特許第6367781号(P6367781)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6367781リチウムイオン電池用ナノシリコン複合負極材、製造方法及びリチウムイオン電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367781
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用ナノシリコン複合負極材、製造方法及びリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20180723BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20180723BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20180723BHJP
【FI】
   H01M4/38 Z
   H01M4/587
   H01M4/36 B
   H01M4/36 C
   H01M4/36 E
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-219421(P2015-219421)
(22)【出願日】2015年11月9日
(65)【公開番号】特開2016-134382(P2016-134382A)
(43)【公開日】2016年7月25日
【審査請求日】2015年11月9日
(31)【優先権主張番号】201510027926.4
(32)【優先日】2015年1月20日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】514013417
【氏名又は名称】深▲セン▼市貝特瑞新能源材料股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】任建国
(72)【発明者】
【氏名】岳敏
(72)【発明者】
【氏名】黄友元
(72)【発明者】
【氏名】賀雪琴
【審査官】 細井 龍史
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102214817(CN,A)
【文献】 特表2010−501970(JP,A)
【文献】 特開2015−118911(JP,A)
【文献】 特開2014−197551(JP,A)
【文献】 特開2000−268824(JP,A)
【文献】 特開2012−099452(JP,A)
【文献】 特開2008−027897(JP,A)
【文献】 特開2011−243571(JP,A)
【文献】 特開平09−249407(JP,A)
【文献】 特開2013−110112(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0164079(US,A1)
【文献】 特開2015−050188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノシリコン複合負極材であって、黒鉛基材と、前記黒鉛基材の内部に化学気相堆積されたナノシリコン材料とを含み、前記黒鉛基材の表面における無定形炭素被覆層及び前記無定形炭素被覆層の表面におけるナノ導電材被覆層をさらに含み、前記負極材における前記ナノ導電材被覆層の含有量が0.9〜2.0wt%であり、
前記黒鉛基材は、中空黒鉛であることを特徴とするナノシリコン複合負極材。
【請求項2】
前記黒鉛基材と、前記黒鉛基材の内部に堆積された前記ナノシリコン材料と、前記黒鉛基材の表面における前記無定形炭素被覆層と、前記ナノ導電材被覆層とから構成されることを特徴とする請求項1に記載のナノシリコン複合負極材。
【請求項3】
前記ナノシリコン材料は結晶体及び/又は非結晶体であり、単分散ナノシリコン粒子であり、
前記負極材における前記ナノシリコン材料の含有量が1.0〜80.0wt%であり、
前記無定形炭素被覆層の厚さは5.0〜1000.0nmであることを特徴とする請求項1に記載のナノシリコン複合負極材。
【請求項4】
前記ナノ導電材被覆層はカーボンナノチューブ、グラフェン、導電性黒鉛、炭素繊維、ナノ黒鉛又は導電性カーボンブラック中の1種又は少なくとも2種の組み合わせを含むことを特徴とする請求項2又は3に記載のナノシリコン複合負極材。
【請求項5】
請求項1に記載のナノシリコン複合負極材の製造方法であって、
(1)中空黒鉛を製造する工程と、
(2)ケイ素源を用いて、中空黒鉛の内部にナノシリコン粒子を化学気相成長する工程とを含み、
(3)工程(2)で得られた材料に対して機械的融合処理を行った後、無定形炭素による被覆処理を行う工程、
(4)工程(3)で得られた材料に対してナノ導電材による被覆改質を行う工程、及び
(5)工程(4)で得られた材料を篩いにかけ、脱磁処理を行う工程を含むことを特徴とするナノシリコン複合負極材の製造方法。
【請求項6】
前記中空黒鉛は機械的加工により製造され、
前記機械的加工は、黒鉛系の材料を黒鉛粒子に処理した後、研磨して中空黒鉛を得る過程であり、前記黒鉛粒子の中央粒径は5.0〜25.0μmであり、研磨された中空黒鉛の中央粒径は1.0〜10.0μmであり、
前記加工は、黒鉛系の材料を粉砕し、脱磁し、篩いにかけて中央粒径が5.0〜25.0μmである黒鉛粒子を得た後、研磨して中央粒径が1.0〜10.0μmである中空黒鉛を得る過程であり、
前記研磨は機械的研磨であり、
前記ケイ素源は、SiH4、Si26、Si38、SiCl4、SiHCl3、Si2Cl6、SiH2Cl2又はSiH3Cl中の1種又は少なくとも2種の組み合わせであり、
前記化学気相成長は、熱化学気相成長、プラズマ増強化学気相成長、マイクロ波プラズマ補助化学気相成長中の1種を採用し、
前記化学気相成長で使用された装置は回転炉、チューブ炉又は流動床中の1種であり、
前記化学気相成長の温度は400〜1150℃であることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記研磨は湿式研磨であり、
前記湿式研磨は、高速撹拌ミル、ボールミル、チューブミル、コーンミル、ロッドミル及びサンドミルのいずれかを採用することを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
工程(3)において、前記被覆処理は固相被覆、液相被覆又は気相被覆中の1種を採用し、
工程(4)において、前記被覆改質は機械的改質、ナノ分散又は液相被覆中の1種を採用し、
前記機械的改質で使用された装置はボールミル、融合機及びVC混合機中の1種であることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のナノシリコン複合負極材を含むことを特徴とするリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウムイオン電池の技術分野に属し、具体的には、リチウムイオン電池用ナノシリコン複合負極材、製造方法及びリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、携帯型電子機器、電気自動車及びエネルギー貯蔵システムのための望ましい電源であり、高比エネルギー、高安全性、低コストの新型の電極材の開発は、リチウムイオン電池の研究開発分野の核心であり、新型の負極材の研究は、新世代のリチウムイオン電池の開発に対して重要な価値がある。現在、成熟したリチウムイオン電池の負極材は主に黒鉛系の材料であり、その理論比容量が372mAh/gだけであるため、発展の可能性に限りがあり、将来のリチウムイオン電池の高エネルギー密度に対する需要を満たすことができない。例えばAl、Sn、Sb、Si等のLiと合金化可能な金属及びその合金系の材料は、その可逆的リチウム貯蔵容量が黒鉛系の負極よりはるかに大きく、例えばSi負極の理論容量が4200mAh/gに達することが発見されたが、当該種類の負極材は/、リチウムの脱離や挿入の場合、体積の膨張や収縮が大きく(>300%)、その高体積効果がサイクル安定性を悪くさせるため、これらのシステムはまだ実用化には至っていない。
【0003】
シリコン負極のサイクル特性を高めるために、一般的に、当業者はシリコンのナノ化、シリコンと金属との合金化、シリコンと炭素材料との複合によりシリコン材料の体積膨張効果を改善する。そのうち、ナノシリコンと黒鉛との複合材料は応用の見通しが広く、ナノシリコンの合成及び黒鉛基材への均一な分散は鍵となる技術である。
【0004】
例えば、CN103474667Aには、黒鉛をコアとしてナノシリコン粒子層に被覆された球状又は略球状の複合粒子であるナノシリコン/黒鉛粒子、第1炭素被覆層及び有機分解炭素層を含むシリコン炭素複合負極材が開示されている。CN100422112Cには、球状コアシェル構造を備えるシリコン炭素複合材料が開示されており、コアシェル構造におけるコア部は平均粒径1〜45ミクロンの球状炭素粒子であり、炭素粒子は黒鉛化された中間相炭素微小球、硬質炭素球及び球状化黒鉛から選ばれた1種、2種、又は3種の材料の混合物であり、コアシェル構造におけるシェル層は炭素と平均粒径10ナノメートル〜4ミクロンのシリコン結晶粒から構成される。以上の2種類の構造はいずれも、主にナノシリコンで黒鉛粒子の表面を被覆したものであるため、ナノシリコンの分布が不均一になり、黒鉛粒子の内部空間を効果的に利用できず、ナノシリコンの担持量をさらに高めにくい等の問題を引き起こしやすい。
【0005】
黒鉛の中空処理は、ナノシリコンを黒鉛粒子の内部に嵌め込むことに寄与し、ナノシリコンの分散性と担持量を効果的に高める。例えば、CN103682287Aには、嵌め込み型複合コアシェル構造のシリコン系負極材が開示されており、コアはナノシリコン粒子を中空黒鉛の内層隙間に嵌め込んだ構造であり、シェルは非黒鉛の炭素材料であり、コアは、機械的に研磨されたナノシリコンと中空処理された黒鉛とを有機溶媒に混合して乾燥したものである。しかし、ナノシリコン粒子は乾燥処理の過程において非常に凝集しやすく、ナノシリコン粒子が中空黒鉛の内部に均一で単分散した複合状態となりにくく、凝集したナノシリコンは充放電過程において徐々に融合して大きなシリコン粒子になり、そのサイクル特性と膨張特性は顕著に劣化してしまう。CN102214817Aには、炭素/シリコン/炭素ナノ複合構造の負極材及びその製造方法が開示されており、その工程は化学気相成長プロセスにより炭素基材にナノシリコンを堆積してから、化学気相成長プロセスによりナノシリコンの表面をナノカーボンで被覆する。なお、炭素基材は多孔質炭素、カーボンナノチューブ又はグラフェンである。しかし、一般的な多孔質炭素材料(例えば活性炭)は空隙が小さく、ナノシリコン材料を効果的に担持できない一方、カーボンナノチューブ又はグラフェンは凝集しやすいことから、その表面へのナノシリコン材料の均一な堆積も実現しにくい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、どのようにしてナノレベルのシリコン粒子を製造し、ナノシリコンの黒鉛粒子の内部での均一な単分散担持を実現して、高容量を確保するとともに、材料のサイクル膨張を効果的に低減しサイクル特性を高め、高容量、長寿命のシリコン系負極材を製造することは、リチウムイオン電池の分野で早急に解決すべき技術的難題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来技術の問題点に対し、本発明の第1の目的は、リチウムイオン電池用ナノシリコン複合負極材を提供することにある。本発明によって提供される複合負極材は導電性がよく、比容量が高く、サイクル寿命が長く、初回充放電効率が高く、サイクル膨張が低いという利点を有する。
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は下記の技術的手段を採用している。
【0009】
黒鉛基材と、黒鉛基材の内部に均一に堆積されたナノシリコン材料とを含むナノシリコン複合負極材。
【0010】
好ましくは、前記ナノシリコン複合負極材は黒鉛基材の表面における無定形炭素被覆層及びナノ導電材被覆層をさらに含む。
【0011】
本発明によるナノシリコン複合負極材は、比容量が高く、初回充放電効率が高く、導電性が高いという特徴を有する。
【0012】
好ましくは、前記ナノシリコン複合負極材は黒鉛基材と、黒鉛基材の内部に均一に堆積されたナノシリコン材料とから構成される。
【0013】
好ましくは、前記ナノシリコン複合負極材は黒鉛基材と、黒鉛基材の内部に均一に堆積されたナノシリコン材料と、黒鉛基材の表面における無定形炭素被覆層と、ナノ導電材被覆層とから構成される。
【0014】
好ましくは、前記ナノシリコン材料は結晶体及び/又は非結晶体であり、好ましくは単分散ナノシリコン粒子である。
【0015】
好ましくは、前記ナノシリコン材料の平均粒度は1.0−1000.0nm、例えば2−50nm、10−150nm、100−500nm、400−1000nm、500−800nm等である。
【0016】
好ましくは、負極材における前記ナノシリコン材料の含有量は1.0−80.0wt%、例えば1.5wt%、2.0wt%、3.4wt%、5.0wt%、11.5wt%、21.0wt%、35.5wt%、44.6wt%、55.5wt%、64.6wt%、75.5wt%等であり、好ましくは2.0−60.0wt%であり、さらに好ましくは3.0−50.0wt%である。負極材におけるナノシリコン材料の含有量が低すぎると、比容量が低くなり、高すぎると、サイクル膨張が大きくなるため、本発明では、負極材におけるナノシリコン材料の含有量として1.0−80.0wt%を選択する。
【0017】
好ましくは、前記無定形炭素被覆層は、ピッチ、高分子材料又は重合体中の1種又は少なくとも2種の混合物を被覆してから炭化処理したものであり、好ましくはコールタールピッチ、石油ピッチ、中間相ピッチ、高分子材料又は重合体中の1種又は少なくとも2種の混合物を被覆してから500−1200℃の温度で高温処理したものであり、
あるいは、前記無定形炭素被覆層は、有機炭素源ガス中の1種又は少なくとも2種の混合物を高温分解したものであり、好ましくはメタン、エタン、プロパン、エチレン、アセチレン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エタノール中の1種又は少なくとも2種の混合物を高温分解したものである。
【0018】
好ましくは、前記無定形炭素被覆層の厚さは5.0−1000.0nm、例えば5−50nm、10−150nm、150−500nm、440−950nm、500−800nm等であり、好ましくは10.0−500.0nmであり、さらに好ましくは50.0−200.0nmである。
【0019】
好ましくは、前記ナノ導電材被覆層はカーボンナノチューブ、グラフェン、導電性黒鉛、炭素繊維、ナノ黒鉛又は導電性カーボンブラック中の1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0020】
好ましくは、負極材における前記ナノ導電材被覆層の含有量は0.1−10.0wt%、例えば0.3wt%、0.9wt%、2.0wt%、5.0wt%、9.5wt%等であり、好ましくは0.5−8.0wt%であり、さらに好ましくは1.0−7.0wt%である。
【0021】
本発明の第2の目的は、ケイ素源を用いて、中空黒鉛の内部にナノシリコン粒子を化学気相成長するナノシリコン複合負極材の製造方法を提供することにある。
【0022】
本発明の製造方法は、ナノシリコン粒子を均一に中空黒鉛材料の内部に堆積することにより、中空黒鉛の内部隙間がナノシリコンの担持に大量の空間を提供し、負極材におけるナノシリコンの担持量及び負極材での分散性を効果的に高めることができ、化学気相成長法を採用することにより、黒鉛材料の内部に単分散のナノシリコン粒子を形成し、ナノシリコン材料の二次凝集を回避することができ、さらに、ナノシリコン材料の表面の酸化を回避し、負極材の初回充放電効率を高めることもできる。
【0023】
好ましくは、前記方法は、
(1)中空黒鉛を製造する工程と、
(2)ケイ素源を用いて、中空黒鉛の内部にナノシリコン粒子を化学気相成長する工程とを含み、
(3)工程(2)で得られた材料に対して機械的融合処理を行った後、無定形炭素による被覆処理を行う工程、
(4)工程(3)で得られた材料に対してナノ導電材による被覆改質を行う工程(ナノ導電材を複合材料の表面に塗布することにより、導電材と複合材料との接触を強化し、複合材料の導電性能を高めることができる)、及び
(5)工程(4)で得られた材料を篩いにかけ、脱磁処理を行う工程を含む。
【0024】
好ましくは、前記中空黒鉛は機械的加工により製造される。
【0025】
好ましくは、前記機械的加工は、黒鉛系の材料を黒鉛粒子に処理した後、研磨して中空黒鉛を得る過程である。
【0026】
好ましくは、前記黒鉛粒子の中央粒径は5.0−25.0μm、例えば5.5−8.0μm、7.0−15.0μm、10−20μm等であり、研磨された中空黒鉛の中央粒径は1.0−10.0μm、例えば1.2−5.0μm、3.0−7.5μm、5.0−9.8μm等である。
【0027】
好ましくは、前記加工は、黒鉛系の材料を粉砕し、脱磁し、篩いにかけて中央粒径が5.0−25.0μmの黒鉛粒子を得た後、研磨して中央粒径が1.0−10.0μmの中空黒鉛を得る過程である。
【0028】
好ましくは、前記研磨は機械的研磨であり、好ましくは乾式研磨及び/又は湿式研磨であり、さらに好ましくは湿式研磨である。
【0029】
好ましくは、前記湿式研磨は、高速撹拌ミル、ボールミル、チューブミル、コーンミル、ロッドミル及びサンドミルのいずれかを採用する。
【0030】
好ましくは、前記ケイ素源はSiH4、Si26、Si38、SiCl4、SiHCl3、Si2Cl6、SiH2Cl2又はSiH3Cl中の1種又は少なくとも2種の組み合わせである。
【0031】
好ましくは、前記化学気相成長は、熱化学気相成長、プラズマ増強化学気相成長、マイクロ波プラズマ補助化学気相成長中の1種を採用する。
【0032】
好ましくは、前記化学気相成長装置は回転炉、チューブ炉又は流動床中の1種である。
【0033】
好ましくは、前記化学気相成長の温度は400−1150℃、例えば410℃、420℃、450℃、500℃、550℃、600℃、650℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1050℃、1080℃、1100℃、1140℃又は1145℃等である。堆積時間は所望の負極材におけるナノシリコン材料の含有量に応じて決めることができる。
【0034】
好ましくは、工程(3)において、前記被覆処理は固相被覆、液相被覆又は気相被覆中の1種を採用する。
【0035】
好ましくは、工程(4)において、前記被覆改質は機械的改質、ナノ分散又は液相被覆中の1種を採用する。機械的改質、ナノ分散又は液相被覆の方法を採用することにより、ナノ導電材の複合材料の表面での均一な分散を促進し、ナノ導電材の凝集を回避することができる。
【0036】
好ましくは、前記機械的改質装置はボールミル、融合機及びVC混合機中の1種である。
【0037】
本発明の製造方法は同様に、本発明のナノシリコン複合負極材の製造にも適用でき、優れた効果を発揮できる。
【0038】
本発明の第3の目的は、本発明のナノシリコン複合負極材又は本発明の製造方法で製造されたナノシリコン複合負極材を含むリチウムイオン電池を提供することにある。
【発明の効果】
【0039】
本発明のナノシリコン複合負極材は、比容量が高く(>1000mAh/g)、初回充放電効率が高く(>93%)、導電性が高いという特徴を有する。本発明の製造方法は、操作が簡単で、制御しやすく、生産コストが低く、産業化生産に適する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の実施例1におけるナノシリコン複合負極材のX線回折パターンである。
図2】本発明の実施例1におけるナノシリコン複合負極材の断面の走査型電子顕微鏡写真である。
図3】本発明の実施例1におけるナノシリコン複合負極材の初回充放電曲線である。
図4】本発明の実施例1におけるナノシリコン複合負極材のサイクル特性曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明を理解しやすくするために、以下に実施例を挙げる。ただし、以下の実施例は、あくまでも、本発明を理解するための例示であり、本発明が以下の実施例に記載されたものに何ら制限されることではない。
【0042】
[実施例1]
(1)ボールミルポットに、平均粒径が16−19μmで炭素含有量が99.95%である天然球状黒鉛粉末500gと、水1Lとを加え、均一に撹拌し、直径10mmの酸化ジルコニウムビーズ4kgを加え、ボールミルの回転速度を480r/minとして5−25h研磨し、吸引ろ過・乾燥して粒径1.0μmの中空黒鉛材料を得た。
【0043】
(2)中空黒鉛500gを回転炉に入れ、回転速度を0.5r/minに調整し、昇温速度5.0℃/minで、流量1.0L/minの高純度窒素ガスによる
保護で700℃に昇温させた後、高純度窒素ガスを高純度水素ガスとSiHCl3との混合ガスに切り替え、流量を10.0L/minに維持し、恒温で3.0h保温した後、ガスを高純度窒素ガスに切り替え、室温まで放冷して、中空黒鉛/ナノシリコン複合材料が得られ、ナノシリコン材料の平均粒度が80.0nmであった。
【0044】
(3)中空黒鉛/ナノシリコン複合材料を融合機に加えて4h融合して、融合前駆体材料が得られ、融合前駆体材料とピッチを質量比85:15でVC混合機に加え、1h混合しながら被覆処理をした後、ローラキルンに入れ、窒素ガスの保護雰囲気で、昇温速度5℃/minで950℃に昇温させ、恒温で20h保温し、室温まで放冷し、次に破砕し、粉砕し、篩いにかけて、無定形炭素で被覆されたナノシリコン/黒鉛複合材料が得られ、無定形炭素被覆層の厚さが100.0nmであった。
【0045】
(4)無定形炭素で被覆されたナノシリコン/黒鉛複合材料と導電性カーボンブラックSuper−Pを質量比95.0:5.0で融合機により均一に混合し、さらに篩いにかけ、脱磁して、最終的なナノシリコン複合負極材が得られ、負極材におけるナノシリコン材料の含有量が30.0wt%であった。
【0046】
図1は実施例1で得られたナノシリコン複合負極材のX線回折パターンであり、中心が28.6°、47.5°、56.3°に位置する回折ピークはそれぞれ結晶シリコン(111)、(220)、(311)の結晶面に対応することから、負極材には化学気相成長によるナノ結晶シリコンが含まれていることが分かった。図2は実施例1で得られたナノシリコン複合負極材の断面の走査型電子顕微鏡写真であり、図から、ナノシリコン粒子が黒鉛層間に嵌め込まれてており、ナノシリコン粒子が単分散状態を呈していることが観察された。
【0047】
図3は実施例1で得られたナノシリコン複合負極材の初回充放電曲線であり、材料の充電(リチウム挿入)比容量が1163.7mAh/gであり、放電(リチウム脱離)比容量が1086.9mAh/gであり、初回充放電効率が93.4%に達した。
【0048】
図4は実施例1で得られたナノシリコン複合負極材のサイクル特性曲線であり、負極材の500サイクル後の容量保持率が80.1%に達した。
【0049】
[実施例2]
(1)ボールミルポットに、平均粒径が10−13μmで炭素含有量99.95%である人造黒鉛粉末500gと、水1Lとを加え、均一に撹拌し、直径5mmの酸化ジルコニウムビーズ3kgを加え、ボールミルの回転速度を800r/minとして25−40h研磨し、吸引ろ過・乾燥して粒径8.0μmの中空黒鉛材料を得た。
【0050】
(2)中空黒鉛500gを回転炉に入れ、回転速度を2.0r/minに調整し、昇温速度3.0℃/minで、流量1.0L/minの高純度窒素ガスによる保護で500℃に昇温させた後、高純度窒素ガスを高純度水素ガスとSiH4との混合ガスに切り替え、流量を2.0L/minに維持し、恒温で0.5h保温した後、ガスを高純度窒素ガスに切り替え、室温まで放冷して、中空黒鉛/ナノシリコン複合材料が得られ、ナノシリコン材料の平均粒度が1.0nmであった。
【0051】
(3)中空黒鉛/ナノシリコン複合材料を融合機に加えて2h融合して、融合前駆体材料が得られ、融合前駆体材料を回転炉に入れ、5℃/minで900℃に昇温させ、流量0.2L/minでメタンガスを導入し、全反応過程において炉内にN2を導入し、流量を0.1L/minに制御して0.5h反応させ、室温まで放冷し、次に破砕し、粉砕し、篩いにかけて無定形炭素で被覆されたナノシリコン/黒鉛複合材料が得られ、無定形炭素被覆層の厚さが5.0nmであった。
【0052】
(4)無定形炭素で被覆されたナノシリコン/黒鉛複合材料とグラフェンを質量比99.9:0.1で機械的融合により均一に混合し、さらに篩いにかけて脱磁して、最終的なナノシリコン複合負極材が得られ、負極材におけるナノシリコン材料の含有量が1.0wt%であった。
【0053】
[実施例3]
(1)ボールミルポットに、平均粒径が16−19μmで炭素含有量が99.95%である天然球状黒鉛粉末500gと、水1Lとを加え、均一に撹拌し、直径3mmの酸化ジルコニウムビーズ4kgを加え、ボールミルの回転速度を800r/minとして40−60h研磨し、吸引ろ過・乾燥して粒径5.0μmの中空黒鉛材料を得た。
【0054】
(2)中空黒鉛500gをチューブ炉に入れ、昇温速度5.0℃/minで、流量2.5L/minの高純度窒素ガスによる保護で1000.0℃に昇温させた後、高純度窒素ガスを高純度水素ガスとSiCl4との混合ガスに切り替え、流量を10.0L/minに維持し、恒温で8.0h保温した後、ガスを高純度窒素ガスに切り替え、室温まで放冷して、中空黒鉛/ナノシリコン複合材料が得られ、ナノシリコン材料の平均粒度が1000.0nmであった。
【0055】
(3)中空黒鉛/ナノシリコン複合材料を融合機に加えて6h融合して、融合前駆体材料が得られ、融合前駆体材料を回転炉に入れ、3℃/minで600℃に昇温させ、流量0.2L/minでアセチレンガスを導入し、全反応過程において炉内にN2保護雰囲気ガスを導入し、流量を0.5L/minに制御して4h反応させ、室温まで放冷し、次に破砕し、粉砕し、篩いにかけて無定形炭素で被覆されたナノシリコン/黒鉛複合材料が得られ、無定形炭素被覆層の厚さが1000.0nmであった。
【0056】
(4)無定形炭素で被覆されたナノシリコン/黒鉛複合材料とカーボンナノチューブを質量比90.0:10.0で、ナノ分散により均一に混合し、さらに篩いにかけて脱磁して、最終的なナノシリコン複合負極材が得られ、負極材におけるナノシリコン材料の含有量が80.0wt%であった。
【0057】
[実施例4]
(1)ボールミルポットに、平均粒径が10−13μmで炭素含有量99.95%である人造黒鉛粉末500gと、水1Lとを加え、均一に撹拌し、直径10mmの酸化ジルコニウムビーズ5kgを加え、ボールミルの回転速度を1000r/minとして25−40h研磨し、吸引ろ過・乾燥して粒径3.0μmの中空黒鉛材料を得た。
【0058】
(2)中空黒鉛500gを流動床に入れ、昇温速度3.0℃/minで、流量4.5L/minの高純度窒素ガスによる保護で800.0℃に昇温させた後、高純度窒素ガスを高純度窒素ガスとSi38との混合ガスに切り替え、流量を10.0L/minに維持し、恒温で5.0h保温した後、ガスを高純度窒素ガスに切り替え、室温まで放冷して、中空黒鉛/ナノシリコン複合材料が得られ、ナノシリコン材料の平均粒度が500nmであった。
【0059】
(3)中空黒鉛/ナノシリコン複合材料を融合機に加えて3h融合して、融合前駆体材料が得られ、融合前駆体材料とピッチを質量比80:20でエタノールに分散し、固形分を15%に制御し、速度1000r/minで1h撹拌しながら分散して乾燥し、ローラキルンに入れ、窒素ガスの保護雰囲気で、昇温速度5℃/minで500℃に昇温させ、恒温で15h保温し、室温まで放冷し、次に破砕し、粉砕し、篩いにかけて無定形炭素で被覆されたナノシリコン/黒鉛複合材料が得られ、無定形炭素被覆層の厚さが200nmであった。
【0060】
(4)無定形炭素で被覆されたナノシリコン/黒鉛複合材料とグラフェンを質量比99.0:1.0で、機械的融合により均一に混合し、さらに篩いにかけて脱磁して、最終的なナノシリコン複合負極材が得られ、負極材におけるナノシリコン材料の含有量が50.0wt%であった。
【0061】
[実施例5]
(1)ボールミルポットに、平均粒径が21−24μmで炭素含有量が99.95%である天然球状黒鉛粉末500gと、水1Lとを加え、均一に撹拌し、直径8mmの酸化ジルコニウムビーズ4kgを加え、ボールミルの回転速度を500r/minとして60−80h研磨し、吸引ろ過・乾燥して粒径5.0μmの中空黒鉛材料を得た。
【0062】
(2)中空黒鉛500gを回転炉に入れ、回転速度を0.5r/minに調整し、昇温速度5.0℃/minで、流量5.0L/minの高純度窒素ガスによる保護で750℃に昇温させた後、高純度窒素ガスを高純度水素ガスとSiH2Cl2との混合ガスに切り替え、流量を10.0L/minに維持し、恒温で1.0h保温した後、ガスを高純度窒素ガスに切り替え、室温まで放冷して、中空黒鉛/ナノシリコン複合材料が得られ、ナノシリコン材料の平均粒度が50nmであった。
【0063】
(3)中空黒鉛/ナノシリコン複合材料を融合機に加えて5h融合して、融合前駆体材料が得られ、融合前駆体材料とクエン酸粉末を質量比5:1でVC混合機に加え、1.5h混合しながら被覆処理をした後、ローラキルンに入れ、窒素ガスの保護雰囲気で、昇温速度3℃/minで400℃に昇温させ、恒温で20h保温し、室温まで放冷し、次に破砕し、粉砕し、篩いにかけて無定形炭素で被覆されたナノシリコン/黒鉛複合材料が得られ、無定形炭素被覆層の厚さが50.0nmであった。
【0064】
(4)無定形炭素で被覆されたナノシリコン/黒鉛複合材料と導電性黒鉛とを質量比94.0:6.0で、機械的融合により均一に混合し、さらに篩いにかけて脱磁して、最終的なナノシリコン複合負極材が得られ、負極材におけるナノシリコン材料の含有量が10.0wt%であった。
【0065】
[実施例6]
(1)ボールミルポットに、平均粒径が5−10μmで炭素含有量が99.95%である天然球状黒鉛粉末500gと、水1Lとを加え、均一に撹拌し、直径8mmの酸化ジルコニウムビーズ4kgを加え、ボールミルの回転速度を500r/minとして60−80h研磨し、吸引ろ過・乾燥して粒径10.0μmの中空黒鉛材料を得た。
【0066】
(2)中空黒鉛500gを回転炉に入れ、回転速度を0.5r/minに調整し、昇温速度5.0℃/minで、流量5.0L/minの高純度窒素ガスによる保護で400℃に昇温させた後、高純度窒素ガスを高純度水素ガスとSiH3Clとの混合ガスに切り替え、流量を5.0L/minに維持し、恒温で8.0h保温した後、ガスを高純度窒素ガスに切り替え、室温まで放冷して、中空黒鉛/ナノシリコン複合材料が得られ、ナノシリコン材料の平均粒度が200nmであった。
【0067】
(3)中空黒鉛/ナノシリコン複合材料を融合機に加えて5h融合して、融合前駆体材料が得られ、融合前駆体材料とクエン酸粉末を質量比10:1でVC混合機に加え、1.5h混合しながら被覆処理をした後、ローラキルンに入れ、窒素ガスの保護雰囲気で、昇温速度3℃/minで400℃に昇温させ、恒温で20h保温し、室温まで放冷し、次に破砕し、粉砕し、篩いにかけて無定形炭素で被覆されたナノシリコン/黒鉛複合材料が得られ、無定形炭素被覆層の厚さが25.0nmであった。
【0068】
(4)無定形炭素で被覆されたナノシリコン/黒鉛複合材料と導電性黒鉛を質量比98.0:2.0で、機械的融合により均一に混合し、さらに篩いにかけて脱磁して、最終的なナノシリコン複合負極材が得られ、負極材におけるナノシリコン材料の含有量が40.0wt%であった。
【0069】
[実施例7]
(1)ボールミルポットに、平均粒径が16−19μmで炭素含有量が99.95%である天然球状黒鉛粉末500gと、水1Lとを加え、均一に撹拌し、直径10mmの酸化ジルコニウムビーズ4kgを加え、ボールミルの回転速度を480r/minとして5−25h研磨し、吸引ろ過・乾燥して粒径1.0μmの中空黒鉛材料を得た。
【0070】
(2)中空黒鉛500gを回転炉に入れ、回転速度を0.5r/minに調整し、昇温速度5.0℃/minで、流量1.0L/minの高純度窒素ガスによる保護で700℃に昇温させた後、高純度窒素ガスを高純度水素ガスとSiHCl3との混合ガスに切り替え、流量を10.0L/minに維持し、恒温で3.0h保温した後、ガスを高純度窒素ガスに切り替え、室温まで放冷して、中空黒鉛/ナノシリコン複合材料が得られ、ナノシリコン材料の平均粒度が80.0nmであり、複合材料におけるナノシリコンの含有量が35.0wt%であった。
【0071】
(比較例1)
(1)ボールミルポットに、平均粒径が16−19μmで炭素含有量が99.95%である天然球状黒鉛粉末500gと、水1Lとを加え、均一に撹拌し、直径10mmの酸化ジルコニウムビーズ4kgを加え、ボールミルの回転速度を480r/minとして5−25h研磨し、吸引ろ過・乾燥して中空黒鉛材料を得た。
【0072】
(2)中空黒鉛と中央粒径10−300nmのナノシリコン粉末とをイソプロパノール溶媒に混合して分散させ、固形分を15%に制御し、回転速度2000r/minで撹拌し乾燥して中空黒鉛/ナノシリコン粉末複合材料を得た。
【0073】
(3)中空黒鉛/ナノシリコン複合材料を融合機に加えて4h融合して、融合前駆体材料が得られ、融合前駆体材料とピッチを質量比85:15でVC混合機に加え、1h混合しながら被覆処理をした後、ローラキルンに入れ、窒素ガスの保護雰囲気で、昇温速度5℃/minで950℃に昇温させ、恒温で20h保温し、室温まで放冷し、次に破砕し、粉砕し、篩いにかけて無定形炭素で被覆されたナノシリコン/黒鉛複合材料が得られ、無定形炭素被覆層の厚さが100.0nmであった。
【0074】
(4)無定形炭素で被覆されたナノシリコン/黒鉛複合材料と導電性カーボンブラックSuper−Pを質量比95.0:5.0で、融合機により均一に混合し、さらに篩いにかけて脱磁して、最終的な負極材が得られ、負極材におけるナノシリコン粉末の含有量が30.0wt%であった。
【0075】
実施例1〜7及び比較例1で製造された負極材の電気化学的テストの結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
表1から、比較例1において気相成長が採用されずほかの操作条件及び原料が実施例1と同じである場合、その1st可逆容量(mAh/g)、1st放電容量(mAh/g)、初回クーロン効率(%)及び500サイクル後の容量維持率は、いずれも実施例の気相成長による負極材より顕著に低く、また、本発明のほかの技術的手段による負極材はいずれも比較例1よりも顕著に優れた初回クーロン効率(%)及び500サイクル後の容量維持率を有していることが分かった。以上から分かるように、中空黒鉛の内部にナノシリコン粒子を化学気相成長することにより製造された本発明の負極材は、顕著に改善された電気的特性を有している。
【0078】
本発明は上記実施例により本発明の詳細なプロセス装置及びプロセスフローを説明したが、本発明は上記の詳細なプロセス装置及びプロセスフローに限定されるものではなく、即ち、本発明は上記の詳細なプロセス装置及びプロセスフローによらなければ実施できないのを意味することではないと、出願人は声明する。本発明に対するあらゆる改良、本発明の製品の各原料に対する等価置換、及び補助成分の添加、具体的な方式の選択等は、いずれも本発明の保護範囲と開示範囲に属することを、当業者が了承すべきである。
図1
図2
図3
図4