または後述)のデバイス、および流体中の気泡の形成のための励起源
を備える。ある実施形態において、励起源はレーザー、マイクロ波源、または超音波エネルギー源である。ある実施形態において、システムは、システム中の粒子または細胞を検出するための成分(例えば、光検出システム、電気検出システム、磁気検出システム、音波検出システム、電気化学検出システムなど)をさらに含む。ある実施形態において、成分は、散乱、蛍光、またはラマン分光法シグナルを検出するための光検出システムを含む。
【0023】
様々な実施形態において、液滴を生成するための方法が提供される。ある実施形態において、方法は、上述(または本明細書中で後述)のデバイスを提供すること;およびエネルギー源を利用して、第2マイクロ流体流中または第2マイクロ流体チャネル中または第3マイクロ流体チャネルもしくはチャンバー中で気泡を形成し、液滴を第1マイクロ流体流またはチャネル中に注入することを含む。ある実施形態において、エネルギー源の利用は、パルスレーザーを利用して、第2マイクロ流体流もしくはチャネル中または第3マイクロ流体チャネルもしくはチャンバー中のキャビテーション気泡を励起することを含む。
【0024】
様々な実施形態において、制御された量の流体を移動させる方法が提供される。ある実施形態では、そのような方法は、第1流体中でキャビテーション気泡を生成させることを含み、ここで、キャビテーション気泡は、第1流体に動作可能に連結される第2流体の制御された体積をそれによって移動させるために充分な速度を第1流体の一部に付与する。ある実施形態において、第2流体の制御された体積は、約10μL以下、または約5μL以下、または約1μL以下、または約500nL以下、または約100nL以下、または約1nL以下、または約500pL以下、または約200pL以下である。ある実施形態では、キャビテーション気泡は、約100ミリ秒以下、または約50ミリ秒以下、または約1ミリ秒以下、または約0.5ミリ秒以下、または約1ミリ秒以下または約0.5ミリ秒以下、または約0.1ミリ秒以下、または約0.05ミリ秒以下の持続期間を有する。ある実施形態では、第2流体の制御された体積は1μL以下であり、キャビテーション気泡の持続期間は約1ミリ秒以下である。ある実施形態では、第1流体と第2流体とは流体連通している。ある実施形態では、可撓性膜が第1流体と第2流体との間に挿入される。ある実施形態では、第1および第2流体は非混和性である。ある実施形態では、キャビテーション気泡は、ある体積の第1流体をパルスレーザーで照射することによって生成する。ある実施形態では、この方法は、パルスレーザーのエネルギーおよび/またはパルス周波数、および/または波長の少なくとも1つを調節するコントローラを使用して第2流体の制御された体積を制御することをさらに含む。ある実施形態では、この方法は、少なくとも約1000Hz、または少なくとも約5,000Hz、または少なくとも約10,000Hzの周波数で複数の別個のさらなるキャビテーション気泡を生成することを含む。ある実施形態において、第2流体の制御された体積は約500ナノリットル以下である。ある実施形態では、第2流体の制御された体積は約200pL以下である。ある実施形態では、この方法を、約1kHz以上の周波数で、または約5kHz以上の周波数で、または約10kHz以上の周波数で繰り返す。
【0025】
様々な実施形態において、デバイス中で液滴を生成するための方法が提供される。ある実施形態において、この方法は:第1流体を含む第1流体管路;第2流体を含む第2流体管路;および第1流体管路を第2流体管路に流体連通させる開口部を提供し;そして第1流体管路中でキャビテーション気泡を生成することを含み、この場合、キャビテーション気泡は、開口部を超えて第2流体管路中へ第1流体の液滴を押し出すために充分な速度および/またはインパルスおよび/または変位を第1流体の一部に対して付与する。ある実施形態では、第1流体および第2流体は非混和性流体である。ある実施形態では、第1流体は水性流体であり、第2流体は有機溶剤または油である。ある実施形態では、第2流体は水性流体であり、第1流体は有機溶剤または油である。ある実施形態では、開口部はノズルとして構成される。ある実施形態において、キャビテーション気泡は、ある体積の第1流体をパルスレーザーで照射することによって生成する。ある実施形態では、この方法は、レーザーパルスの強度、持続期間、波長および位置の少なくとも1つを選択し、それによって所望の体積の液滴を生産することを含む。
【0026】
ある実施形態において、デバイス中で液滴を生成するための方法であって:第1流体を含む第1流体管路;第2流体を含む第2流体管路であって、第1流体管路と流体連通している第2流体管路;第3流体を含む第3流体管路;および第2流体管路を第3流体管路に流体連通する開口部を提供し;そして第1流体管路中でキャビテーション気泡を生成することを含み、この場合、キャビテーション気泡は、開口部を越えて第3流体管路中に第2流体の液滴を押し出すために充分な速度を第2流体の一部に付与する方法が提供される。ある実施形態では、第2流体および第3流体は非混和性流体である。ある実施形態では、第2流体は水性流体であり、第3流体は有機溶剤または油である。ある実施形態では、第2流体は水性流体であり、第3流体は有機溶剤または油である。ある実施形態では、この方法は、第2流体管路をモニタリングし、そしてそのようなモニタリングによって得られたデータをコントローラに伝達することをさらに含む。ある実施形態では、第2流体は粒子をさらに含む。ある実施形態では、第2流体は細胞をさらに含む。ある実施形態では、開口部はノズルとして構成される。ある実施形態では、キャビテーション気泡はある体積の第1流体の照射によって生成する。ある実施形態では、照射はコントローラによって開始される。ある実施形態では、照射はレーザーパルスである。ある実施形態では、この方法は、レーザーパルスの強度、持続期間、波長、および位置の少なくとも1つを選択し、それによって所望の体積の液滴を生産することをさらに含む。
【0027】
ある実施形態において、デバイス中で液滴を生成するための方法であって:第1流体を含む第1流体管路、第2流体を含む第2流体管路、第3流体を含む第3流体管路、第1流体管路と第2流体管路との間に配置された可撓性膜、および第2流体管路と第3流体管路との間の開口部を提供し;そして第1流体管路中でキャビテーション気泡を生成させ、これが可撓性膜(例えば、エラストマー材料(例えばポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリオレフィンプラストマー(POP)、パーフルオロポリエチレン(a−PFPE)、ポリウレタン、ポリイミド、および架橋NOVOLAC(登録商標)(フェノールホルムアルデヒドポリマー)樹脂など)から作製される膜)の一部を第2流体管路中に弾性変形させることを含む方法が提供され、ここで、可撓性膜の一部の弾性変形は、第2流体の一部に、開口部を越えて第3流体管路中に第2流体の液滴を押し出すために充分な速度および/またはインパルス、および/または変位を付与する。ある実施形態では、第2流体および第3流体は非混和性流体である。ある実施形態において、第2流体は水性流体であり、第3流体は有機溶剤または油である。ある実施形態では、第2流体は水性流体であり、第3流体は有機溶剤または油である。ある実施形態では、方法は、第2流体管路中の流体をモニタリングすること、およびそのようなモニタリングによって得られるデータをコントローラに伝達することをさらに含む。
【0028】
様々な実施形態において、液滴を生成するためのデバイスが提供される。ある実施形態では、このデバイスは、第1流体管路;第2流体管路;第1流体管路と第2流体管路との間の開口部であって、第1流体管路中の流体における気泡の形成が、それによって流体の液滴を第1流体管路から開口部を介して第2流体管路中へと押し出すために有効な量の力を誘発するように配置された開口部;およびエネルギー源に第1流体管路中で1以上の気泡の一時的形成を誘発するエネルギーを方向づけるように及び動作可能に構成されるエネルギーに連結されたコントローラを含む。ある実施形態では、気泡はキャビテーション気泡である。ある実施形態では、開口部はノズルとして構成される。ある実施形態では、エネルギー源はパルスレーザーである。ある実施形態では、コントローラは、レーザーパルスの強度、レーザーパルスの持続期間、レーザーパルスの波長、および第1流体チャネル内のレーザーパルスの位置の少なくとも1つの機能として液滴の体積を調節するように構成される。
【0029】
様々な実施形態において、液滴を生成するためのデバイスが提供される。ある実施形態において、デバイスは、第1流体管路;第2流体管路;第3流体管路;第1流体管路と第2流体管路との間に挿入された可撓性膜であって、第1流体管路中の流体において気泡が形成されることによって、可撓性膜の一部を弾性変形させる力が誘発されるように配置された、可撓性膜;第2流体管路と第3流体管路との間の開口部であって、可撓性膜の一部の弾性変形が第2流体に対する力を誘発し、それによって第2流体の液滴を第2流体管路から開口部を通って第3流体管路中へと押し出すように配置される、開口部;および第1流体管路中の流体における気泡の一時的形成を誘発するエネルギーを方向づけるように動作可能に構成されるコントローラを含む。ある実施形態では、気泡はキャビテーション気泡である。ある実施形態では、このデバイスは、第2または第3流体管路をモニタリングするように構成され、データをモニターからコントローラへ伝達するようにさらに構成されたモニターをさらに含む。ある実施形態では、コントローラは、第3流体管路中への第2流体の指定された体積を制御するようにさらに構成され、この指定された体積は、モニターから得られるデータによって少なくとも部分的に決定される。
【0030】
前記方法およびデバイスのいずれかのある実施形態において、液滴は、約1kHzから約10kHzまでの範囲の繰り返し周波数で、約10%以下、好ましくは約5%以下、さらに好ましくは約3%以下、または約2%以下、または約1%以下の液滴体積ばらつきで生成される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A】パルスレーザーを用いてキャビテーション気泡を作製するプロセスを示す。集束レーザーパルスで照射した結果としての流体の体積内のプラズマ発生と、それに続く衝撃波の発生ならびにキャビテーション気泡の膨張およびその後の崩壊を示す。
【
図1B】パルスレーザーを用いてキャビテーション気泡を作製するプロセスを示す。キャビテーション気泡の膨張およびその後の崩壊についての典型的な時間的経過のグラフを示す。
【
図2】パルスレーザーを使用して発生したキャビテーション気泡の形成およびその後の崩壊の時間的経過を示す。
【
図3】本発明の一実施形態による流体チャネル内の液滴生成を概略的に示す。
【
図4】本発明の別の実施形態による流体チャネル内に粒子または細胞を組み入れる、液滴の生成を概略的に示す。
【
図5】本発明の別の実施形態による流体チャネル内での液滴の生成を概略的に示す。
【
図6】本発明の別の実施形態による流体チャネル内での液滴の生成を概略的に示す。
【
図7】本発明の別の実施形態による流体チャネル内に粒子または細胞を組み入れる液滴の生成を概略的に示す。
【
図8】パネル(a)〜(i)は、オンデマンド液滴生成の時間分解像系列を示す。
【
図9】レーザーパルスのエネルギーを変えること、およびレーザーパルスの場所を変えることによる、生成する液滴の体積の調節を表す。
【
図10】パネル(a)〜(d)は、様々な間隔で繰り返される一連のレーザーパルスを用いた流体チャネル内の液滴の連続的生成を示す。スケールバーの長さは100ミクロンである。パネル(a)は2ミリ秒間隔を示し、パネル(b)は1ミリ秒間隔を示し、パネル(c)は500マイクロ秒間隔を示し、パネル(d)は100マイクロ秒間隔を示す。
【
図11】パネル
(a
)および
(b
)は、様々なレーザーパルス周波数で発生する、集められた液滴を示す。スケールバーの長さは100ミクロンである。パネル(a)は、1kHzのレーザーパルス周波数によって発生した液滴を示す。パネル(b)は10kHzのレーザーパルス周波数によって発生した液滴を示す。
【
図12】パネル
(a
)〜
(d
)は、様々な間隔で繰り返される一連のレーザーパルスを用いた流体チャネル内での液滴の連続的生成を示す。パネル(a)は、2ミリ秒間隔を示し、パネル(b)は1ミリ秒間隔を示し、パネル(c)は500マイクロ秒間隔を示し、パネル(d)は100マイクロ秒間隔を示す。
【
図13】パネルa〜cは、キャビテーション気泡によって生成した液滴内への粒子または細胞の封入を示す。パネル(a)は、流体チャネル内の粒子を示す。パネル(b)は、キャビテーション気泡の誘導およびその後の液滴生成の前、およびその後の様々な時間間隔での細胞の位置(白い矢印で示される)を示す。パネル(c)は、それぞれが細胞を封入する一連の液滴の連続的生成を示す。
【
図14】1Hzの周波数のレーザーパルスを使用した流体チャネル内での液滴の連続的生成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
種々の実施形態において、微少流体技術の分野における特定の用途ハエ(ha e)制御された体積の液滴のオンデマンド高速液滴生成に関するデバイスおよび方法が提供される。また、種々の実施形態において、方法およびデバイスは、細胞および/もしくは粒子、並びに/または他の流体の液滴を封入するために使用され得る。
【0033】
種々の実施形態において、本明細書に記載されるデバイスおよび方法は、一過性のキャビテーション気泡を誘発する指向性エネルギーを利用している、新規で制御可能な作動機構を利用する。いくつかの実施形態において、このエネルギーは、光エネルギーのバースト、制御され得る、強度、持続時間、波長、および/または位置を提供する、パルスレーザーの形態におけるものである。
【0034】
図1Aは、水性媒体における、レーザーパルスに誘発されたキャビテーション気泡形成の基礎をなす機構を図示する。レーザーパルスは、水性媒体の特定の体積に焦点される。この光エネルギーの吸収は、焦点のエリアの範囲内で水分子の分解をもたらし、焦点の近くでプラズマ気泡を生成する。プラズマの成分は、数ナノ秒で再結合し、1秒あたり100メートルと同じくらいの速さで膨張する爆発性の蒸気気泡(キャビテーション気泡とも呼ばれる)および放出されたエネルギーの衝撃波を生成し、その後急速に崩壊する。
図1Bは、気泡の形成および崩壊の従来のタイムコースを示す。気泡の半径は、開始後におよそ1マイクロ秒まで急速に増加し、その後に急速に崩壊するのをみることができる。
【0035】
図2は、この作動機構を用いた気泡形成の一連の顕微鏡写真を示す。衝撃波は、開始後22ナノ秒時点でプラズマ生成のポイントから外側に膨張するのをみることができる。急速に膨張するキャビテーション気泡は、55マイクロ秒までにフレームの外に膨張する気泡を有し、72ナノ秒時点で容易に観察できる。このことは、開始後152マイクロ秒までに実質的に完了する、気泡の急速な崩壊により追従される。そのような気泡の内圧は、気泡が膨張する際に、数十メガパスカルまたはそれ以上にまで高くなり得る。駆動力の急速な作動(レーザーパルス持続時間による、フェムト秒からナノ秒)、機械的パワーへの指向性エネルギーの急速な変換、大きな規模の得られる力、キャビテーション気泡により生産される相対的に大きな変位、および当該力の極めて過渡的な性質のような、多くの特有の性質は、超高速のマイクロおよびナノ流体の作動に関する特有の機構を提供する。この作動機構、スイッチ、バルブ、およびポンプのようなマイクロおよびナノ流体の成分を利用することは、前例のないスピードおよび精度でマイクロおよびナノ流体スケールでの流体流のガイド、駆動、調節を実現することができ、これにより新規な機能性を可能にする。
【0036】
本発明の1つの例示的な実施形態は、
図3に模式的に示される。図は、第1流体(
322)を含む第1流体チャネル(320)(例えば、マイクロチャネル)と第2流体(
312)を含む第2流体チャネル(310)(例えば、マイクロチャネル)を備え、第2流体は第1流体において非混和性であり、流体チャネルは開口部(330)を介して互いに流体連通している、マイクロ流体デバイスであり得るデバイスを示す。いくつかの実施形態では、開口部は、ノズルの形態である。指向性エネルギー源(340)、例えば、パルスレーザーは、第1流体チャネル(320)に向かって方向づけられる。ある実施形態では、レーザーは、例えば、ミラー(350)を用いて方向づけられ得、レンズ(355)を用いて第1流体チャネル(320)の体積(volume)に焦点され得る。いくつかの実施形態では、ミラーおよび/またはレンズは、第1流体チャネル(320)内の異なる位置での、指向性エネルギー源の焦点を可能にするように構成される。指向性エネルギー源(340)は、第1流体チャネル(320)内の一過性の気泡(360)(例えば、キャビテーション気泡)の形成を開始し、第2流体チャネル(310)内に第1流体の液滴(370)を駆動させる。気泡の崩壊は、押し出された第1流体の逆流を生じさせ、狭い「ネック」の形成の原因となり、第2流体チャネル(310)内に液滴(380)を放出へと急速に導く。
【0037】
このようなデバイスにおける液滴の形成および放出を示している一連の写真が
図8に示されている。
図8のパネル(a)は、開口部により接続された1組の平行な流体チャネルを示す。キャビテーション気泡の誘発が
図8のパネル(b)にみられ、
図8のパネル(c)〜(e)にみられるように、1つのチャネルから他へ内容物の一部を押し出す。気泡が崩壊するときに、
図8のパネル(f)および(g)にみられるように、接続している流体の狭い「ネック」が形成される。最後に、このネックは後退し、液滴が
図8のパネル(h)および(i)にみられるように、放出される。
【0038】
本発明の他の実施形態は
図4に示される。図は、第1流体を含む第1流体チャネル(420)(例えば、マイクロチャネル)、第2流体(417)を含む第2流体チャネル(415)(例えば、マイクロチャネル)、および第3流体(412)を含む第3流体チャネル(410)(例えば、マイクロチャネル)を備え、第2流体は第3流体において非混和性であり、第2流体チャネルと第3流体チャネルは開口部(430)を介して互いに流体連通している、マイクロ流体デバイスであり得るデバイスを示す。いくつかの実施形態では、この開口部は、ノズルの形態である。ある実施形態では、第2流体は、粒子または細胞(416)を含むこととしてもよく、層流によりおよび/または化学的不混和性により、第1流体において非混和性であり得る。指向性エネルギー源(440)、例えば、パルスレーザーは、第1流体チャネル(420)に向かって方向づけられ、任意にミラー(450)を用いて方向づけられ、任意に、例えばレンズ(455)を用いて第1流体チャネル(420)の体積に焦点される。いくつかの実施形態では、ミラーおよび/またはレンズは、第1流体チャネル(420)内の異なる位置での、指向性エネルギー源の焦点を可能にするように構成される。指向性エネルギー源(440)は、第1流体チャネル(420)内の一過性の気泡(460)(例えば、キャビテーション気泡)の形成を開始し、第3流体チャネル(410)内に第2流体の液滴(470)を駆動させる。気泡の崩壊は、押し出された第2流体の逆流を生じさせ、狭い「ネック」の形成の原因となり、第3流体チャネル(410)内に液滴(480)を放出することへと急速に導く。
【0039】
他の説明的な実施形態は、
図5に示される。図は、第1流体(522)を含む第1流体チャネル(520)(例えば、マイクロチャネル)、第2流体(517)を含む第2流体チャネル(515)(例えば、マイクロチャネル)、および第3流体(512)を含む第3流体チャネル(510)(例えば、マイクロチャネル)を備え、第2流体は第3流体において非混和性であり、第2流体チャネルと第3流体チャネルは開口部(530)を介して互いに流体連通している、マイクロ流体デバイスであり得るデバイスを示す。いくつかの実施形態では、開口部は、ノズルの形態である。第2流体は、生成された流体の液滴でその後封入され得る、粒子または細胞(516)を含むこととしてもよく、アパーチャ(535)または類似の構造を介して第1流体チャネル(520)と流体連通され得る。指向性エネルギー源(540)、例えば、パルスレーザーは、任意にミラー(550)を用いて、第1流体チャネル(520)に向かって方向づけられ、例えば、レンズ(555)を用いて第1流体チャネル(520)の体積に方向づけられる(および任意に焦点される)。いくつかの実施形態では、ミラーおよび/またはレンズは、第1流体チャネル(520)内の異なる位置での、指向性エネルギー源の焦点を可能にするように構成される。指向性エネルギー源(540)は、第1流体チャネル(520)内の一過性の気泡(560)(例えば、キャビテーション気泡)の形成を開始し、第3流体チャネル(510)内に第2流体の液滴(570)を駆動させる。気泡の崩壊は、押し出された第2流体の逆流を生じさせ、狭い「ネック」の形成の原因となり、第3流体チャネル(510)内に液滴(580)を放出することへと急速に導く。
【0040】
本発明の他の実施形態が
図6に示される。図は、第1流体(622)を含む第1流体チャネル(620)(例えば、マイクロチャネル)、第2流体(617)を含む第2流体チャネル(615)(例えば、マイクロチャネル)、および第3流体(612)を含む第3流体チャネル(610)(例えば、マイクロチャネル)を備え、第2流体は第3流体において非混和性であり、第2流体チャネルと第3流体チャネルは開口部(630)を介して互いに流体連通している、マイクロ流体デバイスであり得るデバイスを示す。いくつかの実施形態では、この開口部は、ノズルの形態である。可撓性膜(635)が第1流体チャネル(620)および第2流体チャネル(615)の間に挟まれていることとしてもよい。指向性エネルギー源(640)、例えば、パルスレーザーは、任意にミラー(650)を用いて、第1流体チャネル(520)に向かって方向づけられ、任意に、レンズ(655)を用いて第1流体チャネル(620)の体積に焦点される。いくつかの実施形態では、ミラーおよび/またはレンズは、第1流体チャネル(620)内の異なる位置での、指向性エネルギー源の焦点を可能にするように構成される。指向性エネルギー源(640)は、第1流体チャネル(620)内の一過性の気泡(660)(例えば、キャビテーション気泡)の形成を開始し、そのことが可撓性膜(635)の弾性変形をもたらす。弾性変形は、第3流体チャネル(610)内に第2流体(670)の液滴を駆動させる。気泡(660)の崩壊後の弾性変形の反転は、押し出された第2流体の逆流をもたらし、狭い「ネック」の形成の原因となり、第3流体チャネル(610)内に液滴(680)を放出することへと急速に導く。この構成の反応時間は、上記他のパラメータに加えて、弾性膜の剛性により制御され得る。
【0041】
本発明のさらに別の実施形態が
図7に示される。図は、第1流体(
722)を含む第1流体チャネル(720)(例えば、マイクロチャネル)、第2流体(717)を含む第2流体チャネル(715)(例えば、マイクロチャネル)、および第3流体(712)を含む第3流体チャネル(710)(例えば、マイクロチャネル)を備え、第1、第2、および第3流体は、(例えば、層流および/または化学的不混和性により)非混和性である、マイクロ流体デバイスであり得るデバイスを示す。第2流体は、生成された流体の液滴でその後封入され得る、粒子または細胞(716)を含むこととしてもよい。指向性エネルギー源(740)、例えば、パルスレーザーは、任意にミラー(750)を用いて、第1流体チャネル(720)に向かって方向づけられ、任意に、レンズ(755)を用いて第1流体チャネル(720)の体積に焦点される。いくつかの実施形態では、ミラーおよび/またはレンズは、第1流体チャネル(720)内の異なる位置での、指向性エネルギー源の焦点を可能にするように構成される。指向性エネルギー源(740)は、第1流体チャネル(720)内の一過性の気泡(760)(例えば、キャビテーション気泡)の形成を開始し、第3流体チャネル(710)内に第2流体の液滴(770)を駆動させる。気泡の崩壊は、押し出された第2流体の逆流を生じさせ、狭い「ネック」の形成の原因となり、第3流体チャネル(710)内に液滴(780)を放出することへと急速に導く。
【0042】
指向性エネルギー源としてのパルスレーザーの使用が上記のように記述されたが、他のエネルギー源が本発明とともに使用されるのに適切であることにも留意すべきである。代替的な指向性エネルギー源は、非レーザーの高出力光源(例えば、焦点されたアーク灯)、マイクロ波照射、誘導加熱、および音響エネルギー(例えば、超音波)を含む。
【0043】
ある実施形態では、パルスレーザーが、エネルギー源であることが好ましい。レーザーは、エネルギーを送達するために、あらゆる電気的もしくは機械的な配線、または相互接続を必要としないということにおいて有利である。レーザービームは、透明基体を横切ってあらゆる任意の3Dの位置に焦点され得る。このことは、インタフェース連結の問題を取り除き、標準的な半導体[IC]製造工場のマイクロ流体チップ上の統合を促進する。
【0044】
例示的なレーザーは、例えば、532nmの波長を有するナノ秒パルスレーザーを含むがこれに限定されない。また、マイクロ秒、ピコ秒、またはフェムト秒パルスレーザー等が適用され得る。ある実施形態では、レーザーの波長は、UV、可視光、または近赤外であり得る。
【0045】
ある実施形態では、デバイスまたはデバイスを備えるシステムは、1つまたはそれ以上の流体チャネルの内容物を特徴づけるモニタリングデバイスを組み込み得る。このモニタリングデバイスからのデータは、コントローラに送信され得、次いでモニターから受信したデータに基づいて指向性エネルギー源を順番に起動するように構成され得る。例えば、蛍光モニターは、蛍光で標識された細胞または粒子を含む流体チャネルとともに配置されることによってもよい。モニターからのデータが、所望の蛍光標識を含む細胞が液滴生成機構を有して配置されるということを示すとき、コントローラは、所望の細胞を封入する液滴の形成をもたらす、レーザーパルスを開始し得る。同様に、吸光度が、モニターされる流体流の内容物を区別するために用いられることとしてもよい。この配置は、デバイスの別の機能的なエリアに分配または収集するための、第2流体チャネルへの移動のための特有または所望の内容物を有し得る、流体チャネル内の特定の体積の選択を有利に可能にする。モニターは、蛍光または吸光度モニターに限定されない。例えば、磁気モニター、容量モニター、インダクタンスモニター、電気化学的モニターが、同様に有利に使用され得る。
【0046】
なお、ある実施形態では、1つまたはそれ以上の流体流(例えば、流体の流路)が物理的なチャネル(例えば、マイクロチャネル)内に制限されることとしてもよいが、流体流は、物理的なバリア/チャネル壁により制限または分離される必要はない。ある実施形態では、流体流は、それらが配置される表面の極性/疎水性/表面自由エネルギーにおける変化により(例えば、Zhao et al. (2002) Anal. Chem., 74(16): 4259−4268参照)、エレクトロウェッティング技術の使用により(例えば、Cheng and Hsiung (2004) Biomedical Microdevices, 6(5): 341−347参照)、動電学的手段により、方向づけられた層流の使用(例えば、流量、および/または流れの断面、および/または流れの粘度を調節することにより)等により、あらかじめ設定された流路に沿って方向づけられ、並びに/または、制限されおよび/もしくは分離され得る。
【0047】
ある実施形態では、流体流はマイクロ流体流である。「マイクロ流体流」は、上記流体流のうち少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または少なくとも約80%、または少なくとも約90%、または少なくとも約95%、または少なくとも約98%、または少なくとも約99%の流体流の流量または質量が、1,000μm未満、より好ましくは約900μm未満、または約800μm未満、または約700μm未満、または約600μm未満、または約500μm未満、または約400μm未満、または約300μm未満、または約250μm未満、または約200μm未満、または約150μm未満、または約100μm未満、または約75μm未満、または約50μm未満、または約40μm未満、または約30μm未満、または約20μm未満、または約10μm未満、または約1μm未満の少なくとも1つの特徴的な寸法(例えば、幅または直径)を有する断面積を通過する、流れを指す。ある実施形態では、「マイクロ流体流」は、マイクロ流体のチャネル内に含まれる流体流を指す。
【0048】
ある実施形態では、1つまたはそれ以上の流体流が、チャネルまたはマイクロチャネルに配置される。用語「マイクロ流体のチャネル」または「マイクロチャネル」は、互換的に使用され、1,000μm未満、より好ましくは約900μm未満、または約800μm未満、または約700μm未満、または約600μm未満、または約500μm未満、または約400μm未満、または約300μm未満、または約250μm未満、または約200μm未満、または約150μm未満、または約100μm未満、または約75μm未満、または約50μm未満、または約40μm未満、または約30μm未満、または約20μm未満の少なくとも1つの特徴的な寸法(例えば、幅または直径)を有するチャネルを指す。
【0049】
ある実施形態では、本明細書に記載される方法およびデバイスが非混和性の流体を利用することとしてもよい。これに関連して、用語「非混和性」は、2つの流体に対して使用される場合、いくつかの割合で混合された時の液体が溶液を形成しないことを示す。典型的な非混和性の材料は、水と油である。また、本明細書で使用される非混和性の流体は、いくつかの割合で組み合わせられた時に実質的に溶液を形成しない流体を含む。通常、材料は、同じ割合で組み合わせられたときに溶液を形成しない場合、実質的に非混和性である。ある実施形態では、非混和性の流体は、互いに有意に溶解しない流体、濃度または粘度のような物理的性質によりある期間混合しない流体、および層流によりある期間混合しない流体を含む。
【0050】
さらに、そのような流体は、液体に制限されず、液体および気体を含むこととしてもよい。よって、例えば、液滴が、(水のような)水性溶媒、四塩化炭素、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2‐ジクロロエタン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、ジメチルホルムアミド、酢酸エチル、ヘプタン、ヘキサン、メチル‐tert‐ブチルエーテルペンタン、トルエン、2,2,4‐トリメチルペンタン等のようなあらゆる数の有機化合物を含んで形成されるものであることが考えられる。種々の相互に不溶性の溶剤システムが当業者に知られている(例えば、表1参照)。他の例では、生理学的に正常な量の溶質を含む水性緩衝液の液滴は、高い濃度のスクロースを含む、濃い水性緩衝液中で生産されることとしてもよい。さらに他の例では、生理学的に正常な量の溶質を含む水性緩衝液の液滴は、生理学的に正常な量の溶質を含む第2の水性緩衝液中で生産され、この場合2つの緩衝液が層流により分離されることとしてもよい。さらに他の例では、流体の液滴は、窒素または空気のような気体中で生産されることとしてもよい。
【0051】
表1は、互いに混和性または非混和性のいずれかである種々の溶剤を示す。左欄の溶剤は、別途の記載がない限り、右欄の溶剤と混ざらない。
【0053】
ある実施形態では、第1流体および第2流体は、互いに非混和性であることを要しない。このような実施形態では、注入された液滴は、単にマイクロチャネルにおける流量および分離された気泡を形成するための気泡形成の速度を調節することにより、互いからの分離を維持することができる。
【0054】
種々の実施形態において、本発明に記載されるデバイスおよび方法により生成された液滴は、多種多様の材料を含みまたは封入し得る。いくつかの実施形態では、液滴は、試験サンプル、細胞、オルガネラ、タンパク質、核酸、酵素、PCR、または他の検査試薬、生化学的、染色、もしくは粒子状物質(例えば、高分子マイクロスフェア、金属性マイクロ粒子、またはピグメント)を含み得る。さらに他の実施形態では、液滴は、1つまたはそれ以上のこれまでに生成した液滴を封入することとしてもよい。さらに、本発明は、水性の液滴システムに限定される必要はない。例えば、方法およびデバイスで生成するこのような液滴は、ナノ粒子コーティングで用いられることとしてもよく、この場合有機溶剤における材料は、上に層を沈着させるためまたはナノ粒子を封入するために使用され得る。
【0055】
上記のように、いくつかの実施形態では、流体チャネルにおける開口部は、ノズルとして構成され得る。このようなノズルの深さ、内径、および外径は、液滴のサイズ、液滴の画一性、流体の界面での混合性、またはこれらの組み合わせを制御するために最適化され得る。
【0056】
本明細書に記載された液滴生成デバイスは、流体チャネルを含む材料とは異なる基体上に提供されることとしてもよい。例えば、流体チャネルは、剛体表面上に配置されるエラストマー材料を用いて製造されることとしてもよい。適切な流体チャネル材料は、PDMS、プラスチック、および同様の材料のようなフレキシブルポリマーを含むがこれらに限定されない。また、流体チャネルは、硬質プラスチック、ガラス、シリコン、クォーツ、金属、および同様の材料のような非フレキシブル材料から構成されることとしてもよい。適切な基体は、ポリマー、プラスチック、ガラス、クォーツ、または他の絶縁体材料のような透明基体を含むがこれらに限定されない。他の適切な基体材料は、不透明なまたは半透明のプラスチック、シリコン、金属、セラミック、および同様の材料のような非透過性の材料を含むがこれらに限定されない。
【0057】
上記および実施例に記載されるパラメータ(例えば、流量、レーザー強度、レーザー周波数/波長、チャネル寸法、ポート/ノズルの寸法、チャネル壁剛性、キャビテーション気泡形成の位置等)は、特定の所望の適用のための、液滴形成および/または液滴/粒子/細胞の封入を最適化するために変化させ得る。
【0058】
本明細書に記載される液滴生成デバイスの構成において、および、それらを組み込み得るマイクロ流体デバイスにおいて使用され得る、多くの形式、材料、およびサイズスケールがある。いくつかの実施形態では、液滴生成デバイスおよび接続する流体チャネルは、PDMS(または他のポリマー)から構成され、ソフトリソグラフィ(soft lithography)を用いて製造される。PDMSは、低コスト、光透過性、成形の容易さ、エラストマー特性を含むがこれに限定されない種々の理由のために魅力的な材料である。また、PDMSは、従来のシロキサン化学反応および細胞培養の必要条件(例えば、低毒性、ガス透過性)の両方の適合性を含む、望ましい化学的特性を有する。例示的なソフトリソグラフィ方法において、種型は、流体チャネルシステムを形成するために準備される。この種型は、マイクロ機械加工プロセス、フォトリソグラフィ処理または当業者により知られるあらゆる多くの方法により生産されることとしてもよい。このような方法は、ウェットエッチング、電子ビーム真空堆積、フォトリソグラフィ、プラズマ増強化学堆積、分子ビームエピタキシー、反応性イオンエッチング、および/または化学補助イオンビームミリングを含むがこれらに限定されない(Choudhury (1997) The Handbook of Microlithography, Micromachining, and Microfabrication, Soc. Photo−Optical Instru. Engineer.; Bard & Faulkner, Fundamentals of Microfabrication)。
【0059】
いったん準備されると、種型がプロポリマーにさらされ、その後、PDMSでパターンレプリカを形成するために硬化される。レプリカは、種型から取り出され、トリムされ、流体入口が必要とされるところに加えられる。ポリマーレプリカは、任意にプラズマ(例えば、O
2プラズマ)で処理され、ガラスのような適切な基体に結合されることとしてもよい。O
2プラズマによるPDMSの処理は、適切な基体と等角接触する場合に堅固におよび不可逆的にシールする表面を生成し、水性溶液とともに使用される場合に負に帯電される流体チャネル壁を生成するという利点を有する。これらの固定電荷は、デバイスにより流体を移動させるために用いられ得る動電学的ポンピングをサポートする。上記はPDMSを用いる液滴生成デバイスの製造を記載したが、多数の他の材料がこのポリマーに置き換えられて、またはともに使用されることが認識されるべきである。実施例は、ポリオレフィンプラストマー、ペルフルオロポリエチレン、ポリウレタン、ポリイミド、および架橋フェノール/ホルムアルデヒドポリマーレジンを含むがこれらに限定されない。
【0060】
いくつかの実施形態では、単層のデバイスが考えられる。他の実施形態では、多層のデバイスが考えられる。例えば、流体チャネルの多層のネットワークは、市販のCADプログラムを用いて設計されることとしてもよい。この設計は、種型を作成するためのフォトリソグラフマスクとしてその後使用される一連の透過度(transparency)に変換されることとしてもよい。この種型に対するPDMSキャストは、流体チャネルの多層のネットワークを含むポリマーレプリカを産み出す。このPDMSキャストは、プラズマで処理され、上記のような基体に接着され得る。
【0061】
上記のように、本明細書に記載される方法およびデバイスは、特にマイクロ流体デバイスにおける使用に適している。よって、いくつかの実施形態では、流体チャネルはマイクロチャネルである。このようなマイクロチャネルは、約100ナノメートルから1ミクロン、約500ミクロンまでの範囲の特徴的な寸法を有する。種々の実施形態において、特徴的な寸法は、約1、5、10、15、20、25、35、50、または100ミクロンから約150、200、250、300、または400ミクロンまでの範囲である。いくつかの実施形態では、特徴的な寸法は、約20、40、または約50ミクロンから約100、125、150、175、または200ミクロンまでの範囲である。種々の実施形態において、隣り合う流体チャネル間の壁の厚さは、約0.1ミクロンから約50ミクロンまで、または約1ミクロンから約50ミクロンまで、より典型的には約5ミクロンから約40ミクロンまでの範囲である。ある実施形態では、隣り合う流体チャネル間の壁の厚さは、約5ミクロンから約10、15、20、または25ミクロンまでの範囲である。
【0062】
種々の実施形態において、流体チャネルの深さは、5、10、15、20ミクロンから約1mm、800ミクロン、600ミクロン、500ミクロン、400ミクロン、300ミクロン、200ミクロン、150ミクロン、100ミクロン、80ミクロン、70ミクロン、60ミクロン、50ミクロン、40ミクロン、または約30ミクロンまでの範囲である。ある実施形態では、流体チャネルの深さは、約10ミクロンから約60ミクロンまで、より好ましくは約20ミクロンから約40または50ミクロンまでの範囲である。いくつかの実施形態では、流体チャネルはオープンであり得、他の実施形態では、流体チャネルはカバーされることとしてもよい。
【0063】
上記のように、本発明のいくつかの実施形態は、ノズルを含む。ノズルが存在する場合、ノズルの直径は、約0.1ミクロン、または約1ミクロンから約300ミクロン、200ミクロン、または約100ミクロンまでの範囲であり得る。ある実施形態では、ノズルの直径は、約5、10、15、または20ミクロンから約25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、または約80ミクロンまでの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、ノズルの直径は、約1、5、10、15、または20ミクロンから約25、35、または40ミクロンまでの範囲である。
【0064】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法およびデバイスは、0液滴/秒、約2液滴/秒、約5液滴/秒、約10液滴/秒、約20液滴/秒、約50液滴/秒、約100液滴/秒、約500液滴/秒、または約1000液滴/秒から約1,500液滴/秒、約2,000液滴/秒、約4,000液滴/秒、約6,000液滴/秒、約8,000液滴/秒、約10,000液滴/秒、約20,000液滴/秒、約50,000液滴/秒、および約100,000液滴/秒までの範囲の速度で液滴を生成し得る。
【0065】
種々の実施形態において、本明細書に記載されるデバイスおよび方法は、実質的な連続体積を有する液滴を生成し得る。液滴の体積は、約0.1fL、約1fL、約10fL、および約100fLから約1マイクロリットル、約500nL、約100nL、約1nL、約500pL、または約200pLまでの範囲の体積で提供するために制御され得る。ある実施形態では、液滴の制御体積は、約1pLから約150pL、約200pL、約250pL、または約300pLまでの範囲である。
【0066】
上記に示されるように、本明細書に記載のマイクロチャネル液滴形成/注入デバイスは、マイクロ流体「チップ」上の、または、マイクロ粒子コーティング、マイクロ粒子ドラッグキャリアー製剤等のための流水式作製システムにおける、他の処理モジュールとの一体型のシステムを提供し得る。これらの使用は、しかしながら、単に説明的であって限定していない。
【0067】
種々の実施形態において、本明細書に記載される方法を行う成分/モジュール/デバイスを組み込むマイクロ流体は、1から数ナノリットルと同じくらい少ない体積を操作し得る得る。マイクロ流体の操作体積は、単一の哺乳類細胞のサイズに近いため、材料のロスは、これらのデバイスによる単一細胞のmRNA分析において最小化される。mRNAは細胞の死とともに急速に分解されるため、マイクロ流体デバイス内の生きている細胞を処理するための性能は、単一細胞のトランスクリプトームの研究に大きな利益をもたらす。単一のヒト胚性幹細胞(hESC)における遺伝子発現の研究のための、26の平行な10nLのリアクターを有する1つの例示的な高く統合されたマイクロ流体デバイスが報告され(Zhong et al. (2008) Lab on a Chip, 8: 68−74; Zhong et al. (2008) Curr. Med. Chem., 15: 2897−2900)、本明細書に記載されるデバイスを
組み込むように容易に変更され得る。ある例示的なマイクロ流体デバイスは、細胞捕捉を含む単一細胞のcDNAを得るためのシステムを含み、mRNAの捕捉/精製、cDNAの合成/精製がデバイス内で行われる。本デバイスおよび方法は、例えば、このようなデバイスにおいてさらに処理するための個々の細胞の封入および/または分離の効果的な手段を提案する。
【0068】
あらゆる数のやり方が、本明細書に記載されるデバイスの流路および/またはチャネルの流れに沿って、流体または液滴、粒子、細胞等の混合物を運ぶために使用され得る。このようなやり方は、重力流動、シリンジポンプ、蠕動ポンプ、動電学的ポンプ、気泡駆動ポンプ、および気圧駆動ポンプを含むがこれらに限定されない。
【0069】
[実施例]
以下の実施例が例示のために提案されるが、クレームされた発明に限定されない。
【0070】
[実施例1]
パルスレーザー誘発キャビテーションにより駆動される液滴生成
【0071】
図3に示される、パルスレーザー駆動液滴生成(PLDG)デバイスは、標準的なソフトリソグラフィ技術を用いて構成される。PLDGデバイスは、1つは水で、他方は油で満たされる2つの流体チャネルを有した。両方の流体チャネルは、100ミクロンの幅、および100ミクロンの高さであった。流体チャネルは、幅が30ミクロンであるネックを有するノズルとして構成された開口部により接続された。チャネルにおける流量は、安定した油/水の界面をつくるために調節された。
【0072】
このPLDGデバイスの作動は、強いレーザーパルスが流体チャネルを含む水に焦点されたときに生成される、レーザーパルス誘発キャビテーション気泡に基づいた。レーザーパルスの焦点におけるプラズマ形成は、上記のように、急速に膨張するキャビテーション気泡を生成する。このことは、油/水の界面を乱し、隣り合う油で満ちた流体チャネル内に水の液滴を押し出し、安定した水の液滴を形成する。これらの研究において、このキャビテーション気泡の持続時間は、数十から数百マイクロ秒までの範囲であった。
【0073】
キャビテーション気泡を誘発するために、532nmの波長、15ナノ秒パルス幅、および100KHzの最大繰り返し周波数を有するQスイッチNd:YVO4パルスレーザービームが、PLDGデバイス内に100X対物レンズを通して焦点された。また、UV、可視、および赤外のような他の波長が適切でありうる。液滴生成は、時間分解イメージングシステムを用いて捕捉された。
図8は、液滴生成中に得られた一連のこのようなイメージを示す。連続する油相にコーン油を、水相にリン酸緩衝食塩水(PBS)を用いて、コーン油およびPBSの流量は、ノズル開口部で安定な界面を形成するために調節された(
図8、パネル(a))。キャビテーション気泡形成は、レーザーパルスの開始から1マイクロ秒以内に開始し(
図8、パネル(b))、3マイクロ秒以内に最大サイズに達し、コーン油チャネル内にPBSを押し出す(
図8、パネル(c))。気泡は、5マイクロ秒後に崩壊し始める(
図8、パネル(d))。キャビテーション気泡が崩壊するとき、PBS流体チャネルと押し出された液滴との間に狭いネックが形成される(
図8、パネル(d)〜(f))。この接続は、流体力学的不安定性に起因して切断される(
図8、パネル(g))。その結果、137pLの液滴が約500マイクロ秒で100マイクロジュールレーザーパルスを用いて生成され、その後コーン油チャネルを通る流れにより遠くに運ばれた(
図8、パネル(h)および(i
))。
【0074】
[実施例2]
PLDGにより生成された液滴の体積の制御
【0075】
PLDGの体積は、レーザー強度およびパルス持続時間の機能、レーザー励起の位置、または上記の組み合わせである、パルスレーザーにより送達されたエネルギーを調節することにより制御され得る制御され得る。代替的には、パルスレーザーのエネルギーは、ビームポーラライザーを用いて調節されることとしてもよい。
【0076】
図9は、これらのパラメータを調節することにより、PLDGにより生産される液滴の体積の制御を図示する。
図9、パネル(a)〜(d)により示される液滴は、ノズルから47ミクロンの一定の距離で、レーザーエネルギーを変化させた時(
図9、パネル(a)=100マイクロジュール、パネル(b)=90マイクロジュール、パネル(c)=80マイクロジュール、パネル(d)=70マイクロジュール)の効果を示す。このことは、レーザーエネルギーの減少とともに減少する、約55から約5ミクロンまでの範囲の制御された液滴サイズを生産する。
【0077】
液滴のサイズの制御は、
図9、パネル(e)〜(g)で示され、レーザーエネルギーは、100マイクロジュールで一定に保持され、ノズルまでの焦点位置の距離は、約40ミクロンから約80ミクロンの間に調節される。液滴のサイズは、焦点位置がコーンオイル/PBS界面から遠くに移動されるにつれて、約60ミクロンから約25ミクロンまでに減少する。レーザーエネルギーと流体界面からの焦点の距離との組み合わせを用いて、液滴の体積を1pLから150pLの間に制御することができる。
【0078】
[実施例3]
PLDGにより生産された液滴のサイズの一貫性
【0079】
オンデマンドの手順であるため、PLDGは、レーザーパルス間の間隔を制御することにより、異なる周波数で液滴を生産し得る。
図10は、2ミリ秒(
図10、パネル(a))から100マイクロ秒(
図10、パネル(d))までの範囲である異なる励起間隔での連続的な液滴生成の結果を示す。液滴を受ける流体チャネルの流量は、高い液滴生成速度で分散される液滴を維持するために調節された。
【0080】
図11は、1kHz(パネル(a))および10kHz(パネル(b))の液滴生成の周波数で収集された例示的な液滴を示す。液滴が形成される速度が10倍異なるにも関わらず、液滴のサイズは一貫性があった。
図12は、レーザー励起間の間隔が2ミリ秒(パネル(a))、500マイクロ秒(パネル(
c))、および100マイクロ秒(パネル(
d))に設定される、類似の研究からの結果を示す。500マイクロ秒の間隔(2kHz)で生成された液滴から収集されたデータは、0.689%の体積の変化を示した。
【0081】
2ミリ秒(パネル(a))、500マイクロ秒(パネル(b))、および100マイクロ秒(パネル(c))での励起間隔を有する、異なるレーザー励起の間隔での液滴の連続的な生成が
図14に示される。100マイクロ秒のパルス間隔と90マイクロジュールのレーザーパワーを用いて、10kHzの一貫した液滴生産率が達成され得る。
【0082】
[実施例4]
PLDGによる液滴における封入
【0083】
液滴体積の制御をも可能にするオンデマンドの手順であるため、PLDGは、第2流体チャネルにおける液滴としての、流体チャネルの特定の内容物の封入を可能とする。このような適用の一例は、モニターから受信したデータに基づいて、コントローラにより方向づけられる、PLDGデバイスを通過する粒子または細胞の流れから指定される、単一の粒子または細胞の封入である。このような粒子または細胞は、成長培地の液滴内に分離され、さらなる特徴づけのための第2流体チャネルにより運ばれ得る。
【0084】
このことが
図13に示される。
図13、パネル(a)では、粒子(白の矢印により示される)がPLDGデバイスの流体チャネル内に示される。封入されている液滴の生成は、
図13、パネル(b)に示される。キャビテーション気泡の誘発から250マイクロ秒でノズルを通過して押し出されているのがみられる液滴が、粒子を封入することがみられ得る。
図13、パネル(c)は、細胞の連続する捕捉による、同様の研究の結果を示す。この形態における生きているHeLa細胞の封入は、高い生存率を示す(92.07%)。PLDGデバイスの信頼性は、360万個のキャビテーション気泡生成の生成に対応する、1時間、10kHzの速度で連続的にレーザーパルスを適用することにより試験され、デバイスへのダメージが観察されなかった。
【0085】
マイクロ流体デバイスで使用するのに特に適する液滴生成の方法およびデバイスが開示されている。これらは、100kHzと同じくらい高い速度で、急速な、オンデマンドの液滴生成を提供する。液滴の体積は調製され得、1%未満の体積の差異を有する、高い再現性を示した。開示されたデバイスは機械部品を利用せず、外部に位置する指向性エネルギー源の使用(例えば、パルスレーザー)が、デバイスおよびサポート設備の両方の設計を大幅に簡素化する。また、PLDGアプローチの効率性および固有の簡素性は、微少流体技術の分野外で有用性を有するかもしれないことに留意すべきである。液滴生産の高い速度および得られる液滴の狭いサイズの分布は、このような方法およびデバイスが、液滴サイズの一貫性が最重要であるエマルジョンの準備において有用性を有するかもしれないということを示す。実施例は、ワクチン組成物を含む薬剤を含むがこれに限定されない。液滴生産の高い速度および押し出される液滴の体積を制御するための性能は、このような方法およびデバイスが、流体/気体の界面を横切って固体表面上に生成された液滴を堆積し、これにより不揮発性の液滴内容物を堆積させ、局所化することにおいて有用性を有するかもしれないということを示す。このような使用の例は、高解像度プリンティングおよびマイクロアレイの生成を含むがこれらに限定されない。しかしながら、既に記載されたもの以外の多くのさらなる変形が本明細書での本発明のコンセプトから逸脱することなく可能であることは当業者にとって明らかであるべきである。
【0086】
本明細書に記載される実施例および実施形態は例示的な目的のみのためであること、およびその見地において種々の変更または変形が当業者に対して示唆され、添付のクレームの範囲と本願の精神および趣旨の範囲内に含まれることが理解される。本明細書で挙げられた全ての出版物、特許、および特許出願が、全ての目的のためにそれらの全体において参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、本明細書で参照されることにより組み込まれる参照文献における用語の定義または使用は、本明細書で提供される用語の定義と不一致または反対である場合、本明細書で提供されるその用語の定義が適用され、参照文献におけるその用語の定義は適用されない。用語「含む」および「含んでいる」は、非排他的態様で、参照される要素、成分、または工程が存在し、もしくは利用され、または明確に参照されていない他の要素、成分、または工程と組み合わされ得ることを示している、要素、成分、または工程を指すものとして解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0087】
310 第2流体チャネル
312 第
2流体
320 第1流体チャネル
322 第
1流体
410 第3流体チャネル
412 第3流体
415 第2流体チャネル
417 第2流体
420 第1流体チャネル
510 第3流体チャネル
512 第3流体
515 第2流体チャネル
517 第2流体
520 第1流体チャネル
522 第1流体
535 アパーチャ
610 第3流体チャネル
612 第3流体
615 第2流体チャネル
617 第2流体
620 第1流体チャネル
622 第1流体
635 可撓性膜
670 第2流体
710 第3流体チャネル
712 第3流体
715 第2流体チャネル
717 第2流体
720 第1流体チャネル
416、516、716 粒子または細胞
330、430、530、630 開口部
340、440、540、640、740 指向性エネルギー源
350、450、550、650、750 ミラー
355、455、555、655、755 レンズ
360、460、560、660、760 気泡
370、380、470、480、570、580、680、770、780 液滴