(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記膨潤させた架橋ゴムは、密閉容器内に前記架橋ゴムと任意量の溶媒を共存させ、前記架橋ゴム全体を均一に膨潤させたものである請求項1又は2記載の架橋ゴムの架橋疎密を評価する方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、異なる膨潤度に膨潤させた架橋ゴムを測定材料として用いて、小角X線散乱法又は小角中性子散乱法により架橋ゴムの架橋疎密の評価を行ったものである。異なる膨潤度に膨潤させた架橋ゴムは、例えば、架橋ゴムに対する溶媒添加量を変えることにより調製できる。
【0015】
従来、架橋ゴムの架橋疎密を評価する方法として、過剰量の溶媒等により架橋ゴムを完全に膨潤させ、該架橋ゴムの膨潤度(以下、完全膨潤度ともいう)を測定し、該架橋ゴム全体の架橋疎密を調査したり、他の架橋ゴムの完全膨潤度と比較し、架橋ゴム全体の架橋疎密を相対的に調査していたため、架橋ゴム間の架橋疎密の差を調査することは困難であった。
【0016】
本発明者は、鋭意検討の結果、小角X線散乱法又は小角中性子散乱法を用いるにあたり、1つの架橋ゴムに対し、異なる膨潤度に膨潤させた架橋ゴムを測定材料として用いることで、該架橋ゴムの架橋疎密を評価することが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
特に、異なる膨潤度に膨潤させた2種以上の架橋ゴムについて、測定した架橋ゴム全体の膨潤度Qと、上記小角X線散乱法又は小角中性子散乱法により得られたポリマーの不均一網目構造サイズΞとの関係により、より好ましくは、上記関係を直線近似して傾きを求めることにより、更に好ましくは、上記関係を下記(式3)で近似し、下記(式3−1)からポリマーの不均一網目構造の架橋疎密の指標αを算出することにより、1つの架橋ゴム中におけるポリマーの不均一網目構造の相対的な架橋疎密を評価できることを見出した。
【0018】
更に、小角X線散乱法又は小角中性子散乱法により、架橋ゴムの架橋疎密を測定する際には、架橋ゴムを膨潤させる必要がある。すなわち、架橋ゴムを膨潤させて、架橋ゴム中において架橋の疎密をより分かりやすくする必要がある。しかしながら、架橋度が異なる架橋ゴムにおいて膨潤度を揃えることは困難である。そのため、異なる架橋ゴム間においては、その膨潤度が異なるため、架橋疎密を比較することは困難であったが、本発明の手法、特に異なる膨潤度に膨潤させた2種以上の架橋ゴムについて、測定した架橋ゴム全体の膨潤度Qと、上記小角X線散乱法又は小角中性子散乱法により得られたポリマーの不均一網目構造サイズΞとの関係により、より好ましくは、上記関係を直線近似して傾きを求めることにより、更に好ましくは、上記関係を下記(式3)で近似し、下記(式3−1)からポリマーの不均一網目構造の架橋疎密の指標αを算出することにより、異なる架橋ゴム間においても、架橋ゴム中におけるポリマーの不均一網目構造の相対的な架橋疎密を評価できることを見出した。
【0019】
本発明において、上記ポリマーの不均一網目構造とは、後述で詳細に説明するが、
図1(a)に示されるような架橋ゴムにおける架橋密度が高い構造部分を意味する。
【数5】
(Ξ:ポリマーの不均一網目構造サイズ、α:ポリマーの不均一網目構造の架橋疎密の指標、Q:架橋ゴム全体の膨潤度、Ξ
0:非膨潤状態のポリマーの不均一網目構造サイズ)
【0020】
本発明では、架橋ゴムの架橋疎密を評価するために、架橋ゴムにX線を照射し散乱強度を測定する小角X線散乱法(散乱角:通常10度以下)(以下、SAXS(Small−Angle X−ray Scattering)測定ともいう)が使用できる。なお、小角X線散乱法では、X線を物質に照射して散乱するX線のうち、散乱角が小さいものを測定することで物質の構造情報が得られ、架橋ゴムのミクロ相分離構造など、数ナノメートルレベルでの不均一構造を分析できる。
【0021】
また本発明では、架橋ゴムの架橋疎密を評価するために、架橋ゴムに中性子線を照射し散乱強度を測定する小角中性子散乱法(散乱角:通常10度以下)(以下、SANS(Small−Angle Neutron Scattering)測定ともいう)を使用できる。なお、小角中性子散乱法では、中性子線を物質に照射して散乱する中性子線のうち散乱角が小さいものを測定して物質の構造情報が得られ、架橋ゴムのミクロ相分離構造など、数ナノメートルレベルでの不均一構造を分析できる。
【0022】
SAXS測定におけるX線の輝度や光子数、SANS測定における中性子線の中性子束強度、測定方法、測定機器等は、特開2014−102210号公報等に記載されているものを好適に採用できる。コントラストの点でSANS測定の方が優れているが、汎用性があり、本発明の効果が良好に得られるという点で、SAXS測定を用いることが好ましい。
【0023】
SAXS、SANS測定は、下記(式1)で表されるqの領域で実施される。
【数6】
【0024】
SAXS測定において散乱するX線は、X線検出装置によって検出され、該X線検出装置からのX線検出データを用いて画像処理装置などによって画像が生成される。
【0025】
X線検出装置としては、例えば、2次元検出器(X線フィルム、原子核乾板、X線撮像管、X線蛍光増倍管、X線イメージインテンシファイア、X線用イメージングプレート、X線用CCD、X線用非晶質体など)、ラインセンサー1次元検出器を使用できる。分析対象となる高分子材料の種類や状態などにより、適宜X線検出装置を選択すればよい。
【0026】
画像処理装置としては、X線検出装置によるX線検出データに基づき、通常のX線散乱画像を生成できるものを適宜使用できる。
【0027】
SANS測定でもSAXS測定と同様の原理により測定可能であり、散乱する中性子線を中性子線検出装置により検出し、該中性子線検出装置からの中性子線検出データを用いて画像処理装置などによって画像が生成される。ここで、前記と同様、中性子線検出装置としては、公知の2次元検出器や1次元検出器、画像処理装置としては、公知の中性子線散乱画像を生成できるものを使用でき、適宜選択すればよい。
【0028】
本発明で用いる架橋ゴムとしては、硫黄、加硫促進剤等の一般的にゴム工業分野で用いられる加硫剤により天然ゴム、スチレンブタジエンゴム等のゴム成分を架橋した架橋ゴムであれば、特に限定されず、ゴム工業分野で汎用されている他の配合剤(シリカ、カーボンブラックなどの補強剤、シランカップリング剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、各種老化防止剤、オイル、ワックス、架橋剤など)を含むものでもよい。このような架橋ゴムは、公知の混練方法などを用いて製造できる。
【0029】
本発明では、異なる膨潤度に膨潤させた架橋ゴムを作製し、測定材料として用いる。すなわち、架橋の疎密を評価したい1の架橋ゴムについて、2種類以上の膨潤度に膨潤させた架橋ゴムを作製し、測定材料として用いる。前記異なる膨潤度に膨潤させた架橋ゴムを測定材料として用いることで、架橋ゴムの架橋疎密を評価することが可能となる。
また、本発明の方法では、より精度良く架橋疎密を評価できるという点から、3種以上の異なる膨潤度に膨潤させた架橋ゴムを用いることが好ましい。
【0030】
本発明において、異なる膨潤度に膨潤させた架橋ゴムとは、1の架橋ゴムから調製した、膨潤度の異なる2種類以上の膨潤させた架橋ゴムを意味し、膨潤度とは、((架橋ゴムの体積)+(膨潤に使用した化合物の体積))/(架橋ゴムの体積)で定義され、膨潤に使用した化合物(溶媒)の体積とは、架橋ゴムがゴム中に蓄えた化合物(溶媒)の体積のことをいう。例えば、体積が100mm
3の架橋ゴムを用いる場合、該架橋ゴムに過剰量のトルエンを添加し、完全に膨潤させた架橋ゴムを作製し、完全膨潤度が4であるとすると、100mm
3及び200mm
3のトルエンを添加した膨潤度が2及び3の膨潤させた架橋ゴムを用いたり、100mm
3及び300mm
3のトルエンを添加した膨潤度が2及び4の膨潤させた架橋ゴムを用いることができる。
【0031】
架橋ゴムを膨潤する方法としては、架橋ゴムを膨潤できる方法であれば、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、トルエン等の溶媒を用いる方法が好適に使用できる。膨潤させる条件としては、架橋ゴムが均一に膨潤できる条件であれば特に限定されないが、密閉容器内に前記架橋ゴムと任意量の溶媒を共存させ、前記架橋ゴム全体を均一に膨潤させることが好ましい。架橋ゴムを均一に膨潤するとは、膨潤に用いる溶媒等が架橋ゴム中に万遍なく行き渡っており、偏って溶媒が架橋ゴム中に存在し、反った状態の架橋ゴム等にならない状態のことをいう。
【0032】
一般的に、溶媒等を用いて架橋ゴムを膨潤させる際、架橋ゴムに反りが生じる。このような反りが生じている状態では、架橋ゴム中に溶媒等が万遍なく行き渡っておらず、架橋ゴムと溶媒を好ましくは6時間以上、より好ましくは12時間以上、更に好ましくは24時間以上共存させることにより、架橋ゴム中に溶媒等が万遍なく行き渡り、上記反りも解消し、架橋ゴム全体を均一に膨潤させた架橋ゴムが調製できる。
【0033】
そして、異なる膨潤度に膨潤させた各架橋ゴムについて、SAXS測定又はSANS測定を実施し、得られた散乱強度曲線を以下の方法で解析することにより、相関長Ξ
nを持つ散乱体(ポリマーの不均一網目構造)の構造サイズが得られる。本発明において、前記ポリマーの不均一網目構造とは、
図1で示されるような架橋ゴムの架橋疎密を模式的に表す構造のうち、
図1(a)に示されるような架橋ゴムにおける架橋密度が高い構造部分を意味し、
図1(b)に示されるような架橋密度が低い構造部分は含まないものとするが、本発明の方法は、架橋密度が高い構造部分と架橋密度が低い構造部分のいずれにも適用できる。
なお、架橋密度が高い構造部分と低い構造部分は、架橋疎密指標の大小を比較することにより判別可能である(架橋疎密指標αの値が小さいほど架橋疎密が密)。
【0034】
図2などのSAXS測定、SANS測定により得られた散乱強度曲線I
(q)に対して、下記(式2)を用いてカーブフィッティングを行い、フィッティングパラメーターを最小2乗法で求める。
【数7】
(式中、I
ξ(0)、I
Ξ(0)、ξ、Ξ
nはフィッティングパラメーター、qは前記(式1)で表される領域を表す。Ξ
n<Ξ
n+1とする。)
【0035】
(式2)の場合、求められたフィッティングパラメーターのうち、1nm〜10nmの相関長ξがポリマーの架橋点間距離に相当し、10nm〜100μmの相関長Ξ
nがポリマーの不均一網目構造サイズに相当すると推定される。
そして前記のとおり、ポリマーの不均一網目構造に相当する相関長Ξ
nを持つ散乱体の構造サイズが得られる。この相関長Ξ
nを持つ散乱体の構造サイズが、ポリマーの不均一網目構造サイズに相当する。
【0036】
なお、
図2などのSAXS測定、SANS測定により得られた散乱強度曲線I
(q)に対して、下記(式5−1)を用いてカーブフィッティングを行い、フィッティングパラメーターを最小2乗法で求めてもよい。
この場合、フィッティングパラメーターのうち、1〜10nmの慣性半径R
giがポリマーの架橋点間距離に相当し、10〜100nmの慣性半径R
giがポリマーの不均一網目構造サイズに相当すると推定される。
【数8】
【0037】
上記の通り、異なる膨潤度に膨潤させた各架橋ゴムについて、SAXS測定又はSANS測定を実施し、得られた散乱強度曲線を上記(式2)を用いた方法等で解析することにより、相関長Ξ
nを持つ散乱体(ポリマーの不均一網目構造)の構造サイズ(ポリマーの不均一網目構造サイズΞ)が得られる。
次に、SAXS測定又はSANS測定を実施した各架橋ゴムについて、上記膨潤度を測定する。
そして、異なる膨潤度に膨潤させた2種以上の架橋ゴムについて、測定した架橋ゴム全体の膨潤度Qと、不均一網目構造サイズΞとの関係により、より好ましくは、上記関係を直線近似して傾きを求めることにより、更に好ましくは上記関係を下記(式3)で近似し、下記(式3−1)からポリマーの不均一網目構造の架橋疎密の指標αを算出することにより、架橋ゴム中のポリマーの不均一網目構造の架橋疎密を相対的に評価できる。
なお、上記直線近似又は下記(式3)で近似する方法は特に限定されないが、最小二乗法等の方法で行うことができる。
【数9】
(Ξ:ポリマーの不均一網目構造サイズ、α:ポリマーの不均一網目構造の架橋疎密の指標、Q:架橋ゴム全体の膨潤度、Ξ
0:非膨潤状態のポリマーの不均一網目構造サイズ)
【0038】
下記式で示される膨潤割合について、異なる膨潤度に膨潤させた2種以上の架橋ゴムのうち、最も小さい膨潤度に膨潤させた架橋ゴムの膨潤割合aと、最も大きい膨潤度に膨潤させた架橋ゴムの膨潤割合bとの差(b−a)は、10以上であることが好ましく、25以上であることがより好ましく、30以上であることが更に好ましい。また、差(b−a)の上限は特に限定されないが、好ましくは95以下である。上記範囲内であると、より精度良く架橋疎密を評価できる。
膨潤割合(%)=(架橋ゴムの膨潤度−1)/(架橋ゴムの完全膨潤度−1)×100
【0039】
上記説明では、架橋ゴム中に存在するポリマーの不均一網目構造のサイズは同等であるとして、架橋ゴム中のポリマーの不均一網目構造の架橋疎密の指標αを算出した。架橋ゴム中に存在するポリマーの不均一網目構造のサイズが同等でない場合は、異なる膨潤度に膨潤させた架橋ゴムを同一の架橋ゴム切片で作製し、同一の不均一網目構造のサイズ変化を測定できるようにするなど、適宜測定サンプルを変更するなどして、不均一網目構造のサイズ変化量を測定できるようにすればよい。
【0040】
(式3)により、膨潤度の変化量に対する不均一網目構造サイズの変化量dΞ/dQ
1/3を算出できる。更に、(式3−1)において、dΞ/dQ
1/3を、非膨潤状態のポリマーの不均一網目構造サイズΞ
0((式3)により算出)で除することにより、異なるΞ
0を有する不均一網目構造部分間での相対的な架橋疎密を評価可能な指標αを算出できる。
【0041】
(式3−1)により得られた架橋疎密の指標αが小さければ小さいほど、膨潤度の変化量に対して、不均一網目構造サイズの変化量が少なく、不均一網目構造中に蓄えられる膨潤に用いられた化合物量が少なく、架橋密度が高いことを示す。すなわち、不均一網目構造部分の架橋密度が、他の部分の架橋密度と比べて、どの程度高い架橋密度を有するのか、相対的な架橋疎密を知ることが可能となる。また、異なる架橋ゴム間において、不均一網目構造部分の架橋密度が、他の架橋ゴムのそれと比べて、どの程度架橋密度が高いのか、相対的な架橋疎密を評価することも可能となる。ひいては、架橋ゴムの物性に大きく関与する架橋疎密を測定することで、架橋疎密とゴム物性との因果関係を詳細に知ることが可能となり、架橋制御の開発指針につながると推察され、ゴム組成物の開発に大きく寄与できる。
【0042】
また、本発明では、(式3)により、非膨潤状態のポリマーの不均一網目構造サイズΞ
0を算出することができ、各架橋ゴムについて、非膨潤状態のポリマーの不均一網目構造サイズを知ることが可能となる。これにより、従来定量が困難であった非膨潤状態の架橋の疎密が定量可能となり、構造制御指針が得られるため、ゴム組成物の開発に大きく寄与できる。
【実施例】
【0043】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0044】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
(使用試薬)
トルエン:関東化学製
スチレンブタジエンゴム(SBR):日本ゼオン(株)製のNS116R
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)
【0045】
(架橋ゴムAの配合及び製造方法)
上記SBR100質量部、硫黄2質量部、加硫促進剤1質量部の配合比率に従い、SBRをオープンロールで素練りし、硫黄及び加硫促進剤を加え、オープンロールで混練りし、得られた混練物を170℃で12分加硫することで、架橋ゴムAを得た。
【0046】
(架橋ゴムBの配合及び製造方法)
150℃で35分加硫したこと以外は上記架橋ゴムAの配合及び製造方法と同様の方法で、架橋ゴムBを得た。
【0047】
(完全に膨潤させた架橋ゴムの作製及びその膨潤度(完全膨潤度)の測定)
架橋ゴムA、Bそれぞれから切り出した試験片10mm×10mm×1mm(縦×横×厚さ)を室温下で過剰量のトルエンに24時間以上浸漬し、膨潤度(トルエン浸漬前と浸漬後の試験片の体積変化量)を算出した。
【0048】
(異なる膨潤度に膨潤させた架橋ゴムの作製)
(架橋ゴムA)
架橋ゴムAから切り出した試験片10mm×10mm×1mm(縦×横×厚さ)に対して、室温下においてマイクロピペットで68、389、467、又は817mm
3量のトルエンを添加し、ガラス製バイアル瓶に密閉し、24時間以上浸漬し、異なる膨潤度に膨潤させた架橋ゴムA−1〜A−4を得た。
(架橋ゴムB)
架橋ゴムBから切り出した試験片10mm×10mm×1mm(縦×横×厚さ)に対して、室温下においてマイクロピペットで80、410、又は575mm
3量のトルエンを添加し、ガラス製バイアル瓶に密閉し、24時間以上浸漬し、異なる膨潤度に膨潤させた架橋ゴムB−1〜B−3を得た。
【0049】
得られた上記膨潤させた架橋ゴムA−1〜A−4、B−1〜B−3において、以下に示す方法により、膨潤割合と、不均一網目構造サイズと、不均一網目構造の架橋疎密の指標を評価し、結果を表1及び2に示した。
【0050】
(膨潤割合)
下記式により、上記膨潤させた架橋ゴムA−1〜A−4、B−1〜B−3について、膨潤割合を算出した。
膨潤割合(%)=(架橋ゴムの膨潤度−1)/(架橋ゴムの完全膨潤度−1)×100
【0051】
(不均一網目構造サイズの測定)
上記膨潤させた架橋ゴムA−1〜A−4、B−1〜B−3の試験片について、小角X線散乱法を用いて、得られた散乱強度曲線I(q)(
図2にA−1〜A−4の例を示した)に対して、上記(式2)を用いてカーブフィッティングを行い、不均一網目構造サイズをそれぞれ得た。なお、小角X線散乱法で使用した機器及び測定条件は以下に示す。
【0052】
(SAXS装置)
財団法人高輝度光科学研究センター所有の大型放射光施設SPring−8のビームラインBL08B2付属のSAXS測定装置
(測定条件)
X線の輝度(8keV):9.5×10
15photons/s/mrad
2/mm
2/0.1%bw
X線の光子数:10
9〜10
10photons/s
試料から検出器までの距離:2.58m
(検出器)
高速2次元X線検出器 PILATUS 100K(Dectris社製)
【0053】
(不均一網目構造の架橋疎密の指標)
上記膨潤させた架橋ゴムA−1〜A−4について、それぞれの膨潤度と、測定した不均一網目構造サイズとの関係を、上記(式3)で最小二乗法により近似して(
図3)、非膨潤状態の架橋ゴムの不均一網目構造サイズΞ
0と(dΞ/dQ
1/3)を算出し、上記式(3−1)により、架橋疎密の指標αを算出した。また、上記膨潤させた架橋ゴムB−1〜B−3についても、同様に非膨潤状態の架橋ゴムの不均一網目構造サイズΞ
0と(dΞ/dQ
1/3)を算出し、上記式(3−1)により、架橋疎密の指標αを算出した。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
表1及び2から、本発明の手法により、架橋ゴム中の架橋疎密を評価することが可能となった。特に、架橋ゴム中のポリマーの不均一網目構造の相対的な架橋疎密が明らかとなった。