特許第6367729号(P6367729)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367729
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】ハニカム体及び触媒担体
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/04 20060101AFI20180723BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20180723BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   B01J35/04 301A
   B01J35/04 311D
   B01D53/86
   B01J35/04 301G
   B01J35/04 311A
   F01N3/28 301K
【請求項の数】7
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-18312(P2015-18312)
(22)【出願日】2015年2月2日
(65)【公開番号】特開2016-140821(P2016-140821A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】306032316
【氏名又は名称】新日鉄住金マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100067541
【弁理士】
【氏名又は名称】岸田 正行
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(72)【発明者】
【氏名】津村 康浩
(72)【発明者】
【氏名】紺谷 省吾
(72)【発明者】
【氏名】大水 昌文
【審査官】 岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−249216(JP,A)
【文献】 特開2008−264596(JP,A)
【文献】 実開昭63−201631(JP,U)
【文献】 実開昭61−115139(JP,U)
【文献】 米国特許第05384100(US,A)
【文献】 特開平06−339634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00−38/74
B01D 53/86−96
F01N 3/00−3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の波箔と平箔とが交互に積層することにより、該積層方向に直交する軸方向に排ガスを導通させるための複数のガス導通経路を形成した触媒担持用のハニカム体であって、
該ハニカム体の軸方向における中央よりも排ガス入り側に位置する入り側領域の少なくとも一部に、前記軸方向において隣接する波の位相が互いに異なるオフセット部が設けられており、
前記オフセット部に配置される波箔は、前記軸方向において分断されることなく繋がっていることを特徴とする触媒担持用のハニカム体。
【請求項2】
前記オフセット部は、天面及びこの天面の両端から延びる一対の側辺を備えたフィン部を配列することにより構成されており、
前記軸方向において隣接する前記フィン部の位相は互いに異なり、
前記軸方向において隣接する前記天面は互いに部分的に繋がっていることを特徴とする請求項1に記載の触媒担持用のハニカム体。
【請求項3】
前記オフセット部は、前記フィン部を前記軸方向に沿って千鳥状に配列することにより構成されていることを特徴とする請求項2に記載の触媒担持用のハニカム体。
【請求項4】
前記オフセット部は、前記フィン部を前記軸方向に対して傾斜する傾斜方向に配列することにより構成されていることを特徴とする請求項2に記載の触媒担持用のハニカム体。
【請求項5】
前記オフセット部に配置される各前記フィン部の前記軸方向における長さは全て同じであることを特徴とする請求項2に記載の触媒担持用のハニカム体。
【請求項6】
前記一対の側辺は、前記天面から離隔するに従って互いに離間するテーパー形状に形成されていることを特徴とする請求項2乃至5のうちいずれか一つに記載の触媒担持用のハニカム体。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれか一つに記載のハニカム体と、
前記ハニカム体が収容される外筒と、
を有することを特徴とする触媒担体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用のハニカム体等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車、各種機械設備等の内燃機関のエンジンから排出される排気ガスの排出経路には、排気ガスを浄化する目的で、触媒を担持したハニカム構造の触媒担体が設置される。排気ガスにはCO、HC、NOxが含まれており、これらのガスは触媒と接触することで浄化される。触媒担体の浄化性能を評価する指標として、例えば、T50、T80がある。
【0003】
T50は排ガスのガス濃度が触媒作用によって半分に減少したときの温度であり、排ガス流入初期の浄化性能(以下、ライトオフ性能という)を評価するために用いることができる。つまり、T50が低くなるのに応じて、排ガス流入初期の浄化性能が向上する。T80は排ガスのガス濃度が触媒作用によって80%減少したときの温度であり、排ガス流入後所定時間経過後の定常状態における浄化性能(以下、定常性能という)を評価するために用いることができる。つまり、T80が低くなるのに応じて、定常性能が向上する。
【0004】
また、触媒担体が排出経路に配置されることで圧力損失が発生し、この圧力損失が高くなることで、車両出力が低下する。そのため、触媒担体には、圧力損失が低いことも要求される。
【0005】
特許文献1は、帯状をなす金属箔製の波板と平板が多層に巻き付けられてロール状をなすハニカム構造体が、外筒内に挿入されると共に、該波板と平板に触媒物質が付着せしめられた、排気ガス浄化用の触媒担体において、該波板は、巻き付けられた軸方向の前後で、部分的に波の位相が異なっていること、を特徴とする排気ガス浄化用の触媒担体を開示する。
【0006】
この特許文献1の触媒担体は、軸方向に並ぶ波の位相がズレている(オフセットされた)流路もあれば、位相が変化することなく一定の流路もあり、位相ズレの流路が占める割合は、全体の50%以上〜95%以下とされている(明細書段落0017参照)。さらに、位相ズレしている流路における位相変化点は、図2(2)の正断面図から触媒担体の軸方向における略中央と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4719180号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の触媒担体では、触媒担体のライトオフ性能が十分でなかった。すなわち、特許文献1の構成では、位相ズレ部分が設けられることで、セルの中央を通過する排気ガスが位相変化点を通過した後に、オフセットされた下流のセルの外壁に当たることで浄化され易くなるが、ライトオフ性能が十分でなかった。
【0009】
また、当然のことながら、ライトオフ性能に加えて定常性能が高いことも、触媒担体の機能として重要である。オフセット箇所を増加することで、ライトオフ性能及び定常性能を向上させることはできるが、オフセット箇所を増やしすぎると圧力損失が大きくなる。
【0010】
そこで、本願発明は、ライトオフ性能、定常性能が高く、圧力損失の少ない触媒担持用のハニカム体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本願発明に係る触媒担持用のハニカム体は、(1)金属製の波箔と平箔とが交互に積層することにより、該積層方向に直交する軸方向に排ガスを導通させるための複数のガス導通経路を形成した触媒担持用のハニカム体であって、該ハニカム体の軸方向における中央よりも排ガス入り側に位置する入り側領域の少なくとも一部に、前記軸方向において隣接する波の位相が互いに異なるオフセット部が設けられており、前記オフセット部に配置される波箔は、前記軸方向において分断されることなく繋がっていることを特徴とする。
【0012】
(2)前記オフセット部は、天面及びこの天面の両端から延びる一対の側辺を備えたフィン部を配列することにより構成されており、前記軸方向において隣接する前記フィン部の位相は互いに異なり、前記軸方向において隣接する前記天面は互いに部分的に繋がっていることを特徴とする(1)に記載の触媒担持用のハニカム体。
【0013】
(3)前記オフセット部は、前記フィン部を前記軸方向に沿って千鳥状に配列することにより構成されていることを特徴とする(2)に記載の触媒担持用のハニカム体。
【0014】
(4)前記オフセット部は、前記フィン部を前記軸方向に対して傾斜する傾斜方向に配列することにより構成されていることを特徴とする(2)に記載の触媒担持用のハニカム体。
【0015】
(5)前記オフセット部に配置される各前記フィン部の前記軸方向における長さは全て同じであることを特徴とする(2)に記載の触媒担持用のハニカム体。
【0016】
(6)前記一対の側辺は、前記天面から離隔するに従って互いに離間するテーパー形状に形成されていることを特徴とする(2)乃至(5)のうちいずれか一つに記載の触媒担持用のハニカム体。
【0017】
(7)(1)乃至(6)のうちいずれか一つに記載のハニカム体と、前記ハニカム体が収容される外筒と、を有することを特徴とする触媒担体。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、オフセット部が入り側領域の少なくとも一部にのみ設けられることで、ライトオフ性能、定常性能が高く、圧力損失の少ない触媒担持用のハニカム体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】軸方向から視た触媒担体の概略図である(実施形態1)。
図2】波箔の一部における展開図である(実施形態1)。
図3】オフセット部Sに設けられた軸方向において隣り合うフィンFの斜視図である(実施形態1)。
図4】軸方向から視たオフセット部Sの一部における概略図である(実施形態1)。
図5】波箔の一部における展開図である(実施形態2)。
図6】実施例No.1〜No.4及び比較例No.1〜No.10の波箔の一部における概略図である。
図7】フィンのオフセット位置とT50との関係を示すグラフである(実施例1)。
図8】フィンのオフセット位置とT80との関係を示すグラフである(実施例1)。
図9】実施例No.5〜No.7及び比較例No.11〜No.13の波箔の一部における概略図である。
図10】比較例No.14〜No.18の波箔の一部における概略図である。
図11】フィンのオフセット位置とT50との関係を示すグラフである(実施例2)。
図12】フィンのオフセット位置とT80との関係を示すグラフである(実施例2)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(実施形態1)
以下に本実施形態を図面に基づき説明する。図1は、軸方向視における触媒担体の概略図である。紙面に対する法線方向が軸方向に対応し、紙面に沿った方向が径方向に対応している。図2は波板の一部における展開図である。白抜きの矢印は排ガスの導通方向(ハニカム体の軸方向)に対応しており、ハッチングで示す箇所はフィンFの天面に相当する。
【0021】
触媒担体1は、ハニカム体10と、外筒20とから構成され、排ガス浄化用の触媒コンバータとして使用される。触媒担体1は、例えば車両の排ガス経路に配置することができる。
【0022】
ハニカム体10は、図2に図示する波箔30と図2に図示しない平箔40とを重ね合わせて軸周りに巻き回すことで構成されている。ハニカム体10の径方向断面は、円形に形成されている。波箔30及び平箔40には、触媒担持用の金属箔を用いることができる。金属箔には、Alを含んだ耐熱性の各種ステンレス鋼を用いることができる。触媒担持を行う場合には、ウォッシュコート液(γアルミナと添加剤及び貴金属触媒を成分とする溶液)をハニカム体10の流路に供給し、高温熱処理によって焼き付けることでハニカム体10に担持させることができる。
【0023】
ハニカム体10の軸方向の一端側から流入した排ガスは、波箔30及び平箔40の壁面に接触した際に、これらに担持された触媒物質によって浄化される。
【0024】
図2の展開図を参照して、波箔30にはオフセット部Sが形成されている。オフセット部Sは、ハニカム体10における入り側領域Uの少なくとも一部に設けられている。「少なくとも一部」であるため、ハニカム体10の入り側領域Uの全てがオフセット部Sであってもよい。入り側領域Uとは、ハニカム体10を軸方向において均等に二分割した場合における排ガス入り側の領域のことである。入り側領域Uにおけるオフセット部S以外の領域は非オフセット部Tによって形成されている。
【0025】
出側領域Vは、全てが非オフセット部Tによって構成されている。出側領域Vとは、ハニカム体10を軸方向において均等に二分割した場合における排ガス出側の領域のことである。
【0026】
図2及び図3を参照しながら、オフセット部S及び非オフセット部Tの構成について詳細に説明する。図3は、オフセット部Sに設けられた軸方向において隣り合うフィンFの斜視図である。オフセット部Sは、フィンFを軸方向に沿って千鳥状に配列したフィン群を複数列設けることにより構成されている。つまり、一つのフィンFを挟んで軸方向に対向する二つのフィンFは、互いに位相が同一となる位置に設けられており、軸方向に隣接するフィンFは、互いに位相が異なるオフセット位置に設けられている。なお、フィン群の配列数は、設置場所の大きさなどに応じて適宜変更できる。フィン群の配列数が増加するのに応じて、波箔30の巻き数が増大し、ハニカム体10の径寸法を大きくすることができる。
【0027】
個々のフィンFは、天面101と、天面101の両端から延びる一対の左側斜辺102,右側斜辺103とを備えており、これらの左側斜辺102,右側斜辺103は天面101から離隔するに従って末広がりとなる方向に傾斜している。つまり、フィンFは、軸方向視において台形状に形成されている。
【0028】
ハニカム体10の周方向において隣り合うフィンFは、連設部104を介して互いに接続されている。具体的には、隣接する一方のフィンFにおける右側斜辺103と他方のフィンFにおける左側斜辺102との下端部を繋ぐことで、周方向において隣り合うフィンFは接続されている。
【0029】
また、オフセット部Sに設けられる軸方向において隣り合うフィンFの天面101は互いに繋がっており、オフセット部Sと非オフセット部Tの境界に位置する天面101も互いに繋がっている。これにより、千鳥状に配列されたフィンFを含む波箔30が一枚の板材となるため、剛性を高めることができる。
【0030】
すなわち、個々のフィンFを独立させた場合、ハニカム体10の径方向から外力を受けることによって、フィンFが容易に変形するおそれがある。波箔30に形成されたフィンFの天面101を軸方向において接続しておくことで、径方向から受ける外力に対する剛性を高めることができる。上述のオフセット構造を備えた波箔30は、オフセット予定位置に切り込みを形成したステンレス鋼などに対して、フィンFに対応した突起部を有する金型またはローラでプレスすることで、製造することができる。なお、オフセット予定位置に切り込みを形成することは必須条件ではない。この場合、突起部を有する一対の上記金型等を用いてステンレス鋼を挟圧することで、波箔30を形成してもよい。
【0031】
ここで、オフセット部Sに設けられる各フィンFの軸方向における寸法をa、ハニカム体10の入り側領域Uの軸方向における寸法をL1としたときに、好ましくは、a≧1/50L1である。a≧1/50L1とすることで、オフセット部SにおけるフィンFの段数が多すぎることによる圧力損失を抑制できる。各フィンFの寸法aは同一であってもよい。
【0032】
オフセット部Sにおいて、軸方向に隣接するフィンFの繋ぎ幅Aは、好ましくは、波箔30の板厚の3倍以上である。フィンFの繋ぎ幅Aが波箔30の板厚の3倍未満になると、剛性が弱くなり、フィンFが位置ずれを起こすことで、オフセット形状を維持できなくなるおそれがある。
【0033】
次に、図4を参照しながら、オフセット部Sを設ける意義について説明する。図4は、軸方向から視たオフセット部Sの一部における概略図である。軸方向の排ガス入り側に位置するフィンF(以下、フィンF−iという)を実線で示し、このフィンF−iの排ガス出側に位置するフィンF(以下、フィンF−oという)を破線で示している。
【0034】
同図を参照して、フィンF−iに流入した排ガスのうち、フィンF−iの天面101及び斜辺102,103の近傍を通過する排ガスはこれらの壁面に担持された触媒に接触することで浄化され、フィンF−iの天面101及び斜辺102,103から離隔した中央を流れる排ガスはフィンF−iでは浄化され難く層流となって、フィンF−oに流入する。
【0035】
ここで、フィンF−iがハニカム体10の出側端部まで連続している場合(つまり、ハニカム体10の全てが非オフセット部Tで構成されている場合)、フィンF−iの中央を通過する排ガスは、浄化不十分な状態でハニカム体10から排出されるおそれがある。一方、本実施形態のように、ハニカム体10にオフセット部Sを設けた場合には、フィンF−iの中央を流れる排ガスがフィンF−iの下流に位置するフィンF−oの左側斜辺102に接触することで、浄化され易くなる。これにより、浄化性能を高めることができる。
【0036】
本発明者等は、さらに、オフセット部Sをハニカム体10の入り側領域Uの少なくとも一部に設けることで、ライトオフ性能及び定常性能を向上させながら、圧力損失を抑制できることを知見した。すなわち、ハニカム体10の出側領域Vにのみオフセット部Sを設けた場合には、ライトオフ性能及び定常性能が十分でない。また、ハニカム体10の全てをオフセット部Sで構成した場合には、圧力損失が増大するばかりでなく、オフセット箇所が増加した分だけ浄化性能が向上させることもできない。
【0037】
(実施形態2)
図5は本実施形態の波板の一部における展開図である。白抜きの矢印は排ガスの導通方向(ハニカム体の軸方向)に対応しており、ハッチングで示す箇所はフィンFの天面に相当する。なお、実施形態1と機能が共通する要素には、同一符号を付している。
【0038】
図5の展開図を参照して、波箔30にはオフセット部Sが形成されている。オフセット部Sは、ハニカム体10における入り側領域Uの少なくとも一部に設けられている。「少なくとも一部」であるため、ハニカム体10の入り側領域Uの全てがオフセット部Sであってもよい。入り側領域Uとは、ハニカム体10を軸方向において均等に二分割した場合における排ガス入り側の領域のことである。入り側領域Uにおけるオフセット部S以外の領域は非オフセット部Tによって形成されている。
【0039】
出側領域Vは、全てが非オフセット部Tによって構成されている。出側領域Vとは、ハニカム体10を軸方向において均等に二分割した場合における排ガス出側の領域のことである。
【0040】
オフセット部Sは、フィンFを軸方向に対して傾斜する傾斜方向に配列したフィン群を複数列設けることにより構成されている。本実施形態の波箔30は、波箔30の形状に対応する突起を備えた金型又はローラで、平箔をプレスすることで、製造することができる。なお、フィン群の配列数は、設置場所の大きさなどに応じて適宜変更できる。フィン群の配列数が増加するのに応じて、波箔30の巻き数が増大し、ハニカム体10の径寸法を大きくすることができる。個々のフィンFの形状は、実施形態1と共通するから、説明を繰り返さない。
【0041】
本実施形態の構成でも、軸方向において隣り合う一方のフィンFによって形成される排ガス経路と、他方のフィンFの斜辺102(103)とが、軸方向視において重なる位置に配置されるため、浄化性能を向上させることができる。
【0042】
本発明者等は、さらに、オフセット部Sをハニカム体10の入り側領域Uの少なくとも一部に設けることで、ライトオフ性能及び定常性能を向上させながら、圧力損失を抑制できることを知見した。すなわち、ハニカム体10の出側領域Vにのみオフセット部Sを設けた場合には、ライトオフ性能及び定常性能が十分でない。また、ハニカム体10の全てをオフセット部Sで構成した場合には、圧力損失が増大するばかりでなく、オフセット箇所が増加した分だけ浄化性能が向上させることもできない。
【0043】

上述の実施形態1及び2で説明した作用効果について、実施例を示しながら詳細に説明する。
(実施例1)
本実施例1は、実施形態1に対応するものである。オフセット部Sの長さ及び設置位置を種々変更して、ハニカム体のT50(ライトオフ性能)、T80(定常性能)及び圧力損失を評価した。具体的には、SV(空間速度):100,000h−1で模擬ガスをハニカム体に流し、模擬ガス温度を常温からヒーターを用いて徐々に加熱し、各温度におけるCO転化率(%)を測定して、転化率−温度曲線から転化率が50%となるT50、80%となる温度T80を求めた。模擬ガスとして、THC(プロパン、C):550ppm(1650ppmC)、NO:500ppm、CO:0.5%、O:1.5%、HO:10%、N:バランスを用いて、ディーゼル排ガスを模擬した。図6は各種サンプルの概略図であり、表1は試験結果及びその評価結果である。
【0044】
【表1】
【0045】
実施例No.1及び比較例No.1ではオフセット部Sの軸方向寸法を8mmとし、非オフセット部Tの軸方向寸法を36mmとした。また、実施例No.1ではオフセット部Sをハニカム体10の入り側端部から形成し、比較例No.1ではオフセット部Sをハニカム体10の出側端部から形成した。これらの実施例No.1及び比較例No.1を比較して、圧力損失は同じであるが、ライトオフ性能及び定常性能ともに実施例No.1が優れていることがわかった。
【0046】
実施例No.2及び比較例No.2ではオフセット部Sの軸方向寸法を12mmとし、非オフセット部Tの軸方向寸法を32mmとした。また、実施例No.2ではオフセット部Sをハニカム体10の入り側端部から形成し、比較例No.2ではオフセット部Sをハニカム体10の出側端部から形成した。これらの実施例No.2及び比較例No.2を比較して、圧力損失は同じであるが、ライトオフ性能及び定常性能ともに実施例No.2が優れていることがわかった。また、実施例No.1は、比較例
No.2よりもオフセット箇所が少ないにも関わらず、ライトオフ性能及び定常性能が優れていることがわかった。
【0047】
実施例No.3及び比較例No.3ではオフセット部Sの軸方向寸法を16mmとし、非オフセット部Tの軸方向寸法を28mmとした。また、実施例No.3ではオフセット部Sをハニカム体10の入り側端部から形成し、比較例No.3ではオフセット部Sをハニカム体10の出側端部から形成した。これらの実施例No.3及び比較例No.3を比較して、圧力損失は同じであるが、ライトオフ性能及び定常性能ともに実施例No.3が優れていることがわかった。また、実施例No.2は、比較例
No.3よりもオフセット箇所が少ないにも関わらず、ライトオフ性能及び定常性能が優れていることがわかった。
【0048】
実施例No.4及び比較例No.4ではオフセット部Sの軸方向寸法を20mmとし、非オフセット部Tの軸方向寸法を24mmとした。また、実施例No.4ではオフセット部Sをハニカム体10の入り側端部から形成し、比較例No.4ではオフセット部Sをハニカム体10の出側端部から形成した。これらの実施例No.4及び比較例No.4を比較して、圧力損失は同じであるが、ライトオフ性能及び定常性能ともに実施例No.4が優れていることがわかった。また、実施例No.3は、比較例
No.4よりもオフセット箇所が少ないにも関わらず、ライトオフ性能が優れており、定常性能が同等であることがわかった。
【0049】
比較例No.5〜No.8は、実施例No.4に対してオフセット部Sの占める割合を徐々に大きくして、オフセット部Sを出側領域Vにまで拡大したものである。オフセット部Sの占める割合が大きくなる程、圧力損失は大きくなった。一方、ライトオフ性能及び定常性能は、オフセット部Sを出側領域Vにまで拡大しても、殆ど向上しなかった。
【0050】
つまり、図7及び図8のグラフに示すように、入り側領域Uの内部では、オフセット部Sの占める割合が増加するのに応じて、ライトオフ性能及び定常性能が向上する。しかしながら、入り側領域Uを超えて、オフセット部Sを増加しても、ライトオフ性能及び定常性能は向上しないばかりか、却って悪化する場合もあった。
【0051】
比較例No.9はハニカム体10の全てを非オフセット部Tで構成した場合であり、圧力損失は最も小さかったものの、ライトオフ性能及び定常性能は最も低かった。また、比較例No.10はハニカム体10の全てをオフセット部Sで構成した場合であり、圧力損失が最も大きく、ライトオフ性能も実施例No.4と同等であった。
【0052】
上述の結果から、オフセット部Sを入り側領域Uの少なくとも一部に設けることで、ライトオフ性能及び定常性能を向上させながら、圧力損失を抑制できることがわかった。
【0053】
(実施例2)
本実施例2は、実施形態2に対応するものである。図9及び図10の概略図に図示するサンプルを用いて、実施例1と同様の試験を行った。表2は試験結果及び評価結果である。
【0054】
【表2】
【0055】
実施例No.5及び比較例No.11ではオフセット部Sの軸方向寸法を12mmとし、非オフセット部Tの軸方向寸法を32mmとした。また、実施例No.5ではオフセット部Sをハニカム体10の入り側端部から形成し、比較例No.11ではオフセット部Sをハニカム体10の出側端部から形成した。これらの実施例No.5及び比較例No.11を比較して、圧力損失は概ね同じであるが、ライトオフ性能及び定常性能ともに実施例No.5が優れていることがわかった。
【0056】
実施例No.6及び比較例No.12ではオフセット部Sの軸方向寸法を16mmとし、非オフセット部Tの軸方向寸法を28mmとした。また、実施例No.6ではオフセット部Sをハニカム体10の入り側端部から形成し、比較例No.12ではオフセット部Sをハニカム体10の出側端部から形成した。これらの実施例No.6及び比較例No.12を比較して、圧力損失は同じであるが、ライトオフ性能及び定常性能ともに実施例No.6が優れていることがわかった。また、実施例No.5は、比較例No.12よりもオフセット箇所が少ないにも関わらず、ライトオフ性能及び定常性能がともに優れていることがわかった。
【0057】
実施例No.7及び比較例No.13ではオフセット部Sの軸方向寸法を20mmとし、非オフセット部Tの軸方向寸法を24mmとした。また、実施例No.7ではオフセット部Sをハニカム体10の入り側端部から形成し、比較例No.13ではオフセット部Sをハニカム体10の出側端部から形成した。これらの実施例No.7及び比較例No.13を比較して、圧力損失は同じであるが、ライトオフ性能及び定常性能ともに実施例No.7が優れていることがわかった。また、実施例No.6は、比較例No.13よりもオフセット箇所が少ないにも関わらず、ライトオフ性能が概ね同等、定常性能が同等であることがわかった。
【0058】
比較例No.14〜No.18は、実施例No.7に対してオフセット部Sの占める割合を徐々に大きくして、オフセット部Sを出側領域Vにまで拡大したものである。オフセット部Sの占める割合が大きくなる程、圧力損失は大きくなった。一方、ライトオフ性能及び定常性能は、オフセット部Sを出側領域Vにまで拡大しても、殆ど向上しなかった。
【0059】
つまり、図11及び図12のグラフに示すように、入り側領域Uの内部では、オフセット部Sの占める割合が増加するのに応じて、ライトオフ性能及び定常性能が向上する。しかしながら、入り側領域Uを超えて、オフセット部Sを増加しても、ライトオフ性能及び定常性能は向上しないばかりか、却って悪化する場合もあった。
【0060】
上述の結果から、オフセット部Sを入り側領域Uの少なくとも一部に設けることで、ライトオフ性能及び定常性能を向上させながら、圧力損失を抑制できることがわかった。
【0061】
(変形例1)
上述の実施形態では、波箔30と平箔40とを重ね合わせて軸周りに巻き回すことでハニカム体を構成したが、本発明はこれに限るものではなく、他の構成であってもよい。当該他の構成として、複数枚のシート状波箔30とシート状平箔40とを準備し、シート状波箔30とシート状平箔40とを交互に重ね合わせる構成であってもよい。
【0062】
(変形例2)
上述の実施形態では、フィンFを台形状に形成したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、天面101に対して垂直方向に延びる側辺を設けることにより、フィンFを矩形状に構成してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 触媒担体
10 ハニカム体
20 外筒
30 波箔
40 平箔
101 天面
102 左側斜辺
103 右側斜辺
104 連設部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12