【文献】
Y.Li, J.A.Cooper, M.A.Capano,High-Voltage (3kV) UMOSFETs in 4H-SiC,IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES,米国,IEEE,2002年 2月22日,VOL.49, NO.6,972-975
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2トレンチを形成する工程では、前記第1トレンチを前記第2SiC半導体層で埋め込み、その後、前記第2SiC半導体層をエッチングすることによって前記第2トレンチを形成する請求項1〜3の何れか一項の製造方法。
前記第2トレンチが、前記第1トレンチの側面に前記第2SiC半導体層を堆積させることによって前記第1トレンチの幅を狭めることによって形成される請求項1〜3の何れか一項の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0015】
図1に示す実施例1のMOSFET10は、SiC半導体基板12を有している。SiC半導体基板12の表面12aには、ソース電極80が形成されている。SiC半導体基板12の裏面12bには、ドレイン電極84が形成されている。
【0016】
SiC半導体基板12の表面12aには、複数のゲートトレンチ34が形成されている。各ゲートトレンチ34は、
図1の紙面に対して垂直な方向に長く伸びている。各ゲートトレンチ34内には、ゲート絶縁層38と、ゲート電極40が形成されている。ゲート絶縁層38は、底部絶縁層38bと側部絶縁膜38aを有している。底部絶縁層38bは、ゲートトレンチ34の底部に形成された厚い絶縁層である。ゲートトレンチ34の側面34aのうちの底部絶縁層38bよりも上側の部分は、側部絶縁膜38aによって覆われている。側部絶縁膜38aは、底部絶縁層38bと繋がっている。ゲート電極40は、底部絶縁層38bの上側のゲートトレンチ34内に配置されている。ゲート電極40は、側部絶縁膜38a及び底部絶縁層38bによって、SiC半導体基板12から絶縁されている。ゲート電極40の上面は、層間絶縁層36によって覆われている。ゲート電極40は、層間絶縁層36によってソース電極80から絶縁されている。
【0017】
SiC半導体基板12内には、ソース領域22、ボディ領域26、ドリフト領域28、バッファ領域29、ドレイン領域30及び電界緩和領域32が形成されている。
【0018】
ソース領域22は、SiC半導体基板12中に複数個形成されている。ソース領域22は、n型領域である。ソース領域22は、SiC半導体基板12の表面12aに露出する範囲に形成されている。ソース領域22は、ソース電極80に対してオーミック接触している。ソース領域22は、側部絶縁膜38aに接している。
【0019】
ボディ領域26は、ソース領域22の側方及び下側に形成されており、ソース領域22に接している。ボディ領域26は、p型領域であり、コンタクト領域26aと、低濃度ボディ領域26bを有している。コンタクト領域26aのp型不純物濃度は、低濃度ボディ領域26bのp型不純物濃度よりも高い。コンタクト領域26aは、ソース領域22の側方に形成されており、SiC半導体基板12の表面12aに露出している。コンタクト領域26aは、ソース電極80に対してオーミック接触している。低濃度ボディ領域26bは、ソース領域22及びコンタクト領域26aの下側に形成されている。低濃度ボディ領域26bは、ソース領域22の下側で側部絶縁膜38aに接している。
【0020】
ドリフト領域28は、低濃度にn型不純物を含むn型領域である。ドリフト領域28のn型不純物濃度は、ソース領域22のn型不純物濃度よりも低い。ドリフト領域28は、低濃度ボディ領域26bの下側に形成されている。ドリフト領域28は、低濃度ボディ領域26bの下端の位置から、ゲートトレンチ34の底面34bよりも下側まで広がっている。ドリフト領域28は、ボディ領域26によってソース領域22から分離されている。ドリフト領域28は、低濃度ボディ領域26bの下側で側部絶縁膜38a及び底部絶縁層38bに接している。
【0021】
上述したソース領域22、低濃度ボディ領域26b及びドリフト領域28は、側部絶縁膜38aを介してゲート電極40に対向している。
【0022】
電界緩和領域32は、p型領域である。電界緩和領域32は、各ゲートトレンチ34の底面34bに露出する位置に形成されている。電界緩和領域32は、底面34bの全域において底部絶縁層38bに接している。電界緩和領域32の周囲は、ドリフト領域28に囲まれている。ドリフト領域28によって、各電界緩和領域32は、互いから分離されている。電界緩和領域32は、ドリフト領域28によってボディ領域26から分離されている。電界緩和領域32は、いずれの電極にも接続されていない。このため、電界緩和領域32の電位は浮遊電位とされている。電界緩和領域32の幅は、ゲートトレンチ34の幅よりも広い。なお、ゲートトレンチ34の幅は、SiC半導体基板12の表面12aを平面視したときにおけるゲートトレンチ34の短手方向の寸法を意味する。また、電界緩和領域32の幅は、ゲートトレンチ34の幅の測定方向と同じ方向における電界緩和領域32の寸法を意味する。電界緩和領域32の幅がゲートトレンチ34の幅よりも広いので、電界緩和領域32は、ゲートトレンチ34の直下に位置する主要部32aと、主要部32aからゲートトレンチ34の側面34a(すなわち、側部絶縁膜38a)よりも横方向に突出している突出部32bを輸している。突出部32bは、低濃度ボディ領域26bの直下に位置している。
【0023】
バッファ領域29は、ドリフト領域28よりも高濃度にn型不純物を含むn型領域である。バッファ領域29は、ドリフト領域28の下側に形成されており、ドリフト領域28に接している。
【0024】
ドレイン領域30は、バッファ領域29よりも高濃度にn型不純物を含むn型領域である。ドレイン領域30は、バッファ領域29の下側に形成されており、バッファ領域29に接している。ドレイン領域30は、SiC半導体基板12の裏面12bに露出する範囲に形成されている。ドレイン領域30は、ドレイン電極84に対してオーミック接触している。
【0025】
次に、MOSFET10の動作について説明する。ドレイン電極84には、ソース電極80よりも高い電位が印加される。また、ゲート電極40に閾値以上の電位を印加すると、側部絶縁膜38aに隣接する範囲の低濃度ボディ領域26bがn型に反転し、そこにチャネルが形成される。すると、ソース電極80から、ソース領域22、チャネル、ドリフト領域28、バッファ領域29及びドレイン領域30を経由して、ドレイン電極84に向かって電子が流れる。すなわち、MOSFET10がオンする。
【0026】
ゲート電極40の電位を閾値未満の電位に低下させると、チャネルが消失し、MOSFET10がオフする。すると、ボディ領域26とドリフト領域28の境界部のpn接合42からボディ領域26内及びドリフト領域28内に空乏層が広がる。pn接合42からドリフト領域28内に伸びる空乏層は、電界緩和領域32に到達する。すると、電界緩和領域32からその周囲のドリフト領域28内に空乏層が広がる。すなわち、電界緩和領域32によって、ドリフト領域28内への空乏層の伸展が促進される。電界緩和領域32によってゲートトレンチ34近傍への空乏層の伸展が促進されるため、ゲート絶縁層38に高い電界が印加されることが抑制される。特に、電界緩和領域32が突出部32bを有しているので、突出部32bとボディ領域26に挟まれている部分のドリフト領域28で電位差が生じ難く、これによってゲート絶縁層38に印加される電界が効果的に抑制される。突出部32bの突出量L1が大きいほど、ゲート絶縁層38に電界が印加され難くなる。本実施例では、突出部32bの突出量L1が従来の電界緩和領域に比べて大きいので、ゲート絶縁層38に印加される電界を極めて小さくすることができる。このため、このMOSFET10では、ゲート絶縁層38を貫通して流れる電流を抑制することができる。
【0027】
次に、MOSFET10の製造方法について説明する。MOSFET10は、
図2に示すSiC半導体基板12から製造される。加工前のSiC半導体基板12は、その全体がn型のSiCである第1SiC半導体層50によって構成されている。なお、第1SiC半導体層50は、バルク結晶であってもよいし、エピタキシャル層であってもよい。第1SiC半導体層50のn型不純物濃度は、ドリフト領域28のn型不純物濃度と略等しい。
【0028】
(幅広トレンチ形成工程)
まず、
図3に示すようにSiC半導体基板12の表面12aに、複数の開口部52aを有するエッチングマスク52を形成する。次に、ドライエッチングによって、第1SiC半導体層50の開口部52a内に位置している部分をエッチングする。これによって、第1SiC半導体層50の表面12aに複数の幅広トレンチ54を形成する。幅広トレンチ54は、上述したゲートトレンチ34に対応するパターンで形成されるが、幅広トレンチ54の幅はゲートトレンチ34の幅よりも広い。エッチングマスク52は、幅広トレンチ54の形成後に除去される。
【0029】
(底面イオン注入工程)
次に、
図4に示すように第1SiC半導体層50の表面12aにイオン注入マスク56を形成する。幅広トレンチ54内には、イオン注入マスク56は形成されない。次に、第1SiC半導体層50の表面12a側(すなわち、イオン注入マスク56側)から第1SiC半導体層50にイオン化したp型不純物(本実施例では、アルミニウム)を注入する。第1SiC半導体層50の表面12aはイオン注入マスク56によって覆われているので、p型不純物は幅広トレンチ54の底面54aに注入される。底面54aにp型不純物を注入した後に、SiC半導体基板12を熱処理する。これによって、底面54aに注入されたp型不純物が活性化し、底面54aに露出する範囲の半導体領域がp型化する。これによって、電界緩和領域32が形成される。なお、SiC半導体基板を熱処理するときに、p型不純物はほとんど拡散しない。したがって、電界緩和領域32の幅は、幅広トレンチ54の幅と略等しい。
【0030】
(エピタキシャル成長工程)
次に、
図5に示すように、エピタキシャル成長によって、SiC半導体基板12の表面12aと幅広トレンチ54の内面にn型のSiCである第2SiC半導体層58を成長させる。ここでは、幅広トレンチ54内に隙間がなくなるまで第2SiC半導体層58を成長させる。第2SiC半導体層58のn型不純物濃度は、第1SiC半導体層50のn型不純物濃度と略等しい。したがって、第2SiC半導体層58と第1SiC半導体層50は、一体化したn型半導体領域となる。第2SiC半導体層58を形成したら、
図6に示すように、第2SiC半導体層58の表面(すなわち、SiC半導体基板12の表面12a)をエッチングして平坦化する。
【0031】
(ゲートトレンチ形成工程)
次に、
図7に示すように、SiC半導体基板12の表面12aに、複数の開口部55aを有するエッチングマスク55を形成する。開口部55aは、幅広トレンチ54内に形成された第2SiC半導体層58上に配置する。開口部55aの幅は、幅広トレンチ54の幅よりも狭い。また、開口部55aは、幅広トレンチ54の幅方向の中央に配置される。次に、ドライエッチングによって、第2SiC半導体層58の開口部55a内に位置している部分をエッチングする。これによって、電界緩和領域32の直上にゲートトレンチ34を形成する。より詳細には、ゲートトレンチ34は、電界緩和領域32の中央部の直上に形成される。また、ゲートトレンチ34は、電界緩和領域32に達するように形成される。また、ゲートトレンチ34の幅は、幅広トレンチ54の幅よりも狭くなる。すなわち、ゲートトレンチ34の幅は、電界緩和領域32の幅よりも狭くなる。したがって、電界緩和領域32は、ゲートトレンチ34の直下に位置する主要部32aと、主要部32aからゲートトレンチ34の側面34aよりも横方向に突出する突出部32bを有するようになる。突出部32bは、主要部32aの両側に形成される。突出部32bの突出量L1は、幅広トレンチ54の幅とゲートトレンチ34の幅の差によって決まる。したがって、この方法によれば、p型不純物の拡散係数が小さいSiC半導体基板12を用いる場合でも、突出量L1が大きい電界緩和領域32を形成することができる。
【0032】
(ゲート絶縁層形成工程・ゲート電極形成工程)
次に、
図8に示すように、ゲートトレンチ34内にゲート絶縁層38とゲート電極40を形成する。なお、上述したように、第1SiC半導体層50と第2SiC半導体層58は一体化しているので、
図8及び後述する
図9、10では第1SiC半導体層50と第2SiC半導体層58の境界を図示していない。この工程では、まず、ゲートトレンチ34内に隙間なく絶縁層を成長させる。次に、成長させた絶縁層をエッチングして、ゲートトレンチ34の底部近傍にのみ絶縁層を残存させる。残存した絶縁層が、底部絶縁層38bとなる。次に、底部絶縁層38bよりも上側のゲートトレンチ34の側面34aに、薄く絶縁膜を成長させて、側部絶縁膜38aを形成する。これによって、ゲート絶縁層38が完成する。ゲート絶縁層38を形成したら、ゲートトレンチ34内に隙間なくゲート電極40(すなわち、ポリシリコン)を成長させる。
【0033】
(ボディ領域・ソース領域形成工程)
次に、表面12a側からSiC半導体基板12にp型不純物を注入することで、
図9に示すように低濃度ボディ領域26bを形成する。次に、表面12a側から選択的にn型不純物及びp型不純物を注入することによって、
図10に示すように、ソース領域22及びコンタクト領域26aを形成する。これらの領域に対して不純物を注入したら、SiC半導体基板12を熱処理して、注入した不純物を活性化させる。
【0034】
その後、MOSFET10の表面12a側のその他の構造(すなわち、層間絶縁層36、ソース電極80等)を形成する。次に、MOSFET10の裏面12b側の構造(すなわち、バッファ領域29、ドレイン領域30及びドレイン電極84等)を形成する。以上の工程を実施することで、
図1に示すMOSFET10が完成する。
【0035】
以上に説明したように、この方法によれば、電界緩和領域32の突出量L1が大きいMOSFET10を製造することができる。すなわち、ゲート絶縁層38に電界が印加され難いMOSFET10を製造することができる。
【0036】
また、上述したエピタキシャル成長工程において第1SiC半導体層50よりも結晶性が高い(すなわち、結晶欠陥が少ない)第2SiC半導体層58を形成すれば、MOSFET10のチャネルが形成される領域(すなわち、ゲート絶縁層38に隣接する範囲の低濃度ボディ領域26b)の結晶性を向上させることができる。これによって、チャネル抵抗を低減し、MOSFET10のオン抵抗を低減することができる。第2SiC半導体層58の結晶成長条件を調整することで、第2SiC半導体層58の結晶欠陥を少なくすることができる。
【実施例2】
【0037】
図11に示す実施例2のMOSFETでは、低濃度ボディ領域26bのうちのゲート絶縁層38に接するゲート隣接部分27aのn型不純物濃度が、ゲート絶縁層38から離れているゲート非隣接部分27bのn型不純物濃度よりも高い。なお、ゲート非隣接部分27bは、ゲート絶縁層38の反対側でゲート隣接部分27aに隣接している。ゲート隣接部分27aの下端(すなわち、ゲート隣接部分27aとドリフト領域28の境界のpn接合42a)は、ゲート非隣接部分27bの下端(すなわち、ゲート非隣接部分27bとドリフト領域28の境界のpn接合42b)よりも上側に位置している。また、ドリフト領域28のうちのゲート絶縁層38に接する部分28aのn型不純物濃度が、その部分28aに対してゲート絶縁層38の反対側で接する部分28bのn型不純物濃度よりも高い。ゲート隣接部分27aとドリフト領域28の部分28aは、電界緩和領域32(より詳細には、突出部32b)の直上に位置している。実施例2のMOSFETのその他の構成は、実施例1のMOSFET10と等しい。
【0038】
MOSFETがオンするときに、チャネルは、ゲート絶縁層38に接する位置の低濃度ボディ領域26bに形成される。すなわち、実施例2のMOSFETでは、チャネルが、ゲート隣接部分27a内に形成される。上述したように、実施例2のMOSFETでは、ゲート隣接部分27aの下端が、ゲート非隣接部分27bの下端よりも上側に位置している。このため、実施例2のMOSFETでは、チャネル長が短くなっている。このように、実施例2のMOSFETは、チャネル長が短いため、チャネル抵抗が小さい。したがって、実施例2のMOSFETは、オン抵抗が小さい。
【0039】
また、通常の使用状態では、MOSFETがオフしているときにpn接合42からボディ領域26内に伸びる空乏層は、ソース領域22までは到達しない。しかしながら、MOSFET10が接続されている回路の動作状態によっては、ドレイン電極84の電位が極めて高くなる場合がある。このように極めて高い電位がドレイン電極84に印加されると、pn接合42からボディ領域26内に伸びる空乏層がソース領域22に到達する場合がある。すなわち、パンチスルーが生じる。実施例2のMOSFET10では、ゲート非隣接部分27bの下端がゲート隣接部分27aの下端よりも下側に存在するので、ゲート非隣接部分27bの下端からソース領域22までの距離が長く確保されている。このため、パンチスルーが生じ難く、実施例2のMOSFETのパンチスルー電圧は高い。
【0040】
このように、ゲート隣接部分27aの下端をゲート非隣接部分27bの下端よりも上側に配置することで、低いチャネル抵抗と、高いパンチスルー電圧を実現することができる。
【0041】
次に、実施例2のMOSFETの製造方法について説明する。まず、実施例1と同様にして、幅広トレンチ形成工程(
図3)と底面イオン注入工程(
図4)を実施する。次に、エピタキシャル成長工程を実施する。実施例2のエピタキシャル成長工程では、
図12に示すように、第1SiC半導体層50よりもn型不純物濃度が高い第2SiC半導体層58を成長させる。第2SiC半導体層58のn型不純物濃度が高い点を除いて、実施例2のエピタキシャル成長工程は、実施例1のエピタキシャル成長工程と等しい。次に、
図13に示すように、SiC半導体基板12の表面をエッチングして平坦化する。次に、
図14に示すように、実施例1と同様にして、ゲートトレンチ形成工程、ゲート絶縁層形成工程及びゲート電極形成工程を実施する。次に、表面12a側からSiC半導体基板12にp型不純物を注入することによって、
図15に示すように、低濃度ボディ領域26bを形成する。
図16は、
図15のA−A線及びB−B線の位置における不純物濃度分布を示している。A−A線は、第2SiC半導体層58内の位置であり、B−B線は第1SiC半導体層50内の位置である。A−A線及びB−B線のいずれの位置でも、
図16のグラフpに示すように、p型不純物濃度は表面12aから下側に向かうにしたがって低下するように分布している。また、A−A線の位置では、
図16のグラフn1に示すように、n型不純物濃度が略一定の濃度で分布している。また、B−B線の位置では、
図16のグラフn2に示すように、A−A線の位置のn型不純物濃度(グラフn1)よりも低い略一定の濃度でn型不純物濃度が分布している。グラフn1とグラフpの交点は、A−A線の位置における低濃度ボディ領域26bの下端(すなわち、pn接合42a)の位置を示しており、グラフn2とグラフpの交点は、B−B線の位置における低濃度ボディ領域26bの下端(すなわち、pn接合42b)の位置を示している。A−A線の位置のn型不純物濃度がB−B線の位置のn型不純物濃度よりも高いので、A−A線の位置ではB−B線の位置よりも低濃度ボディ領域26bの下端が上側に位置するようになる。したがって、
図15に示すように、低濃度ボディ領域26bのうちのゲート隣接部分27aの下端が、ゲート非隣接部分27bの下端よりも上側に位置するようになる。低濃度ボディ領域26bを形成したら、その後の工程を実施例1と同様にして実施する。これによって、
図11に示す実施例2のMOSFETを製造することができる。
【実施例3】
【0042】
図17に示す実施例3のMOSFETでは、低濃度ボディ領域26bのゲート隣接部分27aのn型不純物濃度が、ゲート非隣接部分27bのn型不純物濃度よりも低い。ゲート隣接部分27aの下端(すなわち、ゲート隣接部分27aとドリフト領域28の境界のpn接合42a)は、ゲート非隣接部分27bの下端(すなわち、ゲート非隣接部分27bとドリフト領域28の境界のpn接合42b)よりも下側に位置している。また、ドリフト領域28のうちのゲート絶縁層38に接する部分28aのn型不純物濃度が、ゲート絶縁層38から離れている部分28bのn型不純物濃度よりも低い。
【0043】
実施例3のMOSFETでは、ゲート隣接部分27aの下端がゲート非隣接部分27bの下端よりも下側に配置されている。このため、ゲート絶縁層38とドリフト領域28とが接触している面積が小さくなっている。この構造によれば、ゲート絶縁層38に印加される電界をより効果的に抑制することができる。
【0044】
また、実施例3のMOSFETは、実施例2の製造方法を、第1SiC半導体層50よりもn型不純物濃度が低い第2SiC半導体層58を形成するように変更することで、製造することができる。第2SiC半導体層58のn型不純物濃度を第1SiC半導体層50のn型不純物濃度よりも低くすることで、実施例2とは反対に、ゲート隣接部分27aの下端をゲート非隣接部分27bの下端よりも下側に位置させることができる。
【実施例4】
【0045】
図18に示す実施例4のMOSFETでは、電界緩和領域32とゲートトレンチ34の底面34bの間に間隔が設けられている。その間隔には、n型のドリフト領域28が形成されている。実施例4のMOSFETのその他の構成は、実施例1のMOSFETと等しい。このように、電界緩和領域32とゲートトレンチ34の底面34bの間に間隔が設けられていても、実施例1のMOSFETと同様に、電界緩和領域32によってゲート絶縁層38に印加される電界を抑制することができる。
【0046】
また、実施例4のMOSFETの製造方法では、
図19に示すように、ゲートトレンチ形成工程において電界緩和領域32に達しないようにゲートトレンチ34を形成する。その他の工程は、実施例1と同様に実施する。これによって、
図18に示す構造を得ることができる。
【0047】
また、実施例4のMOSFETは、別の方法によって製造することもできる。この製造方法では、
図20に示すように、底面イオン注入工程において、幅広トレンチ54の底面54aに対して高エネルギーでp型不純物を注入する。これによって、p型不純物が底面54aよりもさらに下側の領域に注入され、電界緩和領域32と底面54aの間に間隔ができる。その後の工程を実施例1と同様に実施することで、
図18に示す構造を得ることができる。なお、この製造方法を用いる場合には、低濃度ボディ領域26bとその下側の電界緩和領域32の間の距離を長くすることができる。この距離を長くすることで、ドリフト領域28で保持することが可能な電圧を高くすることができる。
【0048】
なお、上述したMOSFETの製造方法について、その変形例を以下に説明する。なお、以下に説明する変形例は、実施例1〜4のMOSFETのいずれに対しても適用することができる。
【0049】
(第1変形例)
上述した製造方法では、
図5等に示すように幅広トレンチ54を第2SiC半導体層58によって埋め込んだ。しかしながら、
図21に示すように、幅広トレンチ54の内部に空間が残るように第2SiC半導体層58を成長させて、幅広トレンチ54の幅を狭めてもよい。そして、幅広トレンチ54の幅を狭めることで得られたトレンチを、ゲートトレンチ34として利用することができる。
【0050】
(第2変形例)
第1変形例では、幅広トレンチ54の内面とSiC半導体基板12の表面12aに等方的に第2SiC半導体層58を成長させた。しかしながら、
図22に示すように、異方性エピタキシャル成長によって、第2SiC半導体層58を幅広トレンチ54の側面のみに成長させてもよい。この方法でも、幅広トレンチ54の幅を狭めて得られたトレンチを、ゲートトレンチ34として利用することができる。
【0051】
(第3変形例)
上述した製造方法では、低濃度ボディ領域26b、コンタクト領域26a及びソース領域22をイオン注入によって形成した。しかしながら、これらの領域を形成する際に、エピタキシャル成長を利用してもよい。第3変形例は、ソース領域22をエピタキシャル成長によって形成する製造方法である。第3変形例の製造方法では、幅広トレンチ形成工程、底面イオン注入工程及びエピタキシャル成長工程を実施した後に、
図23に示すように、イオン注入によって低濃度ボディ領域26bを形成する。次に、
図24に示すように、エピタキシャル成長によって、低濃度ボディ領域26b上にn型のソース領域22を形成する。次に、
図25に示すように、ソース領域22に選択的にp型不純物を注入することによって、コンタクト領域26aを形成する。次に、
図26に示すように、SiC半導体基板12の表面12aに、ソース領域22と低濃度ボディ領域26bを貫通するように、幅が狭いゲートトレンチ34を形成する。その後、ゲート絶縁層38、ゲート電極40等の必要な構造を形成することで、MOSFETを製造することができる。
【0052】
なお、第3変形例では、低濃度ボディ領域26bをイオン注入によって形成したが、低濃度ボディ領域26bをエピタキシャル成長によって形成してもよい。また、低濃度ボディ領域26bをエピタキシャル成長によって形成する場合には、その低濃度ボディ領域26bに対してイオン注入を行うことで、コンタクト領域26aとソース領域22を形成してもよい。
【0053】
また、上述した実施例及び変形例では、幅広トレンチ54の底面にp型不純物を注入した直後に、そのp型不純物を活性化させるための熱処理を行った。また、低濃度ボディ領域26b、コンタクト領域26a及びソース領域22に対する不純物の注入を行った後に、これらの領域に注入した不純物を活性化するための熱処理を行った。しかしながら、このような不純物を活性化するための熱処理を実施するタイミングは、適宜変更することができる。また、幅広トレンチ54の底面に注入した不純物を活性化させるための熱処理と、低濃度ボディ領域26b、コンタクト領域26a及びソース領域22に対する熱処理とをまとめて行ってもよい。
【0054】
また、上述した実施例及び変形例では、MOSFETについて説明したが、IGBTに対して本明細書に開示の技術を適用してもよい。上述したMOSFETのドレイン領域30をp型のコレクタ領域に置き換えれば、IGBTが得られる。
【0055】
また、上述した実施例及び変形例では、電界緩和領域32の電位が浮遊電位とされていた。しかしながら、電界緩和領域32が所定の固定電位に接続されていてもよい。例えば、図示しない位置に電界緩和領域32とソース電極80とを接続する導電路を設けて、電界緩和領域32をソース電極80の電位に接続してもよい。
【0056】
また、上述した実施例及び変形例では、ボディ領域26がコンタクト領域26a(すなわち、p型不純物濃度が高く、ソース電極80に接しているp型領域)を有していた。しかしながら、ボディ領域26が、コンタクト領域26aを有していなくてもよい。例えば、ボディ領域26が、低濃度ボディ領域26bのみによって構成されていてもよい。
【0057】
上述した実施例の構成要素と請求項の構成要素との関係について説明する。実施例の幅広トレンチ54は、請求項の第1トレンチの一例である。実施例のゲートトレンチ34は、請求項の第2トレンチの一例である。実施例のソース領域22は、請求項の第1領域の一例である。実施例のドリフト領域28は、請求項の第2領域の一例である。
【0058】
本明細書が開示する技術要素について、以下に列記する。なお、以下の各技術要素は、それぞれ独立して有用なものである。
【0059】
第2SiC半導体層のn型不純物濃度が、第1SiC半導体層のn型不純物濃度よりも高くてもよい。この場合、ボディ領域が、第1SiC半導体層と第2SiC半導体層にp型不純物を注入することによって形成されてもよい。
【0060】
この構成によれば、n型不純物濃度が高い第1SiC半導体層は、n型不純物濃度が低い第2SiC半導体層よりも浅い範囲までしかp型化しない。つまり、第1SiC半導体層に形成されるボディ領域の下端が、第2SiC半導体層に形成されるボディ領域の下端よりも上側に配置される。この構成によれば、製造される絶縁ゲート型スイッチング装置において、低いチャネル抵抗と高いパンチスルー電圧を両立させることができる。
【0061】
もしくは、第2SiC半導体層のn型不純物濃度が、第1SiC半導体層のn型不純物濃度よりも低くてもよい。この場合、ボディ領域が、第1SiC半導体層と第2SiC半導体層にp型不純物を注入することによって形成されてもよい。
【0062】
この構成によれば、第1SiC半導体層に形成されるボディ領域の下端が、第2SiC半導体層に形成されるボディ領域の下端よりも下側に配置される。この構成によれば、製造される絶縁ゲート型スイッチング装置において、ゲート絶縁層に印加される電界をより緩和することができる。
【0063】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。