(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6367789
(24)【登録日】2018年7月13日
(45)【発行日】2018年8月1日
(54)【発明の名称】フォーカルプレンシャッタ、及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
G03B 9/36 20060101AFI20180723BHJP
【FI】
G03B9/36 A
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-255542(P2015-255542)
(22)【出願日】2015年12月27日
(65)【公開番号】特開2017-116897(P2017-116897A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2017年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137947
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 貴文
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】高橋 繁実
【審査官】
高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−237673(JP,A)
【文献】
特開2015−087521(JP,A)
【文献】
特開2002−148679(JP,A)
【文献】
米国特許第03956761(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光用の開口部並びに同心円からなる小径穴及び大径穴を有する地板と、
前記開口部の開閉状態を切り替えるシャッタ羽根と、
前記シャッタ羽根に連結されると共に、前記地板の前記大径穴及び前記小径穴に挿入される軸を中心とした回動により前記シャッタ羽根を移動させる駆動レバーと、を備え、
前記軸は、前記軸の外周の前記地板の前記大径穴部分に環状に配置された複数の球体と常に軸方向及び径方向で接するようにして前記地板により支持されている、
フォーカルプレンシャッタ。
【請求項2】
前記地板と所定間隔を空けて配置され、前記地板と共に前記軸を支持する補助地板をさらに備え、
前記補助地板には同心円からなる小径穴及び大径穴が形成されており、
前記軸の一方側は、前記補助地板の前記大径穴及び前記小径穴に挿入されると共に、前記補助地板の前記軸の外周の前記大径穴部分に環状に配置された複数の球体と常に軸方向及び径方向で接するようにして前記補助地板に支持されている、
請求項1に記載のフォーカルプレンシャッタ。
【請求項3】
前記地板または前記補助地板は、補助支持部材を備え、
前記補助支持部材には、同心円からなる小径穴及び大径穴が形成されており、
前記軸は、前記補助支持部材の前記大径穴及び前記小径穴に挿入されると共に、前記補助支持部材の全基軸の外周の前記大径穴部分に環状に配置された複数の球体と常に軸方向及び径方向で接するようにして前記補助支持部材に支持されている、
請求項1または請求項2に記載のフォーカルプレンシャッタ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のフォーカルプレンシャッタを備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、カメラなどの撮像装置に採用されるフォーカルプレンシャッタなどに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラなどの撮像装置にはフォーカルプレンシャッタが用いられるものがある。フォーカルプレンシャッタは、シャッタ羽根が高速に動作することで露光用の開口部を開閉し、これによって撮像素子に対する露光が行われる。このようなフォーカルプレンシャッタに対しては、高速かつ安定的に動作することが求められると共に、高耐久性が求められる。従来のフォーカルプレンシャッタとしては、例えば特許文献1〜特許文献3に開示されたような技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−138510号公報
【特許文献2】特開平9−5828号公報
【特許文献3】特開平8−22046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来構成のフォーカルプレンシャッタをさらに高速動作させようとすると、シャッタ羽根を駆動する駆動レバーと、駆動レバーを支持する部分とが摩擦を起こしてしまい、シャッタ羽根の高速動作には限界があった。また、駆動レバーと支持部分との摩擦により金属粉などの塵が発生し、この塵が撮像素子に付着することでデジタルカメラなどにより撮影された画像の画質低下につながることもあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために次のような手段を採る。なお、以下の説明において、発明の理解を容易にするために図面中の符号等を括弧書きで付記するが、本発明の各構成要素はこれらの付記したものに限定されるものではなく、当業者が技術的に理解しうる範囲にまで広く解釈されるべきものである。
【0006】
本発明の一の手段は、
露光用の開口部(2)を有する地板(1)と、
前記開口部の開閉状態を切り替えるシャッタ羽根(3)と、
前記シャッタ羽根に連結され、軸を中心とした回動により前記シャッタ羽根を移動させる駆動レバー(14)と、を備え、
前記軸は軸受部材(ボール12、13)を介して前記地板により支持されている、
フォーカルプレンシャッタである。
【0007】
上記構成のフォーカルプレンシャッタによれば、駆動レバーの回動の軸が軸受部材を介して支持されていることで、シャッタ羽根の動作のために駆動レバーを動作させた際に、その支持部(例えば地板)との間の摩擦を減少させることができる。これにより、駆動レバーの軸と支持部(例えば地板)との摩擦により金属片などの塵が発生することを抑制することが可能となる。
【0008】
上記フォーカルプレンシャッタにおいて、好ましくは、
前記軸受部材が環状に配置された複数の球体(ボール12、13)である。
【0009】
上記構成のフォーカルプレンシャッタによれば、駆動レバーが環状に配置された複数の球体を介して支持されているため、駆動レバーとその支持部との間の摩擦をさらに減少させることができる。
【0010】
また、本発明の別の手段は、
上記いずれかのフォーカルプレンシャッタを備える撮像装置である。
【0011】
上記構成の撮像装置によれば、摩擦による部品の摩耗を減少しつつ、塵の発生しづらいフォーカルプレンシャッタを備えた構成とすることができる。これにより、撮像装置自身の耐久性を高め、画質の低下を防止することなどが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1のフォーカルプレンシャッタの平面図。
【
図2】実施形態1のフォーカルプレンシャッタの断面図。
【
図4】実施形態2のフォーカルプレンシャッタの平面図。
【
図5】実施形態2のフォーカルプレンシャッタの断面図。
【
図6】実施形態2のフォーカルプレンシャッタの透過斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る実施形態について、以下の構成に従って図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下で説明する実施形態はあくまで本発明の一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定的に解釈させるものではない。なお、各図面において、同一の構成要素には同一の符号を付しており、その説明を省略する場合がある。
1.実施形態1
2.実施形態2
3.補足事項
【0014】
<1.実施形態1>
本実施形態のカメラなどの撮像装置に適用されるフォーカルプレンシャッタは、駆動レバーの回動によりシャッタ羽根を駆動する構成であって、駆動レバーの回動軸を支持する部分(例えば地板)に、環状に配置された複数の球体を介在させる構成にしている点が特徴の一つである。この特徴的構成においては、実施形態1と実施形態2とは共通である。以下、本実施形態のフォーカルプレンシャッタについて、図を参照しながら具体的に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態のフォーカルプレンシャッタの平面図である。
図1に示されるように、本実施形態のフォーカルプレンシャッタは、開口部2が形成された地板1、シャッタ羽根3、及び駆動制御部4を備えて構成される。駆動制御部4の上部には上地板11が配置されている。上地板11には少なくとも2つの孔が形成されており、これらの孔にはシャッタ羽根を駆動する駆動レバーの回動の軸となる軸5及び軸6が挿入されている。
【0016】
図2は、本実施形態のフォーカルプレンシャッタのX−Xの断面図である。
図2に示されるように、本実施形態のフォーカルプレンシャッタは、地板1、シャッタ羽根3、軸5、及び上地板11に加え、ボール12及び13、駆動レバー14、アーム15、並びに連結軸16を含んで構成される。なお、
図2はシャッタ羽根3のうちの先羽根群のための駆動制御部4の構成を示しているが、後羽根群のための構成としても同様の構成を備える。
【0017】
<地板1>
地板1には、露光の際の光路となる矩形状の開口部2が形成される。開口部2は、シャッタ羽根3が移動(走行)することによってその開閉状態が切り替えられる。開口部2の先には撮像素子が配置され、シャッタ羽根3の移動(走行)によりこの撮像素子に対する露光が行われ、撮像が実行される。地板1の裏側には補助地板(図示せず)が配置され、地板1と補助地板との間には、シャッタ羽根3が収容される羽根室が形成される。また、
図2に示されるように、地板1には孔が形成されており、この孔には駆動レバー14の回動の軸となる軸5が挿入されている。これによって、地板1は軸5を回動自在に支持している。
【0018】
<シャッタ羽根3>
シャッタ羽根3は、上記のとおり地板1と補助地板との間に形成された羽根室に配置され、駆動レバー14から駆動力を与えられて移動(走行)する。シャッタ羽根3は、先羽根群及び後羽根群を含んでおり、これらの先羽根群及び後羽根群はそれぞれ1枚または複数枚の羽根を含む。先羽根群及び後羽根群が順に移動して開口部2の開閉状態を変化させることで、撮像素子に対する所定の露光時間での露光が行われる。
図2に示されるように、シャッタ羽根3は連結軸16によってアーム15に連結されている。
【0019】
<上地板11>
上地板11は、地板1の上方であって、地板1と共に駆動制御部4を挟む位置に配置される。上地板11は、地板1と共に駆動制御部の各構成を支持する。上地板11には複数の孔が形成されており、この孔に軸やネジなどが挿入されることで種々の構成を支持している。上地板11には少なくとも2つの孔があり、それぞれ先羽根群用の駆動レバー14の軸5、及び後羽根群用の駆動レバーの軸6が挿入されている。これによって、上地板11は軸5及び軸6を回動自在に支持している。
【0020】
<駆動レバー14>
駆動レバー14は、軸5に連結されており、軸5が回動することで移動するよう構成される。駆動レバー14は、アーム15に連結されており、アーム15は連結軸16を介してシャッタ羽根3に連結されている。軸5が回動すると駆動レバー14が共に回動し、これによってアーム15が移動し、さらにシャッタ羽根3が移動することとなる。
【0021】
<地板1及び上地板11による軸5の支持構造>
図2にも示されるように、地板1及び上地板11には、軸5が挿入される孔がそれぞれ形成されており、この孔において軸5を支持している。軸5は、地板1及び上地板11に直接支持されるわけではなく、それぞれボール12及び13を介在させて支持されている。すなわち、地板1と軸5との間にはボール12が配置されており、上地板11と軸5との間にはボール13が配置されている。地板1、ボール12、及び軸5の関係、並びに上地板11、ボール13、及び軸5の関係は、いずれも同様の関係にあるため、ここでは地板1、ボール12、及び軸5の関係について説明し、上地板11、ボール13、及び軸5の関係についてはその説明を省略する。なお、このボール12及び13は、本発明の軸受部材の一例である。
【0022】
地板1に形成された孔は、径が2段階になった2段形状になっており、径の大きい部分には複数のボール12が配置される。ボール12は、軸5と地板1の孔との間の隙間を埋めるように、かつ複数のボール12の相互間に隙間が生じないように、環状に配置されている。
図3は、軸5とボール12の位置関係を示す図である。ボール12を配置したときに、地板1と軸5との間には、高さ方向においてBだけの隙間が生じるように構成されており、地板1と軸5とが接触しない構成となっている。すなわち、ボール12の半径をr、地板1の凹部と軸5との高さ方向の距離をAとすると、2r=A+Bとなっている。また、地板1と軸5との間には、平面方向においてEだけの隙間が生じるように構成されており、同様に地板1と軸5とが接触しない構成となっている。すなわち、ボール12の半径をr、地板1の凹部と軸5との平面方向の距離をDとすると、2r=D+Eとなっている。なお、地板1と軸5との隙間の距離B及びEは、駆動レバー14の回動時にも地板1と軸5とが接触しない範囲で、できるだけ短くなるよう構成することが好ましい。
【0023】
上記のように、駆動レバー14の回動の軸5を、軸受部材として機能するボール12及び13を介在させて地板1及び上地板11により回動自在に支持している。このような構成とすることで、例えば露光時にシャッタ羽根3の動作のために駆動レバー14を動作させた際に、その支持部(例えば地板1)と軸5の間の摩擦を減少させることができる。これにより、駆動レバー14の軸5と支持部(例えば地板1)との摩擦により金属片などの塵が発生することを抑制することができる。また、このような構成のフォーカルプレンシャッタを採用したカメラなどの撮像装置では、耐久性を高めつつ、塵の発生に起因する画質の低下を防止することなどが可能となる。
【0024】
<2.実施形態2>
次に、本発明の実施形態2について、
図4〜
図6を参照しながら具体的に説明する。本実施形態のフォーカルプレンシャッタの特徴部分は実施形態1と類似しているが、駆動レバーの軸を地板または上地板が直接支持せず、補助支持部材を介して支持している点で相違する。以下の説明では、実施形態1との相違点を中心に説明する。
【0025】
図4は、本実施形態のフォーカルプレンシャッタの平面図である。
図5は、本実施形態のフォーカルプレンシャッタのX−Xでの断面図である。
図6は、本実施形態のフォーカルプレンシャッタの透過斜視図である。
図6においては、先羽根群の駆動レバーに関する構成のみが示されており、その他の構成は省略されている。
図4〜
図6に示されるように、上地板11の上には補助支持部材20及び21が配置されている。また、
図5に示されるように、地板1の上にも補助支持部材22が配置されている。補助支持部材20及び22は先羽根群を駆動する駆動レバー14の軸5を支持するための構成であり、補助支持部材21及びこれに対応する地板1の上に配置された補助支持部材は、後羽根群を駆動する駆動レバーの軸6を支持するための構成である。先羽根群のための構成と後羽根群のための構成とは同様の構成であるため、ここでは先羽根群のための構成についてののみ説明し、後羽根群のための構成についてはその説明を省略する。
【0026】
図5に示されるように、地板1の上には補助支持部材22が配置され、補助支持部材22は2つのネジによって地板1に固定されている。また、上地板11の上には補助支持部材20が配置され、補助支持部材20は2つのネジによって上地板11に固定されている。地板1による軸5を支持する構成と、上地板11による軸5を支持する構成とは同様の構成となっているため、ここでは地板1による軸5を支持する構成について説明し、上地板11による軸5を支持する構成についてはその説明を省略する。
【0027】
地板1及び補助支持部材22には孔が形成されている。補助支持部材22の孔は径が大きい部分と小さい部分との2段構造になっており、径の大きな部分は地板1に形成された孔と略同じ径になっている。地板1は、その孔の位置において軸5と接触しないような孔が形成されている。補助支持部材22の大きいほうの径の部分には複数のボール12が配置されている。ボール12は、軸5と補助支持部材22の孔との間の隙間を埋めるように、かつ複数のボール12の相互間に隙間が生じないように、環状に配置されている。このボール12の配置は、
図3に示された実施形態1の配置と同様である。ボール12を配置したときに、補助支持部材22と軸5との間には、高さ方向においてBだけの隙間が生じるように構成されており、補助支持部材22と軸5とが直接的には接触しない構成となっている。すなわち、ボール12の半径をr、補助支持部材22の凹部と軸5との高さ方向の距離をAとすると、2r=A+Bとなっている。また、補助支持部材22と軸5との間には、平面方向においてEだけの隙間が生じるように構成されており、同様に補助支持部材22と軸5とが直接的には接触しない構成となっている。すなわち、ボール12の半径をr、地板1の凹部と軸5との平面方向の距離をDとすると、2r=D+Eとなっている。なお、補助支持部材22と軸5との隙間の距離B及びEは、駆動レバー14の回動時にも補助支持部材22と軸5とが接触しない範囲で、できるだけ短くなるよう構成することが好ましい。
【0028】
上記のように、駆動レバー14の回動の軸5を地板1及び上地板11が支持せず、補助支持部材を介在させて支持するような構成としても、実施形態1と同様の効果を得ることができる。すなわち、例えば露光時にシャッタ羽根3の動作のために駆動レバー14を動作させた際に、その支持部(例えば補助支持部材22)と軸5の間の摩擦を減少させることができ、金属片などの塵が発生することを抑制することなどが可能となる。また、このような構成のフォーカルプレンシャッタを採用したカメラなどの撮像装置では、耐久性を高めつつ、塵の発生に起因する画質の低下を防止することなどが可能となる。
【0029】
<3.補足事項>
以上、本発明の実施形態についての具体的な説明を行った。上記説明は、あくまで一実施形態としての説明であって、本発明の範囲はこの一実施形態に留まらず、同様の技術思想に基づいて当業者が把握可能な範囲にまで広く解釈されるものである。
【0030】
上記実施形態では、先羽根群を駆動する駆動レバーのための構成について説明したが、この構成は後羽根群を駆動する駆動レバーのための構成としても採用可能である。
【0031】
また、上記実施形態では、シャッタ羽根3は先羽根群と後羽根群とを備える構成として説明したが、シャッタ羽根3は一の羽根群を備えるいわゆる単幕構成であってもよい。
【0032】
また、上記実施形態では、ボール12及び13はいずれも完全な球体であることを前提に説明したが、ボール12及び13は完全な球体ではなく、楕円体状に形成されてもよい。ただし、ボール12及び13は、楕円体状ではなく完全な球体状に形成することがより好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明のフォーカルプレンシャッタは、例えばデジタルカメラなどの撮像装置などに好適に適用される。
【符号の説明】
【0034】
1…地板
2…開口部
3…シャッタ羽根
4…駆動制御部
5、6…軸
11…上地板
12、13…ボール
14…駆動レバー
15…アーム
16…連結軸
20、21、22…補助支持部材