【課題を解決するための手段】
【0007】
従来技術の問題点に対し、本発明の第1の目的は、リチウムイオン電池用ナノシリコン複合負極材を提供することにある。本発明によって提供される複合負極材は導電性がよく、比容量が高く、サイクル寿命が長く、初回充放電効率が高く、サイクル膨張が低いという利点を有する。
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は下記の技術的手段を採用している。
【0009】
黒鉛基材と、黒鉛基材の内部に均一に堆積されたナノシリコン材料とを含むナノシリコン複合負極材。
【0010】
好ましくは、前記ナノシリコン複合負極材は黒鉛基材の表面における無定形炭素被覆層及びナノ導電材被覆層をさらに含む。
【0011】
本発明によるナノシリコン複合負極材は、比容量が高く、初回充放電効率が高く、導電性が高いという特徴を有する。
【0012】
好ましくは、前記ナノシリコン複合負極材は黒鉛基材と、黒鉛基材の内部に均一に堆積されたナノシリコン材料とから構成される。
【0013】
好ましくは、前記ナノシリコン複合負極材は黒鉛基材と、黒鉛基材の内部に均一に堆積されたナノシリコン材料と、黒鉛基材の表面における無定形炭素被覆層と、ナノ導電材被覆層とから構成される。
【0014】
好ましくは、前記ナノシリコン材料は結晶体及び/又は非結晶体であり、好ましくは単分散ナノシリコン粒子である。
【0015】
好ましくは、前記ナノシリコン材料の平均粒度は1.0−1000.0nm、例えば2−50nm、10−150nm、100−500nm、400−1000nm、500−800nm等である。
【0016】
好ましくは、負極材における前記ナノシリコン材料の含有量は1.0−80.0wt%、例えば1.5wt%、2.0wt%、3.4wt%、5.0wt%、11.5wt%、21.0wt%、35.5wt%、44.6wt%、55.5wt%、64.6wt%、75.5wt%等であり、好ましくは2.0−60.0wt%であり、さらに好ましくは3.0−50.0wt%である。負極材におけるナノシリコン材料の含有量が低すぎると、比容量が低くなり、高すぎると、サイクル膨張が大きくなるため、本発明では、負極材におけるナノシリコン材料の含有量として1.0−80.0wt%を選択する。
【0017】
好ましくは、前記無定形炭素被覆層は、ピッチ、高分子材料又は重合体中の1種又は少なくとも2種の混合物を被覆してから炭化処理したものであり、好ましくはコールタールピッチ、石油ピッチ、中間相ピッチ、高分子材料又は重合体中の1種又は少なくとも2種の混合物を被覆してから500−1200℃の温度で高温処理したものであり、
あるいは、前記無定形炭素被覆層は、有機炭素源ガス中の1種又は少なくとも2種の混合物を高温分解したものであり、好ましくはメタン、エタン、プロパン、エチレン、アセチレン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エタノール中の1種又は少なくとも2種の混合物を高温分解したものである。
【0018】
好ましくは、前記無定形炭素被覆層の厚さは5.0−1000.0nm、例えば5−50nm、10−150nm、150−500nm、440−950nm、500−800nm等であり、好ましくは10.0−500.0nmであり、さらに好ましくは50.0−200.0nmである。
【0019】
好ましくは、前記ナノ導電材被覆層はカーボンナノチューブ、グラフェン、導電性黒鉛、炭素繊維、ナノ黒鉛又は導電性カーボンブラック中の1種又は少なくとも2種の組み合わせを含む。
【0020】
好ましくは、負極材における前記ナノ導電材被覆層の含有量は0.1−10.0wt%、例えば0.3wt%、0.9wt%、2.0wt%、5.0wt%、9.5wt%等であり、好ましくは0.5−8.0wt%であり、さらに好ましくは1.0−7.0wt%である。
【0021】
本発明の第2の目的は、ケイ素源を用いて、中空黒鉛の内部にナノシリコン粒子を化学気相成長するナノシリコン複合負極材の製造方法を提供することにある。
【0022】
本発明の製造方法は、ナノシリコン粒子を均一に中空黒鉛材料の内部に堆積することにより、中空黒鉛の内部隙間がナノシリコンの担持に大量の空間を提供し、負極材におけるナノシリコンの担持量及び負極材での分散性を効果的に高めることができ、化学気相成長法を採用することにより、黒鉛材料の内部に単分散のナノシリコン粒子を形成し、ナノシリコン材料の二次凝集を回避することができ、さらに、ナノシリコン材料の表面の酸化を回避し、負極材の初回充放電効率を高めることもできる。
【0023】
好ましくは、前記方法は、
(1)中空黒鉛を製造する工程と、
(2)ケイ素源を用いて、中空黒鉛の内部にナノシリコン粒子を化学気相成長する工程とを含み、
(3)工程(2)で得られた材料に対して機械的融合処理を行った後、無定形炭素による被覆処理を行う工程、
(4)工程(3)で得られた材料に対してナノ導電材による被覆改質を行う工程(ナノ導電材を複合材料の表面に塗布することにより、導電材と複合材料との接触を強化し、複合材料の導電性能を高めることができる)、及び
(5)工程(4)で得られた材料を篩いにかけ、脱磁処理を行う工程を含む。
【0024】
好ましくは、前記中空黒鉛は機械的加工により製造される。
【0025】
好ましくは、前記機械的加工は、黒鉛系の材料を黒鉛粒子に処理した後、研磨して中空黒鉛を得る過程である。
【0026】
好ましくは、前記黒鉛粒子の中央粒径は5.0−25.0μm、例えば5.5−8.0μm、7.0−15.0μm、10−20μm等であり、研磨された中空黒鉛の中央粒径は1.0−10.0μm、例えば1.2−5.0μm、3.0−7.5μm、5.0−9.8μm等である。
【0027】
好ましくは、前記加工は、黒鉛系の材料を粉砕し、脱磁し、篩いにかけて中央粒径が5.0−25.0μmの黒鉛粒子を得た後、研磨して中央粒径が1.0−10.0μmの中空黒鉛を得る過程である。
【0028】
好ましくは、前記研磨は機械的研磨であり、好ましくは乾式研磨及び/又は湿式研磨であり、さらに好ましくは湿式研磨である。
【0029】
好ましくは、前記湿式研磨は、高速撹拌ミル、ボールミル、チューブミル、コーンミル、ロッドミル及びサンドミルのいずれかを採用する。
【0030】
好ましくは、前記ケイ素源はSiH
4、Si
2H
6、Si
3H
8、SiCl
4、SiHCl
3、Si
2Cl
6、SiH
2Cl
2又はSiH
3Cl中の1種又は少なくとも2種の組み合わせである。
【0031】
好ましくは、前記化学気相成長は、熱化学気相成長、プラズマ増強化学気相成長、マイクロ波プラズマ補助化学気相成長中の1種を採用する。
【0032】
好ましくは、前記化学気相成長装置は回転炉、チューブ炉又は流動床中の1種である。
【0033】
好ましくは、前記化学気相成長の温度は400−1150℃、例えば410℃、420℃、450℃、500℃、550℃、600℃、650℃、700℃、800℃、900℃、1000℃、1050℃、1080℃、1100℃、1140℃又は1145℃等である。堆積時間は所望の負極材におけるナノシリコン材料の含有量に応じて決めることができる。
【0034】
好ましくは、工程(3)において、前記被覆処理は固相被覆、液相被覆又は気相被覆中の1種を採用する。
【0035】
好ましくは、工程(4)において、前記被覆改質は機械的改質、ナノ分散又は液相被覆中の1種を採用する。機械的改質、ナノ分散又は液相被覆の方法を採用することにより、ナノ導電材の複合材料の表面での均一な分散を促進し、ナノ導電材の凝集を回避することができる。
【0036】
好ましくは、前記機械的改質装置はボールミル、融合機及びVC混合機中の1種である。
【0037】
本発明の製造方法は同様に、本発明のナノシリコン複合負極材の製造にも適用でき、優れた効果を発揮できる。
【0038】
本発明の第3の目的は、本発明のナノシリコン複合負極材又は本発明の製造方法で製造されたナノシリコン複合負極材を含むリチウムイオン電池を提供することにある。