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特許6367719水素生成装置、燃料電池システム、およびこれらの運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367719
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】水素生成装置、燃料電池システム、およびこれらの運転方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/38 20060101AFI20180723BHJP
   C01B 3/48 20060101ALI20180723BHJP
   H01M 8/0612 20160101ALI20180723BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20180723BHJP
   C10L 3/10 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   C01B3/38
   C01B3/48
   H01M8/0612
   H01M8/04858
   C10L3/10
【請求項の数】16
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2015-4871(P2015-4871)
(22)【出願日】2015年1月14日
(65)【公開番号】特開2015-157746(P2015-157746A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2017年7月25日
(31)【優先権主張番号】特願2014-8712(P2014-8712)
(32)【優先日】2014年1月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 純司
(72)【発明者】
【氏名】行正 章典
(72)【発明者】
【氏名】石野 寿典
(72)【発明者】
【氏名】吉田 潤
(72)【発明者】
【氏名】藤井 宏明
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/164897(WO,A1)
【文献】 特開2000−095504(JP,A)
【文献】 特開2013−012332(JP,A)
【文献】 特開2008−297155(JP,A)
【文献】 特開2011−251898(JP,A)
【文献】 特開2002−356307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/00−3/58
C10L 3/10
H01M 8/04858
H01M 8/0612
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改質反応により水素含有ガスを生成する改質器と、
前記改質器に原料を供給する原料供給器と、
前記改質器に原料以外の反応ガスを供給する反応ガス供給器と、
前記改質器に供給される原料中の硫黄化合物を除去する水添脱硫器と、
前記改質器により生成される前記水素含有ガスの一部を水添脱硫器に供給するためのリサイクル流路と、
前記リサイクル流路を閉止する閉止器と、
運転を停止する際に、前記改質器の温度が前記改質器の内部に設けられた改質触媒上での原料からの炭素析出が抑制される温度まで低下する前に、前記閉止器を閉止するとともに、前記改質器へ原料及び原料以外の反応ガスが供給されるように前記原料供給器及び前記反応ガス供給器を制御する制御器と、を備える、
水素生成装置。
【請求項2】
前記水添脱硫器は、内部に水添脱硫触媒を備え、前記水添脱硫触媒は、前記リサイクル流路を通じて水素含有ガスが供給されていなくても原料中の硫黄化合物を吸着除去する触媒である、請求項1記載の水素生成装置。
【請求項3】
前記水添脱硫器よりも上流で原料中の硫黄化合物を吸着除去する吸着脱硫器と、
前記吸着脱硫器及び前記水添脱硫器を経由して前記改質器に供給される原料が流れる第1の原料供給路と、
前記吸着脱硫器を経由せず、前記水添脱硫器を経由して前記改質器に供給される原料が流れる第2の原料供給路と、
前記第1の原料供給路と前記第2の原料供給路とを切り替える切替器と、を備え、
前記制御器は、運転を停止する際に、前記改質器の温度が前記改質器の内部に設けられた改質触媒上での原料からの炭素析出が抑制される温度まで低下する前に、原料が前記第1の原料供給路を流れるよう前記切替器を切替え、かつ前記閉止器を閉止するとともに、前記改質器へ原料及び原料以外の反応ガスが供給されるように前記原料供給器及び前記反応ガス供給器を制御する、請求項1記載の水素生成装置。
【請求項4】
前記制御器は、運転を停止する際に、前記改質器の温度が前記改質器の内部に設けられた改質触媒上での原料からの炭素析出が抑制される温度まで低下する前に、少なくとも前記水添脱硫器の内部が原料でパージされるまで、前記改質器へ原料及び原料以外の反応ガスが供給されるように前記原料供給器及び前記反応ガス供給器を制御する、請求項1−3のいずれか1項に記載の水素生成装置。
【請求項5】
前記制御器は、前記制御を実行後、前記原料供給器及び前記反応ガス供給器を停止し、前記改質器の内部に設けられた改質触媒の温度が原料からの炭素析出が抑制される温度になると、前記原料供給器を制御して、前記改質器の内部を原料でパージする、請求1−4のいずれか1項に記載の水素生成装置。
【請求項6】
請求項1−5のいずれか1項に記載の水素生成装置と、前記水素生成装置より供給された水素含有ガスを用いて発電する燃料電池とを備える燃料電池システム。
【請求項7】
前記燃料電池の発電電力を調整する電力調整器を備え、
前記制御器は、運転を停止する際に、前記改質器の温度が前記改質器の内部に設けられた改質触媒上での原料からの炭素析出が抑制される温度まで低下する前に、前記閉止器を閉止するとともに、前記改質器へ原料及び原料以外の反応ガスが供給されるように前記原料供給器及び前記反応ガス供給器を制御しているとき、前記燃料電池が発電するよう前記電力調整器を制御する、請求項6記載の燃料電池システム。
【請求項8】
請求項5に記載の水素生成装置と、前記水素生成装置より供給された水素含有ガスを用いて発電する燃料電池とを備え、前記改質器の内部を原料でパージするとき、前記改質器を通過した原料は前記燃料電池に供給され、前記燃料電池の内部も原料でパージされる、燃料電池システム。
【請求項9】
水素生成装置の運転を停止する際に、改質器の温度が前記改質器の内部に設けられた改質触媒上での原料からの炭素析出が抑制される温度まで低下する前に、前記改質器で改質反応により生成した水素含有ガスの一部を水添脱硫器に供給するためのリサイクル流路を閉止するとともに、前記水添脱硫器に原料を供給するステップ(a)と、
前記ステップ(a)を実行しているとき、前記原料及び原料以外の反応ガスが前記水添脱硫器を経て前記改質器に供給されることで、水素含有ガスを生成するステップ(b)と、を備える、水素生成装置の運転方法。
【請求項10】
前記水添脱硫器は、内部に水添脱硫触媒を備え、前記水添脱硫触媒は、前記リサイクル流路を通じて水素含有ガスが供給されていなくても原料中の硫黄化合物を吸着除去する触媒である、請求項9記載の水素生成装置の運転方法。
【請求項11】
前記ステップ(a)において、原料は、前記水添脱硫器の通過前に吸着脱硫器を通過する、請求項9記載の水素生成装置の運転方法。
【請求項12】
少なくとも前記水添脱硫器の内部が原料でパージされるまで、ステップ(b)を実行する、請求項9−11のいずれか1項に記載の水素生成装置の運転方法。
【請求項13】
前記ステップ(a)及び(b)を実行後、前記原料の供給及び前記反応ガスの供給を停止し、改質器の温度が前記改質器の内部に設けられた改質触媒上で原料からの炭素析出が抑制される温度以下になると前記改質器の内部を原料でパージするステップ(c)を備える、請求項9−12のいずれか1項に記載の水素生成装置の運転方法。
【請求項14】
燃料電池システムの発電運転を停止する際に、改質器の温度が前記改質器の内部に設けられた改質触媒上での原料からの炭素析出が抑制される温度まで低下する前に、前記改質器で改質反応により生成した水素含有ガスの一部を水添脱硫器に供給するためのリサイクル流路を閉止するとともに、前記水添脱硫器に原料を供給するステップ(d)と、
前記ステップ(d)を実行しているとき、前記原料及び原料以外の改質反応に用いられる反応ガスが前記水添脱硫器を経て前記改質器に供給されることで、水素含有ガスを生成するステップ(e)と、を備える、燃料電池システムの運転方法。
【請求項15】
前記ステップ(e)を実行しているとき、前記燃料電池で発電するステップ(f)を備える、請求項14記載の燃料電池システムの運転方法。
【請求項16】
前記ステップ(d)及び(e)を実行後、前記原料の供給及び前記反応ガスの供給を停止し、改質器の温度が前記改質器の内部に設けられた改質触媒上で原料からの炭素析出が抑制される温度以下になると前記改質器および前記燃料電池の内部を原料でパージするステップ(g)を備える、請求項14または15に記載の燃料電池システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素生成装置、燃料電池システム、およびこれらの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池システムに代表されるような水素含有ガスを燃料として用いる機器では、水素含有ガスのインフラが一般的に整備されていないため、通常、一般的な原料インフラである天然ガスやLPGなどの原料から水素含有ガスを生成させる改質器を有する水素生成装置を備えている。
【0003】
原料には付臭剤として硫黄化合物が含まれうる。硫黄化合物は、特に改質触媒の被毒物質であるので、何らかの方法で原料から除去する必要がある。除去方法として、生成された水素含有ガスの一部をリサイクルして、水添脱硫により除去する方法を用いた水素生成装置が提案されている。
【0004】
特許文献1は、改質器に供給される原料ガス中の硫黄化合物を吸着除去する第1の脱硫器と、改質器に供給される原料ガス中の硫黄化合物を水添脱硫する第2の脱硫器と、原料ガスが第1の脱硫器を経由して改質器に供給される第1の経路と、原料ガスが第1の脱硫器を経由せず、第2の脱硫器を経由して改質器に供給される第2の経路と、第1の経路と、第2の経路とを切替える切替器と、制御器とを備え、水素含有ガスの生成動作の停止後の内圧低下を補うために原料ガスを補給する補圧動作及び水素生成装置内を原料ガスでパージする原料ガスパージ動作の少なくともいずれか一方において、制御器は、原料ガスが第1の経路を流れるよう切替器を制御する、水素生成装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2011/077752号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、水添脱硫器を備えた水素生成装置において、水添脱硫触媒の活性低下を低減することを課題とする。
【0007】
上記事情を鑑み、限定的ではない例示的なある実施形態は、従来よりも水添脱硫触媒の活性低下を低減する水素生成装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の水素生成装置の一態様は、改質反応により水素含有ガスを生成する改質器と、前記改質器に原料を供給する原料供給器と、前記改質器に原料以外の反応ガスを供給する反応ガス供給器と、前記改質器に供給される原料中の硫黄化合物を除去する水添脱硫器と、前記改質器により生成される前記水素含有ガスの一部を水添脱硫器に供給するためのリサイクル流路と、前記リサイクル流路を閉止する閉止器と、運転を停止する際に、前記改質器の温度が前記改質器の内部に設けられた改質触媒上での原料からの炭素析出が抑制される温度まで低下する前に、前記閉止器を閉止するとともに、前記改質器へ原料及び原料以外の反応ガスが供給されるように前記原料供給器及び前記反応ガス供給器を制御する制御器と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、水添脱硫器を備えた水素生成装置において、水添脱硫触媒の活性低下を低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態にかかる水素生成装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、第1実施形態にかかる水素生成装置の運転方法の概略の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、第2実施形態にかかる燃料電池システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、第2実施形態にかかる燃料電池システムの運転方法の概略の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、第3実施形態にかかる水素生成装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図6図6は、第1実施例にかかる水素生成装置の概略構成の一例を示すブロック図である。
図7図7は、第1実施例にかかる水素生成装置の運転方法の概略の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、第4実施形態にかかる燃料電池システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
図9図9は、第2実施例にかかる燃料電池システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
図10図10は、第2実施例にかかる燃料電池システムの運転方法の概略の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明者らは、水添脱硫器を備えた水素生成装置において、水添脱硫触媒の活性低下を低減するための構成を鋭意検討した。その結果、以下の知見を得た。
【0012】
水添脱硫器には、改質器から送出される水素含有ガスの一部がリサイクルされ供給される。該水素含有ガスには、相当量の水蒸気が含まれる。本発明者らは、水添脱硫器の内部に水素含有ガスが残留した状態で運転が停止すると、水素含有ガス中の水蒸気が温度低下により凝縮し、水添脱硫触媒の活性を低下させる可能性があることに気付いた。
【0013】
特許文献1に開示されている水素生成装置では、原料パージが実行される際に、水添脱硫器も原料でパージされるため、水添脱硫器内に残留する水蒸気は原料パージ時に掃気される。しかしながら、改質器において炭素析出が抑制される温度で原料パージが実行されるため、改質器よりも制御温度の低い水添脱硫器では水蒸気が凝縮し、水添脱硫触媒の活性を低下させる可能性がある。改質器で炭素析出が抑制される温度になる前に水添脱硫器を原料でパージすれば、特許文献1記載の水素生成装置に比べ、水添脱硫器での水凝縮量の低下が見込まれるが、上記温度で水添脱硫器に原料を供給すると、改質器で原料から炭素析出する可能性がある。
【0014】
しかしながら、改質器に対しては、原料のみならず原料以外の反応ガスをも供給すれば、改質反応が進行し、改質器あるいは改質器の下流に設置された機器における原料の炭化は抑制される。
【0015】
ここで、本発明者は、以下の開示内容に想到した。
【0016】
すなわち、本開示の第1態様は、改質反応により水素含有ガスを生成する改質器と、改質器に原料を供給する原料供給器と、改質器に原料以外の反応ガスを供給する反応ガス供給器と、改質器に供給される原料中の硫黄化合物を除去する水添脱硫器と、改質器により生成される水素含有ガスの一部を水添脱硫器に供給するためのリサイクル流路と、リサイクル流路を閉止する閉止器と、運転を停止する際に、改質器の温度が改質器の内部に設けられた改質触媒上での原料からの炭素析出が抑制される温度まで低下する前に、閉止器を閉止するとともに、改質器へ原料及び原料以外の反応ガスが供給されるように原料供給器及び反応ガス供給器を制御する制御器と、を備える、水素生成装置を提供する。
【0017】
このようにすれば、改質器での炭素析出を抑制しながら、従来よりも水添脱硫器での水凝縮量を低下させ、水添脱硫触媒の活性低下が抑制される。また、上記制御は、リサイクル流路を閉止した状態で実行されるので、リサイクル流路内の残留する水蒸気が水添脱硫器に流入することが抑制され、水添脱硫器の水凝縮量がより低下する。
【0018】
本開示の第2態様は、第1態様において、水添脱硫器は、内部に水添脱硫触媒を備え、該水添脱硫触媒は、リサイクル流路を通じて水素含有ガスが供給されていなくても原料中の硫黄化合物を吸着除去する触媒であってもよい、水素生成装置を提供する。
【0019】
かかる構成によれば、運転を停止する際に閉止器を閉止しても、改質器に供給される原料中の硫黄化合物を除去できる。
【0020】
本開示の第3態様は、第1態様において、前記水添脱硫器よりも上流で原料中の硫黄化合物を吸着除去する吸着脱硫器と、前記吸着脱硫器及び前記水添脱硫器を経由して前記改質器に供給される原料が流れる第1の原料供給路と、前記吸着脱硫器を経由せず、前記水添脱硫器を経由して前記改質器に供給される原料が流れる第2の原料供給路と、前記第1の原料供給路と前記第2の原料供給路とを切り替える切替器と、を備え、前記制御器は、運転を停止する際に、前記改質器の温度が前記改質器の内部に設けられた改質触媒上での原料からの炭素析出が抑制される温度まで低下する前に、原料が前記第1の原料供給路を流れるよう前記切替器を切替え、かつ前記閉止器を閉止するとともに、前記改質器へ原料及び原料以外の反応ガスが供給されるように前記原料供給器及び前記反応ガス供給器を制御する、水素生成装置を提供する。
【0021】
かかる構成によれば、水添脱硫器に水素が供給されなくなった後も、吸着脱硫器により脱硫された原料を改質器に供給でき、硫黄化合物による改質触媒の被毒を低減できる。
【0022】
本開示の第4態様は、第1−第3態様のいずれか1つにおいて、前記制御器は、運転を停止する際に、前記改質器の温度が前記改質器の内部に設けられた改質触媒上での原料からの炭素析出が抑制される温度まで低下する前に、少なくとも前記水添脱硫器の内部が原料でパージされるまで、前記改質器へ原料及び原料以外の反応ガスが供給されるように前記原料供給器及び前記反応ガス供給器を制御する、水素生成装置を提供する。
【0023】
かかる構成によれば、水添脱硫器を備えた水素生成装置において、水添脱硫触媒の活性低下をさらに効果的に低減することができる。
【0024】
本開示の第5態様は、第1−第4態様のいずれか1つにおいて、前記制御器は、前記制御を実行後、改質器の内部に設けられた改質触媒の温度が原料からの炭素析出が抑制される温度になると、原料供給器を制御して、改質器の内部を原料でパージしてもよい、水素生成装置を提供する。
【0025】
かかる構成によれば、水添脱硫器を備えた水素生成装置において、改質触媒での炭素析出を抑制しながら、従来よりも水添脱硫触媒の活性低下を低減することができる。また、上記制御は、リサイクル流路を閉止した状態で実行されるので、リサイクル流路内の残留する水蒸気が水添脱硫器に流入することが抑制され、水添脱硫器の水凝縮量がより低下する。
【0026】
本開示の第6態様は、第1−第5態様のいずれか1つに記載の水素生成装置と、前記水素生成装置より供給された水素含有ガスを用いて発電する燃料電池とを備える、燃料電池システムを提供する。
【0027】
かかる構成によれば、水添脱硫器を備えた水素生成装置を備える燃料電池システムにおいて、改質器での炭素析出を抑制しながら、従来よりも水添脱硫器での水凝縮量を低下させ、水添脱硫触媒の活性低下が抑制される。また、前記制御は、リサイクル流路を閉止した状態で実行されるので、リサイクル流路内の残留する水蒸気が水添脱硫器に流入することが抑制され、水添脱硫器の水凝縮量がより低下する。
【0028】
本開示の第7態様は、第6態様において、前記燃料電池の発電電力を調整する電力調整器を備え、前記制御器は、運転を停止する際に、前記改質器の温度が前記改質器の内部に設けられた改質触媒上での原料からの炭素析出が抑制される温度まで低下する前に、前記閉止器を閉止するとともに、前記改質器へ原料及び原料以外の反応ガスが供給されるように前記原料供給器及び前記反応ガス供給器を制御しているとき、前記燃料電池が発電するよう前記電力調整器を制御する、燃料電池システムを提供する。
【0029】
かかる構成によれば、水添脱硫器を備えた燃料電池システムにおいて、水添脱硫触媒、改質触媒、および燃料電池の電極触媒の活性低下を低減することができる。
【0030】
本開示の第8態様は、第5態様の水素生成装置と、前記水素生成装置より供給された水素含有ガスを用いて発電する燃料電池とを備え、前記改質器の内部を原料でパージするとき、前記改質器を通過した原料は前記燃料電池に供給され、前記燃料電池の内部も原料でパージされる、燃料電池システムを提供する。
【0031】
かかる構成によれば、改質触媒および電極触媒の活性低下を低減できる。また、上記制御は、リサイクル流路を閉止した状態で実行されるので、リサイクル流路内の残留する水蒸気が水添脱硫器に流入することが抑制され、水添脱硫器の水凝縮量がより低下する。
【0032】
本開示の第9態様は、水素生成装置の運転を停止する際に、改質器の温度が改質器の内部に設けられた改質触媒上での原料からの炭素析出が抑制される温度まで低下する前に、改質器で改質反応により生成した水素含有ガスの一部を水添脱硫器に供給するためのリサイクル流路を閉止するとともに、水添脱硫器に原料を供給するステップ(a)と、ステップ(a)を実行しているとき、水添脱硫器を通過した原料及び原料以外の改質反応に用いられる反応ガスを改質器に供給して、水素含有ガスを生成するステップ(b)と、を備える、水素生成装置の運転方法を提供する。
【0033】
かかる構成では、改質器での炭素析出を抑制しながら、従来よりも水添脱硫器での水凝縮量を低下させ、水添脱硫触媒の活性低下が抑制される。また、上記制御は、リサイクル流路を閉止した状態で実行されるので、リサイクル流路内の残留する水蒸気が水添脱硫器に流入することが抑制され、水添脱硫器の水凝縮量がより低下する。
【0034】
本開示の第10態様は、第9態様において、水添脱硫器は、内部に水添脱硫触媒を備え、該水添脱硫触媒は、リサイクル流路を通じて水素含有ガスが供給されていなくても原料中の硫黄化合物を吸着除去する触媒であってもよい、水素生成装置の運転方法を提供する。
【0035】
かかる構成によれば、運転を停止する際に閉止器を閉止しても、改質器に供給される原料中の硫黄化合物を除去できる。
【0036】
本開示の第11態様は、第9態様において、前記ステップ(a)において、原料は、前記水添脱硫器の通過前に吸着脱硫器を通過してもよい、水素生成装置の運転方法を提供する。
【0037】
かかる構成によれば、水添脱硫器に水素が供給されなくなった後も、吸着脱硫器により脱硫された原料を改質器に供給でき、硫黄化合物による改質触媒の被毒を低減できる。
【0038】
本開示の第12態様は、第9−第11態様のいずれか1つにおいて、少なくとも水添脱硫器の内部が原料でパージされるまで、ステップ(b)を実行してもよい、水素生成装置の運転方法を提供する。
【0039】
かかる構成によれば、水添脱硫器を備えた水素生成装置において、水添脱硫触媒の活性低下をさらに効果的に低減することができる。
【0040】
本開示の第13態様は、第9−第12態様のいずれか1つにおいて、ステップ(a)及び(b)を実行後、改質器の温度が改質器の内部に設けられた改質触媒上での原料からの炭素析出が抑制される温度以下になると改質器の内部を原料でパージするステップ(c)を備えてもよい、水素生成装置の運転方法を提供する。
【0041】
かかる構成によれば、水添脱硫器を備えた水素生成装置において、改質触媒での炭素析出を抑制しながら、従来よりも水添脱硫触媒の活性低下を低減することができる。また、上記制御は、リサイクル流路を閉止した状態で実行されるので、リサイクル流路内の残留する水蒸気が水添脱硫器に流入することが抑制され、水添脱硫器の水凝縮量がより低下する。
【0042】
本開示の第14態様は、燃料電池システムの発電運転を停止する際に、改質器の温度が前記改質器の内部に設けられた改質触媒上での原料からの炭素析出が抑制される温度まで低下する前に、前記改質器で改質反応により生成した水素含有ガスの一部を水添脱硫器に供給するためのリサイクル流路を閉止するとともに、前記水添脱硫器に原料を供給するステップ(d)と、前記ステップ(d)を実行しているとき、前記水添脱硫器を通過した原料及び原料以外の改質反応に用いられる反応ガスを前記改質器に供給して、水素含有ガスを生成するステップ(e)と、を備える、燃料電池システムの運転方法を提供する。
【0043】
かかる構成によれば、水添脱硫器を備えた水素生成装置において、水添脱硫触媒の活性低下を低減することができる。
【0044】
本開示の第15態様は、第14態様において、前記ステップ(e)を実行しているとき、前記燃料電池で発電するステップ(f)を備える、燃料電池システムの運転方法を提供する。
【0045】
かかる構成によれば、水添脱硫器を備えた燃料電池システムにおいて、水添脱硫触媒、改質触媒、および電極触媒の活性低下を低減することができる。
【0046】
本開示の第16態様は、第14態様または第15態様において、前記ステップ(d)及び(e)を実行後、改質器の温度が前記改質器の内部に設けられた改質触媒上で原料からの炭素析出が抑制される温度以下になると前記改質器および前記燃料電池の内部を原料でパージするステップ(g)を備える、燃料電池システムの運転方法を提供する。
【0047】
かかる構成によれば、改質触媒および電極触媒の活性低下を低減できる。また、上記制御は、リサイクル流路を閉止した状態で実行されるので、リサイクル流路内の残留する水蒸気が水添脱硫器に流入することが抑制され、水添脱硫器の水凝縮量がより低下する。
【0048】
以下、添付図面を参照しつつ、本開示の実施形態について説明する。
【0049】
以下で説明する実施形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、あくまで一例であり、本開示を限定するものではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、図面において、同じ符号が付いたものは、説明を省略する場合がある。また、図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を模式的に示したもので、形状および寸法比等については正確な表示ではない場合がある。また、製造方法においては、必要に応じて、各工程の順序等を変更でき、かつ、他の公知の工程を追加できる。
【0050】
(第1実施形態)
[装置構成]
図1は、第1実施形態にかかる水素生成装置の概略構成の一例を示すブロック図である。以下、図1を参照しつつ、第1実施形態の水素生成装置100について説明する。
【0051】
図1に示す例において、水素生成装置100は、改質器2と、原料供給器4と、反応ガス供給器6と、水添脱硫器8と、リサイクル流路10と、閉止器12と、制御器14とを備えている。
【0052】
改質器2は、原料と原料以外の反応ガスとを用いて改質反応により水素含有ガスを生成する。改質反応はいずれの種類であっても良く、水蒸気改質反応、オートサーマル反応、及び部分酸化反応等が例示される。原料は、少なくとも炭素及び水素を構成元素とする有機化合物を含む。原料としては、具体的には、メタンを主成分とする都市ガス、天然ガス、LPG、LNG、都市ガス等の少なくとも炭素及び水素から構成される有機化合物を含むガス、炭化水素、及びメタノール等のアルコールが例示される。原料以外の反応ガスとしては、改質反応が水蒸気改質であるときは水蒸気、改質反応がオートサーマルであるときは、水蒸気及び空気、改質反応が部分酸化反応であるときは空気が挙げられる。
【0053】
また、改質器2は、改質反応を進行させるための改質触媒を備える。改質触媒には、触媒金属として、例えば、Ru、Ni等が用いられる。
【0054】
水素生成装置100は、各改質反応において使用される機器が適宜設けられてもよい。例えば改質反応が水蒸気改質反応であれば、改質器を加熱する燃焼器、水蒸気を生成する蒸発器、及び、蒸発器に水を供給する水供給器が設けられてもよい。改質反応がオートサーマル反応であれば、水素生成装置100には、さらに、改質器に空気を供給する空気供給器、または改質触媒の温度を検知する温度検知器(図示せず)が設けられてもよい。
【0055】
なお、改質器2の下流に改質器2で生成された水素含有ガス中の一酸化炭素を低減するためのCO低減器を設けても構わない。CO低減器は、シフト反応により一酸化炭素を低減させる変成器と、酸化反応及びメタン化反応の少なくともいずれか一方により一酸化炭素を低減させるCO除去器との少なくともいずれか一方を備える。
【0056】
原料供給器4は、改質器2に原料を供給する。原料供給器4は、改質器2へ供給する原料の流量を調整可能に構成されていてもよい。原料供給器4は、例えば、昇圧器と流量調整弁により構成されるが、これらのいずれか一方により構成されてもよい。昇圧器は、例えば、モータ駆動による定容積型ポンプが用いられるが、これに限定されるものではない。原料は、原料供給源より供給される。原料供給源は、所定の供給圧を有していてもよく、例えば、原料ガスボンベ、原料ガスインフラ等が挙げられる。
【0057】
反応ガス供給器6は、改質器に原料以外の反応ガスを供給する。反応ガス供給器6は、改質器2へ供給する原料以外の反応ガスの流量を調整可能に構成されていてもよい。反応ガス供給器6は、例えば、改質反応が水蒸気改質反応、酸化的水蒸気改質反応またはオートサーマル反応等である場合における水蒸気供給器、改質反応が部分酸化反応、酸化的水蒸気改質反応またはオートサーマル反応等である場合における空気供給器等とすることができる。ここで、水蒸気供給器は、水蒸気を生成する蒸発器、蒸発器に水を供給する水供給器、蒸発器を加熱する加熱器を備える。なお、加熱器は、改質器を加熱する燃焼器と兼用してもよい。また、水蒸気供給器からの水蒸気供給量は、水供給器及び加熱器の少なくともいずれか一方を制御することにより実行される。
【0058】
水添脱硫器8は、改質器2に供給される原料中の硫黄化合物を除去する。水添脱硫器8は、硫黄化合物を水素化反応により硫化水素にし、硫化水素を化学吸着により除去する。水添脱硫器8は、容器に水添脱硫触媒が充填され構成されうる。水添脱硫触媒は、例えば、硫黄化合物を硫化水素に変換する機能と硫化水素を吸着する機能を共に有するCuZn系触媒が用いられる。水添脱硫触媒は、本例に限定されるものではなく、原料中の硫黄化合物を硫化水素に変換するCoMo系触媒と、その下流に設けられる、硫化水素を吸着除去する硫黄吸着剤であるZnO系触媒、またはCuZn系触媒とで構成してもよい。
【0059】
硫黄化合物は、付臭成分として人為的に原料へ添加されるものであってもよいし、原料自体に由来する天然の硫黄化合物であってもよい。具体的には、ターシャリブチルメルカプタン(TBM:tertiary-butylmercaptan)、ジメチルスルフィド(DMS:dimethyl sulfide)、テトラヒドロチオフェン(THT:Tetrahydrothiophene)、硫化カルボニル(COS:carbonyl sulfide)、硫化水素(hydrogen sulfide)等が例示される。
【0060】
水添脱硫器8がその内部に備える水添脱硫触媒は、リサイクル流路を通じて水素含有ガスが供給されていなくても原料中の硫黄化合物を吸着除去する触媒であってもよい。かかる水添脱硫触媒としては、例えば、硫黄化合物を硫化水素に変換する機能と硫化水素を吸着する機能を共に有するCuZn系触媒等が挙げられる。
【0061】
リサイクル流路10は、改質器2により生成される水素含有ガスの一部を水添脱硫器8に供給するための流路である。リサイクル流路10の上流端は、改質器2により生成された水素含有ガスが流れる流路であれば、いずれの箇所に接続されていても構わない。例えば、改質器2の下流に水素含有ガス中の一酸化炭素を低減するCO低減器を設けた場合、リサイクル流路10の上流端は、改質器2とCO低減器との間の流路に接続されていてもよいし、CO低減器に接続されていてもよいし、CO低減器の下流に接続されていてもよい。なお、CO低減器が、シフト反応により一酸化炭素を低減する変成器と、酸化反応及びメタン化反応の少なくともいずれか一方により一酸化炭素を低減するCO除去器とを備える場合、リサイクル流路10の上流端を変成器とCO除去器との間の流路に接続するよう構成しても構わない。また、リサイクル流路10の上流端を、水素含有ガスを利用する水素利用機器の下流の流路に接続しても構わない。
【0062】
閉止器12は、リサイクル流路を閉止する。閉止器12としては、例えば、リサイクル流路を開閉する開閉器とすることができ、さらに具体的には例えば、電磁式の開閉弁とすることができる。閉止器12は、制御器14と通信可能に接続され、制御器14の制御によりリサイクル流路を開閉してもよい。
【0063】
制御器14は、水素生成装置100の運転を停止する際に、改質器2の温度が改質器2の内部に設けられた改質触媒上での原料からの炭素析出が抑制される温度まで低下する前に、閉止器12を閉止するとともに、改質器2へ原料及び原料以外の反応ガスが供給されるように原料供給器4及び反応ガス供給器6を制御する。制御器14は、制御機能を有するものであればよく、演算処理部(図示せず)と、制御プログラムを記憶する記憶部(図示せず)とを備える。演算処理部としては、MPU、CPUが例示される。記憶部としては、メモリーが例示される。制御器は、集中制御を行う単独の制御器で構成されていてもよく、互いに協働して分散制御を行う複数の制御器で構成されていてもよい。
【0064】
ここで、上記制御は、水素生成装置100の運転停止が開始してから改質器2の温度が改質触媒上での原料からの炭素析出が抑制される温度まで低下する前までであればいずれのタイミングで実行してもよい。例えば、水素生成装置100の運転停止が開始してからも改質器2への原料及び原料以外の反応ガスの供給を実行する一方、閉止器12を閉止することで、上記制御を実行してもよい。また、水素生成装置100の運転停止が開始されると、改質器2への原料及び原料以外の反応ガスの供給を停止するとともに閉止器12を閉止する。その後、改質器2の温度が改質触媒上での原料からの炭素析出が抑制される温度まで低下する前に、閉止器12を閉止したまま、改質器2への原料及び原料以外の反応ガスの供給を行うことで、上記制御を実行してもよい。
【0065】
なお、改質器2に供給する原料以外の反応ガスは、改質器2の運転停止を開始する前と上記制御を実行する場合とで同一でなくても構わない。例えば、改質器2の運転停止を開始する前では、原料以外の反応ガスとして、水蒸気及び空気を供給し、酸化的水蒸気改質を実行し、上記制御においては、原料以外の反応ガスとして水蒸気を供給し、水蒸気改質反応を実行してもよいし、原料以外の反応ガスとして空気を供給し、部分酸化反応を実行してもよい。
【0066】
また、一般的に、改質器2の温度が改質触媒上での原料からの炭素析出が抑制される温度まで低下する前であれば、改質反応が進行可能な温度であるため、上記制御において燃焼器から改質器2に熱を供給しなくてもよい。
【0067】
また、水素生成装置100の運転停止は、停止要求が発生すると開始される。ここで、停止要求とは、例えば、予め設定された水素生成装置の停止開始時刻になった場合や使用者が停止器(リモコン、携帯機器等)を操作して水素生成装置100の運転停止を指示したような場合等が挙げられる。水素生成装置100の運転停止が開始されると、水素生成装置100の停止処理が実行される。
【0068】
閉止器12を閉止することにより、水添脱硫器8への水素含有ガス(リサイクルガス)の供給が停止する。一方、改質器2への原料及び原料以外の反応ガスの供給が継続されることにより、水添脱硫器8の内部には原料が供給される。原料は、水素含有ガスよりも水蒸気濃度が低い。従って、水添脱硫器8の内部の露点は低下し、温度が低下しても水添脱硫器8の内部での水凝縮量が低下する。よって、凝縮水による水添脱硫触媒の活性低下を低減することができる。一方、改質器2へは原料及び原料以外の反応ガスが供給されるため、改質反応が進行する。従って、改質器2の温度が、原料が炭化するほど高くても、原料の炭化、すなわち炭素の析出、は抑制される。
【0069】
制御器14は、水素生成装置100の運転の停止時に、上記制御を実行する際に、少なくとも水添脱硫器8内が原料でパージされるまで、改質器2へ原料及び原料以外の反応ガスが供給されるように原料供給器4及び反応ガス供給器6を制御してもよい。「少なくとも水添脱硫器8内が原料でパージされるまで」とは、例えば、少なくとも水添脱硫器8の内部流路の容積に相当する原料を水添脱硫器8へと供給されるまでとしうる。制御器14は、水添脱硫器8内が原料でパージされたら、原料供給器4及び反応ガス供給器6を停止してもよい。
【0070】
かかる制御を実現する手段として、例えば、制御器14が計時器(図示せず)を備え、所定時間が経過するまで原料パージを継続してもよい。あるいは例えば、水素生成装置100が流量検出器(図示せず)を備え、累積流量が水添脱硫器8の容積に達するまで原料パージを継続してもよい。該流量検出器は、原料供給器4と一体に構成されていてもよい。
【0071】
制御器14は、運転を停止する際に、改質器2の内部に設けられた改質触媒の温度が原料からの炭素析出が抑制される温度になると、原料供給器4を制御して、改質器2の内部を原料でパージしてもよい。
【0072】
このとき、水添脱硫器8の原料パージのため、改質触媒の温度が原料からの炭素析出が抑制される温度になる直前まで反応ガス供給器6による反応ガスの供給が継続している場合には、制御器14が反応ガス供給器6を制御して原料以外の反応ガスの供給を停止してもよい。あるいは、原料供給器4による原料の供給及び反応ガス供給器6による反応ガスの供給が停止している場合には、制御器14は、原料供給器4のみを動作させて原料を改質器2へと供給してもよい。
【0073】
改質触媒の温度を検知するために、温度検知器が設けられてもよい。温度検知器は、改質触媒の温度を直接的に検知してもよいし、水素生成装置100の他の部位の温度等を検知することで改質触媒の温度を間接的に検知してもよい。
【0074】
[運転方法]
図2は、第1実施形態にかかる水素生成装置の運転方法の概略の一例を示すフローチャートである。フローチャートに示す動作は、例えば、制御器14が備える記憶部に記憶されたプログラムを制御器14が実行することにより実現されうる。ただし、制御器14により実行されることは必須ではなく、その一部または全部が操作者により実行されてもよい。
【0075】
図2に示す例において、水素生成装置100の運転を停止する際に、本開示の制御が開始される(スタート)。制御器14は、改質器2の温度が改質器2の内部に設けられた改質触媒上での原料からの炭素析出が抑制される温度まで低下する前に、改質器2で改質反応により生成した水素含有ガスの一部を水添脱硫器8に供給するためのリサイクル流路10を閉止するとともに、水添脱硫器8に原料を供給する(ステップ(a))。具体的に、本例では、水素生成装置100の運転停止が開始されても、水添脱硫器8への原料の供給を継続する。
【0076】
そして、制御器14は、ステップ(a)を実行しているとき、すなわちリサイクル流路10を閉止するとともに水添脱硫器8に原料を供給しながら、水添脱硫器8を通過した原料及び原料以外の改質反応に用いられる反応ガスを改質器2に供給して、水素含有ガスを生成する(ステップ(b))。具体的に、本例では、水素生成装置100の運転停止が開始されても、改質器2への反応ガスの供給を継続する。なお、改質反応が進行可能であるなら反応ガスを変更しても構わない。例えば、水素生成装置100の運転停止が開始される前は、原料以外の反応ガスとして水蒸気を供給し、水蒸気改質反応を進行させ、上記制御では、原料ガス以外の反応ガスとして空気を供給し、部分酸化反応を進行させてもよい。
【0077】
その後、制御器14は、所定のタイミングで、停止動作を終了する(エンド)。
【0078】
改質器2の温度が改質器2の内部に設けられた改質触媒上での原料からの炭素析出が抑制される温度まで低下する前に、リサイクル流路10を閉止することにより、水添脱硫器8への水素含有ガス(リサイクルガス)の供給が停止する。水添脱硫器8への原料の供給は継続されるから、水添脱硫器8の内部は原料によりパージされる。原料は、水素含有ガスよりも水蒸気濃度が低い。従って、水添脱硫器8の内部の露点は低下し、温度が低下しても水添脱硫器8の内部での水凝縮量が低下する。よって、改質器での炭素析出を抑制しながら、従来よりも水添脱硫器での水凝縮量を低下させ、水添脱硫触媒の活性低下が抑制される。また、上記制御は、リサイクル流路を閉止した状態で実行されるので、リサイクル流路内の残留する水蒸気が水添脱硫器に流入することが抑制され、水添脱硫器の水凝縮量がより低下する。一方、改質器2へは原料及び原料以外の反応ガスの供給されるため、改質反応が進行する。従って、改質器2の内部の温度が原料が炭化するほど高くても、原料の炭化、すなわち炭素の析出、は抑制される。
【0079】
少なくとも水添脱硫器8の内部が原料でパージされるまで、ステップ(b)を実行してもよい。かかる構成では、水添脱硫器を備えた水素生成装置において、水添脱硫触媒の活性低下をさらに効果的に低減することができる。
【0080】
第1実施形態の変形例にかかる運転方法は、ステップ(a)及び(b)を実行後、改質器の温度が改質器2の内部に設けられた改質触媒上での原料からの炭素析出が抑制される温度以下になると改質器の内部を原料でパージするステップ(c)を備えうる。かかる構成では、水添脱硫器を備えた水素生成装置において、水添脱硫触媒および改質触媒の活性低下を低減することができる。また、上記制御は、リサイクル流路を閉止した状態で実行されるので、リサイクル流路内の残留する水蒸気が水添脱硫器に流入することが抑制され、水添脱硫器の水凝縮量がより低下する。
【0081】
なお、上記フローにおける、改質器の温度は、改質器自体の温度及び改質器の温度と相関する温度のいずれかであってもよい。改質器自体の温度としては、改質器を構成する構造体の温度、改質触媒の温度、改質器を流通するガス温度等が例示される。また、改質器の温度に相関する温度としては、改質器から排出された水素含有ガスの温度、改質器を加熱する燃焼器の温度等が例示される。
【0082】
(第2実施形態)
[装置構成]
図3は、第2実施形態にかかる燃料電池システムの概略構成の一例を示すブロック図である。以下、図3を参照しつつ、第2実施形態の燃料電池システム150について説明する。
【0083】
図3に示す例において、燃料電池システム150は、燃料電池50を備えている。燃料電池50は、水素生成装置100より供給された水素含有ガスを用いて発電する。燃料電池は、いずれの種類であってもよく、高分子電解質形燃料電池、固体酸化物形燃料電池、及び燐酸形燃料電池等が例示される。なお、燃料電池が、固体酸化物形燃料電池の場合は、改質器2と燃料電池50とが1つの容器内に内蔵されるよう構成されてもよい。
【0084】
燃料電池50において、使用される機器が適宜設けられてもよい。例えば発電反応制御する燃料電池の温度を検知する燃料電池温度計測器(図示せず)が設けられてもよい。
【0085】
以上の点を除き、燃料電池システム150は、第1実施形態の水素生成装置100と同様の構成とすることができる。よって、図1図3とで共通する構成要素については、同一の符号および名称を付して詳細な説明を省略する。
【0086】
燃料電池システム150は、電力調整器(図示せず)を備えてもよい。電力調整器は、燃料電池の発電電力を調整する。制御器14は、燃料電池システム150の運転を停止する際に、改質器2の温度が改質器2の内部に設けられた改質触媒上での原料からの炭素析出が抑制される温度まで低下する前に、閉止器12を閉止するとともに、改質器2へ原料及び原料以外の反応ガスが供給されるように原料供給器4及び反応ガス供給器6を制御しているとき、燃料電池50が発電するよう電力調整器を制御する。電力調整器としては、例えば、外部から要求される負荷である交流出力に対し燃料電池で出力される直流出力を変換するAC−DCコンバータや燃料電池の補機を動作させるために直流出力を調整するDC−DCコンバータなどを組み合わせて用いることができる。
【0087】
燃料電池システム150において、改質器2の内部を原料でパージするとき、改質器2を通過した原料は燃料電池50をバイパスする第1バイパス経路11を通流させられてもよい。第1バイパス経路11は、例えば改質器2を加熱するバーナ(図示せず)に接続されてもよい。なお、第1バイパス経路11は必須ではなく、下記のように燃料電池50も原料パージされる場合には、第1バイパス経路11が省略されてもよい。
【0088】
燃料電池システム150において、改質器2の内部を原料でパージするとき、改質器2を通過した原料は燃料電池50に供給され、燃料電池50の内部も原料でパージされてもよい。すなわち、制御器14は、該制御を実行後、改質器2の内部に設けられた改質触媒の温度が原料からの炭素析出が抑制される温度になると、原料供給器4を制御して、改質器2の内部を原料でパージし、同時に、燃料電池50の内部を原料でパージする。
【0089】
第2実施形態の燃料電池システム150においても、第1実施形態と同様の変形が可能である。
【0090】
[運転方法]
図4は、第2実施形態にかかる燃料電池システムの運転方法の概略の一例を示すフローチャートである。フローチャートに示す動作は、例えば、制御器14が備える記憶部に記憶されたプログラムを制御器14が実行することにより実現されうる。ただし、制御器14により実行されることは必須ではなく、その一部または全部が操作者により実行されてもよい。
【0091】
図4に示す例において、燃料電池システム150の運転を停止する際に、本開示の制御が開始される(スタート)。制御器14は、改質器2の温度が改質器2の内部に設けられた改質触媒上での原料からの炭素析出が抑制される温度まで低下する前に、改質器2で改質反応により生成した水素含有ガスの一部を水添脱硫器8に供給するためのリサイクル流路10を閉止するとともに、水添脱硫器8に原料を供給する(ステップ(d))。具体的に、本例では、燃料電池システム150の運転停止が開始されても、水添脱硫器8への原料の供給を継続する。
【0092】
そして、制御器14は、ステップ(d)を実行しているとき、すなわちリサイクル流路10を閉止するとともに水添脱硫器8に原料を供給しながら、水添脱硫器8を通過した原料及び原料以外の改質反応に用いられる反応ガスを改質器2に供給して、水素含有ガスを生成する(ステップ(e))。具体的に、本例では、水素生成装置100の運転停止が開始されても、改質器2への反応ガスの供給を継続する。なお、改質反応が進行可能であるなら反応ガスを変更しても構わない。例えば、水素生成装置100の運転停止が開始される前は、原料以外の反応ガスとして水蒸気を供給し、水蒸気改質反応を進行させ、上記制御では、原料ガス以外の反応ガスとして空気を供給し、部分酸化反応を進行させてもよい。
【0093】
その後、制御器14は、所定のタイミングで、停止動作を終了する(エンド)。
【0094】
リサイクル流路10を閉止することにより、水添脱硫器8への水素含有ガス(リサイクルガス)の供給が停止する。水添脱硫器8への原料の供給は継続されるから、水添脱硫器8の内部は原料によりパージされる。原料は、水素含有ガスよりも水蒸気濃度が低い。従って、水添脱硫器8の内部の露点は低下し、温度が低下しても水添脱硫器8の内部での水凝縮量が低下する。よって、凝縮水による水添脱硫触媒の活性低下を低減することができる。一方、改質器2へは原料及び原料以外の反応ガスが供給されるため、改質反応が進行する。改質器2および燃料電池50の内部の温度が原料が炭化するほど高くても、原料の炭化、すなわち炭素の析出、は抑制される。
【0095】
ステップ(e)を実行しているとき、燃料電池50で発電してもよい(ステップ(f))。
【0096】
ステップ(d)及び(e)を実行後、改質器の温度が改質器2の内部に設けられた改質触媒上での原料からの炭素析出が抑制される温度以下になると改質器2および燃料電池50を原料でパージしてもよい(ステップ(g)。かかる構成では、水添脱硫器を備えた燃料電池システムにおいて、水添脱硫触媒および改質触媒および電極触媒の活性低下を低減することができる。また、上記制御は、リサイクル流路を閉止した状態で実行されるので、リサイクル流路内の残留する水蒸気が水添脱硫器に流入することが抑制され、水添脱硫器の水凝縮量がより低下する。
【0097】
なお、上記フローにおける、改質器の温度は、改質器自体の温度及び改質器の温度と相関する温度のいずれかであってもよい。改質器自体の温度としては、改質器を構成する構造体の温度、改質触媒の温度、改質器を流通するガス温度等が例示される。また、改質器の温度に相関する温度としては、改質器から排出された水素含有ガスの温度、改質器を加熱する燃焼器の温度等が例示される。
【0098】
第2実施形態の燃料電池システムの運転方法においても、第1実施形態と同様の変形が可能である。
【0099】
(第3実施形態)
[装置構成]
図5は、第3実施形態にかかる水素生成装置の概略構成の一例を示すブロック図である。以下、図5を参照しつつ、第3実施形態の水素生成装置200について説明する。
【0100】
図5に示す例において、水素生成装置200は、吸着脱硫器16と、第1の原料供給路18と、第2の原料供給路20と、切替器22と、を備える。
【0101】
吸着脱硫器16は、水添脱硫器8よりも上流で原料中の硫黄化合物を吸着除去する。吸着脱硫器16は、原料中の硫黄化合物を物理的に吸着除去する。吸着脱硫器16は、常温で原料中の硫黄化合物を吸着除去する脱硫器としうる。常温とは、水添脱硫器8の使用温度(例えば、300℃前後)に比べ相対的に常温域に近いことから使用しており、常温域から使用脱硫剤が脱硫剤として有効に機能する温度までを含む意味である。
【0102】
第1の原料供給路18は、吸着脱硫器16及び水添脱硫器8を経由して改質器に供給される原料が流れる。第2の原料供給路20は、吸着脱硫器16を経由せず、水添脱硫器8を経由して改質器2に供給される原料が流れる。吸着脱硫器16は、第1の原料供給路18に設けられているが、第2の原料供給路20には設けられていない。第1の原料供給路18と第2の原料供給路20とは、一部が共通の流路で構成されていてもよい。
【0103】
切替器22は、第1の原料供給路18と第2の原料供給路20とを切り替える。切替器22は、例えば、三方弁で構成されていてもよいし、第1の原料供給路18及び第2の原料供給路20のそれぞれに設けられた開閉弁で構成されていてもよい。
【0104】
制御器14は、運転を停止する際に、改質器2の温度が改質器2の内部に設けられた改質触媒上での原料からの炭素析出が抑制される温度まで低下する前に、原料が第1の原料供給路18を流れるよう切替器22を切替え、かつ閉止器12を閉止するとともに、改質器2へ原料及び原料以外の反応ガスが供給されるように原料供給器4及び反応ガス供給器6を制御する。
【0105】
かかる制御により、停止時に水添脱硫器8を原料パージする際、水添脱硫器8にリサイクルガスが供給されず、水添脱硫器8での脱硫が進行しない場合でも、吸着脱硫器16により原料中の硫黄化合物が吸着除去される。よって、改質器2の内部に設けられた改質触媒が硫黄化合物により被毒される可能性が低減される。
【0106】
制御器14は、運転中は、閉止器12を開放し、原料が第2の原料供給路20を流れるよう切替器22を制御すると共に、改質器2へ原料及び原料以外の反応ガスが供給されるように原料供給器4及び反応ガス供給器6を制御してもよい。かかる制御により、運転中は水添脱硫器8により脱硫された原料を改質器2へと供給できる一方で、吸着脱硫器16による脱硫を停止して吸着脱硫器16の寿命を長くできる。
【0107】
以上の点を除き、水素生成装置200は、第1実施形態の水素生成装置100と同様の構成とすることができる。よって、図1図5とで共通する構成要素については、同一の符号および名称を付して詳細な説明を省略する。
【0108】
第3実施形態の水素生成装置200においても、第1実施形態と同様の変形が可能である。
【0109】
[運転方法]
第3実施形態の水素生成装置の運転方法は、ステップ(a)において、原料が、水添脱硫器の通過前に吸着脱硫器を通過する点以外は、第1実施形態において図2を参照しつつ説明した方法と同様とすることができる。よって、詳細な説明を省略する。
【0110】
第3実施形態の水素生成装置の運転方法においても、第1実施形態と同様の変形が可能である。
【0111】
(第1実施例)
図6は、第1実施例にかかる水素生成装置の概略構成の一例を示すブロック図である。図7は、第1実施例にかかる水素生成装置の運転方法の概略の一例を示すフローチャートである。以下、図6及び図7を参照しつつ、第1実施例にかかる水素生成装置およびその運転方法について説明する。
【0112】
図6に示す例では、第1実施例の水素生成装置120は、改質器101と、原料供給器102と、第1脱硫器103と、第2脱硫器104と、原料供給経路105と、第2バイパス経路106と、第1遮断弁107と、第2遮断弁108と、燃料経路110と、リサイクル流路111と、第3遮断弁112と、制御器109とを備える。
【0113】
改質器101は、原料から改質反応で水素を含む燃料を生成する。改質器101は、原料を用いて水素含有ガスである燃料を生成する。具体的には、改質器101において、原料の改質反応により、水素含有ガスである燃料が生成される。改質器101は、第1実施形態の改質器2と同様の構成としうるので、詳細な説明を省略する。
【0114】
原料供給器102は改質器101に原料を供給する。本実施例において、原料供給器102は、改質器101へ供給する原料の流量を調整する機器である。原料供給器102は、第1実施形態の原料供給器4と同様の構成としうるので、詳細な説明を省略する。
【0115】
第1脱硫器103は、原料に含まれる硫黄成分を吸着除去する。第1脱硫器103は、吸着脱硫器であり、原料中の硫黄化合物を常温で除去する脱硫器である。第1脱硫器103は、第3実施形態の吸着脱硫器16と同様の構成としうるので、詳細な説明を省略する。
【0116】
第2脱硫器104は、原料に含まれる硫黄成分を水添脱硫する。第2脱硫器104は、水添脱硫器であり、改質器101へ供給される原料中の硫黄化合物を除去する。第2脱硫器は、容器に水添脱硫触媒が充填され構成される。第2脱硫器104は、第1実施形態の水添脱硫器8と同様の構成としうるので、詳細な説明を省略する。
【0117】
原料供給経路105は、第1脱硫器103と第2脱硫器104と改質器101とをこの順に接続して原料を供給する。原料供給経路105は、改質器101、第1脱硫器103、第2脱硫器104に供給される原料が流れる流路である。
【0118】
第2バイパス経路106は、第1脱硫器103をバイパスする経路である。第2バイパス経路106は、第1脱硫器103を経由せずに原料が流れる。
【0119】
リサイクル流路111は、改質器101から燃料(水素含有ガス)を送出する燃料経路110と、燃料経路110から分岐し第2脱硫器104の上流の原料供給経路105に接続し、水素含有ガスの一部を供給する。リサイクル流路111は、改質器101より送出される水素含有ガスである燃料を第2脱硫器104である水添脱硫器よりも上流の原料供給経路105内の原料に供給する流路である。リサイクル流路111は、第1実施形態のリサイクル流路10と同様の構成としうるので、詳細な説明を省略する。
【0120】
第1遮断弁107は、第2バイパス経路106上に配置される。
【0121】
第2遮断弁108は、第2バイパス経路106でバイパスされた脱硫器の上流かつ第2バイパス経路106の分岐部より下流の原料供給経路105に配置される。
【0122】
第3遮断弁112は、リサイクル流路111上に配置される。
【0123】
燃料経路110は、水素生成装置120の下流に接続された機器(例えば、燃料電池)に供給される改質器101で生成された燃料が流れる流路である。
【0124】
第1遮断弁107、第2遮断弁108、及び、第3遮断弁112は、それぞれ原料供給経路105、第2バイパス経路106、及び、リサイクル流路111に流れる流体を流通及び遮断できる機器であり、例えば、電磁弁等が用いられる。
【0125】
なお、本実施形態では第1遮断弁107と第2遮断弁108を別途設けたが、これに限定されず、原料供給経路105から第2バイパス経路106へ分岐する分岐部に、どちらか一方へ選択的に原料を供給することができる機器である、例えば、電磁式三方弁等を用いてもよい。
【0126】
制御器109は、改質器101の温度や第2脱硫器の温度等の情報を元に、原料供給器102、第1遮断弁107、第2遮断弁108、及び、第3遮断弁112を制御する。制御器109は、第1実施形態の制御器14と同様の構成としうるので、詳細な説明を省略する。
【0127】
以下、図7を参照しつつ、水素生成装置120の動作について説明する。
【0128】
水素生成装置120は、運転停止前の水素含有ガスの生成、を実行している際、制御器109が、第1遮断弁107を開、第2遮断弁108を閉、第3遮断弁112を開とする。原料供給器102から原料が第1脱硫器を経由しない第2バイパス経路106を通じて、第2脱硫器104へ供給される。第2脱硫器104で原料中の硫黄化合物が除去された後、改質器101へ原料が供給され、水素含有ガスである燃料が生成される。さらに第2脱硫器104で水添脱硫を実行するために、リサイクル流路111を通じて、生成した水素含有ガスの一部が第2脱硫器104へ供給される。
【0129】
図7で、水素生成装置120は、運転を停止する際に、本実施例の水素生成装置120の制御が開始される(スタート)。制御器109は、第1遮断弁107の閉止かつ第2遮断弁108の開放を実施するステップ(A)を実行する(ステップS101)。
【0130】
続いて、制御器109は、第3遮断弁112の閉止を実施するステップ(B)を実行する(ステップS102)。これにより、リサイクル流路111を通じた水蒸気を含む水素含有ガスの第2脱硫器104への供給を停止する。第2脱硫器104では、水素含有ガスが供給されないので脱硫機能が発現しないが、ステップS101の制御により原料が第1脱硫器103を経由するため、水素生成装置全体としては、脱硫機能が維持される。
【0131】
ステップS102で、制御器109により第2脱硫器104への水素含有ガスの供給を停止し、かつ、第1脱硫器103を経由した原料供給が継続されることにより、第2脱硫器104内部を原料パージするステップ(C)が開始される。このとき、改質器101では水素含有ガスの生成を継続する(ステップS103)。すなわち、図示されない反応ガス供給器により原料以外の反応ガスの改質器101への供給が継続されることで、改質器101での改質反応が継続する。
【0132】
続いて、第2脱硫器104の原料パージの目標時間t1をセットする(ステップS104)。ここでは、第2脱硫器104の内容積と改質器101で水素含有ガスの生成を実行するための流量に基づき、少なくとも第2脱硫器104内部が原料で置換される時間、例えば流量の累計が第2脱硫器104の内容積に等しくなる時間、を目標時間t1とする。なお、本実施例では、原料パージの継続時間をタイマーで設定したがこれに限らず、流量計を備え、流量の積算値が少なくとも第2脱硫器104の内容積に等しくなるまでの時間を目標時間t1としてもよい。
【0133】
続いて、原料パージ時間tを計測し、目標時間t1を経過したか否かの判定を実行する(ステップS105)。原料パージ時間tがt1より小さい場合、ステップ105を継続する。ステップS105で、原料パージ時間tがt1以上となった場合、原料供給器102を停止し、原料供給を停止するとともに第2遮断弁108を閉止し、改質器101での水素含有ガスの生成を停止するステップ(D)を実行する(ステップS106、ステップS107)。
【0134】
続いて、改質器101の温度Tの計測を開始する(ステップS108)。
【0135】
続いて、改質器101の温度Tが改質触媒上で原料からの炭素析出が抑制される温度T1(例えば、150℃)以下に達しているか否かを判定する(ステップS109)。改質器101温度TがT1以下でない場合、ステップS109を継続する。
【0136】
改質器101温度TがT1以下であると判定されると、第2遮断弁108を開放する(ステップS110)。
【0137】
続いて、改質器101の原料パージの目標時間t2をセットする(ステップS111)。ここでは、少なくとも改質器101内部が原料で置換される時間、例えば流量の累計が改質器101の内容積に等しくなる時間、を目標時間t2とする。なお、本実施例では、原料パージの時間をタイマーで設定したがこれに限らず、流量計を備え、流量の積算値が少なくとも改質器101の内容積に等しくなるまでの時間を目標時間t2としてもよい。
【0138】
続いて、原料パージ時間tを計測し、目標時間t2を経過したか否かの判定を実行する(ステップS112)。原料パージ時間tがt2より小さい場合、ステップ112を継続する。ステップS112で、原料パージ時間tがt2以上となった場合、原料供給器102を停止し、原料供給を停止するとともに第2遮断弁108を閉止する(ステップS113)。
【0139】
そして、本実施例の水素生成装置120の制御を終了する(エンド)。
【0140】
第1実施例の構成では、水素生成装置の運転を停止した際、水素生成装置の下流に配置される装置の状態に基づいて水添脱硫器の原料パージ実施の有無が決まる場合に比べ、水素生成装置の下流に配置される装置の状態に関係なく水添脱硫器に残留した水蒸気を原料パージにより除去することができる。よって、水添触媒の活性を維持したまま運転を停止できるようになる。
【0141】
ステップ(C)で、第1脱硫器を通過した原料により少なくとも第2脱硫器がパージされるまで、改質器での燃料の生成を継続することにより、第2脱硫器である水添脱硫器の内部に残存した水蒸気をより効果的に除去することができる。
【0142】
改質器の温度が改質器の備える改質触媒上で原料からの炭素析出が抑制される温度以下となったときにステップ(A)を実行し、第2脱硫器及び改質器を原料パージする構成により、改質触媒の活性を低下することなく、改質器内部に残存した水蒸気も除去することができる。また、上記制御は、リサイクル流路を閉止した状態で実行されるので、リサイクル流路内の残留する水蒸気が水添脱硫器に流入することが抑制され、水添脱硫器の水凝縮量がより低下する。
【0143】
(第4実施形態)
第4実施形態の燃料電池システムは、第3実施形態およびその変形例のいずれかの水素生成装置と、水素生成装置より供給された水素含有ガスを用いて発電する燃料電池とを備える。
【0144】
図8は、第4実施形態にかかる燃料電池システムの概略構成の一例を示すブロック図である。以下、図8を参照しつつ、第4実施形態の燃料電池システム250について説明する。
【0145】
図8に示す例において、燃料電池システム250は、燃料電池50を備える。燃料電池50は、第2実施形態の燃料電池50と同様の構成としうるので、詳細な説明を省略する。
【0146】
以上の点を除き、燃料電池システム250は、第3実施形態の水素生成装置200と同様の構成とすることができる。よって、図5図8とで共通する構成要素については、同一の符号および名称を付して詳細な説明を省略する。
【0147】
第4実施形態の燃料電池システム250においても、第1実施形態、第2実施形態、及び第3実施形態と同様の変形が可能である。
【0148】
(第2実施例)
図9は、第2実施例にかかる燃料電池システムの概略構成の一例を示すブロック図である。図10は、第2実施例にかかる燃料電池システムの運転方法の概略の一例を示すフローチャートである。
【0149】
以下、図9及び図10を参照しつつ、第1実施例にかかる水素生成装置およびその運転方法について説明する。
【0150】
図9に示す例では、第2実施例の燃料電池システム220は、水素生成装置120と燃料電池201と燃料電池システムの制御器209とを備える。
【0151】
水素生成装置120及び制御器209については第1実施形態の水素生成装置120及び制御器109と同様の構成としうるので説明を省略する。
【0152】
燃料電池201は、水素生成装置120で生成された水素含有ガスである燃料を用いて発電する。燃料電池201は、第2実施形態の燃料電池50と同様の構成とすることができるので、詳細な説明を省略する。
【0153】
以下、図10を参照しつつ、燃料電池システム220の動作について説明する。
【0154】
燃料電池システム220は、運転停止前の発電を実行している際、制御器209が、第1遮断弁107を開、第2遮断弁108を閉、第3遮断弁112を開とする。原料供給器102から原料が第1脱硫器を経由しない第2バイパス経路106を通じて、第2脱硫器104へ供給される。第2脱硫器104で原料中の硫黄化合物が除去された後、改質器101へ原料が供給され、水素含有ガスである燃料(水素含有ガス)が生成される。その燃料が燃料電池201へ供給され発電が実行される。さらに第2脱硫器104で水添脱硫を実行するために、リサイクル流路111を通じて、生成した燃料の一部が第2脱硫器104へ供給される。
【0155】
図10で、燃料電池システム220は、運転を停止する際に、本実施例の燃料電池システム220の制御が開始される(スタート)。制御器209は、第1遮断弁107の閉止かつ第2遮断弁108の開放を実施するステップ(A)を実行する(ステップS201)。
【0156】
続いて、制御器209は、第3遮断弁112の閉止を実施するステップ(B)を実行する(ステップS202)。これにより、リサイクル流路111を通じた水蒸気を含む水素含有ガスの第2脱硫器104への供給を停止する。第2脱硫器104では、水素含有ガスが供給されないので脱硫機能が発現しないが、ステップS201の制御により原料が第1脱硫器103を経由するため、燃料電池システム全体としては、脱硫機能が維持される。
【0157】
ステップS202で、制御器109により第2脱硫器104への水素含有ガスの供給を停止し、かつ、第1脱硫器103を経由した原料供給が継続されることにより、第2脱硫器104内部を原料パージするステップ(F)が開始される。このとき、改質器101では水素含有ガスの生成を継続し、燃料電池201では発電を継続する(ステップS203)。すなわち、図示されない反応ガス供給器により原料以外の反応ガスの改質器101への供給が継続されることで、改質器101での改質反応が継続すると共に、改質器101から供給される燃料を用いた発電が燃料電池201により継続される。
【0158】
続いて、第2脱硫器104の原料パージの目標時間t1をセットする(ステップ204)。ここでは、第2脱硫器104の内容積と改質器101で水素含有ガスの生成を実行するための流量に基づき、少なくとも第2脱硫器104内部が原料で置換される時間、例えば流量の累計が第2脱硫器104の内容積に等しくなる時間、を目標時間t1とする。なお、本実施例では、原料パージの継続時間をタイマーで設定したがこれに限らず、流量計を備え、流量の積算値が少なくとも第2脱硫器104の内容積に等しくなるまでの時間を目標時間t1としてもよい。
【0159】
続いて、原料パージ時間tを計測し、目標時間t1を経過したか否かの判定を実行する(ステップS205)。原料パージ時間tがt1より小さい場合、ステップ205を継続する。ステップS205で、原料パージ時間tがt1以上となった場合、原料供給器102を停止し、原料供給を停止するとともに第2遮断弁108を閉止し、改質器101での水素含有ガスの生成を停止するとともに燃料電池201での発電を停止するステップ(D)を実行する(ステップS206、ステップS207)。
【0160】
続いて、改質器101の温度と燃料電池201の温度の計測を開始する(ステップS208)。
【0161】
続いて、改質器101の温度と燃料電池201の温度がいずれも改質触媒上で原料からの炭素析出が抑制される温度T2(例えば、150℃)以下に達しているか否かを判定する(ステップS209)。改質器101の温度および燃料電池201の温度のうちの高い方の値TがT2以下でない場合、ステップS210を継続する。
【0162】
続いて、改質器101の温度および燃料電池201の温度のうちの高い方の値TがT2以下であると判定されると、第2遮断弁108を開放する(ステップS210)。
【0163】
続いて、改質器101及び燃料電池201の原料パージの目標時間t3をセットする(ステップS211)。ここでは、例えば流量の累計が改質器101及び燃料電池201の内容積の和に等しくなる時間を、目標時間t3とする。なお、本実施例では、原料パージの時間をタイマーで設定したがこれに限らず、流量計を備え、流量の積算値が少なくとも改質器101及び燃料電池201の内容積の和に等しくなるまでの時間を目標時間t3としてもよい。
【0164】
続いて、原料パージ時間tを計測し、目標時間t3を経過したか否かの判定を実行する(ステップS212)。原料パージ時間tがt3より小さい場合、ステップ212を継続する。ステップS212で、原料パージ時間tがt3以上となった場合、原料供給器102を停止し、原料供給を停止するとともに第2遮断弁108を閉止する(ステップS213)。
【0165】
そして、本実施例の燃料電池システム220の制御を終了する(エンド)。
【0166】
なお本実施例では、第2バイパス経路で第1脱硫器をバイパスし、第1脱硫器を通過した後、第2脱硫器へ原料が流れる構成としたが、これに限らず、第2バイパス経路で第2脱硫器をバイパスし、第2脱硫器を通過した後、原料が第1脱硫器へ流れる等の構成としてもよい。
【0167】
第2実施例においても、第1実施形態および第2実施形態および第3実施形態および第4実施形態および第1実施例と同様の変形が可能である。
【0168】
第2実施例の構成では、燃料電池システムの運転を停止した際、燃料電池の種類によって水添脱硫器の原料によるパージの有無が決まる場合(例えば、固体酸化物形燃料電池などでは、温度条件等により原料の炭化が発生するため、運転停止時に原料パージが実施できない)に比べ、燃料電池の種類によらず水添脱硫器に残留した水蒸気を原料パージにより除去することができる。よって、水添触媒の活性を維持したまま運転を停止できるようになる。
【0169】
ステップ(F)で、第1脱硫器を通過した原料により少なくとも第2脱硫器がパージされるまで、改質器での燃料の生成及び燃料電池での発電を継続することにより、第2脱硫器である水添脱硫器の内部に残存した水蒸気をより効果的に除去することができる。
【0170】
改質器の温度が改質器の備える改質触媒上で原料からの炭素析出が抑制される温度以下、かつ、燃料電池で炭素析出が抑制される温度以下となったときステップ(A)を実行し、第2脱硫器及び改質器を原料パージする構成により、改質触媒及び燃料電池の電極の活性を低下することなく改質器内部及び燃料電池内部に残存した水蒸気も除去することができる。また、上記制御は、リサイクル流路を閉止した状態で実行されるので、リサイクル流路内の残留する水蒸気が水添脱硫器に流入することが抑制され、水添脱硫器の水凝縮量がより低下する。
【0171】
上記説明から、当業者にとっては、本開示の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造および/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本開示の一態様は、水添脱硫触媒の活性低下を低減することができる水素生成装置、燃料電池システム、およびこれらの運転方法として有用である。
【符号の説明】
【0173】
2 改質器
4 原料供給器
6 反応ガス供給器
8 水添脱硫器
10 リサイクル流路
11 第1バイパス経路
12 閉止器
14 制御器
16 吸着脱硫器
18 第1の原料供給路
20 第2の原料供給路
22 切替器
50 燃料電池
100 水素生成装置
101 改質器
102 原料供給器
103 第1脱硫器
104 第2脱硫器
105 原料供給経路
106 第2バイパス経路
107 第1遮断弁
108 第2遮断弁
109 制御器
110 燃料経路
111 リサイクル流路
112 第3遮断弁
120 水素生成装置
150 燃料電池システム
200 水素生成装置
201 燃料電池
209 制御器
220 燃料電池システム
250 燃料電池システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10