特許第6367724号(P6367724)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367724
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】変位検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 7/00 20060101AFI20180723BHJP
   F02M 65/00 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   G01B7/00 101H
   F02M65/00 306B
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-15061(P2015-15061)
(22)【出願日】2015年1月29日
(65)【公開番号】特開2016-138851(P2016-138851A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2017年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】517224492
【氏名又は名称】メレキシス テクノロジーズ エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】100180758
【弁理士】
【氏名又は名称】荒木 利之
(72)【発明者】
【氏名】吉谷 拓海
【審査官】 眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭40−018711(JP,B1)
【文献】 特開2011−231696(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/105228(WO,A1)
【文献】 特開2005−257434(JP,A)
【文献】 特開昭59−168381(JP,A)
【文献】 特開2014−095615(JP,A)
【文献】 金属材料の事典,株式会社朝倉書店,1997年10月25日,p.305
【文献】 理科年表,丸善株式会社,2005年11月30日,p.415
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 7/00−7/34
F02M 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象が収容された筐体外であって、前記筐体内に磁場を形成する磁石と、
前記筐体内部の前記測定対象に接続されて前記測定対象の変位に応じて変位し、前記磁石の形成する磁場内に配置される軟磁性体と、
前記筐体外であって、前記磁石の形成する磁場内に配置され、前記軟磁性体の変位に伴う磁束密度の変化のうち前記軟磁性体の変位方向と平行な方向の磁束密度の変化を検出し、前記軟磁性体が変位する範囲において検出する磁束密度の値が0を含み、検出した磁束密度に比例する信号を出力するセンサとを有し、
前記磁石は、前記軟磁性体の変位の範囲において前記軟磁性体の変位方向と直交する方向に一様な磁束を形成する変位検出装置。
【請求項2】
前記筐体は、非磁性体である請求項1に記載の変位検出装置。
【請求項3】
前記軟磁性体は、透過する磁束密度が変化しない範囲で変位する請求項1又は2に記載の変位検出装置。
【請求項4】
前記測定対象はインジェクタのニードルであり、前記筐体はインジェクタのボディである請求項1‐3のいずれか1項に記載の変位検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変位検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、インジェクタのニードルの変位を検出する変位検出装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された変位検出装置は、インジェクタのインジェクタボディ内部に設けられ、ニードルの変位を検出するリフトセンサである。インジェクタは、内部に燃料の通路を有するインジェクタボディと、インジェクタボディの通路に設けられるニードルと、当該ニードルを押し引きする力を加えるソレノイドコイルとを有し、ニードルの先端部がインジェクタボディの内壁のうち燃料の噴口付近のシームに接することで噴口を閉じ、シームから離れることで噴口を開く。変位検出装置は、ニードルとともに移動するセンサ板と、センサ板とのギャップを検出するギャップセンサとを有し、ギャップセンサによってセンサ板とのギャップを検出することでニードルの変位を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−120393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に示す変位検出装置は、インジェクタ内部に組み込む必要があり、専用のインジェクタボディを設計する必要があった。仮にギャップセンサやセンサ板をインジェクタボディの外側に設けたとしても、センサ板をニードルとともに移動するようにするためには、少なくともセンサ板とニードルとの接続部の形状に合わせてインジェクタボディを設計する必要があり、既成のインジェクタボディには取り付けられないという問題があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、筐体の設計を変更することなく又は筐体の設計変更を抑制して、筐体内に収容される測定対象の変位を検出する変位検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、上記目的を達成するため、以下の変位検出装置を提供する。
【0008】
[1]測定対象が収容された筐体外であって、前記筐体内に磁場を形成する磁石と、
前記筐体内部の前記測定対象に接続されて前記測定対象の変位に応じて変位し、前記磁石の形成する磁場内に配置される軟磁性体と、
前記筐体外であって、前記磁石の形成する磁場内に配置され、前記軟磁性体の変位に伴う磁束密度の変化のうち前記軟磁性体の変位方向と平行な方向の磁束密度の変化を検出し、前記軟磁性体が変位する範囲において検出する磁束密度の値が0を含み、検出した磁束密度に比例する信号を出力するセンサとを有し、
前記磁石は、前記軟磁性体の変位の範囲において前記軟磁性体の変位方向と直交する方向に一様な磁束を形成する変位検出装置。
[2]前記筐体は、非磁性体である前記[1]に記載の変位検出装置。
[3]前記軟磁性体は、透過する磁束密度が変化しない範囲で変位する前記[1]又は[2]に記載の変位検出装置。
[4]前記測定対象はインジェクタのニードルであり、前記筐体はインジェクタのボディである前記[1]‐[3]のいずれかに記載の変位検出装置。
【発明の効果】
【0009】
請求項1又は4に係る発明によれば、筐体の設計を変更することなく又は筐体の設計変更を抑制して、筐体内に収容される測定対象の変位を検出することができる。
請求項2に係る発明によれば、非磁性体の筐体について、筐体の設計を変更することなく又は筐体の設計変更を抑制して、筐体内に収容される測定対象の変位を検出することができる。
請求項3に係る発明によれば、軟磁性体のヒステレシスを抑制することができる。
請求項5に係る発明によれば、インジェクタボディの設計を変更することなく又はインジェクタボディの設計変更を抑制して、インジェクタボディ内のニードルの変位を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1の実施の形態に係るインジェクタ及び変位検出装置の構成例を示す斜視図である。
図2図2は、第1の実施の形態に係るインジェクタ及び変位検出装置の構成例を示す断面図である。
図3図3(a)−(c)は、変位検出装置の動作を説明するための概略図である。
図4図4は、軟磁性体の変位とセンサの検出する磁束密度との関係を表すグラフ図である。
図5図5は、第2の実施の形態に係る変位検出装置の構成例を示す斜視図である。
図6図6(a)−(c)は、変位検出装置の動作を説明するための概略図である。
図7図7(a)及び(b)は、磁石の変位との検出する磁束密度との関係及び磁石の変位とセンサの出力との関係を表すグラフ図である。
図8図8は、第3の実施の形態に係る変位検出装置の構成例を示す斜視図である。
図9図9(a)−(c)は、変位検出装置の動作を説明するための概略図である。
図10図10は、軟磁性体の変位とセンサの検出する磁束密度との関係を表すグラフ図である。
図11図11(a)及び(b)は、ニードルの変形例を示す断面図である。
図12図12(a)及び(b)は、軟磁性体の形状の変形例を示す斜視図である。
図13図13は、磁石の変形例の構成を示す概略図である。
図14図14(a)−(d)は、センサの構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施の形態]
(インジェクタの構成)
図1は、第1の実施の形態に係るインジェクタ及び変位検出装置の構成例を示す斜視図である。図2は、第1の実施の形態に係るインジェクタ及び変位検出装置の構成例を示す断面図である。なお、図2の垂直方向をz軸方向、水平方向をx軸方向、奥行き方向をy軸方向とし、zx平面に平行な面であってニードル11の軸中心を通る面におけるインジェクタの断面図である。また、図14(a)−(d)は、センサの構成例を示す斜視図である。
【0012】
インジェクタ1は、内部に燃料の流路を有する筐体としてのインジェクタボディ10と、インジェクタボディ10の燃料流路に設けられる測定対象としてのニードル11とを有する。インジェクタボディ10は、先端に向かって径が小さくなるノズル部10aとし、ノズル部10aの先端に内部から燃料を噴出する噴口10bを有する。また、インジェクタボディ10のシーム部10cは、インジェクタボディ10の内壁のうちノズル部10aに相当する部分であって円錐状に形成される。
【0013】
ニードル11は、円柱上に形成される円柱部11aと、円柱部11aから連続的に先端に向かって円錐状に形成される先端部11bとを有する。なお、インジェクタボディ10のシーム部10cと、ニードル11の先端部11bとはそれぞれが密着するように形状を合わせて加工されているものとする。また、ニードル11の先端部11bと反対側の他端には磁石及びソレノイドコイルが設けられ(図示せず)、x軸方向にニードル11を押し引きする力が加えられてx方向のストロークで変位する。
【0014】
ニードル11の他端に設けられたソレノイドコイルの電流を制御し、ニードル11の先端部11aがシーム部10cに接するようにすることで噴口10bを閉じ、シーム部10cから離れることで噴口10bを開く。インジェクタボディ10の内部に充填された燃料には予め定められた圧力が加えられ、噴口10bが開かれた場合に、開き具合に応じてインジェクタボディ10の外部に燃料が噴口10bから噴出される。
【0015】
変位検出装置2は、ニードル11とともにx軸方向に移動する軟磁性体12と、軟磁性体12の変位に基づいて変化する磁束密度を検出方向Dsxで検出して磁束密度に応じた電圧を出力するセンサ13と、検出方向Dsxと直交する着磁方向Dmzに着磁されインジェクタボディ10を挟むように設けられた一対の磁石14a及び14bと、磁石14a及び14bの間に一様な磁界を形成するために設けられたヨーク15とを有する。センサ13の出力は図示しないECU等に接続され、出力値はニードル11のストローク制御のフィードバック等の用途に用いる。
【0016】
センサ13は、図14(a)に示すように、一例として、z方向に厚みを有する平板状であって、xy面に平行な検出面を有し、磁気検出素子として検出方向Dszとする少なくとも一対のホール素子130l、130rと、一対のホール素子130l、130r上に設けられてx方向の磁束をz方向に変換してホール素子130l、130rに検出させる磁気コンセントレータ131を有し、検出方向Dsxの磁気を検出するホールICである(例えば、MLX91208CAH等を用いることができ、ホール素子130l、130rの出力の差分をとることでDsxの磁束密度に比例した出力を得ることができる)。なお、センサ13は、検出方向がDsxであればMR素子等の他の種類の素子を用いてもよいし、検出方向Dsxを含めば複数の軸方向にそれぞれ磁気検出素子を配置した多軸磁気検出ICを用いてもよい。また、図14(d)に示すように、ホール素子130l、130rの間隔を狭くし、両端に磁気磁気コンセントレータ131l、131rを設けたセンサ13dを採用することで、センサ13に比べて感度を向上することができる。また、図14(b)に示すセンサ13bのように、センサ13から磁気コンセントレータ131を廃し、一対のホール素子130l、130rのそれぞれの出力の差から軟磁性体12の位置又は変位を検出してもよい。
【0017】
軟磁性体12は、x方向に厚みを有する鉄等の軟磁性体材料を用いた平板であり、一対の磁石14a及び14bの間に配置されるとともに、軟磁性体12が誘引する磁束がセンサ13で検出されるような範囲で変位するものとする。
【0018】
また、軟磁性体12は、ニードル11が移動すると、変位に伴いx方向に変位する。なお、変位量snは数mm程度(一例として±0.5mm)の微小な変位であるとする。なお、軟磁性体12は、ニードル11と一体に形成されるものであってもよい。
【0019】
一対の磁石14a及び14bは、フェライト、サマリウムコバルト、ネオジウム等の材料を用いて形成された永久磁石で、少なくとも軟磁性体12の可動域においては一様な磁界を形成し、軟磁性体12が誘引する磁束が正負に振れたり、ヒステレシスの影響が出るほどに大幅に数値が変化したりしないものとする。一例として、軟磁性体12が誘引する磁束密度の変化幅は±10mT程度とする。
【0020】
ヨーク15は、一例として鉄を用い、その他パーマロイ等の軟磁性体材料を用いることができる。なお、磁石14a及び14bのみで条件を満たすことができる場合はヨーク15を省略してもよい。なお、インジェクタボディ10は、一例としてステンレスを用い、アルミニウムや真鍮等の非磁性体を用いることができる。
【0021】
インジェクタ1のサイズは一例として以下の通りであるが適宜設計に応じて変更可能である。インジェクタボディ10の外形は15mm、内径は12mm、噴口10bの直径は1mmである。また、ニードルの直径dnは3mm、ストロークsnは±0.5mmである。
【0022】
また、変位検出装置2のサイズは一例として以下の通りであるが適宜設計に応じて変更可能である。軟磁性体12の厚みtsは2mm、直径dsは5mmであり、軟磁性体12とセンサ13の検出面とのエアギャップlgは1mmである。また、磁石14a及び14bのx方向の幅は10mm、y方向の奥行は5mm、z方向の厚みは5mmであり、ヨーク15は少なくとも磁石14a及び14bを覆うようなサイズで設けられ、x方向の幅は10mm、y方向の奥行は17mm、z方向の厚みは2mmであって、z方向の間隔は27mmである。
【0023】
(変位検出装置の動作)
次に、第1の実施の形態の作用を、図1図4を用いて説明する。
【0024】
図3(a)−(c)は、変位検出装置2の動作を説明するための概略図である。
【0025】
燃料を噴口10bから噴出するためにニードル11がx方向の正の方向に変位すると、軟磁性体12が同様に変位し、図3(a)に示すように、センサ13のホール素子を貫く磁束密度Bのうち検出方向Dsxの磁束密度Bxはx方向と磁束とのなす角度をα1とするとBx=B0・cosα1>0となり正の値をとる。
【0026】
次に、図3(a)に示す状態から、噴口10bから噴出される燃料の量を抑制するためにニードル11がx方向の負の方向に変位すると、ある地点において、図3(b)に示すように、センサ13と軟磁性体12とが互いに最も接近する。この状態においてセンサ13のホール素子を貫く磁束密度Bのうち検出方向Dsxの磁束密度は、Bx=B0・cos90°=0である。
【0027】
次に、図3(b)に示す状態から、噴口10bから燃料が噴出されないようにするためにニードル11がxの負の方向に変位すると、図3(c)に示すように、センサ13のホール素子を貫く磁束密度Bのうち検出方向Dsxの磁束密度Bxはx方向と磁束とのなす角度をα2とするとBx=B0・cosα2<0となり負の値をとる。
【0028】
これらの軟磁性体12の変位とセンサ13の検出する磁束密度との関係は、以下に説明する図4のように表される。なお、センサ13の検出する磁束密度とセンサ13の出力は比例関係にあるため、軟磁性体12の変位とセンサ13の出力との関係も図4と同様となる。
【0029】
図4は、軟磁性体12の変位とセンサ13の検出する磁束密度との関係を表すグラフ図である。
【0030】
ニードル11の先端部11bがインジェクタボディ10のシーム部10cに接している状態(図3(c)の状態)をストローク0.5mmであるとすると、ニードル11の先端部11bがインジェクタボディ10のシーム部10cから離れるに従ってさらにストロークが増加する。軟磁性体12の変位とセンサ13の検出する磁束密度との関係は、図4に示すように、ストロークが正に増加するに従い磁束密度が増加するものであり、ストローク0.5〜1.5mmの間では直線性(ダイナミックレンジが25mT)が確保されたものとなる。
【0031】
(第1の実施の形態の効果)
上記した第1の実施の形態によれば、変位検出装置2のうち軟磁性体12をインジェクタボディ10の中(流路)に設け、その他の構成(センサ13、磁石14a、14b、ヨーク15)をインジェクタボディ10の外に設けたため、インジェクタボディ10の設計を変更することなく又はインジェクタボディ10の設計変更を抑制して、インジェクタボディ10内のニードル11の変位を検出することができる。
【0032】
また、多くの磁束を誘引する必要がないため、軟磁性体12を大きくする必要がなく、その結果として軟磁性体12の重量の増加を抑制することができ、重量増加による軟磁性体12と接続するニードル11の変位に対する感度の低下を抑制することができる。
【0033】
また、磁石14a、14b間の磁界を一様なものとし、軟磁性体12を透過する磁束が大きく変動しない設計としたため、軟磁性体12に生じるヒステレシスの影響が少なく、第1の実施の形態の構成を採用しない場合に比べて、精度の低下を抑制することができる。
【0034】
また、軟磁性体12を円盤状としたため、ニードル11が回転しても変位を検出することができる。従って、ニードル11を変位させる構成としてソレノイドを用いず、ニードル11の変位の際にニードル11が回転するようなネジ機構及びニードル11を回転させるためのモータを用いる場合であっても、ニードル11の変位を検出することができる。また、センサ13としてMLX91208CAHを採用した場合、上記した条件において3μsecの応答性が得られる。
【0035】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態は、第1の実施の形態の軟磁性体12の代わりに同様の形状の磁石を用い、ニードル11の変位に基づいて当該磁石が変位し、変位した磁界をセンサで検出する点で第1の実施の形態と異なる。なお、以下において、第1の実施の形態と共通する構成については同様の符号を用いる。
【0036】
図5は、第2の実施の形態に係る変位検出装置の構成例を示す斜視図である。
【0037】
変位検出装置2aは、着磁方向Dmxに着磁されニードル11とともにx軸方向に移動する磁石14cと、磁石14cの変位に基づいて変化する磁束密度を検出方向Dsx及びDszで検出して磁束密度に応じた電圧を出力するセンサ13aとを有する。センサ13aの出力は図示しないECU等に接続され、出力値はニードル11のストローク制御のフィードバック等の用途に用いる。
【0038】
センサ13aは、図14(a)に示すように、一例として、z方向に厚みを有する平板状であって、xy面に平行な検出面を有し、磁気検出素子として検出方向Dszとする少なくとも一対のホール素子130l、130rと、一対のホール素子130l、130r上に設けられてx方向の磁束をz方向に変換してホール素子130l、130rに検出させる磁気コンセントレータ131を有し、検出方向Dsx及びDszの磁気を検出するホールICである(例えば、MLX90365等を用いることができ、ホール素子130l、130rの出力の差分をとることでDsxの磁束密度に比例した出力を得ることができ、ホール素子130l、130rの出力の和をとることでDszの磁束密度に比例した出力を得ることができる)。なお、センサ13aは、検出方向がDsx及びDszであればMR素子等の他の種類の素子を用いてもよいし、検出方向Dsx及びDszを含めば複数の軸方向にそれぞれ磁気検出素子を配置した多軸磁気検出ICを用いてもよい。
【0039】
磁石14cは、x方向に厚みを有する平板であり、フェライト、サマリウムコバルト、ネオジウム等の材料を用いて形成された永久磁石である。
【0040】
また、磁石14cは、ニードル11が移動すると、変位に伴いx方向に変位する。なお、変位量snは数mm程度(一例として±0.5mm)の微小な変位であるとする。
【0041】
インジェクタ1のサイズは一例として以下の通りであるが適宜設計に応じて変更可能である。インジェクタボディ10の外形は16mm、内径は12mm、噴口10bの直径は1mmである。また、ニードルの直径dnは3mm、ストロークsnは±0.5mmである。
【0042】
また、変位検出装置2aのサイズは一例として以下の通りであるが適宜設計に応じて変更可能である。磁石14cの厚みtsは0.5mm、直径dsは10mmであり、磁石14cとセンサ13aの検出面とのエアギャップlgは1.5mmである。
【0043】
(変位検出装置の動作)
次に、第2の実施の形態の作用を、図5図7を用いて説明する。
【0044】
図6(a)−(c)は、変位検出装置2aの動作を説明するための概略図である。
【0045】
燃料を噴口10bから噴出するためにニードル11がx方向の正の方向に変位すると、磁石14cが同様に変位し、図6(a)に示すように、センサ13aのホール素子を貫く磁束密度Bのうち検出方向Dsx及びDszの磁束密度Bx及びBzは、x方向と磁束とのなす角度をβ1とすると、Bx=B0・cosβ1<0となり負の値を、Bz=B0・sinβ1>0となり正の値をとる。
【0046】
次に、図6(a)に示す状態から、噴口10bから噴出される燃料の量を抑制するためにニードル11がx方向の負の方向に変位すると、ある地点において、図6(b)に示すように、センサ13aと磁石14cとが互いに最も接近する。この状態においてセンサ13aのホール素子を貫く磁束密度Bのうち検出方向Dsx及びDszの磁束密度は、Bx=B0・cos0°=B0であり、Bz=B0・sin0°=0である。
【0047】
次に、図6(b)に示す状態から、噴口10bから燃料が噴出されないようにするためにニードル11がxの負の方向に変位すると、図6(c)に示すように、センサ13aのホール素子を貫く磁束密度Bのうち検出方向Dsx及びDszの磁束密度Bx及びBzは、x方向と磁束とのなす角度をβ2とすると、Bx=B0・cosβ2<0となり負の値を、Bz=B0・sinβ2<0となり負の値をとる。
【0048】
これらの磁石14cの変位とセンサ13aの検出する磁束密度との関係は、以下に説明する図7(a)のように表される。また、センサ13aの出力は、Arctan(Bx/Bz)として出力され、磁石14cの変位とセンサ13aの出力との関係は図7(b)のように表される。
【0049】
図7(a)及び(b)は、磁石14cの変位とセンサ13aの検出する磁束密度との関係及び磁石14cの変位とセンサ13aの出力との関係を表すグラフ図である。
【0050】
ニードル11の先端部11bがインジェクタボディ10のシーム部10cに接している状態(図6(c)の状態)をストローク0.5mmであるとすると、ニードル11の先端部11bがインジェクタボディ10のシーム部10cから離れるに従ってさらにストロークが増加する。磁石14cの変位とセンサ13aの検出する2方向(Dsx、Dsz)の磁束密度との関係は、図7(a)に示すようになる。また、磁石14cの変位とセンサ13aの出力との関係は、図7(b)に示すように、ストロークが正に増加するに従い磁束密度が増加するものであり、ストローク0.5〜1.5mmの間では直線性(ダイナミックレンジが80deg)が確保されたものとなる。
【0051】
(第2の実施の形態の効果)
上記した第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態の効果に加え、インジェクタボディ10の外にセンサ13aを配置するのみであるため、インジェクタボディ10の設計又は配置の自由度が向上する。
【0052】
また、センサ13aとしてMLX90365を採用した場合、上記した条件において3μsecの応答性が得られる。
【0053】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態は、軟磁性体が2つ設けられている点及びセンサの配置の点で第1の実施の形態と異なる。
【0054】
図8は、第3の実施の形態に係る変位検出装置の構成例を示す斜視図である。
【0055】
変位検出装置2bは、ニードル11とともにx軸方向に移動する軟磁性体12a及び12bと、軟磁性体12a及び12bの変位に基づいて変化する磁束密度を検出方向Dsxで検出して磁束密度に応じた電圧を出力するセンサ13bと、検出方向Dsxと直交する着磁方向Dmzに着磁されインジェクタボディ10を挟むように設けられた一対の磁石14a及び14bと、磁石14a及び14bの間に一様な磁界を形成するために設けられたヨーク15とを有する。センサ13bの出力は図示しないECU等に接続され、出力値はニードル11のストローク制御のフィードバック等の用途に用いる。
【0056】
センサ13bは、図14(b)に示すように一例として、x方向に厚みを有する平板状であって、yz面に平行な検出面を有し、磁気検出素子として検出方向Dsxとするホール素子130l、130r(いずれか1つだけでもよい)を有して、検出方向Dsxの磁気を検出するホールICである(例えば、MLX91209等を用いることができる)。なお、センサ13bは、検出方向がDsxであればMR素子等の他の種類の素子を用いてもよいし、検出方向Dsxを含めば複数の軸方向にそれぞれ磁気検出素子を配置した多軸磁気検出ICを用いてもよい。
【0057】
軟磁性体12a及び12bは、x方向に厚みを有する鉄等の軟磁性体材料を用いた平板であり、一対の磁石14a及び14bの間に配置されるとともに、軟磁性体12a及び12bが誘引する磁束がセンサ13bで検出されるような範囲で変位するものとする。また、ニードル11は軟磁性体12a及び12bと同じ軟磁性体材料を用いてもよい。
【0058】
また、軟磁性体12a及び12bは、ニードル11が移動すると、変位に伴いx方向に変位する。なお、変位量snは数mm程度(一例として±0.5mm)の微小な変位であるとする。なお、軟磁性体12a及び12bは、ニードル11と一体に形成されるものであってもよい。
【0059】
一対の磁石14a及び14bは、フェライト、サマリウムコバルト、ネオジウム等の材料を用いて形成された永久磁石で、少なくとも軟磁性体12a及び12bの可動域においては一様な磁界を形成し、軟磁性体12a及び12bが誘引する磁束が正負に振れたり、ヒステレシスの影響が出るほどに大幅に数値が変化したりしないものとする。一例として、軟磁性体12a及び12bが誘引する磁束密度の変化幅は±10mT程度とする。
【0060】
ヨーク15は、一例として鉄を用い、その他パーマロイ等の軟磁性体材料を用いることができる。なお、磁石14a及び14bのみで条件を満たすことができる場合はヨーク15を省略してもよい。また、インジェクタボディ10は、一例としてステンレスを用い、アルミニウムや真鍮等の非磁性体を用いることができる。
【0061】
インジェクタ1のサイズは一例として以下の通りであるが適宜設計に応じて変更可能である。インジェクタボディ10の外形は16mm、内径は12mm、噴口10bの直径は1mmである。また、ニードルの直径dnは3mm、ストロークsnは±0.5mmである。
【0062】
また、変位検出装置2bのサイズは一例として以下の通りであるが適宜設計に応じて変更可能である。軟磁性体12a及び12bの厚みtsは1mm、直径dsは7mm、間隔Isは4mmであり、軟磁性体12a及び12bとセンサ13bの検出面とのエアギャップlgは3mmである。また、磁石14a及び14bのx方向の幅は20mm、y方向の奥行は5mm、z方向の厚みは5mmであり、ヨーク15は少なくとも磁石14a及び14bを覆うようなサイズで設けられ、x方向の幅は20mm、y方向の奥行は17mm、z方向の厚みは2mmであって、z方向の間隔は27mmである。
【0063】
(変位検出装置の動作)
次に、第3の実施の形態の作用を、図8図10を用いて説明する。
【0064】
図9(a)−(c)は、変位検出装置2の動作を説明するための概略図である。
【0065】
燃料を噴口10bから噴出するためにニードル11がx方向の正の方向に変位すると、軟磁性体12a及び12bが同様に変位し、図9(a)に示すように、センサ13bのホール素子を貫く磁束密度Bのうち検出方向Dsxの磁束密度Bxはx方向と磁束とのなす角度をγ1とするとBx=B0・cosγ1<0となり負の値をとる。
【0066】
次に、図9(a)に示す状態から、噴口10bから噴出される燃料の量を抑制するためにニードル11がx方向の負の方向に変位すると、ある地点において、図9(b)に示すように、センサ13bと軟磁性体12a及び12bとの距離がそれぞれ等間隔になる。この状態においてセンサ13bのホール素子を貫く磁束密度Bのうち検出方向Dsxの磁束密度は、Bx=B0・cos90°=0である。
【0067】
次に、図9(b)に示す状態から、噴口10bから燃料が噴出されないようにするためにニードル11がxの負の方向に変位すると、図9(c)に示すように、センサ13bのホール素子を貫く磁束密度Bのうち検出方向Dsxの磁束密度Bxはx方向と磁束とのなす角度をγ2とするとBx=B0・cosα2>0となり正の値をとる。
【0068】
これらの軟磁性体12a及び12bの変位とセンサ13bの検出する磁束密度との関係は、以下に説明する図10のように表される。なお、センサ13bの検出する磁束密度とセンサ13bの出力は比例関係にあるため、軟磁性体12a及び12bの変位とセンサ13bの出力との関係も図10と同様となる。
【0069】
図10は、軟磁性体12a及び12bの変位とセンサ13bの検出する磁束密度との関係を表すグラフ図である。
【0070】
ニードル11の先端部11bがインジェクタボディ10のシーム部10cに接している状態(図9(c)の状態)をストローク0.5mmであるとすると、ニードル11の先端部11bがインジェクタボディ10のシーム部10cから離れるに従ってさらにストロークが増加する。軟磁性体12a及び12bの変位とセンサ13bの検出する磁束密度との関係は、図10に示すように、ストロークが正に増加するに従い磁束密度が減少するものであり、ストローク0.5〜1.5mmの間では直線性(ダイナミックレンジが80mT)が確保されたものとなる。
【0071】
(第3の実施の形態の効果)
上記した第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態に比べてインジェクタボディ10の設計を変更する必要があるものの、軟磁性体12a及び12bとセンサ13bとの距離を小さくしたため、より大きなダイナミックレンジを実現することができる。
【0072】
また、多くの磁束を誘引する必要がないため、軟磁性体12a及び12bを大きくする必要がなく、その結果として軟磁性体12a及び12bの重量の増加を抑制することができ、重量増加による軟磁性体12a及び12bと接続するニードル11の変位に対する感度の低下を抑制することができる。
【0073】
また、磁石14a、14b間の磁界を一様なものとし、軟磁性体12a及び12bを透過する磁束が大きく変動しない設計としたため、軟磁性体12a及び12bに生じるヒステレシスの影響が少なく、第3の実施の形態の構成を採用しない場合に比べて、精度の低下を抑制することができる。
【0074】
また、軟磁性体12a及び12bを円盤状としたため、ニードル11が回転しても変位を検出することができる。また、センサ13としてMLX91209を採用した場合、上記した条件において3μsecの応答性が得られる。
【0075】
なお、ニードル11と軟磁性体12a及び12bとを一体に形成する場合、以下のように形成してもよい。
【0076】
図11(a)及び(b)は、ニードルの変形例を示す断面図である。
【0077】
図11(a)に示すように、ニードル11aは軟磁性体材料を用いて形成され、上記した軟磁性体12a及び12bと同様に磁束を誘引するくぼみ形状110aを有する。
【0078】
また、図11(b)に示すように、ニードル11bは軟磁性体材料を用いて形成され、上記した軟磁性体12a及び12bと同様に磁束を誘引するボビン形状110bを有する。
【0079】
上記したくぼみ形状110a及びボビン形状110bを用いた変位検出装置2c及び2dは、上記した第3の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0080】
[他の実施の形態]
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々な変形が可能である。上記実施の形態では、変位検出装置をインジェクタ内のニードルのリフトセンサとして用いる例を示したが、インジェクタに限らずボディの内部と外部に分けられる構成の装置であって、微小な変位を伴うものであれば同様に適用できる。他の装置としては、油圧シリンダー内のオイルの油圧を歪み(微小な変位)で検出する装置、腐食性のある気体や液体を充填した筐体の中の圧力を歪み(微小な変位)で検出する装置及び気密性の高い筐体の中の圧力を歪み(微小な変位)で検出する装置等が挙げられる。いずれも非接触で変位を検出することができる。
【0081】
また、上記した第1〜第3の実施の形態のセンサ、軟磁性体、磁石の組み合わせは例示であって、位置検出の機能が損なわれず、本発明の要旨を変更しない範囲内で、これらをそれぞれ適宜選択して新たな組み合わせに変更して用いてもよい。また、軟磁性体は以下に示す形状のものを用いてもよい。
【0082】
図12(a)及び(b)は、軟磁性体の形状の変形例を示す斜視図である。
【0083】
図12(a)に示すように、軟磁性体12cは、軟磁性体12と同様の直径及び厚みを有し、さらに燃料の流路となる孔120を有する。孔120を設けることにより、孔120を設けない場合に比べて、燃料の流れをよりスムーズにすることができる。また、燃料の流路を確保することができるため、軟磁性体12cの直径をより大きくすることができる。
【0084】
図12(b)に示すように、軟磁性体12dは、軟磁性体12と同様の直径及び厚みを有し、対向するように円周の一部を残した形状を有する。なお、軟磁性体12dは対向するうちの一片がセンサに最も近づくように配置する。当該形状を採用することにより、上記した孔120に比べて、燃料の流れをよりスムーズにすることができる。また、燃料の流路を確保することができるため、軟磁性体12dの直径をより大きくすることができる。
【0085】
また、磁石は以下に示す形状のものを用いてもよい。
【0086】
図13は、磁石の変形例の構成を示す概略図である。
【0087】
変位検出装置2eは、第1の実施の形態の変位検出装置2の磁石14a、14b及びヨーク15を磁石14dに置き換えたものである。
【0088】
磁石14dは、円筒形状を有し、内側にインジェクタボディ10及びセンサ13を配置できるだけの内径を有し、着磁方向Dmzに着磁される。
【0089】
また、磁石14dは、フェライト、サマリウムコバルト、ネオジウム等の材料を用いて形成された永久磁石で、少なくとも軟磁性体12の可動域においては一様な磁界を形成し、軟磁性体12が誘引する磁束が正負に振れたり、ヒステレシスの影響が出るほどに大幅に数値が変化したりしないものとする。一例として、軟磁性体12が誘引する磁束密度の変化幅は±10mT程度とする。
【0090】
また、センサは以下に示すものを用いてもよい。
【0091】
センサ13cは、図14(c)に示すように、一列に配されたホール素子130l、130r、130cを有する。ホール素子130l、130rの出力の差分をとり、ホール素子130cの出力とのArctanをとることで第2の実施の形態と同様の出力を得ることができる。
【0092】
また、ホール素子130l、130rの出力の差分をとり、かつ、別処理でホール素子130l、130rの出力の平均をとる。ホール素子130l、130rの出力の平均は、ホール素子130cの出力と同様となるため、第2の実施の形態と同様の出力を得ることができる。
【符号の説明】
【0093】
1 インジェクタ
2、2a、2b、2c 変位検出装置
10 インジェクタボディ
10a ノズル部
10b 噴口
10c シーム部
11、11A、11B ニードル
11a 円柱部
11b 先端部
12、12a、12b、12c、12d 軟磁性体
13、13a、13b センサ
14a、14b、14c 磁石
15 ヨーク
110a くぼみ形状
110b ボビン形状
120 孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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